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ドラッカーで読み解く農業イノベーション(9)
2011.01.21(Fri)JBプレス 有坪民雄
イノベーションの第7の機会──「新しい知識を活用する」
「知識が技術となり、市場で受け入れられるようになるには、25年から35年を要する。リードタイムの長さは人類の歴史が始まって以来さして変わっていない」
(『イノベーションと企業家精神』ピーター・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社)
農業の伝統的な泣き所は資金調達!
私が最初に農業分野で書いた著作は『農業に転職する』(プレジデント社)です。新規就農を希望する人に向けた就農マニュアルでした。それまで体験記やインタビュー集しかなかった就農ガイドに、初めて「経営」を持ち込んだことが評価され、今も版を重ねています。
農業に経営を持ち込むということは、新規就農を希望する読者に、現実と対峙することを求めるということです。例えば新規就農に必要な資金は、できれば2000万円以上、最低でも800万円は必要だと書かねばなりません。
農業に転職すると健康的でゆったりとした生活ができる、というイメージを持つ人は、そこで現実にぶつかります。家庭菜園程度なら鍬一本でも可能ですが、職業にするなら機械や施設への投資が必要です。
何よりも問題なのは、すぐお金にならないことです。作物を植え、収穫するまで数カ月はかかります。もしくは雌牛を買って種つけし、生まれた子牛を売るには20カ月かかります。それだけの運転資金がなければ、農業はできません。
農業を事業としてみた場合、昔から泣き所とされていたのが、この金融面です。個々の零細農家には資金調達力がないため、何か事業をやろうとしてもできないのです。
例えば大都市に農作物を持っていけば儲かると分かっていても、投資ができず、商人に安値で作物を売るしかなかった、といった具合です。
そのため戦前から農家は組合を組織し、商人たちに対抗する仕組みを作ってきました。現在のJAもそうした歴史的流れから作られました。今でもJA綱領にその思想の片鱗が見られます。
「和牛商法」は明らかな詐欺がほとんどだったが・・・
JAは農業での資金調達を事実上独占していますが、近年、新しい資金調達法も現れ始めています。
例えば、いわゆる「和牛商法」がその1つです。和牛を共同購入し、飼育して売った利益で高い配当を得られるとする仕組みです。
しかし、この商法は、和牛に関わる者なら一発で嘘八百だと見抜ける、明らかな詐欺がほとんどでした。
現在、残っている会社は、安愚楽牧場(栃木県那須郡)1社だけです。安愚楽牧場に対する評価はさておき、この会社の他にない特徴は、もちろん和牛商法にあります。それは「オーナー制度」とも呼ばれ、一般個人から和牛買い付け資金を調達し、対価として配当金を出すというものです。出資するオーナーの利回りは現在3%のようです。
資金を借りる側(牧場)の立場に立つと、この利率は「制度資金」と呼ばれる農家向けの有利な資金調達よりも高いのですが、制度資金にある貸出上限などの制限がない点で有利です。そのため、無担保でいくらでも大きな資金を集めることができます。
和牛生産は商品回転率が0.5~0.6回転という、農業の中でも効率が悪い業種です。そんな業種で、オーナー制度なしに、30年で和牛頭数の1割を占める急成長はなかったでしょう。
「夢」に投資する投資家の登場!
和牛商法が流行っていたのは、1990年代半ばのことです。私も和牛生産者の1人ですから、当時、友人知人たちから投資すべきかどうかの相談をよく受けました。
私の意見は、当然、「詐欺の可能性が高いからやめた方がいい」です。ところが、少なからぬ人たちが私の意見を聞かず、和牛商法へ出資したり、契約を続けたのです。
彼らは私の言うことを信じなかったわけではありません。「なぜ出資をするのか、続けるのか?」と聞いてみると、彼らは概略こんな返答をしてきました。
「詐欺でもかまわない。面白いし、夢がある。少額しか投資していないから、資金が返ってこなくてもいい。それくらい勉強料だ」
「詐欺でもかまわない」を除けば、どこかで聞いたようなセリフです。私には、ノリの良いベンチャーキャピタリストのセリフに聞こえました。
その後、雑誌に和牛商法の記事が出て、似たようなことを言っている投資家が他にもたくさんいることを知り、新しいタイプの投資家が出てきたんだと実感しました。
インターネット上で一般個人から広く資金を募り、事業成功のあかつきには配当を実施するという資金調達法も増えてきました。その場合、出資者はたとえ損しても自己責任ということになります。
こうした資金調達法は、映画やゲーム、書籍など、主にコンテンツビジネスの世界で行われているようです。中でも出資者がハイリターンを得られた成功例として、アルファポリスの「ドリームブッククラブ」が挙げられます。『いま、会いにゆきます』などで有名なベストセラー作家、市川拓司氏を発掘したサイトです。
出資者は、ドリームブッククラブ上で公開された作品に対して出資し、出版化を支援します。1口1万円(上限5万円まで)で出資すると、出版化された本に支援者として名前が入り、著者サイン本1冊と印税の0.1%が配当されました。結果は39点が出版化に至り、平均配当は1万3000円ほど。ベストスリーは1万円が8万~12万円に化け、ワーストスリーは1000円以下の配当でした。
こうした「投資」に参加する人たちは、財テクとして資金を投じているのでしょうか? おそらくは違うでしょう。宝くじと同様、夢に投資しているように思えます。
新しい資金調達の方法が根付くのはいつか!
夢に投資する人は、金融の常識や枠組みにとらわれません。
例えば、貸し農園で野菜を作っている人が、趣味が高じて農業を本業にしたいと考えたとします。彼は自分の栽培日記をブログなどで発表しており、実際に彼の作った野菜を買い、実際に食べ、高い評価をしている人が多いとします。
「こんなにおいしい野菜を作っている人が、本格的に農業をやろうとしている・・・」
そのことを知り、1万~10万円くらいなら「賭ける」気になる人が出てきても、不思議ではありません。そんなファンが1000人いたら、1口1万円でも、彼は1000万円を調達できることになります。たとえ彼が失敗して出資金が返ってこなくても、最初からその覚悟で投資するなら問題ありません。
もちろん、それだけの投資家を集めるには相応の努力が必要です。何かの農業コンテストで優勝したり、千疋屋など有名な食料品店に納入する実績を作ったり、ソーシャルメディアでファンを開拓するなど、投資家の信用を獲得する方法を試行錯誤していかなければなりません。
ネットの世界では、すでに、そうしたシステムの基盤は用意されています。「ドリームブッククラブ」のようなコンテンツビジネスで行われているハイリスク・ハイリターンの投資手法だけでなく、「ソーシャルレンディング」(お金を貸したいと人と借りたい人をネット上で結びつけるサービス)と呼ばれる個人間融資が、日本でも事業として始められています。
こうした新しい資金調達の方法が、世の中で広く認知され、一般的になるには、まだ少なくとも10年は必要かもしれません。
しかし、立ち上がった時には、「夢」や「ロマン」が財テクの動機の1つとして挙げられるようになる可能性があります。そんな可能性が開けるなら、「金融面での信用はないが、本当に農業をやりたい」という人の就農を後押しする力になることでしょう。
これまで、ドラッカーの言うイノベーションの7つの源泉に沿って、農業のイノベーションの可能性について書いてきました。次回は最終回として、農業関係者の間でイノベーションと考えられている「農業の6次産業化」について触れます。
YouTube 国へのコメ輸出拡大 「中国農業発展集団」27日新潟県入り 20110120
http://www.youtube.com/watch?v=NwTM0emJVFc
2011/01/2 UXニュース
農産物を扱う中国の国有企業「中国農業発展集団」が27日に来県することが関係者への取材で分かりました。去年12月、筒井信隆農水副大臣が訪中し意見交換した際、中国向けのコメの輸出を早期に年間20万トンに増やすことなどを確認していて、今回、輸出拡大を協議するため来日する中農集団の幹部が、来週27日に県内入りします。当日は新潟市と十日町市を訪問し、コメを保管する倉庫や農産物の直売所などを視察する予定です。県産コシヒカリは4年前から中国に輸出されていて、北京などの高級デパートで販売されています。今後は輸出拡大の具体策など、協議の行方に注目が集まります。
1月20日、筒井農林水産副大臣の会見。
26日に、劉社長以下9名で来ていただいて、29日まで劉社長はおられて、あと3日ほどは、劉社長以外の3名の役員の方たちは残ると、ほぼ、そういう形です。
記者
コメの非関税障壁の問題については、何か、進展はありますでしょうか。
副大臣
それが、一番難しいわけ、非関税障壁というか、くん蒸ですよね。くん蒸が一番難しい問題で、それまでの間に、コンテナくん蒸とか、サンプル調査とか、それらが、劉社長来た時点で、一定の進展があればいいなと思っているところです。
記者
今日は、新潟の知事さんが、来られたのですけれども、まあ、コメの除外ということを要望されましたけれども、まあ、改めて、受けとめをお聞かせいただけますか。
副大臣
新潟知事さんは、TPPの問題で来られたわけですが、「コメを適用除外する、いう形でもって、参加をして欲しい」というのが、知事さんの考え方で、首長さんの中では、まあ、あんまり、まあ、独特な考え方だと、こう思います。私の方としても、まあ、「あれは、原則、どんなに遅くても10年以内に、全部の関税をゼロにするという協定があるようですから、それは非常に難しいと思います」と。「もし、コメを、どうしても、絶対に適用除外ということでやれば、参加しないという選択肢の方になってくるのだろうと思います」ということは申し上げました。
ただ、「TPPは、事実上GDPの割合から言っても、日米の協定という趣旨ですから、日米、実質的に、日米FTA、あるいは日米のEPAだというふうに考えると、韓国とアメリカとの間では、コメ除外されてますから、そういう可能性もあるのかな」と、「それは、ちょっとやってみないと分からない」と、いうふうにお答えしたところです。
2011.1.17 産経ニュース
政府はコメの中国への輸出拡大に向けて、検疫条件を満たした精米工場や倉庫の整備促進に乗り出す。平成24年度前半までに、当面の目標である年20万トンを賄える検疫面でのインフラを構築したい方針だ。日本産米の価格競争力の低さを解消する特効薬がないため側面支援する。需要が大きい中国向け輸出が伸びるかどうかは、TPP参加をめぐる議論にも影響を与えそうだ。
■8指定工場整備へ
中国向け輸出に際しては精米する工場、燻(くん)蒸(じょう)(煙でいぶして殺虫・消毒すること)する倉庫のいずれも中国側の承認を得る必要がある。だが、国内には現在、両施設とも神奈川県に1カ所ずつあるだけだ。
承認を得るには、工場は1年間、倉庫は3カ月間、中国にいない害虫が施設内で見つからなかったことを証明しなければならない。そのための調査には工場で数百万円、倉庫で数十万円の費用がかかる。
農林水産省は「元が取れるかわからない段階での投資をためらっている業者が多い」とみて、これらの費用を助成することにした。倉庫については22年度内、工場は23年度から始める。24年度前半には、すでに承認を受けている施設と合わせて、8つの工場、数十カ所の倉庫で中国向け輸出のための処理ができるようになることを目指している。
■価格競争力低く
中国のコメ消費量は年1億3千万トンと世界の3割を占めるが、日本からの輸出量は数十トンにとどまる。日本産米は粘り気が特徴の短粒種に分類される一方、中国で主に食べられるのは長粒種。富裕層の拡大で短粒種を好む人も増え、「贈答用として人気が高まった」(農水省)とはいえ、主な需要期は2月の春節(旧正月)など年2回に限られている。昨年の輸出量は90トン強の見通しだ。
最大の課題は中国産米などとの価格差。もともとコスト高の上、関税や手数料が上乗せされ、現地での小売価格は日本で船積みする前の2倍以上に膨らむ。結局、中国産米の4~15倍の価格で売られている。
農水省では、上海での国際見本市にブースを設置して日本産米を紹介したり、海外からバイヤーを呼んで輸出の意思がある業者と引き合わせるなどの活動を行っているが、価格競争力の低さを補うのは難しい。コスト分を助成して安く売ることは「WTO(世界貿易機関)協定違反になる」ため、今回のように検疫態勢整備などで側面支援するほかないのが現状だ。
■「2千倍」目指すが
中国は検疫制度を強化するため、15年に日本産米の輸入を停止した。19年に試験的に再開したが、20年前半には通関手続きが滞り、上海港などの倉庫に50トンの日本産米が1カ月以上留め置かれたことがあった。中国製ギョーザ中毒事件で日中関係が悪化していた影響が取りざたされた経緯もある。
そんな中、昨年12月に訪中した筒井信隆・農水副大臣は対中輸出量の目標について現在の2千倍に相当する20万トンとぶち上げ、将来は100万トンを目指すと表明。ただ、省内からも「増やそうという“思い”を打ち出したもので、達成時期を定めるのは困難」との冷静な見方も漏れる。
農業経済学が専門の大泉一貫・宮城大副学長は「安いコメにシフトしていかなければ、対中輸出の拡大は望めない。それには、コメの価格を下げて国際市場を開拓できるように農政が転換していく必要がある」と指摘している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%AF%8C%E5%AE%AE%E9%A3%AF%E5%BA%97
2011.01.19 新潟日報
中国向けコメ輸出の拡大を目指して5日から北京、上海、蘇州の3都市を訪問した「中国向け新潟米輸出促進協議会」の各訪中団が18日までに帰国した。
昨年12月、筒井信隆農水副大臣が日本からの農産物の輸出拡大で中国側と合意したが、今後、本県はどのような戦略で臨むのか。同協議会会長で、今回団長を務めた加茂田俊則・県農林水産部長に現地での手応えと今後の課題を聞いた。
―訪中した狙いは。
「中国で新潟産コシヒカリはおいしくて安全だと評価されている。一方で中国は広く、まだ知らない人も多い。県産米をPRするため訪中した。デパートで試食宣伝会を行ったほか、11月に中国から招いたレストラン関係者が県産米をどう活用しているかを確認し、関係機関と意見交換した」
―県産米に対する反応はどうでしたか。
「味に対する評価は高い。ただ、現在は春節と中秋節向けの2回、富裕層が買う贈答用に輸出している。業務用としては年間を通して確実に確保でき、欲しいときに欲しい量をそろえてほしいと要望があった。今は検疫の関係で横浜に運んで燻蒸や精米を行い、輸出しているためコストが通常の3倍掛かっている。コストの縮減や現地での保存施設の整備が課題だ」
―高価格が影響して輸出が伸び悩んでいるという指摘もあります。
「新潟コシは1キロ約1,300円程度で販売されていて一般の中国米に比べると高い。だが、中国産の有機米が同約1,500円で売られるなど新潟コシを上回る価格の中国米も出ている。今後は中国米との競争も予想される。レストランでは、すしだけでなく白米のご飯がメニューに登場するなど素材の味を生かした日本食への関心は高い。新潟コシのニーズはある」
―国は年20万トン、将来的には100万トンの輸出を目指しています。
「量は増えれば贈答用だけでなく業務用など幅広いアプローチが可能になり、新潟米を売り込むチャンスだ。中国のデパートやレストランでは差別化を図るため高級な魚沼コシを求める動きもあり、高級ブランドとして着実に販路を広げたい」
―丸紅とJA全農が戦略提携を結ぶなど商社の動きが活発化しています。
「輸出や販売に詳しい商社と関係を築くことは重要。現地でも市場開拓に動き出した商社や売り込みを図る産地があると聞いた。取引はあくまで民間ベースだが、情報交換は活発に行いたい」
―産地間競争が予想されますが本県の戦略は。
「09年度に中国に輸出したのは本県だけだ。先陣をきって輸出し、築いてきた信頼関係やブランドがある。国が国内7ヶ所で燻蒸用倉庫の整備で募集を掛け、本県から1社が手を挙げている。今は物流面の制約で輸出には最低10トンの必要だが、新潟港が活用できれば需要に応じて輸出でき、コストも下がる。国に検疫条件の緩和を要望しているが、時間がかかるかもしれない。国の動きにアンテナを張りながら環境整備を進めたい」
◇海外へのコメ輸出
日本からの商業用コメの輸出は2009年で1,312トン。国内では秋田県がシンガポール向けなどに412トンを輸出し、3分の1を占めた。本県は09年度、152トン輸出し、内訳は台湾が約100トン、中国が約30トン、香港が約19トン。
中国向けの輸出は全農から中糧集団有限公司(COFCO)を通すルートで行われ、09年度は日本からの輸出の全量(30トン)を本県が占めた。
10年度は富裕層向けの贈答用市場の開拓などで77トンに増えている。
今回訪中した「中国向け新潟米輸出促進協議会」は県、新潟市、上越市、三条市、JA全農にいがた、JA県中の6機関・団体で構成。07年度から北京や上海で試食宣伝会を行っている。
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