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ゲルマン人の抽象的思考法が生み出したイノベーション!

2011.01.04(Tue)JBプレス 伊東乾

 日本と「ドイツ」の関係を本質にさかのぼって考えるなら、「高地ドイツ人」こと中欧諸部族だけではなく「低地ドイツ人」ニーダーラントつまり「阿蘭陀」との400年以上にわたる深い関係が、必然的にクローズアップされてくる。

 この「低地ドイツ人」ことオランダ人たちが日本にもたらした「プロテスタント・ゲルマンテクノロジー」はどのような特徴を持つのか?

 この問題を正面から考えると、現在のEUそして米国、つまり21世紀のグローバルパワーの本質が背景に浮かび上がってくるのである。

イノベーションが可能にしたパワーの逆転! さかのぼって考えてみよう。

 1588年にスペインの無敵艦隊が破れ、世界の制海権は徐々にラテン人=カトリックからゲルマン人=プロテスタントへと移っていく。この力の逆転はなんだったのか?

 「ラテン人」のグローバル勢力圏がどのような広がりを持ったかを考えるには「ラテン」と名のつく地域が地球上どのあたりに存在するかを考えればよい。

 ラテンアメリカは存在してもラテンアフリカという言葉はない。アジアにおけるラテン系地域はフィリピンなどごく一部だ。

 つまり16世紀カトリックテクノロジーの勢力域は、欧州から大西洋を渡って南北アメリカ大陸の東海岸に到達する範囲程度だった、と大まかに考えればよいことになる。

 これに対して17世紀以降のプロテスタントテクノロジー勢力域は、バルト海から遠くアフリカ大陸を迂回する喜望峰航路でインド、中国の東アジア圏に到達し、東の果ての黄金の国「ジパング」まで及ぶのである。

 何がこのような変化を生んだのか?

 もともとオランダはスペインの殖民地である。地中海から大西洋の覇者となったラテン人のカトリックテクノロジーが大本になっているのは間違いない。だが北方プロテスタント地域にはそこにない3つの要素があった。

まず第1に、スカンジナビア半島で産出する豊富な木材など。この地域がバイキングで知られる通り、強力な帆船を建造するうえで必要な材料、資源をプロテスタントは持っていた。

第2に、カトリックが持っていた教義、ドグマによる縛りが、プロテスタントにはなかった。

 コペルニクスが恐れ、ガリレオ・ガリレイが異端裁判を受けたような「地球球体説」をかたくなに否定する社会機構や勢力をプロテスタントは持っていなかった。

 ガリレオやデカルトの書籍は軒並み、自由な科学の国である「オランダ」デン・ハーグなどで出版されている。テクノロジーという決定的な要素をプロテスタントは持っていた。

 そして第3に、カトリック圏にない労働力、人的資源をプロテスタントは持っていた。

 閉鎖的な封建支配の中、愚民化政策によって停滞していたカトリック圏に対して、勤勉を奨励し、新たな知識を吸収しつつ、骨身を惜しまず働く人間という最大の資産を、プロテスタントは持っていた。

 これらによって財貨の集積、つまりは「原初的蓄積」が進んで近代資本主義の体制が着々と準備される。その背景に「プロテスタンティズムの精神」が確固として存在しているのは、社会学創始者の1人、マックス・ヴェーバーの指摘する通りである。

 カトリックからプロテスタントへの制海権とパワーの転換、その背景にはラテンテクノロジーからゲルマンイノベーションへの転換という世界史的に大きな時代の流れが存在しているのである。

唯一超大国アメリカという必然性
 資源と技術、そしてやる気のある人材。この3つが揃っていれば、繁栄が約束されない方がおかしい。

 逆に考えるなら、世界史の表舞台がどのように移動していったかを振り返る時、上の3者のどれが不足していても、時代の覇者とはなれないことがよく分かるだろう。

 例えば今日の産油国は時代のエネルギー源を握っているはずだ。「資源」の最たるものを手にしながら、中東が戦乱に明け暮れるのには様々な背景があり、軽々に論じることはできない。

だが少なくとも「技術」と「人材」という2面から見た時、改善の余地があることだけは間違いがないだろう。

 では新興国はどうか?

 例えばBRICsと総称されるブラジルロシアインド中国。これらの中に資源と技術そして人材の3つが揃った国があるかどうか、ここに私の見解は記さない。

 ただ言えることは、大きく恐れる必要はないということだけだ。各々の国や地域のケースで、何かしら欠ける面が指摘できる可能性があるのではないか?

 とりわけ東アジア圏に注目するなら、中国には埋蔵資源はあっても十分な先端テクノロジーは存在していないと考える。

 1つには、どれだけ改革開放を言い募っても、かつてのローマ教会におけるカトリックのように社会主義のドグマが支配し続けるかぎり、十分に闊達な思考の柔軟性は存在しえないことが指摘できるだろう。

 あるいは人材、とくにそのインセンティブを考えると分かりやすい。かつて西欧で近代科学を推進したプロテスタンティズムは、神の恩寵としてこの世を支配する自然法則を、それ自体の探求に価値を見出して精力的に研究していった歴史がある。

 今日の中国国内、あるいは世界的に活躍する華僑知識層の体質を見るなら、彼らの圧倒的大半が極めて優れた商人であるとともに、現世利益的な損得を離れた抽象的な構造の探求に、必ずしも適性を持っていないこともまた指摘することができるだろう。

 「人材」を言う時、最も重要なのは、小手先の処理能力ではなく各個人の本質的動機、つまりインセンティブだ。

 火薬、紙、印刷術、羅針盤・・・多数の優れたアイデアを見出しながら、大半を大成させることができなかった事実が、中華文化圏とイノベーションの本質的な距離を示しているだろう。

 このような中で、注意すべき創造的なインセンティブは「プロテスタント」的な精神の中にある。

端的に言えば、WASP=「白人・アングロサクソン・プロテスタント」であることがエスタブリッシュメントの条件だった北米、アメリカ合衆国を舞台に、その精神風土の中で活躍する時、ほかの地域にルーツを持つ人材が極めてイノベーション向きなインセンティブを持つことになる。

 欧州を見るなら明らかだろう。なぜドイツやオランダなどプロテスタント圏がユーロを牽引し、スペインやポルトガルが欧州経済の足を引っ張るのか?

 上に上げた3要素「資源」「技術」「人材」がどのように揃っているか、いないか。個別に考えれば優れた人物はあらゆる国に存在する。だが社会はそのようにはできていない。

 地域経済全体の繁栄を占う際に、上の3要素は一種のリトマス試験紙の役割を果たすことにもなる。

「華僑」から「中国アメリカ人」へ:スティーヴンとエリックの場合!

友人のスティーヴン・チューはニューヨーク生まれの「アメリカ人」だ。華僑という生物学的なオリジンとは別に、彼は生まれながらの米国人として教育を受け科学者となった。

 物理学を修めたスティーヴンはその同時代科学他分野への応用を考える。

 「レーザー冷却法」と名づけられる彼が中心となって開発したテクノロジーは原子1つぶ、分子1個を宙に浮かせたまま人間が取り扱うことを可能にした。

 1997年にノーベル物理学賞を受賞したことは、彼にとって一里塚程度のものでしかない。そんなものは、早晩来るのであって、もっと大切な問題は、今何をどう研究し、何を開発していくかという研究開発(R&D)の本質だけだからだ。

 生き物としてのDNAから見れば「生粋の中国人」であるスティーヴンだが、こうした探求への情熱は、一方で華僑らしく現実応用への眼差しを強く持ちながら、他方、北米プロテスタント文化圏の申し子らしく、科学自体に内在的な意味を見出す抽象的な情熱に満ち溢れている。

 

21世紀に入り「若手ノーベル賞受賞経験者」として国際的なサイエンス・アドミニストレーションに関わるようになった。

 ブルックへヴン国立研究所長として生命の分子メカニズムの解明に高いガバナンスの能力を発揮していたスティーヴンは、2008年に米国民主党が選挙を制し、彼の友人でもあったバラク・オバマの政権が成立すると、オバマ内閣のエネルギー長官に就任し「グリーンポリシーズ」の根本政策を策定する。

 尖閣諸島の軋轢や北朝鮮問題などを巡って、「米国と中国の力学」を考えるという時、果たしてどれだけの日本人が「米国側」の科学技術政策再考決定責任者が100%華僑の血を持つ「アメリカ人」であると意識しているだろう?

もっと言うなら、在日米軍の問題を考える際、その「米軍」の最高首脳としてエリック・シンセキという生物学的には100%日本人の血を引く「アメリカ人」が全軍に責任を持って戦略策定しているという事実が、どれほど認識されているか?

 日本社会では何かと、生まれながらの民族のDNAといったことを過剰に評価したがる。

 だがスティーヴン・チューもエリック・シンセキも「アメリカ人」であって、華僑系、あるいは日系であるということは、彼らの自己認識の本質は「アメリカ人である」ということにある。

 1970年に米国籍を取得した南部陽一郎博士が、自己認識としてどの程度「アメリカ人」と思っているかは知らない。

 だが少なくとも法的に考えるなら、ヨウイチロウ・ナンブは完全なる米国市民であって、そこに彼が日本生まれで、生物学的に日本の血を引くという事実は一切の影響を与えることがないのである。

アングロ・サクソンというゲルマン人!

 このように書くなら、私が新米派であり米国的思考を至上に考えるように誤解する人がいるかもしれない。

 しかし、善くも悪くも伝統的な音楽を専門とする自分にとって、たかだか200年ほどの伝統しか持たないアメリカの文化は、層の薄さが痛々しく見えるほどで、アメリカ文化を不当に高く評価するつもりはない。

 唯一超大国としての米国、あるいは英米文化圏の覇権を「アングロ・サクソンの思考は・・・」などとしたり顔で書いている記事を見るのだが、これも私はあまり関心できない。


何と対立させての「アングロ・サクソン」なのか?

 例えば「ラテン」と対立させて?

 あるいは「ドイツ」や「フランス」?

 アングロ族もサクソン族も、いずれもゲルマン人の一部族の名前でしかない。ゲルマンである、ということとアングロ・サクソンであるということは、元来矛盾する要素ではないのだ。

 例えばプロテスタント・オランダのケースと対照する時、英国を特徴づけているのは、ルターの改革にほんの少しだけ遅れて実行された「首長令」の発布、つまり「英国国教会」の成立だろう。

 日本ではこの「英国国教会」という概念があまりよく理解されない。

 端的に言えば、ローマのカトリック教会と絶縁し、中身の大半はカトリックの教義のまま、プロテスタントやゲルマンテクノロジーがもたらす利便を賢く応用することで、新旧両教の良いとこ取りをするのが「東インド会社」とともに世界に広まった英国国教会の特徴だ。

 日本にも英国国教会の分派がある(「日本聖公会」)。例えば「立教大学」や「聖路加病院」は日本聖公会の経営する社会貢献事業だ。

 日野原重明氏はよく知られていても、また彼が聖路加病院の医師であることは認識しても、それが「アングロ・サクソン」いな「カトリック+プロテスタントの良いとこ取りという、一面きわめて現金な発想で運営され、その結果日本社会に完全に定着した病院の医師である、とは受け止められていない。

 なぜこのような事を書いたかと言えば、実は私自身が「英国国教会」の信徒として4代目にあたる日本人として生まれ育ったからだ。

 生まれたのが聖路加病院であるのは言うまでもない。良い面も、また微妙に感心しない面も含め、新旧両キリスト教勢力のオイシイところをつまみ食いすることで、生真面目なプロテスタントのオランダを下し世界に冠たる海運国家を建設したかつての「大英帝国」。

 このあり方もまた、典型的に1つの「ゲルマン人」の身のふり方、ジャーマンつまり「英国人というドイツ民族」の、功利主義的な行動原理を示していると思うのである。

(つづく)

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中央日報日本語版 1月2日(日)

北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長と後継者の金正恩(キム・ジョンウン)労働党中央軍事委副委員長、軍部の核心らがクリスマスイブの24日、異例にも宴会を開いた。 金委員長の最高司令官推戴19周年を迎えてだ。 これまで金正日の最高司令官推戴記念中央報告大会は開かれていたが、宴会は01年に人民武力部が主催して以来9年ぶりだった。 金正日の宴会出席は初めてでもある。 朝鮮中央通信は、李英浩(リ・ヨンホ)軍総参謀長が演説し、宴会出席者らが金委員長の「健康」のために乾杯をした、と伝えた。

専門家らは「5周年の倍数でないにもかかわらず金正日親子が出席して宴会が開かれた点は注目される」と話す。 北朝鮮の天安(チョンアン)艦爆沈(3月26日)と延坪島(ヨンピョンド)攻撃(11月23日)、ウラン濃縮施設の公開、金正恩(キム・ジョンウン)党中央軍事委副委員長の就任など、今年1年間の活動を総決算する意味があるということだ。 政府関係者は「この日の宴会は通常兵器を通した対南攻撃と核能力誇示という2つのトラックを一度に稼働した北朝鮮軍部の自祝宴であり、来年初めの金正日の本格的な核ゲームを控えて開いた団結大会の性格が強い」と話した。

金正日の核ゲームはすでに始まった。 天安艦と延坪島攻撃に隠れているだけだ。 6月25日の労働新聞の論評が火ぶたを切った。 天安艦事件を「南朝鮮の特大型謀略劇」とし、「朝鮮半島はいつでも核戦争が起こりうる一触即発の超緊張状態」と主張した。 核戦争に言及して脅威を与えたのだ。 7月24日、国防委員会はさらに強力なメッセージを投じた。 翌日予定された韓米連合訓練の乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン(UFG)を非難し、「核抑制力に基づいた報復聖戦を始める」と述べた。 8月24日、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長は「核抑制力に基づいた報復聖戦を始める」と繰り返した。

延坪島攻撃後はさらに露骨になった。 12月13日の労働新聞は論評で、韓国軍の西海(ソヘ、黄海)海上射撃訓練計画に対し、「朝鮮半島に核戦争の火の雲を呼ぶ昼夜の妄動」と表現した。 続いて18日には祖国平和統一委員会(祖平統)が運営するウェブサイト「わが民族同士」の論評で、「この地に戦争が起これば、朝鮮戦争とは比較にならない核惨禍が民族の頭上を覆うことになる」と脅迫した。 23日、金永春(キム・ヨンチュン)人民武力部長(韓国の国防部長官に相当)は「わが革命武力は核抑制力に対するわれわれ式の聖戦を開始する万端の準備を整えている」と述べた。 聖戦と核抑制力を結合するということだ。

金正日の核ゲームは延坪島攻撃の半月前から予告されていた。 2004年1月から6度も訪朝した核科学者ジグフリード・ヘッカー米スタンフォード大国際安保協力センター所長を通してだ。 北朝鮮はヘッカー博士の訪朝期間(11月9-13日)にその間開発を否定してきたウラン濃縮施設現場を公開した。 ヘッカー博士が「驚いた(stunned)」というほどウラン濃縮施設の統制室は完璧だった。 ウランを濃縮する遠心分離機2000基が連結されていた。 六フッ化ウランを入れて1年稼働すれば、核兵器1個分量の高濃縮ウランを得られると推算される。

米国はこの施設の技術水準がイランより進んでいるという分析を出した(ニューヨークタイムズ)。 北朝鮮はヘッカー博士とともにロバート・カーリン・スタンフォード大客員研究員も同時に招待した。 カーリン博士は「2000年に締結した朝米コミュニケが解決方法」という北朝鮮高官の話を外部世界に伝えた。 趙明禄(チョ・ミョンロク)国防委第1副委員長がワシントンを訪問し、オルブライト国務長官に会って締結した朝米コミュニケの核心は「朝米敵対関係の終息」だ。

北朝鮮は16-21日、民主党の対北朝鮮パイプであるリチャードソン・ニューメキシコ州知事を平壌(ピョンヤン)に呼んだ。 リチャードソン知事を通して「国際原子力機関(IAEA)視察団復帰の受け入れ」「核燃料棒国外搬出交渉の用意」などの融和的な案を出した。 要するに軍部を通しては従来の核兵器使用で脅威を与え、ヘッカー博士には新しい核能力を誇示し、リチャードソン知事を通しては対米核交渉の可能性を流したのだ。 核カードを前面に出すという信号とみられる。

2010年の北朝鮮の核ゲームは外形上1994年初めと似ている。 当時、北朝鮮は5MWe原子炉の核燃料棒封印除去をめぐるIAEA査察問題で米国と対立した。 南北特使交換のための実務会談の朴英洙(パク・ヨンス)北側代表は「ソウルはここから遠くない。 戦争が起きればソウルは火の海になるだろう」と述べ、韓半島危機はピークに達した。 金日成(キム・イルソン)主席はジミー・カーター元大統領を招待し、朝米高官級会談と南北首脳会談カードを通して主導権を握っていった。 CNNのアンカーまでが同行したリチャードソン知事の訪朝は当時の雰囲気を連想させる。 もちろん当時は北朝鮮が本格的な核兵器開発の門の入口を越えられなかった時だ。 しかし今は2度の核実験を実施し、核兵器の小型化と核搭載ミサイルの開発も行った可能性が高い。

キム・テウ韓国国防研究院責任研究員は「北朝鮮は韓国に対して通常兵器で挑発し、核恐怖まで助長しながら、韓国社会に極度に委縮させるゲームをしている」と述べた。 ある専門家は「核には核で対応すべきであり、韓国内から撤収した戦術核武器を持ってくるべきだという声が高まるだろう」とし「韓米国防当局の核拡大抑止委員会で、具体的な核の傘対策が用意されなければならない」と強調した。

F-22
http://ja.wikipedia.org/wiki/F-22_(%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F)

中央日報日本語版 1月2日(日)

昨年11月28日~12月1日に米空母ジョージ・ワシントンが参加した西海(ソヘ、黄海)での韓米合同訓練の期間を前後し、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が9日間にわたり地下バンカーに隠遁していたことがわかった。軍関係者は、「訓練に参加した米空軍のステルス機F-22ラプターに対する恐怖のために隠れていたとみている」と説明した。別の関係者は、「合同訓練の際にF-22が空中給油機とともに韓半島上空で待機していたと承知している。北朝鮮がミグ戦闘機を動員して挑発する場合、これを攻撃するのが任務だった」と話した。相手になるものがなく“空の支配者”(Air Dominance Fighter)と呼ばれるF-22は、グアムやアラスカ、日本・嘉手納の米空軍基地から発進する。

F-22が浸透する場合、現在の北朝鮮の通常のレーダーでは近くに接近しなければ探知できない。一般の航空機を400キロメートルの距離で探知する通常レーダーはmF-22が20~30キロメートルの距離に接近するまで探知できない。F-22の全面レーダー反射断面積(RCS)は鳥よりはるかに小さくて虫水準と比喩されている。防空網で対応する時間はないということだ。

米ステルス機の北朝鮮領空浸透と関連し、2004年に「文芸春秋」、2007年に「米空軍タイムズ」(Airforce Times)に、「F-117(旧型ステルス機)が夜間に北朝鮮領空に浸透し、金正日の20カ所余りの別荘のうち“彼がいると推定される”所を探して急降下し対応態勢を調べる作戦を行った」という報道がのせられた。ステルス第1世代機だったF-117は2008年に退役し、F-22ラプターに置き換えられた。金委員長はこういう状況に脅威を感じ隠れたものと軍はみている。金正日は脳卒中による健康不安説が指摘された2008年に80日以上、イラク戦争前後び2003年2~4月にも49日間隠遁した。

隠遁場所に対して軍関係者は「明らかにすることはできないが、地下バンカーであることは明らかだ」とした。軍情報系統に従事したある予備役将軍は「金正日の動きは24時間衛星で監視し主に彼の特別列車に集中している。動きがあいまいならば盗聴やヒューミット(人を通じた情報収集)など各種ソースを通じて追跡を進めるが、大部分が把握される」と話した。そのためソースが露出する危険性があり正確な隠遁場所は明らかにできないと説明した。金正日はたいてい20カ所余りの特閣と呼ばれる別荘を回ったり、白頭山(ペクトゥサン)の最高司令部最後方指揮所に滞在しているとされる。特閣には有事の際に待避可能な深い地下バンカーがあり、平壌(ピョンヤン)の指揮所には順安飛行場までつながる地下鉄があると脱北者らは話している。



*統一部「金正日に背を向けた北朝鮮住民を包容」!


統一部が29日、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)政権と住民を分離して対応する対北朝鮮政策を推進する意向を明らかにした。李明博(イ・ミョンバク)大統領に来年度の業務計画を報告する席でだ。統一部は来年の対北朝鮮政策4大推進戦略のひとつで、「住民優先接近」を挙げた。また、民生優先を非核平和・対外開放とともに3大北朝鮮変化構想に上げた。人道的支援の場合にも透明性を強化して、軍部や労働党幹部でなく北朝鮮住民に直接支援が届くようにするというものだ。これには北朝鮮の住民が過去とは違ってきたという判断が作用したという。資本主義に憧れ、金正日・金正恩(キム・ジョンウン)体制に批判的に背を向けた住民を包容することにより変化を誘導するという戦略という話だ。

代わりに金正日政権に対しては厳格なものさしを適用することにした。推進戦略に上がっている一貫性ある対北朝鮮政策持続と相互主義強化項目がそれだ。統一部は北朝鮮当局の責任性と真正性を引き出すために哨戒艦挑発に対する政府の5・24対応措置を持続することにした。また、核心懸案解決のためしっかりとした南北対話推進とともに北朝鮮の偽装平和攻勢と誹謗中傷には積極的に対応すると明らかにした。

来年の業務計画で統一部は北朝鮮住民の人権問題も積極的に取り扱う意向を明らかにした。 北朝鮮人権法を早急に制定し、人権財団を設立して北朝鮮の人権の実態を調査するというものだ。金正日批判ビラを北朝鮮にばら撒き対北朝鮮放送を運営してきた民間団体の活動も支援する。統一部がこのように攻勢的な対北朝鮮政策推進方案を提示したことは異例だ。

その一方で統一部は上半期中に統一財源調達案をまとめると明らかにするなど、南北統一に対する対応の必要性も強調した。李明博大統領も業務報告の席で「延坪島(ヨンピョンド)や哨戒艦事態を見ながら“われわれの統一はとても遠い話ではない”と考える」と話した。北朝鮮の軍事挑発に触発された南北緊張状況で統一の可能性を言及したのだ。一部ではこれに対し政府が吸収統一側に対北朝鮮政策を修正・旋回したことという主張も出ている。だが、政府当局者は、「政府政策の変化ではなく統一に対するパラダイム(認識の枠組み)の転換とみるべき」と話した。

統一部の玄仁沢(ヒョン・インテク)長官は業務報告直後に記者らと会い「南北対話のためには北朝鮮の責任性と真正性が非常に必要だ」と明らかにした。また、南北首脳会談の可能性に対しては、「今はそれを考慮したり考えるときではない」と話した。

RQ-4 グローバルホーク
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%AF


読売新聞 12月30日

防衛省は29日、無人偵察機の導入の可否を判断するため、2011年度から本格的な調査・研究に着手する方針を固めた。

 最新鋭の高高度無人偵察機「グローバルホーク(GH)」を活用する米軍に自衛隊幹部らを派遣して、運用や維持・整備の現状などを調べる。日本周辺海域で活動を活発化させる中国海軍の動向や朝鮮半島の警戒・監視活動の強化を目指すもので、費用対効果なども含め、導入を視野に検討する。

 無人機は、滞空時間の長さなどの利点があることに加え、紛争地域で犠牲者が出ないため、米軍、英軍などがすでにイラクなどで積極活用している。ドイツ軍も近く導入予定だ。

 日本政府も、17日に閣議決定した11年度以降の次期中期防衛力整備計画(中期防)で、「無人機を含む新たな各種技術動向等を踏まえ、広域における総合的な警戒監視態勢の在り方について検討する」と明記した。防衛省は計画最終年度の15年度までに導入の可否を判断する方針だ。

 米空軍のGHは、全長約14・5メートル、翼幅約40メートルの軍用機で、自衛隊にとってこれほど規模の大きな無人機導入は初めてとなる。センサー類を除く機体本体は1機約25億円。防衛省幹部によると、日本全域の警戒・監視のカバーには3機が必要だという。司令部機能を持つ地上施設の整備などを行うと、「初期費用の総額は数百億円に上る」(防衛省幹部)といい、予算面の検討が課題となっている。防衛省筋によると、無人のため、配備後の費用は漸減していくという。

 無人機導入をめぐっては、自衛隊内で人員削減を警戒する向きもある。現在、日本周辺の警戒・監視活動は有人機の海上自衛隊P3C哨戒機などが行っているが、「無人機になればその分、操縦やシステム運用の人員が減らされるのではないか」(空自関係者)との見方があるためだ。

 ◆無人偵察機=要員が乗らない偵察機。米空軍の最新鋭のグローバルホークの場合、旅客機の巡航高度よりはるかに高い上空約1万8000メートルを飛び、高性能センサーやレーダーで最大半径約550キロ・メートルの偵察・監視を行える。

 乗員交代が不要なため、30時間以上滞空でき、1回の任務で幅広い地域をカバーできる。今年1月のハイチ大地震では、被害状況の把握などでも活躍した。

日本の脅威はテロより中国・北朝鮮!


2010年12月22日(水)日経ビジネス 孫崎享

国内の新聞は「選択と集中」を評価した!

 新たな防衛大綱が12月17日、閣議決定された。当面、この防衛大綱は新聞報道の解説に従って理解される。

 朝日新聞の見出しは「動的防衛力 照準は」、「監視能力生かし即応」、「中国の台頭警戒」などである。社説では「中国の軍事動向への警戒心を色濃くにじませるとともに、脅威には軍事力で対応するというメッセージを前面に打ち出した」「“基盤的防衛力”に代えて、“動的防衛力”という概念を取り入れた」としている。

 日本経済新聞は「新防衛大綱、戦略を転換」「脅威にらみ“選択と集中”」「中国けん制鮮明」「海空を重視」「南西シフト」とした。

 防衛大綱のポイントとして次を紹介した。


・ “動的防衛力”を構築
・ 朝鮮半島で軍事挑発を繰り返す北朝鮮の動向は喫緊かつ重大な不安定要因
・ 従来の基盤的防衛力構想によらず、即応性、機動性、柔軟性、持続性、多目的性をそなえた動的防衛力を構築
・ 日米同盟は必要不可欠
・ 島しょ部に必要最小限の部隊配置
とした。

 18日付日本経済新聞は1面に秋田浩之編集委員の解説を掲載した。「“選択と集中”。経営の世界では、資金や人材をこれと思う重点部門に集中し、成果を高めようとする戦略をこう呼ぶ。(中略)新たな防衛大綱にも同じ言葉が当てはまる。(中略)そこで重点をおいたのが、中国と(中略)北朝鮮だ」。

 「“動的防衛力”という看板を掲げ(中略)直面する脅威に優先度をつけ(た)。(中略)手薄だった南西諸島や島しょ部の防衛強化を掲げたのは、中国を意識した布陣だ。一方、北朝鮮のミサイルを念頭に(中略)イージス艦を6隻に増やす」。

 簡潔、要領を得た解説である。特に出だし「“選択と集中”」と切れ味よく文
章を切り出したのに感心した。もっとも、朝日新聞を見ると種明かしが出ている。「仙石由人官房長官は17日の会見で、新防衛大綱のポイントの一つに“選択と集中”を挙げ(た)」。


海外メディアは大綱の主眼を「中国の脅威への対抗」と報道!

 海外のメディアはどう評価しているか。

 米軍の準機関紙である星条新聞は「日本、防衛政策を中国、北朝鮮にシフト(Japan shifts defense strategy toward N. Korea, China)」の標題を掲げ「冷戦時の戦略を動的防衛力に置き換え、安全保障の焦点をロシアから北朝鮮・中国にシフト。米・韓・豪・印との地域的安全保障の結びつき強化を呼びかけ。新たに6隻の潜水艦と2隻のイージス艦を獲得。米国は日本、韓国に日韓合同演習を呼びかけているが両国ともこれを受け入れていない。マレン統合参謀本部議長は20世紀の問題を越えてこの地域をより守る方向に動くべきだと強要した。日韓連合をつくるべきだとの米国の努力は効果をもたらしていない」と報じた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「中国に焦点を絞り直し(China warning raised in new defense policy / Pushes shifting SDF presence to Nansei isles)」の標題で報じ、ファイナンシャル・タイムズ紙は「日本、中国不安に備え軍を再編(Japan retools military to face China fears)」の標題で「日本は勃興する中国の力に脅かされる南方の島々の防衛を強化するため、その軍事力の焦点を変える歴史的指示を行った」と報じた。

 ニューヨーク・タイムズ紙も「日本、中国に対抗する防衛政策を発表(Japan Announces Defense Policy to Counter China)と報じた。これらの報道はいずれも新防衛大綱の最大の眼目を中国の脅威に対抗するためとしている。

新防衛大綱には「戦略」がない!

 これまで、日本の新聞、および海外で新聞の報道ぶりを見た。今後日本の新防衛大綱が論ぜられるとき、こうした報道を基礎に論ぜられるからである。

 では、私個人はどう見るか。最大の問題点は新防衛大綱における戦略の欠如である。あるいは戦略を考える弱体さである。

 防衛大綱は日本における国防政策の基本的指針を決定するものである。我が国をどう守るか、その基本を示すべきだ。では、この重要な課題を、世界各国と同様の高いレベルで考察しているか。

 私は著書『日本人のための戦略的思考入門』で戦略を「人、組織が死活的に重要だと思うことに目標を明確に認識する」と定義し、戦略を考えるのに最も優れた枠組みはマクナマラ戦略であるとしてこれを紹介した。マクナマラは第二次大戦時代空軍に入り、大量の軍用機を管理した後、米国自動車会社フォードに入社し、社長に就任した。その後ケネディ大統領時代に国防長官に登用された。マクナマラは軍、企業での経験を生かして戦略を生み出した。

 マクナマラは戦略を次のステップに分類した。
第1段階、外的環境の把握(将来環境の変化)、自己の能力の把握
第2段階 課題の把握(組織生存のために何が課題か検討)
第3段階 目標設定、代替戦略の提示、戦略比較、選択
第4段階 任務別計画策定、資源配分、スケジュール

 新防衛大綱の最大特色の一つが“動的防衛力”の採用である。「従来の基盤的防衛力構想に頼らず、即応性、機動性、柔軟性、持続性、多目的性をそなえた動的防衛力を構築」としている。

 基盤的防衛力構想の骨子は「わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となってわが国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」というものである。私は日経ビジネスオンラインの10月20日付のコラム「新防衛大綱は自主防衛の重要性を意識せよ」において「基盤的防衛力構想」を脱するべきことを説いた。確かに新防衛大綱は「基盤的防衛力構想」を捨てた。

 しかし、私は同時に、(1)敵が誰か、(2)いかなる手段で攻撃してくるか、(3)いかなる防衛手段があるかを考察した形をとって新防衛大綱を作成するべきであることを主張した。

 即応性、機動性、柔軟性、持続性、多目的性をそなえた動的防衛力はその要件を満たしているか。上のマクナマラ戦略を見ていただきたい。動的防衛力はまさに「第4段階 任務別計画策定、資源配分、スケジュール」の範疇である。

 私は『日本人のための戦略的思考入門』の中で「ジョンズ・ホプキンズ高等国際研究大学院が第一次大戦から第二次大戦までの期間と第二次大戦間で、10数名の学生(米軍の佐官クラスを含む)とともに行った評価で戦術、作戦では各国別に差はない。日本はトップクラスにいる。しかし、戦略になると、極端に低くなる。前者の期間では10点満点中の3点、後者の期間では2点である」ことを紹介した。「基盤的防衛力構想」に代わる戦略構想は「“動的防衛力」と言われてもただ驚くだけである。これは運用方針であって戦略ではない。日本の安全保障関係者の戦略的思考の欠如を改めて知らされた。


何が脅威か、明示すべき!

 新防衛大綱は「防衛力の在り方」において次の項目を列挙している。
・情報収集などによる情報優位の確保
・周辺海空域に関して侵害行為に実効的に対応
・島嶼部の防衛
・弾道ミサイルに実効的に対応

さて、戦略を「人、組織が死活的に重要だと思うことに目標を明確に認識する」として、日本に対する死活的脅威は何であろうか。

 中国に関しては核兵器であり、弾道ミサイル、クルーズミサイル攻撃である。

 11月4日付ワシントン・ポスト紙は「中国ミサイルは米国基地を破壊できる(Chinese missiles can ravage U.S. bases)」との見出しの記事で「80の中・短弾道弾、350のクルーズ・ミサイルで在日米軍基地を破壊できる」と報道した。クルーズ・ミサイルは地形を自ら照合しながら、レーダーによる捕捉が困難な低高度を飛ぶことができるとされている。この記事では対象は米軍基地であるが当然日本のどこでも対象として破壊できる。現在中国は通常兵器でも、これだけの対日攻撃が可能である。

 では北朝鮮はどうか。北朝鮮は射程約1000~1300km で日本全土を射程に収めるノドンを有し、配備数は150-320基と言われている。これが日本にとって最大の脅威である。それは中国の潜水艦などの海軍力よりはるかに日本にとって脅威である。

 なぜその脅威を詳細に述べないのか。「我が国を取り巻く安全保障環境」の分析の中で、長々と述べているテロなどのグローバルな脅威よりはるかに重要である。あたかもこれに対抗するにミサイル防衛が役立つように記述しているが、日本の政治・経済・社会の中心地が攻撃対象地になったときには全く無力である。仮にミサイル防衛システムの構築が可能となる日が到来するとしても、それははるか将来の話である。この防衛大綱が対象とする期間中に、実効性のあるミサイル防衛システムはとても構築できない。

 こうした中国の短距離弾道弾やクルーズ・ミサイル、さらには北朝鮮のテポドンに対抗する唯一の答えとして、新新防衛大綱は「日米関係の強化」に言及しているだけである。確かに、米国は北朝鮮には抑止として有効である。しかし相手が中国になり、80の中・短弾道弾、350のクルーズ・ミサイルにどう対応するかのなると、術がない。


日米同盟は必要、ただし「同盟強化」を唱えるだけでは不十分!

 かつて、キッシンジャーは、代表的著書『核兵器と外交政策』の中で、核の傘はないと主張した。キッシンジャーは、ニクソン、フォード両大統領の国務長官と国家安全保障問題担当補佐官を務めた。米国内で外交・安全保障の第一人者とみなされてきた人物である。

・ 全面戦争という破局に直面したとき、ヨーロッパといえども、全面戦争に値すると(米国の中で)誰が確信しうるか、米国大統領は西ヨーロッパと米国の都市50と引き替えにするだろうか
・ 西半球以外の地域は争う価値がないように見えてくる危険がある

 また1986年6月25日付読売新聞1面トップは「日欧の核の傘は幻想」「ターナー元CIA長官と会談」「対ソ核報復を否定。米本土攻撃時に限る」の標題の下、次の報道を行った。

 「軍事戦略に精通しているターナー前CIA長官はインタビューで核の傘問題について、アメリカが日本や欧州のためにソ連に向けて核を発射すると思うのは幻想であると言明した。我々は米本土の核を使って欧州を防衛する考えはない。アメリカの大統領が誰であれ、ワルシャワ機構軍が侵攻してきたからといって、モスクワに核で攻撃することはありえない。そうすればワシントンやニューヨークが廃墟になる」。

 「同様に日本の防衛のために核ミサイルを米国本土から発射することはありえない。我々はワシントンを破壊してまで同盟国を守る考えはない。アメリカが結んできた如何なる防衛条約も核使用に言及したものはない。日本に対しても有事の時には助けるだろうが、核兵器は使用しない」。

 こうした問題に解を出してこそ、日本の防衛大綱になりうる。「日米同盟強化」を唱えれば、すべて解決するとするのはあまりにも教条的すぎる。

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