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エジプト情勢を報じさせない中国~中国株式会社の研究!
2011.02.04(Fri)JBプレス 宮家邦彦
北京からの報道によれば、最近中国当局がエジプト反政府デモの「悪影響を警戒」し、関連情報の「検閲・遮断」を強化しつつあるらしい。また、今回のカイロ「タハリール広場」の騒乱を1989年の「天安門事件」と対比する論調も少なくない。
確かに、エジプトは中国に似た一党独裁国家だ。だが、カイロと北京にそれぞれ数年間住んだ経験のある筆者としては、このタハリールと天安門、「同じようで、どこか違うんだよなぁ」と感じてしまう。今回はこの「違和感」についてお話ししたい。
どちらも統治の難しい国!
エジプト人と中国人はとてもよく似ている。両者に自己中心主義、人間不信、面子尊重、プライドの高さ、責任転嫁という共通の国民性があることは以前ご説明した通りであり、ここでは繰り返さない。
2000年秋北京に赴任した際も、人々が信号を無視して車道を横切る様から、家族の絆の強さ、面子を失った時の逆上の仕方まで、カイロにそっくりだと感じた。
女房には「北京ではエジプト人が中国語を話していると思え」と説明したほどだ。
どちらも古代文明の発祥地であり、植民地支配を受けた苦い過去がある。長期の一党独裁と権力者の腐敗、経済的繁栄の陰に若年失業もある。庶民の静かな「怒り」が水面下で煮えくり返っているところまで、両国は実によく似ている。
このような国家を統治するのは容易ではない。勝手なことを言うばかりで協調性のない国民にはある程度の監視と統制が必要なのだろうか。少しでも手を緩めれば、国家の統一と安定が失われると権力者は信じてしまうのだろう。
その意味で中国当局がエジプト関連報道を警戒するのは当然であり、それ自体驚きではない。特に、フェースブック(Facebook)とツイッター(Twitter)がエジプトの反政府勢力動員に果たした役割の大きさを考えれば、中国共産党の懸念も全く理解できないわけではない。
エジプト軍と人民解放軍
それでも筆者が違和感を感じたのは、「エジプトは『天安門事件』を再現しない・・・中国人社会に波紋」という記事だった。特に気になった箇所を引用してみたい。
●(エジプト)軍報道官が31日「市民が平和的に行動する限り、軍は発砲しない」と表明したことで、中国人社会では1989年に発生した「天安門事件」と比較する声が改めて高まり始めた。
●香港で運営されるサイト上では、中国人によると見られる「エジプトと中国は違う」と指摘するブログも見られるようになった。
●また、中国国外に本拠を置く反政府系メディア「希望之声」も、「1989年の中国解放軍とは異なり、エジプト軍はデモ参加者に発砲しない方法を選択した」などとする記事を発表した。
確かに、エジプト軍は2月4日現在、デモ参加者に「発砲」はしていない。恐らく、軍は、最後の最後まで、エジプト民衆に銃を向けることを躊躇すると思う。しかし、その理由は一部の中国人が考えるほど単純ではない。
少なくとも、「民衆の味方」であるエジプト軍が「文民統制」に服している「良い軍隊」であるのに対し、「民衆に発砲した」人民解放軍は「悪い軍隊」だったなどと考えるなら、それは大きな間違いである。
エジプト軍は権力そのもの!
筆者がアラビア語研修でカイロに住んだのは、1981年のサダト暗殺直前の2年間だった。当時から、エジプト政治は事実上「軍」が支配してきており、エジプトに真の意味での「シビリアンコントロール」は存在しない。
1952年のクーデター以来、軍は常に「権力」そのものであり、フスニー・ムバーラク(ムバラク)大統領はもちろんのこと、ガマール・アブドン・ナースィル(ナセル)大統領も、アンワル・アッ・サーダート(サダト)大統領もすべて軍人だった。
1970年、アラブ民族主義を標榜したナセルが急死。大統領に就任したサダトはそれまでの社会主義的政策を転換し、1978年以降はイスラエルと単独和平を進めた。1981年、サダトはエジプト軍兵士により暗殺され、爾来30年、ムバラクが大統領として君臨する。
このように、エジプト軍は過去60年にわたって圧倒的な権限と権益(利権)を事実上独占してきた。エジプト民衆は軍を「尊敬」しているなどと報じられるが、それは自分たちを直接取り締まる「警察・公安組織」への反感の裏返しに過ぎない。
今回、エジプト軍が発砲していない理由は恐らく2つある。第1は、下手に「流血の事態」を引き起こして、これまで築き上げてきた政治・経済的権益を一気に失いたくなかったこと。
第2は、過去30年間密接な関係にある米軍が「軍の介入」に強く反対したと思われることだ。
要するに、今はヒーローのように報じられているエジプト軍も、一皮剥けばこの程度の組織なのである。
文民統制が機能した(?)解放軍!
冒頭書いたように、1989年の天安門事件で、人民解放軍は市内の学生を中心とする民衆に対し無差別発砲した。しかし、これは当時の中国共産党最高首脳部(鄧小平)の命令に従ったためである。
人民解放軍の名誉のために言えば、当時の解放軍首脳は解放軍精鋭部隊による武力鎮圧に最後まで反対していたと言われる。鄧小平は「北京に知人・友人の少ない」地方の部隊を投入せざるを得なかったというのが最近の定説らしい。
「自己主張」を強めつつあるとはいえ、当時も今も、人民解放軍は中国共産党の支配下にある軍隊であり、中国政治の実権は解放軍ではなく、(今はたまたま文民からなる)党中央の最高首脳部にある。エジプト軍とは大違いなのだ。
だとすれば、1989年の人民解放軍は共産党版「文民統制」に従っただけであり、当時の党中央軍事委員会・鄧小平主席の命令を忠実に実行したということになる。屁理屈と言われるかもしれないが、これがタハリール広場と天安門広場に関する筆者の違和感の理由だ。
エジプト騒乱の教訓!
今回はエジプトの話ばかりになってしまった。エジプト情勢は現在も流動的であるが、中国が最近のチュニジアやエジプトの騒乱から得るべき教訓は決して少なくないように思える。
最後に、中国共産党に成り代わって、筆者が勝手に得た教訓をいくつか挙げてみよう。
(1)米国から言われるままに「政治の民主化」を進めてはならない
中途半端な自由化は、逆に墓穴を掘る。チュニジアも、エジプトも、ヨルダンも、一定の自由があったからこそ、フェースブックやツイッターが機能し、制御不能な大衆動員が可能になったのである。
(2)どんなに緊密な関係を築こうとも、米国政府は信用できない
米国はそれまで強く支持してきた政権ですら、掌を返したように見捨てる国だ。古くはイランのシャーの例があり、今回のベン・アリやムバラクも例外ではない。まして、中国共産党が同様の危機にある時、米国政府は全く頼りにならないだろう。
(3)騒乱中の民衆は無責任であり、国家全体の利益を考えて行動しない
いったん騒乱が始まれば、一般大衆は合理的な判断をしなくなる。今後もエジプトで混乱が続けば、観光を中心とするエジプト経済は壊滅的な打撃を受けるだろうが、デモ参加者にそのことを理解させることは不可能に近いだろう。
(4)警察が騒乱に対処できなくなっても、安易に軍隊を投入してはならない
1989年であればともかく、21世紀の今日、武力鎮圧は逆に体制崩壊を早める可能性が高い。中国共産党も、現在のエジプト軍部のように「狡賢く」振る舞い、政治的譲歩をしてでも、既得権益の喪失を最小限に止めるよう慎重に行動すべきである。
特に、中国共産党首脳部が最後の教訓を正しく学んでくれることを心から祈りたい。
陸上自衛隊
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A
守りに強い陸自を削るとは、新防衛大綱の大失態!
2011.02.03(Thu)JBプレス 柴田幹雄
1 はじめに
太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)たった四杯で夜も眠れず」。1853(嘉永6)年に黒船来航で大騒ぎの日本を揶揄した狂歌である。
平成22(2010)年尖閣沖での青い中国漁船の体当たり攻撃や、平成19(2007)年の北朝鮮弾道ミサイル発射時なども大騒ぎになった。
黒船では大騒ぎに引き続き、列国のアジア植民地化の危険を乗り越え明治維新という大きな歴史の進展があったが、今回はどうだろう。
北西からの強風・大波に飲み込まれるのを防ぐ対応を急がねばならない。大騒ぎをするだけで忘れ去られれば、文字通り国難が忘れた頃にやってくる。
我が国は、言うまでもなく島国で、四面をオホーツク海、日本海、東シナ海そして太平洋に囲まれている。日本へは海を渡ってこなければならない。すなわち脅威もまた海を越えてやってくる。
この脅威に最初に対抗するのが海上自衛隊と航空自衛隊である。従って、海・空戦力の重要性は論ずるまでもない。そして中国の軍近代化特に海軍力の増強はまさに歴史的と言える。
さらに、南西諸島、小笠原諸島、南鳥島や沖ノ鳥島を持つ日本の排他的経済水域は膨大な広さを有し、海自、空自に期待するところは大きい。
しかし、海・空自さえしっかりしていれば日本は守れると勘違いをして、陸上自衛隊の予算を削ってでも海・空自衛隊を強化せよとなると、ナンセンスを超えて、これは危険である。
2 海空戦力の特性
陸上戦力に比べた海空戦力の特性はいくつかある。その1つが、空戦、海戦は、陸戦に比べ、OR(オペレーションズ・リサーチ)で計算したものに近い結果が実戦でも出る傾向が強い。その計算の1つにランチェスターの2次公式と呼ばれるものがある。
質が同等のA、B両国の戦闘機が空戦を行った場合、残存機数は両者の戦闘参加機数の2乗の差の平方根で表せる。つまりA国5機とB国3機で戦闘した場合、Bの側が全滅するまで戦うとAの側で残るのは5-3=2でなく、25-9=16の平方根つまり4機が残る。
Bは3機が全滅するまで戦ってもAの1機しか落とせない。戦力に差があれば結果が2乗で開いていくのである。
もちろん戦闘機の性能やパイロットの技量や戦法の差で変わるが、これも定数を設定してシミュレーションできる。このシミュレーションは3次元空間を双方自由に機動し、機銃、ミサイルを撃ち合う空戦でかなり実戦に近い計算結果を得られる。
海戦も空中戦ほどではないにせよ似た傾向がある。つまり敵味方の戦力分析が我に有利であると確信すれば、攻撃側は、攻撃開始をする場合の結果に対する不安が少ない。言い換えれば戦争開始の敷居は、必ずしも高くない。
またもう1つの特性は、航空機、特に戦闘機の燃料搭載量から、戦闘の継続時間は通常数時間である。この短い時間に戦力の優勢な側が決定的な戦果を収める場合が多い。
海戦もまた逃げも隠れもできない海上で、大口径火砲やミサイル、航空機からの爆撃・雷撃といった相互に致命的な破壊力を持つ武器で撃ち合うため、1日とか2日の短時日で決着がつく場合が多い。
もちろん一国の空軍戦力、海軍戦力が日露戦争の日本海海戦のように1度の会戦で全力がぶつかることは稀であろうが、ひとたび優劣の差が開けば、戦闘を繰り返すごとに文字通り2次曲線的に戦力は落ちていく。
さらに、これも海空戦力の特性の1つだが、地上にいる航空機の戦力は零であり、停泊中の艦船の戦闘力も通常の停泊状態なら零に近く、飛行場、停泊地を攻撃されればひとたまりもない。
真珠湾攻撃が証明した海空戦力の攻撃力!
1941年12月7日(ハワイ時間)の日本海軍による真珠湾攻撃は、航空戦力、海上戦力の特性をよく表している。
日本海軍の空母から発進した約350機の艦上航空機の攻撃で、戦艦アリゾナをはじめ米海軍太平洋艦隊の戦艦6隻はすべて大きな損害を受け戦闘力を失った。
また、ヒッカム、カネオヘ、ホイラーなど各飛行場にいた航空機約400機も188機が破壊、155機が損傷を受けた。
このように、航空戦力は瞬間的に発揮する打撃力は素晴らしいものがあり、一方、海空戦力は戦闘態勢にないところを奇襲されると極めて脆弱であることが理解できると思う。
2時間で壊滅したエジプト空軍
1967年6月5日朝、イスラエル空軍は、エジプト空軍がイスラエルの攻撃を予測し警戒していた早朝の警戒態勢を解除する時間帯で、高級将校が出勤途上である0845時(午前8時45分=エジプト時間)にエジプト飛行場を航空攻撃した。
イスラエル空軍は10カ所のエジプト飛行場に一斉に航空攻撃を敢行し、その9飛行場を同時に、10番目を数分遅れて爆撃した。2時間足らずでエジプト空軍は壊滅し、6日間戦争の勝利は不動のものとなった。(田上四郎著 「中東戦争全史」)
現代戦において奇襲などあり得ないという意見もあろうがそれは違う。攻撃をされる側は必ず奇襲の要素を持つ。すなわち攻撃されるとは思っていたが、こんなに早く来るとは、とか、こんなに大量に集中してくるとは、この時間に来るとは、などということになる。
またはもっと端的に、まさか軍事的手段を使うとは思わなかったなどということになった場合、侵攻国空軍の奇襲攻撃で、日本の海空防衛力は瞬時に消滅もしくは大打撃を受ける危険性がある。
しかも、これをニューヨーク時間で土曜日早朝に行えば、国連安保理が召集されるまでに数十時間を要し、国際世論を形成することもままならない。これで陸上自衛隊が弱体なら戦わずして日本は相手国の政治目的を受け入れるしかない。
海空戦力は、攻撃をする場合には、非常に大きな打撃力があり、しかも迅速に行うことが可能で、攻撃後直ちに戦場を離脱することができる。
その一方、防御という戦術行動は陸戦と異なり有利な要素は多くない。
専守防衛という軍事的合理性から見れば極めて難しい戦略をとっている以上、日本周辺の海域・空域で防勢に立たざるを得ず、薄皮一枚と言えるほど縦深がなく、海・空戦力での防衛は固くても脆い防弾ガラスの防壁のようなものであろう。
3 陸上戦力の特性
陸上戦力の特性は一言で言えば、地形を利用して強靭な戦いができることである。特に防御においてその特性を発揮する。
大東亜戦争時における島嶼作戦で、日本陸・海軍地上部隊は、艦砲、航空戦力まで含めれば数十倍から数百倍の米軍を相手に数週間、時に数カ月間にわたって防御戦闘を継続した。
ベトナムでは、ジャングルを利用し、北ベトナム軍は当初フランス軍と、のちには世界最強の米軍を相手に戦い抜き、最後はT-54戦車を先頭にハノイの南ベトナム大統領官邸に突入したシーンは有名である。
急峻な山岳地帯の多いアフガニスタンでは、歴史的にここに侵攻した大国の軍隊はいつも苦戦している。
地上戦は、地形を利用しこれを戦力化することができる側に有利に働く。相対的な戦闘力比で優勢だからと言って、計算通り戦いが進むものではない。
地上戦の泥沼に足を取られ、引くに引けなくなることが往々にして生ずる。
作戦が数日以上続くのであれば、弾薬、燃料、医薬品、食料・飲料水などを継続的に補給せねばならず、道路、橋梁の補修、構築、情報、通信、輸送などを行う部隊も必要となり、戦闘員の数の数倍に及ぶ戦闘支援、兵站支援の要員を現地に送り込むことになる。
従って、軍事力を使おうとする側にとって、海空戦力を運用するのみで解決できると思えばその使用への敷居は高くない。
しかし、陸上戦力の投入を迫られるようなことになれば、国家としてがっぷり四つに組んでの戦争状態を覚悟せねばならず、戦争抑止の効果としては高いものになる。
4 全面侵攻の可能性と陸上自衛隊
日本に対する全面侵攻の可能性は低い、だから陸自を削減してもよい。と言うのは文字通りの本末転倒である。「全面侵攻」の前に「陸上自衛隊を相手に、長期間の血みどろの地上戦を覚悟してまでの」という形容詞句がつくのを見落としている。
陸上自衛隊が戦っている間に、日米同盟に基づく米軍の来援、国際世論の形成なども行う時間を稼ぐことができる。
もし陸上自衛隊が限りなく縮小されれば、陸上戦闘を回避して、小規模の部隊が潜入し、必要とする島に旗を立ててしまえばおしまいである。
また日本全域を押さえようと思えば、同じく少数の部隊で、首相官邸、議事堂、放送局を押さえ、「日本人民の総意を代表して、日本解放のため立ち上がった」などと放送されてしまえば万事休すであろう。
少数の部隊で日本を制圧もしくは政治目的を達成可能になるなら、海自・空自の目をすり抜け、または合法的に入国することも含め、海自・空自のターゲットにならず侵入されてしまう危険性がある。
言い換えれば、陸自がなければ全面侵攻などしなくても、それと同じ戦争目的は達成できるのである。
陸上自衛隊があればこそ、それに対抗する戦力を集中し、これを輸送する船団、輸送航空機を連ね、護衛がついて侵攻作戦になる。ここで初めて海上自衛隊、航空自衛隊も侵攻部隊を戦力発揮のターゲットとして認識できる。
尖閣諸島周辺での青い漁船の不法行動や、いわゆるグレーゾーンの紛争に対処するため必要なのは、海自・空自の強化より、領海・領空を含む領域警備の法律的根拠の整備と、不法行動には断固とした処置を取るという政治的決断力であろう。
また、防衛白書や、防衛計画の大綱に「懸念事項」と記された中国海軍の増強に対し、海自・空自を充実すると言うなら、それはグレーゾーンへの対処でなく、陸自をも巻き込む全面対決への対処であると覚悟を決めなければ艦艇、航空機を増やしたところであまり意味はないように思われる。
また実際に全面侵攻が企てられるかどうかは別として、今回の尖閣事件ではっきりしたことは、軍事力をバックに恫喝をすることが有効だということである。
日本が全面侵攻に対しても自らを守るに足ると思える程度の備えがない限り、実際は行う気がなくても、全面侵攻をにおわされただけで引き下がらざるをえないということが明白になった。
日本に照準を合わせている核ミサイルについては、米軍の拡大抑止に期待するしかないが、中国恐怖症を克服し、少なくとも通常兵器での恫喝に泰然としていられるためには相当の備えが必要である。
それには陸上自衛隊の増強、充実は不可避である。中国海軍が強化されるということは、すでに強大な兵力を持つ人民解放軍を、その海軍力が及ぶ範囲のどこへでも軍事展開できるということである。
5 防衛計画の大綱への疑問
今回の防衛計画の大綱を一読し、「防衛力を単に保持すること」から「適切に運用」することへ重点を移し、そのために必要なことに手を打つという変換は大いに評価できる。
しかしそれをもってして、「基盤的防衛力構想」から「動的防衛力の構築」構想への変換とするなら違和感を覚える。
基盤的防衛力とは、あくまでアジア全体を見て日本という場所に力の空白を作り不安定化することを避け、限定的で小規模な侵攻には独力で対処できる程度の防衛力で、本格侵攻には戦力のエクスパンド(拡張)をして対応するという「量的基準」について、しかも平時から保持しなければならない最低限の「基盤的」量について述べたものである。
ところが、今回の「動的防衛力」構想は、使い方について述べたものではないか。
基盤的防衛力構想の時代でも、例えば、北海道が侵攻されるとなれば、北海道以外に所在する師団を北海道に戦略機動させ、動的な戦力発揮を目指していたし、そのための長距離機動訓練も行っていた。
基盤的防衛力構想では、情勢が緊迫し、有事が迫ってくれば、緊急に隊員募集し有事に必要な部隊を新編し有事対応の訓練をし、弾薬も緊急増産をする。
さらに有事法制も作るという準備をある程度の期間で行うというエクスパンドの考え方が付随していた。
ところが、今回の大綱では「兆候が現れてから各種事態が発生するまでの時間が短縮化され」(不法行動から武力攻撃自体まで)「事態に迅速かつシームレスに対応」と記述されている。
ということは平素から、すでにエクスパンドした有事対応の編成、弾薬備蓄その他を構築しこれを直ちに使えるような状態で維持することが理論的に必要である。
従って、動的防衛力を事態に即応して迅速に運用するなら陸自だけでも20万人くらいは平素から維持しておくことが大前提であろう。
ところが、あろうことか陸上自衛隊は、1000人の削減だという。また火砲も戦車も200門/両減らされ、基盤的防衛力という平時から持つべき最低限の装備と考えていた数の半分以下に減らすことになっている。
これでは論理的整合性が全くなく、動的防衛力構想は単なる削減のための屁理屈になってしまう。財政的に逼迫した状態で1000人削減に踏みとどまらせた関係者の努力に敬意は表するが、政治決定をした責任者の罪は重い。
6 陸上自衛隊のマンパワーについて
陸上自衛隊の勢力15万4000人を多いと見るか少ないと見るかは、それぞれであろう。
人口比で見ると、兵士1人が支える国民の数は、北朝鮮25人、英国610人、米国508人、ドイツ512人、フランス458人であり、一方、日本は900人である。
北朝鮮は別格としても、先進諸国の兵員の2倍の仕事を陸上自衛官はしなければならないということである。
しかもここで比較した欧州の国は、少なくとも直接的に侵略を受けることはもちろん軍事的脅威を受ける可能性も、極めて低いと思われるにもかかわらず、それだけの兵員を擁しているのである。ちなみに日本の警察官は約25万人、消防官は約15万人である。
では、15万4000人というが、実際の戦闘員はどれくらいだろうか、正確な数字は手元にないが、概算してみよう。
いわゆる第1線戦闘部隊である普通科連隊は約50個ある。1個連隊実員が600人として約3万人、そのほか特科(砲兵)、戦車などの直接戦闘に関わる職種を1万人として計4万人ほどであろう。
作戦を行う際は普通科連隊を単位として組み合わせるので、平均すれば、各県に1個普通科連隊強、この場合北海道のような広大な地域も、東京のような首都機能集中の場所も均等割すれば1個連隊の600人プラスアルファで守る。
その600人も昼夜兼行で戦闘するわけにいかなければ、シフトを組めば200~300人。1つの県を防衛するのに働けるのは200~300人の兵士が戦闘に従事する。多いか少ないか。
均等割りでなく東京で見ると、東京都および関東6県を守る陸自第1師団は約六千数百名であり、東京都内にある普通科連隊は、第1普通科連隊のみであり600人くらいであろうか。
一方、東京都を管轄する警視庁の警官の数は、4万3000人である。国際貢献から災害派遣、緊急患者輸送まで何でも自衛隊だが、その数は決して多くない。
7 人件費の比率が高い陸上自衛隊
陸上自衛隊の人件費のパーセントが多い、だから人件費を削るという。全く理解できない理屈である。陸上自衛官の給料が特別に高くて人件費が多いわけではない。
航海手当て、乗艦手当て、航空機搭乗手当てなどを考えれば海自・空自の方が、人頭割の給料は相対的に高いだろう。
陸自の人件費が多いというのはそれ以外の、一般物件費、すなわち装備品購入、訓練、燃料、研究開発などの金額が少ないだけで、海自・空自並みに装備品購入費など増やしてもらえば、分母が増え、人件費パーセントなどいくらでも落とせる。
逆に言えば陸自はいかに経済的に人を養っているかということであり、現実に陸自の官舎、駐屯地を回ってみれば、そのつくりや、隊員食堂のいす・テーブルなども海・空自に比べかなり安物を使っており、粗末な環境で生活をしている。
人件費の比率が高いのはいわばエンゲル係数の高い家計と同じである。
こんなことを言うのは品がないからと、陸自の幹部は黙っているが、数字を見れば一目瞭然なのに理解できないふりをしている財務の官僚こそ理解できない。
8 南西諸島を見捨てるな
南西諸島の防衛について考えるなら、動的防衛力構想もいいが、それは陸自の部隊が主要な島々に駐屯していることが作戦のインフラとなって初めて機能する。
今まで述べたように、陸自部隊がたとえ少数でも現に配置され、侵攻勢力が地上戦を覚悟しなければならないことが大きな抑止になるのである。
大事なことは、陸自部隊がいて、そこで血を流しつつ持久をすることで国家の防衛意思が固まるのであり、国際世論を形成することにつながり、本州その他からの増援(動的防衛)が意味のあるものになる。
主要な島々に配置しておかず、情勢を見て緊急に展開するなどと聞こえはいいが、他国の顔をうかがう政治姿勢では、日本の戦争決意表明である部隊展開などタイミングよくできるはずはない。
「無用の刺激を避ける」と称して決断を先送りし、その結果どこかの国に先に旗を立てられ、米国も来援できず、首相が遺憾の意を表明するだけで終わるというまさに悪夢が現実となる。
そうならないためには、陸上自衛隊の部隊を南西諸島防衛の重点と見なされる島々に当初から駐屯地をつくり、配置しておくことが必要である。防衛作戦は、先にも述べたように、戦闘員がいるだけではできない。
情報、通信、弾薬補給、医療等々多くの支援部隊と、兵站基地が必要だが、小さいとはいえ駐屯地がその役割を果たす。
平素から南西諸島の主要な島々に陸自部隊を配置、駐屯させておくことで、不法行動、侵略行動を抑止でき、海自、空自の基地や飛行場、レーダーサイトなども防護できる。
また戦車など、その総数を削ること自体に意義を見出しているようにも見えるが、高い金を出して74式戦車を処分するなら、維持費がかかるとはいえ、南西諸島に配置し、海岸砲として運用したらどうか。
多くの国はそのようにして大事な防衛装備品を活用している。輸出もできず、金をかけてくず鉄にするのはもったいない。島の土質は琉球石灰岩と呼ばれる軽石のような岩盤で、シャベルやツルハシでは、簡単に穴が掘れない。
あらかじめ掘った壕に戦車を入れれば大変正確な射撃のできる海岸砲になる。平素から島嶼防衛の意思を示すことが、無用の流血を避ける最良の方策である。このためには陸自隊員を増員する必要がある。
9 防衛費の総額を増加するしかない
現在の国際環境なかんずく北東アジアの情勢と、貿易・海運立国の日本というアイデンティティーを考えるならば、海上自衛隊、航空自衛隊を充実することは筆者として、決して反対するものではない。
ただ、防衛予算の総額は増えないものと決めつけ、従って陸自の部分を削って海・空自へ回すという発想は到底肯んじえない。これを防衛関係者、自衛隊OBが言うのを聞くと情けなくなる。
現在のようなデフレで、十分に金が回らないことによる不況であるならば、公共投資が1つの経済刺激策になるのは間違いなく、防衛予算を増やし、装備も充実させることである。
防衛産業は裾野も広く、これに資金を回し経済の活性化を促し、隊員募集をして雇用を確保することは、極めて有効な経済刺激策になる。
当事者たちにも評判の悪い子ども手当や、高速道路無料化など直ちに事業仕分けし、防衛費を増額し、陸・海・空の戦力の特性をよく認識した、必要かつ妥当なバランスを取った防衛力整備を行ってほしい。
そのためには、陸・海・空のシェア争いを超越して統合の国家防衛戦略を策定し、それに基づき軍事的合理性のある大綱・中期防をつくり、防衛予算の積み上げ、配分をしなければ、まさにタックスペイヤーたる国民に申しわけない。
2011/01/29(土)サーチナ
J-20 (戦闘機)
http://ja.wikipedia.org/wiki/J-20_(%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F)
心神 (航空機)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E7%A5%9E_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
中国軍事科学院の杜文竜研究員はこのほど、「中国の殲20は知恵と先進技術が融合した戦闘機で、世界を失望させるものではない」との論評を発表した。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。以下は同記事より。
中国の新型戦闘機「殲20」の登場から初飛行成功まで、世界のメディアが大きく取り上げた。米CNNのトップニュースとなったことでも、その注目度が伺える。しかしメディアの解読には2つの誤った認識がある。ひとつは、高過ぎる評価、もうひとつは低過ぎる評価だ。
■高い評価の意図は使用方法への疑い
殲20は米F22に対抗する条件を備え、攻撃力がより高く、太平洋上空の軍事力のバランスを変え、中国周辺の米空母編隊、米国の日本、韓国などにある基地が重大な脅威にさらされると伝えるメディアがある。この見方は殲20の非常に高い性能目標ではあるが、その意図は殲20導入の使用方法を疑っていることにある。
こうした憶測から出た見方は、米国の冷戦時代の考えを中国に当てはめているにすぎない。しかし中国は殲20に対して、いかなる国、いかなる目標も標的にしないという独自の明確な方針がある。殲20は中国軍の構造転換に対応した新型兵器でしかなく、中国の主権と安全を守る新型兵器であり、中国の航空工業がある程度の水準に達した後の自然な結果といえる。
■低い評価は恐怖から
その一方で、単なる技術実証機であるとして、ステルス性、新型エンジンなどなく、「ステルス戦闘機の外観をもつ殻をつくった」と見なして、殲20の初飛行に目もくれないメディアもある。この見方は、殲20からすれば評価があまりに低過ぎる。その理由は殲20への恐怖にあるのだろう。
中国は90年代から第4世代機の研究開発に取り組み、すでに20年が経過している。ただ単に第4世代機の殻だけなら、日本は1年でステルス戦闘機「心神」の木製模型を完成させた。それこそ神業的スピードではないか?
どの兵器も敵を想定してつくられるが、革命的な兵器はまったく新しい戦略・戦術を代表している。中国初の第4世代ステルス戦闘機殲20の登場は、中国が平和的発展を切に求める大国として、国家の安全にますます厳しい情勢と挑戦が突きつけられていることを認識した証である。
中国の殲20は、F22がすでに生産と装備を完了し、F35が高密度な試験飛行を進め、T50が初飛行および導入時期が決定した後にようやく力を発揮し始める。中国が後から開発を始めた優位性と長期的な技術の蓄積を、貴重な時間と資源を費やして外観の変わった殻をつくって世界を驚かすことなどに使うはずがない。
「神舟」5号を打ち上げ、有人宇宙飛行の初飛行において最長時間を打ち立て、第4世代機を20年間模索してきた中国の航空工業と空軍がその知恵と先進技術を殲20に注入した中国の第4世代戦闘機が世界を失望させることはない。(編集担当:米原裕子)
◇2011/01/27(木) サーチナ
F-35 (戦闘機)
http://ja.wikipedia.org/wiki/F35
日本のF35購入加速に「殲20は口実にすぎない」=中国人有識者
日米両国は18日、F35戦闘機の性能に関する情報秘密保持協議に署名した。日米メディアは、中国のステルス戦闘機「殲20」の登場が日本のF35購入を刺激したと伝えているが、中国の軍事専門家である宋暁軍氏は、事実はそうではないと指摘した。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
日米の秘密保持協議が調印されるや、米ウォールストリートジャーナル紙はすぐさま、中国の殲20戦闘機の登場が米F35の販売を刺激したと伝えた。一方、日本メディアも、日本は中国の軍事力急拡大という巨大な圧力を前に、日本は自らの安全と領土を守る力が必要だと次々と追随した。
日米メディアが殲20の試験飛行が日本のF35購入を早めるという意見で一致していることについて、軍事専門家の宋暁軍氏は、その可能性は低いとし、殲20の試験飛行とF35導入は時間の差がありすぎると話す。
宋氏は、日本のF35購入は実際は米国が圧力をかけているからだと指摘。80年代以降、米国の兵器商は日本に深く浸透している。先に、ゲーツ米国防長官が中国を訪問した後、続けて日韓両国も訪問した。その際、両国にF35購入を強く勧めたようだ。殲20の試験飛行に関係なく、米国は日本にF35を購入させるだろうと宋氏は分析する。(編集担当:米原裕子)
中華民国国軍
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E6%B0%91%E5%9B%BD%E5%9B%BD%E8%BB%8D
台湾向け兵器供与を巡って米中が心理ゲーム!
2011.01.27(Thu)JBプレス 阿部純一
1月11日、中国が開発中のステルス戦闘機「J-20」が、ゲーツ国防長官の訪中に合わせたとしか考えられないタイミングで試験飛行を行い、広く注目を集めた。
「J-20」が実戦配備されるようになるまで、まだ5~10年くらいかかるだろうというのが常識的な見方である。J-20の評価よりもむしろ関心を呼んだのは、この試験飛行が行われたことを、胡錦濤主席をはじめとする文官の中国指導者が知らなかったと報道されたことだ。
ゲーツ国防長官との会談で、胡錦濤主席は「J-20」の試験飛行がゲーツ国防長官の訪中とは無関係であることを強調し、「予定通り行われたにすぎない」と、その場を繕った。
しかし、その弁解には無理がある。最新鋭兵器の開発など、どこの国でもトップシークレットのはずだ。それにもかかわらず人民解放軍はこれみよがしに「J-20」の試験飛行を「公開」し、自由に報道させた。ゲーツ訪中を意識して実施された人民解放軍のデモンストレーションであったことは言うまでもない。
また、中央軍事委員会主席である胡錦濤の了解も取らず、人民解放軍がこうした行動に出たとすれば、これは極端な表現で言えば「謀反」に匹敵する。
「面子」をことのほか重んじる中国で、胡錦濤主席の面子を潰す挙に出た人民解放軍の行動は、胡錦濤政権がすでにレームダック化していることを内外に示すとともに、中国共産党の絶対的指導下にあるはずの人民解放軍が「自分勝手に」行動していることを示唆している。
人民解放軍は明らかに、米国との軍事交流再開に反対なのだ。
人民解放軍はなぜ「J20」の試験飛行を米国に見せつけたのか!
ゲーツ国防長官の訪中の目的は、2010年1月から途絶えていた米中軍事交流の再開であり、報道ではその方向で話がまとまったとされる。
しかし、人民解放軍にとってそれが不満なことは明らかだ。
米中軍事交流を再開させるなら、中断の原因となった米国の台湾向け兵器供与につき、それを「凍結」するなどの言質を米国から取り付けるのが「最低条件」のはずだ。それさえしないまま、軍事交流を再開すると言われても納得できるはずもない。
まして、米中の軍事力は「対等」ではない。世界の軍事力の頂点に立ち続けてきた米国に対し、中国は急速に軍の近代化を進めてきたとはいえ、明らかに劣勢である。
さらに言えば、米国の軍事交流の目的は、中国の軍事における不透明さを「透明」にすることであり、それは人民解放軍にしてみれば中国の軍事力の弱点を米国に「開示」することに他ならない。そうすることは中国の対米劣勢を固定化してしまいかねないのだ。
透明性を高めることに抵抗する人民解放軍が、党中央の指導者に了解を得ることなく試験飛行の「公開」を行うからには、それなりの計算があったに違いない。
つまり、「弱点」を知られることは我慢ならないが、米国も一目置く先端的な技術を見せつけることは、警戒心を持たせるためにも価値がある、ということだ。
「J-20」の試験飛行の映像から分かる事実は多くはない。エアインテークなど機体の形状が米国の「F-22」に似ているとか、機体のウェポンベイ(爆弾庫)が「F-22」より大きく、より大型のミサイルが積載できる可能性がある、といった程度で、むしろ想像を膨らませて過大な評価につながりやすい。
ゲーツ長官自身も、中国のステルス戦闘機開発が予想よりも先行していると評価している。だとすれば、「J-20」の試験飛行は人民解放軍の期待通りの効果を生んだことになる。
ジレンマに突き当たっているオバマ政権!
しかし、そうした人民解放軍の行動が逆効果を生むことも事実なのだ。米国に警戒感を持たせることには成功したかもしれないが、それが米国の台湾への兵器供与を促す副次的効果もあるからだ。
中国と台湾は、昨年「経済協力枠組み協定(ECFA) 」という、事実上の自由貿易協定を結び、市場の一体化が加速している。台湾を訪れる観光客の第1位は中国人であり、中台を結ぶ直行便も増加の一途である。とても中台で軍事的緊張が生じるとは思えない関係の改善が実現している。
しかし、中国はどうしたことか台湾への軍事的締め付けは一向に緩める気配がない。福建省を中心に配備されている台湾に照準を定めた短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルは増えるばかりで、減少の兆しは見られない。
台湾を取り巻く安全保障環境に改善が見られないとすれば、米国は当然の帰結として台湾向け兵器供与を正当化させることができる。実際、訪中したゲーツ国防長官も米国の台湾政策に変化がないことを確認していた。
しかし、今回のゲーツ訪中から米中の軍事交流が事実上再開されたと言えるにせよ、オバマ政権が新たな台湾向け兵器供与を発表すれば、また軍事交流が中断されることは十分に予想される。
だからと言って、台湾の防衛に関して米国が何もしないわけにはいかない。現に「J-20」の開発状況を明らかにしたことからも分かるように、中国の軍近代化のスピードは想像以上に速く、その脅威にさらされている台湾の自衛努力にも限界がある。台湾の防衛に必要な兵器供与を義務づけた「台湾関係法」をホワイトハウスが無視することはできない。
その意味では、オバマ政権は、台湾への兵器供与の継続と、中国との軍事交流を並行して行わなければならないというジレンマを抱えていることになる。
もちろん、人民解放軍の反対を押し切った形で米国との軍事交流再開に舵を切った胡錦濤主席も、国内リスクを負っている。だからこそ、なおさらオバマ政権は台湾への兵器供与には慎重にならざるを得ない。
次の台湾向け兵器供与が行われたら中国は黙ってはいない!
米国防総省の内部情報に詳しい「ワシントン・タイムズ」のビル・ガーツによれば、オバマ政権はすでに新たな台湾向け兵器供与を決定しているという。
そこには台湾が求めている「F-16C/D型」戦闘機66機も、また長年にわたって懸案とされてきたディーゼル潜水艦も含まれていない。既存の「F-16A/B型」の電子機器やエンジン、搭載するミサイルのアップグレードにとどまるということだ。内容を見れば台湾の現有防衛力を飛躍的に高めるものとは言えない
それでも、台湾が保有する145機の「F-16」すべてがグレードアップの対象となるため、総額で40億ドルに上る大型パッケージとなる。
2010年1月のパトリオットPAC3ミサイル迎撃システムやブラックホーク多目的ヘリなどを含む台湾向け兵器輸出が64億ドルであったのに比べれば金額は下がってはいるが、絶対額としては大きい。
これが実行されれば中国は黙っているわけにはいかないだろう。胡錦濤政権にとっては安定した米中関係の維持もまた重要なはずだが、どこまで強い反応に出るかが注目されることになる。
米国との軍事交流に抵抗する人民解放軍にしてみれば、交流中断のチャンスとばかりに胡錦濤政権に圧力をかけるだろう。
米中は妥協点を見いだせるのか!
この兵器供与が実行される時期について、ガーツは米国の代表的な台湾ロビー団体である米台ビジネス・カウンシルのルパート・ハモンド=チェンバース理事長の発言を引用する形で、「最終的に議会に通告されるのは2011年の後半だろう」としている。場合によっては、もっと遅くなり、2012年にずれ込むかもしれない。米国は中国との摩擦をできるだけ先送りしたいからだ。
しかし、いくら先送りしても、いつまでもこの摩擦を避け続けることはできない。問題はそのタイミングをどうとらえるかだ。
2012年3月には台湾の総統選挙があり、国民党の馬英九総統の再選がなるか注目される。同じ年の9月か10月には中国共産党の第18回大会が開催され、胡錦濤の退任、習近平政権の誕生が既定の路線となっている。そして11月には米大統領選挙と、政治イベントに事欠かない。
選挙のない中国を別にすれば、台湾にしても米国にしても、中国とどう向き合うかが争点となり得る。
米中が妥協できる可能性があるとすれば、台湾の馬英九総統の再選を米中がどう考えるかという点についてだろう。
馬英九は中台の緊張緩和を実現した。その馬英九の再選に対して、米国の兵器供与がプラスに働くならば、中国としても強硬な反対はしづらいはずだ。
中国にしても、台湾人アイデンティティーを強調する民進党の政権奪取は歓迎していないし、胡錦濤政権の最後の年に米中関係を悪化させたくはないからだ。
2011年後半から2012年初めにかけての時期は、台湾の総統選挙がヒートアップしている時期である。米国の兵器供与は「米国は馬英九政権を支持する」というメッセージになり、再選を目指す馬英九に「追い風」となるのは確実だ。
同様に再選を目指すオバマ政権にしても、中国に譲歩することなく、台湾に対し「やるべきことはやっている」ことをアピールできるだろう。
2011年から2012年にかけ、米中関係は台湾を絡めて複雑な心理ゲームが展開されることになる。
あの国には明確な狙いがある時価総額で1兆5000億円!
2011年01月25日(火) 週刊現代
みずほFG 日立 三菱重工 東京電力など、基幹産業の株を買い漁る。
中国企業による日本企業買収が勢いを増す中、「中国マネー」がバックにあるとされる謎のファンドが日本株を買い漁っていることが判明。投資先を調べると、そのファンドの「狙い」も見えてきた。
「物言う株主」が中国政府!
世界的な水不足が懸念される中、いま注目されているのが海水を淡水化する高機能膜技術。その世界トップシェアを誇るのは、日東電工という日本企業である。
同社の大株主に「チャイナ」の名称を含んだファンドが突然現れたのは'08年のこと。いきなり300万株ほどの大株主として出てきたが、ファンドは年々株式を買い増し、いまでは約400万株を持つ第5位の株主(時価総額にして約160億円)に躍り出ている。
「謎のファンドが技術力を奪うために、日東電工を買収しようとしている」
そう不安視する投資家も出てきたが、実はこのファンドの実態はベールに包まれている。
株主の正式名称は「オーディー05 オムニバス チャイナ トリーティ 808150」(現在は名称変更して「SSBT OD05 OMNIBUS ACCOUNT-TREATY CLIENTS」、以下OD05)。住所が「オーストラリア・シドニー」、常任代理人が「香港上海銀行」ということは書類から読み取れるが、株主名は単なる「口座名」でしかないため、本当の「持ち主」が誰なのかがわからない。
この事態を不気味に思った日東電工はみずから調査を開始。すると、次の事実に突き当たったという。
「弊社で調べたところ、(OD05には)中国政府が関わっていることがわかりました。中国の政府系投資機関が資金の出し手である可能性が高いということです」(日東電工の広報担当者)
謎のファンド・OD05の正体は、「中国の政府系ファンド」だというのだ。しかも実はこのファンドが買っているのは、日東電工だけではない。わかっているだけでも日本企業86社、それも日本を代表する大企業ばかりの大株主となっている
OD05の調査・分析を続けているちばぎんアセットマネジメント顧問の安藤富士男氏も「OD05は中国の政府系ファンドと見て間違いない」と言う。
「去年の3月まではファンド名にチャイナという言葉があったのに、いまはそれが外れている。中国政府が日本株を買い漁っていると知れれば、日本国内でハレーションが起こる。それを避けたかったのでしょう」
さらに安藤氏はこのファンドの「特異さ」を次のように指摘する。
「中国政府は'08年頃に『将来は幅広く日本企業株を買い進めたい』と発表、その時期からOD05の名前も出てきた。'09年3月期末には日本株13銘柄、時価総額で1560億円ほど投資していたが、1年後には35銘柄同約6240億円、さらに半年後には86銘柄、同1兆5000億円ほどに投資を激増させている。まだ表には出てきてないが、水面下でほかにも多くの日本株を買い進めている可能性は非常に高い。
大株主になれば議決権が行使でき、役員の選任などでも意見を言うことができる。それなのにこのファンドはまだ、企業に対して注文を出したり、アクションを起こしたりしていない。いつ物言う株主としてその本性を現すのか、非常に不気味なんです」
狙いはロボット、金融、原子力!
チャイナファンドは何をしようとしているのか---。市場関係者の間では様々な憶測が語られているが、実はその投資先をきっちり調べると、ある「明確な狙い」が見えてくる。
OD05をウォッチし続けているビジネス・ブレークスルー大学(通信制のオンライン大学)教授の田代秀敏氏がこう指摘する。
「このファンドは極めて周到な調査に基づく長期戦略で株を買い進めているように見えます。たとえばみずほFG、三菱UFJFG、三井住友FGなどメガバンクの株式を合計6億株ほど保有しているが、これはメガバンクが企業情報の宝庫だから。特にみずほFG傘下の銀行には、大量の中小企業の口座があるとも言われています。
株式を一定以上保有した上で役員を派遣、役員会にファンド側の人間を毎回出席させれば、様々な情報が入手できる。たとえば中小企業を買収したいときも、『どこの資金繰りが厳しいのか』『工場は老朽化していないか』など一社一社を調べる手間が省け、スピーディに進められる可能性がある」
近年では家電量販店のラオックスやアパレル大手のレナウンが中国資本の傘下に入るなど、中国企業による日本企業の買収は盛んになっている。中国マネーが日本の技術を狙っているのは周知の事実だが、そうした中で、OD05はどんな技術を求めているのか。
「中国は四川大地震以来、直下型地震の被害をどう小さくするか悩んでいる。さらに中国政府はいま、地下鉄インフラ網の建設を急いでいる。そうした点から見ると、鹿島などのゼネコンが持つ超高層建築技術、地下・地中における独自技術は喉から手が出るほど欲しい。しかも日本のゼネコンは大株主である創業者一族が高齢化し、いずれ相続の問題が生じる。OD05はそのあたりまで見越しているのが、非常に賢く見える。
さらに三菱重工、東芝、日立製作所は世界有数の原子炉技術を持っている。原子炉開発で世界覇権を目指す中国にとって、日本の3大メーカーの大株主になることは格好のステップになりえる」(中国系ファンドに詳しいコンサルタント)
ほかにも中国では河川、水道水など「水の公害問題」が深刻になっているため、前出の日東電工と旭化成が共通して持つ「水処理膜技術」は今すぐにでも欲しいはず。東レ、帝人などが持つ炭素繊維技術も、航空機製造で世界の覇権を狙う中国には魅力的に映っていることだろう。
「実は胡錦濤総書記の後継者とされる習近平中央軍事委員会副主席が'09年に日本を訪問した際、唯一視察した日本企業はトヨタやパナソニックではなく、産業用ロボット生産で世界一の安川電機でした。ここから中国がロボット産業を国として発展させたいという意思が読み取れる。
安川電機こそ入っていないが、OD05の投資先に産業用ロボットに強いファナックがあるのはそうした背景によるものでしょう」(田代氏)
三菱地所に三井不動産も!
さらに中国マネーが狙っているのは、日本の技術だけではない。日本の不動産を次々と買い集めていることは多く報じられているが、実はOD05の投資にもそんな「資産狙い」が透けて見える。
「丸の内の不動産を一手に握る三菱地所のほか、東京ミッドタウンなどを持つ三井不動産、港区に多くの物件を抱える住友不動産と大手デベロッパー3社に投資しているのはその保有不動産狙いでしょう。
総面積4万ha以上もの森林を北海道や四国に持つ住友林業が投資先に入っているのも、チャイナマネーが日本の森林資源を買い漁っていることの一環と見ることができる」(中国経済に詳しいエコノミスト)
OD05の投資先一覧を見ると、中国が先進国になるためにどんな技術、ノウハウ、販路、資産を必要としているのか予測できるということだ。
一方で投資先に、トヨタ、日産、ホンダなどの自動車メーカー、ファーストリテイリング、任天堂など日本を代表するグローバル企業が入っていないのも気になる。「中国は自動車メーカーの技術力は欲していない」「任天堂などのゲーム機は、模倣が得意な中国では簡単にコピーできてしまうからいらないと思われている」と見る者もいるが、トレイダーズ証券執行役員で証券事業部長の藤本誠之氏は「油断は禁物」とも言う。
「いま投資先としてわかっているのは、公表義務のある大株主として登場している企業だけ。ここに挙がっている86銘柄以上の銘柄をすでに買っている可能性は十分にある。たとえば投資先に入っている新生銀行への投資額(時価総額)は30億円程度だが、企業規模が小さいため、その程度の額で大株主になっている。
大企業の多くはその程度の投資では大株主として名前があがらない。さらに買い増しが進めば、トヨタや日産、ホンダなどの大株主として突如、OD05が登場してもおかしくはないのです」
静観している場合ではない!
いまや米国債を一番多く保有、ユーロ圏でギリシャやスペインなどの「暴落国債」を真っ先に買い集めているのも中国マネーにほかならない。潤沢な資金を元手に、世界中で存在感を強めているのだ。
「中国が米国債を売れば、米国経済は崩壊する。そのため、米国政府は中国に強くモノをいえなくなっている。ユーロ圏についても、同じような状況になっている。一方で日本に関しては国債の代わりに、株を買っていると見ることもできる。『何かあれば保有している株を売って、暴落させる』と圧力をかけることができるようになったからです」(藤本氏)
いま経済界ではOD05の話題に触れて、次のようなブラックジョークが語られている。
「数年後には経団連会長が、靖国神社に参拝しようとする首相や閣僚を土下座して止めることになる」
ただ一方で、買われている企業に話を聞くと、「多くの株式を持つ外資系ファンドはほかにもあり、中国系ファンドもそのひとつという認識です」(MS&AD HD広報担当者)、「大きく株数を増やされているわけでもないので、取り立ててこちらが対策をとるということはありません」(ソニー広報担当者)などとあまり脅威に感じていない。
「特にOD05を歓迎しているのは、東京証券取引所でしょう。日本市場は数年前まで外国のヘッジファンドなどが数百兆円も売買して活気に溢れていたのに、彼らが去って市場は沈滞ムード。東証は新しいマネーを呼び込もうと中国の機関投資家を集めて、東証見学などをさせていたからです。企業も似たようなもの。
投資先に入っている企業の幹部にOD05の話題を振ったところ、『どうしてチャイナマネーをそんなに恐れる? カネに色はない。買ってもらえるうちが華なんだ』と言っていた」(株式市場を取材する経済ジャーナリスト)
この警戒心のなさを、いずれ後悔することがないといいのだが。
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魚沼コシヒカリ理想の稲作技術『CO2削減農法研究会』(勉強会)の設立計画!