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2011年01月07日(金)現代ビジネス 長谷川幸洋
融和派の山口代表も”徹底抗戦”に転換!
新しい年が明けた。永田町は相変わらず「小沢問題」一色だ。通常国会の召集日さえ決まらぬ事態に、うんざりした思いの人が多いだろう。
民主党の小沢一郎元代表が国会の政治倫理審査会にいつ、出席するのかが焦点なのだが、政倫審に出席したところで、たかだか1時間程度、野党の持ち時間を半分弱の20分程度とみれば、小沢をめぐる複雑な「政治とカネ」の問題が解明できるわけもない。
結局、これは菅直人首相と仙谷由人官房長官の菅・仙谷ラインと小沢の「政策なき権力闘争」である。国民はそういう事情を直観的に分かっているから、ばかばかしくて、シラけてしまうのだ。
「そんな権力争いはどうでもいいから、景気を良くしてくれ」「俺がちゃんと就職できるようにしてくれ」というのが、人々の偽らざる本音である。そんな気持ちに、私も全面的に共感する。
そもそも強制起訴される小沢が国会で何を語ろうと、最終的な決着は法廷でつく。そこで「ポスト小沢問題」に目を向けよう。
予算案であれ法案であれ、国会では数がものを言う。いま民主党と国民新党の連立政権は衆院で計311議席を握っている。欠員1と議長を除く3分の2は318議席であり、社会民主党・市民連合の6を加えても317議席で、法案の再議決に必要な3分の2にぎりぎり届かない。
一方、参院は与党が計109議席。社民・護憲連合の4を加えても113であり、過半数の121には遠く及ばない。そこで鍵を握るのは、だれかという話になる。
公明党は参院で19、衆院で21を確保しているので、もしも公明党が連立与党の提出する法案に賛成すれば、社民・護憲連合と合わせ参院で132となり過半数を超える。社民・護憲連合が反対に回ったとしても、128であり法案可決が可能になる。
というわけで、公明党の態度が決定的に重要になっている。
小沢が離党し新党結成にでも踏み切れば話は別だが、小沢が民主党にとどまっているかぎり、政治とカネ問題がどう展開しようと、国会では基本的に公明党がキャスティングボートを握っている事情に変わりはない。
つまり政局を観察するうえで、もっとも重要なのは小沢問題ではなく公明党問題なのである。いずれ小沢問題が一段落すれば、必ず公明党が焦点になる。
公明党は民主党政権に今後、どう対応するのだろうか。
山口那津男代表は菅政権が発足した当初、参院の議長交代に反対した一件が示すように、ときに菅政権に融和的な姿勢を示してきた(『江田五月参議院議長「続投阻止」に反対した公明党「連立への色気」』)。
これに対して、漆原良男国対委員長は政権に批判的な姿勢である。毎日新聞のインタビューでも、漆原は「闘う野党を明確なスタンスとして出していきたい」と強調している(6日付け朝刊)。
一枚岩として知られる公明党にしては珍しく、民主党政権に対して微妙なニュアンスの違いがあった。ところが、ここへきて"融和派"の山口代表も"徹底抗戦路線"に転換してきたようだ。
たとえば雑誌「潮」2月号で山口はこう述べている。
「国民は、一昨年の政権交代に対して大きな希望を抱いていた。現在はその希望が失望に変わっている」
「昨年十月一日の国会開幕冒頭における所信表明演説で、菅首相は『熟議の国会にしていくように努めます』などと言った。公明党としては望むところだ。ところが、菅政権の側から熟議の対象となるもの、議論の主題がまったく提示されない。つまり、熟議のしようがないのだ」
マニフェストの迷走や政治とカネ問題、菅のリーダーシップの欠如に加えて、相次ぐ閣僚の失言・暴言、尖閣問題、日米、日中、日ロ関係など、昨年の参院選で民主党に突き付けた「レッドカード」の中身は増える一方、と山口は指摘している。
醒めた言い方をすれば、公明党は民主党内閣の支持率が高まれば融和的姿勢になり、支持率が下がれば対決姿勢を強める傾向がある。支持率と政権への姿勢が逆相関関係になっているのだ。
これは必ずしも非難されるべき態度とも言い切れない。なぜなら、内閣支持率が高いのは、それだけ国民が内閣による政策実現を願っている表れとも言えるからだ。
「国民目線の政治を貫く」(前掲山口論文のタイトル)姿勢が公明党の原点であるとすれば、支持率と政権への距離感が逆相関になるのも合理的な選択と言える。
そうだとすると、近い将来、菅内閣の支持率が上がる理由が見当たらない以上、公明党は政権に対して批判的な姿勢を強めこそすれ、弱めるとは考えにくい。
統一地方選の前にチャンス、 もう一つ、重要な要素がある。
4月に行われる統一地方選である。
公明党は地方選をことのほか重視してきた。山口論文でも、神奈川県平塚市の議員から寄せられた情報を国会議員が吸い上げて実現した子宮頸ガンワクチン接種への公費助成の例を紹介している。地方から国会へ縦のネットワークを大事にしているのだ。
とりわけ、4月というタイミングが絶妙だ!
2011年度予算案が(順調にいけば)3月末までに衆院を通過した後、参院で税制改正法案や公債特例法案など予算関連法案の審議がヤマ場にさしかかる時期であるからだ。
ここで公明党が政権に融和的な姿勢を示せば、4月10日の統一地方選第1弾、同24日の第2弾に微妙な影響が及ぶのは避けられない。公明党としては、政権に対決姿勢を強めたまま地方選になだれ込んだほうが有利と考える公算が高いのだ。
その結果、税制改正法案も公債特例法案も参院での可決成立が難しくなる。そうなれば、菅政権は万事休すである。
もしも菅政権が予算関連法案の参院可決と引き換えに内閣総辞職するような事態になれば、公明党は事実上、民主党政権の息の根を止めた形になる。総辞職が地方選前なら勝利は間違いないし、地方選後でも公明党支持率は高まるのではないか。
つまり、公明党は3月末から4月の地方選にかけて、願ってもない絶好のチャンスを迎えるのだ。
小沢問題にうんざりしている「退屈な時間」はまもなく終わる。その後が本当の激動である。
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