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家計簿的発想で「国家のバランスシート」を見るなかれ!

日経ビジネス 2010年8月17日(火)三橋 貴明 

日本の財務省やマスコミ、評論家、それに政治家などは、好んで「国の借金」という用語を使用する。その割に、彼らはバランスシート(貸借対照表)について全く理解していないわけだから、実際、困ったものである。

 借金とは「人から借り入れた財産」を意味し、バランスシートの負債項目に計上されるべきものだ。「国の借金! 国の借金!」などと騒ぎ立てるのであれば、常識としてバランスシートについて理解していなければならないはずだが、現実はどうも違うようだ。

誰かの負債は、誰かの資産
 今回は、まずは2つの「原則」をご紹介したい。

 1つ目は「この世の誰も覆せない絶対原則」。資産と負債の関係についてである。

◆原則1:誰かの負債は、誰かの資産。誰かの資産は、誰かの負債

 誰かがお金を借りているのであれば、誰かが貸している。誰かが貸してくれない限り、誰もお金を借りることはできない。当たり前である。

 ところが、マスコミなどで「国の借金」について語っている方々の多くが、どうもこの「絶対原則」を理解していないように見受けられるのだ。

 続けて、2つ目の原則である。資本主義国である限り、この原則を覆すのも、これまた相当に難しい。(と言うよりも、現実的には不可能である)

◆原則2:「国=政府」ではない

 かつてのソ連や中国などの共産党独裁国家は知らないが、少なくとも資本主義国においては「国=政府」ではない。すなわち「政府の借金=国の借金」ではないのである。

 日本銀行は統計をとる際に、「国」の経済主体を主に5つに分類している。すなわち「政府」「金融機関」「非金融法人企業」「家計」「NPO(民間非営利団体)」の5つである。本稿でも日銀に倣い、「国の経済主体」を上記5種類に分けて考えたい。

バランスシートである以上、当然ながら借方(左側)に資産が、貸方(右側)には負債や純資産が計上されている。ちなみに、日本の場合は「総資産額 > 総負債額」となっている。そのため、貸方の一番下に純資産が計上されるわけだが、この関係が逆になっている国(アメリカなど)の場合、借方に「純負債」額が計上されることになる。

 日本の「国家のバランスシート」を眺めるだけで、これまで報道されることがなかった様々な事実、あるいはこれまで気がつかなかったポイントを、いくつも読み取ることができるのではないだろうか。

日本政府は、確かにバランスシートの貸方に莫大な負債(いわゆる「国の借金」)を計上している。だが、同時に日本政府は「一組織として世界最大の金融資産」を保有しているわけだが、読者はご存知だろうか。国家のバランスシートの借方に計上された日本政府の資産(土地などの固定資産は含まれていない)は480兆円を上回り、文句なしで世界最大規模だ。ちなみに、2位はもちろんアメリカ政府だが、連邦政府と地方政府分を足し合わせても、350兆円程度に過ぎない。(これでも十分に巨額な資産だが)

 あるいは、日本国家の経済主体について、すべての負債を合計した額が5000兆円を超えている事実をご存知だろうか。「国全体の借金、5000兆円超!」というわけである。思わずのけ反りそうな額の「借金」だが、負債総額が大きい分、当然ながら資産額も巨額であるため(「誰かの負債は、誰かの資産」である)、別にセンセーショナルに煽るような話ではない。

 財務省などが「国の借金!」と大騒ぎを繰り広げているのは、バランスシートの貸方(右側)の最上部に計上されている「政府の負債 1001兆8000億円」のことである。確かに巨額ではあるが、政府以外の経済主体を見てみると、金融機関は2744兆円、非金融法人企業(以下、一般企業)は1184兆円もの負債を抱えている。財務省やマスコミは、これらの「借金」についても「破綻だ! 破綻だ!」と大騒ぎしないのだろうか。

財務省やマスコミが「政府の負債」をどう表現しているか
 連載第1回、第2回で見てきたように、日本国債の債権者の多くは国内金融機関だ。すなわち、政府が過去に発行した国債の多くは、国家のバランスシートの借方において「金融機関の資産」として計上されている。とはいえ、金融機関は別に自己資本で国債を買っているわけではない。我々、一般の日本国民や企業の預金の運用先として国債を購入しているわけだ。我々の預金は、銀行にとっては負債であるので、当然ながらバランスシートの貸方に「金融機関の負債」として計上されている。

 そして同じ金額分の預金が、借方で「家計の資産」「一般企業の資産」として計上されているわけである。日本国債の最終的な債権者、すなわち政府にお金を貸しているのは、我々日本国民自身なのだ。

 我々が「債権者」である「政府の負債」について、財務省やマスコミがどのように表現しているか、思い返してほしい。

「『国の借金』900兆円突破!」
「国民1人当たり、700万円の『借金』!」

 新聞などで、上記のような見出しを目にしたことはないだろうか。我々が「貸している」お金である「政府の負債」を人口で割り、「国民1人当たり○○○円の借金!」というフレーズで煽る。率直に言って、悪質な「ミスリード」としか表現しようがない。正しくは「国民1人当たり○○○円の債権!」であろう。

対外純資産263兆円は、文句なしで世界最大
 ちなみに、本来的な意味における「国の借金」と言える「対外負債」、すなわち日本国が外国から借りているお金の総額は、2010年6月速報値で301.03兆円となっている。

「日本の国の借金は、300兆円を超えている!」

 と、大声で叫ぶ人がいた場合、それは全くもって正しい。日本国の「外国への借金」は、確かに300兆円を超えている。

 ただし、経常収支黒字国である日本は、巨額な「対外資産」も保有している。6月末速報値で、日本の対外資産は564.7兆円に達しており、対外資産から対外負債を差し引いた「対外純資産」は、263兆円を上回っている。この対外純資産の総額は、文句なしで世界最大である。

 普通に考えて、純資産が多いとは「お金持ち」ということだろう。日本は「国」としてみた場合、間違いなく世界最大のお金持ちなのである。(ちなみに、世界で最も「対外純負債」が多い国、すなわち貧乏な国は、文句なしでアメリカだ)。

なぜ、日本政府の負債は増えたのか?
 まとめると、

 日本国家全体で見ると、資産額も負債額も共に5000兆円を超えている。ただし、対外純資産国である日本の場合、資産額が負債額を260兆円以上も上回っており、この純資産(=対外純資産)の額は世界最大である。

 また、政府の負債は1000兆円を超えているが、同時に資産も480兆円超と巨額で、日本政府は一組織として世界最大の金融資産を保有している。政府の負債の最終的な『債権者』は日本国民や日本企業であるが、なぜか財務省やマスコミは『国民1人当たり借金』というフレーズを用い、センセーショナルに煽っている。

 となる。

 さて、鳥瞰的に日本国の各経済主体について、バランスシートの状況を理解していただいた上で、「なぜ、日本政府の負債は増えたのか?」について考えていただきたい。日本人は「借金」と聞くと毛嫌いする人が多いが、そもそも資本主義経済とは「誰か」が借り入れを増やし、支出に回さなければ、成長することは困難なのである。

 実は、バブル崩壊前の日本政府は、資産と同規模の負債しか保有していなかった。すなわち、純負債(=負債-資産)がゼロに近かったのである。その日本政府の負債総額が、バブル崩壊後に一気に拡大した。純負債額も、今や600兆円に迫ろうとしている。なぜだろうか。


企業が借入金返済に専念したら支出が減少するのは当然
 企業の設備投資も負債も、共に1980年代の後半に増加ペースを一時的に早め、その後、減少を始めている。無論、バブル崩壊により「非金融法人企業が負債返済に専念し始め、結果的に設備投資を減らした」ためである。特に、97年の橋本政権による緊縮財政開始以降は、デフレが深刻化したこともあり、一般企業は露骨なまでに負債減少に邁進するようになってしまった。企業が負債を増やさず、借入金の返済に専念した場合、当たり前だがGDP上で支出(民間企業設備)も減少せざるを得ない。

 さらに、80年頃は100兆円程度でしかなかった一般政府の負債残高が、バブル崩壊後に拡大を始めた。GDP上で民間企業の設備投資が減る「不況下」では、政府は財政出動による景気対策を求められる。不況下で税収が増えることはあり得ないため、当然ながら政府は国債を発行せざるを得ず、負債残高は増えていく。

すなわち、バブル崩壊後に国家経済のフロー(GDP)上で、民間企業設備項目が減少を始め、それを補うために政府が負債と支出を拡大したからこそ、財務省の言う「国の借金」がここまで増えたのである。もちろん、政府の借り入れの原資は「お金を使わなくなった、日本の民間(家計及び一般企業)」が貯め込んだ過剰貯蓄である(第1回参照)。すなわち、我々日本国民のお金だ。

 そして、この時期に政府が負債、支出を拡大しなかった場合、日本のGDPは毎年10兆円を超えるペースで減少していった可能性が高いのだ。すなわち、2ケタのマイナス成長が続いた可能性があるのである。

 GDPが2ケタのマイナス成長になるということは、我々の「所得」が毎年激減していくことを意味する。政府の負債増を「単純論(例:『借金はとにかく良くない!』など)」で批判する人々は、世界大恐慌期のアメリカのように、「我々の所得」が半分近くまで落ち込んだ方がマシだったとでも主張したいのだろうか。

 少なくとも、筆者は真っ平ごめんである。

頭が痛い「家計簿的発想」の説明
 本連載第1回から今回までの3回で見てきたように、財務省やマスコミの言う「国の借金」問題は、「借金が多いのはダメだ!」などの単純論でとらえてはいけない性質のものだ。

 特に、国家経済について、「家計簿」に喩えて説明する政治家や評論家が後を絶たないわけであるから、心底から頭が痛くなってくる。企業経営を家計簿に喩えて説明する人はいないと思うが、なぜか国家経済や財政については「家計簿的発想」が続出する。そもそも国家経済とは、ストック(バランスシート)もフロー(GDPのこと)も、共に企業や家計のそれとは全く異なる概念であるにも関わらず、である。

 さらに、政府の経済政策は「インフレ期」と「デフレ期」では異なるわけだが、なぜか日本では「デフレ期にインフレ対策」を唱える人が後を絶たない。次回はこの「デフレ期にインフレ対策を唱える愚」について取り上げたい。

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日経ビジネス 2010年8月3日(火)三橋 貴明
 


何十兆円も償還されて困るのは“借金”漬けの銀行!

日本は今こそ国債を「増発」すべきだ――。こう言ったら暴論に聞こえるだろうか。

 しかし、よく考えてみてほしい。今、日本経済の最大の問題は「満足に成長できていない」ことであり、資金を潤沢に使いたくなるような産業が生まれ、そして育っていないことなのである。ここで「借金を返そう」などと号令をかけ、萎縮の道をたどるのは自殺行為に等しい。

 日本が取るべき解は正反対のところにある。世界でも最低水準の長期金利を最大限活用して国債を増発し、成長分野に注ぎ込む。そして、日本が持つ潜在力に火を付ける。

 暴論と思われても結構。ぜひ、この連載を読んでみてほしい。「日本の財政が危ない」というイメージにとらわれず、正しい「数値データ」に基づく議論をしようではないか。

 なぜ、日本国債の金利はこれほどまでに低いのか?

 2010年7月21日時点で、日本の新規発行10年物国債金利の利回りは、わずかに1.1%。もちろん、長期金利としては世界最低である。すなわち、日本政府は現時点において「世界最低の資金コスト」でお金を調達できる組織なのである。

日本政府の資金調達コストは世界最低
「財政破綻! 財政破綻!」

 と騒がれている割に、日本政府の資金調達コストは世界最低。なぜだろうか。

 ちまたをにぎわす「日本財政破綻論者」の皆様が、この問いに明確に答えたことはない。聞こえてくるのは、

「日本国債は、単に『国債バブル』になっているだけだ!」
「日本政府と銀行の間で、密約があるのだ! あるはずだ!」

 など、率直に言ってトンデモ論としか表現しようがない「言い訳」ばかりなのである。あるいは、

「日本政府の財政再建への姿勢が、国債金利を低く抑えているのだ」

 などと主張する人もいる。だが、新規国債発行残高が史上最高を更新している中、財政再建も何もあったものではない。

「民間の資金需要がない」ことが真の問題
 この手の「言い訳」をする人々に共通する姿勢は、言っていることが非常に「定性的」であるという点だ。あるいは「イメージ」で語っていると言い換えても構わない。

 日本国債の金利の低さは、イメージ的あるいは定性的に考えず、定量的に問題をとらえようとすれば、簡単に説明がつく。単純に、日本国内に過剰貯蓄があふれ、資金需要に対して資金供給が大き過ぎるためである。銀行などの国内金融機関にあふれたマネーの運用先が見当たらず、「国債が買われるしかない」状況に至っているからこそ、日本国債の金利は世界最低なのだ。

 意外に理解していない人が多いが、銀行にとって預金残高とは「負債」であり、「資産」ではない。厳密に書くと、我々がお金を預けると、銀行のバランスシート(貸借対照表)上で、同額分の資産(現金)と負債(預金)が増える。

 誰でも理解できると思うが、現金をそのまま保有していたとしても、金利は生まない。それに対し、我々の預金に対しては、銀行は金利を支払う必要があり、実際に支払っている。金利を支払わなければならない「預金」という形で調達したマネーを、現金資産として保有しているだけでは、銀行は逆ザヤで倒産してしまう。預金が「借金」である以上、銀行は何らかの手段でそのお金を運用しなければならないのである。

 日本経済の真の問題とは、財務省の言う「国の借金!」とやらではない。1990年のバブル崩壊、及び97年の橋本政権による緊縮財政開始以降、国内のデフレが悪化し、民間の資金需要が全く増えなくなってしまったことこそ問題なのである。すなわち「民間の資金需要がない」ことこそが、日本経済の真の問題なのだ。

不況、不況と騒がれつつも、国内銀行の預金残高は増え続けている。というよりも、民間の家計や企業が支出をせず、預金残高を増やし続けているからこそ、不景気なのだ。

 好景気とはGDPが成長すること、不景気とはGDPが成長しないことである。そして、GDPとは国内の各経済主体の「支出」の合計なのだ。民間企業や家計が支出を減らし、預金残高を増やしている以上、GDPの成長が抑制されるのは当然だ。

「強制借金」と呼んでも構わないような存在
 橋本政権による緊縮財政のダメージが表面化した1998年以降、国内銀行の実質預金残高は着実(?)に増え続けている。先述の通り、預金とは我々にとっては資産であるが、銀行にとっては負債である。しかも、基本的に銀行側は預金を断ることができないため、いわば「強制借金」と呼んでも構わないような存在だ。

 本来的に、銀行は家計や企業から「借りた」預金を他者に貸し付け、金利を稼ぐのを生業としている。銀行に集まったお金の運用先が充分に存在しているのであれば、実質預金残高が増えていこうが全く問題にならない。

 とはいえ、現実の日本は「運用先が充分に存在している」どころの状況ではないことが、先のグラフを見れば誰にでも瞬時に理解できるだろう。バブル崩壊以降も辛うじて増え続けていた国内銀行の貸出金は、橋本政権期にピークを打ち、その後は明確に減少に転じた。

 国内銀行の貸出金残高が減る。すなわち「民間の資金需要」が縮小を始めたのである。民間がお金を借りず、支出も増やさない。それどころか、返済してくる。結果、「支出の合計」であるGDPが成長しない。本格的なデフレ不況の到来だ。

「運用先がないマネー」は鬼門
 デフレ不況下にも関わらず、いや、むしろデフレ不況下だからこそ、民間の経済主体は支出を切り詰め、預金残高を積み上げていった。結果的に、銀行が貸し切れない預金残高である「預金超過額」が次第に拡大していった。

 預金超過額とは、
「民間に貸出先が見つからない、銀行の負債である実質預金残高」
 という定義になる。

 「預金超過額」という言葉がピンと来なければ、「過剰貯蓄」と言い換えても構わない。民間に貸出されない貯蓄、すなわち過剰になっている貯蓄を示すものこそが、預金超過額なのだ。

とにもかくにも、銀行にとって「運用先がないマネー」は鬼門である。何しろ、銀行にあるマネーは銀行自身のものではないのだ。我々一般の預金者から借りうけた「借金」なのである。逆ザヤを発生させたくなければ、銀行は何とかこの過剰貯蓄を運用する、すなわち「誰かに貸し付け」なければならないわけだ。さもないと、銀行から我々一般預金者への金利がストップする、あるいは銀行側が預金を断るような異常事態に陥りかねない。

 無論、そんな異常事態に達する前に、銀行は何とか手元の過剰貯蓄の運用先を見つけようとする。結果、当然の話として国債が買われているわけだ。

138兆2000億円が国債で運用されている
 日銀の「金融経済統計月報」によると、2010年5月時点で、国内銀行の実質預金残高から貸出金を差し引いた預金超過額は、159兆9000億円と、160兆円の大台目前になっている。この預金超過額のうち、およそ138兆2000億円が国債で運用されている。過剰貯蓄のうち、約86%が日本国債に回っている計算になる。(残りは米国債などの外国証券で運用されている)。

 銀行は国債を買う、すなわち政府にお金を「貸し付ける」ことで、政府から金利収入を得て、我々一般預金者への金利支払いに充当しているわけだ。

 こんな有り様で、日本政府が「財政再建!」の声に押され、何十兆円もの金額を償還した場合、いったいどうなるだろうか。たとえば、ある日突然、日本政府が銀行の保有する十兆円分の国債を償還(=借金を返済)したケースなどだ。銀行は果たして、喜ぶだろうか。

 とんでもない。

政府の負債残高を問題視し、国内需要を縮小させている
 過剰貯蓄の運用難に悩んでいる状況で、銀行が何十兆円ものお金を返済されたところで、嬉しいはずがない。何しろ、銀行が政府から返済してもらうお金は、元々は我々、一般預金者のものであり、銀行自身のものではないのだ。我々に金利を支払うために、銀行は再び何十兆円分のお金の運用先(=貸付先)を、死に物狂いで探さなければならなくなる。

 デフレに悩む日本において、何十兆円もの金額の運用先など、そうはあるはずがない。国債を償還してもらった銀行は、結局のところ、再び国債を購入する羽目になるだろう。何しろ、ほかに運用先がないのである。

 日本経済の真の問題は、「民間の資金需要がない」ことであり、政府の負債(いわゆる「国の借金!」)云々ではないのだ。

 むしろ日本政府の負債残高を問題視し、政府の支出(例:公共投資など)を削り取ることで、日本国内の需要を縮小させているからこそ、民間の資金需要が高まらないのである。しかも、現在の日本国債の金利は世界最低だ。

世界最低の資金コストでお金を調達できるわけであるから、日本国民の生活水準を高めるための投資を行うには、「今」が絶好の機会なのである。さらに言えば、1996年のピーク(約42兆円)時から、橋本政権の緊縮財政開始以降、すでに公共投資は半分以下(2009年で20兆円)の水準にまで削減されてしまった。結果、我々日本国民が現在の生活水準を維持することすら、このままでは不可能になってしまうのだ。

正しい「数値データ」に基づいた議論が必要
 日本政府は今こそ国債を増発すべきなのである。そして、子ども手当のように直接的にはGDP拡大に貢献しない「所得移転系」ではなく、公共投資などの「日本国民の生活水準を維持する」あるいは「日本の産業力を強化する」ための支出に振り向けるべきだ。

 公共投資などの政府支出を呼び水に、日本経済の成長力が回復し、民間の投資意欲を高めていけば、「民間の資金需要がない」という日本経済の真の問題は解消されるだろう。

 そもそも現在の日本の超低金利は、金融市場が政府に対し、
「もっと国債を発行し、支出を増やしてほしい」
 と求めているサインなのである。

「財政出動による経済成長か、それとも緊縮財政による財政健全化か」

 この議論は、既に日本国内では10年以上も続いている。決着をつけるには、「イメージ」に振り回されるのではなく、正しい「数値データ」に基づいた議論が必要なのだ。

 本連載が、日本国内で正しい「財政出動」「経済成長」あるいは「財政健全化」に関する議論を呼び起こすきっかけになれば、筆者にとってこれ以上の喜びはない。

渡辺喜美
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E5%96%9C%E7%BE%8E

日本銀行法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%8A%80%E6%B3%95

現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/

渡辺喜美(みんなの党代表)×長谷川幸洋(東京新聞論説委員)


長谷川 過日、東京証券取引所の斉藤惇社長にお話をうかがったんですが、日本の中堅企業の5000から1万社くらいが日本を見限って、海外に脱出しているそうです。

渡辺 ほう、すでにそんなに。

「アジアの金融センターにはもうなれない」
長谷川 株式ディーラーも、香港やシンガポールに続々とヘッドハンティングされて日本を脱出している。だから斉藤社長は東証の役員たちにこう言ってるそうです。「"東京をアジアの金融センターに"というようなキャッチフレーズはもうやめよう。もはやそんなことはできないんだから」と。私はこのお話を聞いて愕然としました。

渡辺 う~ん。

長谷川 東京を抜き去った香港やシンガポールは、「世界の金融センターに」とうたっています。一方、東京はローカルマーケットに過ぎなくなってしまっている。日本の経済はそれほどに沈んでいるのです。

渡辺 それにくわえて、これから世界経済の二番底懸念は、かなり現実味を帯びつつあると思います。

長谷川 そうですね。

渡辺 こういう非常事態への対応が必要なときに、政府にはまるで危機感がない。どころか、増税路線がいきなり出てきたりする。この無頓着さに国民が敏感に反応したのが、今度の参院選の結果だったのだと思います。

リーマンショックを凌ぐ経済危機がくる可能性
長谷川 欧州でも銀行の不良債権問題がくすぶっています。おそらく相当な資産劣化のために、いずれな公的資金を注入せざるをえなくなるでしょう。ひょっとすると、リーマンショックを上まわる危機が、これから訪れるかもしれません。

渡辺 リーマンショック以後、問題解決を誤魔化しました。金融システムには大きな穴は空いていないんだ、という共同幻想でやってきた。でも、それは限界に達しつつある。世界経済は重大な局面にありますね。

長谷川 でもそういう危機感をまったくないまま、日本の国家経営というものは行われている。

渡辺 ええ。日本は相変わらず「部分最適化」だけが得意の試験選抜エリートが実権を握り続けています。自分たちの縄張りの中だけで生きている人たちが、政治家を駆使しながら日本を動かしている―この現実が民主党政権下で、はからずもわかってしまった。

長谷川 鳩山・菅とつづいた民主党政権はマクロ経済政策を持っていません。だから、マーケットがそれを見透かして、いま円高を仕掛けているんじゃないかと、これまで私は指摘してきました。

 欧州もアメリカも財政出動の余裕がなくなってきています。では何ができるかというと、為替の切り下げ競争です。欧米の政策当局は意図してやらないだろうけれど、マーケットの側が先読みして円を高くしているのじゃないかとみています。

 日本の永田町はこの脳天気状態だから、有効な対応策を打たない。これは絶好のチャンスだとつけ込まれて、その結果、円高になっているのではないかと考えているんです。

渡辺 まったくその通りですよ。カナダのサミットから菅総理が帰国したとたん、円高になって、株が下落したでしょ。

長谷川 そうです。

菅政権の「自国窮乏化策」
渡辺 去年11月、当時の菅直人副総理兼経済財政担当大臣が、デフレ宣言をしたけれども、デフレ対策とは名ばかりで、アリバイ作りのことしか行われていませんよね。日本銀行が成長融資と称して政府系金融機関まがいのことをやっている。ベースマネーはまったく増えていない。

 直近のバランスシートは117兆円くらいでしょうか。一時150兆円もあったバランスシートからすると、30兆円以上もしぼんでしまっています。これぞまさしく、円高の基本要因ですよ。こういうのを「自国窮乏化策」って言うんでしょうね。

長谷川 なるほど、「自国窮乏化策」ですか(笑)。

渡辺 自分の庭先だけきれいにしたいという「部分最適」の世界で、財務官僚が「増税しかない」と言い張ってるわけです。

 IMF(国際通貨基金)のレポートは、15%の消費税アップが必要だと書いたと話題になりましたよね。この内容は内閣府の試算と同じです。プライマリーバランスを回復するためには、名目2%成長だと10年後には消費税は15%必要なんだという試算は同じです。つまり、このレポートを誰が書いているのか、これはもう一目瞭然ですよ。

長谷川 つまり霞が関ですね。

渡辺 IMFは日本が資金を提供し、財務省の出向者の跋扈する国際天下り機関ですよ。外圧利用という手あかの付いた手法ですが、実際にこういうレポートを書いているわけです。

 「部分最適」で縄張りだけをきれいにするために、デフレ下で増税をして、結局はデフレから脱却できない袋小路にはまっていくことになる。そして、日本の国力はどんどん衰えてゆく・・・この流れはいかんともし難い状況です。

長谷川 マーケットが注目しているのは、円高が進んでも、財務省からも日銀からも何の具体策が出てこないというその部分なんです。

渡辺 永田町はまったく能天気ですからね。為替は変動相場制のもとでは、金融政策と密接な関係がある。為替をターゲットにした金融政策はなかなか理屈が立ちませんけれど、結果として為替マーケットに影響をおよぼす金融政策というのは明らかにあるわけです。

 つまりお金の供給を絞れば、円は高くなるに決まってますよ。供給すれば価値が薄まって円安になるなんてのは、中学生だってわかる話なんです。どこも自国通貨を安くする「近隣窮乏化策」やってるときに、日銀だけが「自国窮乏化策」をやってる。

長谷川 日銀はひどいですね。

渡辺 小泉政権時代には、大量の為替介入と事実上の金融緩和政策が行われたわけですね。これは、日本の景気回復にとっては非常に効果があった。ところがいまは、まったく機能していないんですね。

 みんなの党では、クレジット・イージングといわれる信用緩和政策を提案しています。やはり日銀法そのものを改正する必要があるんですね。私自身は98年に日銀法改正に携わった人間ですから、内心忸怩たる思いを抱いています。この10年間、日銀の政策はデフレターゲットだったと言っても過言ではありません。

長谷川 そうですね。

渡辺 消費者物価指数は「コア指数」も「コアコア指数」も、0%からマイナス1%を行ったり来たりしていますね。0の上を抜けると金融引き締め、マイナス1の下を抜けると金融緩和を行う。これはまさにデフレターゲットの金融政策ですよ。

 こんなデフレを10年以上も続けている国は他にはありません。どこの国だって大競争のまっただなかにあるんです。中国をはじめとした新興国から、どんどん安いものが入ってくるし、IT革命でイノベーションがどんどん行われてゆく・・・。これだけデフレ圧力はかかっているにもかかわらず、何も対応していないのは日本だけなんです。

民主にも自民にもいるデフレ脱却賛成派
長谷川 7月にウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された渡辺代表へのインタビュー記事では、デフレを脱却するための物価安定政策を呼びかけると発言していますね。

 民主党や自民党のなかにもデフレ脱却賛成の議員がかなりいて、民主党には130人くらい賛同者がいると・・・。今後の戦術はどうしますか?

渡辺 目の前に迫った二番底懸念があり、国民生活は相当に脅かされているわけですね。この参院選を通じてわれわれがひしひしと感じたのは、「景気をなんとかしてくれ」という悲痛な叫びですよ。結局はこういう声に応えることこそが、政治の本来の役目だろうということなんです。

長谷川 そうですね。

渡辺 たとえば日銀法改正で、物価安定目標を入れるということです。物価安定目標というのは、反対側から見ると、雇用の安定につながる。デフレのときには失業率が当然高くなるわけだし、2%の物価上昇なら失業率は下がってくる。

長谷川 フィリップスカーブですね。

渡辺 それが常識なわけですから、物価安定と雇用の安定は日銀法のなかに取り込んでもいいだろうし、クレジットイージングを政府が要請できるという項目を入れれば、なお政策は強化されてゆくでしょう。

長谷川 なるほど。

渡辺 12年前の金融国会のときには、橋本政権から小渕政権に変わった後、8月中もお盆を除いてずっとやってました。そういう感覚が必要なんです。にもかかわらず、今度の臨時国会では、予算委員会はわずか数日です。とんでもないことですよ。

 民主党のなかも大混乱なのでしょう。9月は代表選で、その後で臨時国会だという。この代表選の結果によっては9月の国会審議は、まず無理だろうと言われている。

長谷川 いま、日銀は神経を使ってるでしょう。つまり、みんなの党が物価安定・雇用の安定などを掲げて、本気になって行動してくるとなれば、いままでのようにのんべんだらりと、金融緩和に本腰をあげずにお茶を濁しているわけにはいかなくなるぞと―。

渡辺 ただ日銀法の大改正は、かなり重たい弾になります。本格的な論戦ができる国会にもっていかなくてはなりません。

 

長谷川 しかし、問題はそんな悠長な時間的余裕があるのでしょうか。

渡辺 そこなんです。10月に論戦をはじめて1ヵ月経過するとして、ほんとうにそれでこの国は大丈夫なのか? われわれはその危機意識があるから、夏休み返上で議論すべきと訴えたのですが、政府・与党にはこの感覚がない。恐るべきことです。

長谷川 永田町の経済政策への感度が非常に低下していますね。私たちメディアの側も、与野党の数合わせの問題ばかりを追ってしまい、政策の部分が抜け落ちてしまっている。欧州で経済危機が火を噴く可能性があるとすると、秋までのんびりしていて大丈夫なのか、ほんとうに不安です。

渡辺 霞ヶ関の官僚のなかにも、危機意識を持った連中は、数は少ないけれどもいるんですよ。しかし彼らは、いまの枠組みのなかでは、国家戦略にまで高める政策立案ができない。「部分最適」、各省の縄張りの中で、こじんまりと政策立案をまとめるしかないんですね。

改革派官僚を活用せよ
長谷川 民主党政権の公務員改革に対する姿勢を問う象徴的な人事があります。経産官僚の古賀茂明さんが、1年近くも官房付という宙ぶらりんのまま置かれ、さらには退職勧奨を受けたというのです。古賀さんは改革派官僚としても知られている方なのですが、それを追い出すとは・・・。

渡辺 古賀さんは、私が(金融・行政改革担当)大臣のときに、国家公務員制度改革推進本部事務局の幹部として働いた人物なんです。誰が見ても改革派官僚のエースでした。実際、大臣室で補佐官として手伝ってくれた若手官僚は、古賀さんに紹介してもらった人たちでした。

 彼らは、事務方が骨抜き案や落とし穴を設けた案をもってきたときには、しっかり骨を入れ、穴を埋めるといった作業をやり、渡辺プランの企画立案を、私の右腕となって実行してくれていたのです。

長谷川 なるほど。

渡辺 古賀さんは霞ヶ関の中で、改革の志を忘れない非常に希有な官僚です。だから、私が大臣を辞めた後、彼の身がどうなるのか、案じていたんです。結局、国家公務員制度改革推進本部事務局は、かなりタガがゆるんでしまいました。

 それでも民主党は「脱官僚」と言ってましたんでね、われわれも最初は期待してた。古賀さんは仙谷由人公務員制度改革担当大臣の補佐官として、右腕になる予定だったんです。

長谷川 そうだったんですか。

渡辺 しかし、財務省を中心とする霞ヶ関が、「こんなアルカイダみたいな官僚を使うと大変なことになる」と、総攻撃をかけて古賀さんが補佐官になる案をひっくり返してしまった。

長谷川 財務省にしてみれば古賀さんは、自分たちを破壊してしまうほど強力な改革派だったというわけですね。

渡辺 そうです。そして古賀補佐官構想が潰れてから、仙谷大臣が変節するのに時間はかかりませんでした。いまや、仙谷官房長官は霞ヶ関の既得権益の守護神と化しています。

長谷川 もし仙谷官房長官も本気で「脱官僚」を目指すのなら、いまからでも古賀さんを採用するべきですよ。

 じつは、ある民主党の現職閣僚から、「改革派官僚の知恵を借りたい」と相談を受けたので、古賀さんにお話して、「古賀リスト」を作成して渡したことがあるんです。しかし、その閣僚はリストを活用することなく、現在に至っています。こうした人材をうまく使ってほしいですね。

霞が関へのかすかな希望
渡辺 6月22日に菅内閣が行った閣議決定(退職管理基本方針)があるんですが、それは「現職の官僚が天下り法人に出向する場合は、天下り扱いしない」というとんでもない閣議決定なんですね。50代のいわゆる肩たたき対象組が、古賀さんへの出向打診のように本省に戻ってくる可能性がないまま現職として出向するとすれば、これは天下りそのものなんですよ。

長谷川 ええ。

渡辺 自民党時代からコソコソと考えられてきたことが、より露骨に民主党政権下で実現してしまったわけです。だから問題なんです。

 もともと現職官僚が出向するといった場合には、研鑽を積ませるためですよ。若手官僚のスキルアップが目的だった。それを、民主党政権はおおっぴらにとんでもない屁理屈をこね、実際は肩たたきの天下りなのに、人事なのだと言い張って制度を解禁してしまった。

 この根底には、官が民を支配するという官僚統制・中央集権の思想があるわけです。植民地みたいな法人をたくさん作っておいて、そこに官僚をはめ込んでおく。この統制が民の活力を阻害し、日本をダメにしている。6月22日の閣議決定は、まさに"植民地"を大幅に拡充・強化しようとするものなんです。

長谷川 菅政権も自分たちが身を切らずして、国民の支持は得られないということは、今回の参院選ではっきりわかったでしょう。だからこそ、民主党内は責任問題で内紛に近い状態になっている。霞ヶ関もそろそろ気がつかないといけない。

 つまり、財務省も増税をするには、霞ヶ関自身が身を切らなければならないということに気がつかなければならない。であれば、霞ヶ関のリストラ案を霞ヶ関自身が出すべきです。

 ズバリ言えば、財務省主計局は、国家公務員の給与問題をどうするのか、独立行政法人はどうするのか、さらに言えば霞ヶ関全体の体制をどうするのか・・・これらについて自分たちが身を切るリストラ案を出したらどうか。

 言い換えるなら、菅政権も財務省主計局に対して、「リストラ案を作りなさい」と求めるべきではないのか。現にドイツでは官僚が官僚のリストラを考えているんですからね。

渡辺 長谷川さんの意見には、日本の官僚には腐りきっていない部分があるんだという微かな希望が入っているんでしょう?

長谷川 そうです。

渡辺 これは改革派官僚をピックアップして作らせないと、骨抜きプランが出てくることはまず間違いない。まな板の上の鯉に包丁を渡して、自分で切れと言っても・・・。

長谷川 切れないでしょうねえ。

官僚は「できない」という天才だ
渡辺 だからやはり、霞ヶ関のリストラは政治の仕事になります。民主党が政権を取ったにもかかわらず、なぜマニフェストが詐欺のオンパレードになってしまうのか? それは官僚機構を使いこなす前に、官僚を選ぶというあたりまえのことが、まるでできていなかったからなんですね。

長谷川 そこですね。

渡辺 自民党時代を支えた官僚を居抜きで使ってるからですよ。官僚は「できない」と理屈をこねる大天才と言われているんですから(笑)。あれもできない、これもできないと言うに決まってるんです。

 普天間問題を例に取るなら、基地を県外にあるいは海外への移設を実行しようと思ったら、官僚を入れ替えて使うしかないんですよ。自民党時代に辺野古沖移設を進めてきた官僚をそっくりそのまま使ってるわけだから、「できません」と言うに決まってる。

長谷川 予算の組み替えにしたって、自民党時代の官僚を使ったら「できません」と言いますよ。こんなあたりまえのことが、まったくできていない。

渡辺 民間企業で経営陣が替わったら、まず最初に手を付けるのが社内人事の刷新でしょう。若手で使えそうなのがいれば、大抜擢したりする。それが普通です。

 みんなの党では、真の政治主導を実現するための3点セットを挙げています。1、内閣人事局を作り、幹部人事にグリップをかける。2、国家戦略局を作り、国家戦略スタッフが政策の企画立案を行う。3、内閣予算局を創設し、真の人・政策・お金の官邸主導体制を作る。民主党もこの方向性の大切さはわかっていたはずなのに、この第一歩すら踏み出せていないのは残念です。

   この対談は7月20日に行われました。

日本法制学会
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%AD%A6%E4%BC%9A

*会の役員

■ 名誉職

名誉顧問 長岡 實 資本市場研究会顧問
名誉顧問 河野  俊二 東京海上日動火災保険名誉顧問
会   長 石原 信雄 地方自治研究機構会長

■ 理事会

理事長 澤野 次郎 常勤
専務理事 (理事長兼務)
理  事 石  弘光 放送大学学長
理  事 垣添 忠生 日本対がん協会会長
理  事 田波 耕治 三菱東京UFJ銀行顧問
理  事 波多 健治郎 明治安田生命保険特別顧問
理  事 原田  明夫 弁護士
理  事 吉田 正輝 プルデンシャル生命保険特別顧問
監  事 水野 勝 日本たばこ産業顧問

■ 評議員会

議 長 古川 貞二郎 恩賜財団母子愛育会理事長
評議員 梅崎 壽 東京地下鉄社長

評議員 公文 宏 女子学院理事長

評議員 篠沢 恭助 資本市場研究会理事長

評議員 嶋津 昭 地域総合整備財団理事長
評議員 辰川 弘敬 元中央大学常任理事
評議員 成田 頼明 日本エネルギー法研究所理事長

評議員 野村 鋠市 東京市政調査会顧問

評議員 早﨑 博 住友信託銀行特別顧問
評議員 藤井 威 みずほコーポレート銀行顧問

2010年6月現在


Net月刊現代
http://moura.jp/index.html

 財務省の関連団体に面白い組織があるのを知ってますか。『学会』と名がついているので、あたかも学術研究団体のような体裁をとっていますが、中身はちょっと違う。財務省の権益を守るための『秘密クラブ』のようなものです」

 興味深い話を打ち明けてくれたのは、霞が関の実態に詳しい中堅官僚である。にわかには信じがたい気がしたが、インターネットで所在地を検索すると、思わず目が止まった。東京・赤坂の奥座敷。都心には珍しく、Uの字形になった道路の奥まった一角にあり、関係者でなければ立ち入らないような場所だった。

 単なる偶然だろうが、すぐ隣には、数年前に某経済紙の社長が通い詰めて、スキャンダルになった高級クラブもあった。たしかに、秘密めいた臭いが漂ってはいる。

 その団体は「日本法制学会」という。「財政・金融・金融法制研究」の分野で一件100万円までの助成金を支給したり、行財政や都市再生の研究会を開いたりしている。文部科学省所管の財団法人だが、実際には財務省の強い影響下にある。役員の顔ぶれをみれば、それは一目瞭然だ。

 名誉顧問に長岡實資本市場研究会理事長(元大蔵事務次官)、会長に石原信雄元内閣官房副長官(元自治事務次官)が就き、理事長ほか役員にも財務省や総務省の有力OBたちがずらりと名を連ねている。

 なかでも長岡は、いまも財務省に強い影響力をもつ「ボス中のボス」として知られている。学会の下部組織である行財政研究会の名誉会長を兼ね、2代目の研究会会長には保田博資本市場振興財団理事長(元大蔵事務次官)が収まっている。

 実は、4月にようやく決着した日銀総裁騒動の「陰の主役」が、この長岡・保田ラインと目されているのだ。

「保田さんは故・福田赳夫首相の総理秘書官を務めた。そのとき同じ秘書官同士だったのが、いまの福田康夫首相なのです。その縁で、保田さんは福田首相に極めて近い。田波耕治国際協力銀行総裁を日銀総裁候補に推薦したのも保田さん、と言われています」(官邸関係者)

 保田は初代の国際協力銀行総裁を務めた。田波は、まさに直系の後輩に当たる。


「終わりの始まり」  民間の感覚では理解しがたいが、財務省の次官級OB人事を仕切るのは現役官僚ではない。長岡や保田ら一部のボスたちである。現役を退いてからも、力のあるボスが人事を仕切る鉄の秩序こそが「大蔵一家」と呼ばれるゆえんでもある。

 現役時代だけでなく天下り後も含めた経歴こそが、財務官僚の真のキャリアになっている。いったん入省すれば、少なくとも70歳までは面倒をみる。だからこそ、ボスが人事を仕切るのだ。

 今回の日銀総裁騒動が示したのは、ほかでもない、この「鉄の秩序」が支えてきた支配体制が崩壊しつつあるという現実だった。長岡や保田ら、かつての「大蔵王朝」の栄華を知るボスたちにとって、総裁候補の大本命だった武藤敏郎前日銀副総裁(元財務事務次官)、田波、そして副総裁候補になった渡辺博史一橋大学大学院教授(前財務官)までもが、次々と民主党によって不同意とされたのは、信じがたい「悪夢のような光景」であったに違いない。

 新聞の社説が一部の例外を除き、こぞって武藤総裁案を不同意とした民主党を批判したが、新聞自身が閉鎖的な記者クラブ制度を通じて、財務省をはじめとする霞が関と利害を共にしてきた側面は見過ごせない。新聞やテレビの記者は官庁の記者クラブを基地にして、政府の一次情報を独占入手する既得権益を享受してきた。いわば、マスコミも大蔵王朝の一員だったのだ。

 日本法制学会の役員名簿をみると、理事の一人に石弘光放送大学学長(元一橋大学学長)の名前もある。石はかつて政府税制調査会の会長を務め、任期満了後も財務省は続投を画策したが、2006年秋の安倍晋三政権発足とともに、財務省寄りの姿勢を嫌われ、再任を果たせなかった。振り返ってみれば、この辺りから、ボスたちの影響力は陰りを見せていたのである。

「あの『秘密クラブ』は、そこらの並の財務官僚では、とても近づけないような独特の雰囲気があった。門をくぐれるのは、現役、OBを問わず、ほんのひと握りのエリートに限られていました。存在さえ知らない官僚も多いでしょう。これまでは日銀総裁も、そこの住人たちが決めていたようなものなのです。でも、そういう時代は確実に終わりつつありますね。もはや復活はありえない」(先の中堅官僚)
 財務省支配体制の「終わりの始まり」。日銀騒動の本質をそう正しく認識した人間が、どれほど福田康夫政権にいただろうか。少なくとも、国会の党首討論で小沢一郎民主党代表に対して「かわいそうなくらい苦労している」と絶叫した福田が理解していたとは思えない。まさしく、かわいそうなのは福田なのだ。
 大蔵省のエース官僚から転身し、首相の座に上り詰めた赳夫を父にもつ福田康夫が首相となって、いままた財務省の力に頼ろうとするのは自然だ。だが、福田が落日の財務省にのめり込めばのめり込むほど、一緒に足をすくわれる展開になった。
 財務省との距離感は、福田政権の運命に直結している。それは大失敗に終わった日銀総裁問題にとどまらない。道路特定財源問題や公務員制度改革でも、財務省と二人三脚で動くのかどうか。政権の評価と行方は、そこで決まるとみていい。
 小沢は日銀騒動の最中に「道路特定財源を08年度から一般財源化」「暫定税率の即時廃止で庶民減税」「官僚天下りの完全廃止」という3原則を掲げた。この「小沢3原則」の標的もまた、まさしく財務省だった。言い換えれば、小沢は福田に対して、財務省の代弁者になるのか否か、を迫っていたともいえる。

 当の福田は「困っている」という台詞せりふを連発し、揺れていた。


 背後には霞が関の計算 田波総裁案が民主党の不同意で認められず、日銀総裁問題が膠着状態に陥る中、福田は突然、動く。ガソリン税の暫定税率期限切れを目前にした3月27日、道路特定財源を09年度から一般財源化し、10年間で59兆円を投じる道路整備中期計画を5年間に短縮することを柱にした新提案を発表した。伊吹文明幹事長や谷垣禎一政調会長ら党役員にも知らせぬまま、抜き打ちの決断だった。

 この提案は一般財源化に踏み込んだ点で大きな譲歩に見えるが、実は財務省の利害と見事に一致している。暫定税率を盛り込んだ歳入法案は政府案通り可決することが前提だから、08年度の予算執行に不都合はない。そもそも、自分たちが自由に使えるようになる一般財源化は、財務省の悲願でもあった。

 民主党は激しく反発した。歳入法案を衆院で3分の2の賛成多数を得て再可決すれば、民主党は参院で首相問責決議案を出す構えだが、実は霞が関にとっては、そのほうが都合がいい事情もある。民主党が問責決議案を決議し、国会審議が止まれば、自分たちの首を絞めかねない重要法案である国家公務員制度改革基本法案の成立を阻止できるからだ。

 キャリア制度の廃止や内閣人事庁の新設を盛り込んだこの法案は、採用から天下りまで省庁縦割りの体制を崩して、真に国家に尽くす官僚をつくる狙いがある。省庁の既得権益を守るために縦割り体制を死守したい霞が関は、人事の内閣一元化に激しく抵抗していた。
 ガソリン税のどさくさの中で法案が参院に送付された後、国会審議がストップし、法案の扱いが先送りされてしまえば、霞が関には願ってもない展開である。福田に歳入法案の再可決を迫る勢力の背後では、そんな霞が関の計算がしっかりと働いているのである。

 逆に言えば、福田にとって再可決するかどうかは、ガソリン税の暫定税率維持と引き換えに、公務員制度改革を続けるのか中断するのか、という選択でもあった。
8月16日10時43分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル

内閣府が16日発表した4-6月期の国内総生産(GDP)伸び率は前期比0.1%増、年率換算で0.4%増となった。同期のドル換算したGDPは中国のそれを下回り、中国の2010年通年のGDPが日本を抜いて世界2位になるとの見方が一段と強まっている。ただ、途上国としては前例のない経済的地位を得た中国は、力を得ると同時に他国との摩擦を引き起こしている。

 同期の日本のドル換算したGDP実額は1兆2880億ドルとなり、中国の1兆3390億ドルを下回った。

 ニューヨークのJPモルガン・チェースのチーフエコノミスト、ブルース・カスマン氏は、中国が今年日本を抜いて世界2位の経済大国になる可能性について「そうなれば世界経済にとって節目だ」と述べた。「中国で印象的なのは、大半の国が本当に困難ななかでいかにうまくやり、力強い成長を続けたかだ」と話す。

 ただ、ある国の通貨で実際に国内で買えるモノやサービスを示す購買力平価でいえば、中国は久しく日本を上回り米に次いで2位につけている。ただし、1人当たりGDPは約4000ドルと、日本の約10分の1だ。

 中国がめざましい成長を遂げる一方で、日本は20年前から低迷を続けている。日本はここ数年、アジアでの抜きんでた経済的地位を失うのは必然とみているようだ。

 朝日新聞が4月に2392人を対象に行った調査では、日本経済が中国に抜かれ世界3位に低下することが大きな問題だと答えた人が50%いたが、46%はそうは思わないと答えた。

 東京のあるタクシー運転手は、近頃では中国人観光客を乗せることが多くなり、ますますコストに敏感になった日本人を乗せる回数は減っていると語った。本音を言えば、自分たちがかつて経験したような好景気を中国人が享受しているのを見るのは少しストレスだという。

 中国はある面、日本が1980年代のバブル期にアジアで切り開いた道をたどっている。日本は当時、新たな経済大国として台頭し、企業はアジアでの工場建設に資金をつぎ込んでいた。中国は地位を固めるため、近隣国に対して「平和的な台頭」計画をあらためて保証し、欧米諸国よりゆるい条件での援助や投資を行い、初めて文化的な活動にも真剣に取り組んでいる。

 ただ、各国外交筋は、中国の経済力増大が魅力的であると同時に脅威でもあり、扱いに注意が必要だとの認識を強めている。清華大学(北京)国際問題研究所の劉江永教授は「世界にいい国でありいい国民だと思ってもらうため、中国は言行を考えなくてはならない」との考えを示した。

 中国の経済力は政治的影響力に変わりつつあるが、他国のリーダーからの批判も呼んでいる。たとえば、輸出主導型の成長を目指す政策が世界の貿易不均衡の主因だとみる西側当局者は多い。経済力は力と影響力をもたらすかもしれないが、常に友人をもたらすとは限らない。

 シドニーのローウィ・インスティトュート・オブ・インターナショナル・スタディーズのアンドリュー・シアラー氏は「中国が経済的な強さをソフトパワーに変える能力には制限がある」と指摘。ベトナム、韓国、オーストラリアなど、かつては切望したパートナーとの一連のごたごたに言及し、「中国は常に、範囲を広げすぎるか、与えるものが少ないようだ」と述べた。
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