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平成22年 第12回「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」(松江市)有機栽培・JAS認定部門で特別優秀賞を受賞。(食味90・味度83・計173点) 平成25年、第15回魚沼と第16回北京開催運動中! 無農薬魚沼産コシヒカリ生産農家・理想の稲作技術『CO2削減農法』 http://www.uonumakoshihikari.com/
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2010.12.10(Fri)JBブレス 有坪民雄

魚沼コシヒカリ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%9A%E6%B2%BC%E3%82%B3%E3%82%B7%E3%83%92%E3%82%AB%E3%83%AA

ゆめぴりか
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%86%E3%82%81%E3%81%B4%E3%82%8A%E3%81%8B

つや姫
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A4%E3%82%84%E5%A7%AB

東北194号
http://sankei.jp.msn.com/region/tohoku/miyagi/100520/myg1005200253003-n1.htm

新潟にとって画期的だったコシヒカリの導入!

日本のコメのチャンピオン「コシヒカリ」が初めて新潟県に導入される時、その食味の良さはほとんど評価されていませんでした。

 確かに食味は良いのだが、収量が多いわけでもなく、農家にとって嫌な「倒伏」(イネが倒れてしまうこと。稲刈り作業が大変になる上に品質が低下することも多い)しやすい品種ということで、むしろ投入しない方がいいというのが新潟県の考えでした。

 コシヒカリの素質の良さを分かってもらえない導入派の人たちは、とんでもない理由をつけて新潟県に導入を承諾させます。

 今の農家は肥料がふんだんに手に入るから、イネに肥料をやり過ぎて倒伏させてしまう。その悪い癖を直させるために、あえて倒伏しやすいコシヒカリを導入すべきだ、としたのです。

 そんなむちゃくちゃな主張に折れて、1963(昭和38)年に新潟県はコシヒカリを奨励品種に指定しました。

 日本でコメの自給率100%が達成されたのは68年。減反開始が70年。新潟でコシヒカリの普及が進んだのはそんな時期でした。ちょうどその頃、絶妙のタイミングでコメ市場が食味重視に変化しました。

 かつて新潟のコメは、「鳥も食わないでまたいで通るほどまずい」という意味の「鳥またぎ米」とさえ言われていました。それがコシヒカリの登場で、日本一のブランド米産地となったのです。


日本一の座を虎視眈々と狙う北海道!

 それから約40年たった2010年、北海道産の新品種「ゆめぴりか」の東京での販売が始まりました。

 北海道は以前から打倒コシヒカリに情熱を傾け、「きらら397」をはじめとした新品種の導入を進めてきました。その努力は相応に認められ、現在は新潟に次ぐブランド米の産地としての地位を築いています。

そして、今回の「ゆめぴりか」です。ゆめぴりかに北海道はかなり自信を持っており、新潟産コシヒカリの「日本一のブランド」という地位を北海道が奪取するのではないかともささやかれています。新潟がコメの頂点を極めた時代は終わりつつあるようです。

 「いや、北海道にトップは奪われるかもしれないが、それでも2位にいるなら依然としてブランド米だろう。新潟のコシヒカリが安くなることはない」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

 ところが2位でもいられなくなるかもしれません。理由は地球温暖化です。

 今年、日本のコメ農家を襲った高温障害はあまりのひどさのためニュースになりましたが、実は以前から温暖化のため、コメの高温障害は年々多くなってきつつあります。



 その影響は、最高のコシヒカリを作るとされている新潟県魚沼地方にも及んでいます。

地球温暖化で「魚沼コシヒカリ」を名乗れなくなる?

 下のグラフをごらん下さい。これは魚沼コシヒカリの産地である十日町市と津南町の8月(1980~2010年)の平均気温の推移です。赤い線が十日町、青い線が津南町の平均気温を表しています。

8月はコシヒカリの登熟期(穂が膨らんで米粒ができつつある時期)で、24度が最適気温とされています。この時期に高温にさらされると高温障害によって白濁米(半透明ではなく白粒になる)になりやすくなります。

 一般に26度が警戒ラインです。逆に低温障害により収量が激減する可能性が高いのが23度以下です。

 十日町市と津南町は地理的には隣同士。しかし、ご覧のように平均気温において1~2度の差があります。そうなる理由は、津南町には日本最大級の河岸段丘があり、比較的、高いところに立地しているからです。

 ざっと見て、この30年間、十日町市は高温障害の危険ラインを越えることが多く、津南町は冷害の危険が高いのと引き換えに、26度の警戒ラインを越えることはなかったことが分かります。

実際、同じ魚沼コシヒカリの中でも、高度の高い地域とそうでない地域での品質差が認識されつつあります。

 魚沼コシヒカリは、文字通り魚沼で生産されているコシヒカリにつけられる称号です。しかし今後、温暖化が進んでいくとすると、魚沼の中でも一部の生産地しか魚沼コシヒカリを名乗れないようにする必要が出てくるでしょう。品質の格差を放置すれば、ブランドの名声に傷がつくからです。

 そうなれば魚沼コシヒカリの生産量は激減します。ブランドから外された地域のコメ農家は当然ブランドのプレミアムを享受することができません。

気候変動に対応する新品種が求められる!

 魚沼全体のブランド力を維持するには、別の選択肢もあります。現在の気候に合った新品種を導入することで「脱コシヒカリ」を推進し、コシヒカリに匹敵するブランドを新たに構築するのです。

 明治時代から日本の品種改良は本格化し、コメにおいても多くの品種が開発されてきました。しかし、40年間も王座に君臨していた品種はコシヒカリのみです。

 そうなった理由は、開発当時「作れたのが奇跡だ」とも言われるほど食味が良かったからです。けれども、今ではコシヒカリに勝るとも劣らない品種はいくらでもあるのです。

 同じことが、温暖化がより深刻な西日本にも言えます。コメは、日本よりもっと南の温暖な地域が原産です。もともと高温には強く、冷害に弱い作物だったのです。しかし日本は、冷害に強いコメができるごとに栽培地を北上させていった歴史があるせいか、高温障害対策にはあまり力を入れてこなかったようです。ここに来て、西日本では高温障害に強いコメの導入を検討し始めています。

 魚沼コシヒカリを頂点とする新潟の覇権を奪える最短の位置にいるのは、今のところ北海道です。しかし、この先の地球温暖化の進展具合と、その対策次第では、北海道が王者でいられる期間は40年もないかもしれません。

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一目で分かる日本農業の現状と解決策

2010年12月16日(木)日経ビジネス 吉田耕作

政府は11月9日、環太平洋経済連携協定(TPP:Trans-Pacific Economic Partnership Agreement)に参加すべく一歩踏み出す事を閣議決定した。これは最近アジアを中心として、全世界的に自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)の動きが加速してきており、より包括的なシステムを構築する方向に進んでいるからである。

 特に最近横浜市で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議:Asia Pacific Economic Cooperation)では貿易や投資の自由化に向けた共同声明を採択した。アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP:Free Trade Area of Asia-Pacific)に向けて一歩を踏み出したと言える。その中でTPPが核になるとみなされているようだ。

 日本にとっては、韓国が自由化に向けて一歩も二歩も先に行っており、必死に追いつかなければならないという事情がある。韓国はまず初めに、チリとのFTAを発効し6%の関税を撤廃した。その結果、チリでは韓国からの輸入は日本からの輸入を上回ったが、後に日本がチリとのFTAを締結し、日本は抜き返したと言われる。(日本経済新聞2010年11月10日「『開国』へ一歩踏み出す」)さらに韓国はこの10月にEUとFTAを結び、来年の7月には発効するという。 日本は今、これらの動きに参加しなければ、乗り遅れるという危機感がある。

 外国において、他国製品の輸入に対して関税が免除されている時に日本製品の輸入に関税を掛けられるのでは、日本の輸出産業に多大のハンデイキャップをもたらし、国際市場で日本製品は敗退していくのは明らかである。そして日本の失われた20年が失われた30年、40年になっていく可能性もある。

 その上、この状態が続くと、多くの製造業は日本で生産を継続する事が出来ず、海外に工場を移転し、国内の雇用は著しく減少するであろうし、日本の唯一の利点である技術の優位性は失われていくであろう。

 しかしながら、日本には農業、特にコメの、国際競争力が非常に劣り、安い食料が完全輸入されれば、日本の農業は崩壊するであろうという大きな問題を抱えている。そこで、今回は農業を中心として、日本が国として、どういう通商政策を取っていくべきかに関して検討したい。その前に、まず日本の貿易の現状を俯瞰してみよう。


輸出の有利性は失われつつある!

 まず、日本の輸出入の状況を見る事から始めよう。表1は輸出であり、表2は輸入である。

表1から、日本の輸出は圧倒的に工業製品で、しかも、輸出の主流は自動車や電機を始めとして、ほとんどが日本の高度の技術力に支えられた産業であることがわかる。

 表2では、輸入は燃料や食糧等日常の消費生活に欠かせないものも多いが、原料や完成品を作るために輸入する原材料や部品が多く含まれるのが明らかである。

 第二次大戦後、日本の高度経済成長は輸出によって支えられてきたという事は議論の余地はないであろう。ここまでは中学の教科書にも書いてあり、国民の常識ともいえる。

 しかし問題は、1990年と2000年には輸入は輸出の80%ぐらいであったのが、2008年には輸入と輸出の割合が大体同じになってしまっているということである。ここでは為替の変動は考慮していないが、おおざっぱに言って、日本の輸出の有利性は失われつつあるのである。人口減少化で内需の成長にあまり期待のできない日本が、輸出の利益が失われつつあるということの重大性を認識する必要がある。

日本が高度成長を遂げる過程においては、エネルギー源として石炭から石油への転換という大きな変換があり、当時の日本の根幹を支える産業の一つともいえる石炭産業では血みどろな抵抗が行われた。現在のTPPやFTAの動きはそれに勝るとも劣らぬ程のインパクトがある。その場合、前述のごとく、農業対策が大きな争点となって浮かび上がって来る。そこで農業の問題点に焦点をあわせて検討してみたい。


コメ作りで利益を得ている農家はたった2%!

 農業問題でまず取り上げられるのは、日本の農家の耕作面積は狭く、効率が悪く、規模の経済性を享受できないという点である。表3は農家の耕作面積の規模と60kgのコメを生産するのに必要な生産費の関係、そしてその規模の農家の割合を示してある。

 表3から明らかなように、規模が小さければ小さい程、コストは高いのである。しかも0.5ヘクタール未満の農家が実に全体の42.2%占めており、耕地が1.0ヘクタール未満の農家は73%もある。さらに生産費が手取り価格を超えている農家の割合は98%に上るのである。5ヘクタール以上の耕地面積を所有する2%の農家のみが、コメを作ることによって利益を得ているのである。これはTPPやFTAを考える以前の問題である。

さらにコメの生産費と農家の手取り米価との関係を地域別にみてみると、表4のようになる。地域的にみて、生産費が一番高いのは四国であり、それに続いて中国、近畿の順になる。ここでもまた、米価が生産費を上回りコメ作りが生産として成り立つのは、広い耕作地を持つと考えられる北海道だけなのである。


次に農業従事者の性別、年齢別のデータを見てみよう。これは表5に要約されている。

これから分かる事は1985年から2008年までの23年間で農業従事者が1160万人から490万人と58%減少している。しかも男女とも15才~59才のグループに関しては3分の1以下になっている。この農業従業者が減っていく傾向は将来も続くと予想される。つまり、農業は経済性の観点から、FTAやTPPに関する議論の前にすでに成り立ちにくくなっている事が明確である。


農村地方の議員のパワーが大き過ぎる弊害!

 全国農業協同組合中央会は最近TPP反対を決議した。彼等は「例外を認めないTPPを締結すれば、日本農業は壊滅する」とか「食料安全保障と両立できないTPP交渉への参加に反対であり、断じて認める事は出来ない」と主張している。また、TPPに批判的な国会議員ら数十人が勉強会を発足させたと伝えられる。

 自分の選挙区に農業従事者の多い所では、議員はTPPに反対するのは当然である。しかしながら、耕地面積が小さく農業従事者の多い選挙区では、一人の議員が当選するのに最も少ない数の投票者で選ばれている所と符合している可能性が高い。いわゆる、選挙人の格差の問題である。

 例えば、高知県第3区、高知県第1区、徳島県第1区等は、一人の衆議院議員が当選するのに最も少ない投票者で済む日本のランクで最下位の5地区に入っている。そしてそれらの地区は議員が当選するのに最も多くの投票者数を必要とする上位5位の選挙区(東京やその他の大都市)の半分以下の人数で選ばれているのである。つまり、これらの国会議員の声は半分に割引して考えないといけないという事になる。

 これまで農村地方の議員が都市の議員より相対的にパワーがあるために、日本の農業は非常に生産性が低いにもかかわらず改善されてこなかったのである。「何より6兆円余りをつぎ込みながら、農業を強くできなかったウルグアイ・ラウンド対策費のてつを踏むことは許されない」のである(日経新聞2010年11月10日「環太平洋協定 日本の選択・下」)。

 今までの解決策は一時的な解決策であって、根本点な解決策ではないところに問題があった。2007年の日本の製造業の総生産は108兆円を超える、それに対し農業の総生産は7.4兆円である。日本の国の全体最適を考える時、国際競争力のある製造業を最優先する政策は当然の事として受け入れなければならない。少々極論をするならば、もしTPPの加入により、10%輸出を伸ばす事が出来るなら、農業総生産がゼロになっても日本の収支計算は合う事になる。

 しかし、数値のみで切れないところが農業政策の難しいところである。国の安全保障としての食料国内生産率は維持しなくてはならないし、安全で安心な食料を得なくてはならない。日本人の勤勉さの原点でもあり、日本人にとっての故郷である日本の田舎は健全でなくてはならない。私は個人的には、田んぼは日本で最も美しい風景だと思っている。

 私は色々な施策を取る事によって農業問題は完全とはいかないまでも、かなりの部分において解決できると考えている。解決策とは、一時的な損失の補てんではなく、個々の農業組織体の国際競争力を増す施策でなければならない。


農業問題の解決策!

1.農家の耕地面積の拡大!

 表3で明らかなように、生き残るためには農家の耕地面積を5ヘクタール以上にする必要がある。そのためには一部に取り入れられているように、制度として、株式会社その他の組織体への変換を図り、所有と経営と労働を分離する事である。その過程において現在の労働集約型の農業から資本集約型の農業への変換が求められる。

2.農業公社の設立!

 上記1の変換を可能にするためには、かなり巨額の資本投資を必要とする。現在の全国農業協同組合を母体として、政府が資金を提供し、現在の自作農は土地を提供する事により、株主となり、また同時に従業員となる。6兆円をつぎ込んで、農業を強くする事が出来なかった事を考えると、この方法はより高い可能性を秘めている。この公社もゆくゆくは民営化する事が可能である。

3.商品の差別化!

 現在でも、日本のコメは高品質で、差別化が出来、高価格で海外に売れるという事例が出てきている。無農薬や、有機肥料を用いたコメなど通常の何倍かの価格で売れるという例もある。

 また、コメを原料とした付加価値の高い製品も大いに可能性がある。例えば日本酒にたいする興味は海外、特に米国や欧州では、急速に高まっている。農林水産省が音頭を取って海外に販売網を作ったならば、日本酒は日本の有力な輸出品目になるであろう。同じように、長年外国に住んだ経験から、日本のせんべいはマーケティング次第で世界の巨大な市場を開拓する事ができると考えている。

 また、リンゴやミカン等は近年輸出で成功しているようだ。このほかに柿、ブドウ、桃など他の日本の果物も国際競争力のある分野である。そのほか日本で育成するのに適した他の果物も数多くあるのではないだろうか。それを世界の市場につなげる情報とシステムの構築は政府が最も良く機能出来る分野ではなかろうか。政府には積極的に日本の食物の輸出を推し進めて頂きたい。

 韓国では環境省が率先して中国に環境関連の機器やプラントの輸出に乗り出し、かなりの成果を上げているという。国家戦略として、政府が外向きにリーダーシップをとることが、国民の内向き志向を改善させる策になろう。

4.農業従事者の再訓練!

 現在すでに専業農家数は兼業農家数の3分の1以下である。農家の耕作面積が十分大きく、すでに国際競争力を持っている場合を除いて、30才未満の専業農家の人々に職業訓練を施し、他の業種に転換すべく教育するべきである。

 表5では農業従事者数が1985年と比べると2008年では58%も減って来ているが、しかしここで注目しなければならないのは60才以上のグループに関しては3割しか減っていないのである。会社員の場合、多くは60才で定年となるので、60才以上の人達が職を見つけるのは困難であるが、農村では働く事が可能であるという事である。つまり、彼等の機会原価はゼロに近いのに有効に生産的に使えるという事は大事な点である。従ってここで見えてくるのは、若手の専業の農業従事者を減らし、その分、兼業農業従事者を増やし、高齢者を活用する事が国際競争力ある農業の構築につながると考えるのである。


TPPによる増加利益の再分配!

 以上のような施策では十分でない場合もあるかもしれない。その時にはTPPによって増加利益を得た製造業からの増加税収の何パーセントかは農業への補助金として使うという事も、年限を限った状態ならば、可能なのではないだろうか。

 結局、今、最も問題なのは、部分最適か全体最適かという問題である。国会議員は本来国の全体最適を考える人達でなければならない。しかしながら、部分最適を求めているグループがあるようである。そういう人達にも、この再配分の条項があれば、TPPはより受け入れられ易くなるのではないだろうか。

 しかし、その場合でも、農業の国際競争力を向上させるという基準を満たす場合のみ支援するべきであり、補助金依存体質の撲滅をこれから常に農業政策の中心に据えていくが最も求められている。補助金依存体質の恒常化だけは避けなければならない。

 以上見てきたように、これからの農業政策は全国一律にどうこうするという考え方は非常に非効率的である。地域別、年齢別、専業・兼業別等の状況の違いに着目した、きめ細かい政策を施行するべきである。

毎日新聞 2010年12月10日 東京朝刊

 農林水産省は9日、中国の国有企業「中国農業発展集団」との間で、日本から中国への農産物輸出の拡大などを柱とした覚書を交わした。訪中している筒井信隆副農相は同日、記者団に、中国へのコメ輸出を早期に年20万トンに拡大したい考えを示した。

 覚書は、同集団が「コメを含む日本からの農産物、食品の輸入拡大に積極的に努める」と明記。また、同集団が中国の食品安全基準を作成する際、農水省が支援、協力することも盛り込んだ。

 農水省が中国へのコメ輸出拡大を図るのは、貿易自由化論議で守勢が目立つ農政の「反転攻勢」を印象づけることが狙いだ。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加などで農産物関税が相互に撤廃されれば「品質や安全性の高い国産農産物にとって、むしろ輸出拡大の好機」との見方は農業界の一部にもある。

 しかし、農水省の統計によると、国産米の価格は中国産の4~5倍で、中国市場にどこまで浸透するかは未知数。急速な経済成長で富裕層の需要が増えているとはいえ、09年に中国へ輸出されたコメは30トンに過ぎない。ピークの08年も輸出された90トンのうち3分の1程度が売れ残ったとの報道がある。

 鹿野道彦農相は「攻撃型農政」を打ち出し、09年で4454億円の農産物輸出額を17年に1兆円水準とする目標を掲げている。そのためにも、国内農業の体質強化に取り組み、足元を固める必要がありそうだ。
【行友弥】


*農産物輸出は日本農業再生の切札となるか?

山下 一仁 RIETI上席研究員

農産物輸出促進の動き!

国産農産物輸出促進の旗がさかんに振られている。昨年5月、鳥取県知事の音頭により輸出促進都道府県協議会が発足した。ジェトロも、昨年7月「日本食品等海外市場開拓委員会」を設立し、東アジア市場を中心に、市場調査、国際見本市への参加等を行っている。農林水産省は輸出支援の予算を今年度、4700万円から8億400万円に増額し、外国の貿易制度の調査、海外市場開拓ミッションの派遣、日本米の輸出可能性調査、販売促進活動への支援等を行う。

東アジア地域の経済発展による食品需要の拡大、農産物輸出成功事例の出現等も背景にあるが、この輸出促進の動きは、行政主導による上からの取組みである。ウルグァイ・ラウンド交渉の最中だった1989年頃にもこのような動きがあった。今回もWTOドーハ・ラウンド交渉で、更なる農業保護の削減が議論されており、また、ほとんどの産品について関税撤廃を要求される自由貿易協定の締結交渉でも、農業界は譲歩を迫られている。前回と同様、暗く沈みがちな農業界に対し、輸出という明るい話題を提供しようという狙いが感じられる。

WTO農業協定により、日本にはダンピング輸出ができる輸出補助金の交付は禁止されており、政府は海外市場調査等により、民間事業者の輸出を側面からアシストすることしかできない。したがって、輸出できるかどうかは国産農産物自体に、海外市場で売れる実力が本来備わっているかどうかにかかっている。
なぜ輸出を促進するのか

その疑問に答える前に、関係者には冷や水をかけるようだが、国等が支援する公的な理由が、明らかにされる必要があろう。

貿易の利益は輸入・消費の利益であって輸出・生産の利益ではない。国際経済学者P・クルーグマンから引用すると「輸出ではなく輸入が貿易の目的であることを教えるべきである。国が貿易によって得るのは、求めるものを輸入する能力である。輸出はそれ自体が目的ではない。輸出の必要は国にとって負担である。」(『良い経済学、悪い経済学』日本経済新聞社147頁参照)とある。輸出促進は輸出しようとする産業にとっては利益であるが、国全体としては必ずしもそうではない。民間の輸出を国が支援することに対しては、食料安全保障、多面的機能等の理由により国内の農業を輸出という方法を採ってまでも振興する必要性についての説明が必要だろう。

輸出は促進できるのか!

輸出が行われる場合には2つのものがある。

まず、同じ産品について輸出国がより安いコストで生産できる場合である。伝統的な国際経済学の理論によると「ある国は、その国に相対的に豊富に存在する生産要素を多用して生産される(集約的に用いる)財に比較優位を持ち、そうでない財に比較劣位を持つ。」―すなわち、各国における生産要素存在量の比率の違いが、比較優位の要因とされる。2003年のわが国の農産物輸入額は4兆4000億円、輸出はわずか2000億円となっており、世界最大の農産物純輸入国である。その大きな要因は、農業にとって重要な生産要素である土地の存在量が、労働力や資本など、他の生産要素の存在量に比べて相対的に少ないためである。わが国は土地利用・集約型産業である農業には比較優位をもちにくいのである。

しかしこの理論は、農産物と工業製品という産業間貿易の発生理由についてはうまく説明できるが、日本がトヨタを輸出しつつベンツを輸入するという、産業内貿易の場合を説明できない。このため考えられたのが、消費者は同じ商品をたくさん消費することだけではなく多くの種類の商品(トヨタとベンツは異なる)を消費することをも好むことに、貿易の原因を求める理論である。この理論によればわが国農産物でも高品質化等により製品の差別化(例えばすし用の日本米とピラフ用のタイ米は異なる)に成功すれば、輸出の可能性はないとはいえない。また、嗜好の差も貿易の原因となる。あるリンゴ生産者がイギリスに、日本では評価の高い大玉を輸出しても評価されず、苦し紛れに日本ではジュース用にしか安く取引されない小玉を送ったところ、やればできるではないかといわれたという話がある。

しかし、食品の場合、製品の差別化は主として味の差別化であるが、野菜、小麦、大豆、牛乳、卵等では味に差は出にくい。それが可能なものは果物、和牛肉、一部の米等に限られてしまう。市場調査により、イギリスのリンゴのような事例を発掘できたとしても、あくまで例外的なものだろう。

また、日本の米については、中国、台湾でもおいしいという評価があるが、いくら品質がよくても価格(コスト)差をカバーするには限度がある。国際経済学の新しい理論でも、製品差別化による産業内貿易には、コストや1人当たり国民所得の差が著しくない場合が想定されている。いかにベンツの評価が高くても、1台1000万円を要求すれば、日本の消費者は500万円の国産車を買うだろう。新潟魚沼産のコシヒカリがいくら美味といっても、1キロ100万円の値がつけば、日本国内でも買う人はいない。米を輸出しているのは、米生産コストや所得が日本と近く、価格差がそれほどかけ離れていない台湾であり、大幅な価格差がある中国などには輸出できない。台湾市場でもアメリカ産と輸入価格に10倍の差があるため台湾の米輸入にしめる日本のシェアは量で0.2%、金額で1.5%にすぎず、7割のシェアを持つアメリカに太刀打ちできない。本気で輸出しようとすれば、本格的な農業改革を行い米、果物、肉用牛等土地利用型農業の規模を拡大しコスト、価格を大きく下げる必要がある。それを行わない行政主導型輸出振興は、以前と同じあだ花に終わる可能性が高い。経済産業研究所のシンポジウム『21世紀の農政改革-WTO・FTA交渉を生き抜く農業戦略』でケン・アッシュOECD農業局次長は「国内市場で輸入品と競争できないものは海外市場でも競争できない、国内市場を守りながら輸出市場を開拓することは不可能である」と述べた。日本プロ野球の最下位球団が、メジャー・リーグに行っても勝てるはずがない。

また、海外市場を重要な市場と捉える意識改革も必要である。生産を完全にコントロールできる工業と違い、農産物には天候等により豊凶変動があるという特殊性がある。リンゴの輸出が伸びている台湾についても、国内で売った余りがあれば大玉を輸出し、なくなれば見た目も悪い中玉を輸出するという例がある。

このようなハードルをクリアーすれば輸出も有望である。しかし、土地という生産要素が少なく、農産物貿易については、基本的には伝統的な国際経済理論が妥当すると思われるわが国において、現在でも国内農業生産額の4%を占めるに過ぎない輸出が農業の再生を図れるほど切り札になるとは考えられない。むしろ農業も自由貿易協定(経済連携協定)に積極的に対応し、外国人労働者の受け入れにより、農業生産コストを下げていくほうが得ではないかと考えられる。特に自由貿易協定で、関税引下げ・撤廃等が迫られている豚肉、鶏肉等土地利用型ではない農業については、労働コストの低減が、競争力向上の唯一の対応ではないだろうか。

2004年11月号『産業新潮』に掲載

農林水産省総合食料局食糧部食糧貿易課
http://www.maff.go.jp/j/soushoku/boueki/kome_yusyutu/china.html

米輸出関連ホームページ
http://www.maff.go.jp/j/soushoku/boueki/kome_yusyutu/kanren.html


1. 中国にお米は輸出できますか。

日本産米の中国向け輸出にあたっては、植物検疫条件により、中国側が承認した精米工場で精米されたお米のみ輸出できることとなっています。このため、輸出をするためには、精米工場の承認もしくは、委託精米を行う必要があります。

2. 検疫条件とは、具体的にどのような内容ですか。
主な条件としては、

中国側の認可を受けた、指定精米工場で精米されていること
輸出前に、登録くん蒸倉庫で精米にくん蒸処理を実施すること
輸出検査を実施し、植物検疫証明書を添付すること
精米の積み込み前に、再汚染防止措置としてコンテナなどに検査及び消毒を行うこと
などが挙げられます。

3. 精米工場の認可をもらうにはどのような手続きが必要ですか。
精米工場の認可手続きは、

(1)精米工場内に誘引剤(フェロモン)を用いたトラップを設置し、カツオブシムシ類が無発生であることを確認

(2)管轄の植物防疫所に指定申請書を提出

(3)日本側の植物防疫官による実地検査

(4)中国側検査官による現地視察ののち、中国側より認可

(5)植物防疫所より指定通知を交付

という流れになっています。


4. 中国には全農が輸出していると聞きましたが、輸出に当たって特定の資格などは必要ですか。
中国に米を輸出するにあたって、資格のようなものは必要ありませんので、全農(JAグループ)でなければ輸出できないということはありません。新規に精米工場の承認を得るか、既に承認を得ている精米工場に精米を委託することにより、植物検疫条件を満たせば、輸出することができます。


5. 商業用ではなく、個人消費用、サンプル、おみやげなどの、少量の輸出であっても、植物検疫条件が適用されるのですか。
輸出数量に関わらず、上記2の検疫条件が適用されることとなります。


6. 中国での米の関税率はどれくらいですか。
中国は関税割当制度を導入しており、関税割当枠を有する輸入業者による輸出であれば1%、関税割当枠がない場合は65%の関税がかかります。また、増値税という、物品の輸入を行う場合などに適用される税を、別途通関に納めることになっており、米の場合は税率が13%となっています。


7. 中国で日本産米を販売する際に注意するべき点はありますか。
現地産米との価格差、商習慣の違い、小売業者の確保、表示義務等の制度上の問題などが考えられますので、事前の十分な市場実態の把握と輸出計画の策定が必要です。農林水産省では委託事業により中国の市場調査を実施しておりますので、ご活用ください。

総合食料局食糧部食糧貿易課
担当者:貿易企画班 森、福水
代表:03-3502-8111 begin_of_the_skype_highlighting              03-3502-8111      end_of_the_skype_highlighting(内線4270)
ダイヤルイン:03-3502-7965 begin_of_the_skype_highlighting              03-3502-7965      end_of_the_skype_highlighting
FAX:03-3591-1692


日本産精米の対中輸出検疫条件の概要

1.検疫対象病害虫
・ヒメアカカツオブシムシ、カザリマダラカツオブシムシ、ヒメマダラカツオ
ブシムシの3種のカツオブシムシ(以下「カツオブシムシ類」)
(注) ・イネもみ枯れ細菌病菌及びイネえそモザイクウイルス
(注)イネもみ枯れ細菌病菌、イネえそモザイクウイルスは、玄米、籾、土
壌等により感染する病害であり、検疫措置として、精米に玄米、籾、土壌
等が混入していないことのみ確認

2.精米工場
精米工場(付属する玄米貯蔵庫を含む。)は、カツオブシムシ類の誘引剤を
使用したトラップ調査を1年間実施し、カツオブシムシ類が発生していない
ことを確認の上、指定する。

3.包装材の条件
清潔かつ衛生的で、通気性のある新しい包装材で包装。各包装には中国向け
であること、品種、精米工場及び輸出者の名称・住所を中国語で表記。

4.くん蒸処理
(1)輸出前にリン化アルミニウムを用いたくん蒸を実施。
(2)くん蒸倉庫は、予め3か月間、カツオブシムシ類の誘引剤を用いたトラッ
プ調査を実施。
(3)くん蒸の都度、くん蒸開始1か月前から精米の搬出時までの間、カツオブ
シムシ類の誘引剤を用いたトラップ調査を実施。

5.輸出検査
(1)植物防疫所の輸出検査を受検し、植物検疫証明書を添付。
(2)土、玄米、籾、ぬか、雑草種子及びその他植物残さが混入していないこと
を確認。

6.再汚染防止措置
精米の積込み前に、コンテナー等に対して検査及び消毒を実施。

TPPは農業の破壊神にあらず、救世主!民主党・戸別所得補償の設計ミスを正す好機だ!

2010年12月6日 DIAMOND online

山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)/東京財団上席研究員(非常勤)]


 やや旧聞に属するが、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)における菅直人首相の発言には内心驚いた。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加に関して「関係国と協議する」と明言しただけでなく、オーストラリアやEU(欧州連合)とのあいだの個別のEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)についても公の場で意欲を示したからだ。

 元来、日本が外交的に大きな決断を下すのは、本当に切羽詰まったときだ。呑むか呑まないか、瀬戸際に追い詰められたときにしか決断できない。

 筆者が農水省の担当官として交渉に携わった旧GATTウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉、1986~1995年)においても、コメ市場の部分開放を含む合意内容の受け入れを日本が決めたのは最後の最後、交渉のデッドラインの1日前だった。今回はまだそこまで追い詰められていないにもかかわらず、首相自らが早くも国際舞台で踏み込んだ発言をした。TPP参加については、菅政権にも“それなりの覚悟”があるということだろう。

 ちなみに、TPPとは関税撤廃を柱とするFTAを多国間で同時に結ぶものだ。2006年にチリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイの4ヶ国で発効したのが始まりで、その後、米国、オーストラリア、ペルー、マレーシア、ベトナムが参加の意思を表明して、交渉を開始している。

 日本は、出遅れた。個別のFTAについても、EUに続き先週末には米国とも合意に達した韓国に先を越された。日本が出遅れた背景には、他でもいない、農業団体の強い反発がある。

 日本の場合、コメの778%をはじめとして農作物輸入には高い関税がかけられている。TPPに参加すれば10年間で関税を原則撤廃しなければならない。そのようなことになったら「日本の農業は壊滅する」と農協などが中心となって猛反発しているのである。

 農協などが語るTPP批判の誤謬については後述するとして、政治の側面から見れば、菅首相はTPPを政権の浮揚材料にしようとしているのではないだろうか。

 2005年、自民党の小泉純一郎首相(当時)は、郵政改革を掲げ、反対する党内の勢力を「抵抗勢力」に仕立て上げることで、総選挙にまで打って出て、沈みかけていた自民党を浮揚させた。菅政権も、TPPという踏み絵を提示し、反対する党内勢力を抵抗勢力に仕立て上げることは可能だ。

もともと民主党は、菅氏や仙谷由人氏(官房長官)、岡田克也氏(幹事長)、前原誠司氏(外相)ら「都会型政党」出身者と、小沢一郎グループや旧社会党系議員らからなる「農村型政党」出身者などの寄り合い所帯だ。各種世論調査で、内閣支持率が政権維持の危険水域とされる30%を下回り、そもそも弱い党内の結束がさらに希薄化する中で政権の起死回生を目指すならば、TPPは格好のカードだ。

 かつて小泉氏が郵政を取り上げたように、農政を取り上げれば、抵抗勢力をあぶりだすことができる。自民党も先の衆院選で農林族の大物が加藤紘一氏を除きことごとく落選したために、農林族の層が薄くなっており、TPPに賛成しやすくなっている。いざとなれば、民主党が割れて、自民党の一部とくっつくようなこともあり得るかもしれない。

 さて話が横道に逸れたが、本題に入ろう。TPPに関して前述のとおり菅首相は参加に意欲を示しているが、農業関係者はコメなどを関税撤廃の例外とできる2国間の自由貿易協定ならまだしも、例外を認めないTPPは日本農業を壊滅させると反発を強めている。

 農水省はTPPに参加すると8兆5千億円の農業生産額が4兆1千億まで減少し、食料自給率は14%まで低下。また、洪水防止などの農業の多面的機能は3兆7千億減少するという試算を出している。

 では、果たしてこうしたTPP批判は正しいのだろうか。結論から言えば、筆者は、間違っていると思う。

第一に影響額が意図的に大きく試算されている。これは、データの取り方に問題があるためだ。農水省の試算では、生産額の減少のうちの半分(2兆円)がコメについてであり、海外から安いコメが入ってくるとコメ農業は壊滅するとしているが、まずその根拠として使われている日本と中国のコメの内外価格差の前提条件がおかしい。

 日本が中国から輸入したコメのうち、過去最低の10年前の価格を海外の価格とし、これを国内の値段と比較して内外価格差は4倍以上あるとしているのだ。しかし中国から現実に輸入したコメの値段は09年で約1万500円(60kgあたり)と10年前の水準である3千円から3.5倍も上昇している。一方で国産米価は、約1万4千円に低下している。日中間の価格差はいまや1.4倍以下にまで縮小しているのだ。

 そもそも、一方では農水省は食料の国際価格は上昇するという試算を公表し、食料危機説をあおりながら、将来とも大きな内外価格差が継続すると主張するのは、矛盾の極みだ。

 また、日本の農家の平均的なコストと輸入価格とを比較している点も、おかしい。肥料や農薬などコメの生産に実際にかかったコストの平均値は9800円だが、農家を規模別に見ると、0.5ha未満という規模の小さい農家のコストが1万5千円であるのに対して、15ha以上の規模の大きい農家は6500円にまで下がる。

 TPPに参加し関税が撤廃され国内米価が下がっていけば、規模が小さくコストの高い兼業農家は確かに立ち行かないだろうが、大規模な農家は存続できる余地が多いにある。

ただし、規模の大きい農家が存続するために、政府がやらねばならないことはある。

 そもそも現在の日本の国内米価は、減反して生産を制限する事によって維持されている。減反は生産者が共同して行なう、いわゆるカルテル行為だ。カルテルによって国際価格よりも高い価格が維持できるのは関税があるからだ。その関税がなくなれば、カルテルである減反政策は維持できなくなり、国内米価は大きく下がる。そこで、農業生産を維持するため、価格低下で影響を受ける主業農家に限って米国やEUが行っているのと同様の直接支払いを行うのだ。

 この際留意すべきは、全農家にバラ撒いてはいけないということである。

 民主党政権はすでに戸別所得補償という直接支払い制度を導入しているが、現行制度には設計上の大きな間違いがある。主業・兼業の別なく全農家を対象にしていることだ。これでは、非効率な生産体制を維持したまま、米価下落に見舞われるため、財政負担だけが雪だるま式に増えていくことになる。

 昨今の不況で企業をリストラされたり、地方の商店街はシャッター通り化して、生きるか死ぬかという人たちが増える中で、このような所得補填が許されるのだろうか。

 そもそも兼業農家の大半はサラリーマンだ。その多くは週末などに農業を手がけている、家庭菜園を少し大きくしただけのパートタイム農家だ。農林水産省は統計の取り方を変えてしまったが、数年前のデータでは稲作兼業農家年間所得は800万円もある。

 しかも、時の政権や農水省とともに、戦後農政を牽引してきた最大の既得権益組織「農協」の最も多数で重要な構成要員だ。本当に困っている人には所得補償はいかないのに、こうした富裕層に何の制限もなく所得補償がされるとすれば、政治的公平性は担保されまい。

鉱工業製品が享受できるメリットを考えても、TPP不参加という選択肢は本来ないはずだ。となれば、TPP参加に合わせて政府がなすべきことは、はっきりしている。直接支払いの対象を、ある一定規模の主業農家に絞り込むことだ。そうすることで、企業的農家などが廃業する兼業農家の農地を借り入れ、規模拡大による効率化、コストダウンが進み、輸出による生産拡大も可能になる。食糧安保や多面的機能の起訴である農地・水田の保全・確保も可能になる。

 この50年間で酪農家の戸数は40万戸が2万戸に20分の1に減少したが、牛乳生産は200万トンが850万トンにも拡大した。零細な農家が退出しても食料供給に何らの不安も生じない。

 逆にいまのようなバラ撒きを続けていては、所得補償を目当てに、貸していた農地を貸しはがす兼業農家が増えていくだけだ。

 効率化もコストダウンも期待できない状況で、TPPに参加すれば、高いコストと低い農産物価格との差を戸別所得補償として支払わざるを得なくなるので、納税者の負担は際限なく増えていくことだろう。

 すなわち、TPP参加と戸別所得補償制度の見直しはセットでなければならないのだ。このことを、菅首相が理解したうえで、TPP参加に前向きな姿勢を打ち出したと信じたい。

 しかし、農業構造改革に関する会合を開催しようとしたものの、「構造改革」という言葉への反発を考慮して「食と農林漁業の再生推進本部」という看板に書きかえられたという。菅首相が小泉元首相のようにぶれずに突き進むことができれば、国民も評価し、政権浮揚の途も見えてこよう。

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