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「日本自由報道記者クラブ協会」(仮)(自由報道協会)設立趣意書(草案)
http://www.craftbox-jp.com/data/FPA_prospectus110127.pdf


2011年1月27日、小沢一郎氏をゲストに招き初の記者会見を主催 !


【第159回】 2011年1月27日 DIAMOND online上杉隆 [ジャーナリスト]

ついに「自由な言論の場」をつくることにした。

 昨夜、フェアな報道の場を提供するための非営利団体「自由報道協会」(仮称)を立ち上げることを宣言した。

 戦後一貫して、一部のメディアのみが特権の上に胡坐をかき、政府の公的な情報を独占するという歪んだ社会構造にあった日本。

 それは端的に記者クラブの存在によるものではあったが、もはやそうした欺瞞にも限界が訪れたようだ。

 長年、フリーランス、海外メディア、雑誌、最近では、インターネット等の記者たちが交渉を重ね、国民の知る権利を満たすメディアシステムを構築しよう、と呼びかけてきたのだが、伝統的な新聞・テレビなどのマスメディアは結局これを拒否してきた。

 国民の税金で開催されている政府の公的な記者会見を勝手に占拠し、世界に恥ずべくシステムをいまだ続けている「記者クラブ」に、もはや自浄作用はない。

 よって、筆者は多くの有志とともに、「自由な言論の場」を作り、記者会見を主催することにしたのだ。

 それが「自由報道協会」である。

第一回ゲストは小沢一郎氏、協会設立は“非常手段”

 第一回目のゲストは、日本で最初に「記者クラブ」問題を取り上げた政治家であり、また「時の人」でもある小沢一郎氏だ。

 小沢氏は93年以来、記者会見の開放を訴え、それを実践してきた政治家だ。それゆえに既存のメディアからは既得権益を破壊するものとして敵視されることになる。

 第一回目は、敬意を表して、その小沢氏を招き、記者会見を開催する。

これは非常手段である。本来ならば、記者クラブメディア自ら率先してこうした構造を改革していれば済んだ話だったのだ。

 そのことは3年あまりにわたって、本コラムでも訴え続けてきたことでもある。

 さて、あくまで暫定ではあるが「設立趣旨書」を作成した。なによりも、記者クラブ問題に詳しいダイヤモンド・オンラインの読者には読んでいただきたい。

 そこで少し長くなるが、以下にそのまま載せることにする。

第三の開国と報道新時代の到来を宣言!

日本自由報道記者クラブ協会設立趣意書

【日本自由報道記者クラブ協会(仮称)設立趣意書(暫定)】

 第三の開国が叫ばれて久しい。

 にもかかわらず日本政府の動きは鈍い。とりわけマスメディアは旧態依然のシステムを維持することで自ら停滞を選択したままである。

 世界でも類をみない記者クラブシステムはもはや金属疲労をきたし、いまや日本の成長戦略の妨げとさえなっている。

 2009年9月、外務省金融庁から始まった政府の公的な記者会見のオープン化も、その後思ったより進まず、いまなお国民の「知る権利」「情報公開」「公正な報道」などの権利を日々、奪い続けている。

 日本社会がアンシャンレジームの既得権益に絡め取られている間にも、世界は変化している。インターネットを媒体とした第四の波ともいうべき情報通信、とりわけマイクロメディアの津波は、チュニジアで政権をなぎ倒し、エジプトなどのアラブ諸国、さらには全世界をも飲み込もうとしている。

2010年には、イラン、タイ、モルドバでツイッターによるデモが発生し、米国英国でも、選挙結果を左右する役割をソーシャルメディアが果たした。

 そうした情報通信革命は間違いなく日本にも押し寄せている。

 ユーチューブは尖閣ビデオをアップし、ウィキリークスは東京の米大使館の大量の公電を公表しはじめた。ツイッターはすでに日本人の10人に一人以上が利用し、ユーストリームは小沢一郎氏の記者会見をライブで伝えるほとんど唯一の媒体になっている。ビデオニューズドットコムは首相を生出演させることに成功し、ニコニコ動画の政治コンテンツには多くのユーザーが殺到している。

 第一の開国である明治維新、第二の開国である戦後日本の再生はともに社会構造の抜本的な変革から達成した「革命」であった。

 そうした変化こそが開国というのであるならば、現在、世界中で発生しているソーシャルメディア革命こそまさしく第三の開国というべきものである。

 本来、政府の公的な記者会見への参加は一部メディアに限定されるべきものではなく、取材・報道を目的としたすべてのジャーナリスト等に幅広く開放されるべきものである。
報道の多様性と自由な取材機会を保障することは民主主義国家であれば当然に認められる権利である。

 これは日本新聞協会(記者クラブ)の声明「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」にも合致した考え方であり、政府・国民が共有すべき見解である。

 当協会は、こうした観点から、政府等の公的な記者会見を独占的に占有し、同業他社を排除しているすべての「記者クラブ」に、公正な運用と良識ある対応を求める。

 時代は変わろうとしている。

 私たちは国民の求める「知る権利」「情報公開」「公正な報道」に完全に同意し、それらを達成するための“場”を作ることを宣言する。

ジャーナリスト(編集者/カメラマン)であるならば、誰もが公平な取材機会に恵まれ、多様な価値観で報道し、国民の知る権利に応える。そうした切磋琢磨の場を提供することこそが、当協会の設立目的である。

 世界中で普通に行なわれている政府の公的な記者会見の開放こそが、まさしく第三の開国の第一歩であり、日本の民主主義の発展に寄与すると確信している。

「自由報道協会」設立準備会暫定代表 上杉隆

記者クラブメディアの記者も拒まず、運営上、当初は優先順位を!

 日本のメディアが「記者クラブ」というまったくもってつまらない問題で足踏みしている間にも、世界の情報通信環境は革命的な変化を遂げている。

 なにしろアラブ諸国では、ネットメディアを媒体として政府が転覆するほどの時代なのだ。

「自由報道協会」は、記者クラブメディアの記者といえどもその参加を妨げるつもりは一切ない。誰もが個人の資格で参加し、それぞれの価値観でもって報道し、それを国民に届ければいいという認識のもとオープンにする予定だ。ただ、運営上、当初は優先順位をつけざるを得ない。主旨

 そう、つまり、所詮この会は、「場」を提供するだけの役割に過ぎないのである。

 相互主義の立場を無視して無料であるはずの公的情報を独占してきた新聞・テレビはいまや判断を迫られている。選択肢は二つに一つだ。

 ともに手を取り合って、自由で健全な言論空間を作るのか、あるいは、これまでと同じように未来のないガラパゴスに閉じこもってつまらぬ既得権を守り、死を待つだけなのか。

 答えは明白だ。早く一緒に仕事をしようではないか。

最後に、暫定ではあるが、「会則」と、臨時HPのURLを載せておく。賛同していただく方がいらっしゃれば幸いである。

 以下を「日本自由報道記者クラブ協会」(仮名)の設立趣旨とする。

【1】当会の名称は「日本自由報道記者クラブ協会」(略称:自由報道協会/英語名:Free Press Association of Japan)とする。(暫定)。

【2】当会は、日本全国の公的な記者会見の開放を訴えるとともに、記者会見を代行主催する非営利団体にすぎない。いわゆる「メディア」にはならない。

【3】当会は、取材・報道目的であれば、誰もが個人単位で加盟し、記者会見等に参加することを保障する。その際、報道機関・他団体への所属の有無はこれを問わない。

【4】当会は、あらゆる人物の記者会見への招致を妨げることをしない。また誰もが自由に記者会見の開催を求める機会も保障する。

【5】当会は、別途設置される運営委員会(評議会)によって規約等を定め、第三者も加えた運営等を行なう。また、その代表者は互選により選出する。

【6】当会員は、同会内で行われる会見・発表に関する取材については、自由に各種媒体に公表できる。ただし、その報道内容に関する責任においては会員個人がすべてを負うこととする。そのため会員は、同会内で行われた取材活動の公表の際には、匿名ではなく自らの署名等(会が個人特定可能である執筆名を含む)を明記することを義務づける。

【7】当会入会に関しては、今後、評議委員会等で定められる「規約」に準ずる。

【8】当会の運営費の一部は、会員からの会費を当てる。

【9】当会は、その趣旨に賛同する個人・団体に対して広く寄付を募り、その運営・活動費に当てることとする。

【10】当会からの脱会はこれを自由に行うことができる。

【11】こうした趣旨から、当会はすべての会員の権利を保障し、同時に広く国民に開かれた組織であるべきことから、その運営内容、および財務諸表等を全面的に公開する。

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少子化、就職難の今こそ日本の教育を考える!

2011.01.24(Mon)JBプレス 佐田重夫

1.就職難に喘ぐ若者たち!

 景気が思うように回復しない中で若者は就職難に喘いでいる。大学は卒業したものの就職先が見つからず、留年して翌年の就職に再チャレンジする者もいるという。

 少子化と高齢化というダブルパンチが同時に押し寄せる厳しい時代に、日本の将来を担う人材としての若者が職に就けず貴重な時間を浪費する。

 このことは本人はもとより、国家としても大きな損失と言わねばならない。

 雇用環境を見ると今後企業のグローバル化は一層進んでいくだろうし、海外進出企業は既に採用しているが、国内企業も有能な外国人(特に若者)の採用数を増加する傾向にあり、この先景気が回復しても日本の若者にとって簡単に就職環境が改善されるとは思われない。

 加えて日本の若者は、この住みやすい日本(将来どうなるか分からないが)から外に出て新しいことにチャレンジしようという気概が以前に比し低下してきており、グローバル化の流れに全く逆行している。

 お隣の韓国は、国内だけでの努力では発展に限界があるとして、早くから海外に目を向け留学や海外企業への就職を積極的に行い、一流の最先端分野で経験を積み、その一部が母国に帰り国内企業発展の大きな原動力となっている。

 一方、日本はバブルが崩壊してからの20年、かつての成功方程式の幻想や既得権の呪縛から抜け出せず、抜本的な改革の手が打てずに、ずるずるとここまでやって来た感がある。そのため世界の流れから周回遅れという評価もあるくらいだ。

 自衛隊OBである筆者がここで景気回復の手をどうすべきだと述べる資格も能力もないので、政府の景気回復や雇用拡大施策を待つしかないが、その成果が表れるまでは当分時間がかかりそうであるし、このような状況は常態化することも考えられる。

 従ってこのように就職したくてもできない意欲的な若者に対し、無駄に時間を費やさせずに自衛隊を活用して、日本再生の原動力として期待すべく若者世代に不足するものを補って世に送り出す方法はないものだろうかとの提案である。

2.若者の成長環境と特色!

今年の新成人は、平成2(1990)年生まれ、全国で124万人(4年連続過去最低を更新、将来は100万人を切りそうだ)、人口全体に占める割合が初めて1%を割り込み、まさに先細り現象だ。

 つまりこれから成人になる若者は、すべて平成生まれで、大学を卒業する者もやがて平成生まれの人ばかりになる。

 この平成生まれの若者は、バブル崩壊後に生まれ成長したが、豊かさがまだ感じられる中で核家族の一人っ子として大事に(中には甘やかされて?)育てられたが、途中から停滞(衰退?)していく日本の状況も感じつつ成長した。

 高卒者の多くが大学に進学(平成21=2009年度大学・短期大学進学率56%、浪人を含む)しているが、それほどの激しい競争もなく入学でき、大学は学ぶところというよりも受験勉強や親から解放されて自由を楽しむところとの感覚が強い。

 卒業すれば何とかなるとの思いで、単位は卒業に必要な程度で学生生活を過ごしてきた者が多いのではないか。

 もちろん、中には卒業後に目指すべきものをしっかり定めて世界を視野に学問、研究、芸術、スポーツなど熱心に励んでいる学生もいると思うが、その傾向は右下がりである。

 この世代の人は、住み心地のよい時代(ピークは過ぎていたが)に成長したためか平和や繁栄は当然あるものと思い、それが厳しい競争や微妙な力のバランスの上に成り立っているとの実感はあまりない。

 そのために国家安全保障や国の防衛といったことには関心がなく、日本という国家意識や国家への義務感は低く、日本の歴史や文化に対する誇りも薄い。

 生活面で見ると祖父母や多くの兄弟姉妹と共に生活をした者は少なく、食べることの苦労もあまりしていない。

 まして人間としての倫理・道徳観や宗教観となると古臭いと感じるのか教わっていないのか、理解しがたい領域である。

 誰にも迷惑をかけなければ(本人は気づかないだけで周りは迷惑を受けているのであるが)いいではないかとの思いが行動の基準である。難しく言えば、人間が有すべき根源的な戒め(持戒)とは何かの意味が理解できていないのである。

 反面、流行や人間関係には異常なほど敏感に反応する傾向がある。従って楽しいこと、面白いこと、珍しいことには関心が強く、出会う人(先生、友達、先輩)によって善くも悪くも大いに影響を受けやすい。

 つまり関心のあることや人や環境との出会いによって大きく変わる、成長できるということである。

 そんな若者たち、好むと好まざるとにかかわらずこのような平成の時代環境に生まれ育ち、育てられたのである。

 平成の時代環境を内政面で見ると、少子高齢化の頭でっかちの人口構造、巨額な財政赤字という重荷、景気の停滞、それらを解決する目途が立たない不安定な政治情勢が挙げられる。

 一方、外交・防衛の面では、日本周辺が先行き不透明で何が起こるか分からない厳しい安全保障環境、経済面ではグローバル化による新たな発展・流通システムの構築が迫られるなど、日本は厳しい舵取りをしなければならない状況にある。

 これからそんな厳しい環境に対応していかねばならないのであるが、危惧されるのは個人や国家が元来持っていた日本人としての文化・伝統・価値観といったものの骨幹(軸、芯)が崩れかけ、あるいは溶けかけているのではないかと言われ始めていることである。

 だからなのか個人としても国家としても何を根拠(根本理念・思想)にして何をすべきなのか見出せず、重苦しい明るさ(展望)の見えない厚い雲(閉塞感)で日本全体が覆われている感じである。

 従ってせめて今が、自分が、自分の国がよければと、一時的・利己的・内向きな考えになっているように思う。

 もちろん、このような環境の中でも志を世界に向け、自分たちの世代が何とかしなければという意識を有する将来に期待が持てる若者も育っているだろうが、それはまだ一部の人に限られ、世代としての勢いが感じられるところまでは至っていない。

 若者が益々減少(出生者数は昭和24=1949年のピーク時で269万人に対し平成18=2006年は109万人)していく中で、多くの若者が職に就けずにいたらどうなるのか。成長は止まり意欲は低下し、社会での活躍を期待するどころか社会のお荷物になる可能性すらある。

 そうなったら多くの課題を抱える日本は、いったいどうなるのか。

3.若者に対する期待

 それでは、今の時代どんな若者が求められるか。これからの時代を考えるとグローバル化、ハイテク化、ハイスピード化という状況の中で、多くの課題と向き合いこれを解決していける若者の意欲や行動力そして若者世代の勢いに期待したいのである。

 以前、団塊の世代が若者であった時代からはその数が半減し、将来は3分の1近くになりそうである。減少した分だけ質の方は倍増、3倍増してもらわねばならないのである。

 具体的には、グローバル化の中で日本の置かれた状況を世界的視野で観察し、日本の進むべき方向を見定め、その中で世代の役割を十分理解し周り(人、社会、国、世界)を動かして行動できる人が求められる。

 つまり日本の現状をよく理解したうえで、日本(国益)のために汗を惜しまぬ人である。これは、国家が本腰を入れて育成しなければ、実現できないのである。

4.自衛隊の教育機関とその活用!

陸・海・空各自衛隊には自衛官を志願する人に対し必要な基礎的教育を行う機関(新隊員教育隊)がある。

 当初の3カ月間は自衛官候補生(昨年できた制度)として、徳操・使命教育(人間教育)、自衛官共通の基礎的事項を、後半の6カ月間は、自衛官として各職域に必要な基礎的知識・技能を修得する。

 人員は、ピーク時には年間3万人程度教育していたが、最近は、景気低迷による退職者の減少や定数削減が影響して採用数が極めて減少し2000人程度であり、かつての10分の1以下になっている。

 この自衛隊の教育機関を就職待ちの若者に開放し育成に活用したらどうか。つまり就職浪人の若者たちを自衛隊を活用して教育できるようにする制度を法制化・予算化するのである。

 教育の目的は、学校を卒業した平成の若者に対し、将来を期待される日本人として必要な教育(欠落している分野を補うもの)を施し、志と自信を持たせて社会に送り出すことである。

 結果として若い世代に国防の理解者が拡大できるし、少子化が続けば必ずや自衛官の確保も難しくなる。その時にこの制度の修了者がいろいろな面で役に立つものと思う。

 教育要領は、いろいろなことを考慮して決定しなければならないが、一案を提示すると次のようなものである。

 教育人員は、この十数年の教育実績と新隊員(自衛官候補生)の教育所要があるので当面1万人を上限とする。期間は、3カ月コース(基本教育)と6カ月コース(基本教育+部隊での技能教育と実習)2コースを準備する。

 期間については、教育効果があれば更に延長することも考慮する。募集は、厚生労働省文部科学省の協力を得て、各都道県に所在する自衛隊地方協力本部が有する機能を使って自衛官候補生の要領に準じて行う。採用は、この制度の特性から論文と面接を重視する。

 身分は、自衛官として入隊するのが望ましいが、自衛官定員の関係で困難であると見込み、定員別枠の防衛省職員とする。在籍する大学などからの教育委託学生とする方法も考えられる。

 経費については、新隊員教育と同様に教育に必要な経費および隊内での生活経費は国が負担する。手当については、身分により異なるので細部検討する必要がある。

 資格は日本国籍の男女で、年齢は高校卒業年齢の18歳から大学卒業年齢の23歳までとする。

 各コース修了後、希望者は所要の手続きや補備教育を受ければ現役自衛官や予備自衛官の道を選べるようにする。また修了者に対しては、自衛隊のよき理解者として必要な協力関係を結ぶようにする。

 一般企業への就職は国(防衛省厚生労働省が連携)が斡旋する。また修了者の雇用協力企業に対しては、何らかの特別措置を考慮する。

 教育課目は、新隊員教育隊の課目を基本にするが、日本国民としての意識・誇り・役割(使命、義務)の認識を講義と実技・実務で促す教育を重視する。教育内容によっては自衛隊以外から適任の教育者を招致することも考える。

産経新聞 1月24日(月)

大阪府の橋下徹知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」は24日午後、今春の統一地方選挙に向けたマニフェストを発表する。大阪府と大阪市を再編する大阪都を実現させた後、特別区などに中核市並みの権限を付与するほか、府市の二重行政を解消することで、大阪府と大阪市の職員数を約3割削減することなどを盛り込む。府議選、大阪、堺市議選に勝利すれば、それぞれの議会で都制移行を決議し、平成27年春にも大阪都を実現させる-とするスケジュールも明らかにする。

マニフェストによると、5月に府と大阪市、堺市による協議機関を設置し、特別区の財源配分などの検討を開始。住民投票などを経て大阪都に移行し、27年4月に初の特別区長、議員選を行うとしている。ただ、区割りや区議の定数には触れていない。

 一方、生活保護や国民健康保険、介護保険は大阪都が管轄。特別区は各区の判断で大阪市が行っている現行の敬老パスを維持したり、公立中の給食実施、医療費の中学生までの無償化などが可能とした。

 また、大阪市営地下鉄とバスは民営化。JR大阪駅前の北ヤードについては森にすることとし、将来は関西国際空港との結節点とするリニア中央新幹線の新駅建設を提唱している。

 橋下徹知事は「特別区には中核市並みの権限を付与すると明記しており、これぞ、地方分権だと思う。大阪都構想の中身についてはこれでほぼ固まった」と語った。


◇「三都」連携、日本を再生 経済圏、リニアで合体!

2011/01/01 産経新聞

【橋下知事インタビュー】

 4月の統一選を中心に地方選イヤーを迎えた中、大阪府の橋下徹知事は産経新聞の単独インタビューに答え、自身が掲げる「大阪都」に加え、河村たかし名古屋市長らが打ち出す「中京都」と、東京都の日本三大都市圏が協調して発展する「三都構想」が不可欠との考えを提示。将来的に三都を一つの経済圏として、世界的な都市間競争に向かうべきだと主張した。橋下氏は「都構想こそが国家戦略」としており、三都連携を軸に、新たな国のかたちづくりに本格的に乗り出す構えをみせた。

橋下氏が三都構想をもとにした日本再生のビジョンを打ち出したのは初めて。当面、2月の愛知県知事選、名古屋出直し市長選に出馬する大村秀章衆院議員と河村氏を全面支援するとともに、4月の東京都知事選でも構想に理解を示す候補を支援し、各選挙を通じて構想実現のための法改正を政権与党に迫る考えだ。

 ただ、産経新聞が12月、インターネットを通じて行った意識調査では、橋下氏の支持率は76・8%で高水準を維持する一方、大阪都構想実現のため自身が率いる地域政党「大阪維新の会」の政党支持率はわずか3%に低迷、浸透しきれていない様子もうかがえる。

 橋下氏は三都構想について、平成57(2045)年までに東京-大阪間が開通予定のリニア中央新幹線も見据え、「日本のGDPの7割を生み出す都市圏がリニアで約1時間で結ばれ、一つの経済圏になる。東京だけでは日本は引っ張りきれない」と強調。「これまでは国土の狭さが不利だといわれたが、世界でもこれほど経済圏が近接した国はなく、その狭さがチャンス。三大都市圏のトリプルエンジンでいきたい」と語った。

 その上で「三都合わせると有権者約3千万人の声になる。これを民主党が無視すれば、地域主権は虚像以外の何物でもなくなるし、無視できないのではないか」と主張。愛知県知事選や名古屋市長選、東京都知事選でもこうした構想に賛同する候補を支援し、協調して国への働きかけを進める考えを明らかにした。

 三都構想の根底には、世界的な都市間競争があるといい、「今までは、都市部も地方も抱き合わせでやってきたが、都市部の意をくんだ政治勢力と、地方の意をくんだ政治勢力という軸で対立構造になる時代になってくる」と推測。こうした二極による政治グループの再編が必要との見方を示した。

日本的経営を改めて考えてみた(7)

2011.01.24(Mon)JBプレス 前屋毅

大学新卒初任給が54万2000円。「ほぉーっ」と、思わずため息が出てくる額である。

 日本経済団体連合会経団連)が2010年3月に発表している「2009年6月度 定期賃金調査結果」(PDF)によれば大学新卒の標準者賃金が20万9697円というから、間違いなく破格の初任給だ。

 この高額初任給を提示したのは野村ホールディングス(HD)で、2010年8月に発表するや、「太っ腹」とマスコミが大きく取り上げ、ネット上でも大変な盛り上がりをみせた。「これくらい高額なら超氷河期でもがんばる」という新卒予定者もいたかもしれない。

 もちろん、そうそう現実は甘くない。とはいえ、誤報でもない。2011年4月に野村HDに入社が決まっている42名には54万2000円の初任給が約束されているからだ。

 「甘くない」とは、野村HDに入社する大学新卒者全員の初任給が破格なわけではないからだ。今年4月に同社への入社が決まっている大学新卒者は600名近くいるが、大半は先の経団連調査と同じくらいの初任給である。破格の初任給を約束されているのは、600名のうち42名だけでしかない。

世界で戦える人材を欲している野村HD!

 なぜ、42名だけが高額初任給を受け取ることができるのか。それは、それなりの条件をクリアして採用されたからだ。その条件とは、高い専門性と英語能力試験「TOEIC」で860点以上という高いハードルのクリアだ。

 バイトに明け暮れる大学生活を送っていたのでは高い専門性など身につけられるはずがなく、日本的学校教育でしか英語を勉強したことがなければTOEICで860点以上など夢の夢である。

 それだけのハードルをクリアしたからこそ、高額初任給を受け取ることができるのだ。それでも、野村HDでは明らかにしていないが、応募者数は採用者数の7~8倍はあったと言われているので、それだけの条件をクリアする人材が少なからずいたということになる。日本の大学生も捨てたものではない。

 そこまでの初任給を野村HDが提示したのは、グローバル化に照準を合わせているからである。日本の証券会社としては最初に海外進出を果たしたものの、いまだにローカル証券的ポジションから抜け出せていないのが同社の現実だ。

 2008年に経営破綻したリーマン・ブラザーズを買収し、一気に8000人近い外国人を採用したものの、グローバルな戦いを展開していくには、まだまだ人材不足。野村HDとしてグローバル化を進めるためには、外国人の力に頼るだけでなく、その戦略を推し進めていけるだけの力をもった日本人の存在も不可欠となる。そういう日本人の人材となれば、圧倒的に不足しているのだ。

人材をむざむざと外資に奪われないために!

 「大学にいる頃から自分の歩む道を見定めて投資銀行業務や証券業務についての知識を身につけ、ビジネスで通用する実践的な語学力を学んできた学生は少なからずいるんです。しかし、そういう学生は日本の証券会社には入社しない。外資系の投資銀行などに就職してしまうんですよ」と、大手証券会社の幹部はため息まじりに言う。

日本の証券会社に入社したところで、すぐに地方の支店に出されかねない。むしろ当然のように、地方まわりをさせられることになる。そこで待っているのは、足を使っての投資家訪問をする昔ながらの営業である。せっかく身につけた知識や語学力を生かせる可能性は、極めて低い。

 それが外資の投資銀行に就職すれば、知識と語学力を生かした仕事ができるのだ。収入にしても成績によって破格の額が得られる。自信があればあるほど、迷わず外資系を選んで当然なのだ。

 そういう学生を、グローバル化を睨む野村HDはどうしても欲しい。そこで、グローバル部門専属と外資に互する初任給を提示して、優秀なる学生を募集したというわけである。

 しかし、間違ってはいけない。初任給54万円なら10年後には100万円を超えるのかな、などと想像してはいけない。

 初任給54万円でも、1年後に実績を残すことができなければ容赦なく額は下げられる。座るべき席が約束されているわけでもない。そういう約束なのだ。だから、よっぽどの自信がなければ応募できない。

 それでも競争率が8倍くらいもあったということは、それだけの人材がいるということでもある。日本企業は、そういう人材をむざむざと外資に奪われていたわけだ。

社員を会社に引き留めてきた「年功序列」!

 さて、ようやく本題である。なぜ、初任給54万円で多くの人が驚くのか。初任給はこれくらい、という思い込みが強いからにほかならない。

 なぜ、そんな思い込みを多くの人が持つのか。それには日本的経営の三種の神器と言われた「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」の中の1つ、「年功序列」が大いに関係していると思われる。

 賃金における年功序列とは、「年齢(勤続年数)とともに昇給していく」ということだ。それが、かつての日本では普通のことだった。普通だった名残が、冒頭で紹介した経団連の「定期賃金調査結果」である。

 この調査は1953年から経団連が毎年実施してきたもので、年齢ごとの標準賃金が報告されている。2009年6月度の調査結果で言えば、22歳の大学卒で20万9697円、45歳で54万6771円と倍になり、定年の60歳になると61万9273円となっている。

 年齢とともに、確実に賃金は増えている。この調査だけを見ると、年功序列賃金は立派に生きている。「40歳を過ぎたら給料が上がるから我慢しろ」と、上司が部下をたしなめることが普通に行われてもいた。

 年功序列の賃金は、企業に人材を引き留めておくために必要だった。若い頃には低い賃金が年齢を重ねていけば確実に上がると分かっていれば、よほどの理由がない限り辞めようとはしないはずだからだ。

働く側にしても、長く勤めれば賃金は上がるのだから、今を我慢してでも働ける。賃金が上がっていけば将来の生活も安定するだろうから、安心して働ける。生活に不安がなければ、それだけ仕事にも集中できて実力も発揮できるということになる。

 そうして組織は安定する。年功序列の賃金が成り立ってきた背景には、それなりのメリットがあったわけだ。

人件費抑制のために導入された「成果給」「能力給」!

 しかし、その年功序列を続けることが難しくなってきた。年功序列の賃金体系を維持するには、右肩上がりの成長が絶対に必要になるからだ。

 従業員の年齢とともに賃金を上げていくということは、単純に考えれば、年々、人件費が増えることになる。それをカバーするには、企業としての業績も年々、上がっていかなければならないのだ。

 それを可能としていたのは、高度経済成長と言われるほどの成長を日本経済が示していた時である。業績が鰻上りに上がっていっていた状態では、いくら人件費が上昇したところで気にすることはなかったのだ。

 だから年功序列の賃金が維持できた。企業は人材を引き留め、従業員は安心して仕事に専念できた。それが次なる成長につながっていった。いい循環になり、奇蹟の高度成長となっていく。

 しかし、言うまでもなく、それだけの成長はとっくの昔に終わっている。成長が止まれば、増え続ける人件費の負担に企業は耐えられない。

 そこで、にわかに導入され始めたのが「成果給」や「能力給」だった。個人の仕事の成果や能力によって賃金に差をつけよう、というわけだ。欧米、特に米国での賃金体系がこれだというので、「これこそグローバルスタンダードだ、こっちにすることが最先端」という空気が広まった。

 企業側にすれば、成果給や能力給が従業員の力を発揮させる賃金制度かどうかは、二の次にすぎなかった。年功序列の賃金体系を止めることで、無条件に増え続ける人件費の負担から逃れられることが最大のメリットだったのだ。

 成果給や能力給となれば、新入社員でも成果を上げれば破格の賃金を支払わなくてはなくなる。成果を上げる社員が多いほど企業にとってはメリットなわけだから、人件費が増えることは企業にとって喜ばしいことのはずである。

しかし実際は、成果給を導入しても人件費が上昇する企業はほとんどなかった。成果を上げた従業員の賃金は上げるが、それほど成果を上げることができなかった従業員の賃金は下げたからだ。

 成果給の導入が加速した当時、筆者はいくつもの企業に取材したが、どこの担当者も「人件費の総額は横ばいか少し減っているくらい」と誇らしげに答えるのに違和感を覚えたものだ。人件費を節約することこそが手柄、という本音が見えみえだった。

 つまり成果給や能力給の導入は、従業員全体の成果や能力を上げることではなく、企業としての人件費上昇を抑制し、引き下げることが目的だったのだ。

 それがグローバルスタンダードかどうかは疑問である。むしろ人件費抑制のために、グローバルスタンダードが隠れ蓑にされたと言った方がいいような気がする。

若手の実力を認めてあげるシステムが必要!

 では、現実問題として日本の企業は年功序列の賃金体系に戻れるのだろうか。

 言うまでもなく、無理だ。それだけの高度成長がないからである。

 一方で、人件費抑制のためだけの成果給や能力給の導入はバケの皮がはがれつつある。成果や能力を評価する基準が曖昧だと、従業員の不満をあおるだけになっているからだ。

 営業など数字で成果を測れる職種はいいが、例えば経理などは簡単に成果を数値化できない。評価が難しいところで無理に評価しようとすれば、不満が大きくなるのだ。それがいい結果につながらないのは明白でもある。

 ただ、従業員にとって年功序列の賃金体系に戻ることが幸せかといえば、そんなこともない。

 年功序列では、22歳の新卒には22歳としての仕事しか与えられない。いくら実力があっても、横並びの仕事しかやらせてもらえない。それは、それで不満なのだ。

 不満だから、実力をつけてきた人材は、力を発揮できる外資へと流れる。それを食い止めるには、冒頭で紹介した野村HDのような試みが必要になってくる。

 もっと言えば、実力を認めてもらえるのであれば、若者も実力をつけることを真剣に考えるだろう。アルバイトに明け暮れるのではなく、真剣に学校で学ぼうとする姿勢も強まることになるだろう。学校が学校としての機能を取り戻すことにもつながっていくのだ。

 そうして実力をつけた人材を採用することは、もちろん企業にも大きなメリットがある。

 年齢で賃金を決める年功序列の賃金は、評価が簡単だった。というより、評価能力など必要なかった。極端に言えば、評価能力など必要なかったのが、従来の日本型経営だったと言える。

 そこから転じて、実力で採用したり、実力で賃金を決めるとすれば、企業側の評価能力こそが必要であり、重要になる。

 年功序列の賃金体系という旧来の日本的経営が維持できなくなった以上、日本企業は次のステップに進む必要がある。人件費抑制効果を喜んでいるのではなく、従業員の実力を的確に評価し、それに応えることを優先して考えるべきなのだ。

 「グローバルスタンダードだから」ではなく、人材を育て、生かせる賃金システムの構築に真剣に取り組まなければならないところに日本企業は来ているのだ。

エコノミスト、論客たちが徹底討論「2011年 どうなる日本経済」vol.2

2011年01月24日(月)現代ビジネス

岩瀬: いま私、池田さんに勧められた「This time is different」という、過去500年くらいの間に起こった金融危機やデフォルトについて書かれた本を勉強しているんです。

高橋: これから読むの? あの本は面白いですよ。内国債と外国債のデフォルト確率なんて一緒だとか、ギリシャなんて破綻するのが当たり前だ、2年にいっぺん破綻してるんだからとか、そういうことが書いてある。

 そういうデータからいえば、日本のデフォルト確率なんてものすごく低い。G7だってほとんどデフォルトなんてないじゃない。たまにあるけれど、圧倒的に確率は低いですよ。だから日本の財政を語るのに、ギリシャをひきあいに出すのはおかしいのが、よくわかりますよ。

岩瀬: 現時点では日本の財政に問題ないにしても、将来は社会保障が膨らむじゃないですか。高齢化にともなって。そうすると発散していくんでしょうか。

高橋: 社会保障は、はっきりいえば財政と関係ありません。社会保障社会保障で収支相等の原則って数理があるからね。年金数理です。私、これを(財務省で)担当してたからからわかるんだ。高齢化しても給付がすごく少なくなっちゃうので、結論からいえば発散はしません。

岩瀬: 給付がなくなっていくということですか。

高橋: そうそう。少なくなる。もしくは給付を上げたかったらどうなるかといえば、保険料を上げるんですよ。

岩瀬: 本来はそのはずですが、年金にしても医療にしても、公費負担の割合が増えていったり、自己負担を上げようにも上げられないという状況があるじゃないですか。

高橋: それは保険の考えではおかしいでしょ。保険料ではできないから。

岩瀬: そうです。筋としてはそうあるべきです。現状の、高い水準の社会給付を維持したいなら保険料を高くしなければいけないわけですが、それが政治的にできないというのが今の民主党ですよね。

高橋: 実は、政府の中で収支相等の保険数理でやるべきなのに、そうしてない分野が多いんです。例えば、農水関係の共済とか、保険のくせに全然、保険ではやらない。役所の人間がそもそも補助金だって言ってる。そういうのはまずいですよ。

岩瀬: いま基礎年金の半分は国庫負担です。医療も、賦課方式なので現役世代が負担していますが、バランスが悪い。本来であれば、高齢者の中にも、資産を持っている方がいて、28%の人は3000万円以上持っている。それも含めて、あるいは後期高齢者でわけようとしたら姥捨て山だといわれて、そこもできない。本来であれば保険料にすればいいんですが、どんどんバラマキになっている。なぜ改善できないのでしょう。

高橋: 年金もね、すぐ消費税というけど、年金は年金できちんと数理でやっていない。消費税でやりますなんて、言うこと自体が話を混乱させています。世界の中で年金を消費税で賄う国なんてほとんどないですよ。ほとんどの国は保険料です。

 ごくまれに、税方式はあるけれど、あまりない。保険料か税金かというのはトラックレコードを取るか取らないかだからね。それをね、保険料方式で消費税なんていったらめちゃくちゃになりますよ。そういうのに話に乗ってることが問題でしょう。

岩瀬: 保険料は引き上げられないから消費税の方が上がるという話ですね。

金利急上昇の破局シナリオはなぜ起きないのか!

長谷川: ちょっと高橋さんの話で注釈しておきたいんです。トラックレコードとはつまり、払った人の記録ですよ。払った人の記録があるのが保険料で、記録がないのが税方式です。そこで消えた年金のような、払った人の記録がきちんとされてないという問題が起きてしまった。

 本当はどっちでもいいと思うし、これまではトラックレコードがしっかりしているという前提のもと、保険料でやってきたわけだから、今さら税方式に直すとなると大変です。理屈のうえでは税方式が望ましい部分もあるけれど、今から現実的にやろうと思ったら、これはもう・・・。

高橋: 税方式も社会保険方式も、どっちがいいかは議論できない。ただし、税方式から社会保険料方式、あるいはその逆に移行したケースはない。面倒くさいというか、ものすごく間違える

長谷川: 余命3年、つまり3年後に破綻するという話ですが、私が01年に出した本でまさにそういう話を書いたんです。もう日本の財政に余命はほとんどない。だから増税しないともたないといけない。長期金利が上がったら日本経済が破綻する。そう書いた僕の本の副題が『日米破局のシナリオ』でした。

 それを書いたのが9年前で、その時は真面目にそう思ったんだけど、10年経っても破綻しないどころか、長期金利はまだ1.2くらいです。当時よりもっと金利が下がっている状況ですよ。

 だから、破局シナリオというのは10年間、ずっと言われていて、僕も書いたんだけど、起きなかった。僕も借金の方が税収より多いのは異常だし、再建できるならしたほうがいいと思う。でも、それには条件があるんです。

 いまの財政の議論は、たとえば現状の国と地方のあり方については何も触らない。そこから変えていくべきです。ところがいまは、このままで行く、改革はしないということを条件にして財政が大変だという議論になっている。

 本当に大事なことは、今の政府の仕組み、制度の中に山のようにあるムダ、二重行政、三重行政、こういうことに手をつければ、23兆の赤字だけど、相当の部分は改善して、ひょっとしたらプライマリーバランスが黒字になるかもしれない。

デタラメな格付け会社!

山崎: 財政学者と話をすることがあるんですが、彼らの話で神秘的なのは、金利が4%になったら、6%になったら、というのを、どうしてそうなるのかを説明できない。例えば4%や6%の金利で、誰がカネを借りるのかということがわからない。

高橋: 財政学者の研究対象は財務省でしょう。ということは必然的に役所にしっぽをふるポチですからんね(笑)。

山崎: だから「どうして金利が上がるの」と聞くと「それはわかりません」という。にもかかわらず、金利が上がらないという想定をすることは無責任だという。景気がよくなったとかインフレになったとか、そういうことなら金利も上がるでしょうがね。

 国債の格付けでいうと、カネをとって格付けするチンピラみたいな、S&Pとかムーディーズとか、あんなものを信用している人はそうはいないと思う。格付けをされたときに、リスクを大きく見積もらなきゃいけないということはありうるけれど、みんないっぺんに潰すわけにもいかないわけだし、ルールを変えてしまえばいいし。もともと格付けなんていい加減なものだしと思っています。

高橋: いい加減だよね。格付けというのは債権ごとに取るんだけど、私が国債課にいたころ、一回、休債したことがあった。それなのに格付けされちゃって大騒ぎになった。後からS&Pに電話して「休債したんですけど」といったら「そうですか」だって(笑)。

 ついでに、どうやって格付けしてるんだって聞いてみたら、「独自の取材です」という話だった。「だったら予算を調べてくれ」と渡したんだけど、読んでくれなかった。そのレベルなんですよ。

山崎: はっきりいえば、セルサイドの証券会社で、高い金を貰っては通用しないレベルの債権アナリストがやってる。どういう餌にどういう生き物が群がるかということを生態学的に考えると、そういうことになる。

高橋: リーマン・ショックの時だって全然信用できないって話だった。

山崎: 格付けされる側からカネを貰うっていうビジネスを、信用する方がおかしい。

高橋: 新聞も結局、同じなんじゃないの。ジャーナリストには申し訳ないけど。

長谷川: ジャーナリストもそうだし、大学の先生もね、自分の飯の種は財務省だから。その餌をくれる財務省と喧嘩するなんてことはありえない。だから日本の財政学のレベルは酷い。

高橋: 私は役人の時も学者みたいだったから、学会に出ていた。「お前、先物買い」してこいってお金もらうんだけど、その先物買いっていうのは学者をオルグしてこいってことなのね。それで研究費を渡して篭絡する。若い学者だったらポストをあげる。今、偉くなってる先生もいるけど。

 

池田: 竹中さんも、今年、来年に破綻するって話をしているんじゃなくて、3年、5年の長いスパンで見たときに、このまま無責任なことをやってちゃ、まずいんじゃないのと言っている。

高橋: それは正しい。財政破綻なんて簡単でね、ぶっ壊そうとしたらすぐできる。逆にいえば、真面目にやれば再建させるのもできるんです。それを全部増税でやるというのは下の策ですよ。

民主党のお粗末な「成長戦略」!

池田: 竹中さんも増税しろって言ってるわけじゃない。マクロ的に成長率を上げて、経済を成長させないと財政も改善しないと。そういうことをしないで無責任にばら蒔いたらえらいことになりますよと言っている。

高橋: なぜ財政再建をすぐ言うかといえば、資産を売りたくないからですよ。その資産とは天下り先。埋蔵金になんであんなに反対するかというと、天下り先のカネづるを取られちゃ、やだってことなんだよね。例えば借金が1000兆って言うでしょう。でも700兆円が資産なんだよ。

 さらに資産のうち400兆くらいが特殊法人。そこの話を放っておいて、1000兆返すってさ、天下り先を温存するということでしょ。天下り先のお金まで全部増税で面倒見ますなんておかしいじゃない。
そういうことは絶対言わないよ。

岩瀬: 国のバランスシートを改善するというお話と、歳出でムダなものを減らすということ、あとは取り方として保険料で対応するというのがあると思うのですが、一番大事なのは国の成長力、経済の成長を取り戻すということです。国がどこまでできるのかという議論もありますが、そもそもどうすれば経済成長率、企業の成長力は上がるんでしょうか。

池田: 財政の話で、長期的に見ると今のままではまずいけれど、じゃあすぐに増税しましょうというのもまずいと思う。歳出削減も重要ですが、それ以前にマクロ経済を良くすることが根本的に大きいわけですよね。

 ところがここ1年半くらいの民主党政権を見ていると、そういう全体のプログラムがまったくみえなくて、いきあたりばったりにお金をバラ撒いているように思える。成長戦略と称するものが今年の6月に出てきたけど、とても戦略とは言えないお粗末なものしか出てこない。



高橋: だいたいね、役所の成長戦略なんて嘘ですよ。予算組むための話。そもそも、政府に成長させてもらおうって言っても、そんな難しいですよ。役人は喜ぶ。ほとんどできないのはわかってるけど、予算がくるから。あんなのは予算獲得のためだけですよ。そんなことはもう自明の理だから、80年代以降、やってなかった。予算を取りたいのがわかってるからやらなかった。とことが民主党は乗っちゃったね。

長谷川: 成長の源泉はどこかって話なんですよ。成長の源泉は民間部門からしか来ないんです。政府部門からは来ない。問題は政府が何をするかじゃなくて、政府が何をしてはいけないか、なんですよ。

 ところが、今は何をするかという話になって、どんどん成長の源泉である民間部門を侵食している。そこを止めればいい。政府がしてはいけないことを止める。その上で、成長の源泉が民間部門にある。その根本のところを民主党は理解していない。

 菅さんに確認したことがあるけど、成長の源泉がどこにあるのか全く理解していない。彼は雇用が成長を生むといっている。雇用が成長を生むなんて考え方なんだから、成長の源泉がどこにあるかなんてわかってるわけないじゃないですか。

 成長の源泉は民間部門にあるんだから、成長すれば雇用が生まれるんだけど、そこがわかっていない。成長戦略というものは政党としても政治家としてもない。だから高橋さんがおっしゃったように、成長戦略がなんと官の側から出てきちゃう。

いまの政権では雇用慣行の問題に手をつけられない!

高橋: それどころが逆のことはやるんですよ。私と竹中さんの郵政の民営化をひっくり返したでしょ。道路公団の民営化もひっくり返したよね。だって高速道路を無料にするんでしょ。、官がやるよりいいと思って民営化をやったんだけど、その金の卵を全部潰している。それで今度は郵政が債務超過になっちゃうんでしょ、郵便が。ひどいよね。

岩瀬: 民営化しようとしたから悪いみたいな。責任をなすりつける。

長谷川: それでもとに戻しちゃう。やってはいけないこと、どんどん民間に手を出して、成長しないようにしてるんだよね。

岩瀬: その政治的な理由は、郵政は国民新党との連立で、政策金融は財務省の。

高橋: そう。財務省と手を握って、予算つくってあげますから民営化をやめてもとに戻してくださいって話ですよ。官僚と手を握ったらね、こういうのはすごく多くなるよ。官僚は民営化なんて大嫌いなんだから。

山崎 手を握るなんて上品な話じゃなくて、首根っこを押さえられてるってことでしょ。彼らがいなければ何もできない。菅さんなんか、役人がいなければ国際会議で何も話せないし、国会でもろくなことがいえない。おどおどして、調教師である役人の顔色を見る。

岩瀬: 全般的に規制緩和をすすめるべきだという方向だと思うんですが、医療でいえば医師会というのがボトルネックになるし、雇用規制でいえば労組がボトルネックになる。

池田: 僕が今日一番、言おうと思ってたのがその問題です。はっきり言って民主党政権がある限り、ダメだと思うんですよ。なぜなら民主党政権の基盤は労組だから。

 日本経済が20年間ダメだった原因は何か。手を付けてない問題といったら労働市場と雇用慣行の問題しかないんですよ。ほかのことは、例えば郵政にしても、道路公団にしても、手を付けた。雇用問題は手を付けてないところが、派遣法の改正なんて悪いところに持って行こうとしているでしょ。僕はこれが日本の長期低迷の最大の原因だと思う。

高橋: 明らかに労組依存が強いと、公務員改革は絶対できない。もう、みじめなくらいに「脱官僚」って言わなくなったよね。鳩山さんは言ってたけど、菅さんは言わなくなっちゃった。

山崎: はじめは、官僚はバカだなんて言ってたのにね。

高橋: 頼もしいと言い始めた(笑)。これじゃ民が弱くなる。官で成長しようとしてるんでしょ。

長谷川: 成長戦略を霞が関にお願いしたわけだから、要するに成長の源泉は官にあると思ってるんでしょう。

考えている人ほど追い出された経産省

池田: 民主党は初心者だと思うんですよ。高橋さんがいったように、80年代、90年代の政策はやまほどこけてるわけですよね。それを自民党の政治家は知ってるんだけど、民主党は知らない。

高橋: だから役所は喜んでる。経産省なんてもうやることなくなっちゃったのに、成長戦略で表に出られるって。しかも子会社みたいな独法も作ってくれるって。

山崎: 経産省ってパズルのピースでいうとひとつ分、余計なんですよね(笑)。あれがなければある程度収まるのに。

池田:上手いこと言うね(笑)

高橋: 政治家からみればね、何か霞ヶ関にいえば何か政策が出てくるでしょう。マスコミも、成長戦略なんて分厚い資料が出ると記事書くじゃない。

池田: 僕は昔、経産省の外郭団体にいたんで、ちょっと弁護させてもらうと、経産省は90年代には開明的だったんですよ。フレームワーク派と、ターゲティング派というのがあって。

 フレームワーク派というのはこないだまで官房副長官やってた松井孝治さんとかね、ああいう人たちは、官は市場で競争するフレームワークを作る制度設計が仕事で、あとは介入しないで民でやれと、介入を減らそうという提案を霞が関の他の官庁にしていた。

 それが嫌がられて、結局は松井さんも民主党に行った。あとは村上ファンドの村上さんとか、ああいうふうに追い出されちゃった。そういう人が全部出ちゃって、ターゲティング派の人たちが残ったので元に戻っちゃった。それで国家社会主義みたいな人たちが事務次官になって、がんがんターゲティング政策を蘇らせた。

 ただ、省内を見ると、課長補佐以下の若い人たちは、これはまずいんじゃないかと思ってますよ。

 今年、答申のレポートがあって、40~50ページくらいあって、ウェブで話題になったんですが、50ページのうち30ページくらいが良いレポートだった。日本は法人税が高いとか、雇用規制が多くて企業が外に出てる。これをなんとかしないとダメということを、データを元に書いてある。

 だけど、最後の10ページくらいで突然、だからターゲティングポリシーが必要だと脈絡なく出てくる。最後の部分だけ局長に書かされたのかなと思ったんだけど。役所っていうのは、上に行けば行くほどダメになっていく。

 ちゃんとモノを考えてる人はどっかに出されちゃって、何も考えないで政治家とネゴやってる人は上に行く。そういう人たちは昔ながらの予算獲得競争に勝ち抜く人たちが上がってくわけですよ。

長谷川: 簡単に言うと、ターゲティングていうのは天下りのためだから。成長戦略に戻すと、2020年までにGDP650兆円という数字だったわけね。あれは実は霞が関でも、そんなことできるわけないとわかってるわけ。経産省CO2を25%削減して650兆なんてできるわけないと思ってる。財務省も、できないとバカにしてるわけ。じゃあ誰があの数字を出したかというと、実は菅さんだったんですよ。去年の12月に、当時国家戦略相だった菅さんが、鉛筆を舐めながら出した。

山崎: 菅直人が勘でやった(笑)

長谷川: 僕が今年出した本に書いたけど、まさに09年12月に菅直人が国家戦略相として650兆という数字を出したんです。

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