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平成22年 第12回「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」(松江市)有機栽培・JAS認定部門で特別優秀賞を受賞。(食味90・味度83・計173点) 平成25年、第15回魚沼と第16回北京開催運動中! 無農薬魚沼産コシヒカリ生産農家・理想の稲作技術『CO2削減農法』 http://www.uonumakoshihikari.com/
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植物工場
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E5%B7%A5%E5%A0%B4

産経新聞 11月28日(日)

【現場発 ニュースを見に行く】

 施設内で効率的に野菜を栽培する植物工場が注目を集めている。店内で栽培し、その場で新鮮な野菜を提供する“店産店消”の店も登場した。コストがかかり露地物より割高になることが多いが、猛暑の影響で10月に野菜が高騰した際は、工場野菜の方が安くなる“逆転現象”も起こった。肥料や水などの資源を無駄なく使えるため、環境にも配慮した「未来の産業」として期待が高まっている。(油原聡子)

■まるでインテリア

 今春オープンしたイタリア料理店「ラ・ベファーナ汐留店」(東京都)。店に入ると、正面に小型の植物工場が設置されていた。高さ約2・3メートルのケース内には、幅約5・3メートル、奥行き70センチの棚が5段重ねられ、レタスなど4種類の葉物野菜が蛍光灯の光の下で、水耕栽培されていた。薄暗い店内の中心で、青々とした葉が光り、まるでインテリアだ。

 レタスの成長速度は露地栽培の3分の1の約30日。主な作業は週に1回程度、水を換えるだけという手軽さだ。店で使う半分を無農薬で栽培、毎朝約60株を収穫している。1年で2万株収穫可能だ。

 店内で栽培したレタスを使ったサラダを食べていた千葉県柏市の男性会社員(31)は「工場で野菜を作るなんて未来のイメージがある。柔らかい食感で、味もおいしい」と満足げだ。

 同店では、生産者の顔が見える「安心安全」の側面から植物工場を取り入れたが、マネージャーの大島力也さん(44)は「10月に猛暑の影響で野菜が高騰したとき、レタスの値段が3倍から4倍に上がったが、店で作っていたから影響は少なかった」と話す。光熱費などはかかるが「通年で見れば畑の無農薬野菜よりやや高いくらいでは」。

    ■環境負荷少なく

 植物工場は、太陽光を使わずに完全人工制御する「完全人工光型」と、太陽光を使うが雨や曇りの時に照明や室温制御を行う「太陽光利用型」がある。土壌を使わない水耕栽培が一般的で、基本的には無農薬だ。

 工場野菜に詳しい千葉大学の池田英男客員教授(62)=施設園芸学=は「生育環境をすべて制御するのが植物工場。少ない資源で効率よく生産でき、環境への負荷が少ない」と話す。現在は葉物野菜が中心で、露地栽培に比べて汚れがほとんどない分、無駄に捨ててしまう部分も少なくて済むという。肥料を効率的に吸収させることが可能で、水も循環利用できる。店産店消なら輸送コストもかからず梱包(こんぽう)資材も必要ない。何もしなければ味は薄めになるが「栽培次第で味も栄養素も調整できる」と池田教授。

 課題は採算性だ。施設建設費や運営費などがかかり、露地物より割高になることも多い。

 ただ、年間を通じて値段が一定となるため、野菜が高騰すると露地物より安くなることもある。工場産のサニーレタスを使用する焼き肉チェーン店「叙々苑」(東京都)の担当者は「天候に左右されず、1年中、安定した価格で仕入れられるのがメリット。農薬を使っていないし、露地物と比べて異物がほとんどないので使い勝手が良い」と話す。

 池田教授は「大量生産と機械化でコストが削減できればビジネスとして成り立つ」と指摘する。

 ■海外や南極でも

 植物工場は海外にも広がっている。池田教授によると、オランダは太陽光利用型の植物工場先進国。野菜だけでなく、花木も工場で栽培するのが主流だ。作業時には栽培棚が動くため、通路のスペースもほとんど必要なく、工場内の空間を有効利用し、大量生産を実現している。ハウス環境の改善やコンピューター技術の向上も進んだ結果、1970年ごろにはトマトの千平方メートルあたりの収穫量が年間約20トンだったのが、2000年ごろには約60トンと30年で3倍になったという。

 環境の厳しい南極にも設置されている。国立極地研究所によると、南極の昭和基地では野菜栽培設備として1基が稼働、レタスなどの葉物野菜を栽培しているという。担当者は「基地での食事は、基本的には冷凍食品が中心。新鮮な野菜が食べられるのはありがたい」。

 人工光での栽培技術は世界的に日本が進んでおり、経済産業省では中東諸国への輸出を推進している。三菱化学(東京都)は、今年からコンテナ型の野菜工場の販売を開始した。レタスなら1日50株、年間1万8千株が収穫可能だという。中東・カタールの実業家に1基納入が決まっている。中東諸国を中心に、ロシアやオーストラリアからも問い合わせがあるという。 

 ■企業も熱視線

 農林水産省によると、工場野菜が比較的多いレタスでも市場流通は1%に満たないが、企業の参入が進んでいる。食の安全や食糧自給率の問題を背景に、低コスト化と製造技術の向上が急速に進んでいるからだ。矢野経済研究所(東京都)によると、植物工場の平成20年度の新規工場建設市場の実績は16億8千万円だが、平成30年度には100億円を超え、平成32年度には129億円の規模に拡大すると予測している。

 日本サブウェイ(東京都)も植物工場に積極的に取り組んでいる。併設店を7月に都内にオープン。10月に初収穫を行った。大阪府立大学と植物工場の共同研究も開始し、来春には、店舗で使用するレタスの全量をキャンパス内で生産する“学産学消”の店舗を開店する。

 培った技術力を生かそうと建設業など異業種からの参入も多い。ラ・ベファーナ汐留店に植物工場を販売した電通ワークス(東京都)の本業は不動産仲介だ。同社には老人ホームなどからも問い合わせがある。経営計画部の津倉尚子さん(46)は「新たな雇用や新規事業を求めているようです。低コスト化が進めば一気に普及するのでは」。

 山梨県の運送会社「山梨通運」では今年の4月から、使っていなかった倉庫を利用して植物工場を始めた。リーフレタスを栽培し、1日60株を収穫。地元の直売所やホテルに納入しているという。同社の定年は60歳だが、大型トラックの乗務は55歳までだ。担当者は「社内で再雇用の受け皿を作りたかった。栽培もマニュアルがあるので失敗はないです」。現在は再雇用のスタッフも含めて4~5人が栽培を担当しているという。

 砂漠や寒冷地という自然環境に関係なく、野菜の栽培が可能な植物工場。農業の後継者不足や食糧危機など、人間の未来を変える可能性が秘められている。

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雑穀
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%91%E7%A9%80

ドラッカーで読み解く農業イノベーション(5)

2010.11.26(Fri) JBプレス 有坪民雄

「ニーズに基づくイノベーションは、まさに体系的な探求と分析に適した分野である」(『イノベーションと企業家精神』ピーター・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社)

コメ専業農家に作物の転換を促す!

前回から、コメ専業の大規模農家がどうやって生き延びていけばいいのかを考えています。

 兼業農家との競争によって大規模専業農家がバタバタとつぶれていく悪夢を回避する方法は2つあるとお話ししました。

 1つは、もうしばらく減反制度を続け、兼業農家がこれ以上は減らないと考えられる水準まで落ちてから、減反を廃止するか否かを決めることです。

 今回、お話しするのはもう1つの方法です。それは、発想を逆転し、専業の大規模コメ農家に作物の転換を促すことで需給の調整を行うことです。

 すなわち、コメ以外の作物で、単位面積当たり労働時間がコメ並みの作物を開発するというイノベーションです。

 農水省が政策的に推したいのは麦やトウモロコシ、大豆など、自給率が低い国際商品となりますが、筆者が注目しているのはアワ、ヒエ、キビなどの雑穀です。なぜなら、この分野は国際商品と比べ、単価がべらぼうに高いのです。

 生産者が業者に売り渡す価格でも、だいたいコメの2倍。小売りされる末端価格では1キロ2500円程度。魚沼産コシヒカリの中でも最も高価とおぼしき「天空米」とほぼ同価格ですから、いかに高価に取引されているのか分かるでしょう。

 余計なことを書けば、これほど高価だからこそスティック状にパッケージングし、ご飯と混ぜることを勧める売り方をされるのです。5キロ袋などで売れば、あまりの高価さに顧客は驚き、購入意欲をなくしかねません。

農家はなぜ雑穀を作らないのか
 閑話休題。健康食として人気の高いアワやヒエなどの雑穀は、国産のものがほとんどありません。統計はありませんが、現在日本で流通している雑穀の99%以上は輸入物と見られます。

 なぜ、国内農家は雑穀を作らないのでしょうか?

 その理由は、第1に収量が低いことです。雑穀の収量は米の半分程度。2倍で取引されるとしても1反当たりの収入は米と同じ程度です。基本的に畑作物なので、除草の手間を考えるとコメほど魅力がありません。

 第2に、機械化があまり進んでおらず、作業時間が多くなりがちになることが挙げられます。日本最大の雑穀生産地は岩手県で、特にヒエの生産に力を入れています。岩手県がヒエに力を入れるのは、水に強いためコメ同様の栽培が可能で、コメ用の機械の多くが少しの改造で流用できるからです。

 第3に合法的に使える農薬が少ないことです。2002年7月、全国で「ダイホルタン」という農薬が無登録で使用される違法農薬事件が発生して、使ってよいとされる作物以外に農薬を使うことが禁止されました。

 雑穀はイネ科の作物なので、病害虫もコメとほぼ同様のものが発生します。そのため昔ならコメ用の農薬を使えば防除はできました。しかし現在では、適用外使用は農薬取締法に引っかかってしまいます。

 農薬メーカーが、コメ用の農薬を雑穀にも使えるように適用を拡大すればいいのですが、農薬メーカーはなかなかやってくれません。雑穀の国内生産がほとんどないため、適用拡大の手間ひまと費用の割に売り上げが拡大しないからです。

 そのため改正前から適用のあったハトムギ用を除けば、違法農薬事件から8年も経つ今でも、除草剤が1つ適用を認められた程度で、雑穀の適用拡大登録は全くと言っていいほどなされていません。

既存技術で対応は可能!

 しかし、こうした制限が外れればどうなるでしょうか?

日本はコメの品種改良の技術は世界トップクラスです。昔はコメも雑穀も収量は同程度でした。現在、コメが雑穀の倍取れるのは、日本人が雑穀を一顧だにせずコメの改良に集中してきたからです。

 コメで培った品種改良の技術を使えば、雑穀は比較的短期間に収量をコメ並みに、あるいはそれ以上に引き上げることができるでしょう。そうなれば、雑穀はコメの倍儲かる作物になります。

 機械化の問題も、技術的に困難な部分はありません。中耕除草用のカルチベーターは、ジャガイモなどに使われる既存の機械をそのまま使えますし、他の機械もコメ用の技術に少々手を入れれば対応は可能です。簡単な改良だとコンバインの収穫物を選別する網の目を細かくする程度で済みます。

 メーカーが雑穀用の機械を作らないのは、需要が少なく、採算に乗らないからに過ぎません。農薬メーカーも採算が取れるなら雑穀の農薬を適用登録するでしょう。すなわち、既存技術で全て対応可能なのです。

鳥獣被害を防ぐのではなく、「被害を少なくする」!

 そして、多くの雑穀には、兼業農家には参入しにくい特徴があります。小規模でやれば鳥害で壊滅的打撃を受けることが多いのです。

 アワとキビは鳥のエサに使われるくらいですから、特に被害がひどくなります。筆者自身、試作してみて驚いたのですが、コメならせいぜい水田に糸を何本か張れば済む鳥害対策が、アワやキビでは通用しません。

 実が熟すと、コメとは比較にならない迫力で、スズメはアワやキビを襲います。糸を張る程度の防御など無力。仕方がないので全面に網を張りました。しかしそれでも突っ込んできて網にかかって死んでいるスズメがいます。神風特別攻撃隊を初めて目撃した米軍水兵の気持ちが分かったような気がしました。

スズメの猛攻を撃退する省力的な方法はありませんが、被害を少なくする方法はあります。スズメが食い切れないほど大量に作ることです。

 一般に動物の面積当たり繁殖密度は、年間で最も食料の少ない時期に生存可能な最大数以上に増えることはありません。

 雑穀の成熟期に、地域のスズメが最大で100キロの雑穀を食うなら、100キロ以下しか作っていなければ全滅です。しかし10トン作っていれば、被害は1%にしかならないのです。よって、被害を最小限にするには、兼業農家より専業農家の方が適しているのです。

イノベーションの条件は全て揃っている!

 ドラッカーは、「ニーズに基づくイノベーション」に必要とする5つの前提と3つの条件を、以下のように挙げています。農政を司る農林水産省の立場に立ってみましょう。

【前提】

(1)完結したプロセスについてのものであること(= 雑穀生産)

(2)欠落した部分や欠陥がひとつだけあること(= 品種改良)

(3)目的が明確であること(= コメの生産削減)

(4)目的達成に必要なものが明確であること(= 一部専業農家のコメからの退場)

(5)「もっとよい方法があるはず」との認識が浸透していること(= 減反の必要性は農民に理解されている)

【条件】

(1)何がニーズであるか明確に理解されていること(= 収益性のよいコメ代替作物)

(2)イノベーションの知識が手に入ること(= 既存技術で対応可能)

(3)問題の解決策がそれを使う者の仕事の方法や価値観に一致していること(= 専業農家、兼業農家それぞれの価値観に一致している)

 いかがでしょうか。イノベーションを実現できない理由は見つかるでしょうか?

自由貿易のバス」に乗り遅れた政治の機能不全ぶり!


2010年11月16日 DIAMOND online 真壁昭夫 [信州大学教授]

最近、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する議論が白熱している。わが国の将来に大きな影響を与える重要な問題について、様々な意見を持った人が議論を戦わせることは、悪いことではない。

 しかし、TPPについて無視できない懸念がある。先日政府は、農業分野を含めた原則関税撤廃を目指す協議開始の基本方針を閣議決定したが、現在の民主党政権がしっかりした政治のリーダーシップを発揮して、明確な解決策を国民に示すことは、難しいと言わざるを得ない。

 ひとことで言えば、現政権にこの問題に対峙する十分な能力があるとは考えにくいのである。

 この問題については、おそらく積極推進派の産業界と、絶対反対を唱える農業関係者の狭間で、しっかりした方針を打ち出すことができず、うやむやのうちに何らかの妥協案で落ち着く可能性が高い。

 国内の議論が迷走を続けている間、世界の趨勢は自由貿易の方向に向かっている。その流れに乗り遅れ始めているわが国は、今回のチャンスを逃すと取り返しのつかないほどのハンディキャップを背負うことになりかねない。

 国内の農業改革を先送りする一方、産業界の競走力をすり減らす。その結果、わが国は徐々に国力を落とし、世界の一流国からドロップアウトする。そうした「悲観的なシナリオ」が、現実味を帯びてくる。

政府にTPPに対峙する能力はあるか?
「自由貿易のバス」に乗り遅れてはならない!

 現在、情報・通信技術の発達によって、世界経済のグローバル化は一段と加速し、物理的な国境の垣根は著しく低下している。そうした流れに呼応して、世界の主要国は貿易の自由化の流れを促進している。

貿易自由化によって享受できるメリットの方が、それによって起きる国内産業へのデメリットなどよりも大きいと認識されているからだ。

 わが国の経済は、工業品の原材料などを海外から輸入し、それを加工して技術集約度の高い部材や完成品にして海外に輸出するという、基本構造を持っている。その基本構造を勘案すると、自由に海外から様々なものを輸入できる一方、製品を低コストで輸出できることは、経済全体にとって大きなメリットがあるはずだ。

 問題は、賃金水準の高い先進国に共通する農業部門だ。海外から安価な農業製品が入ってくると、高コスト構造の農業部門が耐えられなくなる。

 特にわが国では、伝統的に農業部門に対する保護政策が定着しており、TPP参加によって、国内の農家の多くが淘汰されることが、大きな懸念材料になっている。いまだ農業部門からの反対意見は強力で、民主党政権内にも根強い反対意見がある。

 わが国経済全体から考えると、自由貿易のバスに乗り遅れることは得策でないことは、論を待たない。バスに乗り遅れることは、わが国の経済的な衰退を加速することも考えられる。

 問題は、いかにして農業関係者から出ている問題を解決するかにかかっている。短期的には、農業保障制度を作って、農家が淘汰されることを避けつつ、時間をかけて農家が生き残れる状況を作ること、つまり「農業改革」が必要だ。

「一票の重み」が重い農村が保護され、農業改革が先送りされてきた構造的な問題!

 従来、わが国の政治は、農業部門を重要な票田と認識してきた。政権担当政党は、「一票の重」みが軽い都市部から様々な名目で税を徴収し、それを「一票の重み」が重い農村部に、補助金などの名目で所得移転をしてきた。

そして農村部は、その見返りとして、選挙時に「政権政党への投票」という格好で報いてきた。それが、長期にわたる自民党政権を維持するメカニズムの1つにもなっていた。

 その間、従来の事業者の減少などもあり、わが国の農業の競争力は低下した。政策当局は、競争力が低下した農業を維持するために、高率の輸入関税の実施や補助金などによって農家が淘汰されることを、回避する政策を採った。

 そのため、わが国の農業は多くの分野で国際競争力を失う結果になった。つまり、一時の痛みを覚悟してでも農業分野を改革する努力を、怠ってきたのである。

 農林水産省などにぶら下がる格好で、様々な組織ができ上がっており、そうした組織が大規模な既得権益層を形成していることも明らかだ。彼らは、ゆくゆく貿易自由化による関税の撤廃などによって、既得権益を失うことを恐れており、そう簡単に自由貿易のバスに乗ることを認めることはないだろう。

既得権益層との調整をいかに行なうか?農業従事者も口にする「農業改革」の必要性!

 しかし農業従事者の中にも、少数だが「今回のTPPをきっかけに、わが国の農業のあり方を変えたい」との意見もある。それらの人々を糾合して、わが国が長い目で見て生き残れる、新しい農業を作ることが必要だ。

 ある農業従事者は、「仮にTPPが流れても、今のままでは日本の農業は10年持たないかもしれない」と指摘していた。彼によれば、高品質のブランドを作るなど、農業分野にも工夫の余地はいくらでもあるという。それを実践することが、まさに農業改革だ。

 わが国の農業を変える必要性については、おそらく多くの人の賛同を得ることができるだろう。その一方で、一部の稲作や畜産農家、さらには既得権益層などからの反対が強いことも間違いない。

それらの意見を聞き、調整を行ない、さらに必要な施策を講じたうえで、将来わが国が進むべき方向を国民に示すことが、本来政治に求められる役割(機能)である。

現政権の政策運営ぶりを見る限り、明確な方針が出される可能性は低い?

 しかし残念だが、わが国の場合、目下その政治の機能に大きな期待を持つことができない。長期間続いた自民党政権下でも、農業に関する大規模な改革を行なうことはできなかった。

 現在の民主党政権の政策運営ぶりを見ていると、今回のTPPに関しても明確な政策方針が打ち出される可能性は低いだろう。仮に、口では自由貿易推進を唱えたとしても、本格的にそれが結実することは考えにくい。

 かつてわが国の経済が元気で、高成長を遂げている間は、それでも何とかなった。強力な経済力によって、国民の間にも希望があり、人々は「生活水準の向上」という目に見えるベネフィットを手にすることができた。

 強い経済力がバックにあったため、国際的な地位が上昇し、外交能力は稚拙でも、それなりの政治的な発言力も維持することができた。「経済一流、政治三流」でもよかったのである。

 ところが、現在のわが国の経済は安定成長期に入り、人口減少・少子高齢化という問題にぶつかっている。こうしたときこそ、政治のリーダーシップによる調整機能が求められるのだが、わが国にはそれがないのである。

 今回のTPPにしても、現在の民主党政権がわが国の将来の基礎を作ってくれるとは、考えにくい。とはいえ、あまり悲観的であっても何も生まれない。少なくとも、世論形成をするぐらいの気概は持ちたいものだ。

ドラッカーで読み解く農業イノベーション(4)

2010.11.12(Fri)JBプレス 有坪民雄


故松島省三博士と言えば、コメの研究者で知らない人はいない、増収技術の開発者として歴史に名を残している方です。

 松島博士の業績の大きさに異論を挟む人はいませんが、時代の波に洗われ、忘れ去られた業績もあります。「株まきポット稲作」と呼ばれる田植えの手法です。

 長時間腰をかがめて苗を植えていく、昔の田植えは大変な仕事でした。少しでも農作業をラクにしたい。松島博士は稲を「植える」のではなく「投げる」ことを提案します。

 セルトレイに種をまき、そこで育った苗をまとめて掴み、田んぼに投げ入れたらどうだろう? 土は苗より重いから、投げたら土を下にして落ちていく。それで十分苗は植えることができて、1日の作業が10分で終わるではないか。

 トレイに入れる土の量と苗の大きさはどのくらいが適切か? 何束掴んで投げたら、手植えするのと同様の密度で植えられるのか、そして収量を最大にできるのか? 研究の末、この田植え方は完成し、普及しつつありました。しかし、田植え機の登場で姿を消すことになります。

 田植え機がまだ高価で、コスト的にもスピード的にも「株まきポット稲作」の方が明らかに優れていたのにもかかわらず、普及したのは田植え機でした。

 その背景には、碁盤の目のように苗を配置することを希求する農家の願望がありました。「株まきポット稲作」ではきれいに苗が配置できないのでカッコがよくなかったのです。

 真新しいベンツやレクサスがずらりと並ぶゴルフ場の駐車場に、薄汚れたいかにも古そうな軽自動車で乗りつける場面を想像してください。たとえあなたの腕前がシングルでも、引け目を感じる人は少なくないでしょう。同様に水田もイネの並びが悪いと農家は肩身が狭いのです。

 現在でも、1反以下の小さな水田では、田植え機を使うよりも「株まきポット稲作」の方がコストは安くつくはずです。ところが、田んぼをカッコよく見せたいという農家のニーズの前には、普及のきっかけすら掴めません。

農水省が打ち出した「兼業農家」追放政策
 さて、ここからは、日本の農業が抱える構造的な問題を解決するイノベーションについて考えてみたいと思います。具体的には、コメ専業の大規模農家がどうやって生き延びていけばいいのかという問題です。そこに、「ニーズに基づくイノベーション」が生まれる可能性はあるでしょうか。

日本の農業は儲からない、競争力がないと言われます。そうした問題の解決方法としてよく言われるのが、少数の専業農家を保護して大規模化を促し、「兼業農家」を切り捨てればよいという意見です。この時やり玉に挙げられる作物はたいていコメで、減反廃止が一緒に唱えられます。

 そうした意見に触発された、というより、「他に打つ手がなくなったから」と言った方が正確かと思われますが、農林水産省は2006年に「選択と集中」を戦略の根幹に据えた「新たな食料・農業・農村基本計画」を策定し、農政を大転換しようとしていました。

 識者の言うように、専業農家を保護し、兼業農家を切り捨てようとしたのです。

 しかし、民主党が与党となってからこの政策は頓挫し、いわゆる戸別所得補償制度によって農水省は再び方針転換を余儀なくされました。それが現在の農政批判の主流になっています。

 筆者は、多くの問題をはらんでいるとはいえ、「新たな食料・農業・農村基本計画」を策定した農水省の判断は正しかったと考えています。

 現実的に兼業農家は減り続け、専業農家や農業生産法人、そして集落営農が微々たるもとはいえ増加傾向にあるのも事実です。しかし、筆者には多くの識者たちの言うような兼業農家追放農政が成功するとは思えないのです。

兼業農家は「経済人」なのか?
 それはなぜか? 識者たちは兼業農家をあまりにも軽く見過ぎているのです。兼業農家に何もやるな。そうすれば、兼業農家はさっさと農業から退場する、と単純に思い込んでいるかのようです。

 そう思っている人に私が申し上げたいのは、それでは、なぜ今まで兼業農家は存続していたのかということです。

 兼業農家の多くは、1ヘクタール以下の面積でしかコメを作っていません。この規模の稲作はまず間違いなく赤字です。それにもかかわらず、なぜ兼業農家はコメを作り続けているのか。

 そうした現実認識なしに政策を実行すれば、下手をすると大規模化した専業農家、特にコメ専業農家を潰すことになりかねないということです。

兼業農家退場を促す人たちは、兼業農家をいわゆる「経済人」(経済学で「人は自分の利益になるように行動する」とする概念)として見ています。

 この考えが間違っているとは言いません。例えば、農学者の神門善久先生がおっしゃる「偽装農家」。すなわち、将来の土地の値上がりを期待し、低コストで農地を維持して、売却益を得るために農業を続けているのが兼業農家だとする主張です。

 確かにそんな農家もいることは否定しません。自ら公言するどころか、集落全体がそう思っているような地域もあります。

 しかし、そんなことを言う農家でも、台風が来たら、イネは大丈夫かと見に行って水害に遭って行方不明になり、川に浮いた遺体を消防団に発見されたりする。これも現実です。

 地方で土地が値上がりする見込みは、高速道路やショッピングセンターなどの建設のため土地が収用される時くらいしかありません。それで儲けられる確率は、ジャンボ宝くじで100万円を当てるより低いでしょう。その程度のことは、農家はみんな知っています。

 それにもかかわらず農業を続けている理由は何でしょうか。

奈落の底まで価格競争についていく兼業農家
 それは、土地を守るのが自分たちの務めだとする思想を親から叩き込まれているからです。

 「土地を守れ、手放すな」という教えを守るために、兼業農家はやめた方が経済的にも労働的にもラクなのに農業を続けているのです。そのため、いくら米価が下がっても彼らは退場しません。体が動かなくなるまで、いつまでもコメに執着したままです。

 なぜなら、コメ以外の作物を作ろうとすると、主業であるサラリーマンなどの仕事に影響を及ぼすだけでなく、休日がなくなることで家庭内にも波風が立つからです。

 現代のサラリーマンが置かれている状況は決して「良い」とは言えないでしょう。それはサラリーマンを主業としている兼業農家も同じです。休日出勤しなければならないこともありますし、休みの日には家庭サービスもしなければなりません。

 そうした環境下に置かれた農家が、会社と家庭に迷惑をかけず続けられる農業はコメしかないのが実情なのです。

コメは、最も機械化が進み、単位面積当たりの労働時間が非常に少ない作物です(下の表)。土日しか農業ができない一般的な兼業農家にとって、コメ以外の選択肢は事実上ありません。よって米価が奈落の底まで下がっても彼らはコメを作り続けるのです。

「選択と集中」によって大規模専業農家ほど潰れていく
 そうなって一番困るのは誰でしょうか? 大規模農家です。

 大規模農家は大規模であるがゆえに機械化水準が高く、それだけ機械にかかる投資が多くなります。人を雇っていれば人件費もかかります。そのため米価が高いほど利益率は高くなりますが、低くなった時は固定費が高いため低価格に耐えられないのです。

 これが「経済人」同士の競争なら、大規模化し、低コスト稲作を行った者が勝つでしょう。しかし、この場合の競争相手(兼業農家)は経済人的な発想はせず、どこまでも価格競争についてきます。

 ここで専業農家のみに所得を補償する直接支払い制度や戸別所得補償制度をやれば大規模農家を潰さずに済むとする反論があるかもしれません。しかし、「潰さない」と「儲かる」とは違います。潰さない程度では経営余力はつきません。

 今年のような秋に高温が続いたりすると、高温障害で何百万も売り上げが減り、人件費など吹っ飛びます。儲けて経営余力をつけなければ、再投資すらままなりません。

 そうなると予想できる未来は、米価が下がるほど大規模農家がバタバタ潰れていく、識者たちにとって想定外の悪夢でしかありません。

減反政策を続けて兼業農家が減るのを待つ、という方法
 この悪夢を回避する方法は2つあります。

 1つはもうしばらく減反制度を続け、兼業農家がこれ以上は減らないと考えられる水準まで落ちてから減反を廃止するか否かを決めること。

 現在急減しつつある兼業農家は、多くが高齢の農業従事者が動けなくなったり亡くなったりして代替わりしたものの、子供が農業をやらないということで減っているケースがほとんどでしょう。

 そんな代替わりが完了するには、まだ10年、15年はかかりそうです。おまけにこの場合、これ以上兼業農家は減らないという水準でもまだ米の供給過剰が続くなら、減反を継続する必要があるかもしれません。

 大規模専業農家をつぶさない方法はもう1つあります。それは、一部の専業農家にコメ栽培から退場していただくよう促すことです。(つづく)

⇒ 「ドラッカーで読み解く農業イノベーション」のバックナンバー
(1)農業は遅れていない、レベルが高すぎるのだ
(2)「ヤミ米」で農政を突き動かした男
(3)なぜ長野のレタス農家は圧倒的に強いのか

 

2010年11月11日 asahi.com

清津川(十日町市)の水を発電に使った後、魚野川(南魚沼市)へ流す東京電力湯沢発電所の水利権をめぐり、十日町市が水の返還を求めている問題で、泉田裕彦知事と関口芳史・十日町市長、井口一郎・南魚沼市長は10日、魚野川流域の水の確保を前提に、清津川の水量を増やすという内容の協定書に調印した。水の確保をめぐって長年綱引きが続いた分水問題は、解決に向けて一歩踏み出した。(大内奏、服部誠一)

   ◇

 協定書は、
(1)魚野川流域の水資源を確保するため、県と南魚沼市で年内中に枠組みをつくる
(2)暫定措置として、清津川への試験放流の増量を検討する――ことが柱。
1923(大正12)年に湯沢発電所が稼働して以来続いている分水のあり方について、問題解決を図るうえでの初の合意文書となった。

 調印後、泉田知事は「協定は県政史の重要な一コマ」としたうえで、コメ作りや冬の消雪用に水を必要とする南魚沼市側、清津峡の自然環境回復などを訴える十日町市側双方の事情について「宿題を負った」との認識を示した。

 今年末が期限となる湯沢発電所の水利権の審査は、両市の対立により県の意見照会の段階でストップしていた。調印を受け、県は10日、国土交通省北陸地方整備局に「水利権更新に同意する」と回答。同局は水利権を許可した。来年1月1日からの新たな水利権について、東電は今月中にも更新を申請する。

   ◇

 協定が結ばれ、清津川と魚野川の水をめぐる議論は二つになった。一つは、分水問題そのものの抜本的解決策について。もう一つは、湯沢発電所の来年1月1日からの水利権更新に合わせて、当面、清津川への試験放流量をどの程度増やすかだ。


 抜本的解決策は、県と南魚沼市が、河川、農業、漁業各分野の専門家らをメンバーとした委員会を年内中に立ち上げる。委員会では、魚野川の水が減ったときの流域への影響を調べ、清津川の水にできるだけ頼らない方策を探る。ダムやため池の新設を含めて検討し、議論は長期化し、難航も予想される。井口市長は「5年や10年で片付くとは思っていない」と話す。


 また、来年からの試験放流量は、県と両市が東電を交えて話し合う。12月中旬以降に開かれる「清津川・魚野川流域水環境検討協議会」で話し合われる見通しだ。だが、今よりどの程度増量するか、その数値は、両市の間で隔たりがあるうえ、10日付の協定書に付された覚書には「抜本策が実現するまでは、試験放流量は原則見直ししない」と表記されている。このため、「暫定」とはいえ、今後10年単位での清津川の流量が決まることにもなり、協議が行き詰まる恐れもある。

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清津川の分水問題 1923(大正12)年に運転を始めた東京電力湯沢発電所は、清津川から取った水で発電し、その水を魚野川に流してきた。取水量は最大毎秒6・121トン。2002年ごろから、生活用水の不足や清津峡の景観への悪影響を心配する十日町市側で「水返還」を求める運動が強まり、農業用水として使ってきた南魚沼市側との対立が深まった。05年7月からは毎秒最低0・334トン~1・056トンを清津川に戻す試験放流が始まったが、十日町市側は全量返還を基本に放流量を増やすよう求めている。


「清津川へ放流増」で県と2市調印へ 湯沢発電所水利権!

2010年10月30日 asahi.com

清津川(十日町市)の水を発電に使った後、魚野川(南魚沼市)へ流す東京電力湯沢発電所(湯沢町)の水利権をめぐって、下流の両市が対立している問題で、十日町市の関口芳史市長と南魚沼市の井口一郎市長は29日までに、清津川へ放流する水を増量することで合意した。

 この問題をめぐっては、来月上旬にも、泉田裕彦知事と両市長による2回目の三者会談が開かれる。この席で3氏は、
(1)魚野川流域の水資源を確保する抜本策に向けて、県と南魚沼市で委員会をつくる
(2)抜本策ができるまでの暫定措置として、清津川への試験放流の増量を検討する。南魚沼地域に支障のない範囲とする――ことについて、協定書に調印する見通しだ。

 現在の試験放流は、清津川の渇水対策のために5年前から実施されている。清津川から最大で毎秒6.121トン取水し、季節によって毎秒0.334~1.078トンを戻すというもの。十日町市内で28日に開かれた「清津川・魚野川流域水環境検討協議会」は、清津川の河川環境に「効果があった」と結論づけた。

 今後はこの数字をベースにして、清津川への増量をさらに検討することになるが、十日町市側が「検討協に提案した毎秒1.68~2.94トンの常時放流をたたき台にしたい」としているのに対し、南魚沼市側は「清津川への放流は、年平均で毎秒1トン未満に収めたい」としている。増量する数値については、なお曲折が予想される。

 湯沢発電所の水利権は、今年末で期限が切れるが、県による地元意見照会の段階でストップしており、いまだ許可が下りていない。東電は来年1月1日からの水利権について、現在の試験放流の内容通りに、11月中に国土交通省北陸地方整備局へ申請する。期間は20年間。県と両市の議論の行方によっては、流量の変更はあり得るとしている。(服部誠一)

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