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越中富山 幸のこわけ
 
2011年3月7日(月) 日経ビジネス  鶴見樹里
 
 富山県には、「おすそわけ」という固有の文化があります。
 「えっ?」と思われる読者もいらっしゃるでしょう。「自分は富山県出身ではないけれども、おすそわけなら知っているよ」と。
 実は富山県の「おすそわけ」は、一般にイメージされている「頂き物を近所の人らに配る」という慣習とは違っています。富山県の場合は、頂き物にあらかじめおすそわけ用の品物も含まれているのです。代表例が、婚礼引き出物の定番である大きな鯛の細工かまぼこです。これを切り分けて、婚礼に参加しなかった家族が楽しんだりご近所に配ったりします。
 つまり、富山県のおすそわけには、人の幸せをたくさんの方々に広めたい気持ちが込められています。このおすそわけ文化から官民が一体となって生み出したのが「越中富山幸のこわけ」という新しいお土産品です。

複数の企業が同じブランドに集う

 そもそも「越中富山幸のこわけ」は、富山県に関連する物産品を広くアピールすることを目的に、富山県の試験研究機関である富山県総合デザインセンターが主体となって2009年にプロジェクトが始まりました。
 この取り組みで最も目をひくのは、参加する民間企業すべての商品が「越中富山幸のこわけ」というブランドで統一されており、しかも共通のパッケージデザインで展開している点です。同じ産地ブランドであることを示すために、共通シールを貼るといった活動は今ではさほど珍しくありません。しかし、ブランドとパッケージまで揃えてしまうのはかなり踏み込んでおり、全国でも類を見ない新たな試みと言えそうです。
 現在、「越中富山幸のこわけ」は、17企業による18品目があります。いずれも地元の食材を利用したり、伝統的技法で作られていたりする名品です。
 3つほど紹介しましょう。まずは「福わけ鯛」(525円、女傳商会)。おすそわけの定番、鯛の細工かまぼこです。次に「ほたるいか燻製」(525円、カネツル砂子商店)。富山湾で獲れる新鮮なほたるいかを、潮の香りそのままに独自製法でスモークしています。そして「薄氷」(735円、五郎丸屋)。富山産の新大正米を使用した薄い真煎餅に高級和三盆糖を独自の方法で塗布しているお菓子です。
 
「ほたるいか燻製」は1個40gという具合に、すべてミニサイズです。価格帯は315~735円。お土産として販売することを念頭に、「荷物にならない」「配りやすい」といった点を考えた結果です。少しずつ様々なものを楽しめるというメリットもあります。
 
富山県は以前からデザインの振興に力を入れていました。一例が、20年以上も前から開催している「Design Wave in Toyama(デザインウエーブ イン富山)」です。全国で初めて商品化を前提としたプロダクトデザインコンペティションとしてスタートしました。これまで多くのヒット商品を生み出すとともに、今では国内若手プロダクトデザイナーの登竜門として位置づけられています。
 「越中富山幸のこわけ」を仕掛ける富山県総合デザインセンターがオープンしたのは1999年のことです。工業製品を中心に、富山企業のデザイン商品開発を支援してきました。そして今回、物産品をテーマにするに至ったわけです。「多くの人に富山に関心を持っていただくためには、工業製品だけでなく、生活に身近な飲食品も欠かせないだろうと考えました」と富山県総合デザインセンター主任研究員の窪英明氏は説明します。
 このプロジェクトには、富山県総合デザインセンターの担当者に加えて、富山県を中心に活動する4人の女性が名を連ねています。ファイン・プロジェクトのアートディレクターである中山真由美氏、能作建築設計事務所及びnousaku店主でチーズソムリエの能作幾代氏、北日本放送報道制作部の平島亜由美氏、そして生活ネット研究所代表取締役所長・ディレクターの羽根由氏です。

「富山の薬売り」にヒントを得たロゴ

 「越中富山幸のこわけ」というブランド名は、富山県の風習である「おすそわけ」から来ています。越中富山の良質な「幸」(=物産品)を「こわけ」のパッケージで、大切な人におすそわけするというわけです。幸は、「贈られる幸せ」の意味もかけています。
 ロゴマークは、富山県の「富」をモチーフにしています。「大きな円は贈る人ともらう人が丸く結ばれる気持ちを、富の形は相互の笑顔と幸せをわかちあう喜びを表現した」とデザインを担当した中山氏は教えてくれました。
 
全体的なトーンは、「富山の薬売り」からの発想です。富山の薬売りと言えば、家庭に医薬品を預けておき、後日、その家庭が使った分だけ代金を回収する「先用後利」の仕組みで有名です。ここには、薬が突然必要になっても困らないように前もってわかちあっておくという、おすそわけ文化の面影が見受けられるとも言われています。ロゴマークは、薬売りが置いていく薬箱の引き出し部分の意匠からヒントを得ているそうで、「どこか懐かしく、温もりを感じるもの」になっています。
 
こうして生まれた統一ブランドに見合う商品を、どのように選定していったのでしょうか。評価のポイントは「おいしさ」「富山らしさ」「オリジナリティ」「企業の対応力」「市場性」の5つです。おいしさのように、個人の好みもあって、絶対的な判断基準を設けるのが難しい指標もあります。侃々諤々の議論の末、富山県総合デザインセンターとしては採用したかった商品も、4人のプロジェクトメンバーには受け入れられなかったこともあったようです。
 また、統一ブランドありきというスタンスには、民間企業の間では温度差もあったようです。既に自社ブランドを確立している、もしくは自社ブランドを構築しようと目論んでいる企業にとって、統一ブランドという縛りは足かせになりかねません。結果的に、実績のある大手企業は参加を見合わせ、まだ知名度が低い中小企業がメーンとなりました。
 
商品化に当たっても、課題は山積みでした。パッケージを新たにするための費用が発生したり、小ロットの袋詰め作業に手間がかかってしまったり・・・。実務的な面で協議を重ね、なんとか2010年秋にテスト販売にこぎ着けました。
 そして今年に入って、2月22日には東京駅に隣接する丸の内ビルディング内で発表会を開催したのです。ここでは商品を発表すると同時に、販売と試食コーナーも設置。多くの来場者で賑わいました。富山県総合デザインセンター所長の大矢寿雄氏は「北陸新幹線の長野-金沢間が2014年の開業を予定している。富山県と首都圏までのアクセスが向上し、地域経済や観光の発展に貢献する期待がある中で、『越中富山幸のこわけ』をたくさんの方々に親しんでいただきたい」と期待を込めて挨拶されていました。
 今まで富山県総合デザインセンターでは、企業と共に商品開発を主体的に行なってきました。しかし、これから県に求められるのは「従来の開発型から、調査、開発、マーケティングから販売促進の一貫した支援だ」と主任研究員の窪氏は言います。いくら富山県のPRになっても、新たなビジネスのプラットフォームが確立されなければ、企業や住民は報われません。「越中富山幸のこわけ」は、従来の開発だけではなく、マーケティングから販売まで県が関わる新しいビジネスモデル、まさに官民一体の戦略的イノベーションへの取り組みです。

地域のアイデンティティを形成する

 現在、「越中富山幸のこわけ」は、富山空港にある「まいどは屋」や東京駅構内にある「ニッコリーナ エキュート東京店」などで取り扱いが始まっています。2011年度の売り上げ目標は、3000万円としています。
 今後の課題について、ロゴマークとパッケージデザインを担当した中山氏に問うたところ、深く考えた後、「富山らしさとは何かを見つめ直し、広めていくこと。富山らしさを創っていかなければいけないと思います」と述べました。商品が地域のアイデンティティになるためには、ただ味やデザインが良いだけではなく、地域をはじめとする社会にとって、望ましい価値基準をつくっていけるオリジナリティが求められます。
 デザインという目に見えるカタチに落とし込むことによって、商品を誰にでも分かりやすく伝えることはできます。食べたらおいしいことも分かります。しかし「富山らしさとは何か」が伝わらないと、地域のアイデンティティは形成されていきません。
 「越中富山幸のこわけ」は、デザインの力で、地域に根ざした価値のシンボルと人々のつながりを生みだそうとする試みです。それは、これからの社会を考えるときの、ひとつの豊かさの提案。長い時間の中での文化的イノベーションの模索なのかもしれません。「『越中富山幸のこわけ』は心を伝えなければいけない」とは能作氏の弁です。
 おすそわけ文化を梃に、県民自らが地域の歴史や文化への共感を深め、富山らしさの再発見を進めながら、その価値を広く県外の人々とも分かち合っていく。そこから人々を引きつける力と活力が生まれれば、富山ならではの価値は大きな力を持つことになります。そして、富山らしさに共感する人々の地域内外の横のつながりから実現できたときこそ、官民によるイノベーションデザインが成功したと言えるでしょう。「越中富山幸のこわけ」は、今まさに産声を上げたばかりです。
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