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陸上自衛隊
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A
守りに強い陸自を削るとは、新防衛大綱の大失態!
2011.02.03(Thu)JBプレス 柴田幹雄
1 はじめに
太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)たった四杯で夜も眠れず」。1853(嘉永6)年に黒船来航で大騒ぎの日本を揶揄した狂歌である。
平成22(2010)年尖閣沖での青い中国漁船の体当たり攻撃や、平成19(2007)年の北朝鮮弾道ミサイル発射時なども大騒ぎになった。
黒船では大騒ぎに引き続き、列国のアジア植民地化の危険を乗り越え明治維新という大きな歴史の進展があったが、今回はどうだろう。
北西からの強風・大波に飲み込まれるのを防ぐ対応を急がねばならない。大騒ぎをするだけで忘れ去られれば、文字通り国難が忘れた頃にやってくる。
我が国は、言うまでもなく島国で、四面をオホーツク海、日本海、東シナ海そして太平洋に囲まれている。日本へは海を渡ってこなければならない。すなわち脅威もまた海を越えてやってくる。
この脅威に最初に対抗するのが海上自衛隊と航空自衛隊である。従って、海・空戦力の重要性は論ずるまでもない。そして中国の軍近代化特に海軍力の増強はまさに歴史的と言える。
さらに、南西諸島、小笠原諸島、南鳥島や沖ノ鳥島を持つ日本の排他的経済水域は膨大な広さを有し、海自、空自に期待するところは大きい。
しかし、海・空自さえしっかりしていれば日本は守れると勘違いをして、陸上自衛隊の予算を削ってでも海・空自衛隊を強化せよとなると、ナンセンスを超えて、これは危険である。
2 海空戦力の特性
陸上戦力に比べた海空戦力の特性はいくつかある。その1つが、空戦、海戦は、陸戦に比べ、OR(オペレーションズ・リサーチ)で計算したものに近い結果が実戦でも出る傾向が強い。その計算の1つにランチェスターの2次公式と呼ばれるものがある。
質が同等のA、B両国の戦闘機が空戦を行った場合、残存機数は両者の戦闘参加機数の2乗の差の平方根で表せる。つまりA国5機とB国3機で戦闘した場合、Bの側が全滅するまで戦うとAの側で残るのは5-3=2でなく、25-9=16の平方根つまり4機が残る。
Bは3機が全滅するまで戦ってもAの1機しか落とせない。戦力に差があれば結果が2乗で開いていくのである。
もちろん戦闘機の性能やパイロットの技量や戦法の差で変わるが、これも定数を設定してシミュレーションできる。このシミュレーションは3次元空間を双方自由に機動し、機銃、ミサイルを撃ち合う空戦でかなり実戦に近い計算結果を得られる。
海戦も空中戦ほどではないにせよ似た傾向がある。つまり敵味方の戦力分析が我に有利であると確信すれば、攻撃側は、攻撃開始をする場合の結果に対する不安が少ない。言い換えれば戦争開始の敷居は、必ずしも高くない。
またもう1つの特性は、航空機、特に戦闘機の燃料搭載量から、戦闘の継続時間は通常数時間である。この短い時間に戦力の優勢な側が決定的な戦果を収める場合が多い。
海戦もまた逃げも隠れもできない海上で、大口径火砲やミサイル、航空機からの爆撃・雷撃といった相互に致命的な破壊力を持つ武器で撃ち合うため、1日とか2日の短時日で決着がつく場合が多い。
もちろん一国の空軍戦力、海軍戦力が日露戦争の日本海海戦のように1度の会戦で全力がぶつかることは稀であろうが、ひとたび優劣の差が開けば、戦闘を繰り返すごとに文字通り2次曲線的に戦力は落ちていく。
さらに、これも海空戦力の特性の1つだが、地上にいる航空機の戦力は零であり、停泊中の艦船の戦闘力も通常の停泊状態なら零に近く、飛行場、停泊地を攻撃されればひとたまりもない。
真珠湾攻撃が証明した海空戦力の攻撃力!
1941年12月7日(ハワイ時間)の日本海軍による真珠湾攻撃は、航空戦力、海上戦力の特性をよく表している。
日本海軍の空母から発進した約350機の艦上航空機の攻撃で、戦艦アリゾナをはじめ米海軍太平洋艦隊の戦艦6隻はすべて大きな損害を受け戦闘力を失った。
また、ヒッカム、カネオヘ、ホイラーなど各飛行場にいた航空機約400機も188機が破壊、155機が損傷を受けた。
このように、航空戦力は瞬間的に発揮する打撃力は素晴らしいものがあり、一方、海空戦力は戦闘態勢にないところを奇襲されると極めて脆弱であることが理解できると思う。
2時間で壊滅したエジプト空軍
1967年6月5日朝、イスラエル空軍は、エジプト空軍がイスラエルの攻撃を予測し警戒していた早朝の警戒態勢を解除する時間帯で、高級将校が出勤途上である0845時(午前8時45分=エジプト時間)にエジプト飛行場を航空攻撃した。
イスラエル空軍は10カ所のエジプト飛行場に一斉に航空攻撃を敢行し、その9飛行場を同時に、10番目を数分遅れて爆撃した。2時間足らずでエジプト空軍は壊滅し、6日間戦争の勝利は不動のものとなった。(田上四郎著 「中東戦争全史」)
現代戦において奇襲などあり得ないという意見もあろうがそれは違う。攻撃をされる側は必ず奇襲の要素を持つ。すなわち攻撃されるとは思っていたが、こんなに早く来るとは、とか、こんなに大量に集中してくるとは、この時間に来るとは、などということになる。
またはもっと端的に、まさか軍事的手段を使うとは思わなかったなどということになった場合、侵攻国空軍の奇襲攻撃で、日本の海空防衛力は瞬時に消滅もしくは大打撃を受ける危険性がある。
しかも、これをニューヨーク時間で土曜日早朝に行えば、国連安保理が召集されるまでに数十時間を要し、国際世論を形成することもままならない。これで陸上自衛隊が弱体なら戦わずして日本は相手国の政治目的を受け入れるしかない。
海空戦力は、攻撃をする場合には、非常に大きな打撃力があり、しかも迅速に行うことが可能で、攻撃後直ちに戦場を離脱することができる。
その一方、防御という戦術行動は陸戦と異なり有利な要素は多くない。
専守防衛という軍事的合理性から見れば極めて難しい戦略をとっている以上、日本周辺の海域・空域で防勢に立たざるを得ず、薄皮一枚と言えるほど縦深がなく、海・空戦力での防衛は固くても脆い防弾ガラスの防壁のようなものであろう。
3 陸上戦力の特性
陸上戦力の特性は一言で言えば、地形を利用して強靭な戦いができることである。特に防御においてその特性を発揮する。
大東亜戦争時における島嶼作戦で、日本陸・海軍地上部隊は、艦砲、航空戦力まで含めれば数十倍から数百倍の米軍を相手に数週間、時に数カ月間にわたって防御戦闘を継続した。
ベトナムでは、ジャングルを利用し、北ベトナム軍は当初フランス軍と、のちには世界最強の米軍を相手に戦い抜き、最後はT-54戦車を先頭にハノイの南ベトナム大統領官邸に突入したシーンは有名である。
急峻な山岳地帯の多いアフガニスタンでは、歴史的にここに侵攻した大国の軍隊はいつも苦戦している。
地上戦は、地形を利用しこれを戦力化することができる側に有利に働く。相対的な戦闘力比で優勢だからと言って、計算通り戦いが進むものではない。
地上戦の泥沼に足を取られ、引くに引けなくなることが往々にして生ずる。
作戦が数日以上続くのであれば、弾薬、燃料、医薬品、食料・飲料水などを継続的に補給せねばならず、道路、橋梁の補修、構築、情報、通信、輸送などを行う部隊も必要となり、戦闘員の数の数倍に及ぶ戦闘支援、兵站支援の要員を現地に送り込むことになる。
従って、軍事力を使おうとする側にとって、海空戦力を運用するのみで解決できると思えばその使用への敷居は高くない。
しかし、陸上戦力の投入を迫られるようなことになれば、国家としてがっぷり四つに組んでの戦争状態を覚悟せねばならず、戦争抑止の効果としては高いものになる。
4 全面侵攻の可能性と陸上自衛隊
日本に対する全面侵攻の可能性は低い、だから陸自を削減してもよい。と言うのは文字通りの本末転倒である。「全面侵攻」の前に「陸上自衛隊を相手に、長期間の血みどろの地上戦を覚悟してまでの」という形容詞句がつくのを見落としている。
陸上自衛隊が戦っている間に、日米同盟に基づく米軍の来援、国際世論の形成なども行う時間を稼ぐことができる。
もし陸上自衛隊が限りなく縮小されれば、陸上戦闘を回避して、小規模の部隊が潜入し、必要とする島に旗を立ててしまえばおしまいである。
また日本全域を押さえようと思えば、同じく少数の部隊で、首相官邸、議事堂、放送局を押さえ、「日本人民の総意を代表して、日本解放のため立ち上がった」などと放送されてしまえば万事休すであろう。
少数の部隊で日本を制圧もしくは政治目的を達成可能になるなら、海自・空自の目をすり抜け、または合法的に入国することも含め、海自・空自のターゲットにならず侵入されてしまう危険性がある。
言い換えれば、陸自がなければ全面侵攻などしなくても、それと同じ戦争目的は達成できるのである。
陸上自衛隊があればこそ、それに対抗する戦力を集中し、これを輸送する船団、輸送航空機を連ね、護衛がついて侵攻作戦になる。ここで初めて海上自衛隊、航空自衛隊も侵攻部隊を戦力発揮のターゲットとして認識できる。
尖閣諸島周辺での青い漁船の不法行動や、いわゆるグレーゾーンの紛争に対処するため必要なのは、海自・空自の強化より、領海・領空を含む領域警備の法律的根拠の整備と、不法行動には断固とした処置を取るという政治的決断力であろう。
また、防衛白書や、防衛計画の大綱に「懸念事項」と記された中国海軍の増強に対し、海自・空自を充実すると言うなら、それはグレーゾーンへの対処でなく、陸自をも巻き込む全面対決への対処であると覚悟を決めなければ艦艇、航空機を増やしたところであまり意味はないように思われる。
また実際に全面侵攻が企てられるかどうかは別として、今回の尖閣事件ではっきりしたことは、軍事力をバックに恫喝をすることが有効だということである。
日本が全面侵攻に対しても自らを守るに足ると思える程度の備えがない限り、実際は行う気がなくても、全面侵攻をにおわされただけで引き下がらざるをえないということが明白になった。
日本に照準を合わせている核ミサイルについては、米軍の拡大抑止に期待するしかないが、中国恐怖症を克服し、少なくとも通常兵器での恫喝に泰然としていられるためには相当の備えが必要である。
それには陸上自衛隊の増強、充実は不可避である。中国海軍が強化されるということは、すでに強大な兵力を持つ人民解放軍を、その海軍力が及ぶ範囲のどこへでも軍事展開できるということである。
5 防衛計画の大綱への疑問
今回の防衛計画の大綱を一読し、「防衛力を単に保持すること」から「適切に運用」することへ重点を移し、そのために必要なことに手を打つという変換は大いに評価できる。
しかしそれをもってして、「基盤的防衛力構想」から「動的防衛力の構築」構想への変換とするなら違和感を覚える。
基盤的防衛力とは、あくまでアジア全体を見て日本という場所に力の空白を作り不安定化することを避け、限定的で小規模な侵攻には独力で対処できる程度の防衛力で、本格侵攻には戦力のエクスパンド(拡張)をして対応するという「量的基準」について、しかも平時から保持しなければならない最低限の「基盤的」量について述べたものである。
ところが、今回の「動的防衛力」構想は、使い方について述べたものではないか。
基盤的防衛力構想の時代でも、例えば、北海道が侵攻されるとなれば、北海道以外に所在する師団を北海道に戦略機動させ、動的な戦力発揮を目指していたし、そのための長距離機動訓練も行っていた。
基盤的防衛力構想では、情勢が緊迫し、有事が迫ってくれば、緊急に隊員募集し有事に必要な部隊を新編し有事対応の訓練をし、弾薬も緊急増産をする。
さらに有事法制も作るという準備をある程度の期間で行うというエクスパンドの考え方が付随していた。
ところが、今回の大綱では「兆候が現れてから各種事態が発生するまでの時間が短縮化され」(不法行動から武力攻撃自体まで)「事態に迅速かつシームレスに対応」と記述されている。
ということは平素から、すでにエクスパンドした有事対応の編成、弾薬備蓄その他を構築しこれを直ちに使えるような状態で維持することが理論的に必要である。
従って、動的防衛力を事態に即応して迅速に運用するなら陸自だけでも20万人くらいは平素から維持しておくことが大前提であろう。
ところが、あろうことか陸上自衛隊は、1000人の削減だという。また火砲も戦車も200門/両減らされ、基盤的防衛力という平時から持つべき最低限の装備と考えていた数の半分以下に減らすことになっている。
これでは論理的整合性が全くなく、動的防衛力構想は単なる削減のための屁理屈になってしまう。財政的に逼迫した状態で1000人削減に踏みとどまらせた関係者の努力に敬意は表するが、政治決定をした責任者の罪は重い。
6 陸上自衛隊のマンパワーについて
陸上自衛隊の勢力15万4000人を多いと見るか少ないと見るかは、それぞれであろう。
人口比で見ると、兵士1人が支える国民の数は、北朝鮮25人、英国610人、米国508人、ドイツ512人、フランス458人であり、一方、日本は900人である。
北朝鮮は別格としても、先進諸国の兵員の2倍の仕事を陸上自衛官はしなければならないということである。
しかもここで比較した欧州の国は、少なくとも直接的に侵略を受けることはもちろん軍事的脅威を受ける可能性も、極めて低いと思われるにもかかわらず、それだけの兵員を擁しているのである。ちなみに日本の警察官は約25万人、消防官は約15万人である。
では、15万4000人というが、実際の戦闘員はどれくらいだろうか、正確な数字は手元にないが、概算してみよう。
いわゆる第1線戦闘部隊である普通科連隊は約50個ある。1個連隊実員が600人として約3万人、そのほか特科(砲兵)、戦車などの直接戦闘に関わる職種を1万人として計4万人ほどであろう。
作戦を行う際は普通科連隊を単位として組み合わせるので、平均すれば、各県に1個普通科連隊強、この場合北海道のような広大な地域も、東京のような首都機能集中の場所も均等割すれば1個連隊の600人プラスアルファで守る。
その600人も昼夜兼行で戦闘するわけにいかなければ、シフトを組めば200~300人。1つの県を防衛するのに働けるのは200~300人の兵士が戦闘に従事する。多いか少ないか。
均等割りでなく東京で見ると、東京都および関東6県を守る陸自第1師団は約六千数百名であり、東京都内にある普通科連隊は、第1普通科連隊のみであり600人くらいであろうか。
一方、東京都を管轄する警視庁の警官の数は、4万3000人である。国際貢献から災害派遣、緊急患者輸送まで何でも自衛隊だが、その数は決して多くない。
7 人件費の比率が高い陸上自衛隊
陸上自衛隊の人件費のパーセントが多い、だから人件費を削るという。全く理解できない理屈である。陸上自衛官の給料が特別に高くて人件費が多いわけではない。
航海手当て、乗艦手当て、航空機搭乗手当てなどを考えれば海自・空自の方が、人頭割の給料は相対的に高いだろう。
陸自の人件費が多いというのはそれ以外の、一般物件費、すなわち装備品購入、訓練、燃料、研究開発などの金額が少ないだけで、海自・空自並みに装備品購入費など増やしてもらえば、分母が増え、人件費パーセントなどいくらでも落とせる。
逆に言えば陸自はいかに経済的に人を養っているかということであり、現実に陸自の官舎、駐屯地を回ってみれば、そのつくりや、隊員食堂のいす・テーブルなども海・空自に比べかなり安物を使っており、粗末な環境で生活をしている。
人件費の比率が高いのはいわばエンゲル係数の高い家計と同じである。
こんなことを言うのは品がないからと、陸自の幹部は黙っているが、数字を見れば一目瞭然なのに理解できないふりをしている財務の官僚こそ理解できない。
8 南西諸島を見捨てるな
南西諸島の防衛について考えるなら、動的防衛力構想もいいが、それは陸自の部隊が主要な島々に駐屯していることが作戦のインフラとなって初めて機能する。
今まで述べたように、陸自部隊がたとえ少数でも現に配置され、侵攻勢力が地上戦を覚悟しなければならないことが大きな抑止になるのである。
大事なことは、陸自部隊がいて、そこで血を流しつつ持久をすることで国家の防衛意思が固まるのであり、国際世論を形成することにつながり、本州その他からの増援(動的防衛)が意味のあるものになる。
主要な島々に配置しておかず、情勢を見て緊急に展開するなどと聞こえはいいが、他国の顔をうかがう政治姿勢では、日本の戦争決意表明である部隊展開などタイミングよくできるはずはない。
「無用の刺激を避ける」と称して決断を先送りし、その結果どこかの国に先に旗を立てられ、米国も来援できず、首相が遺憾の意を表明するだけで終わるというまさに悪夢が現実となる。
そうならないためには、陸上自衛隊の部隊を南西諸島防衛の重点と見なされる島々に当初から駐屯地をつくり、配置しておくことが必要である。防衛作戦は、先にも述べたように、戦闘員がいるだけではできない。
情報、通信、弾薬補給、医療等々多くの支援部隊と、兵站基地が必要だが、小さいとはいえ駐屯地がその役割を果たす。
平素から南西諸島の主要な島々に陸自部隊を配置、駐屯させておくことで、不法行動、侵略行動を抑止でき、海自、空自の基地や飛行場、レーダーサイトなども防護できる。
また戦車など、その総数を削ること自体に意義を見出しているようにも見えるが、高い金を出して74式戦車を処分するなら、維持費がかかるとはいえ、南西諸島に配置し、海岸砲として運用したらどうか。
多くの国はそのようにして大事な防衛装備品を活用している。輸出もできず、金をかけてくず鉄にするのはもったいない。島の土質は琉球石灰岩と呼ばれる軽石のような岩盤で、シャベルやツルハシでは、簡単に穴が掘れない。
あらかじめ掘った壕に戦車を入れれば大変正確な射撃のできる海岸砲になる。平素から島嶼防衛の意思を示すことが、無用の流血を避ける最良の方策である。このためには陸自隊員を増員する必要がある。
9 防衛費の総額を増加するしかない
現在の国際環境なかんずく北東アジアの情勢と、貿易・海運立国の日本というアイデンティティーを考えるならば、海上自衛隊、航空自衛隊を充実することは筆者として、決して反対するものではない。
ただ、防衛予算の総額は増えないものと決めつけ、従って陸自の部分を削って海・空自へ回すという発想は到底肯んじえない。これを防衛関係者、自衛隊OBが言うのを聞くと情けなくなる。
現在のようなデフレで、十分に金が回らないことによる不況であるならば、公共投資が1つの経済刺激策になるのは間違いなく、防衛予算を増やし、装備も充実させることである。
防衛産業は裾野も広く、これに資金を回し経済の活性化を促し、隊員募集をして雇用を確保することは、極めて有効な経済刺激策になる。
当事者たちにも評判の悪い子ども手当や、高速道路無料化など直ちに事業仕分けし、防衛費を増額し、陸・海・空の戦力の特性をよく認識した、必要かつ妥当なバランスを取った防衛力整備を行ってほしい。
そのためには、陸・海・空のシェア争いを超越して統合の国家防衛戦略を策定し、それに基づき軍事的合理性のある大綱・中期防をつくり、防衛予算の積み上げ、配分をしなければ、まさにタックスペイヤーたる国民に申しわけない。
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