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ドラッカーで読み解く農業イノベーション(4)

2010.11.12(Fri)JBプレス 有坪民雄


故松島省三博士と言えば、コメの研究者で知らない人はいない、増収技術の開発者として歴史に名を残している方です。

 松島博士の業績の大きさに異論を挟む人はいませんが、時代の波に洗われ、忘れ去られた業績もあります。「株まきポット稲作」と呼ばれる田植えの手法です。

 長時間腰をかがめて苗を植えていく、昔の田植えは大変な仕事でした。少しでも農作業をラクにしたい。松島博士は稲を「植える」のではなく「投げる」ことを提案します。

 セルトレイに種をまき、そこで育った苗をまとめて掴み、田んぼに投げ入れたらどうだろう? 土は苗より重いから、投げたら土を下にして落ちていく。それで十分苗は植えることができて、1日の作業が10分で終わるではないか。

 トレイに入れる土の量と苗の大きさはどのくらいが適切か? 何束掴んで投げたら、手植えするのと同様の密度で植えられるのか、そして収量を最大にできるのか? 研究の末、この田植え方は完成し、普及しつつありました。しかし、田植え機の登場で姿を消すことになります。

 田植え機がまだ高価で、コスト的にもスピード的にも「株まきポット稲作」の方が明らかに優れていたのにもかかわらず、普及したのは田植え機でした。

 その背景には、碁盤の目のように苗を配置することを希求する農家の願望がありました。「株まきポット稲作」ではきれいに苗が配置できないのでカッコがよくなかったのです。

 真新しいベンツやレクサスがずらりと並ぶゴルフ場の駐車場に、薄汚れたいかにも古そうな軽自動車で乗りつける場面を想像してください。たとえあなたの腕前がシングルでも、引け目を感じる人は少なくないでしょう。同様に水田もイネの並びが悪いと農家は肩身が狭いのです。

 現在でも、1反以下の小さな水田では、田植え機を使うよりも「株まきポット稲作」の方がコストは安くつくはずです。ところが、田んぼをカッコよく見せたいという農家のニーズの前には、普及のきっかけすら掴めません。

農水省が打ち出した「兼業農家」追放政策
 さて、ここからは、日本の農業が抱える構造的な問題を解決するイノベーションについて考えてみたいと思います。具体的には、コメ専業の大規模農家がどうやって生き延びていけばいいのかという問題です。そこに、「ニーズに基づくイノベーション」が生まれる可能性はあるでしょうか。

日本の農業は儲からない、競争力がないと言われます。そうした問題の解決方法としてよく言われるのが、少数の専業農家を保護して大規模化を促し、「兼業農家」を切り捨てればよいという意見です。この時やり玉に挙げられる作物はたいていコメで、減反廃止が一緒に唱えられます。

 そうした意見に触発された、というより、「他に打つ手がなくなったから」と言った方が正確かと思われますが、農林水産省は2006年に「選択と集中」を戦略の根幹に据えた「新たな食料・農業・農村基本計画」を策定し、農政を大転換しようとしていました。

 識者の言うように、専業農家を保護し、兼業農家を切り捨てようとしたのです。

 しかし、民主党が与党となってからこの政策は頓挫し、いわゆる戸別所得補償制度によって農水省は再び方針転換を余儀なくされました。それが現在の農政批判の主流になっています。

 筆者は、多くの問題をはらんでいるとはいえ、「新たな食料・農業・農村基本計画」を策定した農水省の判断は正しかったと考えています。

 現実的に兼業農家は減り続け、専業農家や農業生産法人、そして集落営農が微々たるもとはいえ増加傾向にあるのも事実です。しかし、筆者には多くの識者たちの言うような兼業農家追放農政が成功するとは思えないのです。

兼業農家は「経済人」なのか?
 それはなぜか? 識者たちは兼業農家をあまりにも軽く見過ぎているのです。兼業農家に何もやるな。そうすれば、兼業農家はさっさと農業から退場する、と単純に思い込んでいるかのようです。

 そう思っている人に私が申し上げたいのは、それでは、なぜ今まで兼業農家は存続していたのかということです。

 兼業農家の多くは、1ヘクタール以下の面積でしかコメを作っていません。この規模の稲作はまず間違いなく赤字です。それにもかかわらず、なぜ兼業農家はコメを作り続けているのか。

 そうした現実認識なしに政策を実行すれば、下手をすると大規模化した専業農家、特にコメ専業農家を潰すことになりかねないということです。

兼業農家退場を促す人たちは、兼業農家をいわゆる「経済人」(経済学で「人は自分の利益になるように行動する」とする概念)として見ています。

 この考えが間違っているとは言いません。例えば、農学者の神門善久先生がおっしゃる「偽装農家」。すなわち、将来の土地の値上がりを期待し、低コストで農地を維持して、売却益を得るために農業を続けているのが兼業農家だとする主張です。

 確かにそんな農家もいることは否定しません。自ら公言するどころか、集落全体がそう思っているような地域もあります。

 しかし、そんなことを言う農家でも、台風が来たら、イネは大丈夫かと見に行って水害に遭って行方不明になり、川に浮いた遺体を消防団に発見されたりする。これも現実です。

 地方で土地が値上がりする見込みは、高速道路やショッピングセンターなどの建設のため土地が収用される時くらいしかありません。それで儲けられる確率は、ジャンボ宝くじで100万円を当てるより低いでしょう。その程度のことは、農家はみんな知っています。

 それにもかかわらず農業を続けている理由は何でしょうか。

奈落の底まで価格競争についていく兼業農家
 それは、土地を守るのが自分たちの務めだとする思想を親から叩き込まれているからです。

 「土地を守れ、手放すな」という教えを守るために、兼業農家はやめた方が経済的にも労働的にもラクなのに農業を続けているのです。そのため、いくら米価が下がっても彼らは退場しません。体が動かなくなるまで、いつまでもコメに執着したままです。

 なぜなら、コメ以外の作物を作ろうとすると、主業であるサラリーマンなどの仕事に影響を及ぼすだけでなく、休日がなくなることで家庭内にも波風が立つからです。

 現代のサラリーマンが置かれている状況は決して「良い」とは言えないでしょう。それはサラリーマンを主業としている兼業農家も同じです。休日出勤しなければならないこともありますし、休みの日には家庭サービスもしなければなりません。

 そうした環境下に置かれた農家が、会社と家庭に迷惑をかけず続けられる農業はコメしかないのが実情なのです。

コメは、最も機械化が進み、単位面積当たりの労働時間が非常に少ない作物です(下の表)。土日しか農業ができない一般的な兼業農家にとって、コメ以外の選択肢は事実上ありません。よって米価が奈落の底まで下がっても彼らはコメを作り続けるのです。

「選択と集中」によって大規模専業農家ほど潰れていく
 そうなって一番困るのは誰でしょうか? 大規模農家です。

 大規模農家は大規模であるがゆえに機械化水準が高く、それだけ機械にかかる投資が多くなります。人を雇っていれば人件費もかかります。そのため米価が高いほど利益率は高くなりますが、低くなった時は固定費が高いため低価格に耐えられないのです。

 これが「経済人」同士の競争なら、大規模化し、低コスト稲作を行った者が勝つでしょう。しかし、この場合の競争相手(兼業農家)は経済人的な発想はせず、どこまでも価格競争についてきます。

 ここで専業農家のみに所得を補償する直接支払い制度や戸別所得補償制度をやれば大規模農家を潰さずに済むとする反論があるかもしれません。しかし、「潰さない」と「儲かる」とは違います。潰さない程度では経営余力はつきません。

 今年のような秋に高温が続いたりすると、高温障害で何百万も売り上げが減り、人件費など吹っ飛びます。儲けて経営余力をつけなければ、再投資すらままなりません。

 そうなると予想できる未来は、米価が下がるほど大規模農家がバタバタ潰れていく、識者たちにとって想定外の悪夢でしかありません。

減反政策を続けて兼業農家が減るのを待つ、という方法
 この悪夢を回避する方法は2つあります。

 1つはもうしばらく減反制度を続け、兼業農家がこれ以上は減らないと考えられる水準まで落ちてから減反を廃止するか否かを決めること。

 現在急減しつつある兼業農家は、多くが高齢の農業従事者が動けなくなったり亡くなったりして代替わりしたものの、子供が農業をやらないということで減っているケースがほとんどでしょう。

 そんな代替わりが完了するには、まだ10年、15年はかかりそうです。おまけにこの場合、これ以上兼業農家は減らないという水準でもまだ米の供給過剰が続くなら、減反を継続する必要があるかもしれません。

 大規模専業農家をつぶさない方法はもう1つあります。それは、一部の専業農家にコメ栽培から退場していただくよう促すことです。(つづく)

⇒ 「ドラッカーで読み解く農業イノベーション」のバックナンバー
(1)農業は遅れていない、レベルが高すぎるのだ
(2)「ヤミ米」で農政を突き動かした男
(3)なぜ長野のレタス農家は圧倒的に強いのか

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