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オバマ大統領が韓国教師を称賛!
2011年2月9日(水)日経ビジネス 趙章恩
オバマ米大統領が1月25日、一般教書演説で、韓国の教育とインターネット環境の優秀性を称賛する内容の発言をしたことが日韓で大きく取り上げられた。
オバマ大統領は米国の政府予算緊縮に関して、他の支出は減らしても未来のために教育、ブロードバンドインターネット、高速鉄道、エコなエネルギーといった核心分野の支出は伸ばさないといけない、数学と科学の教師を10万人増やす、といった話をしながら韓国と中国を事例として登場させた。
「子供の成功に対して、両親の次に影響を与える存在が教師である。韓国では教師が国家の建設者(nation builders)とされている」、「米国も子どもを教育する人たちに対し、尊敬の心を持たなければならない」、「韓国家庭のインターネット接続は米より優れている」などなど、韓国の教師とネットインフラを称賛した。
日本では、「KOREA」という言葉は7回も登場したのに日本については何も言及しなかったと、わざわざ指摘した新聞もあった。一般市民からすれば何の意味もない比較である。米国に褒められることがそんなにうれしいのだろうか? それに韓国の小中高校の教育は大学入試がすべてある。どういう過程を経たかに関係なく、結果として名門大学に何人入学させたかで学校の評価が決まってしまう。韓国の教育制度は問題だらけだというのに、オバマ大統領に褒められてしまうと、なんだか後ろめたい。
教育科学技術部長も、オバマ発言にためらい!
この演説があった数日後、韓国では、教育科学技術部(韓国の文科省)が「学校教科課程先進化エキスポ」を開催した。主なプログラムは、1)子供の学習負担を軽減しつつ学習効率を高めるために、子供一人ひとりに合わせた教育を行ったモデル学校の授業事例発表、2)教育フォーラム、3)国際セミナー、4)大学入試政策セミナーなど。教師、学生、保護者が参加した。
このエキスポでオバマ大統領の演説が話題になった。エキスポの開会式に出席した教育科学技術部の長官は、「韓国の経済成長を海外では教育の力であると解釈しているようだ。私教育に奪われた学校の影響力を早く取り戻せるよう努力したい」、「米大統領が見習おうと言った韓国の教師をどうすればうまく生かしていけるか、一緒に悩みましょう」とコメントした。教師も教育も韓国内では叩かれてばかりなのに米に褒められて、困ってしまった、といった雰囲気だった。
「私教育」の負担が重く出産をあきらめる家庭も!
長官がコメントした「私教育」とは、塾やEラーニング、家庭教師といった民間企業による教育のことである。以下の理由から、学校の授業よりも塾の授業を大事にする風土が生まれてしまった。名門大学に入るためには早期教育、英才教育が必要。学校教育は全員に合わせているから自分の子供にとってはレベルが低すぎる。
日本でもたびたび紹介されているように、韓国では収入の8割ほどを教育費、つまり私教育に注ぎ込む。子供のためにオールインした結果、自分の老後対策を全く取れることができず、子供に依存するしかない構造となっている。ここまでやったのに子供が名門大学に入れず就職もできなかったら、一家が都市貧民になるのは時間の問題である。
韓国教育開発院が、全国2527世帯を対象に2010年に実施した調査によると、3歳以上の子供の私教育参加率は99.8%であった。74.3%私教育費に負担を感じていて、42%私教育費のために生活費を切り詰めていると答えた。さらに、42.7%は私教育費が負担で出産をあきらめたことがあると答えている。「私教育費負担が出産率低下の主犯である」という項目に95.8%が「イエス」と答えている。私教育費が負担で子供を産まなくなる国が他にもあるだろうか。それでも65%は、経済的余裕があれば私教育費支出を増やしたいとしている。
子供の代わりに親が塾で勉強!
私教育は学校教育の信頼性、教権が地に落ちたことの象徴として大変な問題になった。李明博大統領は就任当時、学校教育をしっかりさせて私教育費を軽減させる、塾に行かなくても良い大学に入れるようにすると公約した。実際に、無料で利用できるインターネット教育放送や放課後学校(放課後、科目ごとに専門講師を呼んだり、教室のIPテレビを使ってEラーニングで授業を受けられるもの)を実施している。塾のない地方に住んでいても、高い参考書が買えなくても、豊富な参考資料を使って勉強できるデジタル教科書の導入なども、着々と進めている。いずれも学校教育を立て直すためのプランだ。
2009年に行われた国政満足度調査では、最も満足度が高いのは経済で57%、最も低いのが教育で44%であった。ただし、李大統領が導入した教員能力評価制度、放課後学校実施、就職後学資金返済などの政策については満足度が高かった。
それでも「自分の子供にはもっと良い教育を」、「よりレベルの高い教育を」と目指す保護者は後を絶たない。留学を含め、私教育費の負担はあまり変化がない。どれぐらい熱心かというと、お母さんたちも子供と分担して塾に通う。子供が国語の塾に行っている間、お母さんは数学の塾に行って授業を聞き、その内容を家で子供に教える。こうしたことは当たり前すぎて話題にもならない。
まだ30代だというのに、同窓会で自分の話ではなく、自分の子供がどれだけ優秀なのかと何時間もしゃべりまくる人が多くてびっくりしてしまう。「子供は親の戦利品」という考え方がいまだに根強く残っている。
韓国ではどの地方に行っても、国立ソウル大学への進学率が高い塾の周辺マンションがもっとも値段が高い。交通とか景観とか関係なく、教育環境が不動産価格を左右する。
筆者の家族、親戚はほとんどが現役教師または定年退職した教師である。お正月連休の間、よく話題になったのはやっぱり今回のオバマ大統領の演説であった。「海外から見たらそうかもしれない」というのが共通した意見だった。
韓国では大学入試で合格することが子供たちのゴールになっているので、大学に入学したとたんに目標を失う子供が多い。何をしたいのか、どんな人になりたいのか、自分の人生を考える暇もなく、すぐ就職競争が始まる。多くの韓国人は、米のように自由にのびのびとした環境、大学では好きな研究ができるようしっかりバックアップしてくれる制度をうらやましく思っている。米国が心配しているのは基礎学力低下であるから、韓国のように成績の良い子供が多く、全般的にある程度の教育水準を保つ国が優秀に見えるかもしれない。
先生は、やはり先生!
教師の質の面でも、韓国の方が優秀に見えるだろう。どんなに私教育が盛んだとはいえ、儒教の考えが残っているから、塾でも学校でも「先生様」の言うことは従う。昔から「君師父一體」といって、王様と先生と父の恩は一緒、と教えられてきた。先生の影も踏んではならないとされている。
今はそうでもないかもしれないが、韓国人の多くは「思い出の恩師」が1人ぐらいはいる。この前も知人が長年勤めたIT業界を引退して飲食店を開くというので開店祝いに行ったら、大雪の中4時間もかけてやってきたというおじいさんがいた。知人の小学校時代の恩師だという。「教え子の人生第2幕を祝ってやりたくて来た」という恩師の激励にもらい泣きしてしまった。
韓国でも、教師に暴力を振るったり、自分の子供にかまってくれないと学校で騒いだりするモンスターペアレントが問題となっている。だが、まだまだ大多数の保護者は自分の子供を教える先生に「先生様」として接し、先生の言うことは絶対と信じている。
ソウル市の教員試験の平均倍率は52.9倍、中には140倍も!
韓国では医師、弁護士、検事、判事など韓国語で「サ」の発音で終わる職業が一番とされてきた。最近はその中の一つが「教師」となっている。給料は少なくても、定年までリストラされることのない教師になりたがる人が増えているからだ。
教師の採用試験の倍率も年々高くなっている。教育庁のデータを見ると、2010年10月に行われた2011年度中高校教師採用試験の倍率はソウル市の平均が52.9倍。科目によっては140倍なんていう場合も珍しくない。小学校教師の採用試験はもっと倍率が高くなる。少子化で子供の数が減っているから教師採用の人数も減り、倍率は毎年高くなるばかりである。競争が激しいから、優秀な人が教師になる。
韓国の教師はITリテラシーも高く、教師の校務はすべてITを基盤になっている。日本ではパソコンが使えない教師がいるので情報化できない、なんて聞くが、韓国では職業に関係なくインターネットとパソコンが使えるのは当たり前、という前提で学校や教室の情報化を進めてきた。もちろん、定年退職に近い年配の教師は若い教師ほど使いこなせないが、研修を重ね、教え合うことで乗り越えている。
熱心に研究に励む若手教師!
20~30代の教師は研究熱心でもある。動画や画像を盛り込んだパワーポイント教材を作成して電子黒板で授業をしたり、より良い授業を行うため有名な予備校講師の授業を参観したり、Eラーニングではどんな風に教えるのか体験したり…。教師の教育研修は義務となっていて、毎年夏休みと冬休みは「教材研究」という研修を受けないといけない。
リストラがないからと安心してはいられない。2010年から実施された教員能力評価制度によって、学生、保護者、同僚教師が参加する評価があるからだ。教員評価の結果は外に公表されることはない。それでも評価されるという負担からか、教師の授業準備や保護者に対する態度も、さらに気をつけるようになったという話をよく聞く。
教職にあるうちの姉はよくこう言う。「医師や弁護士は、社会的地位は高いかもしれないが、病人や犯罪者に囲まれた職場。それに比べて、これからの時代を担っていく子供たちといつも一緒にいられる教師は最高ではないか」。こうした「教師」という職業に対する誇りが、「尊敬される教師」につながっているのかもしれない。
大学入試に合格することだけが目標となり、問題の多い韓国であるが、オバマ大統領の発言をきっかけに教育のあるべき姿を振り返ることができた。これからは、世界において、本当に優秀な事例になれるよう変化していきたいものだ。
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