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電子教科書は日本を救うか 第3回
2010年12月22日(水)現代ビジネス 田原総一朗
田原 2010年はメディアにとって大きな転機だと思います。尖閣沖で中国の漁船が日本の巡視船に衝突した。その映像を海上保安庁の保安官がユーチューブに流した。これまでならばテレビ局に持って行っていた。あるいは小沢一郎さんが国会に出ないというのをニコニコ動画で会見した。するとテレビや新聞がネットの情報を後から追っかけている。時代が変わったなと思う。
孫 変わりました。今まではテクノロジーの制限があったわけですよ。地上波のテレビ局に当てはめられた電波が数百メガヘルツ、その電波の幅の中で局ごとに割り当てて放送していた。だから一地域で放映できるチャネルの枠は8チャンネルとか10チャンネルしかない。ところがインターネットは無限大で、双方向で無限大の動画、無限大のチャネルが作れるわけですね。
田原 孫さんは百もご承知のように、たとえばテレビ局と携帯を比べると、国に支払っている電波料は、携帯のほうがはるかに高いカネを納めている。
孫 テレビが一番いい電波帯を占拠していますね。もうちょっとテレビが遠慮してくれるといいんだけれど。
長妻厚生労働大臣がクビになった理由!
田原 新しく総務大臣になった人は、「それ(電波帯の再編)をやる」って言う。ところが途中で全部腰砕けになる。なんで?
孫 いろんなしがらみがあるわけですよ。例えばパーソナル無線、いわゆるアマチュア無線はたった2万人しか使ってない。ここで携帯電話なら2000万人が活用できるくらいの電波の幅をたった2万人で占拠しているんですね。それからタクシー無線。これまた携帯電話なら2000万人分投入できる、一番通りのいい800メガヘルツ帯の電波にもタクシー無線が居座っている。
田原 独占して。
孫 何台のタクシーが使っているかと言えば、町ごとにほんの数千台、東京でも数万台。それが2000万人分の電波のところに居座っている。立ち退いてくれるのなら、タクシーの無線台数くらい、うちのiPhoneタダであげまっせと。タダ友で無料通話でいくらでも配車してくださいと。
会場 (爆笑)
孫 タクシー数万台分、タダでiPhoneを差し上げても、そこに2000万人、3000万人のiPhoneユーザーを載せ替えられるなら、みんな得するんですよ。
タクシーの会社にはタダで上げますから損するもなにもない。だけどそこには監督官庁である総務省の・・・、今日は生放送だからもう消せないけど。
会場 (爆笑)
田原 天下りがいるんだ。
孫 天下りがドサーッといるんです。もう何十年間も居座っているんです。で、先輩でしょ、簡単に外せないんです。理事長、理事、ズラッと全部天下り。全部総務省ですよ。これは許せんと。思いませんか。
田原 僕は、新しい総務大臣が登場する度にそれを言うわけ。テレビが独占している、おかしいじゃないかと。最初は向こうもいうと頑張っているんだけど、途中で腰砕け。
孫 大臣も本来は志の高い人たちですから、そういう気持ちはあるわけですよ。だけどいざ詳細の具体論になるとやはり役人はそこに何十年といますから、より詳しいわけですよね。
その詳しい彼らが、「さはさりながら」と言って分厚い報告書、しかも御用学者かなにかがまとめて持ってくると「あちゃー」と。この知恵と知識で防戦されるとなかなか改革できない。
田原 長妻(昭・衆議院議員)という男がいて厚生労働大臣をやってた。彼は今度外されたんだけど、彼が何度も僕に愚痴をこぼしてた。厚生労働省の改革をやろうとする、「やる」というと、ハイっていうんだって。ところがなんにもしない。「ヤツらは敵なんだ」って言っていた。ついに彼は敵に負けちゃったわけだよ。
孫 会社にもいますよ、ハイっていってなかなか動かないと。
田原 ソフトバンクにいますか。
孫 たまにいますよ。でも僕は許さないから。ハイっていって動かないとチェックして、「なんで動いてないんだ」と。
和をもって尊しとする経営者ではダメ!
田原 日本の国際競争力がナンバーワンから27位に落ちた。一人当たりのGDPも2000年には3位だったが、いま23位に落ちた。ドーンと落ちている。やっぱり僕は大企業の経営者に問題ありだと思う。
孫 あります。オールサラリーマン化しちゃってるわけですよ。
田原 そうなんです。つまり新入社員がどんどん歳とるか、歳とった単なるサラリーマンが経営者になってる。
孫 そうです。立派な真面目な人たちですからケンカしないわけです。嫌われることいわない。ガーンと机を叩かない。事勿れ主義で前歴主義で、みんなの和をもって尊しとする。和を尊しの人だから御輿の上には乗りやすい。だけど大きな改革はできない。それは大臣だって大企業の社長だって役人だって、みんな事勿れ主義でなんとはなしにホワーッといっちゃう。
田原 会議ばっかりやって、何十回会議やっても変わらない。
孫 腹を括って決断をするのがリーダーシップだと思いますよ。
田原 でもそういう連中から言わせると、孫さんは独裁だという。
孫 いやいやいや(笑)。会社の中では結構議論してるんですよ。
田原 孫さんの凄いところは、ユニクロの柳井(正)さんも似てるんだけど、決定が早いですね。
孫 早いですね。
田原 孫さんは前の晩に役員に電話すると。こういうことをやりたいと思うと。で、調べろと。明日の夜会議で決めちゃうと。そうでしょ?
孫 それもありますし、そもそも事前の根回しなんてほとんどなしでその場の会議で突然ガーッとお互い議論をして、それでバンバン決めていきますから。
田原 その決定が抜群に速いわけよ。
孫 早いですね。だっていいことはためらう必要ないじゃないですか。いいことなのに先送りする必要はないじゃないですか。
われわれインターネットの世界では、日本流は許されないんですよ。アメリカが来る中国が来るヨーロッパが来る。
彼らはそれこそクラウドですから、サーバーが空の雲の上にあって国境を越えてバンバン来るわけです。日本流の和をもって尊しなんて言っている間に全部占領されますから、やっぱり世界スピードのレベルでやらないといけない。だから日本では変わってるけども、シリコンバレーでいうと同じペースなんです。
電子教科書で教育をどう変える?
田原 話を教育に戻しますと、日本の教育ってやっぱりヘンな教育で、競争はよくないと言ってるわけね。
孫 そうそう。これは問題ですよ。
田原 でも競争が必要だから、みんな学習塾に行くわけ。本当は学校の教育がよければ塾なんて行かなくていいんですよ。
孫 仰るとおり、仰るとおり。今日先生方いっぱい来てますけどね。あとで本音をガンガン言いたいと思いますけど、もう少し資料がありますからさっといいですか。
田原 どうぞ。
孫 ということで、デジタル教科書、電子教科書、やるかやらないか。フィンランドは2007年に決めました。韓国も来年から全部電子教科書になります。フランスも来年からやると先月決めました。
シンガポールも再来年、アメリカですら2015年です。日本は2020年です。また失われた・・・。
田原 だけど原口(一博・前総務相)さんは2015年に(電子教科書化を)すべきだと言っていたいましたよね。
孫 そう。原口さんは2015年にすべきだと言っておられるし、光の道も2015年だと。だけど今の政府決定は2020年。その正式決定の2020年もウヤムヤにしようという抵抗勢力が文科省のなかにズラーッといる。
田原 じゃあ原口さんは2015年と言うからクビになっちゃったんだ。
孫 ハハ・・・。分かりませんけども、とにかくいったん政府で方針として2020年には電子教科書にしましょうと決めている。それですら僕は遅すぎると思っている。世界からまた「失われた10年」になるにもかかわらず、その2020年ですら、後ろ送りにしよう、全部骨抜きにしようと・・・。
田原 誰がそんなことをやっているの?
孫 ヌエのような存在でね、誰かってう名前が出てこない。全員でモワ~とボイコットしている。
田原 モワ~っと?
孫 モワ~っと。それでこの間、僕は文科省に呼ばれて行ってきたんです。「電子教科書について聞かせよ」と呼ばれたから行ってきた。で、口から泡飛ばして「やるべきだ!」ってワーっと言った。そうしたらね、目が死んでいましたよ。
会場 (爆笑)
田原 聞いていないわけね。
孫 呼んでおいてね、その死んだ目はなんだと。僕が先生でお前らが生徒なら、お前らどやしつけるぞと。呼んでおいて、なんか眠たそうな顔をして聞いておる。
揚げ足取りしかしない予算委員会!
田原 いや、呼ばなきゃいけないということはあって、格好だけ呼ぶんだけど、一切無視したいんだ。
孫 要するに「反対」も言わないんです。「賛成」も言わない。それでなにか、逸れたような質疑応答をモワ~っとする。なんでそんな重箱のすみっこを聞くの? 中心を聞くのならまだ分かるよと。重箱のすみっこを聞いてどうするの、と。
田原 それはね、今の国会が同じ。
孫 そうですよね。
田原 予算委員会ですよ。でこの予算が借金がいっぱいあるわけですよ。借金を減らすのか、それとも景気をよくするのか、誰もそんなことを言わない。
孫 そうそうそうそう。
田原 重箱のすみばっかり。
孫 重箱のすみっこの失言癖ばっかりでしょう。これじゃあね、日本の天下国家はマズイですよ、マズイ。
だから僕は今日は、田原さんも「電子教科書反対!」なんて明確に言っているちゅう本(『緊急提言! デジタル教育は日本を滅ぼす』)があったから・・・。
田原 僕、会員になったんですよ。会員(編集部註・「デジタル教科書教材協議会」のアドバイザー)になった。
孫 ああ、会員になった。
田原 だけど僕は、今の教育は大いに問題だと。
孫 そうそう。
田原 やっぱりね、電子教科書をやっても教育を直さなきゃダメだって言っています。
孫 そう、おっしゃる通り。それは両方なんです。教育の中身も直さなきゃいけないし、道具としての電子教科書も用意しなきゃいけないし。そもそも一番大切なのは何を教えるかというコンテンツ。それが、工業社会の時代のコンテンツをいつまでも教えているようじゃダメだと。
田原 それは分かる。「電子教科書が便利だ」っていう話はいっぱいあるんだけれど、「それで教育をどう変えるんだ」っていう話がない。そこなんですよ、孫さんとやりたかったのは。
孫 それを今日、僕は用意しましたからやりますよ。
で、とにかくまず、急がないかんということを一つのメッセージとして受けていただきたい。
田原 でも「急ぐ」という総務大臣がクビになった。
孫 そう。それでも、現職の大臣も必ず理解いただけると信じている。
田原 理解したらクビになる。
会場 (爆笑)
孫 ハハハ。政権も総理も一年ごとに替わるし、大変ですよね、もう。日本の国はもうマズイ。だからとにかく早めなきゃいけないというメッセージをまず皆さんにも受けていただきたい。
で、何を教えるか。今10歳の子供たちは30年後には40歳ですから。30年後の40歳、社会人で言えば一番働き盛りの40歳。今40歳の人たちが30年前に何を学校で教育受けたか。これが日本の国際競争力にモロ影響を与えている。
絶対に責任をとらない文科省!
田原 実はある予備校の先生に聞いたの。「なんでみんな予備校に行くんだ」と。「学校の教師がダメだから行くのか」と言ったら、「そうでもない」と。
つまりね、学校の教師はね、算数だの問題を解くことしか教えない。算数がいかに面白い教科か、理科がいかに面白いか、これをまったく教えない。
孫 そうそう。それとね、塾はいい中学、いい高校、いい大学の受験を通らすという明確な目的を持っているから、生徒同士の過酷な競争状態に持って行って、試験をしょっちゅうやって、成績順に席順を並べてみたり張り出したり、いろんなことをやっている。かつての日本が競争に燃えていた時代には、廊下に張り出すなんて当たり前だった。
田原 当たり前。
孫 塾では今でも張り出している。だけど学校では、順番に張り出すと、PTAから怒られる。それで文科省の偉い人からも「そうするな」って言われているような言われていないような感じがある。"ゆとり"のなんとか、「競争はよくない」とか・・・。
田原 ゆとりもね、また文科省がどうしようもない。僕は取材したの。すると文科省が全部先生のせいにする。ゆとりの教育がなんで失敗したか。「教師が悪いんだ」と。総合的学習の時間なんてね、「生徒の主体性を高めるためにやったら教師がついていけないからムチャクチャになっちゃった」と。文科省は「自分の責任だ」とは絶対に言わない。
孫 会社でもね、「敗軍の将兵を語る」というか、ダメになった会社の社長で「自分の部下がバカだから」とすぐにいう人がいるじゃないですか。これは最悪ですよ、大将としては。そう思いませんか。
僕は自分の部下をもうスゴイと思っているんですよ、本当に。最近も感動しまくっているんですけどね。
田原 それは何よりも、部下が孫さんを信頼している。
スターウォーズのごとく!
孫 いやいや、信頼している部分もあると思うし、「社長が頼りないから頑張んなきゃ」と思っているところもあるかもしれない。とにかくそういうことで、教育の精神論もありますけども、教育の中身を情報化社会、情報革命に向けたものをやらなきゃいけない。
じゃあそのIT教育って何ですかって言うと、今ある紙の教科書を単に電子に置き換えましたというだけではダメだと。そうではなくて、IT立国---電子立国からIT立国---に向けた教育の変革だということで、さっきも言ったように30年間で100万倍になったわけです。今からものすごいイノベーションが起きる。
だから今あるものを、『スター・ウォーズ』---先生方、『スター・ウォーズ』って観ましたか? 『スター・ウォーズ』でヨーダが宙に浮いて、それで闘うジェダイに訓練をするときに、「目に見えるものを相手に闘ってはいけない。目に見えないフォース(未来を予知する力、他人の心を操る力)に聞け」と。「目に見えた剣を追ってそれをよけるのではなく、これから剣がどこに来るのだろうというフォースを読め、先を読め」と言っている。
だから今のiPadだiPhoneだを見て、あるいはパソコンを見て、「あ、これをやればいいのか」っていう程度ではダメですよ。30年後に、今の10歳の子供たちが40歳になる。そのときに彼らが、自分が10歳のときに教えてくれたあの恩師の先生の顔を思い浮かべて感謝をする。
田原 感謝しないね、今。
孫 「あの先生が、僕が10歳のときにあのことを言ってくれた。あれを見せてくれた。あのことを語りかけてくれた。だから今の40歳の私がある」。そうやって、今ある目に見えるモノを語るのではなく、今まだ目に見えない30年後の進化を予見して、「30年後の世界にこうなりますよ、それに対してのことを今学ぼうよ、準備しよう」と。
2010/12/15(水)サーチナ
日本の菅直人首相は先日、朝鮮半島有事の際に、日本政府が自衛隊を派遣して韓国に在留する日本人を救援することを検討していると述べた。菅首相のこの発言の後、韓国国民からはすぐに「菅首相は朝鮮半島の緊張に乗じて、どさくさに紛れて利益を上げようとしている」との声が上がった。中国網(チャイナネット)日本語版が報じた。
仙谷由人官房長官は13日、火消しに乗り出し、「何も知らないし、まったく検討されていない」と、韓国への自衛隊派遣を否定。韓国メディアはあいいで菅首相の「韓国への自衛隊派遣」発言を批判した。『韓国時報』は、菅首相のこういった発言は軽率かつ厚顔無恥で、朝鮮半島の緊張に拍車をかけることにもなるとしたほか、韓国のニュースサイト『COOKY』は、「有事の際でも、かつて朝鮮半島を蹂躙(じゅうりん)した日本兵が再び韓国の領土に踏み入ることなど考えられない」と批判した。
『韓民族新聞』は、延坪島事件の後に朝鮮半島の情勢は緊張状態にあるというのに、隣国の首相はこのような発言をし、日本が朝鮮半島の災難に乗じて私腹を肥やそうとしている態度が表れていると論じた。『韓国日報』は、日本の内閣支持率は6月の70%から近ごろ25%まで下がり、「韓国への自衛隊派遣」は菅首相が保守派の心を一つにするために行った「政治のパフォーマンス」だと見ている。
韓中民間外交協会の李東鉄会長はメディアに対し、「朝鮮半島の危機と矛盾は、日本が平和憲法を改正できる口実を作った。朝鮮戦争のときのように、朝鮮半島での危機で、日本は経済的な利益を得る可能性がある」と述べ、朝鮮半島有事の際に日本が悪い働きかけをする可能性が高いとの見方を示した。
沖縄大学の劉剛教授は取材に対し、「朝鮮半島で大きな衝突があれば、朝鮮と韓国は直接的な災難を被り、米国と中国も損失を受けるが、日本は利益を上げるだろう。日本の多くの戦略家がはっきり述べていない『天機』を菅首相は我慢できずに話してしまっただけにすぎない」と語った。
(編集担当:米原裕子)
*中国外交部、菅首相の「半島有事に自衛隊派遣」発言に不快感!
中国外交部の姜瑜報道副局長は14日、定例記者会見で、菅直人首相による朝鮮半島有事の際の自衛隊派遣に対して言及し、「日本は軍事面において、もっとアジア諸国の感情に配慮し、慎重に行動すべきだ」と発言に不快感を示した。
姜報道副局長は、北朝鮮が朝鮮半島で核戦争を起こす可能性や、「日本は朝鮮半島有事の際、自衛隊を派遣して朝鮮半島内の日本人救出を試みる」とした日本の菅直人首相の発言などに対する記者からの質問に、「朝鮮半島の情勢悪化はいかなる方面にとっても利益とならない。関係諸国は冷静に対処すべき」と回答し、中国も有益な対話実現に向け、努力する方針を示した。
一方、菅首相の発言については、「中国国内の関連報道や、韓国国内の反応を注視する」と述べるにとどまったが、「歴史的背景も含め、日本は軍事面でもっとアジア諸国の感情に配慮し、慎重に考慮すべきだ」と不快感を示した。
(編集担当:金田知子)
*【韓国ブログ】菅首相の自衛隊派遣発言にブロガーたちは怒りの発言!
菅直人首相が朝鮮半島有事の際、在韓邦人救出のため自衛隊による現地派遣を検討するとの発言が、韓国で大きな波紋を広げた。韓国メディアは「私たちは『自衛隊朝鮮半島派遣』発言を聞き流してはいけない」、「韓国人の感情を無視した浅はかな発言」などと批判的に報じた。
韓国人ブロガーのラウレンシオ(ハンドルネーム)さんは、菅首相の発言を「今年、もっともあきれた、利己的な意見」と批判した。筆者は第二次世界大戦当時、日本は生体実験や従軍慰安婦など、侵略した周辺地域で残酷(ざんこく)な行為を繰り返したと主張。「その行為を指示したのはまさに大日本帝国であり、その象徴は『旭日旗(きょくじつき)』だ」と述べ、旭日旗に対してデリケートな反応を示した。
「ハーケンクロイツはドイツをはじめヨーロッパで厳しく規制されているが、日本の軍国主義の象徴とも言える旭日旗はどうか?」とナチスが党旗に使用したハーケンクロイツとを比較し、「旭日旗は韓国や中国など、日本に占領された国では当然タブーだが、日本はいまだに海上自衛隊や陸軍自衛隊が使用している」と指摘。旭日旗を使用する自衛隊の朝鮮半島派遣は、絶対にあり得ないことだと論じた。
Dimones(ハンドルネーム)さんも、自衛隊の派遣に反対する。「第2の朝鮮戦争が起きた場合、戦争にかかわった国は勝利した際の戦利品を狙うだろう。戦利品を受け取るためにも軍隊派遣は必須であり、菅首相による自衛隊派遣発言もそのような脈絡から出たものだろう」と述べる。「もし第2の朝鮮戦争が起きたら日本は何を狙うのか」とし、竹島(韓国名:独島)を約束するのではないかと心配そうに述べた。
(編集担当:新川悠)
*半島緊迫化で思う、一人っ子政策と中国軍の構成及び戦闘力!
11月23日、韓国と北朝鮮の間で砲撃事件が発生、韓国の延坪島(ヨンピョンド)の家屋が燃え、韓国兵士や民間人に死傷者が出た。米韓両国は28日から12月1日まで、黄海での共同軍事演習を実施。朝鮮半島の情勢は緊張し始めている。最近では日米の軍事演習も始まり、史上空前の規模で行われているこの演習では、初めて韓国も合流するとして、東アジアの眼がすべて朝鮮半島に向けられているといっても過言ではない。
中国でも例外ではない。衝突そのもの、米韓、日米(あるいは日米韓)のそれぞれの軍事演習はいずれもトップニュース扱いで報じられている。ここでは、衝突やそこから派生したそのものよりも、中国独自の問題として、今回の一連の問題と中国の人口政策の関わり合いについての中国現地の論調を紹介したい。
中国の人口政策との関わりというのは、こういうことだ。軍事衝突が中国を巻き込むほどのものとなり、大規模な戦争にエスカレートするようなことがあれば、50年代の朝鮮戦争参戦と同様、中国も出兵する可能性は否定できない。そうなると、中国の一人っ子政策は見直しを迫られる可能性が出てくる。一人っ子政策の中国軍事力へのマイナス影響がすぐにも露呈するかもしれないからだ。
もちろん、戦争が発生してから人口政策の見直しを図ってもおそらくは何もかもが間に合わないだろう。ただし、「戦争が発生する」ということを想定すると、現在の中国の人口政策はいかにも有事に不向きであることがはっきりしてくるのは間違いない。
現行の中国の計画出産政策は、農村部では「一人っ子+一人可能政策」で、都市部には「一人っ子政策」であるとも言える。そもそも一人っ子が中心だから、軍隊に行ける若者が相対的に少なくなっているのが一つの問題だ。
農村部では、初めの子が男の子の場合、二番目の子の出産は許可を得られないが、初めの子が女の子の場合には二番目の子の出産は許可を得られる。その結果、農村部の家庭には、一男の家庭、または二女の家庭、または一男一女の家庭という形になって、二男の家庭というのはまれになる。社会保障・年金制度に不安のある中国では老後は子女に頼るのが常識、その中で一男一女の家庭で男の子が軍隊に行くことになると、女の子一人に頼ることになり、それはそれで心細くなる。
さらに、一人っ子の家庭は自分の一人っ子を軍隊に行かせることができるだろうか? 平和の時代は差し支えがないが、まさに戦争になるとちゅうちょなく自分の一人っ子を戦場に行かせることができるだろうか? もし一人っ子が軍隊に行くと誰が家を支えていくのか? 一人っ子はその家のただ一人の後継ぎである。だから一人っ子は軍隊に行かないという伝統がある国は少なくない。中国の状況がいかに異常と言えるか、お分かりだろう。
都市部の家庭は普通一人っ子である。一人っ子である男女二人が結婚すると二人目の子供を産むことができる。しかし、この子供は幼すぎてとても軍隊に行ける年齢ではない。
中国では「超生子」(親が国の人口政策に違反して産んだ子供)がいる。「超生子」を軍隊に行かせばいいでないか、という声も上がってきそうだ。しかし「超生子」は違法であり、「超生子」の親は人口政策の処罰(罰金、社会撫養金を含め)を受けている。大人になった子供が自分の出生によって親が莫大(ばくだい)な「罰金、社会撫養金」を国に納めたと思ったらどんな気分であろうか。私の命は親がお金で国から買い入れたものだから、国が自分を守るべきで、自分が国を守る義務はない、と「超生子」は思うかもしれない。
現実に、中国の軍隊の主体は現在、一人っ子である。2010年3月18日の「南方週報」は「2006年には一人っ子の数は軍隊の半分を上回って、10年前に比べて20%増加した」と報じた。
間違いなく、一人っ子はその家にとって唯一の希望である。そんな一人っ子によって構成された軍隊の戦闘力はどの程度だろうか? 今の段階では断言することはできない。1970年代(中越戦争)以降、中国の軍隊は実戦能力を発揮したことがないからだ。
一人っ子である軍人は情報収集能力と伝達能力、コンピュータ知識などは優秀であるが、過酷な環境への適応性と忍耐性に欠けているのが一般的。彼らの知識と機能は現代戦争にとって必要なものであるが、一人っ子が戦場に行く、一人っ子の親が息子を戦場に行かせる、これらが許容される難度は想像に難くない。一人っ子は絶対に嫌がるはずだ。
以上は決して杞憂(きゆう)とは言えない。中国でも専門家を中心に本気で議論が進められていることだ。朝鮮有事の危機管理をきっかけとして、世界史上例のない人口政策を取っている中国にとっては、そのまま人口問題をも深刻に検討させることになっている。
(編集担当:祝斌)
電子教科書は日本を救うか 第2回
田原 一つ素朴な質問をしたい。パソコンの基本ソフトを作ったのも、iPhoneやiPadも全部アメリカでしょ。なんで日本ではできないんですか。
孫 マイクロコンピュータが生まれたのがアメリカで、シリコンバレーですよね。シリコンバレーでスタンフォード大学を中心に、その周りにインテルだ、フェアチャイルドだと、全部集まっている。メッカに近ければ近いほど、距離の二乗倍に反比例して影響は大きい。一番メッカに近いところで激しい革命が起きている。だから絵描きがパリに行くように、メッカに世界中から強者が集まるわけですよ。
田原 そう言えばグーグルもスタンフォードですね。
孫 そうです。グーグルの創業者もスタンフォード、ヤフーの創業者もスタンフォード。僕は隣のバークレーでしたけれども、学生時代からスタンフォードと車でしょっちゅう行き来して、友達はみんなあのへん仲間内ですからね。そういう持代の風を感じてたわけですね。
田原 日本は逆ですよね。日本はそれどころかやや落ちこぼれてる。これから落ちこぼれないためには、さあどうする。
孫 そう。日本は農耕社会から工業社会にいくとき、明治5年に義務教育を作りました。では工業社会が終わったとき、どういう教育をするかです。「ものづくり日本」と経団連の経営者の方々からそういう質問は出てくる。それで話すとはすぐいうんですけど、ものづくりを組立業と捉えている経営者が未だに多い。
田原 ようするに日本では組立業が中心なんです。トヨタにしても、パナソニックにしても、全部、組立屋なんです。
孫 組立業にノスタルジアを感じたり、そこに仏と魂があると思っている。そんなうちは日本はもう復活できない。
田原 まだ経団連は思っている。
孫 これでは復活できない。なぜ組立業では復活できないとかというと、組み立ての労働賃金が、いまだ農民の奴隷解放以前の世界にある国と比べると、十倍なわけですよ。月収に十倍の競争力の差がある。昔でいう奴隷と同じような扱いを受けている人たちが安い賃金でつくる農作物のほうが価格競争力がある。同じように組立業も安い賃金で組み立てられたら競争に負けるわけです。
田原 日本は他の国の十倍も高い。
孫 高くて競争はできないですね、単に組み立てということでいくならば。
田原 だからみんな工場が中国やアジアへ行ってますね、安いところへ。
孫 安い賃金に立脚する組立業に頼るのはもう無理。日本は1980年代以前はまだ賃金が安かった。そのときの勢いを使って、頭脳も使って電子立国した。80年代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だと。これからは組み立てに頼るのではなくて、もっと頭を使ってIT立国だと。
田原 それはどういう意味ですか、IT立国とは。
孫 要するにマイクロコンピュータを最大限に活用する。コンピュータの情報革命を最大限に活用して、頭を使って頭の革命で日本の競争力を取り戻すと。
田原 なんとなく分かるんだけど、もうちょっと具体的に。頭を使ってどうするの。
孫 同じものづくりでも、組立業から脱却したアップルの例があります。スティーブ・ジョブスが一回追い出されて、アップルは倒産寸前までいった。そしてジョブズが呼び戻されて倒産寸前のアップルが甦った。何をしたか? ジョブスが真っ先にやったのは、俺は組立業ではないという・・・。
田原 そういう宣言をした?
孫 宣言をして、真っ先に工場を全部売っ払った。アップルは今でも売上げの8割以上がハードの売上げなんですよ。80数%がハードの売上げというものづくりのアップルが、ものづくりの基本である工場を全部売っ払った。そしてスティーブ・ジョブスが宣言したのは、「俺は頭で勝負する、イノベーションだ」と。
つまり新しい開発、設計です。ハードの設計、ソフトの設計、デザイン、頭を作ったマーケティングでありブランディングだということで、一番付加価値の高いイノベーション、開発ですね、「そこにのみ俺は集中する。俺の社員に賃金の低い、付加価値の低い組み立てなんかさせない」と。
田原 筋肉屋さんはいらないと。
孫 頭だけで勝負するということで、筋肉労働の工場は全部売っ払って、下請けとして台湾のフォックスコンに発注したわけですね。iPodもiPhoneもマッキントッシュもみんな台湾の会社に下請けに出している。
田原 あ、台湾で作っているんですか。
孫 ただし台湾のフォックスコンはさらに賃金を安くするために、工場を中国に移して社員を80万人雇ってやっているんですね。つまり賃金がいちばん低くて使える中国の工場で、台湾の人がマネージして、そしてアップルが設計して世界中に売っていると。
田原 そういえば、遅まきながらIBMもハードの工場は中国に売っちゃいましたね。
孫 要するにものづくりといっても全然違う。組み立てに頭がいく目がいく、組み立て工場に俺の仏と魂があるなんていってる間は、経営者として失格だと。
田原 日本のほとんどの経営者は未だに組み立てだといっている。どうすればいい?
孫 頭を切り換えてもらうしかない。
田原 どう切り替える、具体的には?
孫 ある意味、負けるしかないじゃないですか。
田原 これは後でカットしてもらってもいい。例えばトヨタはどうすればいい?
孫 カットっていっても、これは生放送で流れているんです(笑)。※対談はUstで中継していました。
田原 では、自動車メーカーはどうすればいい?
孫 自動車メーカーはやっぱりアップルのように世界最強の、例えば電気自動車なんかの設計をするしかない。エコカーのようにインテリジェンスを持たせたものを設計して、組み立ては海外でやればいい。そうしたら為替も関係ない。為替を言い訳に政府に泣きつくとか、そんな恥ずかしいことをしなくてすむ。
田原 むしろ海外で作って日本へ輸出すればいい、円高を利用して。
孫 海外に工場が行くことを悲しいと捉えるか、うれしいと捉えるか。「無理矢理強制されて海外に工場を移した」と泣きながら言うか、アップルのスティーブ・ジョブスのように自らの意志で、「俺の社員に賃金の低い組み立てなんかさせないんだ、俺の社員には一人当たりの賃金をもっとダーンと上げて、一人ひとりに喜んでもらうやり甲斐のある、エキサイティングな開発だ、デザインだ。それを本業として捉えるんだ」となると、明るい自動車メーカーになれるわけですよ。
なぜアップルは儲かるのか!
田原 ものづくりものづくりと、いつまでもいっている。これはやっぱり教育に問題があると思う。そこを聞きたい。
孫 そうです。アップルは約30%の利益率、未だに組み立てに立脚している日本のメーカーは3%くらい。つまりイノベーションが、ちと足らんということです。
田原 桁が違うわけね、まったく。
孫 十倍違う。日本の復活のためには、日本人全体のなかで国民の総人事異動をしなきゃいけないと僕は思うんです。つまり組み立てに立脚する労働者を育てるための教育ではなく、あるいは農業、漁業を中心としたところを育てるためでもいいと思う。製造業に重点を置きすぎた教育ではなくて、頭の勝負をするところに教育のコンテンツをシフトしなきゃいけない。
田原 そこに日本の教育の問題がある。いまの日本の教育は頭を使っちゃダメだっていう教育です。
孫 そこが問題なんです。
田原 よく言うんですが、小学校から高校までいろんな教育は全部正解のある問題を解く。
孫 丸暗記でしょう。公式を丸暗記させる、歴史の年代を丸暗記する。僕は学生の時に歴史、大っ嫌いでしたもの。なんでイイクニつくろう鎌倉幕府、とかなんかいろいろ語呂合わせで覚えなきゃいけないんだと。
1192年ってなんだったっけと、そんなのを語呂合わせで覚えるよりは『龍馬伝』とか見たら、興奮して歴史はおもしろい。
つまり興奮と感動を覚えるような、なぜ、なにが起きたんだと、どうしてだと、それで世の中どう変わったんだと、そういう歴史の必然だとか、そういうことを学ぶともう興奮の極致ですよね。
ところが丸暗記型で、例えば1192年じゃなくて1191年と書いたらなにが悪いんだと。たった1年くらい誤差やんけと。
会場 (笑)
孫 たった1年の誤差でバツと。100年ずれてもバツ、1年間違ってもバツ。僕に言わせれば「1年違いは誤差だ。ほぼマルやんか」と。
田原 誤差を認めない、もっと言えば正解以外は全部バツなんです。
孫 それがおかしいと思うんです。教育革命の思想の革命ということで言えば、福沢諭吉だなんだで、明治5年に日本で初めて憲法で義務教育ができました。その義務教育のこころはなにかというと先程のパラダイムシフトですから、農耕社会の江戸時代に教えた教育コンテンツと、幕末を過ぎて明治維新以降の義務教育の教育コンテンツは決定的に変わったと。
田原 どこが違うの?
孫 つまり産業革命のために物理、化学、数学、英語、こういういわゆるロジックの世界、産業革命をサポートする教育コンテンツに変わった。
それまでは儒教とか漢文とか朱子学とか、なんか農耕社会の武家の人たちに教える、あるいは農業に対して教える、そういうコンテンツですから、教育コンテンツが決定的パラダイムシフトが起きた。
同じように今度は二番目の箱から三番目の箱、頭脳革命だと情報革命だと。この情報革命にあった教育コンテンツに決定的パラダイムシフトしなきゃいけない。だから教え方の道具が大切なんじゃなくて、なにを教えるかというその中身が大切だと。
『白熱教室』はなぜ受けたのか!
田原 ちょっと前にNHKの『ハーバード白熱教室』のマイケル・サンデル(ハーバード大学教授)さんが本を出してベストセラーになっている。
孫 『これからの「正義」の話をしよう』っていう本ね。
田原 あれは正解のない問題を出して、みんなが討論すると。
孫 『これからの「正義」の話をしよう』って本屋さんで見たら、『これからの「マサヨシ」の話をしよう』って、僕のことかって思った(笑)。
会場 (笑)
田原 なるほど(笑)。
孫 勘違いしてドキッとしたんですけども・・・。まさに正解のない問題を討論する。あらゆる情報を調べて検索をして——それはデータですよね——そのデータを使って知恵で考える、議論をする、討論する。まさに哲学の世界であり、問題解決、こういうとこをやっていかなきゃいけないと思うんですよ。
田原 最後は問題解決から問題提起へ。
孫 そうですそうです。その意味で、頭の革命の情報通信の世界、IT革命の世界。ところがさっき言ったように国民の総人事異動という意味では、この頭の革命の情報通信産業は日本の労働人口分配率でいくと3%しか働いてない。
田原 3%。まだみんな筋肉やっているんだ。
孫 残り97%は基本筋肉労働をやっている。ここが問題なんですよ。
田原 ちなみにアメリカとどのくらい違いますか。
孫 3%がおそらく10%は超えている。でも他の産業もITを使いまくっている。製造業でもITを使いまくっている、流通でもサービス業でもITをもっと使いまくった形で生産性を上げているということなんですね。ですから3%の労働人口分配率ではなくて、これが30%くらいにはならなきゃいけない。
日本のGDPのなかで農業と漁業が占めいている割合は2%です。その2%のGDPのために、全国民に義務教育としてタンポポの葉っぱの形とか根の形とか米の胚芽の形とか、僕が小学生の時から何回も丸暗記させられた気がするんだけど、それってGDPでは2%なんです。だけどこれから日本の頭脳革命をやっていかなきゃいけないところについてはほとんど知られていない。
田原 一番問題は、今企業のオフィスでパソコン使っていないところはないですよ。ほとんど全員使ってますよ。ところが教育の現場にないんですよ
孫 そこなんですよ。社会に出て使うものを教育の現場ではそこに力点を置いてない。そこが問題なんです。
「この問題は韓国でどう思っているのかがわかるんです」
田原 そこを聞きたい。教育の現場で例えば一人一台パソコンを使いますね、どう変わると?
孫 僕はパソコン以上にいかなきゃいけないと思っているんですよ。つまり電子教科書パッドになるべきだと思うんですけども。
田原 電子教科書っていうのは、孫さんのイメージはノートパソコンみたいなもの?
孫 違います。イメージは、僕はいまiPadを毎日使ってますけども、田原さんも使ってますよね、iPadのこういうやつが電子教科書代わりになっていると。iPadとは限りませんよ、アンドロイドパッドでもなんでもいいんですよ。要はパソコンをもっと進化させたやつ、これにいってみれば10億ページくらいの教科書が入る。
田原 いくらでも情報が入る。
孫 無限大に入る。しかもそれが「教育クラウド」に繋がっていて、世界中の教育コンテンツが入っている。
田原 たとえばこれを教育の現場に入れると、どんなことができますか。
孫 今までなら歴史だって絵が動かない。僕が大好きな幕末のことも文字でチョコチョコッと書いてある。全然感動しない、興奮しない。ところが電子教科書なら、例えば吉田松陰と書いてあってそこにアンダーラインが引いてある。
そこをタッチすると吉田松陰の写真がパッと出てきて、吉田松陰を題材にしたNHKのドラマのシーンが、吉田松陰が船に乗り込もうとして失敗して死刑になった、そのへんのくだりが動画で出てくると。そうすると生徒の注目度合いはオーと。感動とか関心が記憶にそのままボーンといきますから。
田原 言葉の問題もあるかもしれないけども、たとえば「この問題を韓国の生徒はどう思っているだろうか」と、これできますね。
孫 できますできます。電子教科書だったら当然通信で繋がっているから、韓国の子どもたちと英語で、「日本では幕末こうだったが韓国ではどうだったの? 韓国における産業革命はいつで、なぜ、誰がどうリードしたの? 中国ではどうなの? 清が外国に支配されたことは教科書ではどう習ったの?」と。こういう会話が・・・。
田原 アヘン戦争で香港がイギリスに占領された。
孫 あのことを中国の学生たちはどう受け止めているのという会話ができるんです。
会話がなくなるんじゃないですか
田原 そこがね、僕は一番難しいところで、長所はいっぱいあるんだけど自分で全部できちゃうから、逆に会話がなくなるんじゃないかという気がする。
孫 それは逆ですよ。あらゆる情報があれば、それを人と語ってみたくなる。丸暗記するくらいなら検索したほうが早いわけですから。
田原 検索が自分でできちゃうと・・・。
孫 丸暗記に使っていた頭の労力を、丸暗記の代わりにそんな程度のことは検索して、それをベースにどう思うんだという会話で・・・。
田原 そういうことが自分でできたら教師っていらなくなるんじゃないの。
孫 いやいやいや、教師はそもそもなにをするかということですけども・・・。
田原 そこが問題。
孫 教師は「じゃ、産業革命についてどう思うんだ」という言葉を語りかけて、生徒が答えたら、別の生徒に「君はどう思うんだ」と、教室の中で議論を巻き起こすコーディネータであり・・・。
田原 でも、議論を巻き起こすにはよっぽど知ってなきゃ議論できない。
孫 だから先生は賢くなきゃいけないし、先生の先生たる所以がそこにあると。だって先生は毎年6年生を教えられるわけでしょ。
田原 「でもしか教師」っているじゃないですか。教師でもやるか、教師しかないっていう。
孫 でもね、それは先生方もやっぱり自らを新しい時代に向けて、やっぱりレベルアップをしていただくべきだと思うんですよ。それは産業界だって激しい戦いを毎年、新しい開発をして、新しい技を毎年覚えていっているわけですから。
先生方だった少なくとも3年に1回くらい同じ6年生を授業で持てるとかあるわけじゃないですか。せめて2回目回ってきたときの6年生担任、3回目の6年生担任だと、そのときに常に新しい情報と武器を使ってその生徒と語り合う、まさにさっきのサンデル教授のようにディスカッションのコーディネータだと。
田原 ところがあんまりディスカッションやってる学校ないんですよ。
孫 工業社会の時の教育は丸暗記でよかったんです、かなりの部分が。つまり見様見真似で、アメリカがすでに先進国としていっぱい作っていた。それを真似して安く作る、真似して丁寧に作る、壊れなく作るという程度でいいから、真似するために暗記のほうが早いと。いろいろ逆らうよりも暗記して丁寧に作るほうが早いと。まなぶ=まねぶ、それをベースに行ったほうが近道だと、効率がいいという時代があった。
「正解至上主義」は教師の手抜き
田原 日本は長い間戦争をやっていたんで、アメリカやヨーロッパの情報が入ってこなかった。非常に遅れていた。だから戦後長い間は真似してればよかったです。
孫 そうです。真似してキャッチアップすればすんだと。明治維新の直後もそうです。真似してキャッチアップするのは日本は結構得意なんですけども、新しい議論をして新しいイノベーションするのは、むしろアメリカ人のほうが得意で。僕は16歳からアメリカに行ってるから、アメリカの学校の教育ってすごい体験していて感動したんですけども・・・。
田原 どこが違うの、日本と。
孫 だいたい大学の試験でも教科書全部持ち込みOKです。毎回どの試験を受けても分厚い教科書を持てるだけ持っていってブアーッと見ながらそれで問題を解く。
田原 でも教科書に答えがあるような問題はないでしょう?
孫 教科書に書いてある答えをそのまま書き写せばいいなんていう丸暗記の問題が、そもそもほとんどない。ここに書いてあることをベースに自分が新しい提案をする、新しい問題解決をする、知恵で出す。
田原 そんなの採点もたいへんじゃないですか。
孫 だから先生は主観を持ってガンガン点を付けるんだけども、やっぱりそこはそれで慣れてくると・・・。
田原 日本の正解主義ってのは先生がラクなんですよ。
孫 考えなくていいから。
田原 大学の試験だって答えが三つか四つ出て、その中のひとつにマルしろと。
孫 それは考えなくていいから機械的にマル付けるでしょ。機械的にマル付けるくらいならなんで電子教科書でやれないのと。それならむしろ機械にやらしたほうが、生徒に対してコラーッとか嫌味をいわなくて、生徒だっていわれる度にやる気を失って、そんなふうにならないでいいわけですよ。
反復学習はむしろ機械にやらせて、反復学習じゃなくて知恵を出させる、討論する、問題提起するというようなことを、人間が人間たる所以で人間の先生がガイドしていくというのがあるべき姿だと思いますね。
田原 出版社の連中が孫さんを非常に怖がっているんですよ。「電子教科書になったら紙の教科書がなくなっちゃうんじゃないか」と。つまり「教科書を作る出版社がなくなっちゃうんじゃないか」と。
孫 彼らも頭をシフトしなくきゃいけないと思うんですよ。つまり農耕社会から工業社会にシフトしたように、今度は工業社会から情報社会にシフトするでしょ。そのときに本来は情報社会をいちばんリードすべきインテリゲンチャが彼らなんですよね。
田原 本当はね。
孫 常に人々に情報を上から下に流す、つまりちょっとだけ知識が上の人が本来多いんですよ、マスメディアの世界にはね。
田原 三歩先とはいわないけど、少なくとも半歩先くらいは行っている。
孫 半歩くらいは賢い人が一般的には多い世界なんですよ、読んで学習して。その人たちが自分の知恵とか知識のレベルアップを放棄して印刷業に徹してどうするの。
田原 あ、印刷業ね。
孫 さっきのものづくりと同じですよ。ものづくりも組立業に付加価値があるんじゃない。イノベーションに価値がある。同じく出版社も印刷業に価値があるんじゃない。企画編集ですよ。どういう特集をするんだと、なんのテーマについて知識人を集めてきて討論させて、まさにこうして討論している状態を電子パブリッシングする。
そこにユーストリームだとか、ニコニコ動画をはり付けてる。それで電子パブリッシングすると。紙代印刷代がないから、本来500円で売っていたものが50円で売れる。それでも利益は今までより増えると、こうできるわけですよ。
田原 出版社にいる社員はどうしたらいい?
孫 頭を切り換えればいいだけですよ。先生がレベルアップしなきゃいけないように、新しい時代に向けて頭をもう一回レベルアップしなきゃいけない。そのために、出版社の人々ももう一回頭を情報革命にあわせてレベルアップする。産業界はそれを毎年やっているわけですから。
なぜこれほど光ファイバーに執着するのか!
2010.12.15(Wed)JBプレス 池田信夫
最近、テレビで奇妙なCMが放送されている。宇宙から地球に向かって隕石が飛んでくる。ソフトバンクの代理店で、商品の案内をする女性がしゃべっていると、左手が無意識に上がってしまう。客がそれを見て指摘し、商品案内の女性は「なんか変」と言う・・・。
一見、何のCMか分からないが、これはソフトバンクの「光の道」のキャンペーンである。
左手を上げるのは、「AかBか」というアンケートのB案(向かって右側)を選ぶという意味らしいが、この30秒のCMだけでは、ほとんどの人は意味が分からないだろう。
以前の記事でも紹介したように、もともと「光の道」は原口一博前総務相が提唱したものだ。当初は「全国に光ファイバーを普及する」という話だったが、特定の物理インフラを政府が推奨するのはおかしいという批判を浴びて、「全国にブロードバンドを普及する」という話に軌道修正した。
ところがソフトバンクは、文字通り光ファイバーを全国100%に敷設する「アクセス回線会社」案を発表した。
現在の電話線(銅線)をすべて強制的に撤去して光ファイバーに替えれば、銅線の保守経費が浮くので、3兆円の工事費を賄って余りある。だから、NTTを構造分離して光ファイバーを別会社にしろというのだ。
これについてはNTTの経営形態を検討する総務省の作業部会でも、賛成する意見はまったく出なかった。NTTも「銅線と光の保守費はそんなに違わないので、その差額で5兆円以上の工事費を賄うことはできない」とソフトバンク案を否定した。
私も孫社長とUstreamで対談したが、「こんなリスクの大きい計画を実行して、失敗したら誰が負担するのか。アクセス回線会社の株主は誰で、社長は誰なのか」と私が質問しても孫氏は答えず、130枚も用意してきたスライドを一方的に説明した。
孫正義氏の奇妙な執念の背景には何があるのか!
関係業界もみんな反対で、すでに自前のインフラを引いている電力業界は「ソフトバンクは自分の金を使わないでNTTのインフラにただ乗りしようとしている」と批判した。
そこでソフトバンクは10月になって、アクセス回線会社に国が40%出資し、NTTとKDDIとソフトバンクが20%ずつ出資するという新提案を出し、「これを政府もNTTも飲まなければ、当社だけでもやる」と主張した。
しかし、総務省にもNTTにも、この案に賛成する意見は皆無だった。追い詰められたソフトバンクは「光の道はAかBか」という全面広告を新聞に出し、ネット上でアンケートを取った。このA案はNTTの発表した移行計画、B案はソフトバンクの案だ。
その結果「B案を支持する意見が圧倒的だった」という集計結果を、孫社長が総務省に持参した。しかしこのアンケートは1人で何回でも押せるもので、統計的な意味はない。それも相手にされなかったため、テレビCMまで打ったわけだ。
最初から実現可能性ゼロの案に、全面広告やテレビCMなど巨額のコストをかける孫社長の執念は、不可解と言うしかない。
企業戦略としても、モバイル事業に重点を移しているソフトバンクが、NTTも加入世帯数を増やせない光ファイバーに「4.6兆円投資してもいい」という孫氏の話は、投資家の支持を得られないだろう。
この背景には、最近、ソフトバンクに「つながらない」という苦情が殺到していることがあると思われる。ソフトバンクモバイルの基地局は約4万局で、NTTドコモの半分しかない。多くのパケットを消費する「iPhone」が増えて、ネットワークが負荷に耐えられなくなっているのだ。
この負荷を電話回線に逃がすため、ソフトバンクは無線LANのモデムを「iPad」に同梱したり、「フェムトセル」と呼ばれる小型の無線局を無料で配ったりしているが、焼け石に水だ。今後5年で40倍になるとも言われる無線通信データ量を支えるには、基地局を100万局以上に増やさなければならず、採算が合わない。
このため室内の通信を無線LANなどに逃がし、家庭に引き込まれている光ファイバーをインフラに流用して基地局の負荷を減らそうというのがソフトバンクの狙いだ。
しかし、専門家は「無線局の配置は最適化が必要で、行き当たりばったりに簡易無線局をばらまいても解決にはならない」と批判する。
電波の開放を訴えたが周波数オークションには反対!
だが、ブロードバンドの普及で本当の焦点になるのは、余っている光ファイバーではなく、激増する無線通信量に対して絶対的に足りない電波の周波数だ。
この分野では、孫社長が原口総務相(当時)に「直訴」して大きく前進した。
総務省は今年の春、700/900メガヘルツ帯で国際標準と異なる「ガラパゴス周波数」の割り当てを決めた。ところが、これに対して「次世代のiPhoneなどの国際端末が使えなくなる」という批判が(私を含めて)ネット上で噴出した。
それを孫氏が原口氏にツイッターでつぶやいたところ、原口氏が割り当ての見直しを約束し、半年の再検討の結果、総務省の決めた原案がくつがえったのだ。
ところが、もう1つの課題である「周波数オークション」については、「光の道」をめぐる混乱に作業部会の大部分の時間が費やされたため、「時間切れ」を理由に導入が見送られる情勢だ。
これについて孫社長は「オークションの思想には賛成だが、一部の周波数だけを対象に実行することには弊害がある」と言う。その理由は「放送局もタクシー会社も、NTTドコモやKDDIも、すべての企業が今使っている周波数帯をいったん返上して、その上でオークションをすべきだ」というものだ。
この論理が正しいとすれば、国有地の競売も、すべての国有地を返上して行わなければならないことになる。
ソフトバンクの本音は、オークションをつぶして、総務省が「美人投票」で割り当ててくれれば、次は自分の番だという思惑だろう。そういう密室の官民談合が日本の電波政策を歪めてきたことは、孫氏が一番よく知っているのではないか。
このように孫社長の混乱した発言が、この1年、通信業界を振り回してきた。だが、これによって通信ビジネスへの関心が高まり、今までNTT支配のもとで「物言えば唇寒し」の風潮が強かった通信業界の風通しがよくなったことは大きな前進だと言える。
ソフトバンクも、今後はもう少し通信規制についての基本的な知識を身につけ、政府と対等の勝負ができるように成長してほしい。
電子教科書は日本を救うか 第1回
2010年12月08日(水)現代ビジネス 田原総一朗
田原:孫さんが最近、しきりにおっしゃってる「光の道」というのがあります。ただ一般の人には(どういう問題なのか)よく分からない。
もう一つ、90年代はビル・ゲイツの時代だったといわれています。これはいわばコンピュータ、パソコンを動かすソフトが中心でウィンドウズの時代でした。
で、今はスティーブ・ジョブスの時代だといわれる。まさに孫さんがやってらっしゃるiPhone、iPadもそうですが、これからクラウドの時代だという。
日本でいちばんクラウドの最先端にいらっしゃるのは孫さんでしょう。今日はそのへんからまずお話をお聞きしたいと思います。
孫:クラウドの時代と最近はいわわれはじめていますね。一言でいうなら、インターネットの雲の上のようなイメージです。
これまでは会社でいえば社内にサーバーがあって、それにパソコンが繋がっていた。自宅でいえば自宅にあるパソコンで、その中のソフトやデータを使ってそのまま仕事をするということでした。これが変わった。
ネットワークの上に、たとえばグーグルのサーバー群がズラッとある、ヤフーのサーバー群がズラッとある、そういうネットワークの上に全部まとめてある情報の固まり、それを世界中の人々が、まるで直接、会社の中でアクセスしているように、自宅の中でアクセスしているように、一瞬でその情報を手に入れることができる。これがクラウドコンピューティングだと思うんです。
田原:クラウドとは日本語で「雲」ですね。
孫:「雲」です。
田原:コンピュータの世界ではパソコンを100台繋ぐと、スーパーコンピュータ以上の力が出ると言われてますね。
孫:ありとあらゆる情報が入る。たとえば医療でいえば、日本国民全員の健康診断の情報、いろんな検査の情報、それがすべて格納されている大きな巨大なデータベースセンターみたいなものですね。
田原:今は別の病院に行くと、また一から診察しなきゃいけない。
孫:そうなんですね。だから、一つの大きな、例えば虎ノ門病院なら虎ノ門病院の中で検査結果は全部終了してその中にデータはあるんですけども、慶応病院に行ったらまたもう一回ゼロから検査をしなくてはいけない。
田原:今はそうなっています。
孫:これが「医療クラウド」という形でできると、日本中の病院、しかも大病院だけではなくて、小さな町のクリニックで受けた検査も、共通の一つの巨大なデータセンターにすべての病院の情報が入っている。いまは、小さな町のクリニックでは、いくら腕に自信のあるお医者さんでも、優れた機械、高い何億円もする機械がないから複雑な診断ができない。
田原:わざわざ東京に来なきゃいけない。
孫:ところがこれからは、検査なら検査ばかりする巨大な高い何億円、何十億円する検査システムがあるところで人間ドックとか受けて、その結果を町のお医者さんがクラウドから引き出して、そこでホームドクターのような形で検査結果を見ながら診断できる。
また、セカンドオピニオンで別のお医者さんに聞きたいといったら、またそっちへ行けばいい。
医療の世界一つでも、それが言える。教育の世界でもそれが言える。あるいは企業の中でも自分の取引先とのデータだとか、業界全部の情報が入っているとか。
情報を活用する力さえあれば大資本に負けない!
田原:企業でいうとどういうことができますか、クラウドになると?
孫:個人情報については伏せなくてはいけないところはいろいろありますけども、個人情報に関わらないところで、例えば自動車業界で言えば自動車業界全部のあらゆる部品がすべて入っている。どこの整備工場でいま車検のスロットが空いてますとか、整備担当者の誰々が空いてます、なんて情報が共有できる。
旅行に行くのでも、ゴールデンウィークの三日前なのに、まだ空いている部屋はどことどこだ。いままでなら、例えばヤフートラベルならヤフートラベルの中だけ閉じている。もし旅行業界全部の「旅行業界クラウド」というのができれば、楽天トラベルもヤフートラベルも、JTBもHISも、いろんな情報が全部「旅行業界クラウド」で調べることができる。例えば・・・。
田原:それはユーザーにとってはとってもいいですね。
孫:うん、そうですよ。
田原:でも、企業にとって見るとね、優劣がなくなっちゃうと商売にならないんじゃないですか。
孫:だからそれを上手に使いこなせる企業と、後ろからついて行く企業の差が出てくるとは思います。でも少なくとも今までは大資本で多くのお客さんを持っている企業だけが差別化できる、大企業であるが故のメリットだったのが・・・。
田原:大きいことがいいことだと。
孫:今まではですね。だけど今度は町の工場だとか町の中小企業でも、大企業と同じだけの情報武装ができる。同じように病院だって、大病院でも必ずしも力のある先生ばかりとは限らないわけですね、案外、大病院ほど若いお医者さんだったりするわけですよね。
田原:つまり情報も、ユーザー、患者に分かるわけだね。
孫:そうですね。
田原:例えばがんセンターならこの医者はいいと。
孫:そうそうそうそう。
田原:でもこの医者は大したことないよと。
孫:そうです。だからやっぱり「見える化」が始まるっていうことですよね。とにかく20世紀というのは、ものづくりでも大きな資本、大きな工場を持っているところが全部有利。これはまさに資本主義の世界ですけども。
田原:今でもまだ残ってますね。
孫:でもこれからは資本があるところが強いというより、情報を上手に活用できる人々が強い。情報の民主化みたいなものができて、従って中小企業でも、あるいは個人のお医者さんでも優れた能力さえあれば、あるいは情報を活用する力があれば、大資本と互角に戦える時代が来たということだと思いますね。
国際競争力が1位から27位まで転落!
田原:この間、台湾のある経営者と話をしたら、中国はもう大マーケットになっていろいろなものが売れてるんだけど、その中でも、たとえばある機械でも何でもいいですが、中を見て『Made in Japan』という部品がいっぱい入っていると信用があるんだそうですよ。ところが大事なことは日本の部品屋さんは海外へ行けない。台湾のその経営者は、日本の部品屋を会社ごと買おうかと言っていた。こういう話がある。
孫:うん、そうですね。一つひとつを作る能力、真面目にしっかりとした壊れないものを作るのは日本の企業はいまだにすごい。ですけれども、それをもって世界に打って出るという攻めの部分がだいぶ弱まりましたね。
田原:そこなんですよ。よく言われているのは「日本は技術は高い、しかし商売がやたらにヘタだ」と。
孫:そうですね。そういう意味で今日は学校の現場の先生方もいっぱい来ていただいた(twitter呼びかけて教育関係者約150人を募集した)。
教育に関わることなんで・・・。実は今日、田原さんにお見せしたくて、資料を用意したんです。それを先に説明させていただいて。
田原:どうぞ、お願いします。
孫:そこに『IT教育が日本の未来を変える』という、ちょっと大上段に構えたやつを用意しました。僕は一つひとつの電子教科書がどういう機能があるとかないとかそういう話よりは、なぜIT教育が必要なのかという思想の面から今日は資料準備しました。
田原:そこを是非聞きたい。
孫:まずこのページです。いまの日本のいちばんの問題は、国際競争力がほんのこの20年間で、1992年っていったらついこの間・・・。
田原:1位だった。いまは27番目になっちゃった。
孫:1位だったのが、もう先進国の中で27位ですよ。これはもうどうしようもない状況です。すでに「失われた20年」っていうのがあるわけですけども、ここからまた「失われた20年」を日本は迎えそうだと。そうすると失われた40年、50年になる。日本は二度と立ち上がれない。
田原:決定的落ちこぼれになっちゃうでしょうね。
孫:もう劣等国になる。国全体がまとめて世界から落ちこぼれてしまうという状況ですね。これがGDPですが(下図参照)、ご存じのようにいまから30年、40年したら、世界で8位になる。7位がインドネシアですから。
田原:いまは3位ですね。
東大でマルクス経済学を学ぶのはイヤだった!
孫:今年中国に抜かれて3位。つい今年の頭までは2位だったわけですから。2位という状態が何十年か続いていたわけですね、日本は。ついに何十年ぶりに日本は2位から転落したと。ここからさらに転落の度合いが早まっていって、いま日本がODAで助けてあげている国から見下ろされるようになる。
インドネシアにも抜かれる。ロシア、メキシコ、ブラジル、みんな抜かれるという恐ろしい状況がいまやってきそうだということが、ほぼ見えている。
田原:ええ。
孫:そもそもなんでこんなになったんだということです。私が見てるのは、日本は農耕社会だったと、それが幕末、明治維新で工業社会になったと。
田原:ヨーロッパの機械が、工業が入ってきた。
孫:黒船が来て。僕は16歳からアメリカに行ったんですけど、アメリカの高校卒業検定試験というのを受けたんですね。日本では高校1年の3ヶ月しか行ってないから。
田原:脱線しますがそこを聞きたい。なんで日本で高校をまともに行かなくて・・・。普通は高校を卒業してアメリカに行くのは多いんだけども、なんで行っちゃったの?
孫:僕は結構先のことを考えるんですよ。
高校1年生のときに、一応このまま行けば、真面目に勉強して大学受験が3年後にあるなと。3年後にどこの大学に行きたいかと、自分で自分に問うたら、一応やっぱり東大を目指そうかと。ただ、東大で何学部に行くんだと。経済学部だと。そのときは東大の経済学部で何を教えてるかというとマルクス経済です。
田原:そう、マルクスですね。
孫:「ちょっと待てよ」と。「なんでこの資本主義の日本で・・・」(笑)。
田原:しかもうまくいっている日本で。
孫:そう。「なんで共産主義のマルクス経済を勉強しなきゃいけないんだ」と。かといって、僕なりには東大に行きたいという気持ちがあって、マルクス経済が嫌だからといって他の大学に行きたいという気も当時はなかったわけ。そしたらもう日本の外に出るしか・・・。
田原:他の大学もマルクスですよ。僕は早稲田ですけど、やっぱりマルクスやってましたから。
孫:それは僕に言わせれば、当時の大学の教授を選ぶシステムが間違っている。先輩の教授たちが後輩の教授を決める。で、先輩の教授達がマルクスで習ったから自分の後輩もマルクス経済のやつを教授にしようという、なんか連綿と続いたやつがあった。これ自体がもうおかしいなと僕は思ったんです。そこである意味、マルクス経済に押し込められるのが嫌だった。
もう一つは『龍馬が行く』を読んで坂本龍馬に憧れて、あんなふうに命懸けて日本を変えたいと思った。彼はアメリカ、ヨーロッパ、海外を見たいと思ったが、でも暗殺されて果たせなかった。じゃ、私は行ってみようかということで行ったんです。
田原:なるほど。
日本の教科書が教えない「南北戦争」
孫:ちょっと脱線しましたけども、アメリカで僕は3週間だけ高校に行って、1年生、2年生、3年生を2週間で、3カ年分飛び級したんです。
田原:アメリカはそんなことできるんですか。
孫:一応、校長先生に直談判して。最初1年生に入って1週間で2年生に変えてくださいと。3日で2年生はいいから3年生に変えてくれ。で、また3日で3年生はいいから、大学行くから卒業させてくれと。それで卒業検定試験を受けたんです。そのときの試験に出てきた内容が大事で・・・。
田原:何ですか。
孫:「シビルウォー(the Civil War)はだいたい何年頃だったか?」で、ABCと選択があって。答えは「1860年代」ですが、シビルウォーって日本ではそういう単語を聞いたことがなかったんです。
田原:ないですね。
孫:ね、日本の教科書では。考えてみたら日本の学校の教科書でいう「南北戦争」。
田原:あ、アメリカの南北戦争。
孫:南と北が戦いましたね。日本の教科書では・・・。
田原:奴隷制のある南と奴隷制に反対する北が戦った。
孫:そう。しかも日本では奴隷制度があるかないか、黒人差別をするかしないかが南北戦争だとずっと教わってきたけども、アメリカでは奴隷を解放するかしないかの戦争ではなくて、シビルウォーなんですね。
田原:どういうこと? シビルウォーって。
孫:つまり農業社会の枠組みの国家から工業社会の枠組みの国家にパラダイムシフトすると。
田原:そういうことなんですか。
孫:これがシビライゼーション、つまり文明開化。農耕社会から工業社会に切り替わるシビライゼーション、文明国家に変えると。従って国家の憲法、規制、教育、全部を切り替えると。
農耕社会でよしとした制度で---つまり農耕社会では人手、安い労働者が必要だ。綿を摘むため、麦を植えるための安い労働力を手にするためにアフリカから連れてきて奴隷として使うという、低賃金労働者をいかに集めるかということを南部でやっていた。
でも北部の方はそうじゃないんだ、工業化社会だと産業革命だと進んでいた。農業を中心としたところに立脚したものではなくて・・・。
田原:頭を使わない労働力はいらない。
孫:そう。頭を使って機械を使って、産業革命が起きた。電気だ、自動車だとね。そういう産業革命に向かうための枠組みが必要だった。従って手作業の労働賃金を安くするための枠組みが重要じゃない。
田原:枠が変わると。
孫:ということがシビルウォーだということを、検定試験の会場で試験の問題を見て試験の最中に僕は初めて認識した。
明治維新の本当の意味とは
田原:今日いらしている多くの方も、南北戦争って奴隷か奴隷じゃないかの戦争だと思ってますよ。
孫:そうそう、日本の学校の教科書ではその程度しか教えてない。でもことの本質は農耕社会から工業社会に変わるという決定的なこと。で、同じ1860年代に明治維新が起きた。明治維新とはなんぞやと。一言でいうとシビルウォーなんです。
田原:ペリーがやって来て、やっと工業っていうのがあると。日本は櫓で、風で船が動いていた。
孫:だから幕末の明治維新というのは最初尊皇攘夷からきて、思想の世界だっていう。しかし、本当の枠組みは農耕社会、つまり農民の上に、マネジメントとしてある意味搾取しているマネージしている武士階級があるという農業に立脚した国家から、工業に立脚した国家に変わるというパラダイムシフトなんですね。アメリカのシビルウォーつまり南北戦争も、日本の幕末の明治維新も実はまったく同じテーマ・・・。
田原:シビルウォーだと。
孫:シビルウォーであり、しかもまったく同じ1860年代に起きた。シビライゼーションをもとに蒸気汽船で世界各国に工業製品を売りに行くと、工業に立脚した船で。だから僕は、人類の20万年の歴史の中で一番大きなパラダイムシフトが、農耕社会から工業社会へのパラダイムシフトだと思っているんですね。
今まさにわれわれが直面しているのは---一つ目の箱が農耕社会という箱、二つ目の箱が工業社会という箱、今度は三つ目の箱として情報社会がやってくる---この情報社会という新しい社会の枠組みで、ここに乗り移れるか乗り移れないか、この思想の戦いだと僕は捉えています。
情報社会とは何か?
田原:そこを一番聞きたい。情報社会という言葉はもう山ほどある。ところが情報社会と工業社会はどこが違うのかということ。ここを明確に言う人はいない。
孫:一言でいうと、工業社会は人間の体でいえば筋肉を延長させるものを作っていったということ。
田原:機械だからね。
孫:それは足を延長させる。速く走る車。手の筋肉を延長させるということで、ベルトコンベアとかオートメーション。目を延長させるとテレビ、耳を延長させてラジオ。つまり人間の体でいえば筋肉を延長させるのが工業革命です。
で、人間の体で言えば頭を延長させるのが情報革命です。人間の体で何が一番大切か。やっぱり筋肉よりはね・・・。筋肉は義手とか義足が付けられます。でも頭を変えちゃったら別人になっちゃいます。
心臓ですら、いまはペースメーカーや人工心臓も作れる。ということですから、人間の体の中でいちばん大切な、いちばん付加価値の大きい部分といったら頭でしょう。頭をサポートするのが骨であり手足だということだと思うんです。筋肉の革命が産業革命、頭脳の革命が情報革命、情報社会ということだと思いますね。
田原:農業から工業に変わったきっかけが蒸気機関だと言われてるんだけど、工業から情報に変わるきっかけは何ですか。
孫:マイクロコンピュータです。これ以外ないです。要するにマイクロコンピュータで、それが心臓部として計算をし、そして記憶を司るメモリチップに記憶させて、口とか目とか耳に相当するコミュニケーションということで通信。
情報革命の三大キーテクノロジーといえば、マイクロコンピュータのCPUと記憶のメモリチップと伝達をする通信。この三つの要素で、これが過去30年間で百万倍になったわけです。
田原:百万倍。
孫:百万倍の進化を遂げたんです。次の30年間でもう一回百万倍の進化を遂げるんです。
田原:30年ということは、孫さんがアメリカにいらしてから今までに百万倍。
孫:そうです。僕がソフトバンクを始めてちょうど今年30周年。この30年間で百万倍になったということですね。
筋肉革命から頭脳革命へ!
田原:孫さんはなんでコンピュータに目を付けたんですか。あるいはソフトですね。前にお話ししたとき、なんか写真を見たとか。
孫:はい。
田原:指の上になんか載っていたと。
孫:マイクロコンピュータのチップの拡大写真をサイエンスマガジンで見たんですね。これなんの写真だろうと思ったんです。未来都市のような地図のような。で、次のページをめくったら、指の上のこのチップが載っていて、これがマイクロコンピュータだと生まれて初めて知ったんです。
田原:で、たぶん同じ写真を、あるいは同じものを見たであろう、ビル・ゲイツがいると、スティーブ・ジョブスがいると。
孫:そうです、そうです。サン・マイクロシステムズのスコット・マクネリであり、彼とサン・マイクロを一緒に始めたエリック・シュミット。シュミットがグーグルのいまのCEOですね。実はみんな同じ歳なんです。
田原:同じ年、ほう。
孫:全員。ビル・ゲイツも、スコット・マクネリも、スティーブ・ジョブスも、エリック・シュミットも。日本でいえばアスキーの西和彦さん。全員同じ歳なんです。で、実は僕は二つだけ若いんですけど、僕は2年早く大学に入った、飛び級で。
田原:アメリカに行ったから飛び級で。
孫:僕が大学1年生の時に、彼ら全員大学1年生。同じ大学1年生の時に、みんなマイクロコンピュータを見て衝撃を受けて。つまりわれわれの世代にとっての黒船を見た。
田原:それがつまり情報社会の第一世代なんだ。
孫:全員同じ年。つまり龍馬とか、勝海舟、高杉晋作とか、みんな黒船を見て衝撃を受けたわけですね。あの人たちが黒船を見てガーンと衝撃を受けたように、われわれはマイクロコンピュータのチップを見てガーンと衝撃を受けて、僕は涙を流した。
田原:そして情報社会に入ってきた。
孫:そうです。筋肉革命から頭脳革命つまり情報革命です。この情報化社会を迎えるに当たって、さて日本はどうするんだと。このパラダイムシフトをどう迎えるかで、日本がこれから50年100年、世界の落ちこぼれになるのか、それとももう一度競争力を取り戻せるのか、大きな分かれ目です。ところが、これは話をしても分からん人がいるわけですよ
以降 vol.2へ。
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