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『日本は世界5位の農業大国』の浅川芳裕・農業技術通信社専務に聞く!


2011年2月14日 日経ビジネス 芹沢一也

関税をほとんど例外なく撤廃することを目的とした、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加をめぐっては、日本の食糧自給率の低さがたびたび話題になる。「41%」という数字が一人歩きし、世界の安い食料品に日本の農家が押しつぶされる--そんなイメージは、正しいのだろうか。

―― 「日本の食料自給率は41%、世界最低レベルだ」という言葉は、農業について語る際の枕詞のようになっていますね。

浅川 脊髄反射のように唱える方がいますが、これは実は大変な誤解を招く表現です。

 そもそも「食料自給率」とは、農林水産省の定義で、国民が食べている食料のうちどれだけが国産で賄えているかを示す指標です。5種類あるのですが、よく出てくる「41%」というのはカロリーベースでの計算。国民1人、1日当たりの供給カロリーのうち、国産がどれだけかを示すものです。

 こう言われると、「実際に食べている食品のうち、どれだけが国産かの数字」と思っちゃうんですが、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。

実態は「自給率6割以上」!

浅川 この指標では、まず輸入・国産問わず、日本で通している全生産物をカロリーに置き換える。ニンジン100グラム当たり何カロリーとかですね。それを人口で割って1日当たりに換算したものを分母に、分子には国産の分をおきます。

―― まっとうな計算のように見えますが。

浅川 しかし、この指標にはたくさんの問題点があります。まず、我々は通している生産物を全部食べているわけじゃない。食べ残しやコンビニの期限切れなどで、通している生産物の4分の1は捨てられています。ところが、その廃棄分も分母に含まれる。元から消費されない分を分母に入れるわけで、当然「自給率」は小さくなりますよね。

 さらに分子のほうには、数字を小さくする“工夫”がされています。まず、国内生産量の2、3割にのぼる、流通以前に生産者が廃棄した農産物が入っていません。これらはもちろん食べられるのですが、型が不揃いなどの理由で、商売にならないと判断されて出荷されなかったものです。さらには全国に200万戸以上ある、自給的な農家などが生産する大量のコメや野菜も含まれていません。こうしたものを分子に入れて、実際に我々が食べている分を分母にすると、自給率は6割を超えます。

 さらにこの指標上では、牛肉や鶏肉、鶏卵、牛乳なども、国産のエサを食べて育ったものだけが国産とされ、海外から輸入したエサを食べていたものは除外されるんです。これを国産と数えると自給率は7割をも超えてしまう。

 要するに、日本の農業の生産量や生産力は、農水省発表の数字よりはるかに高いのです。

―― つまり「カロリーベースの食料自給率」は、実態より自給率を低く見せるための指標だと。目的は何なのですか。

浅川 農水省が「食料自給率向上政策」を推進するためです。10年ほど前に、食料・農業・農村基本法が制定され、食料自給率を向上させることが国策となりました。国産を振興し、将来の食料危機に備えるというわけです。ここには、「農業とは、国が安定的に食料を国民に供給する手段だ」という発想があります。

国産信仰をあおる!

―― 生産者ではなく、国が農業を管理しなくてはいけない、その理由付け、エクスキューズとして、低い食料自給率という「神話」が必要なんですね。

浅川 そうです。さらには、「国産を食べるべし」というのが、食料・農業・農村基本法のベースにあって、その補助手段として輸入と備蓄があるんです。つまり、「国産最優先」がひとつの思想になっているんですね。

―― 私も「国産でまかなえるならそれに越したことはない」と考えていたのですが、そもそも、「食料自給率」なる概念を使っているのは日本だけと聞いて驚きました。

浅川 韓国だけが日本の政策をフォローして、一応、数字を出してみましたという程度で、ほかに食料自給率を出している国はひとつもない。いわんや、それで政策を組み立てている国など皆無です。

―― 食料自給意識の高まりになった事件として、1993年に起きたコメ不足があると思います。しかし浅川さんの本によれば、あのときタイ米が輸入されたのは、外国米は不味いという意識を日本人に植え付けるため、つまり国産信仰を煽るためだったと。

浅川 そもそも近代農業では、「この年は不作になる」といったことは、ある程度は分かっているんです。ですから、国も国産米に近い味のカリフォルニア米や、少なくとも中粒種を入れることはできたんですね。けれども、あえてテイストが大きく異なる長粒種のタイ米を輸入し、しかも、あえて一番評価の低いものを輸入した。

―― 何か臭くて、ぱさぱさしてましたね。

浅川 諸悪の根源は、日本のコメ輸入は“国家貿易”事業体として、農水省が独占していたことです。事実上いまなお、これは続いています。民間の事業者が輸入していれば、消費者ニーズにできるだけ応えるものを調達できていたはず。

 民間であれば産地指定買いでグレードの高いものを入れたりとか、あるいは韓国米を買ってもいいし、台湾米を買ってもいい。中国ロシアアメリカイタリアスペインもコメをつくっている。

―― 実際、1993年にコメ不足という食の危機があって、それを解決したのはグレードの低いコメであったにしても、輸入ですよね。輸入という手段が解決しているわけですから、危機対策を食料自給率の向上だけに求めるのもおかしな話です。多国間の輸入ルートを確保する形でもかまわないはずで。

浅川 そう、食の安全保障と食料自給率は実は関係ないんです。危機を煽って世論を誘導する、官僚の常とう手段ですよ。

―― そもそものお話になってしまいますが、農水省食料自給率向上を謳いつつ、減反という、生産量を減らす政策もとっていますよね。いったい何が狙いなのでしょうか?

減反しつつ自給率向上も図るって?

浅川 減反政策の目的はコメ価を下げないことです。国は国民がコメを食べなくなると想定していて、それに合わせて生産を抑制し、供給過多による値崩れを防いでいるんですね。需給調整によって安定供給ができるという考えです。

 ところがこれは、先ほど言及した食料安定供給とは逆行しています。法律は国民に合理的な価格で食料を提供するとしています。合理的な価格というのは、本来、市場での需要と供給によって決まるものです。コメの価格を人為的に上げるというのはカルテルでしかありません。結局のところ、「非合理的な価格によって、非合理的な供給をする」という結果になっています。

―― つまり私たちは、高いコメを食べさせられているということですね。

浅川 加えて納税の問題もあります。減反面積は100万ヘクタール(東京の約5倍)で全水田の4割にも及びます。それで減った分の売り上げは国や県が補填しますが、その金額はじつに約1兆円です。

―― それは税金から出る。

浅川 そう、税金から出るんですね。しかも、全国に5万人ぐらい、各市町村の農政課に減反担当の人がいるんですよ。その人たちが車で、公費を使って田んぼに行って、田植えしたかどうかをチェックして回っている。

―― それもまた税金……。

浅川 しかも、その結果、農家のモチベーションを奪ってしまう。

 農地というのは、一般産業でいえば工場ですよね。自動車工場に役人が行って、「今から生産能力の4割分の車はつくるな、その代わり金は出してやる」と言っているようなものです。そう言われたら、楽ができると喜ぶ人もいるかもしれないけれど、どこか、自分の仕事をバカにされたような気がしませんか。

―― それ、資本主義経済下でやることじゃないですよ。

浅川 本当にそうです。結局、「つくることを奪う」ことによって、どんなビジネスにも必要な、創意工夫の芽を摘んでいるんです。

浅川 コメというのは農家出荷段階で、2兆円弱の作物市場なわけですよ。末端までいくとだいたい3兆円ビジネス。3兆円のビジネスを、国が今年は何万トン、何ヘクタールと決めて、国から県に落とす。北海道は何ヘクタール、青森県は何ヘクタールと落として、その分を市町村で割る。市町村で割って、市町村が今度は集落に割る。これは国家と行政の談合としかいいようがない。

―― 改めて考えるととんでもない話なのですが、それを我々がこれまで甘んじて受け入れてきたのは、「日本の農業は弱いから、国が保護しなくてはならない」という認識があるからですよね。農業が壊滅するのは困るから、多少の負担は、と。

浅川 まずベーシックな話をすると、農業というのは近代国家でないかぎり栄えないのです。

 高い収穫を得るには、科学技術、流通、優秀な人材とそれを支える教育、法制度といった、近代国家でないと揃わない要素が必要です。日本にはそのすべてが揃っています。

 また、国民の所得が高い国が基本的に農業大国になります。国民の所得が高いとエンゲル係数(家計の消費支出に占める飲食費の比率)が下がりますが、そうすると主食に加えて、副菜やデザート等々、いろいろなものが食べられるようになるからです。この条件も、もちろん日本は満たしていますよね。

―― 具体的に数字で見ると、日本の農業の力はどうなのでしょう。

浅川 世界標準では農業の力を、食料自給率ではなく生産額、つまりどれだけ農業が富を生み出したかといった指標で評価します。では日本の生産額はといえば8兆6100億、じつに世界第5位の農業大国なんですよ。

 

経済力があるから、消費額は上がり、自給率は下がる!

―― 農水省の振りまく印象とはえらく違いますね。

浅川 農産物換算で、日本人はひとり8万円買っています。また、食費換算だと80万円。食というのは日本では80兆円ビジネスなわけです。この市場に支えられて、日本の農業は世界的に見ても大国といってさしつかえない力を持っている。

 農水省のいう「カロリーベースの食料自給率」にいかに意味がないかは、市場規模から考えても分かります。たとえば年収が10万円の人は8万円の食費は使えないでしょう? だから、途上国はコメやムギ、ダイズ、トウモロコシの粉といった、一番安い基本食料で、かつカロリーの高いものを食べていかなければならない。

 これをカロリーベースでの食料自給率で計算するとどうなるか。むちゃくちゃ高くなりますね。つまり、この農水省の指標で自給率が高くなるのは、経済力がなく農産物に対価を払えない、もちろん輸入自体が難しい、こうした途上国なわけですよ。自給率は高い。けれども市場規模が小さいから、農業は発展しないんです。

 もうすこし例を挙げますと、たとえば、コメの値段。日本だったら、日雇いで1日、工事現場で働けば1万5000円手に入ります。1万5000円あればコメが1俵買えるんですね。1俵というのは日本人が年間に食べている量ですよ。1日の労働で基本の主食が1年分買える。それぐらい日本人には購買力があるんです。

―― 生産額、マーケット規模、何の問題もないじゃないですか。

浅川 ということです。さらに言えば、農家1人当たりのGDPは世界6位です。国民1人当たりのGDP、19位(どちらも2008年度で比較)よりずっと国際的地位が高い。日本の農業にとって一番の問題は、実は国民の購買力が下がるか、あるいは国民に「日本産はいらない」とそっぽを向かれることなんです。

―― そうならないように、国民が欲しがるような商品を開発するということですよね。どの産業でもやっていることをしなくてはいけない。

浅川 そう、それに尽きるわけです。

―― 付加価値の高い商品によって差別化していくとか。

浅川 あるいは、徹底的にコスト削減するか。で、実際にそうなっているんですよ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が話題になっていますが、たとえば野菜にはもう関税はほとんどない。3%ですよ。ユニクロは優等生というけれど、衣類だって10%前後の関税です。野菜はそれよりも低い関税で競争している。しかも、あえて自給率を持ち出せば、8割が国産なんですよ。花にいたっては長年、関税0で、自給率85%。保護されなかった作物ほど競争力を増していることがわかるでしょう。

―― 例の中国産野菜報道で、日本の野菜は中国産にやられっぱなしみたいな印象もあると思いますが、実際はまったく違うんですね。

浅川 そんな勘違いを正すには、スーパーに行ってみるだけで事足ります。「あれ、今日は国産ないよね」という日はないでしょう。日本は南北に長い国だというポテンシャルもありますが、ほとんどの作物において一日たりとも欠品が出ないように、産地形成していった結果です。なぜかといえば、欠品が出るとたちまち輸入品がそこに入り込んでくるから。関税で守られていない分、商品力と安定供給で戦ってきたんです。

国産野菜の実力は努力の結果!

浅川 そして、海外の食文化も柔軟に取り入れている。たとえば、アスパラガス。10年前はあまり食べてないでしょう。ところが、海外から入ってきて、一般の人も買いはじめると、日本の農家がつくりはじめる。商売になれば国産化しちゃうんですよ。キウイだってそうです。

 しかも、豊かな購買者がいるから、いろいろなバリエーションのものをつくる。たとえばイチゴ。とちおとめがあって、あまおうがあったり、さちのなかだったり、毎年のように新しい品種が出ている。イチゴが選べる、どのサイズのものがいいかとかいうような嗜好に応えている。こんな国なかなかないですよ。

 農家が顧客ニーズに対応できるだけレベルアップして、農水省の役割がなくってきている。そこで、自給率という数字を編み出し、わざと低く見せて、国民に危機感を煽るしかやることないんです。巧妙な自作自演ってヤツですね。

―― (次回に続く)

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もみ殻で高性能活性炭…CO2抑制に応用も

読売新聞2月13日

 

稲のもみ殻から高い吸着性を持つ活性炭を作る技術を、長岡技術科学大(新潟県長岡市)の研究グループが開発した。

 二酸化炭素など温室効果ガスの排出抑制に用いたり、大量の水素を吸着させて燃料電池の材料にしたりと、応用分野は広いという。年内にも発売される。

 グループを率いる斎藤秀俊教授・副学長が、農協職員から「もみ殻の処分に困っている」と聞いたのをきっかけに、2年ほど前から研究に着手した。

 もみ殻を熱して炭にしただけでは、後に残る二酸化ケイ素が邪魔をし、活性炭として働かない。そこで、炭を水酸化カリウムや水酸化ナトリウムと混ぜて熱処理するなどして二酸化ケイ素を取り除くことに成功した。

 二酸化ケイ素を除いた後の炭の表面には、直径1・1ナノ・メートル(ナノは10億分の1)の微細な穴が大量に発生した。これが表面積を広げ、高い吸着力が生まれた。一般的な活性炭の表面積は、1グラム当たり1000平方メートル程度だが、もみ殻活性炭では2・5倍になるという。

2011年2月10日 DIANMOND online 高橋洋一 [嘉悦大学教授]

 菅総理は並々ならぬ決意で、TPPを6月までにまとめると言った。同時に増税路線もいっているが、増税については、このコラムの第4回と第6回で述べたので、今回はTPPを取り上げたい。

 TPPの正式名称は、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans‐Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの自由貿易協定(FTA)として2006年に発効し、その後、米国豪州ベトナムが参加するなどして、現在は計9ヵ国で枠組み作りに向けた交渉を行っている。

 モノやサービスはもちろん、政府調達や知的財産権なども対象とする包括的FTAで、原則として15年までにほぼ100%の関税撤廃を目指す。当然、農産物も例外ではない。

 TPPに対しては案の定、農業関係者は猛反発している。民主党では政治問題としても騒がしい。というのは、執行部対小沢一郎元代表の確執があるからだ。TPPに反対しているのは大半が小沢グループの面々。関税撤廃反対、農家の保護を大義名分に、小沢氏を排除する執行部を牽制しようという本音が透けて見える。

 そこでまず検討すべきは、TPP参加によって、国としてプラスになるのかどうかである。これは大学生レベルの経済学の良問だ。もちろん歴史的にも自由貿易が支持されてきたことの裏付けになる。

ある農産物の自由化前と自由化後の姿を考える!

 自由化対象になっているある農産物の生産・消費が、自由化後にどうなるか考えよう。

まず、その農産品に対して関税等の貿易制限がかかっているため海外からの輸入がなく、国内供給だけになる単純なケースを想定する。その場合、価格は図のP1、取引数量はQ1となる。このとき、P1より高い価格でも買おうとする消費者もいるが、P1で買えるので、そうした人にはこの状況は「お得」になっている。その「お得」は、三角形A・P1・E1で表される。これを「消費者余剰」という。

 一方、生産者にとってもP1より低い価格で出荷してもいいという者もいるが、P1で出荷できるので、そうした者にとっては「利益」になる。それらは、三角形P1・B・E1で表される。これを「生産者余剰」という。消費者余剰と生産者余剰の合計は、この農産品取引のメリットであり、三角形A・B・E1で表される。

 そこで、貿易制限を撤廃し貿易自由化を行うと、海外からの輸入が増えて、価格はP2まで下がり、取引数量はQ2まで増える。

 こうなると、価格低下のメリットによって、消費者余剰は、三角形A・P2・E2へと増える。貿易自由化前との差は、台形P1・P2・E2・E1である。この消費者余剰の増加分は、消費者が価格低下のメリットで財布に余裕ができた部分と考えられる。その余裕分は他の財サービスに購入に回され、その財サービス部分の所得を増加させるので、GDPを押し上げるとみてよい。

生産者余剰はやや複雑だ。国内生産者と海外生産者の合計では、三角形P2・C・E2となる。このうち国内生産者余剰は、三角形P2・B・Dになる。これは、貿易自由化前と比べて台形P1・P2・D・E1だけ海外製品の輸入に押されて縮小する。この国内生産者の生産余剰の縮小は、その生産者の所得減少になり、GDPを押し下げる。

 なお、海外生産者の生産者余剰は、三角形P2・C・E2から三角形P2・B・Dを除いた、四角形D・B・C・E2となる。

 貿易自由化によって、利益を受けるのは国内消費者と海外生産者であり、一方、被害を受けるのは国内生産者である。

消費者のメリットが生産者の被害を上回る!

 国内に限って言えば、利益を受けるのは国内消費者であり、その数は非常に多いので1人あたりの利益は小さいが、それらを合算した利益額は台形P1・P2・E2・E1になる。被害を受けるのは国内生産者であり、その数は少ないので1人あたりの被害は大きいが、その合算の被害額は台形P1・P2・D・E1である。

 このため、国内消費者はメリットをあまり実感できない一方で、国内生産者は被害を大きく実感できるので、政治問題が起こる。

 しかし、国内消費者の利益額の台形P1・P2・E2・E1は、国内生産者の損害額の台形P1・P2・D・E1より必ず大きい。ということは、国内生産者の被害は、国内消費者の利益額の一部で必ず穴埋めができることを意味している。仮に全部を穴埋めしても、国内消費者は貿易自由化の前より状況はよくなる。要するに、TPPでGDPは増加するのだ。

 しかも、以上は国内に限った話であるが、貿易自由化は相互主義なので、海外生産者が国内で受けた利益額の四角形D・B・C・E2に対応する利益額を日本の輸出業者も受けられる可能性がある。なお、食の安全や環境面の考慮をしても、供給曲線などに多少の修正は必要になるが、それでも上記の結論は大きく変わらず、貿易自由化のメリットを否定することはできない。

農水省経産省内閣府の試算がそれぞれ違うワケ!

 これらを理解しておけば、TPPに関して農水省経産省内閣府がそれぞれ出した効果試算がどうしてまちまちの数字なのかがわかるだろう。

 まず、農水省は、TPPで打撃を受ける農業を所管する役所だ。TPP参加は農業の被害というマイナスを主張するのが農水省の役目だ。そう言わなければ、省の存在すら否定されてしまう。

 それにマイナス効果となれば、いずれ補助金が必要になるはずという計算も働き、補助金を多く獲得するためにも、マイナス効果をできるだけ大きく主張する。かつてのコメ開放の際、農水省は5兆円の補助金をせしめたが、結局、コメの競争力は強化されなかった。カネのぶんどりだけでは、展望は開けない。

 農水省の試算によれば、関税完全撤廃によって農業生産額は年間4.1兆円減少し、関連産業への影響も含めるとGDPが7.9兆円減少するという。これは、おおざっぱに言えば、上の図での国内生産者の被害額である台形P1・P2・D・E1に対応する数字である。

 次に経産省経産省はTPPで恩恵を受ける産業界の利益代弁者だ。TPPの効果をできるだけ大きく見積もり、産業界に恩を売っておきたい。あわよくば、恩恵を受ける業界がシンクタンクでも作ってくれれば、自分たちに天下りポストが回ってくるかもしれない。

 ということで、TPPに参加すれば輸出額が約8兆円増加し、逆に不参加ならGDPが10.5兆円減少するとの試算を示した。これは、海外生産者が国内で受けた利益額の四角形D・B・C・E2に対応する、海外での利益額だろう。

 最後は内閣府農水省経産省に比較すれば、特定の利権をもたないので、霞ヶ関官庁の中では一番包括的な試算をしている。TPP参加により、GDPを2.4兆~3.2兆円(0.48~0.65%)押し上げるとの試算を公表している。

これは、おおざっぱに言えば、国内消費者の利益額の台形P1・P2・E2・E1から、国内生産者の被害額である台形P1・P2・D・E1を引いた金額に相当するだろう。ということは、農水省のいうように国内生産者の被害額が7.9兆円であれば、国内消費者の利益は10.3~11.1兆円になるだろう。

 政治的には、国内消費者の利益10.3~11.1兆円と海外での利益10.5兆円を合計した20.8~21.6兆円から、最大限7.9兆円(ただし、農水省の試算は補助金分取りのために過大になっている可能性がある!)を税金として徴収して、国内生産者に配分すればいい。その手法としては、戸別農家補償制度でもいい。しかし、いつまでも配分するわけにもいかないので、期限を切って行うことが望ましい。その時、国内生産者の事業転換や規模拡大等による生産性の向上が必要だ。

TPPによって日本の農業が壊滅することはない!

 そこで、TPPによって日本の農業が壊滅するかという素朴な疑問が生じる。図の分析は、極端に単純化されたもので、移送コストなどを無視しているが、現実的に考えれば、多少の価格差があるとしても、壊滅することはない。

 しかし、極端な価格差がある場合にはどうなるのか。それは、自由化の移行期間や為替レートなどを考えた場合の最終的な価格差等に依存する。移行期間が十分に長ければ、大規模農業を行うなどによって、生産性の向上が可能になって、壊滅することはない。

 また、これまでの20年間のように、通貨の過小供給になると円高傾向になる。為替レートは、通貨と他の通貨の量で大体決まり(マネタリーアプローチ)、円が過小供給であると円の希少性が高まって円高になるからだ。すると、輸入価格が下がり、国内生産業者は厳しい競争を強いられる。また、攻めの農業ということで輸出することも難しくなる。

 デフレを脱却するには、円を増やすことである(第1回コラム)が、それは、TPPによって日本の農業を壊滅させないためにも必要だ。

江田憲司提供:江田けんじNET 今週の直言

2010年12月06日09時57分

資源に乏しく、人材と技術を駆使し「貿易立国」で「国を開いて」生きていくしかない日本にとって、TPP(環太平洋経済連携協定)への早急な参加は必要不可欠であろう。それが、農業県出身で自ら稲作に精を出す代表をいただく、みんなの党の公式的立場でもある。

 TPPは、2010年3月、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、米国豪州ペルー、ベトナムの8か国(後にマレーシアも参加)で交渉が開始された。従来のFTA自由貿易協定)とは異なり、基本的に100%の自由化を目指す。ちなみに、FTAの場合は、自由化例外を10%程度認めるのが通例だ。

 それだけにTPP参加には相当な「覚悟」が必要だ。菅首相が、例のごとく、所信表明演説では「参加表明」をしながら、後に党内の猛反発にあって「参加を前提にせずにとりあえず情報収集」といった腰砕けになったのも頷けるだろう。ちなみに、その後、この「へっぴり腰」の民主党政権は、9カ国による交渉にオブザーバー参加さえ許されない状況が続いている。

 そのTPPは、今や米国が主導している。米国の目論見は、2011年11月、米国で開催されるAPEC首脳会議までに交渉を妥結するというものだ。これまで、東アジアで安全保障には多大なコミットしてきた米国も、近年、経済面では必ずしも主導権を握れてはいなかった。そうこうしているうちに鳩山民主党政権によって「東アジア共同体構想」までが提唱されていたのだ。その意味では、このTPP構想は、見事なまでの米国の「一発逆転劇」ではある。

 さはさりながら、日本はこれまで、FTA交渉等で米国EU韓国等に相当出遅れてきた。その要因が日本の農業にあることは自明だが、その結果、日本の企業は世界の中で不利な競争条件を余儀なくされている。また、閉鎖的な国内制度、規制の維持が企業の足を引っ張っているのだ。

 その証拠に、FTA相手国との貿易額/総貿易額、すなわち、FTA比率でみると、米国38%、EU30%、韓国38%、中国21%に比し、日本は 16%と相当後塵を拝している。特に韓国は、米国EUとの間でFTA署名に至っており、サムスンの飛躍的な業績アップと日本企業に対する凌駕を例にあげるまでもなく、このままでは、日本企業はグローバルな大競争時代にあって、ますます取り残されていくことは必定であろう。

 だからこそ、今や「農業の再生」とセットで、TPPに早急に参加すべきなのだ。それでは「農業の再生」とは何か。それは我が国農業の足腰を強くし、農業を将来にわたって、成長・輸出産業に育てあげていくことだ。

 OECDによれば、世界の人口は2050年には90億人(現在68億人)に達し、その食糧をまかなうためには、食糧生産を現状より7割アップしなければならないという。まさに食糧危機が叫ばれているのだ。そこに日本の農業の活路がある。

 北京やシンガポールでは、2倍も3倍も高い日本のコメが、おいしい、品質が良いといった理由で飛ぶように売れているという。ちなみに、その中国のコメ消費量は年1億3000万トン(世界消費量の約3割でトップ)、うちジャポニカ米も4000万トンの市場があるという。ここにターゲッティングすれば良いのである(次週に続く)。

そのためにはどうすべきか。みんなの党は、以下のような「戦略的農業産業政策」を打ち出している。

① まず、官僚統制の極みである「減反政策」を段階的に廃止する。

 現在は、水田(250万ha)の4割が減反対象だが、将来の自給率向上のための作付け面積確保のためにも減反は廃止。減反を廃止すれば、体力のない兼業農家から専業・主業農家への土地集約化も期待され、生産性の向上にもつながる。

② 減反を廃止すれば確実に米価は下がり、国際的な価格競争力が出てくる。

 今、一俵(60kg)15000円前後(今年は急落で12000円前後)が10000円以下に落ちこむだろう。そうなると、中国米一俵10000円前後だから、十分、中国市場で価格競争力が出てきて輸出できるようになる。

③ ただ、それにより農業所得が下落した分は政府が当面補償する。

 いくら輸出で数量があがっても、価格が急降下すれば全体の所得としては農家には打撃になる。そこで、これからも農家で頑張ろうという意欲のある専業、主業農家を中心に所得補償(直接払い)し、当面当該農家を支える。

④ 平成の農地改革」「平成検地」を実施する。

 一方でさらに、ゾーニング規制の強化や税制の活用等で、兼業農家、特に一家の収入のたった数%が農業収入といったサラリーマン農家や、おじいちゃん、おばあちゃんだけで一代限り、後継ぎがいませんといった農家には、どんどん農地を手放してもらって専業、主業農家に土地を集約化して生産性をあげる。耕作放棄地は農薬や化学肥料が残留しておらず、きれいな土地で有機栽培に最適との声も。

⑤ さらに規制を緩和・撤廃して農業に新規参入を促進する。

 株式会社の農地取得を可能にしたり、農業生産法人の要件(役員・出資制限等)を緩める。特に、重機を使える、また農家の次男坊、三男坊の就職が多い建設業は進出しやすい(05年に農地貸し出し規制が緩和されてから09年3月までに349社が新規参入、そのうち建設業が125社)。ちなみに、集落営農は1万3千、生産法人は1万1千と近年急増中。農業を産業にするには法人化が必要

⑥ そして「作ったものを売る」農業から「売れるものを作る」農業に転換

 当然のことだが「マーケットオリエンティド(市場指向型)」「勘からデータ」の農業へ。どの企業も行っている市場ニーズに応じた企業戦略を遂行していく。販路も多角化する。今でも農協経由は生産量の半分程度(4兆3千億円)。

⑦ いざ食糧危機、輸出入ストップの時は輸出余力を国内に振り向け。

 そうすれば、自給率40%が50%にも60%にもなるだろう。

 以上のような戦略的な農業産業政策を実行していく。それが、みんなの党の政策だ。そうすれば、日本の農業も将来の成長産業に変身しうる。

 TPPは、原則例外なく10年以内に関税をゼロにするのが目標だ。逆に言えば、10年の猶予期間があると考えれば良いだろう。以上述べたことを10年かけて、工程表を作って段階的に実現していくのだ。

民主党の「戸別所得補償制度」のように、貿易自由化も減反廃止もなく、専業も兼業も、大規模農家も零細農家も、選挙の票目当てに一律に税金をばらまいていては、いつまでたっても農業の足腰は強くならない。それは、ここ数十年の農業保護政策の結果、岩手県分の農地が失われ、埼玉県分の休耕地が放置されてきていることからも証明済みだろう。

 さらに悪いことに、この戸別所得補償の導入で、全国各地で「農地の貸し剥がし現象」が起きているという。「補助金がもらえるなら自分で飼料米を作るから返してほしい」といった具合だ。この影響で集落営農の解散も出てきており、これでは農地の集約化や生産性の向上に逆行する事態が続出することになる。

 TPP、貿易自由化反対派は、口を開けば「それでは農業は壊滅する」と叫ぶ。しかし、今のまま保護政策を続ければ農業の将来展望が開けていくのか。いや、逆に確実に日本の農家は壊滅していくことだろう。現に、ウルグアイラウンド対策費で、8年間6兆円の税金をばらまいても、コメに778%の関税をかけても、農業の競争力は衰えるばかりだった。少し数字をたどってみよう。

 農業就業人口は1960年の1454万人をピークに減り続け、2008年には298万人(全就業人口の3%)と8割近くも減った。農家戸数も半分以上減って252万戸(うち主業農家【所得の50%以上が農業収入】35万戸)。農業従事者の65歳以上比率は6割以上に上る。

 農地面積もピーク時の1961年、609万haから2008年には463万haに減った。すなわち岩手県分の農地が失われたのである。一方で耕作放棄地は増え続け39万haで埼玉県分にもなった。生産額は8兆4736億円(GDPの1.5%)、ピーク時の84年から3割減となっている。

 そして、水田を営む農家1戸あたりの農業所得は40万円弱。ほとんど生業とは言えない惨状だ。うち補助金が20万円。OECDによると、日本の農業補助金は農家収入の49%で、EU(27%)、米国(10%)に比べて図抜けて高い。補助金漬けとも言ってよい状況だが、それでも日本の農業には先行きがないのだ。

 91年に牛肉・オレンジの自由化がされた時も、関係農家は壊滅すると言われた。確かに肉牛農家は22万戸から7.4万戸に減ったが、1戸当たりの飼育頭数は12.7頭から38.9頭となり、規模の拡大で生産性は上がった。

 ミカン農家も3~4割が廃園したが、単価が甘夏の2.5倍するデコポンは200倍45億円市場に発展している。また、イタリアが原産地のブラッドオレンジを導入した宇和島のミカン農家は、本家本元が日本への輸出をあきらめるほどの美味さでグングン生産を伸ばしている。価格はミカンの5~6倍、利益率は7割にも上るという。

 韓国は数年前から、自ら「輸出立国」の道を選択し、農業保護策から輸出強化策への大転換を図っている。ここ3年間で輸出額は4割アップし、その総額は48億ドル。 2012年には100億ドルが目標だ。その代わり、04年から14年までの対策費はあわせて9.1兆円。これを日本に置き換えると40 兆円が必要と農水省は主張するが、韓国の対策費は保護関係コストだけではない。

 今、政治には大胆な発想の転換が求められている。ゆめゆめ、農業保護に巨額な税金を費消し、貿易自由化も中途半端で、日本の農業もなくなった、という最悪の選択肢にならないようにしなければならない。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP:Trans-Pacific Partnership、またはTrans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%88%A6%E7%95%A5%E7%9A%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E9%80%A3%E6%90%BA%E5%8D%94%E5%AE%9A


TPPとは「過激な日米FTA」にほかならない!

2011年2月7日(月)日経ビジネス 三橋貴明

菅直人首相を始め、日本人の多くが勘違いしているように思える。ペリー提督率いるアメリカの「黒船」来航後に「開国」をしたのは、明治政府ではない。江戸幕府である。

 しかも、「開国」の象徴たる日米修好通商条約には「治外法権」や日本の関税自主権喪失など、我が国にとって不平等な条項が含まれていた。江戸幕府を倒した明治政府は、この不平等条約を改訂する為に、大変な苦労を強いられることになったのである。


関税自主権を喪失した国に落ちぶれる!

 ところで、治外法権とは「外国人の日本国内における犯罪を、日本の法律で裁けない」という意味である。

 何ということであろうかっ! 2010年9月の尖閣諸島沖合において発生した、中国漁船衝突事件の漁船船長を、民主党政権が超法規的に不起訴処分とした「あれ」こそが、まさしく治外法権である。

 さらに、民主党政権はTPPにより、「環太平洋諸国」に対して「関税自主権の放棄」を実施するわけだ。菅内閣が推進するTPPは、中国人に対する治外法権と合わせ、まさしく「平成の開国」以外の何物でもない。日本は江戸末期同様に、外国人の治外法権を認め、関税自主権を喪失した国に落ちぶれるわけである。

 さて、菅首相は1月24日の施政方針演説において、TPPを「平成の開国」と位置づけ、国会における議論を呼びかけた。さらに、首相は1月29日、世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)において、日本のTPP交渉参加に関する結論を、6月までに出すと断言したのだ。日本が早急にTPPを検討することが、事実上「国際公約化」されてしまったわけである。


「あの」米金融サービスを受け入れますか!

 このTPPは、日本ではあたかも「農業問題」のようなとらえられ方をしている。だが、これは明確な間違いだ。何しろ、TPPとは、

「2015年までに農産物、工業製品、サービスなど、すべての商品について、例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」

 という、「過激」と表現しても構わないほどに極端な「貿易・サービスの自由化」なのである。通常のFTAであれば、製品種別や自由化を達成するまでの期間について「条件交渉」が行われる。ところが、TPPの場合はそれがないのだ。何しろ「2015年」までに、「例外なしに」関税や各種の貿易障壁を撤廃しなければならないのである。

 ちなみに、上記の「サービスなど、すべての商品」の中には、金融・投資サービスや法律サービス、医療サービス、さらには「政府の調達」までもが含まれている。農産物の関税撤廃など、それこそTPPの対象商品の一部に過ぎない。

 この種の情報が日本国民には全く知らされず、「平成の開国!」「バスに乗り遅れるな!」など、キャッチフレーズ先行、スローガン先行で話が進んでいる現状に、筆者は大変な危惧を覚える。何しろ、TPPに日本が加盟することで、リーマン・ショックを引き起こした「あの」アメリカの金融サービス、あるいは同国を訴訟社会化した「あの」法律サービスを、我が国は受け入れなければならないのである。

さらに、公共投資などの官需や、自衛隊の軍需品調達においてさえ、アメリカ企業を「内国民待遇」しなければならない可能性があるわけであるから、「ちょっと待ってくれよ!」と言いたくなるのだ。ちなみに、内国民待遇とは、自国民と同様の権利を、相手国の国民及び企業に対し保障することである。すなわち、アメリカ企業であっても、日本企業同様に扱うことを「保障」しなければならないわけだ。


GDPシェアが日米両国で9割を超える!


 TPPとは決して日本の「農業の構造問題」などではない。もちろん、筆者にしても「日本の農業に何ら問題はない!」などと主張する気は全くない。日本の農業が制度上、あるいは産業構造上、様々な問題を抱えているのは確かだ。それにしても、それらの問題は、あくまで日本の「国内問題」である。日本の農業の構造問題は、日本国民が自らの手で、粛々と解決しなければならないのだ。

 そういう意味で、「日本の農業の構造問題を解決するには、TPPなどの外圧を利用するしかない」
などと、TPPと農業の構造問題を絡める言説には、怒りを禁じえない。

 日本国民の所得水準向上や国富増大に貢献するのであれば、TPPにせよ農業の構造改革にせよ、淡々と進めればいいだけの話だ。逆に日本の国益に貢献しないのであれば、やめるべきである。少なくとも「農業の構造問題解決のためのTPP」などという考え方は、風邪をこじらせた患者に全身手術を施すようなもので、まさに異様極まりない。

 そもそも筆者は、TPPのような「外圧」がなければ農業の構造問題一つ解決できないほど、日本国民が愚者であるとは考えていない。逆に、本当にそうであるならばなおさら、日本国民自らの手で改善しなければならない。

 いずれにせよ、農業問題はTPPにより「自由化」される産業の、ごくごく一部に過ぎないのである。それにも関わらず、政治家やマスコミの論説において、農業を「悪者化」「抵抗勢力化」し、TPPを「農業の構造改革問題」であるかのごとく印象付ける行為、すなわち「TPP問題の矮小化」が盛んに行われている。

 さらには、日本がTPPに参加しなければ「世界の孤児になる」などと発言する人がいるわけであるから、驚愕すらさせられる。何しろ、TPPは世界でも何でもないのだ。

 TPPとは、「アメリカ」なのである。

TPPに参加している国々、及び参加を検討している国々のGDPを比較すると、アメリカ1国で66.7%を占める。さらに、日本のGDPの割合が23.7%である。何と日米両国で、TPP諸国のGDP合計の90.4%を占めるわけだ。

 GDPシェアが日米両国で9割を超える現実がありながら、「TPPに参加しなければ世界の孤児になる」などと考える人がいるわけだから、恐れ入る。「世界」について、随分と狭くお考えのようだ。

 現実には、TPPとは「過激な日米FTA」に過ぎない。通常のFTAであれば、締結する両国が製品やサービスの種別、それに自由化(関税撤廃など)までの期間について、互いの国益に基づき条件を詰めるプロセスを踏むものである。ところが、TPPにはそれがない。

 また、TPP推進派の中には、「TPPに参加することで、アジアの活力を取り込む」
などと意味不明なことを言う人も多い。

 図1-1の通り、TPPに参加、あるいは参加を検討している「アジアの国々」とは、日本を除くとシンガポール、マレーシア、ベトナム、そしてブルネイしかない。この4カ国のGDPを合計しても、わずかに4825億ドルに過ぎないのだ。TPP諸国のGDP全体に占める割合は、2.4%だ(注:ケタを間違っているわけではない)。TPPは「世界」でもなければ、「アジア」でもないのである。

 例えば、中国韓国もTPPに参加するというのであれば、まだしも理解できる。しかし、韓国はTPPではなく、締結に際し条件交渉が可能な米韓FTAという道を選んだ。そして、中国に至っては、TPPなど「完全に無視」しているのが現状である。

 なぜ、中国韓国がTPP批准を検討しようとしないのか。それは単純に、TPPに加盟することが、自国の利益になるとは考えていないためである。

昨年秋のAPECアジア太平洋経済協力会議)において、まさに降って沸いたように日本で話が始まったTPPは、本連載で明らかにしていくように、内容的に様々な問題を含んでいる。冗談抜きに、TPPに加盟した結果、日本の「国の形」が変えられてしまう可能性すらあるのである。

 それにも関わらず、菅政権が「平成の開国」などと、スローガン優先で話を進めていることには、異様さを感じざるを得ない。と言うよりも、菅首相自らが、TPPについてきちんと理解をしているのかどうか、疑問符をつけざるを得ないのだ。

 

平均関税率は既にアメリカよりも低い!

 1月28日の通常国会の場において、みんなの党の川田龍平議員が「TPPに参加すると医療分野における市場開放や自由競争を迫られる」という懸念に関する質問をした。それに対し、首相は「アジア太平洋地域が自由な貿易圏に発展していくことが重要だ」などと、「言語明瞭、意味不明」な観念論でしか回答することができなかった。あえて率直に書くが、支持率低迷に悩む菅首相が、単に「フレーズの響きが格好いい」などというくだらない理由から、「平成の開国」「平成の開国」と繰り返しているに過ぎないのではないか。

 先述の通り、TPPは確かに「平成の開国」だ。しかし、それは民主党首脳部が思い描いている、「世界に日本を開く」といった意味における開国ではない。まさしく、1858年にアメリカとの間で結ばれた不平等条約、すなわち日米修好通称条約締結に極めて近い「開国」なのである。

 菅政権は尖閣問題で中国人船長に「治外法権」を認め、TPPでアメリカ(及び、ほかのTPP諸国)に対し「関税自主権の放棄」を実施しようとしている。挙げ句の果てに、登場したスローガンが「平成の開国」であるわけだから、とんだブラックジョークである。

 そもそも、政治の責任者が「開国する」「平成の開国だ」などと無責任に繰り返す以前に、現在の日本は既に十二分に「開国」しているのである。それは、日米の平均関税率を比較すると、一目瞭然だ。

図1-2の通り、日本の平均関税率は、農産品という唯一の例外を除き、ほとんどの項目においてアメリカよりも低くなっている。何しろ、アメリカは工業製品について関税を維持しているが、日本はすでに「関税率ゼロ」なのである。この状況にありながら、「日本は開国する」などと、あたかも日本が「開国していない」かのごとき言説を繰り返す人々は、率直に言って現実を見ていないか、あるいは何らかのおかしな意図があるとしか考えられない。

やたら問題視される農産品に関しても、日本の自給率は生産額ベースで70%(2009年。以下同)、カロリーベースでは40%に過ぎない。それに対し、アメリカの生産額ベース自給率は124%である。自給率が低いということは、それだけ「海外から農産物を輸入をしている」ことを意味しているわけだ。

 さらに、重量ベースで見た日本の主要穀物自給率は58%、穀物自給率に至っては、わずかに26%に過ぎないのだ。穀物という、極めて重要な農産物に限ると、日本は重量ベースで7割以上を「輸入」に頼っているのである。この状況で「日本の農業市場は閉ざされている」などと言い張る人は、「数字」の読み方が分からないと断言されても仕方がないと考える。日本の農業市場は、むしろ充分以上に「開国」されているというのが真実だ。

 そもそも、いまだTPP加盟の是非を決断していない状況で、一国の首相が、
「日本は開国していない。平成の開国を実現する」などと発言する真意が理解できない。


外交交渉上も素人丸出しのやり方!

 何しろ、TPPの詳細に関する交渉は、これから始まるわけである。そのような段階で、国家の政治責任者が「我が国は開国していない」などと発言した日には、諸外国がかさにかかって、様々な条件を突きつけてくるのは確実だ。外交交渉上、極めてずさんな(というか、素人的な)やり方である。

 この種の国際交渉の場においては、「我々は十分にやっている。十分にやっていない貴国が譲歩しろ」というスタイルで望むのが「国際常識」である。さもなければ、その国は他国から寄ってたかって、食い物にされるだけの話なのだ。

 現実の世界は、民主党首脳部や国内マスコミが思い描いているようなユートピアでも何でもない。各国が自国の国益を貫くために、様々な手段を駆使してくるのが当たり前なのである。その状況で「我が国は開国していない」などと首相自ら表明した日には、「どうぞ諸外国の皆さん。我が国から譲歩を引き出して下さい」と宣言しているようなものだ。

 菅直人首相の「平成の開国」発言は、そもそも「江戸末期の開国の歴史」を理解していないとしか思えない上に、外交交渉上も素人丸出しのやり方である。まあ、民主党政権はいまだに「仮免許中」なのだと言われれば、それまでなのかもしれないが。

 いずれにしても、江戸幕府の後を継いだ明治政府は、日米修好通商条約に代表される不平等条約を改訂するために、大変な苦労を長年に渡り重ねた。条約改訂を成し遂げるために、複数の戦争を遂行し、大勢の日本国民の生命を犠牲にした。

 もしや菅直人首相は、我々の子孫に対し、明治政府や当時の日本国民同様の苦労を強いたいのであろうか。

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