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2011.01.13(Thu)JBプレス 谷口智彦

 今年フランスニコラ・サルコジ大統領は男を上げたがっている。さしずめ今週ワシントンでバラク・オバマ米大統領と会ったのが、これから続くだろう長いキャンペーンの始まりだった。

サルコジ氏の敵はIMF専務理事?


来年2012年は大統領選挙イヤー(自分自身の)だというのに、人気は低迷したままだ。

 ライバルとして、国際通貨基金IMF)で専務理事を務めるドミニク・ストロスカーン氏が立候補するかもしれない。報道による限り、現職有利とは言えないらしい。

 それが動機の一半を占めるのか否か、あまり勘繰ってはいけないけれど、男の上げ方をサルコジ氏はほかならぬIMF大改革を進めることで狙おうとしている。

 そこには国内政治的含意があると見ておいて不自然にならないだろう。

G8・G20議長の幸運!

 加えて国際通貨体制の変革に向け先鞭をつけるほか、経済思想に、氏が好みそうな見出しを付すならコペルニクス的転回すらもたらそうとしている。「脱・GDP信仰」の勧奨である。

 それもこれも、今年フランスがG8・G20で議長国、氏は自ら議長となる好機幸運をとらえてのこと、内外に大政治家ぶりを印象づけ得るまたとない機会と踏んでのことだ。

 とこのくらいは、想像のみに依拠して断定したところで非常識にはなるまい。想像ついで、サルコジ氏のアタマにあるだろう思惑を思い描いてみる。

The Westの凋落を食い止める!

 なにしろリーマン危機以来、The Westすなわち19世紀以来文明の名をほしいままにしてきた西欧各国は凋落の憂き目にある。世人みな、パワーの中心はもはや太平洋と中国インドに移ったと言い募る。

 いまいましくも右下に落ちる欧州とフランスの影響力曲線を、自分の力で食い止め、反転させられはしないだろうか。

 この際は北京と語らい、その力を我が物として、危機の真因をもたらしたグローバルな資金の偏在を正し、ドルの過剰流動性がとめどなく放散する事態に待ったをかけることだ。

IMFの監視監督機能を強め、その特別引き出し権(SDR)を真の国際通貨とする路線を自らの手で敷くことだろう。

 なにせIMFは代々欧州が、とりわけフランスが専務理事のポストを掌握してきた機関であるからして、北京の手綱などIMFが舞台なら我が手に握れぬはずはない。

経済測る尺度自体を変えてしまう?

成功したとしよう、そのあかつき自分は、米国にドル紙幣を意のまま刷らせぬ仕組みを呑ませるという、かのド・ゴール将軍の願望を実現できる。

 大西洋でフランスの威光を輝かせたその足は、北京という馬のあぶみにしっかりかかっている――とそうなれば、サルコジの光は東方にも輝くではないか。

 パリがその指導力で北京の後塵を拝すなど、本来あってはならない。世間の尺度が成長率といういわば微分のプリズムばかりを使いたがるから北京が上等に見える。あるいはデリーなどが。

 正しい尺度とは蓄積すなわち積分値であり、社会資本や芸術資本のストックであってそのもたらす個人の自由であるはずなのだから、各国比較の指標を根こそぎ変えたらいい。

 「GDP信仰」からの脱却こそ必要なのであって、これをもたらした日には、自分は西側世界中興の祖になれる。いや、ならなくてはならない。

ドル離れの具体策を準備中とか!

 「ドル一極依存からの脱却」を、こんな次第でサルコジ氏は1月10日、オバマ氏と会った折持ち出したと信じられている(本当のところはまだ不明)。

 IMF元専務理事でサルコジ氏との関係が良いミシェル・カムドシュ氏ら十数人のエコノミストを集め、具体策を練らせている。今後は何度かパリで国際セミナーを開き、情宣これ努めていくともいうが、最初のお手合わせでオバマ氏が耳を傾けた気配は見えてこない。

いずれ出てくる具体策にしろ、奇策ではあり得ない。中国人民銀行総裁・周小川氏がつとに明らかにした線、あるいはノーベル経済学賞学者ジョゼフ・スティグリッツ氏が推奨するライン、つまりSDR通貨バスケットに人民元を入れるなりしたうえ、各国通貨当局にだぶつくドル準備をこれに置き換えていくべしというものだろう。

米国に共鳴板現れる意外!

具体策にもう一歩踏み込みたいところだが、決定版と呼べるプランはまだ出ていない。

 それより米国から新手の動きが見え始めた。サルコジ氏とその周辺にとってすら意想外だったに違いないが、それが前回本コラムで触れた金再評価というワイルド・カードだ。

 党派的には共和党右派からキリスト教原理主義、それらと重なり合うティーパーティー運動・リバタリアンに散見、次第に析出されつつある経済思想によると、放恣に流れる人間の行為は、人智を超える神性を帯びた何物かによって制約されなくてはならない。

 その何物かこそがゴールドであって、その線で、極めて曖昧模糊とし抽象的ではあれ「金本位制」復帰を説き政治宣伝に乗り出しているのが、例えばプリンストン大学法倫理学教授のロバート・P・ジョージ氏が始めた「アメリカの原則プロジェクト(APP)」であり、来年の大統領選を睨んだそのブログ・サイト「金本位制2012」だ。

グリーンスパンも金回帰か!

 1982年ニューヨーク州知事選挙に出てマリオ・クオモ氏に僅差の敗北を喫したルイス・ルー・レーマン氏が1972年以来率いるレーマン・インスティテュートはもう1つの確信的金本位集団であって、人脈的にはAPPと重なる。

 最近、根っから金を重んじる実務家兼学者の大物がインドにもいた(S.S. Tarapore氏)ことを知ったけれど、かのアラン・グリーンスパン連邦準備制度理事会議長すら最近「法定貨幣の将来は金に行くしかない(Fiat money has no place to go but gold.)」と発言したと、地元紙(ニューヨーク・サン)に報道があった。

 米国に散らばるこれら勢力・人士の影響力がどこまで伸びるかあるいは伸びないか。インドほか世界に散在する同じ傾きの人々が連れて力を伸ばすかどうか。常識的には、疑いながら慎重に見るということになろう。筆者もそれをスタンスとしたい。

伝説の仏エコノミスト、復活!

 まことに面白いのは、レーマン氏にしろAPPにしろ、米国で金復権を唱える人々がいま一様に、あるフランス人経済学者を思い出し、泉下から祭壇に引き上げつつあることだ。

 パリはエッフェル塔のたもと、名前を冠した広場(Place Jacques Rueff)があるから、日本人観光客も知らずにその物故学者の名に親しんでいる。――ジャック・リュエフ。

 今回、決定的証拠に行き当たることができなかったけれど(ご存知の方にお教えを請いたい)、サルコジ氏が最も尊敬する経済学者とはリュエフだというのである。そして一部の米国人が想起しつつあるのが、まさしくこの人物だ。


リュエフは1896年に生まれ、ニクソン・ショックによって金廃貨が決まった後、金本位制復帰を唱え続けて1978年に没した。日本で言うと日銀総裁として法皇のあだ名があった一万田尚登(1893-1984)とほぼ同世代だ。

ド・ゴールの顧問、評価逆転!

 ド・ゴールこそは米国からフランスへの金現送(金の現物輸送)に踏み切り、ブレトン・ウッズ制度下の金ドル本位制に引導を渡した主役であった。その経済顧問リュエフの名とはしたがって、米国では苦々しく思われこそすれ、崇められなどしなかった。

 いま評価は逆転し、米国金復権論者の間で具眼の士として大いに尊崇を集めつつある。手っ取り早くAPPについて理解でき、リュエフ再評価の雰囲気をも知ることのできる記事があるから示しておこう(The Hindu紙2010年11月23日付投稿「Gold Standard」)。

ケインズと長年の論敵!


時宜にかなったことには、米国人学者による伝記が出たばかり。関心復活の例証だろうか。

 ジョン・メイナード・ケインズとは早くも第1次大戦後の対独賠償方針を巡って激しく争ったことが知られている(Robert Skidelsky, John Maynard Keynes: Hopes Betrayed 1883-1920, p. 397)。

 ケインジアンを悪の代名詞のごとく論じるティーパーティー派には、その論敵となれば即座によしとしたがる土壌があるかもしれない。

 フランス中央銀行副総裁の地位をヴィシー政権に剥奪され、戦後はフランス経済の再建に尽くしたリュエフは、フリードリヒ・ハイエクら政府介入を嫌う自由主義経済学者たちが始めた「モンペルラン・ソサエティ」で重きをなしたという。

リュエフの日本における知名度!

 モンペルランとハイエクといえば、日本で彼らに最も近かったのは故・田中清玄である。型破りの行動家だった清玄は生前のリュエフとパリででも会っていただろうか。関係者が集う小さな集まり「オットー会」で、ご子息にでも尋ねてみたい。

 この可能性を除くとリュエフの名を筆者が聞いたのは、大蔵省(当時)副財務官として1985年のプラザ合意に立ち会った経験を持つ近藤健彦・明星大学教授の著作を通じてだけだ。

例えば彩社刊『アジア共通通貨戦略・日本「再生」のための国際政治経済学』で同教授は、「20世紀に欧州が生んだ最大の国際通貨理論家であ〔り、〕…彼の金融理論を正確に21世紀に伝えることが、20世紀に学んだ者のひとつの使命ではないかとさえ思っている」と記す。

サルコジが作ったスティグリッツ委員会!

最後に「脱・GDP信仰」についてひとこと。

 構想はリーマン危機が起きる前、2008年当初のこと。サルコジ大統領肝煎りで「経済パフォーマンスならびに社会発展計測の方法に関する委員会」なるものが発足した。

 率いるのはジョゼフ・スティグリッツ(議長)、アマティア・セン(議長補佐)という2人のノーベル経済学賞受賞者。それにフランスでは有名な学者兼実務家のジャンポール・フィトゥスィ氏(Jean-Paul Fitoussi)がコーディネーターとしてつく。

 スタンフォード大学のケネス・アロー氏(1972年51歳でノーベル経済学賞受賞)ら有名どころを含むエコノミストが22人、メンバーとして加わる。

 米国(世界銀行など国際機関含む)から11人、英国から3人、インドから1人、それにフランスから7人という構成だ。

 委員会のホームページには、「経済指標としてのGDPが持つ限界が何か探る」ことが目的と、論争的なことが書いてある。面白い。

 アジアからはただ1人、中国人として初めて世界銀行の要職(主任エコノミスト)に就いたジャスティン・リン(林毅夫)氏を数えるのみ。本来なら、ゼロ成長経済の課題を先進的に引き受けつつある日本からこそ知的貢献があっていいところだった。

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3月危機を乗り切れるかが第1関門、次は6月・・・

2011.01.11(Tue)JBプレス山崎養世

今年最初の東奔西走は重大な警告書になった。一気に読まないと、多面的な状況を把握して解決策を理解することはできないので、最後までお付き合いいただきたい。

 防災の基本は情報収集と事前準備であり、いざ発生した時の断固たる行動が生死を分ける。経済の巨大災害も変わらない。

 日本は、これから2年の間に、戦後最大の経済危機に直面するだろう。考察し、準備し、行動しなければ、日本は破綻する。詳しくは筆者の『ジャパン・ショック』(祥伝社)をお読みいただきたい。またこの問題に対するフォーラムも開催するが、ここではその解決策を紹介したい。

 日本の歴史をひもとけば、絶体絶命の危機ほど大復活を遂げ、世界を驚かせてきたことがよく分かる。それが日本の「国民力」ではないだろうか。

 今回の危機も同じだと思う.立場を越え、力を合わせれば、日本は奇跡の復活を遂げ、世界をリードする国家に生まれ変わると信じている。

驚異の高度成長を遂げた国債発行!

 日本経済は「失われた」「ゼロ成長」の20年間とよく呼ばれるが、実はこの間に8倍もの高度成長を達成した巨大セクターが日本経済にはある。

国債発行である。1990年度は21兆円だったものが2010年度は162兆円に増え、国内総生産GDP)の34%にも達した。

 しかし、不思議なことに世間に流布している国債発行額は2010年度で44兆円しかないのである。それは世間で言う国債発行額は、「新規財源債」という種類の国債に限っているためだ。

 それ以外の、既存の国債の償還のために発行する「借換債」の103兆円や特殊法人や自治体に貸し付けるための「財投債」の15兆円は、政府が発表しマスコミが伝える「国債発行」には含まれていない。

 しかし、これら3種類の国債の違いは資金使途の違いに過ぎず、投資家から見たら全く同じものだ。

 このような情報開示は、企業会計ならば考えられない。もし、上場企業が、社債の借り換えや子会社への貸し付けのために発行する社債を財務諸表に記載しなければ、経営者は刑事罰に問われてしまう。

ところが、国は、発行総額の4分1程度しか「国債発行」と呼ばず、マスコミはそのまま報道するから、日本国民は国債発行の本当の大きさを知らない。

 これでは「借金隠し」「大本営発表」のそしりを免れないのではないか。

自分のお金が国債に使われているのを知らない日本人!

 しかも、国債の93%を保有している割には、日本人には「国債を持っている」という意識が薄い。なぜなら、個人の国債保有は全体の5%に過ぎず、76%は金融機関と年金が持っているうえ、国民の多くは自分の預貯金や年金がどう使われているかに関心がないからだ。

国民の金融資産は過去20年でほとんど増加していない。だから、金融機関や年金は国債の保有を大きく増やした分、民間への貸し出しや株式や不動産への投資を減らしてきた。

 税金を払う民間への資金を減らし、税金を払わない政府部門の借金に国民の貯蓄をつぎ込めば、税収が減るのは当たり前だろう。

 2009年度の一般税収は37兆円しかなく、20年前の60兆円を4割も下回った。税収が不足して財政赤字が膨らみ、さらなる赤字国債の大量発行を招いている。完全な悪循環の構造が出来上がった。

20年間で逆さまになった常識!

 1980年代の行政改革を引っ張った土光臨調の目標は、財政再建であり「赤字国債撲滅」だった。財政赤字=赤字国債=「悪」という健全な常識がそのころの日本にはあった。おかげで、1990年代初めには、赤字国債発行がゼロに近づいた。

 しかし、今では国債は「安全確実」、株や不動産はもちろん民間貸付も「危ない」、という常識がまかり通っている。

 どうしてこのような常識の逆転現象が起きてしまったのか。それは、世界の金融機関を規制する国際決済銀行(BIS)が作ったルールのおかげである。

 その結果、経済開発協力機構(OECD)の国債ならギリシアのように投資非適格のBB格でもリスクはゼロ、一方で企業の社債ならトヨタ自動車のようにAAA格でもリスクは100%という、後世から見たら摩訶不思議な「常識」が誕生したのである。

 なぜ、こんな「常識」が必要だったのか。それは、米国が自国の赤字国債を何とか世界中に買わせたかったからだ。BIS規制が米国発のルールだと知れば、BISのからくりも解けてくる。

 日本政府は、1980年代にはBISルールの採用を拒否していた。規制の中味が日本の金融機関には不利で、当時世界の資産を買い漁っていた日本の金融機関を狙い撃ちにしていたからである。

しかし、1993年になると突然、BIS規制を一転して採用する。何のことはない。日本が自ら大量の赤字国債の発行に踏み切ったからである。

 以後、一貫して「リスク管理」と称して、“リスクがゼロの”赤字国債の買い入れを金融機関や年金に奨励してきた。堕落としか言いようがない。

政府が国民の貯蓄を吸い上げ尽くそうとしている!

 過去20年間の驚異の高度成長によって、地方も合わせた日本の政府部門の借金(国債地方債と借り入れなど)の総額は、ついに1002兆円に達した。国民の金融資産は、住宅ローンなどの借金を差し引けば1079兆円である。その差は、あと77兆円しかない。

 しかも、国債につぎ込める日本人の貯蓄は急速に細っている。20年前は日本の貯蓄率は15%程度であった。ところが、直近の2008年には2%台に低下した。

 高齢化が進んで貯蓄を取り崩す人が増えたうえ、国民の所得が伸びないためだ。だから、1年間に金融機関に流入する貯蓄は10兆円を下回る。年間160兆円の国債発行を消化するにはあまりにも小さい。

 それでも、これまで国債が消化されてきたのは、金融機関や年金が民間への資金を減らした分で国債を買ってきたからだが、それも限界に近づいている。国債の消化不能が見えてきたのだ。

財政悪化はこれからが本番!

 しかも、首都圏を中心とした大都市での高齢化の進行によって、日本の経済と財政はこれからさらに悪化する。

 この問題に関しては、日本の第一人者で、元大蔵省主計官・政策研究大学院大学教授の松谷明彦先生の最新著『人口減少時代の大都市経済』(東洋経済新報社)を読むことをお勧めすしたい。

 首都圏では、今後20年間で生産年齢人口が2割減少する一方、高齢者が8割近くも増加するからだ。

 そうなると、消費も税収も保険料収入は激減するが、高齢者のための社会保障支出や医療介護施設などのコストは激増し、首都圏の自治体の財政は破綻が予想される。

 一方、島根県などの地方では、高齢化は既に進行しているため、影響は比較的に軽微だ。

今後、首都圏が、全国を富で潤す「富士山」から巨大な支出が必要な「ブラックホール」に変わると、戦後日本のビジネスモデルは崩壊し、首都圏も地方も共倒れになる。

消費税増税はできない!

 財政再建の切り札、と良識ある多くの人が考えているのは消費税増税だ。しかし、松谷教授によれば「消費税の増税は財政と社会の崩壊を早めるだけ」なのだ。

 なぜなら、消費税増税は首都圏の経済活動を一層低下させる。そして、現役世代の首都圏脱出を促し、地方の若者の首都圏への流入を思いとどまらせる。首都圏の現役世代はさらに減少し、財政悪化を早める。

 だから、消費税増税は不可能になる。その時は、年金も維持不能だ。東京一極集中の国土と経済の構造を、地方に分散し地方から成長する構造に転換するしかなかったのだが、もう間に合わない。

 そもそも、年間9.6兆円しか税収がない消費税のフローを2倍にするだけでは、1000兆円を超える政府部門債務のストックは解消できない。

国債バブルは最終局面!

 日本国債は、金融商品として見ると、巨大バブルの最終局面にあることは明白である。

 第1に、ファンダメンタルは最悪である。国債を返済すべき財政は、今後さらに悪化が見込まれる。一方、国債の買い手である金融機関や年金に流れ込む国民の貯蓄が尽きようとしている。

 第2に、史上最高値水準だ(つまり、金利は最低水準まで低下している)。1992年1月に価格100でスタートした日本国債先物インデックスは、2011年1月5日で242にまで上昇した。

 さらに、その間、円高が54%も進んだから、日本国債価格をドルベースで見れば、さらに上昇する。

 第3に、規模が巨大だ。市場性国債の市場として世界最大であり、日本の株式市場の3倍近くに達している。

 日本国債下落が始まれば、世界の国債市場だけでなく、株式や不動産市場、さらには、世界の金融機関の経営と各国の財政に巨大な「ジャパン・ショック」を与え得る。

 

こうした点から見て、現在の日本国債は、1980年代末の日本の不動産・株式や、2000年代の米国の住宅・不動産・サブプライムといった、第1級バブルの崩壊前夜に似ている。

下がる時は速い!

 長い時間をかけて積みあがった巨大バブルも、崩壊する時は驚くほど速い。2008年9月14日のリーマン・ショック発生後、日米の株価はわずか3週間で半分以下となった。

 巨大暴落が金融機関の経営危機を誘発し、資金繰り不安や連鎖倒産の恐怖のために、あらゆる資産に一斉に売りが広がるからだ。リーマン・ショックの場合は、欧米政府が300兆円を負担して金融機関を救済することを発表してようやく暴落は止まった。

 ゆっくり上がり猛スピードで下がる点で、バブルの生成と崩壊はジェットコースターに似ている。そのスピードは、温暖化海面上昇と大津波くらい違う。

2011年3月末が危機になる!

 2011年3月末には、日本国債は重大な局面を迎える。赤字国債の発行ができなくなる危険性が高いからだ。

 赤字国債の発行には「特例国債法案」という予算関連法案の可決が毎年必要だが、予算そのものではないため、両院の議決が必要だ。もし野党が多数を占める参議院で否決された場合、赤字国債は発行できない。

 実は、こうした事態が日本でも過去に1度だけ起きたことがある。細川護煕内閣の時だ。当時は赤字国債が極めて少額だったため、補正予算で対応できた。

 しかし、今回は、赤字国債が最大の財源であり、否決されると本当に予算が組めなくなる。

 日本の予算が成立しないことが世界中に知られた時に、世界の債券市場の賢い人たちが何の反応も示さないだろうか?

今まで安全確実と言われてきた日本国債の発行不能状態は、日本の財政の絶望的な悪化と国債のバブル状態との異常な落差に世界の耳目を集めるだろう。

 しかも、その時に、もし国会が解散し総選挙に入って、国家の管理能力に空白が生じれば何が起きるだろうか。

 少なくとも、市場参加者には格好の「売り」の舞台を提供するだろう。その時、国民の財産と生命を守れるのか。久しく問われなかった難問に日本は直面するはずである。

国家予算を弄ぶのは亡国の遊戯!

 政治報道によれば、来年度予算関連法案を人質にとって解散総選挙に追い込むのが野党の戦略だそうだ。

 しかし、危機を目前にして国会の権能を政争の具にすることなど、氷山を前にしたタイタニック号でダンスにうつつを抜かすようなものではないか。

 とりわけ、過去20年間に財政を崩壊させた旧政権党が政権欲しさに世界経済の大混乱の引き金を引けば、市場と国際社会と歴史から厳しい指弾を受けるだろう。

 仮に、3月末の危機を政治が切り抜けたとしても、その先、事態はさらに悪化する危険性が高い。

 6月末には、QE2と呼ばれる米国金融緩和(あとで説明するがFRB=連邦準備制度の国債「全量買取」)が終わるためである。

 それから先は「逢魔が時」だ。計算上、2012年末で、日本の政府部門の借金が国民の純金融資産を上回る。その中で日本国債を買い増すのは、(日本の株価が最高だった)1989年末に日本株を買うようなものだ、と思う投資家もこれから増えるだろう。

臨界点は迫っている。

国債暴落そのものが財政を崩壊させる!

 下落が始まれば、国債はどこまで下がるのだろうか。例えば、金利が1%上昇すれば国債インデックスの価格は5.5%下落する。

 1970年代末に代表銘柄の「ロクイチ国債」は3割暴落した。当時は、国債の残高は小さかったから暴落の影響は小さく、1980年代の成長と税収の伸びで財政は再建された。

 しかし、現在、政府の借金はGDPの2倍に達し、今後、未曾有の人口減少・高齢化と経済衰退が予想される。それなのに、日本国債の価格は史上最高だ。下落幅の予測が難しい。

 仮に国債が3割下落すれば、日本の金融機関や年金には200兆円近い損失が発生する。多くの金融機関が破綻するだろう。

 とりわけ暴落に弱いのが、国債の最大の保有者であるゆうちょ銀行だ。資産の9割近くを国債で(総額160兆円も)運用しているうえ、現金は5兆円ほどしかなく、自己資本(自己資本に組み入れた国債分を除く)も8兆円しかない。

 国債が値下がりすれば、すぐに自己資本不足に陥る。いったん、ゆうびん貯金の解約が大量に起きれば現金が底を尽き、国債を売る以外に解約に応じる資金が捻出できない。

 しかし、大量の国債売却を実行すれば、さらなる国債暴落を呼び手持資産が減少し、貯金が払い戻し不能になり破綻するだろう。「ゆうちょショック」の発生だ。

 筆者が2005年の郵政特別国会の最初の参考人として指摘し、別の会合で当時の生田正治総裁が「その通りのリスクがあります」と筆者に答えた構造的な問題だ。郵政民営化はこの根本問題を未解決のままだ。

 そして、国債を70兆円持つ、かんぽ生命も経営危機に陥るだろう。このほかにも、国債を80兆円持つ公的年金も資産が大きく減少するはずだ。もちろん、民間の金融機関も、国債への集中度合いが高いところは、経営危機に陥るだろう。

金融機関の破綻は財政負担に直結する。個人向けの預貯金や保険・年金は一定限度まで政府が保証している。損失を政府が肩代わりするのだから、仮に国債が3割下落すれば、100兆円を超える財政負担が新たに発生するだろう。

「ジャパン・ショック」が発生する!

 その時は、赤字国債の発行しか救済財源はない。しかし、その時は、これまでの国債の主な買い手である金融機関や年金が破綻しているのだ。とても、巨額の国債を買い入れる資金などない。

 かといって、今さら日本救済のために日本の国債を買うことを外国人に期待することもできない。

 そもそも、与野党の合意がなければ、ねじれ国会では赤字国債の発行そのものが承認されない。そうなると財政負担での金融機関の救済ができず、本当に、預貯金や保険が返ってこなくなる。

 日本は金融恐慌に突入するだろう。取り付け騒ぎが全国で起き、銀行だけでなく、証券取引所も閉鎖となるかもしれない。

 2008年のリーマン・ショックでは、米国EU諸国が300兆円の財政負担を実行したから恐慌は防げた。

 しかし、日本国債の暴落は国債消化の限界で起きる。このままでは、日本は財政負担での救済ができず、日本の金融財政システムは破綻する。

 その時は、GDP比で戦後最高レベルにまで積み上がった欧米の国債市場も同時に暴落し、瞬時に世界の株式や不動産の暴落と金融危機の連鎖反応を誘発するだろう。「ジャパン・ショック」の発生である。日本は戦後初の金融恐慌を起こす国になってしまう。

65年ぶりに「暴落シフト=国債全量買取」に踏み切った米国

 既に暴落シフトを敷いているのが米国だ。FRBはリーマン・ショックから今年6月までで、200兆円もの国債や証券化商品(MBS)を米国の金融機関から買い取る計画を実行中だ。

 これで、FEBのバランスシートは300兆円に達する。米国人が持つ国債の金額に等しくなる。国債の「全量買取」である。

 米国には過去の成功体験がある。FRBは終戦直後の1946年から5年間に国債の全量買取を行って金融危機を回避し、インフレも起こさず、戦後の繁栄の基礎を築いた。

 終戦当時の米国は、金融機関が保有する戦時の長期国債がGDPの1.4倍に達していた。今の日本と同じ水準だ。

 

戦後復興によって景気が回復し金利が上昇すれば長期国債が暴落し、金融機関が破綻して再び大恐慌の悪夢が繰り返す。かといって、金融機関を財政で救済すれば巨額の負担が発生する。

 しかし、FRBが全量買取して持っていれば、国債が暴落してもFRBのバランスシートに損失が発生するだけだ。FRBの穴は、FRB自身が新規の通貨を増発して埋めればいい。

 一方、金融機関に供給した資金は適切に吸い上げてインフレを起こさせない、という方針を立てた。

 当時の米国はその通りに実行した。FRBが金融機関から戦時国債を買い取った。一方、FRBから資金を得た民間金融機関は旺盛な民間投資を実行して、米国経済の黄金の50~60年代の高度成長が始まった。

 国債全量買取の終了時に生まれたFRB財務省の合意がアコードだ。最大の危機は成長への大チャンスに変わった。米国のすごさだった。

 その一方、終戦直後の日本は100倍のインフレを起こして戦時国債を紙くずにし、国民の「国債不信」を生んだ。今でも、お年寄りの中には「国債はとんでもなく危ないもの」という人たちがいるのはそのせいだ。

 英国も、過大な戦時国債に手をこまぬいて処理せず、戦後経済は衰退した。金融政策の成否が、米英の戦後経済の明暗を分けた。

金融危機対応を進めるFRBバーナンキ議長!

 ベン・バーナンキ議長のFRBは背水の陣を敷いている。

 米国民主党は議会少数派に転落した。リーマン・ショックの処理に要した70兆円の財政負担は議会の保守派から批判されている。

 バラク・オバマ政権が、将来、国債暴落が金融機関の破綻につながった時の財政負担に共和党が支配する議会の承認を得るのは困難だ。

 とすると、国債暴落が起きた時の金融システム破綻を未然に防止するには、「全量買取」という中央銀行の伝家の宝刀に頼る以外に選択肢がない。

 インフレと金利上昇リスクは高まっている。既に中国やインドなどの経済は高度成長軌道に戻った。米国ですら、戦後最大の金融緩和策によって景気は回復に向かっている。

石油価格は再び1バレル100ドルに近づき、穀物価格も史上最高値に迫る。先進国は通貨安競争を繰り広げた。しかも、PIIGSと蔑称されるEU諸国の国債不安はくすぶったままだ。世界の債券市場暴落の条件には事欠かない。

 こうした状況を理解したFRBバーナンキ議長は、金融危機に備えて「無限に通貨を供給し得る」という中央銀行のラストリゾートを65年ぶりに使っている。

 現在、FRBは、月間の国債発行額1100億ドルを上回る1300億ドルの国債を毎月買っている。国家の仕組みをよくわきまえた大胆な行動である。

 一方、ねじれ国会によって国債発行そのものが不能になる事態を目前にして、日本の中央銀行は、一体いかなる行動を取っているのだろうか。

より深刻なのに行動しない日銀!

 日本の中央銀行たる日銀が深刻な危機意識を持っているとはとても見えない。

 リーマン・ショック後に国債やMBSを200兆円も買い増したFRBに対して、日銀はなんと30兆円もバランスシートを縮小した。

 この日米金融政策ギャップが、過去2年の激しい円高・デフレ、マイナス成長・税収不足の主因となった。ようやく昨年、日銀は渋々5兆円のバランスシートの拡大を行ったが、むろん焼け石に水である。

 そんな状態だから、米国に倣って金融機関や年金が持つ600兆円の国債を「全量買取」することなど全く考えていないだろう。

 米英にもない「日銀券ルール」というものを持ち出して、長期国債の保有は日銀券の範囲を超えられないと言い張っている。国債の保有をこれ以上増やさないと主張しているのだ。

 しかし、金融システムの安定は日銀の根幹業務なのである。同盟国・米国が最後の手段に打って出ている時、手をこまぬき、小出しの対策を逐次投入(英語では、too little, too late)するだけであれば、日銀の無策によって、日本経済が一面の焼け野原になる事態を迎えることになるだろう。

 そして、日銀の正副総裁や政策委員の任命権者たる政府には、日銀に義務を果たさせる重大な責任がある。

日銀がことあるごとに振りかざす「独立性」という、まるで戦前の軍部の「統帥権」のような言葉に呪縛されて行動を起こさなければ、政府の不作為責任は重大だ。

日本も危機を大転換のチャンスとせよ!

 米国の戦後は、FRB国債を全量買取して金融危機を未然に防止し、金利連動国債などを活用してインフレも起こさなかった。FRBから銀行に供給された資金は民間の成長に投資され、戦後の高度成長が始まり、経済と財政が再建された。

 一方、日本の戦後はインフレを起こして戦時国債を紙くずにしたところから始まった。虎の子を紙くずにされた国民の怒りが赤字国債の発行を「原則」禁止する法律を生み、ために、赤字国債の発行には、両院の議決が毎年要るのである。

 それでも、終戦直後の日本は若かった。復員とともにベビーブームが始まり、人口が急増し、日米同盟と太平洋ベルト地帯での輸出国家モデルが戦後の経済成長を生んだ。

 しかし、これから老いが進み人口が減る今の日本にそんな元気はない。

 ここで日銀の無策や政治の混乱によって金融・財政システムが崩壊すれば、経済大国日本は終焉を迎えるだろう。そうなれば、これから人口が急増し資源・エネルギー・食料不足を迎える世界の中での日本人の生活はとても難しいものになってしまう。

国債「全量買取」からの具体策!

 日本経済を救うには、日銀が国債の「全量買取」に踏み切る以外に方法はない。具体的には、日銀が、今後3年間、年間200兆円、金融機関や年金から既発国債を購入する。合計600兆円だ。

 一方、政府は価格下落のリスクのある長期国債の発行をやめ、下落リスクのない短期国債と金利連動国債にすべて切り替える。

 日銀は、過大な通貨供給を制御するために、金融機関や年金が持つ国債の一部を現金でなくこうした下落リスクのない国債と交換し、インフレを防止する。

 政府と金融機関や年金は、「脱国債」の投融資を進め、今後の高齢化社会に適合した分散化型の地域開発や環境技術や新エネルギー、食料、インフラなどの分野に投資して、新しい成長企業を育てていく。

 地域に競争を促して海外からの資金や人材は積極的に受け入れ、また、世界に売り込める人材を地方に育てる。

当然、日本国内だけでは成長に限界があるから、新興国での地域開発やインフラ投資をシンガポールなどに負けずに進め、日本企業の成長基盤を高め、また、新興国の成長を高める。

 こうした真に有効な「地域発展戦略」「高齢化戦略」「新企業戦略」「国際投資戦略」「新エネ・農林水産戦略」などに金融機関と年金が投資して「成長戦略」を進めれば、企業所得と国民所得が持続的に向上し、老後も子育ても安心できる地域が開発され、エネルギー・食料の自給率を高める方向性が固まる。

 そこから、税収の持続的な向上が可能になる。

 こうした方向性を確認したうえで、現役世代を直撃する所得税や法人税から全世代が負担する消費税などに税収の中心を移し、持続可能な均衡財政を実現する。

国債ゼロの国へ!

 かつて、日本の誇りは赤字国債がないことだった。今はま国債で沈みかけている。

 今も国債発行ゼロの国がある。シンガポールだ。シンガポール社会保障基金は、国家戦略ファンド(SWF)として有名なTamasekやGICを通じて、全て長期成長をする対象に投資されている。

 だから、日本最大の不動産投資家の1つがシンガポール政府だ。中国でも天津などで環境未来都市を展開する。

 日本では、環境未来都市にも高齢化対応地域の開発にも、公的年金ゆうちょ銀行やかんぽ生命の資金は一銭も出ない。だから、シンガポール政府に資金をお願いに行く、というマンガのような状況が日本の金融の現実だ。

 かくして、中国からも遠く離れた赤道直下、淡路島と同じ広さの人口400万人の島国シンガポールの1人当たり国民所得は日本よりも高い。国債ゼロ、長期資金は成長戦略投資という戦略を営々と続けてきた結果だ。

 日本も、借金を将来の世代に背負わせるのを止め、もう一度赤字国債ゼロの国に戻り、長期の貯蓄は長期の成長に投資する、当たり前の国に生まれ変わる今が最後のチャンスだ。


 

2011年01月07日(金)現代ビジネス 長谷川幸洋

融和派の山口代表も”徹底抗戦”に転換!

新しい年が明けた。永田町は相変わらず「小沢問題」一色だ。通常国会の召集日さえ決まらぬ事態に、うんざりした思いの人が多いだろう。

 民主党小沢一郎元代表が国会の政治倫理審査会にいつ、出席するのかが焦点なのだが、政倫審に出席したところで、たかだか1時間程度、野党の持ち時間を半分弱の20分程度とみれば、小沢をめぐる複雑な「政治とカネ」の問題が解明できるわけもない。

 結局、これは菅直人首相と仙谷由人官房長官の菅・仙谷ラインと小沢の「政策なき権力闘争」である。国民はそういう事情を直観的に分かっているから、ばかばかしくて、シラけてしまうのだ。

 「そんな権力争いはどうでもいいから、景気を良くしてくれ」「俺がちゃんと就職できるようにしてくれ」というのが、人々の偽らざる本音である。そんな気持ちに、私も全面的に共感する。

 そもそも強制起訴される小沢が国会で何を語ろうと、最終的な決着は法廷でつく。そこで「ポスト小沢問題」に目を向けよう。

 予算案であれ法案であれ、国会では数がものを言う。いま民主党国民新党の連立政権は衆院で計311議席を握っている。欠員1と議長を除く3分の2は318議席であり、社会民主党・市民連合の6を加えても317議席で、法案の再議決に必要な3分の2にぎりぎり届かない。

 一方、参院は与党が計109議席。社民・護憲連合の4を加えても113であり、過半数の121には遠く及ばない。そこで鍵を握るのは、だれかという話になる。

 公明党は参院で19、衆院で21を確保しているので、もしも公明党が連立与党の提出する法案に賛成すれば、社民・護憲連合と合わせ参院で132となり過半数を超える。社民・護憲連合が反対に回ったとしても、128であり法案可決が可能になる。

というわけで、公明党の態度が決定的に重要になっている。

 小沢が離党し新党結成にでも踏み切れば話は別だが、小沢が民主党にとどまっているかぎり、政治とカネ問題がどう展開しようと、国会では基本的に公明党がキャスティングボートを握っている事情に変わりはない。

 つまり政局を観察するうえで、もっとも重要なのは小沢問題ではなく公明党問題なのである。いずれ小沢問題が一段落すれば、必ず公明党が焦点になる。

 公明党民主党政権に今後、どう対応するのだろうか。

 山口那津男代表は菅政権が発足した当初、参院の議長交代に反対した一件が示すように、ときに菅政権に融和的な姿勢を示してきた(『江田五月参議院議長「続投阻止」に反対した公明党「連立への色気」』)。

 これに対して、漆原良男国対委員長は政権に批判的な姿勢である。毎日新聞のインタビューでも、漆原は「闘う野党を明確なスタンスとして出していきたい」と強調している(6日付け朝刊)。

一枚岩として知られる公明党にしては珍しく、民主党政権に対して微妙なニュアンスの違いがあった。ところが、ここへきて"融和派"の山口代表も"徹底抗戦路線"に転換してきたようだ。

 たとえば雑誌「潮」2月号で山口はこう述べている。

「国民は、一昨年の政権交代に対して大きな希望を抱いていた。現在はその希望が失望に変わっている」

「昨年十月一日の国会開幕冒頭における所信表明演説で、菅首相は『熟議の国会にしていくように努めます』などと言った。公明党としては望むところだ。ところが、菅政権の側から熟議の対象となるもの、議論の主題がまったく提示されない。つまり、熟議のしようがないのだ」

 マニフェストの迷走や政治とカネ問題、菅のリーダーシップの欠如に加えて、相次ぐ閣僚の失言・暴言、尖閣問題、日米、日中、日ロ関係など、昨年の参院選で民主党に突き付けた「レッドカード」の中身は増える一方、と山口は指摘している。

 醒めた言い方をすれば、公明党民主党内閣の支持率が高まれば融和的姿勢になり、支持率が下がれば対決姿勢を強める傾向がある。支持率と政権への姿勢が逆相関関係になっているのだ。

 これは必ずしも非難されるべき態度とも言い切れない。なぜなら、内閣支持率が高いのは、それだけ国民が内閣による政策実現を願っている表れとも言えるからだ。

 「国民目線の政治を貫く」(前掲山口論文のタイトル)姿勢が公明党の原点であるとすれば、支持率と政権への距離感が逆相関になるのも合理的な選択と言える。

 そうだとすると、近い将来、菅内閣の支持率が上がる理由が見当たらない以上、公明党は政権に対して批判的な姿勢を強めこそすれ、弱めるとは考えにくい。

統一地方選の前にチャンス、 もう一つ、重要な要素がある。

 4月に行われる統一地方選である。

 公明党は地方選をことのほか重視してきた。山口論文でも、神奈川県平塚市の議員から寄せられた情報を国会議員が吸い上げて実現した子宮頸ガンワクチン接種への公費助成の例を紹介している。地方から国会へ縦のネットワークを大事にしているのだ。

 とりわけ、4月というタイミングが絶妙だ!

 2011年度予算案が(順調にいけば)3月末までに衆院を通過した後、参院で税制改正法案や公債特例法案など予算関連法案の審議がヤマ場にさしかかる時期であるからだ。

 ここで公明党が政権に融和的な姿勢を示せば、4月10日の統一地方選第1弾、同24日の第2弾に微妙な影響が及ぶのは避けられない。公明党としては、政権に対決姿勢を強めたまま地方選になだれ込んだほうが有利と考える公算が高いのだ。

 その結果、税制改正法案も公債特例法案も参院での可決成立が難しくなる。そうなれば、菅政権は万事休すである。

 もしも菅政権が予算関連法案の参院可決と引き換えに内閣総辞職するような事態になれば、公明党は事実上、民主党政権の息の根を止めた形になる。総辞職が地方選前なら勝利は間違いないし、地方選後でも公明党支持率は高まるのではないか。

 つまり、公明党は3月末から4月の地方選にかけて、願ってもない絶好のチャンスを迎えるのだ。

 小沢問題にうんざりしている「退屈な時間」はまもなく終わる。その後が本当の激動である。

国民そっちのけの「党内バトル」が進行中だ!

2010年10月01日(金)現代ビジネス

かつて、かの松下幸之助は言った。

「人事問題は、経営を左右する」

 菅直人首相(63)は、「小沢外し」という道を選択した。小沢一郎幹事長(68)、および彼が率いるグループのメンバーは、一人として閣僚に入らなかった。

 副大臣・政務官ポストの人事で、かろうじて小沢氏を支持する「一新会」の面子にお呼びが掛かったくらいだ。ボスから「打診があったら受けるように。政治は一時も停滞しない」と言われている彼らに断る理由はない。小沢氏の盟友で参謀でもある平野貞夫元参院議員は、今回の組閣を「脱小沢ではない。これは小沢排除だ」と評するが、菅首相サイドの耳に届くのは"負け犬の遠吠え"であろう。

 そんな小沢グループにも、呑気な勢力が存在する。「ひょっとして」などと過信する輩が、周到にある準備を整えていたのだ。民主党議員が笑いながら明かす。

「小沢グループの中で、組閣の当日、部屋にモーニングを吊るしていた御仁がいるんですよ。それも二人も。本人の名誉のために名前は明かしませんが、小沢派で当選回数を重ねている人なんて、そういませんから、すぐ分かりますよ(笑)」

 ただし、「代表選が終わればノーサイド」と言った手前、菅首相が小沢グループに配慮しようと動いたのは事実である。民主党幹部が内幕を解説する。


「改造前の農水相の山田正彦が小沢グループなので、『農水相ポストは小沢派へ』というのが菅の考えでした。しかも、代表選の最中、小沢が頻繁に情報交換していたのは山田で、"小沢側近"をアピールする山岡賢次(党副代表)は相手にされていなかった。
菅には、山岡を閣僚に迎えれば小沢グループの分断を図れるとの計算があったが、そのアイディアを一蹴したのが仙谷(由人官房長官)だった」

 複数の民主党議員から「菅首相は最低一人でも、小沢グループから入閣させたがっていた」との証言が漏れ伝わる。だが、仙谷氏は徹底してNOを突きつけた。

「小沢グループには、(閣僚になるだけの)経歴を踏んだ者がいない」

 仙谷氏の掲げる理由はもっともだが、最初から仙谷氏の「閻魔帳」には「小沢グループ」の「お」の字も記載されていなかったようだ。「閻魔帳」とは、仙谷氏の側近が命名したリストを指すが、そこには当選回数、経験した役職、年齢、所属グループ、党員・サポーター票の結果、内閣情報調査室の"身体検査"、寸評という項目が横列に並び、縦列に入閣候補者の名前が並ぶ。仙谷氏が真っ先に気にしたのが年齢と、小沢グループか否かという点だった。先の民主党幹部が続けた。

「ポイントは、閻魔帳に名前のあった髙木義明の初入閣(文部科学相)だ。彼が所属する民社協会は、代表選で『菅か、小沢か』で分裂した。また、鳩山グループの海江田万里は小沢に票を入れながらも経済財政担当相で入閣した。小沢寄りの人間を処遇して小沢から距離を遠ざける。仙谷はその辺、実に徹底している」

 この徹底ぶりには、菅首相ならずとも「党を割る気か」と気を揉むのは当然であろう。仙谷氏とて「トップが好きか、嫌いか」だけで代表選を実行する幼稚な民主党で権力闘争を再燃させれば、己の足元がグラつくことくらい承知している。だが、徹底した「小沢外し」へと仙谷氏の背中を最後にひと押ししたのは、9月9日の自民党の党役員人事であった。

幹事長になった石原伸晃は早々に『小沢さんが民主党を出ても組まない』と発言しているし、総務会長小池百合子新進党で一緒だった小沢と袂を分かっている。つまり、自民党は世代交代とともに反小沢色が強くなったわけです。

民主党代表選に先駆けて自民党が人事を断行したのは、民主党内の反小沢勢力=仙谷氏に向けて、『菅を勝たせれば、小沢を駆逐できる』とのメッセージを送ったとする清和会幹部もいます」(自民党幹部)

 勝っても負けても小沢氏に存在感があるのは、手持ちのシンパを従えて党を割り、自民党をはじめ他党と手を結ぶのではないかという疑心暗鬼に基づく。だが、その自民党内でも"小沢アレルギー"が高まれば、小沢氏の勢力は削がれる。

 どうやら仙谷氏は、自民党の動きと連動して小沢氏の力を封じるべく、早くから"ナビゲーター"を探していたようだ。前出の自民党幹部が解説する。

「参院選の後、今年7月半ば頃から仙谷は動いていました。選挙に大敗した菅首相の責任論が噴出し、小沢が主導権を握ろうとするのは時間の問題でしたからね。

 そこで仙谷は、

(1)分裂危機の可能性が高まった民主党がねじれ国会を乗り切るため、自民党といかに手を結ぶべきか、

(2)小沢は、本気で菅首相の座を脅かすのか―

という2点に明確な答えを出せるカウンターパートを求めたのです。そして2党の間でフィクサーとして情報を取り結ぶ役として浮上したのが、野中広務(元自民党幹事長)さんだと聞きます」

野中氏は取材を拒否したが、噂の類と斬って捨てることはできない。前出の平野氏は、「小沢外し」の人事について見解を求めた本誌に、こんな証言をしている。

「菅首相という人間は、悪霊に繋がれているのです。仙谷氏は、野中氏と相談してことを進めている。私は直接、野中氏に聞いてますから。7月の末に会った時、『仙谷から、いろいろ相談を受けている』とね。自民党の守旧派の連中と仙谷氏は一緒になって小沢を排除しようとしている。自民党より悪いものに突き動かされているんですよ、この菅政権は・・・」

 小沢氏は最近、自派の若手の会合に顔を出し、不気味なひと言を言い放った。

「衆院は、いつ戦いがあるか分からない。備えておけ」

 幸之助翁の言葉の通り、今回の人事は民主党の将来を左右しよう。そして、事実上は"仙谷政権"で角を突き合わせる民主党幹部には、次の言葉を贈りたい。

「われわれはお互いに相手を尊敬すべきだ。お互いに大した人間ではないのだから」(デール・カーネギー=米の実業家)



*2011年も小沢民主党元代表の足を引っ張る「政治とカネ」の公判の行方!

「裏金1億円」検察側立証で再燃必至の小沢バッシング報道!

2011年01月06日(木) 伊藤博敏

2009年に小沢一郎民主党元代表の事務所を仕切る大久保隆規秘書を電撃逮捕、10年には石川知裕元秘書(現代議士)を執念で逮捕した検察は、11年早々から総決算となる公判で小沢氏と対峙する。

 捜査面でいえば検察の敗北である。

 起訴された秘書らの起訴事実は、第一に、2004年10月、小沢私邸に近い世田谷区の土地を約3億5000万円で購入しながら04年ではなく、05年分の政治資金収支報告書に記載したというもの。第二に、土地代金の原資となった小沢氏からの4億円の借入金を04年分の収支報告書に記載しなかったというものだった。

 普通に考えれば、「記載漏れ」であり、単なる「期ずれ」である。形式犯であって、元秘書とはいえ国会議員にもなっている石川代議士を逮捕するような案件ではない。

 だから、東京地検特捜部は原資の悪質性にこだわった。なかでも1億円は水谷建設の水谷功元会長と川村尚元社長が、「04年、石川に5000万円、05年、大久保に5000万円を渡した」と、詳細に供述している点を捉えて捜査段階で石川被告を追い込み、「(4億円は)表に出せないカネかも知れないと思い、収支報告書に記載しなかった」という供述を引き出した。

 こうした証言が決め手となって、虚偽記載で立件されたが、小沢氏は特捜部の事情聴取に「秘書にすべて任せていた」と虚偽記載への関与を認めず、そのカベを突破できず、捜査は小沢氏に辿り着けなかった。また、1月中に予定される「強制起訴」は、検察審査会法の改正がもたらしたものだが、検察が捜査段階で立証できなかったものを、公判で検事役の弁護士が有罪に持って行くのは難しい。

 当然、小沢氏サイドは強気である。

 小沢氏は被告となって離党を迫られたっとしても、無罪の確率が高い以上、政治的影響力は堅持すると考えている。また、石川被告らの「秘書公判」も、捜査段階では認めた虚偽記載を、「検事にしゃべらされた。実態は、悪意のない記載漏れ」と無罪主張に転じた。

 検察は、今、大阪地検の文書偽造事件の余波でダッチロール状態。補充捜査を行うような気力がない。それどころか、大久保被告を取り調べたのが文書偽造の主犯である前田恒彦元検事ということもあって、「供述調書」そのものの信用性が問われており、逆風下の公判を覚悟せざるを得ない。

しかし、検察にとって一筋の光明がある。東京地裁(登石郁朗裁判長)が、「裏ガネ1億円」と水谷建設元幹部が証言していることについて、検察側が立証することを認めたのだ。

 法廷で立証が行われたら、どうなるのか。

 弁護側は、裏ガネの授受を認めないのだから、検察側は法廷で立証するために、水谷、川村の両名はもちろん、石川被告らを含め、裏ガネの授受にかかわった人物10名近くを証人申請することになった。法廷で、裏ガネの現場が生々しく再現される。

 実際に授受があったかどうかは問題ではない。それが、誰もが傍聴でき、報道される公判の場で蒸し返されるのは、小沢氏にとって大きなダメージとなる。

 しかも、今は水谷、川村両名とも水谷建設を離れ、独立して生計を立てており、「土建業界のしがらみ」がない。それだけに、捜査段階での供述を繰り返すだろう。偽証罪に問われる宣誓のうえでの供述なので信憑性は高いと報じられるだろう。国民の「裏ガネがあったかも知れない」という疑惑は、「裏ガネが渡ったに違いない」と、かなり濃厚なグレーに転化するのではないか。

 さらに、疑惑を濃くするのは、現金授受の現場にいた証人の存在である。

 2回に分かれた資金提供のうち、最初の石川被告の5000万円は、「1対1の授受」なので「カネを渡した」「もらっていない」という不毛の論議が予想される。

 しかし、2回目の大久保被告の5000万円には、大阪市北区に本社を置く土木工事会社の社長が同席していた。しかも、この社長は、自ら小沢事務所に献金するなど小沢氏と近く、そもそも水谷建設と大久保被告を結びつけた人物でもある。この内情を知る人物の公判証言は大きい。

 しかも、公判を通じて小沢氏の「政治とカネ」の問題が蒸し返されると、間違いなくマスコミの小沢バッシングが再燃する。

 攻撃材料は、いくらでも探すことができよう。例えば、水谷建設と大久保被告の親密さを示す向島での「料亭接待」では、大久保被告と親密な芸者が、再度、口を開くことが予想される。「水谷被告とは会った記憶がないし、料亭接待など受けたことがない」と断言した石川被告の供述をひっくり返すような報道もあろう。

 そうした枝葉末節だけでなく、大手紙のなかにはチームを組んで裏ガネ問題を粘り強く掘り下げているところもある。どんな新しい事実を突き付ける「調査報道」が飛び出さないとも限らない。

 材料は出尽くした---。

 小沢氏周辺には、こうした安易な観測をする向きもあるようだが、公判はそれほど甘いものではない。判決より、その過程で問題とされるのは、4億円をいとも簡単に捻出する小沢事務所の「資金力」であり「金銭感覚」である。それが再度、問われ、それは永遠の呪縛となって、小沢氏を貶めるのである。

もはやリーダーシップで解決できる時期は過ぎた!

2011.01.08(Sat)JBプレス 川嶋諭

新しい年を迎えて1週間が経った。今年は厳冬が予測されていたにもかかわらず、東京では1月7日になってやっと初氷を観測した。例年よりも27日も遅いという。

菅首相出演で視聴率大幅ダウン!


大雪に悩む地方には誠に申し訳ないが、東京の空気がピリッとしないわけである。

 1月5日のテレビ朝日「報道ステーション」に突然登場した菅直人首相を見て、「何でいまさら。ほかにやらなければならない大切な仕事は山とあるだろう」という印象を持った人が多かったに違いない。

 1月7日付の産経新聞は、この時の視聴率が6.9%だったと報じている。この番組自体は通常で13~14%あるそうで、約半分の視聴率しか取れなかったことになる。

 どうも世間の思いと首相官邸の考えは位相が180度ずれてしまっているらしい。

 1月8日発売の文藝春秋では参院議長の西岡武夫氏が首相について「あまりに思いつきでモノを言うことが多すぎる」などと、一刀両断にしている。

 新年早々からあまりに滑稽で哀れを誘う姿を見せられて、政権に対して期待はもちろん、怒りも覚えなくなった。

 何もかもピリッとしない。2011年はご存知の通り、世界の大激変が予想される2012年の前の年である。こんなに間の抜けた始まり方でいいのだろうか。

 2012年については「激動の2012年を前に世界は」「世界大激変前夜、2011年という歴史的時空」で再確認ください。

 太平洋の向う側では、訪米中の前原誠司外務大臣が、一国の元首並みの接待を受けているという。米国は日本の政権が既にレイムダックと言わんばかりの対応である。何とちぐはぐな新年だろう。

日本全体がまとまりなく拡散し切っているような感じを受ける。今年のキーワードはもしかしたらこの「拡散」になるのかもしれないと、ふと思った。そう、拡散。エントロピーなんだ。

世界中が哀れな眼差しを向ける日本!

 水は高いところから低いところにしか流れない。やかんのお湯はいずれ冷めて周囲の温度と一緒になる。エントロピー増大の法則というものがある。世の中のものは放っておけば必ず拡散に向かうという物理学の法則である。

 今の日本はやかんのお湯が大気の温度と一緒になる寸前の、熱が拡散し切った状態に近いのかもしれない。

 そう考えると、FTの名物コラムニストであるデビッド・リング氏が皮肉たっぷりに書いた「経済が停滞しても幸せな国ニッポン」を読んでも、批判を受けている国民の1人のはずなのに、不愉快な気持ちを通り越して、第三者的に笑いがこみ上げてくる。

 「日本は世界で最も成功した社会か? こう問いかけただけでも、冷笑を誘い、読者が朝食のテーブルでふき出すことになるだろう」

 「韓国や香港、米国のビジネスマンに日本をどう思うか尋ねれば、10人中9人は悲しげに首を振り、普段はバングラデシュの洪水の犠牲者に向けられるような悲嘆に暮れた表情を見せる」

 「『あの国に起きたことは、本当に嘆かわしいことだ』。シンガポールの著名な外交官は最近、筆者にこう語った。「彼らはすっかり道に迷ってしまった」。

エントロピーの法則に抗えない日本!

 リング氏はデフレによって日本人はアニマルスピリッツを奪われてしまったと書いているが、確かに、アニマルスピリッツをほぼ拡散し尽くしてしまったようである。

 一度拡散したものを元の形に戻すには大変な力、パワーがいる。これも物理学の教える通りである。

 エアコンのヒートポンプは、大気に拡散した熱を集めて室内を暖める働きをするが、その際にコンプレッサーを回すために大変な動力を必要とする。

 日本人がアニマルスピリッツを取り戻すためには、何らかの大変大きなエネルギーを加えて国民のモチベーションを上げなければならない。そのエネルギーを与えるのが本来は政治の役割だ。

高度成長期までの日本にエネルギーを与え続けてきたのは、欧米に追いつけ追い越せの指示を出した政治と、それを受けて作戦を練って実行に移した官僚のパワーだった。

デカンショ節で日本は強くなったが・・・

 「デカンショデカンショで半年暮らす あ~よいよい」

 「あとの半年寝て暮らす よ~ぉい よ~ぉい デッカンショ」

 ご存知デカンショ節である。デカルト、カント、ショーペンハウエルを徹底的に勉強して欧米に1日も早く追いつこう。こうした唄まで登場して日本人のベクトルを同じ方向にまとめ上げた。

 しかし、日本が迂闊にも欧米に完全に追いついたと思い込んでしまった1980年代末を機に、日本人のアニマルスピリッツというエントロピーは増大に向かう。そして、超新星が誕生したかのようなバブルが弾けて、拡散の勢いは一気に拡大した。

 この拡散し切った超新星が元の星の輝きを取り戻すには、強力な引力が必要になる。ブラックホールである。残念ながら今の日本にはブラックホールが近くに出現してくれるのを待つしかないのだろうか。

団塊の世代が最後の背中を押す!

 しかし、時は確実に流れていく。世の中は時間の関数であることも忘れてはいけない。時間とともに拡散はいよいよ不可逆の領域に入っていく。もう日本人が元のアニマルスピリッツを取り戻すことは完全に不可能になるかもしれない。

 そんな日本の将来を暗示しているのがこの記事「高齢化するベビーブーマー」だ。

 この記事自体は米国のベビーブーマーたちについて書かれたものである。しかし、恐らくこの記事の内容はほとんどが日本にも当てはまる。

 米国のベビーブーマーたち、日本では団塊の世代が、現役引退のピークを迎え、社会保障費の増大など社会に与える影響は極めて大きい。しかし、最も影響が大きいのは、そうしたコストの問題よりも彼らの意識の変化だと言う。

「高齢者は近年、投票集団として特徴的な姿を示すようになってきた」

 「退職後の生活がかつてないほど安楽になったことで、政治の動向を追う時間と手段を手にし、自分たちの動機となる問題ができたのだ」

 政治に熱心になったベビーブーマーたちは、自分たちの権利が侵食されることを徹底的に嫌う。そして、自分たちが数で優位に立っていることを長い間、肌で感じてきただけに、投票という形で自分たちの権利を守ろうとする。

 「福祉を削減せずにベビーブーム世代の退職に伴う費用をまかなうには、前例のない規模での増税が必要となる。それに関しては、福祉削減以上に支持が得られないだろう。既存の政治をひっくり返すベビーブーム世代の力は、かつてないほど大きくなっている」

 エコノミスト誌は以前に、同じような問題が欧州で始まっていることを指摘している。それがこの記事「欧州の憂慮すべき老人支配」だった。

世界最大の老人支配の国になるニッポン!

 同じことが日本で起きないという保証は全くない。それどころかエコノミスト誌がまだ書いていないだけで、先進国で最も少子高齢化の勢いが激しい日本にこそ特徴的に現れやすい問題と言えるのではないだろうか。

 何しろ、日本は世界で最も長寿の国である。団塊世代の権利行使は世界で最も長く続く。それは日本の構造改革が世界で最も遅れるというあり難い反作用を生み出す。

 アニマルスピリッツは経験を重ねたお年寄りよりも、怖さを知らない若者に宿りやすい。時は、確実にその意欲を削ぎ完全に失わせるように流れていく。

 その流れを止めることは、米国バラク・オバマ大統領にもできないようだ。もちろん、日本のリーダー(それも今は団塊世代)にできるとは全く考えられない。

 だとすれば、もはやリーダーシップどうのこうのと言っても虚しいだけ。日本は2回の失われた10年という時間を空費したために、アニマルスピリッツは不可逆な領域へ入ってしまっている危険性が高いことになる。

 年初からのピリッとしない空気は、そうした虚しさのせいだったのかもしれない。しかし、待てよ。マヤ暦の終わる来年は、ひょっとしたらブラックホールが生まれるかもしれない。

何がブラックホールになるかは分からない。恐らく複合的に生じるのだろう。実際、その兆候は少しずつ感じられるようになってきた。

 例えば、この記事「ブラジルレアルに魅せられる日本マネー」。

個人のお金は日本国債を避けブラジルへ!

 「JPモルガンと野村証券が別々にまとめた推計によると、日本の個人投資家の対ブラジル投資額は累計で6兆円を超えるという。これは日本の国内総生産GDP)の1%を超える金額だ」

 日本の政治を信じられなくなった個人投資家は、日本の国債に見切りをつけ、日本以外に投資先を真剣に探すようになってきた。

 「野村証券の為替ストラテジスト、池田雄之輔氏は、日本の投資信託市場における成功のカギは、高利回り通貨と資源国へのエクスポージャーを提供することだと言う」

 「このため、ブラジルとその資源重視の経済に人気が集まっているわけだ。ブラジル関連商品の取引は、高収益の投資対象になってきた。レアルの対円相場は2009年初め以来27%上昇しており、金利は日本の0~0.1%に対して、ブラジルは現在10.75%だ」

 ブラジルへの投資は、通貨高と金利の両面で恩恵を受けてきたわけだ。ただし、ブラジル通貨レアルがこれからも上昇を続けるとは限らないと記事は言う。

日本の国債は利率を大幅にアップ

 ブラジルが通貨高を何とか阻止しようと躍起になっているからだが、だからといって日本からの投資熱は冷めそうにもないという。

 「野村の池田氏は、レアルの下落は恐らく、日本人投資家に新たな投資機会を提供することになると言う」

 そう言えば、1月7日付の朝日新聞は「個人向け国債 利率大幅上げ」の見出しで、財務相が10年満期の国債の利率を大幅に引き上げると報道していた。個人向け国債は昨年8~10月の販売実績が史上最低の1417億円にまで減少しているという。

 政治不信も手伝って国民からそっぽを向かれ始めた日本国債。それは危機的な財政赤字を抱える一方、再建策を全く打ち出せない政府に重くのしかかる。

 そして、つまらない内輪もめが原因で通常国会の召集を1月末にまで遅らせるという政府。それは、参院での議決も必要な予算関連法案に必ず跳ね返ってくる。

 短期国債償還のための赤字国債を発行できず、日本国債が信用を失って暴落という爆弾を抱えることにもなりかねない。ブラックホールが出現するとしても、それは何も来年、2012年と決まったわけではないのだ。

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