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仏作って魂入れずでは、日本は滅びる!

2011.01.14(Fri)JBプレス 高井晉


1、新防衛大綱と安全保障の基本

民主党政府は、2010年12月17日、新たな「防衛計画の大綱」(PDF)と「中期防衛力整備計画」(PDF)を閣議決定した。1976年に防衛大綱が決定されて以来、6年ぶり3回目の改定であった。

日本の外交・安全保障政策は、これまで継続して自民党政府が担ってきており、今般決定された新防衛大綱は、安全保障政策が不明確であった民主党政府が策定したことから、その内容が注目されていたところである。

 新防衛大綱は、日本の安全保障の基本理念として、次の3つを挙げている。

(1)日本に対する直接脅威の防止
(2)アジア太平洋地域の安全保障環境改善による脅威発生の予防
(3)世界平和と人間の安全保障確保への貢献

 その基本方針としては、次の4つを掲げた。

(1)統合的かつ戦略的な取り組み
(2)従来の基盤的防衛力に代わる動的防衛力の構築
(3)日米同盟の深化と発展
(4)アジア太平洋地域における多層防衛など

 自民党政府の基盤的防衛力構想、すなわち必要最小限度の防衛力の保持と武力紛争抑止のための日本領土全体への部隊配置構想は、民主党政府の動的防衛力構想、すなわち多様な事態や脅威に対して機動的に対処する構想へと転換された。

 新大綱は、基本方針の「統合的かつ戦略的取り組み」として、情報収集と分析能力の向上、および国連PKO(平和維持活動)への参加のあり方の検討に加え、国家安全保障に関して首相へ助言する組織の設置を掲げている。

すなわち、安全保障会議を含む内閣の組織・機能・体制などを検証したうえで、国家安全保障政策に関し、閣僚間の政策調整と首相への助言などを行う組織を首相官邸に設置するとした。

 安全保障会議や事態対処専門委員会など、既存の安全保障政策立案組織等を検証し、外交・安全保障政策を首相主導で総合的に策定する意思を表明したのであった。

 日本は、外交・安全保障に関わる政策策定にあたり、外交・安全保障戦略を欠いているとの指摘がなされてきた。

 新大綱で設置が構想された新組織の具体的内容は不明であるが、諸外国に設置されている国家安全保障会議に類似する組織が想定される。

 民主党政府は、新組織と国家戦略室との関係を明らかにしていないが、国家戦略と外交・安全保障戦略との連携を意図して外交・安全保障政策を策定する意図であれば、この決定は高く評価されよう。


2、日本の安全保障会議

 日本の安全保障会議は、「国防会議の構成等に関する法律」(1956年)に基づく国防会議に代わるものとして、安全保障会議設置法(1986年)により新たに設置された。

 安全保障会議の構成メンバーは、内閣総理大臣を議長とし、総務大臣、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣、内閣官房長官および国家公安委員長の9人である。

 内閣総理大臣は、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業調整計画の大綱、武力攻撃事態等への対処に関する重要事項、その他国防に関する重大事項、重大緊急事態への対処に関する重要事項について、安全保障会議に諮問しなければならない。

その後、2006年12月に防衛庁設置法が一部改正され、周辺事態への対処と国際平和協力活動が首相の諮問事項に追加された。

 安全保障会議の下部組織である事態対処専門委員会は、2006年6月、安全保障会議設置法の改正により設置された。内閣官房長官を委員長とする同委員会は、内閣総理大臣が任命する不特定のメンバーで構成される。

 例えば、武力攻撃事態対処法関連3法案が国会提出された2002年のメンバーは、以下の16人であった。

 内閣官房副長官、内閣危機管理監、内閣情報官、総務審議官、消防庁長官、法務省入国管理局長、外務省総合外交政策局長、財務官、財務省関税局長、経済産業省貿易経済協力局長、資源エネルギー庁長官、国土交通審議官、海上保安庁長官、警察庁次長、防衛庁防衛局長、統合幕僚会議議長。

 安全保障政策の中で最も重要な防衛政策は、一般に、国家的な安全保障戦略に基づく必要性があるにもかかわらず、安全保障会議は、外交・安全保障戦略を構築する任務がなく、ともすれば各省庁の縦割り的発想に陥りがちであった。

 国家レベルの外交・安全保障戦略構築が諮問事項にないという安全保障会議の実情に鑑み、首相官邸の機能を強化するシステムが求められていた。



3、諸国の国家安全保障会議

3.1 米国

米国は、早くも1947年に国家安全保障法に基づいて、大統領の直属の機関として国家安全保障会議NSC)を設置した。

 同会議は、安全保障政策の立案や関係省庁間の調整を任務とし、大統領、副大統領、国務長官、国防長官という4人のメンバーで構成されている。

 このほかにCIA長官や統合参謀本部議長などが陪席し、必要に応じて財務長官、司法長官、各分野の民間人専門家がアドバイザーとして招集されることもある。

 米国国家安全保障会議は、設立当初、陸軍長官、海軍長官、空軍長官も構成メンバーであったが、1949年以降は正規メンバーから除外した。

 同会議は、設立以来、歴代大統領の決定に必ずしも有効活用されなかったが、今日では、国家安全保障問題担当大統領補佐官が事務局を統括し、大統領の主導による外交・安全保障政策策定のための重要な機能を果たしている。

3.2 ロシア

 ロシア連邦大統領の直属機関であるロシア連邦安全保障会議は、ソビエト連邦基本法改正に関する連邦法(1990年)に従って設立されたソ連邦安全保障会議を引き継いだものであり、安全に関するロシア連邦法(1992年)によって、大統領府に設置された。

 ロシア連邦安全保障会議は、国防のみならず経済、社会、情報、生態系分野そのほかの戦略的対応が必要な問題について、大統領の意思決定を補佐する組織である。

 同会議はロシア連邦大統領を議長とし、常任委員は安全保障会議書記、首相、副首相、政府官房長官、国防相、外相、内相、対外情報庁長官、連邦保安庁長官、ロシア連邦大統領府長官、ロシア連邦議会下院(国家院)議長、ロシア連邦議会上院(連邦院)議長等の14名が、大統領令により任命される。

3.3 英国

 英国においては、従来、外交・安全保障政策について、内閣委員会が首相への助言や関係各省庁との調整や政策立案を行ってきた。

 平時には、首相、外相、国防相、財務相の4人がメンバーの「海外政策および国防委員会」が、有事には同委員会に代わる特別小委員会の「戦時内閣」が設置されてきた。

 しかし、内閣委員会はあくまで内閣の一組織であったことから、デビッド・キャメロン政権は、2010年5月、最初の改革として国家安全保障会議を設置し、行政府の執行能力を高めるため週1回のペースで同会議を開催している。

 英国国家安全保障会議の議長は首相であり、副首相、蔵相、外相、国防相、国際開発相の6人がメンバーとなっており、必要があれば参謀総長(CDS)、合同情報委員会(JIC)議長、各インテリジェンス機関の長官が会議に招集される。

 同会議は、政府が取り組む政策策定に当たって、政治主導で優先順位を設定する最重要な政府機関として位置づけられている。

 英国では、「国家安全保障戦略」が毎年作成され、具体的な戦略計画を検討する「戦略防衛及び安全保障見直し:不確実性の時代における英国の安全確保」が5年ごとに作成される。

3.4 ドイツ

 ドイツの政権与党のキリスト教・民主同盟は、2008年5月に政策綱領を発表し、ドイツの安全保障の中心的戦略目標として、次の5つを掲げた。

(1)テロリズムとの戦い
(2)大量破壊兵器拡散防止と軍縮推進
(3)エネルギーと原料供給の確保
(4)気候変動の結果の解決
(5)紛争の防止と拡大抑止

 そのうえで、かかる戦略目標を迅速かつ統一的に追求するために、国家安全保障会議による効果的な安全保障政策を実現することを謳っていた。

 また同綱領は、政治的な分析、調整および決定の中心となる国家安全保障会議の任務として、次の3つを挙げている。

(1)ドイツ国内外のあらゆる脅威について包括的かつ省庁の枠を超えた分析
(2)外国における民生上・軍事上の危機の解決と防止の調整
(3)適切な防衛措置と緊急事態計画および郷土防衛隊の出動調整

 ドイツ連邦議会は、同綱領に掲げられた国家安全保障会議の設置に関して審議したが、結論に至らなかった。

 諸国の国家安全保障会議は、それぞれの国情と政治事情に応じて発展してきたものであるが、米国のそれを除いて、冷戦終焉後になって設置される傾向にある。

 諸国は、冷戦終焉後の多様化する国際安全保障環境に対応するため、長期的かつ総合的観点から国家戦略に基づいた、外交・安全保障政策策定の重要性を共通認識としていたと言える。

 

4、安倍構想の国家安全保障会議

 日本の外交・安全保障政策は、従来、国防と重大緊急事態その他重大緊急事態という極めて限定された諮問事項を有する安全保障会議に加えて、内閣官房、外務省防衛省を中心に立案し決定されてきた。

 しかし、幅広い外交・安全保障上の課題について、総合的かつ戦略的に政策を企画立案する体制を欠いていた。

 長期的視野に立った外交・防衛政策を立案するうえで必要な、外交・安全保障戦略が構築されてこなかったと言えよう。

 自民党安倍晋三・元首相は、このような状況を改善する目的で、2006年11月、「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」を設置した。

 安倍元首相は、日本の国家安全保障会議の設立を念頭に、制度上は英国の内閣委員会を模範として、役割や権限は安全保障政策の企画立案まで行う米国国家安全保障会議型を一部導入する構想であった。

 首相を議長とする同官邸機能強化会議は、内閣官房長官、国家安全保障問題担当の内閣総理大臣補佐官、その他11人の民間人有識者メンバーで構成され、翌年2月に最終報告書(PDF)を提出した。

 同最終報告書は、次の3つを提言していた。

(1)国家安全保障に関する司令塔の機能を強化すること
(2)大局的な観点に立った議論を行う国家安全保障会議を内閣の下に創設すること
(3)機動的かつ実質的な議論を行うために恒常的な事務局を設置すること

 安倍構想の国家安全保障会議のメンバーは、内閣総理大臣(議長)、内閣官房長官、外務大臣、防衛大臣の4人とし、議長が必要と求めるときは、他の関係閣僚をメンバーとして参加させるとした。

 安倍構想によると、国家安全保障会議の会合は少なくとも月2回とし、同会議の審議事項は次の3つを基本方針とした。

(1)外交・安全保障の重要事項に関する基本方針(国防の基本方針、防衛改革の大綱を含む)
(2)複数の省庁の所掌に属する重要な外交・安全保障政策
(3)外交・安全保障上の重大事態(武力攻撃事態等その他重大緊急事態を含む)への対処

 なお、既存の安全保障会議の諮問事項については、引き続き同会議で審議を行うこととし、事態対処専門委員会は、その機能を強化して、国家安全保障会議の下部組織に位置づけた。

 安倍構想の国家安全保障会議は、資源・エネルギー、海外経済協力、経済外交などの問題については、専門的な見地から議論を深めるため、同会議議長が必要を認める場合、閣僚級その他の専門家会議を設置することにした。

 また、大規模災害、テロ、ハイジャックなどへの対応については、通常の緊急事態対処体制で適切に対処できない場合、国家安全保障会議で審議することもある。

 さらに、首相に常時アクセスして緊密に意思疎通するために、国家安全保障問題担当の内閣総理大臣補佐官の新設を盛り込んでいる。

 国家安全保障会議に関する安倍構想は、日本の外交・安全保障戦略の欠如および安全保障会議の限定された諮問事項など、日本の外交・安全保障政策策定上の実情を踏まえて、国家安全保障会議の任務や構成を具体的に提言しているだけに、高く評価されるべきものであった。

 かかる安倍構想を実現するため、2007年4月、「国家安全保障会議設置法等の一部を改正する法律」案が国会に提出されたが、残念ながら衆院で継続審議となった。

 さらに福田康夫内閣は、同年12月、既存の安全保障会議が機能しているとの理由で、国家安全保障会議の設置を断念したのであった。



5、「新組織」の課題

 新防衛大綱で設置が構想されている「新組織」は、具体的な内容は不明であるが、諸外国や安倍構想の国家安全保障会議と大きく異なるとは思えない。

 冷戦終焉後の国際的な外交・安全保障環境はめまぐるしく変化しており、沖縄米軍基地問題、尖閣諸島防衛問題、北方領土問題、レアアース問題、北朝鮮の核・ミサイル開発問題、その他多くの外交・安全保障問題に対し、国家的な外交・安全保障戦略に基づいて中長期的視野に立った判断と政策策定が必要であることが分かる。

 国防問題は最も重大な外交・安全保障問題であり、国土の防衛のみならず、国連PKO等の国際平和協力活動など非伝統的な軍事力の活用においても、実働部隊である自衛隊が果たす役割は大きい。

 防衛大綱や中期防衛計画の構築に際しては、外交・安全保障戦略に基づく必要があり、今般の新大綱で採用された動的防衛力構想や自衛官1000人削減などが、確たる国防戦略に基づいたものであれば、多くの国民に支持されよう。

 韓国国家安全保障会議は、米国のそれをモデルに設置され、大統領を議長に、国務院総理、外交通商長官、統一部長官、国家情報院長のほか、大統領が定める若干のメンバーで構成されている。

 盧武鉉大統領時代の国家安全保障会議は、特殊な情報分析と意思決定により、それまでの政権が継続してきた外交・安全保障政策を大幅に変更して反米・反日政策などを決定したため、次の李明博政権は、何よりもこれらの国との関係修復に意を注ぐ必要があったという。

 米国や英国そして安倍構想の国家安全保障会議は、実質的な審議を行うため、少人数のメンバーに限定されている。

 新防衛大綱における「新組織」の構成メンバーは、外交・安全保障戦略を審議するのに相応しい、適切な国家観や歴史観を持った見識ある人格者でなければならない。

 政権交代があった場合、内政問題はともかく外交・安全保障政策は、関連する諸外国との関係を覆すような大幅な変更は望ましくなく、一定の継続性が維持されている必要がある。

 「新組織」に事務局を設置する場合は、危機管理と危機対処時の状況判断に関して専門的知識や実務経験を有する少数精鋭のスタッフを置き、外交・安全保障戦略の構築にあたらせることが肝要である。

 さらに「新組織」は、戦略情勢情報の収集や分析、実行可能な戦略計画の策定、公正な戦略評価など、一貫した合理的な外交・安全保障戦略の策定を可能としなければならない。

 「新組織」においては、これらに熟達した優秀な自衛官を配置することも考慮する必要があろう。

 いかに理想的な「新組織」を設立したとしても、その運用に魂が入っていなければ全く無意味なものとなることを銘記しなければならない。

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中国人民解放軍
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%B0%91%E8%A7%A3%E6%94%BE%E8%BB%8D


ゲーツ国防長官の訪中~中国株式会社の研究(93)

2011.01.14(Fri)JBプレス 宮家邦彦

急で申し訳ないが、今晩飯でも食わないか?」。1月12日午後、突然米国の旧友からこんなメールが届いた。実名は書けないが、彼は米有力紙の外交記者、ロバート・ゲーツ国防長官の「中日韓」歴訪の同行取材で東京に着いたばかりだという。(文中敬称略)

 久しぶりの再会で話が弾んだ。「中国では毎回サプライズがあるが、今回も例外ではなかったよ!」

 どうやら、11日のゲーツ・胡錦濤会談の直前に第5世代ステルス戦闘機「殲20」試作機が初の試験飛行を行ったことを指しているようだ。

胡錦濤は知らなかった?


この友人との会話を再現しよう。

友人 国防総省高官は、「ゲーツ長官が試験飛行について質問した際、胡錦濤総書記もほかの文民高官もその事実を知らなかったことは明らかだ」と言っていた。

筆者 その話は報道で読んだが、本当なのか?

友人 ああ、当初は返答がなかったが、会談の後半で胡錦濤は「試験飛行は事前に計画されていたが、ゲーツ長官訪中とは全く無関係だ」と述べたようだ。

筆者 その話も報じられているが、「無関係」のはずはないだろう。今回の試験飛行は米国政府だけでなく、胡錦濤個人に対する解放軍のメッセージではないか。

友人 同感だ。人民解放軍は米国との軍事交流を心底嫌がっている。近く訪米する胡錦濤が解放軍に対し軍事交流再開を働きかけたことへのしっぺ返しだろう。

解放軍の弱さと焦り!

会話はさらに続く。

友人 今、北京では「つい最近、習近平国家副主席が成都の空軍基地を訪問し、殲20の開発状況を視察した」という噂がまことしやかに語られているそうだ。

筆者 さすがは中国、いかにもありそうな話だね。それにしても、分かりやすい人たちだなぁ。今回の試験飛行を含め、最近の人民解放軍の「自己主張」をどう思う?

友人 空軍戦力の近代化をアピールするためだと言われるが、自分はそうは思わない。むしろ、人民解放軍の「弱さ」の表れではないかとすら思う。

筆者 確かに。本当に強い軍隊であれば、あんな子供じみた真似はしないはずだ。解放軍は弱いからこそ、米軍との軍事交流を頑なに拒否しているのだろう。最近の人民解放軍には焦りすら感じられる。

 中国の労働人口は2015年にもピークアウトするので、それまでに何らかの結果を出し急いでいるかのようだ。ところで、ゲーツ長官は冷戦時代の米ソ戦略核交渉のようなものを中国とも行う気があるのだろうか?

友人 削減交渉を行うことはないが、核兵器などに関する情報交換はやりたいだろう。そもそも、米国中国内部の核兵器に関する指揮命令系統、緊急時の連絡体制など、詳しいことは何一つ知らされていない。これは非常に危険なことだ・・・。

 友人同士の戯言はまだまだ続くが、ここで話題を変えたい。報道では中国の「次世代ステルス戦闘機開発」や「文民統制の欠如」などに注目が集まっているが、今回の試験飛行実施は、より本質的な意味で、極めて深刻だと思うからである。

国防省高官の政策スピーチ

 1月6日、ワシントンで米中軍事交流に関する国防省高官の講演会が開かれた。スピーカーはシファー国防次官補代理、ファインスタイン上院議員の外交スタッフも務めた東アジアの専門家だ。

 このスピーチ、日本ではほとんど報じられていないが、ワシントンのアジア関係者の間では注目されている。将来の米中軍事関係を占う上で極めて重要な論点が含まれているからだ。

 ちょっと長くなるが、まずはその概要をご紹介したい。

●現在アジアでは歴史的な「力の変転(power transition)」が起きており、注意深く管理しなければ、不確実性、不安定性、ひいては紛争に至る危険性がある。

バラク・オバマ政権の対中政策は、(1)米中協力強化のための不断の努力、(2)同盟国との関係強化、(3)中国による国際的義務・ルールの遵守という3つの柱からなっている。

●特に、問題解決に向けて機能する地域的枠組み(アーキテクチャー)作りは重要であり、対中政策もこのような米国の対アジア政策全体の一部であるが、現在も米中両国間の「戦略的理解」は十分とは言えない。

中国軍の将来の能力と意図が不明確であることが米中軍事関係を極めて(extraordinary)困難にしており、この問題を是正することは極めて重要である。

●中国の軍事面での不透明性は、米国だけでなくアジア地域全体に不安を与えている。これをうまく管理しなければ、誰も望まない危険な「安全保障上の競争」が始まるだろう。

米国は両国間の「意思不疎通、誤解、誤算のリスク」を減らすべく継続的で信頼できる軍事交流を望んでおり、両国間で事件・事故のリスクが高まることは米中双方にとって利益とはならない。

●米中軍事対話は平時だけでなく、将来不可避である両国間の摩擦が生じた際にも、強力で適切なコミュニケーションチャンネルとして機能するだろう。

●米中軍事交流の4つの目的は、(1)両国の軍・国防幹部が、不測の事態でも機能する明確で継続的な意思疎通のチャンネルを持つこと、(2)米中双方の軍人の安全を高めること、(3)相互に相手の能力、意図、ドクトリンを正確に理解できるようにすること、(4)人民解放軍が地域の責任あるパワーとしての役割を果たすよう慫慂することである。

●これらの目的を達成するための6つの原則は、(1)相互尊敬、(2)相互信頼、(3)相互主義、(4)相互利益、(5)対話継続、(6)相互のリスク縮小である。

●米中両国は、核兵器、ミサイル防衛宇宙・サイバー戦などの戦略的問題だけでなく、北朝鮮問題など地域の安全保障問題についても話し合うべきだ。こうした議論は究極的には中国自身の利益にも資するものである。

米国の提案に冷淡な解放軍!

 要するに、「今米中軍事交流を真剣に進めないと、将来米中間で軍事衝突を含む不測の事態が必ず起きますよ。その場合、米国は本気で軍事力を使いますよ。それは決して中国の利益にはならないでしょう?」と暗に言っているのだ。

 これらはいずれも、従来、米側が中国に内々伝えてきた内容だろうが、このスピーチの意味は、ゲーツ長官訪中の直前に、極めて強い対中メッセージを公の場で発したことにある。

逆に言えば、米国は「もはや水面下の説得では効果がない」と考え始めているということだろう。

 しかし、誇り高き人民解放軍が中国側の面子を潰すような「米国式恫喝」に屈するはずはない。

 今回の殲20試作機の試験飛行は、米国防総省からの呼びかけを事実上拒否するとともに、解放軍の反対にもかかわらず米中軍事交流を進めようとした胡錦濤警告を与えるメッセージだったと思えてならない。

 今回のゲーツ訪中では、米中が「軍事交流を本格的に再開する」ことで合意したことになっているが、その真相は19日から始まる胡錦濤総書記の訪米で明らかになるだろう。

 胡錦濤は一体何を語るのか、訪米中に人民解放軍はどう動くのか、興味は尽きない。次回はこの「胡錦濤訪米」に焦点を当てつつ、解放軍が米中軍事交流を嫌がる本当の理由について考えてみたい。

演題「 尖閣・南シナ海・インド洋」

講演者 問題提起:櫻井よしこ理事長

パネリスト:安倍晋三元首相、田久保忠衛副理事長、島田洋一企画委員
国家基本問題研究所
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80  


開催日時 2011年01月20日 (木) 18:30~20:30

※ 受付開始は、18:00~となります.

場所 星陵会館

【住所】東京都千代田区永田町2丁目16-2
【TEL】 03-3581-5650

参加資格 どなた様でも参加いただけます。
備考 会費:1,000円 (会員)
      2,000円 (一般) 
 
*会費は当日会場にてお支払いください。

*会員の方は、入場券(はがき・1月7日送付予定)をお持ちください。
*一般の方は、申込み完了画面を印刷してお持ち下さい。

*定員に達し次第、締め切らせていただきます。事前のお申し込みがない場合、入場できない場合がありますので、ご注意ください。
  
*複数名でのお申込みは受け付けておりません。お一人様ずつのお申し込みをお願い致します。
 
*会員の方は、あらかじめ「会員ログイン」をされますと下記必要事項が自動入力されます。

*Eメールアドレスが違っているため、受付確認の自動返信メールが届かない方がいらっしゃいます。お申込みの前に、メールアドレスを再度ご確認ください。

 

櫻井よしこが視聴者に伝えたい中国に対する問題点 part 1/2
http://www.youtube.com/watch?v=Pn-hrK-XzkE&feature=related

櫻井よしこが視聴者に伝えたい中国に対する問題点 part 2/2
http://www.youtube.com/watch?v=vEZnotiS-pY&feature=related

櫻井よしこ(動画検索)
http://video.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&fr=sb-necctp_sa&p=%E6%AB%BB%E4%BA%95%E3%82%88%E3%81%97%E3%81%93

今こそ国家100年の計を立てよ、米国の善意は当てにできない!

2011.01.12(Wed)JBプレス 森清勇

今日の国際情勢を見ていると、砲艦外交に逆戻りした感がある。そうした理解の下に、今次の「防衛計画の大綱」(PDF)は作られたのであろうか。「国家の大本」であるべき国防が、直近の政局絡みで軽々に扱われては禍根を千載に残すことになる。

 国家が存在し続けるためには国際社会の現実から目をそらしてはならない。日本の安全に直接的に関わる国家は覇権志向の中国、並びに同盟関係にある米国である。両国の国家としての在り様を検証して、国家百年の計を立てることこそ肝要である。

中国は日本抹殺にかかっている!

1993年に中国を訪問したポール・キーティング豪首相(当時)に対して、李鵬首相(当時)が「日本は取るに足るほどの国ではない。20年後には地上から消えていく国となろう」と語った言葉が思い出される。

 既に17年が経過し、中国は軍事大国としての地位を確立した。日本に残された期間はわずかである。

 中国の指導者の発言にはかなりの現実味がある。毛沢東は「人民がズボンをはけなくても、飢え死にしようとも中国は核を持つ」と決意を表明した。

 当時の国際社会で信じるものは少なかったが実現した。鄧小平は「黒猫でも白猫でも、ネズミを捕る猫はいい猫だ」と言って、社会主義市場経済を導入した。

 また香港返還交渉では、交渉を有利にするための「一国両制」という奇想天外なノーブルライ(高貴な嘘)で英国を納得させた。

 政治指導者ばかりでなく、軍高官も思い切ったことをしばしば発言している。例えば、朱成虎将軍は2005年に次のように発言している。

 「現在の軍事バランスでは中国米国に対する通常兵器での戦争を戦い抜く能力はない。(中略)米国が中国の本土以外で中国軍の航空機や艦艇を通常兵器で攻撃する場合でも、米国本土に対する中国の核攻撃は正当化される」

 「(米国による攻撃の結果)中国は西安以東のすべての都市の破壊を覚悟しなければならない。しかし、米国も数百の都市の破壊を覚悟せねばならない」

 他人の空言みたいに日本人は無関心であるが、日米同盟に基づく米国の武力発動を牽制して、「核の傘」を機能不全にしようとする普段からの工作であろう。

2008年に訪中した米太平洋軍司令官のティモシー・キーティング海軍大将は米上院軍事委員会公聴会で、中国海軍の高官が「太平洋を分割し、米国がハワイ以東を、中国が同以西の海域を管轄してはどうか」と提案したことを明らかにしている。

 先の尖閣諸島における中国漁船の衝突事案がらみでは、人民解放軍・中国軍事科学会副秘書長の要職にある羅援少将が次のように語っている。

 「日本が東シナ海の海洋資源を握れば、資源小国から資源大国になってしまう。(中略)中国人民は平和を愛しているが、妥協と譲歩で平和を交換することはあり得ない」と発言し、また「釣魚島の主権を明確にしなければならない時期が来た」

 こうした動きに呼応するかのように、中国指導部が2009年に南シナ海ばかりでなく東シナ海の「争う余地のない主権」について「国家の核心的利益」に分類したこと、そして2010年に入り中国政府が尖閣諸島を台湾チベット問題と同じく「核心的利益」に関わる問題として扱い始めたと、香港の英字紙が報道した。

中国の「平和目的」は表向き!


 1919(大正8)年、魚釣島付近で福建省の漁民31人が遭難したが、日本人が救助し無事に送還した。それに対して中華民国長崎領事が「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島・・・」と明記した感謝状を出している。

 中国が同諸島の領有権を主張し始めたのは国連の海洋調査でエネルギー資源が豊富にあることが判明した1970年代で、領海法を制定して自国領に組み入れたのは1992年であるにもかかわらず、「明確な日本領」を否定するためか、最近は「古来からの中国領土」とも言い出している。

 実際、首相が横浜APECで“首脳会談を開けた”だけで安堵している間に、ヘリ2機搭載可能で機銃まで装備していると見られる新鋭漁業監視船を含む2隻が接続水域に出没している。

 海保巡視船の警告に対しては「正当に行動している」と返事するのみである。

 中国の言う「正当な行動」とは中国の領海法に基づくもので、尖閣諸島に上陸しても正当化されるということにほかならない。現に、石垣市議2人が上陸したことに対し、中国外務省は「中国の領土と主権を著しく侵犯する行為」という談話を発表した。

 漁船がさほど見当たらないにもかかわらず漁業監視船が接続水域を彷徨しているのは、日本人の感覚を麻痺させる(あるいは既に上陸しているかもしれない)のを隠蔽する作戦のように思われる。

 係争の真っ只中で、そうした行動が取れるはずがないという識者も多いが、「尖閣は後世の判断に任せる」、あるいは「ガス田の協議をする」などの合意を平気で反故にしてきた中国である。何があってもおかしくない。

20年余にわたって2桁台の軍事力増強を図ってきた中国に透明性を求めると、「平和目的」であるとの主張を繰り返す。中国の「平和目的」は異常な軍事力増強の言い逃れであり、露わになってきた覇権確立のカムフラージュでしかない。

 軍事力増強と尖閣沖漁船衝突のような異常な行動、さらには北朝鮮の無謀をも擁護する中国の姿勢が日米(韓はオブザーバー)や米韓(日本はオブザーバー)の合同軍事演習の必要性を惹起させたのであるが、中国はあべこべに自国への脅迫であるとクレームをつけている。

 現時点では指導部の強権でインターネット規制などをしながら、人民には愛国無罪に捌け口を求めさせることで収拾している。

 しかし、矛盾の増大と情報の拡散で人民を抑えきれなくなった時、衣の下に隠された共産党指導部の意図が、ある日突然行動に移されないとは言えない。

米国を頼れる時代は終わりつつある!


 日本人で米国の「核の傘」の有効性に疑問を呈する者は多い。歴史も伝統も浅い米国は、「国民の国民による国民のための政治」を至上の信条としており、行動の基本は世論にあると言っても過言ではないからである。

 フランクリン・ルーズベルトは不戦を掲げて大統領選を戦い、国民はそれを信じて選んだ。しかし、第2次世界大戦が始まるや、友邦英国の苦戦、ウィンストン・チャーチルの奮戦と弁舌巧みな哀願を受けた大統領は、米国民のほとんどが反対する戦争に参加する決心をした。

当初はドイツを挑発して参戦の機会を探るが、多正面作戦を嫌うドイツは挑発に乗らなかった。

 そこでルーズベルトは日本を戦争に巻き込むことを決意し、仕かけた罠が「ハル・ノート」を誘い水として真珠湾を攻撃させることであった。

 日本の奇襲作戦を「狡猾(トリッキィー)」と喧伝し、米国民には「リメンバー・パールハーバー」と呼びかけて国民を参戦へと決起させたのである。

 逆に、世論が政府を動かないようにさせることも当然あり得る。核に関して言うならば、被害の惨状に照らして、国民が政府に「核の傘」を開かせないという事態が大いにあり得る。

 虎将軍ら中国軍高官の発言は、普段から米国民にこうした意識を植え付けて、米国が日中間の係争に手を出せないように仕向ける下地つくりとも思われる。

米国初代のジョージ・ワシントン大統領は「外国の純粋な行為を期待するほどの愚はない」と語っている。

 日米安保が機能するように努力している現在の日本ではあるが、有事において真に期待できるかどうか、本当のところは分からない。能天気に期待するならば、これほどの愚はないということではないだろうか。

 今こそ、日米同盟を重視しながらも、「自分の国は自分で守る」決意を持たないと、国家としての屋台骨がなくなりかねない。

 中でも「核」問題が試金石であると見られる。親米派知識人は、「日本の核武装を米国が許すはずがない」の一点張りであるが、あまりにも短絡的思考である。

 日本の核論議が日米同盟を深化させ、ひいては米国の戦略を補強するという論理の組み立てをやってはいかがであろうか。

 米国が自国の国益のために他国を最大限に利用し、また国家戦略のために9.11にまつわる各種事象を操作(アル・ゴア著『理性の奪還』)したりするように、日本も自立と国益を掲げて行動しないと、米中の狭間に埋没しかねない。

核拡散防止条約(NPT)は高邁な趣旨と違って、保有を認められた5カ国の核兵器削減は停滞しているし、他方で核保有国は増大している。

 「唯一の被爆国」を称揚する日本であるゆえに、道義的観点並びに核に関するリアリズムに則った新条約などを提案する第一の有資格者である。

 同時に、地下鉄サリン事件の防護で有効に対処できた経験を生かし、核にも有効対処できるように準備する必要がある。

 その際、形容矛盾の非核三原則ではなく、バラク・オバマ大統領の言葉ではないが、「日本は核保有国になれるが、保有しない」(Yes, we can, but we don’t)と闡明し、しっかり技術力を高めておくのが国家の使命ではないだろうか。

 ヒラリー・クリントン米国務長官は「尖閣には日米安保条約第5条が適用される」と言明した。

 しかし、かつて一時的にせよ、ウォルター・モンデール元駐日米大使が「適用されない」と発言したように、政権により、また要人により、すなわちTPO(時・場所・状況)に左右されると見た方がよい。

 

米国では従軍慰安婦の議会決議に見た通り、チャイナ・ロビーの活躍も盛んである。

 ましてや、既述のように決定の最大要因が国民意思であるからには、核兵器の惨害が米国市民数百万から1000万人に及ぶと見られる状況では、「核の傘」は機能しないと見るのが至当ではなかろうか。「有用な虚構」であり続けるのは平時の外交段階だからである。

先人の血の滲む努力を無にするな!


 日本は明治維新を達成したあと、範を欧米に求めた。新政府の要路にある者にとって自分の地位が確立していたわけでもなく、また意見の相違も目立つようになり内憂を抱えていた。

しかし、それ以上に外患に備えなければ日本の存立そのものが覚束ないという思いを共有していた。そこで、岩倉具視を団長とする米欧使節団を送り出したのである。

 一行には木戸孝允、大久保利通、伊藤博文などもいた。1年10カ月にも及ぶ長期海外視察は、現役政府がそのまま大移動するようなもので、不在間の案件処理を必要最小限に留めるように言い残して日本を後にしたのもゆえなしとしない。

 よく言われるように、英国を観ては「40年も遅れている」とは受け取らず、「40年しか遅れていない」と見て、新興国日本の明日への希望を確認した。

 また、行く先々で文明の高さや日本と異なる景観に感服するところもあったが、その都度、好奇心を発揮して記憶にとどめ、また瀬戸内海などの素晴らしい景観があるではないかと、「日本」を決して忘れることはなかった。

 米国のウエストポイント陸軍士官学校を訪れた時は射撃を展示され、そのオープンさにびっくりするが、日本人ならばもっと命中させると逆に自信の程を高めている。

 ことほどさように、初めて外国を視察しているにもかかわらず、その目は沈着で、異国情緒に飲み込まれることもなく、基底に「日本」を据えて比較検証しようとしている。

 こうした見識はひとえに、為政者として日本の明日を背負って立たなければならないという確固たる信念がもたらしたと見るほかはない。

 代表団が特に関心を抱いたことは、小国の国防についてである。オランダ、ベルギー、デンマーク、さらにはオーストリアスイスなどを回っては、日本の明日を固める意志と方策を見出そうと懸命である。

もう1つ、国際社会に出ようとする日本が関心を持ったのは万国公法(今日の国際法)についてであった。プロシアの鉄血宰相ビスマルクの話には真剣に耳を傾け、また参謀総長モルトケの議会演説にも強い関心を持った。

 概略は次のようなものだった。

 「世界各国は親睦礼儀をもって相交わる態度を示しているが、それは表面上のことでしかない。内面では強弱相凌ぎ、大小侮るというのが実情である。万国公法は、列国の権利を保全する不変の法とはいうものの、それは大国の利のあるうちでいったん不利となれば公法に代わる武力をもってする」(ビスマルク)

 「政府はただ単に国債を減らし、租税を軽くすることばかりを考えてはならない。国の権勢を境外に振るわすように勤めなければならない。法律、正義、自由などは国内では通用するが、境外を保護するのは兵力がなければ不可能である。万国公法も国力の強弱に依存している」(モルトケ)

このことは、現在にも通用する。しっかり反芻し、記憶することが大切である。

 日本は「唯一の被爆国」や「平和憲法」を盾に、国際情勢の激変にもかかわらず官僚的手法の「シーリングありき」で累次の「防衛計画の大綱」を策定してきた。

 こうした日本の無頓着で内向的対応が、周辺諸国の軍事力増強を助長した面はないのだろうか。

 明治の為政者たちが意識した外国巡視に比較して、今日の政治家の海外視察はしっかりした歴史観も日本観も希薄に思えてならない。

歴史の教訓を生かす時!


 ここで言う歴史の教訓とは、明治の先人たちが命懸けで体得した「国際社会は力がものをいう」というリアリズムである。今日ではそのことが一段と明確になっている。

 アテネはデモクラシー(民主主義)発祥の地であり、ソクラテスやプラトンを輩出したことで知られている。

 そのアテネでは人民(デモス)の欲望が際限なく高まり、国家はゆすり、たかりの対象にされ、過剰の民主主義が国力を弱体化させていく。

 専制主義国家スパルタとの30年戦争の間にも国民は兵役を嫌い、目の前の享楽に現を抜かし道徳は廃れ、ついに軍門に下る。

 その後、経済も復興するが、もっぱら「平和国家」に徹し続け、スパルタに代わって台頭した軍事大国マケドニアに無条件降伏を突きつけられる。一戦を交えるが惨敗して亡国の運命をたどった。

例を外国に求めるまでもない。日本にも元禄時代があった。男性が女性化し、風紀は乱れ、国家の将来が危ぶまれた。この時、出てきたのが「武士道といふは死ぬことと見つけたり」で膾炙している『葉隠』である。

 ことあるごとに死んでいたのでは身が幾つあってもたまらないが、真意は「大事をなすに当たっては死の覚悟が必要だ」ということである。 

 こうした考えが、自分たちのことよりも国家の明日を心配した米欧派遣の壮挙につながった。日本出発から1カ月を要してようやくワシントンに着くが、いざ条約改正交渉という段になって天皇の委任状のないことを指摘され、大久保と井上博文はその準備に帰国する。

 往復4カ月をかけて再度米国に着いた時には、軽率に条約改正する不利を悟り代表団が米政府に交渉打ち切りを通告していた。

 何と無駄足を運んだかとも思われようが、当時の彼らにとっては、国力の差を思い知らされる第1章と受け取る余裕さえも見せている。

 国家を建てる、そして維持することの困難と大切さを身に沁みて知ったがゆえに、華夷秩序に縛られた朝鮮問題で無理難題を吹っかけられても富国強兵ができる明治27(1894)年まで辛抱したのであり、三国干渉の屈辱を受けても臥薪嘗胆して明治37(1904)年までの10年間を耐えたのである。

佐藤栄作政権時代に核装備研究をしていたことが明らかになった。「非核三原則」を打ち出した首相が、こともあろうにという非難もあろう。

 しかし、ソ連に中立条約を一夜にして破られた経験を持つ日本を想起するならば、「日本の安全を真剣に考えていた意識」と受け取り、その勇気に拍手喝采することも必要ではないか。

 国際社会は複雑怪奇である。スウェーデンスイスも日本人がうらやむ永世中立国である。その両国が真剣に核装備を検討し、研究開発してきたことを知っている日本人はどれだけいるであろうか。また、こうした事実を知って、どう思うだろうか。

 「密約」を暴かずには済まない狭量な政治家に、そんな勇気はないし、けしからんと難詰するのが大方ではないだろうか。しかし、それでは国際社会を生き抜くことはできない。

終わりに
 漁船衝突事案では、横浜APECを成功させるために、理不尽な中国の圧力に屈した。日本は戦後65年にわたって、他力本願の防衛で何とか国家を持ちながらえてきた。

 しかし、そのために国家の「名誉」も「誇り」も投げ捨てざるを得なかった。今受けている挑戦は、これまでとは比較にならない「国家の存亡」そのものである。

 米国から「保護国」呼ばわりされず、中国に「亡失国家」と言われないためには、元寇の勝利は神風ではなく、然るべき防備があったことを真剣に考えるべきである。

 そのためにはあてがいぶちの擬似平和憲法から、真の「日本人による日本のための日本国憲法」を整備し、名誉ある独立国家・誇りある伝統国家としての礎を固めることが急務であろう。

一触即発の中国・朝鮮半島情勢。米・韓・中、そして北朝鮮とどう渡り合えばいいのか!

2011年01月12日(水)現代ビジネス

---年が明けて早々ですが、今年、北朝鮮では金正日(キム ジヨン イル)総書記から三男への権力委譲が予想され、中国では、次期統治者と目される習近平(シー チン ピン)党中央軍事委員会副主席による軍事力増強が懸念されます。

 日本の新防衛大綱には「動的防衛力」というこの2国を意識した考え方が盛り込まれ、国防を考える絶好のタイミングと思い、この対談を企画しました。まず、記憶に新しい出来事は、11月に起きた北朝鮮による韓国・延坪島(ヨン ピヨン ド)への砲撃です。

三原 祝日(11月23日の勤労感謝の日)で国会はなく、翌朝、自民党の国防部会に出席して、何時に何が起きたのかという時系列を把握しました。あらためて現内閣の危機管理のなさに呆れましたね。

アメリカオバマ大統領韓国李明博(イ ミヨン バク)大統領と電話で協議し、砲撃直後に「言語道断の行為を強く非難するために国際社会と協力する」と声明を出しています。

 一方、「強く非難する」と、仙谷由人(せん ごく よし と)官房長官が公式見解を発表したのが発生から7時間過ぎの夜9時半頃、菅直人首相に至っては翌日でした。防衛省の危機管理は、どうなっているのでしょう。

田母神 現在の自衛隊は、総理大臣の決裁なしでは何一つできない、むしろ何か命じられないうちは動いてはいけないという雰囲気が蔓延しているんです。

 「自衛隊が動くとロクなことにならないから、言われたことだけやれ」というのが政府の本音。もっと言えば、「現場に任せると戦争になる」とさえ思われています。

三原 「制服組の自衛官は何も考えるな」というのが日本流のシビリアンコントロール(注1)だということですか。

田母神 シビリアンコントロールの根幹の考え方は、外交問題が生じた際、問題を解決するのに軍隊を使うか、使わないかの決定権を政治の側が持っているという点にあります。

 政治家が他国と話し合いで解決しようとしたが、どうにも打開できない場合、「では、ここから先は軍を使う」と決断する局面が存在するわけです。

 さらに、政治家が達成する目標を軍に伝え、あとの方法論は軍に任せるというのが、普通の国のシビリアンコントロールなんですね。

 ところが、日本では「自衛隊は軍隊ではない」からと、今そこにある危機を自衛隊には判断させない。では、政治家が判断できるのかね。

三原 無理ですね。まず、情報が入ってくるかどうかが心許ない。先ほどの話、李明博大統領はオバマ大統領にはすぐ電話で有事を伝えましたが、日本への連絡は優先順位が低かった。

 自衛隊を動かさない日本に電話をかけても無駄だと思われたのでしょう。

 9月に起きた、中国漁船が海上保安庁の巡視艇にぶつかってきた事件でも同じですが、結局、民主党の中に中国韓国アメリカと渡り合えるパイプがないことを証明したんです。自民党時代はパイプがあったはずです。

田母神 だとしたら実に恐ろしい。政権が替わっただけで、外務省をはじめ役所の組織に何ら変更はないのに、彼らが機能しなくなったことになる。

三原 ですよね。本来、ずっとそれを専門にしてきた外務省の官僚が、各国との間にパイプを築いていないはずがない。要は、政権のために動かないんです。

民主党=中国自民党=米国
田母神 日本の政治は、「政治主導」と言い出してからおかしくなったね。だいたい、「官僚支配=悪」の図式は、アメリカ発、中国発で日本の統治機構を弱体化させるために仕掛けられた情報戦争なんですよ。政治家が大臣になった途端、その省庁のあらゆることに精通できると思いますか? 官僚という専門家をうまく使えばいいじゃないですか。

三原 自国だけは得をしようという国際政治において、日本は情報戦争の渦中にあるという自覚がないですね。G2(注2)どちらにとっても、日本に力をつけられては困る。なのに民主党政権が率先して、強国の戦術に乗ってしまっている。

田母神 自民党は、どちらかというとアメリカ寄りの政党です。そして民主党はどちらかというと中国寄りの政党です。アメリカの政治家はアメリカ派でしょうし、フランスの政治家はフランス派です。

 日本だけ、日本派の政治家がほとんどいないんですわ。自民党石破茂政調会長は「核武装すべきではない」と主張していますが、アメリカが核武装を容認しても反対するのか、甚だ疑問ですね。

三原 国内で与野党が米中に分かれて争っている最中、メディアの大多数が中国派にシンパシーを感じているのでしょうね。だから、民主党の政権運営がどれだけひどくても、当時の自民党と同じレベルで批判されることはありません。

田母神 気になったのは、尖閣の海で今、何が起きているかを、マスコミが伝えないことです。石垣島や宮古島にいる知人に聞けば、中国の漁船が大挙して日本の漁師が仕掛けた網を破り、追い払おうとすると中国の巡視船が体当たりしようと威嚇してきて、日本の領海、あるいは経済水域であるにもかかわらず、安心して操業できないのだそうです。

 海保なり海上自衛隊が監視し、警告を出さないと事態は打開できない。尖閣事件の背景を報じようとしないのは、日本のメディアが中国寄りだからかと勘繰りたくもなる。

三原 自民党はビデオ流出後、政党としては最初に石垣島に柴山昌彦先生・森まさこ先生を調査団として派遣して、巡視船「みずほ」の船長と乗組員の方々に話をうかがいました。海保が撮影した尖閣の映像は2時間ありますが、最後に相手の船に乗り移るシーンがあります。

 波の荒れ方も凄く、さらに相手が何人いるかも、武器を携行しているかも分からない船に、丸腰で向かったことが一番怖かったと話していました。その話を党に持ち帰ったのですが、マスコミは与党からの情報をメインに報道しますから・・・。

田母神 ところで、私は尖閣事件の映像を流出させた海保の職員の行動を支持しているんです。この意見を公に発言したら、自衛隊、海保、警察の職員からメールや手紙がたくさん寄せられましてね。彼らは「上官の指示に従わないことが許されていいのか」と質問してきます。

 ただ、今回の事案は、世論調査で8〜9割の人が公開したほうが日本のためだと考えています。「首相官邸が見せないと言っているから」と放置するか、「上の指示には反するが、国家のことを考えて己の処分を顧みずに行動する」という選択肢のうち、後者を選んだ彼を支持したい。そういう人のほうが、まともですよ。

---政府は衆・参両院の予算委員会の理事ら約30人を対象に、2時間以上ある一部始終のうち約7分間だけを編集して映像を見せました。海保職員が動画共有サイト『YouTube』に映像をアップしたのは、その3日後のことでした。

三原 その映像が流出した後も政府は見せないと言い続けていましたよ。現実にパソコンで見ることができるのに、あまりにナンセンスで非難囂々でした。結局、映像をした海保職員も被害者なんですよ。

 もっと本当に早い時点で政府が映像を公表し、中国側の一連の行動が国際社会で通用するものかを問いかけ、外交のカードとして使うべきでした。そうしていれば、彼という個人が義憤にかられた行動を取ることもなかったのです。

田母神 まあ、三原先生には申し訳ないが、程度の差はあれ、歴代自民党政権もことなかれ主義でしたよ。「竹島(注3)周辺では韓国と、日中中間線(注4)付近では中国といざこざを起こすな。むしろ自衛隊も海保もそこに行くな」というのが従来の自民党からの指示でした。

 結果、竹島は実効支配され、尖閣の海ではこのようなことが起きる。いざこざが起きたとしても、即戦争にはならないことを、国会議員が信じていないんですよ。世界中の国が国際法に基づいて、領土・領海・領空の警備をし、中には銃撃戦も行われている。しかし、それらがすべて戦争にまで発展していますか?

三原 自民党も世代交代で、田母神先生が当時抱いたイメージから脱却しようとしています。野党になったことで、本当に言いたいことが言えるようになりましたしね。また、竹島問題についても自民党の新藤義孝先生(元外務政務官)が政府を厳しく追及しています。

 昨年の秋以降、韓国がヘリポートの改修工事を予算化し、沖合には15階建て相当の海洋科学基地建設が新たに計画されているのに、民主党政権は状況を国民に公表せず、韓国に対して何も抗議を行っていません。岡田克也幹事長は外相時代、「不法占拠とは言わない」と答弁しましたが、国民と領土を守るという自覚がないのかと呆れましたよ。

 

田母神 結局ね、「何をやっても日本は抗議はしない」と思われているから、どんどん踏み込まれていくんですよ。こんなデータがあります。'04〜'07年の4年間で、韓国の海上警察が違法操業を理由に拿捕した中国漁船の数は2037隻、逮捕者は2万人を超え、支払わせた保釈金の合計は日本円にして約18億円だそうです。

 中には銃撃戦になったケースも含まれているし、死者も出ている。ですが戦争には至っていない。さらに言えば、韓国に対して中国は黙ってカネを支払っています。日本には素直に支払うでしょうかね。要は、ナメられているんです。

三原 田母神先生がある雑誌で、こちらが武器を持っていないということが、逆に相手からすると攻撃を誘発する可能性を高めるとお書きになっていましたね。

田母神 強い者には手を出さないんですよ、国際社会は。自国が不利益を被ったら、相手国に「ふざけたこと言ってるとぶん殴るぞ」という態勢で臨むから相手も交渉に応じますが、日本の場合、「ふざけたこと言ってると話し合うぞ」という姿勢ですからね(笑)。

自分で自分を守る"大人の国"
三原 アメリカとの付き合い方をより真剣に考えていかなくてはいけない段階に入ったと思うんですが、特に尖閣事件では、日米安全保障条約の第5条(注5)の話が出ましたが、はっきりしたことは、日本の自助努力なくして日米同盟はあり得ないという事実だと思いました。そのへん、日本人の認識は甘いですね。

田母神 日本国民のほとんどが知らないと思いますが、第5条で日本が攻撃を受けたらアメリカが自動的に戦争に参加して日本を守ってくれることにはなっていません。まず、大統領が日本を守るよう軍に命令を下さなければ米軍は行動できません。さらに大統領命令は、有効期間は2ヵ月に限定されています。

 それを過ぎると、連邦議会の同意が必要となります。反日的な法案が年がら年中通る議会で、すんなり日本を守る法案が通るはずがない。仮に日本を助けるなんて言ったら、中国は「米国債を全部売りましょうか」「ワシントンに核ミサイルをお見舞いしましょうか」と脅すでしょうね。尖閣問題が、アメリカがリスクを負ってまで乗り出す案件でないことは確かです。

三原 普天間基地の問題がクローズアップされて、多くの国民は沖縄県民に負担が傾斜していることを実感しましたが、同時に尖閣のことがあって、沖縄本島にアメリカ軍がいる限り、中国が沖縄本島に手を出してこないことも実感したのではないでしょうか。日米安保が抑止の機能を果たしているのは事実です。

田母神 日米関係を維持しながら、自分の国を自分で守る体制がある"大人の国"、あるいは"普通の国"を目指すべきなんです。アメリカの介入をまず望めない国際的な衝突が起きることを、私たちは目の当たりにした。だからこそ、日米安保による抑止の問題とは切り離して、まずは日本の自衛隊が国を守るべく行動できる法整備を考えなくてはならない。

三原 仮に、北朝鮮が今回以上の攻撃行動に出た場合、自衛隊はどこまで動くことができるのでしょうか。

田母神 日本は戦争に出掛けることはできません。朝鮮半島に進出した米軍は、軍人を輸送機で近い日本に運ぶでしょう。その輸送機を北朝鮮の戦闘機が追いかけてきて撃墜するかもしれない。日本のF-15は米軍機を守ろうとするでしょうが、今の法体制だと、北朝鮮機だろうと撃ち落とせば殺人罪が適用されます。

 米軍の輸送機を見殺しにすれば、この瞬間、日米同盟はジ・エンドです。要は、自衛隊も軍なのだから、国際法に基づいて動けるようにしたらいいんです。

---ただ、'10年度の防衛予算は4兆7000億円あまりと8年連続で減少しました。自主防衛は、やろうと思っても難しいのが現状ではないでしょうか。

三原 国家の財政が苦しいからという理由は成立しないですよ。要は、子ども手当として約4兆8000億円をばらまくのと、国防に関わる予算、どちらに優先的におカネを割くかという話なんです。

田母神 子ども手当の半分以下でも毎年防衛予算に組み込めば、10年で立派に中国の軍拡に対抗できるようになります。川崎重工は航空自衛隊の輸送機と海上自衛隊の対潜哨戒機(注6)を同時に開発しましたが、開発費は約4000億円です。

 現在、ロシア、中国が第5世代と言われる次世代戦闘機の開発を進めており、制空権を奪われる可能性は現実にある。しかし、10年間で1兆円使うくらいの予算で国産戦闘機は十分開発できる。

原 軍事費増強の話なんてすると、「右翼」だと片づけられそうですね。しかし、尖閣、北朝鮮と現実の脅威のほうが理屈を凌駕し始めている。もはや根本的に何かを変える時期が近づいてきています。国防とか経済って全部丸い円でつながっているんです。

 国防が強ければ経済も強くなれる。国防はボディで、経済が顔ってところですかね。私風に言えば、「顔も大事だけどボディを鍛えな」(笑)。

田母神 経済大国は軍事大国にならざるをえない。札束を置いたまま戸締まりもせず外出する金持ちが、治安を悪くしているとも言えるんです。「軍事大国にならない」と宣言することは、世界の治安維持上、無責任だと自覚すべきです。

 航空幕僚長だった私は「大東亜戦争は侵略戦争ではなく、中華民国アメリカを操ったコミンテルンによる策謀が原因だ」と、村山談話(注7)を否定する論文を書いてクビになりました。しかし、「核武装すべきでない」という意見がある一方で、「核武装すべき」という意見も冷静に言うことができなければ、成熟した民主主義の国とは言えないと思いませんか。

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