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マツダ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%84%E3%83%80
常識破りの低圧縮比「14」はなぜ実現できたのか!
2010.11.02(Tue)JBプレス 両角岳彦
10月20日、マツダが「次世代技術説明会」を開催し、その取材結果を反映したニュースが20日夕方頃から新聞、テレビなどにチラホラと現れた。
けれども、いずれも「マツダがガソリンエンジンだけでハイブリッドと同等の燃費、リッター30キロメートルを達成したコンパクトカーを来春発売」というだけのものでしかなかった。
残念ながら、新聞やテレビの多くの記者諸氏、アナリストの皆さんには、ほとんどがチンプンカンプンな話だったに違いない。本来なら、この説明会の翌日、マツダの株価が跳ね上がっても不思議ではないほどの重要な「鍵」がいくつも提示されていたのだが・・・。
マツダの人々が何とか「分かりやすく」しようと苦労を重ねた2時間あまりの説明と、現物の展示を見聞きした中で、彼らが理解したのは「ハイブリッドじゃなくてもリッター30キロメートル」だけだった、ということだ。
電気自動車、ハイブリッドだけが「明日の技術」なのではない
ここでも以前から何度か書いてきているように「電動化」だけが自動車とその社会の手にする、あるいは手にすべき「明日の技術」ではないし、それだけで日本の自動車産業が「世界に対するアドバンテージを保つことができる」わけでもない。
逆に「エネルギーと動力源の多様化」に向かうこれからの時代、狭い一分野だけが「明日」だと思い込むことは、日本の自動車と産業が世界の潮流の一隅に押しやられる状況を生みかねない。技術立国・日本の明日をミスリードしないためにも、大新聞やテレビ、経済界の人々に幅広くその認識が浸透することが望まれるのだが、それはまだまだ難しいようである。
しばらく前、NHKの夜のニュース番組で司会者が自動車メーカー首脳に向かって「今どき内燃機関ですかぁ。遅れてますねぇ」などと放言し、しかもその首脳(技術系ではない)も「そうですねぇ。まずはハイブリッドで」などと迎合し、ちゃんと説き聞かせることができないまま番組は進んでしまった。こうしたあれこれを見るにつけ、日本の危機はむしろ深まる一方なのかもしれない、と感じてしまうのである。
少し専門的なところまで踏み込む話になるが、ここで一度、今回のマツダの「次世代技術説明会」の内容を紹介しておくことにしよう。
その基本的な考え方は、実は2009年6月にマツダが「環境技術説明会」を行った時にすでに説明されている。この時も某経済紙が「マツダもハイブリッドへ」と、まったくトンチンカンな内容を1面に掲載して、マツダの人々も失笑するしかない、という事態が演じられた。それもあって今回、マツダのプレゼンテーターは「ハイブリッドでなくても・・・」と記事にしやすいフレーズを説明の中に入れ、記者の何人かが反応した、ということでもある。
世界の流れと一致するマツダのシナリオ!
マツダが描く基本シナリオに話を戻す。それは世界の自動車産業界、技術界の主たる組織、人々が考え、動いている方向と一致するものだ。
すなわち、「自動車を走らせる原動機の『電動化』はもちろん必要であり、1つの方向性ではあるけれども、それで全ての自動車を置換できるわけではない」
「今後10年(かそれ以上)を俯瞰してみても、純電気動力(電池と電動モーター)で走るクルマが実用品として市場に受け入れられるのは、特定の使用状況に対応した場だけであり、市場シェアとしては1%程度か、日本のような特殊な市場でも1桁台にとどまる(とどまらないと別の様々な歪みが生まれる)」
「もちろん電気を使って走り、運動エネルギーを電気で(発電して)回収する手法は、様々に導入されて、燃費の改善は進む。だが、それらの主たる動力源はこれまでどおり『内燃機関』であり続ける。ハイブリッド動力といえども、もちろん、まず内燃機関があって、それを電動システムが補助する仕掛けなのであって、内燃機関の大幅な進化が今求められている」
極めて妥当で、そして「健全な」思考である。
その論理的必然として導き出されたのが「ガソリンエンジンの燃費20%以上向上」「ディーゼルエンジンの進化とコストダウン」である。
そして、そこで得られた動力を車両に伝える駆動機構の改良、および、これまで以上の強靱さ、特に衝突安全能力を実現した上での車体骨格の大幅な軽量化。さらに自動車の本質である「走り」の資質を高めつつ、やはり軽く作れる足回り。
これらの技術開発を同時進行させることで、二十数%の燃費改善を達成しつつ、自動車として求められる他の機能、資質も高めようというのである。
このアプローチだと、内燃機関を含めた基本技術を全ての機種に展開してゆくことで、製品全体の燃費を、すなわちCO2排出量を2割以上減らすことができる。もちろん資源やコストの負荷を増やすことなく、である。
しかし、同じことを全て電気自動車(EV)に頼るとすれば、発電のためのエネルギーをどこから得るかを全て無視して、市場の2割以上を純EVにする以外にない。また、ハイブリッド動力だけに頼るとすれば、市場の半分かそれ以上をハイブリッド車にする必要がある。ただし、この論議はいわゆる「モード試験」の受験結果に頼ったものでしかなく、現実の社会で燃料消費が確実に減るかどうかは不確定なものでしかない。
もろちんEVもハイブリッド車も、前回のこのコラムで検討したレアアース問題を含めて、資源やエネルギーの調達を含めた新たな困難が数多く存在し、それを越えてゆかない限り、世界には通用しない。日本というガラパゴス化した市場でも、この先は相当によく考えて取り組まないといけない状況にある。
全ての土台となる根幹技術のリニューアルに取り組むマツダ!
こうした健全な論理に基づくマツダの「次世代技術」について、私なりにそのレベルを判定すると次のようになる。
まず「ディーゼルエンジン」は世界の実用技術先端に到達。
ガソリンエンジン」は世界の趨勢に、技術としてはほぼ肩を並べた。
駆動機構、つまり「トランスミッション」(いわゆるオートマチックトランスミッションとマニュアルトランスミッションの両方)と「車体骨格」は、先行する欧州勢の現状に何とか追いついた、というレベル。細部設計の緻密さ、実車への適合と応用、さらに次のステージに向けての開発、本当の意味での「次世代」への取り組みなどは、ライバルたちが間違いなく先行している。
そして「足回り」については既存品の小改良であって、欧州現行普及品と同等。私としては弱点も目につき、「日本車の中の横比較においては一歩前進」に止まる。
付け加えるならマツダの弱点は、こうした要素技術を現実のクルマの資質としてまとめ上げるプロセス全体の知見やノウハウが「浅い」ことである。そうした知的作業の集合体である現実の製品を、世界最良のレベルにまとめ上げることができるかというと、まだまだ「不安なし」とは言えない。
例えば、モード燃費(お受験)と並行して、リアルワールドでの燃料消費をどう削減するか、そのためにはまず「人間」がクルマをどう操るのか、という部分を掘り下げるのは、今、日本の自動車メーカーと日本の自動車技術界全体が極めて不得手にしている領域である。
マツダもその例外ではない。一部メーカーのように、「燃費といえばリアルワールドではなくお受験燃費のこと」というほどに偏った思考に陥っていないのはいいけれども、ならばどうするか、という部分の思考と知見はかなり浅く、机上論にとどまる。
もちろん実車に触れてみないとその結果は確かめられない。けれども、今回の発表の中でも言葉の端々に、これまでの現実の理解が足りないマツダ流が表れていた。でも、そこを掘り下げるのは、頭を切り換えるだけでよく、全ての土台となる根幹技術を作り直したことの価値が下がるわけではない。
だから、記者やアナリストたちがマツダの「次世代技術説明会」の大筋だけでも読み解けていたならば、翌日、ただちに株価が跳ね上がるぐらいの話だった、と私は思う。
内燃機関の効率改善のカギは「圧縮比」!
特に「内燃機関」に関しては、これまでの常識をそのまま鵜呑みにして部分的改良を積み重ねるアプローチを採らなかったことがエラい。
燃料を空気と混ぜて燃やし、そのエネルギー(熱とともに一気に高まるガスの圧力)でピストンを押し下げ、クランクを回転させて「力」として取り出す。その原理原則に戻って、「今、無駄なことをしているのはどこか」「それを本来あるべき形にするにはどうすればいいか」を考えた。
このアプローチだと、「それは無理だよ」という壁が、それも「常識の壁」が様々に現れるのだが、「影響を与える因子」の一つひとつについて見直し、考える、というプロセスを踏んで、殻を破る方向へと踏み出した。
その取り組みが最も良い形で現れているのが、先ほど「世界の実用技術先端に到達」と書いたディーゼルエンジンなのである。
その鍵を握るポイントの1つは「圧縮比」。
これまでのディーゼルエンジンは圧縮比が「20」前後だった。これに対してマツダの新ディーゼルエンジンは「14」という低い圧縮比で設計されている。
ピストンが一番下まで下がった状態(下死点)から一気に上昇してクランク運動の頂点(上死点)に至る。この瞬間、ピストンが一番下まで下がっていた圧縮開始時の何分の1まで空間が縮まったか、これを圧縮比という。
ディーゼルエンジンはこの圧縮比の数値が大きい。なぜか。気体を圧縮すると温度が上がる。ギュッと押し縮めて体積が小さくなり、温度が上がった空気の中に、さらに高い圧力で燃料を噴き込む。すると微細な液滴がみるみる気化し、それを取り巻く周囲の高温によって着火して燃える。「圧縮着火・拡散燃焼」という原理である。
つまり、ピストンが最上位置まで一気に空気を圧縮したところで十分な温度になっていないと「火がつきにくい」。だから圧縮比は高くしておく。これが常識。
しかし、もっと細かく状況を分析すると、着火から燃焼のプロセスを安定させるために圧縮比を高めて、空気の温度を高める必要に迫られるのは、エンジン全体がまだ冷えている状態だけ。特に最近は、「コモンレール方」式という、高圧にした燃料を、どんなタイミングで、どれだけ噴射するかを精密機械系と電子制御で細かく制御するシステムが実用化されたことが、ディーゼルエンジンの急速かつ大幅な進化を引き出している。
その結果、エンジンの中がまだ暖まりきっていない状態でも、うまく気化するような燃料の微粒化もできるようになった。始動から暖機の間、燃焼を安定させるための熱源に使うグロープラグという発熱体の能力や信頼性も今はずいぶん良くなっている。
さらにマツダの開発者は、この暖機の間、燃焼を終わって吐き出される熱いガスを、次に空気を吸い込む瞬間にちょっと逆流させて、シリンダー内の空気の温度を高める「技」も加えた。
吸気行程の中で、本来なら閉じている排気バルブを一瞬リフトさせるので「排気2段カム」という。もちろん通常運転に入ったら、このカムの動きが伝わらないようにバルブ駆動メカニズムを切り換える。
そうした技術を組み合わせて始動直後もちゃんと火がつくのであれば、無理して圧縮比を高くする必要はない、というわけだ。
圧縮比が高いと、当然、燃焼室の容積は小さくなる。この狭い空間の中に燃料を噴き込んで一気に燃やすと、急激に温度と圧力が上がる。それに耐え得るようにエンジンも頑丈に作らなければいけなくなる。
さらに、高温と高圧が重なった中で、空気中の窒素と酸素が化学結合してできるのが「窒素酸化物(NOx)」。ディーゼルエンジンが排出する大気汚染物質とされるのはほかに一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)、そして粒子状物質(パーティキュレート・マター=PM)があるが、その中でも無害化、つまり化学結合を切り離すことが難しいのが、このNOx。
他の物質は酸素と反応させて(酸化)、無害化することができる。つまり酸化触媒やパーティキュレートフィルターで処理できる。圧縮比を下げれば、そのNOxの生成も抑制できる。もちろん、現実はそんなに簡単ではないのだが。
圧縮比を下げてもなぜ熱効率が高くなるのか!
そしてもう1つ、ディーゼルエンジンの燃費が良くなる理由、別の見方をすれば「熱効率が高くなる」理由の1つは、ぐっと小さく押し縮めたところからたくさん膨張させて、その間ずっとピストンからクランクへとガスの圧力を伝えて回すことにある。
つまり、「圧縮比が高いと熱効率は上がる」。これが常識とされてきた
しかし、少しよく考えると、「燃焼」→「圧力発生」→「ピストンを押し下げる」というプロセス(膨張行程)で燃焼のエネルギーをどれだけ取り出せるか、が問題なのである。その前の圧縮行程でどれだけ押し縮めるか、ではなく、膨張行程をどれだけ長く取るかが問題なのだ。これを「膨張比」という。機械的に見れば「圧縮比」=「膨張比」なので「圧縮比が高い方がよい」となるだけだ。
最近は、ディーゼルエンジンにとって排気浄化が大命題であり、特に燃焼の中でNOxが生成するのを抑えなければいけないので、力をぐっと出したいところで燃料を噴き込み、燃焼させるタイミングを遅らせるのが定石。
ということは、燃料が燃えている時にピストンは上死点からずいぶん下がってしまっている。ということは、実際に使えている膨張行程は減っている。熱効率は落ちてしまうのである。
そこで、圧縮比を下げて少し広い空間になった燃焼室に、最適のタイミングで燃料を噴き込んで燃やし、膨張行程の間ずっとピストンを押し下げる力を加え続けることができれば、むしろ膨張比を有効に使ったことになる。つまり、熱効率を落とさずにすむ。
ちょっと専門的な話に入り込みかけたけれども(といっても、まだまだ「さわり」だけだが)、こうした原理原則に戻って発想を組み立てたことで、圧縮比「14」という「常識破り」のディーゼルエンジンができたのである。
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