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平成22年 第12回「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」(松江市)有機栽培・JAS認定部門で特別優秀賞を受賞。(食味90・味度83・計173点) 平成25年、第15回魚沼と第16回北京開催運動中! 無農薬魚沼産コシヒカリ生産農家・理想の稲作技術『CO2削減農法』 http://www.uonumakoshihikari.com/
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中国人研修生が姿を消す日は近い !
 
2011年3月3日DIAMOND online  莫邦富
 
 日本の外国人研修制度は、アジアの国々に日本の進んだ技術を勉強させるという大義名分のもとで進められる。先進国の日本のアジアに対する貢献の一環のように見せているが、実は外国人の労働力の導入を拒絶しながら、生身の外国人に労働者としての権利を与えず、ただその労働価値を労基法に決められた最低賃金を大きく下回る形で貪っている。これが1998年、取材の関係で偶然に知った日本の外国人研修生の現場の実態である。
 いまや外国人研修生たちは日本の農業、アパレル、製造業などの産業で中小企業の日常運営を支える労働力の重要な構成要素となり、その中で中国人研修生が大半をなしている。1998年外国人研修生問題の報道に携わった関係で、外国人研修生現場の目を覆いたくなるような人権侵害問題、搾取問題にジャーナリストとしてずっと関心をもってきた。しかし数年前から、この問題に対する関心の度合いが次第に下がってきた。日本が外国人研修生制度の問題点を改善するかどうかとは関係なく、数年のうちに中国人研修生は日本に来なくなるだろうと思ったからだ。
 1990年代に日本を震撼させた中国人の相次ぐ密航事件を思い起こしてほしい。当時、ベトナム難民を装って日本にやってくる輩がいたし、貨物船のコンテナに身を隠して日本への入国を企む集団もいた。おかげで中国人密航現場の実情を描いた拙著『蛇頭』は売れた。多い時は、私のところに取材に来たテレビ局が1日で9局あった。朝から夕方まで取材に追われ、お昼を食べる時間はもちろん、トイレに行く暇もなかった。蛇頭はこうして日本語として定着した。
 だが今では、あれほど売れた『蛇頭』はすでに絶版となった。日本に大群をなして押しかけてくるのは、密航者ではなく、大金を日本に落としに来る観光客に変わった。
 中国人研修生もまた、90年代の密航者と同じようにやがて日本に来なくなる。その日が訪れるのはおそらく今から3、4年後の2014年、15年頃になるだろうと思う。
 
今年の春節(旧正月)を挟んで中国各地で起きた労働者争奪戦を見て、私は自分の予測にさらに自信をもった。
 中国各地で繰り広げられる労働力争奪戦の過激ぶりを報道したニュースを先週読んだ。労働力争奪戦のいっそうの過激化を暗示するその内容に驚きを覚えた。
 
 天津市西青区は春節がまだ終わらぬうちに「24時間就職マンション」を設け、入居を申し込んだ地方の労働者に対して、気に入った仕事が見つかるまで無料での居住を許可し、そればかりではなく食事も仕事のあっせんも就職に必要なトレーニングも無料で提供するとした。
 広告を見てマンションに入居した若者はチェックインを済ませると、すぐに求職登録の手続きをして、翌日朝から企業の面接を受ける。ただで食べた朝食は結局1回だけという人がほとんどだそうだ。仕事を探し求める労働者がこのマンションに集まってくることを知り、企業もこのマンションに求人担当者を派遣し、我先にと労働者を確保する。
 この人々の意表をつく「24時間就職マンション」はまさに日を追って激しさを増してきた労働力争奪戦の落とし子だと見ていいだろう。実は、労働力の確保の困難さを見て、天津市西青区が仕事を探し求める労働者と求人に焦る企業側に交流のプラットホームを提供しようとして、就職トレーニングセンターを臨時に「24時間就職マンション」に仕立てたのである。
 
やる以上は、目立つようにすれば効果的だと思い、食事の無料提供にも踏み切った。こうしてメディアの注目を浴び、狙い通り24時間就職マンションが広告塔となって、毎日多くの労働者が訪れ、多い日には200人が入居の申し込みをした。こうして地元の企業の労働者確保に一助を提供したこととなった。
 この24時間就職マンションは中国版の派遣村と見ていいのでは、とも思ったが、一番の大きな違いは24時間就職マンションの方では仕事が入居者を待っていることであろう。日本の派遣村に漂うあの悲壮感や絶望感は24時間就職マンションにはない。
 ただ、天津市西青区のやり方はすぐにほかの地方にも真似されてしまうだろう。西青区も今の成功にあぐらをかくことはできない。他の競争相手を制する労働者確保の奇策をこれからも練らなければならない。中国の労働力市場はこれからますますドラマチックになっていく。その競争劇はいろいろなヒントをくれる。
 目を日本国内に移すと、外国人研修生制度がいつまで続くかは分からないが、中国人研修生に限って言えば、そう遠くない将来に、引き潮のように消えてしまったあの密航者の大群と同じように日本から引いていくだろう。
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2011年3月3日 DIAMOND online 安藤茂彌
 
 日本の財政破綻を懸念する声が海外でめっきり増えてきた。財政破綻とは日本政府が国債(すなわち借金)を返済できなくなることである。何しろ日本の国債発行残高はGDPに比較して断トツの世界一なのだ。
 
昨年5月に財政破綻したギリシャより大きいのだ。だが日本政府は「大丈夫だ」と言い続けてきた。理由は二つある。日本国債の保有者の96%は日本の投資家だからだ。日本の投資家は日本の金融機関、ゆうちょ銀行、年金基金等である。我々が銀行に預けた預金は、銀行が日本国債を購入することで間接的に国債を保有していることになる。
 もう一つの理由は、日本の貯蓄は1400兆円もあり、国債発行残高943兆円はその範囲内に収まるからだ。
 それはその通りと思う。だがこの状況をいつまで続けられるのか。2011年度の予算を見てみよう。税収は41兆円しかないのに、歳出は97兆円に達する。不足分を補うために44兆円の国債を発行するという。
 歳出の大きな項目は社会保障関係費28兆円だ。老齢人口が増えれば年金の支払いも増えるし、健康保険の支払いも増える。介護の国庫負担もこれから大きな支出項目となろう。今年からベビーブーマーが65歳になる。社会保障関係の支出はこれから毎年増加の一途を辿る。こうした支出を上回って税収が増えなければ、不足分は国債発行に頼らざるを得なくなる。
 これを支える貯蓄1400兆円についても今後増える見通しは立てにくい。日本は経済停滞が続き、日本人の所得は伸びていない。生活が苦しくなれば貯金を払い出さざるを得ない。1400兆円は減少する可能性が高い。そう遠くない将来に、国債発行残高が国民貯蓄を上回る時が来る。その時には外国に借金をせざるを得なくなる。
 
今年1月27日に米国の格付け機関スタンダード・アンド・プアーズ社が、日本国債の格付けをAAからAAマイナスに格下げした。上から3番目であったのを4番目に順位を下げたのである。その理由は、日本は自らの意思で財政を立て直す意思(財政規律)があるのかについて疑問が出てきたからである。
 IMFは、「日本の国債残高は2015年に国民貯蓄を上回る」と試算している(英エコノミスト誌の報道)。その根拠は早いピッチの国債の発行と貯蓄の減少見通しにある。10年前の国債発行残高は389兆円だった。それが2011年度には943兆円になる。この10年間で毎年55兆円ずつ国債残高を増やしてきたことになる。
 貯蓄超過分は450兆円あるから単純計算すると8年間ぐらいは食い繋げる。さらに日本は経常収支黒字国であるから、これは貯蓄増加要因になる。昨年の黒字は17兆円であった。為替が円安に動けば、黒字はもっと増える可能性がある。だがIMFは、国民が貧しくなれば貯蓄率は下がり450兆円は減ると見ている。
 では諸外国に安心してもらうようにするには、どうすればよいのだ。国債発行に頼らなくても済むように、厳しい財政規律を導入するしかない。それには税収を上げ、支出を抑えるしかない。
 まず税率を引き上げるのである。日本の税率を諸外国との比較で見てみると、GDPに占める税収の比率はOECD諸国の中で最も低い。だが、その内訳を見ると法人税率は最も高く、消費税率は最も低い。現在の消費税5%はOECD諸国の中で最も低いのである。欧州の付加価値税はすでに20%になっているし、米国では9%前後の売上税が課されている。
 ちなみに、現在の消費税5%を10%にすると10兆円の税収増になる。20%に増やすと30兆円の税収増になる。それでもまだ国債を減らすことはできない。国債残高を現状水準で止めるには27%の消費税導入が必要である。子ども手当などをばら撒いておれる状況には全くないのである。
 支出を抑えるのは至難な業である。とりわけ難しいのは社会保障費の取り扱いである。日本は人口の老齢化が世界で最も早く到来する国である。日本より老齢化が遅れる欧州諸国は自国の将来を考え、着々と対策を講じている。年金支給開始年齢の引き上げ、公務員と民間との年金格差是正、高額所得者への支給額カット等である。
 
日本では消費税の10%への引き上げですらできていない。年金改革は議論すら始まっていない。改革を実施すれば国民の一部で既得権の剥奪が生じるのは避けられない。悪者になった政党は選挙に負ける。政党は自分の身可愛さに、国民に心地の悪いことは発言しない。だが、政党の思惑とは別に世界が日本を見る目は日増しに厳しくなっている。
 貯蓄を食い潰した時の資金調達は日本に不利になる。日本国債の平均利回りは現在1.7%程度と低利であるが、日本政府が外債を発行しようとすれば海外の投資家は高い利回りを要求してくるだろう。
 格付けで見ると、米国債はAAAで日本国債はAA-である。格付けの高い国は低金利で発行できるが、格付けの低い国は高金利で発行せざるを得ない。米国債の利回りは3.8%程度である。米国債より信用度の低い日本国債がそれ以上の金利を要求されても不思議ではない。国債の利払い費は現在でも10兆円に達する。3倍の利回りを要求されると一気に30兆円に膨らむ。
 どの水準の金利になるかはヘッジファンドが決めるだろう。「日本は危ない国だ」というレッテルを貼られると、ヘッジファンドがクレジット・デフォルト・スワップを使って、日本国債の価格を下落させ、金利を上昇させる。日本政府に金利の決定権はない。
 国債価格の下落は日本の金融機関の体力を弱める。国債価格が下落したら日本の金融機関は評価損を立てざるを得なくなるし、赤字に転落すれば国際的な金融機関規制であるBIS規制で自己資本を積み増さざるを得なくなる。体力の弱い地方金融機関から危機に陥っていく。だが日本政府には銀行救済に投入できる公的資金はない。
 
もう一つの問題はどの国が日本を助けてくれるかである。米国は自国の財政をバランスさせるのに精一杯である。欧州も域内問題国の救済で忙しい。IMFは日本のような大国が倒産するのを前提としていない。救済するには日本の負債額が余りに大き過ぎるのである。海外メディアは日本を救済できるのは中国以外にないとみる。中国の外貨保有額は240兆円もあるからだ。だが中国が実際に日本を助けてくれるかは大きな未知数だ。
 日本政府が立ち往生しているときに、ヘッジファンドは益々「日本売り」を加速させるだろう。日本発の金融危機が世界を揺るがすかもしれない。日本の財政収支を安定させるために諸外国は自国の繁栄を犠牲にして巨額な資金を日本の救済に注ぎ込まなければならなくなるからだ。世界は日本政府と日本人の「無策」「無責任」を容赦なく叩いてくるだろう。
 日本はいま来年度予算編成の時期にある。だが、根本的な日本の問題に向き合った議論は全くない。与党は小沢問題でガタガタしているし、野党は政権交代させることしか頭にない。日本の将来に向けた議論はせずに、政党間の足の引っ張り合いだけに終始している。
 いま日本政府がすべきことは、世界に向かって「日本は大丈夫です」、「日本政府は自国の問題を自分たち自身で解決できます」というメッセージを発することである。それには諸外国が取り組んでいるように、今すぐに「財政規律」を導入し、国債削減の時期と金額を明確な政策目標にするしかない。しかし、日本の政治家はこれができるのか。日本人が個々の既得権を捨てて、いま以上に耐え忍ぶことができるのか。
 日本人は太平洋戦争の終結を最後の最後まで引き伸ばし、原爆を浴びた。戦後の復興は米国主導で行われた。過去70年間に、日本人には自国の命運を左右する大問題を自らの手で解決した実績がない。「日本の倒産」を日本人自らの政治的意思で未然に防ぐことができるのか。それともまた重大な決断を「外圧」に委ねるのか。いま日本が世界から問われているのは、日本人の「政治的成熟度」すなわち「民度」であるように思われる。

名古屋市は減税が先か、借金返済が先か

2011.03.02(Wed) JBプレス 木下敏之
 
 福岡でも花粉が飛びかう季節となりました。私も花粉症の症状が出ており、今年は昨年よりもひどい感じがします。福岡は大陸と近いので、時々、汚染物質の含まれた雲が流れてきますが、もしや中国からの大気汚染物質の影響で症状がひどいのでは? などと思ってしまいます。
 駅頭では、4月の統一地方選挙の候補予定者が頑張っていますが、民主党系の候補者の悲鳴も聞こえてきます。赤い丸が2つついたビラを配っても、ぐしゃぐしゃに丸めて捨てられてしまったとか。大変厳しい状況のようです。
 かといって、自民党に入れたいという人が増えているわけでもありません。棄権が増えないとよいなと思います。

名古屋市は借金をしながら減税?

 さて、前回は、中京都構想などについて自分の考えを述べましたが、河村たかし市長の公約の1つに「市民税の10%減税」があります。私は、最初にこの話を聞いたときは、さすがに名古屋市は財政が良いのだなと感心していました。
 しかし、財政の良い名古屋市でも、2010年度予算で1000億円を超える借金をしています。大幅減税をしながら借金をする? とても妙な感じがしました。
 名古屋市の2010年度予算は一般会計で1兆345億円あります。収入のうち、市税は合計4769億円。そのうち市民税が約1600億円以上ありますので、10%減税すると約160億円の減収となります。名古屋市の人口は約223万人ですから、住民1人当たりでは年間で7万2000円の減税です。
 一方で、増加する支出を賄えないので、1233億円の借金をしています。これは、減税で今の世代の負担を減らし、借金で次の世代の負担を増やしているとも言えると思います。
 
景気対策として減税を考えているのなら、それはそれでよいと思いますが、世代間の負担の公平などを考えると、「本当にこれでよいのか?」と疑問を感じます。

高齢者の増加によって迫られる厳しい選択

 名古屋市の借金残高も決して少ないわけではありません。借金残高は、一般会計の分だけでも約1兆8000億円あります。与謝野馨大臣の「減税するよりも借金を返済せよ」との趣旨の発言は、世代間の公平という観点からは、大いにうなずけるところです。
名古屋市役所の財政データを基に筆者が作図(次のグラフも同じ)。名古屋市の財政の資料について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
 恒久減税をして、これからの増加する費用が賄えるかという点でも不安が残ります。名古屋市は、他都市と比較すると市税収入が豊かな都市ですが、名古屋市の福祉関係の経費は他の都市と同様に増え続けているのです。
 以下の表は、扶助費という高齢者対策や保育所関係の費用や、生活保護の費用などを含めた費目の予算額の1994年からの推移ですが、一貫して増え続けています。
 そして、この額はこれからも増え続けていくと思います。理由は簡単で、これまで名古屋市は人口が増え続けていましたが、これからは、人口の減少と同時に進行する高齢者の急増の影響を受けるからです。
 
以下の2つの表のように名古屋市の総人口は、2030年でも211万人となだらかにしか減少しませんが、高齢者の数は急増するのです。しかも、高齢者人口に対して老人ホームの整備が進んでいませんので、これからも高齢者の福祉や医療関係の経費は増加する一途です。
国立社会保障・人口問題研究所のデータを基に、筆者が作成(以下、同)
 しかも、高齢者関係費の増加が予想される一方で、働く世代の中でも最も消費が旺盛と言われている20歳から40歳までの世代が急減します。このことは、トヨタ自動車のお膝元の名古屋といえども、今のままでいけば消費はじりじりと低迷し、その分、市民税収が減少する可能性を示唆しています。
 
 
今回の市民税の減税は、景気回復の1つの手段としてはあり得る政策でしょう。しかし、このままでは、福祉関係の費用を賄うことができません。
 そのため、(1)市民税率を元に戻す(もしくは今まで以上に増税する)、(2)福祉サービスのレベルを下げる、(3)何らかの産業振興策を行ってその効果により税収を増やす、ことの中からどれかを選ぶ厳しい選択が必要となると思います。
 果たして、市民や河村市長はこのような将来の見通しを意識して、減税を選択したのでしょうか? 賢明な名古屋の市民のことですから、いずれお金が足りなくなることを理解したうえでの、一時的な減税と議員給与の削減を選択したのだろうとは思うのですが・・・。

地方分権の主張に欠けている意識

 なぜ、このような話を長々としたかというと、地方分権の議論をしている時に、地方自治体の政策に必要な費用をどのようにして手当てするのかをきちんと意識していない人が、あまりにも多いからです。
 地方分権の推進のために、地方に財源を渡すべきだと主張する人はたくさんいます。しかし、事業の実施主体が誰であっても、福祉の費用など必要なお金を税金で賄えていないという現実があります。
 
これから、そのギャップはますます拡大します。国が持つ財源を地方に渡しても、それだけでは、福祉など地方が行う仕事の費用が足りないのです。
 地方分権を主張する人の多くは、このことを意識していません。必要なお金はすべて国が地方に渡すべきだと虫のいいことを言うのです。
 また、これまで、福祉などの事業や公共事業を推進するために、政府は借金を重ねてきましたが、財源を地方に移すとなると、政府の借金の一部も地方に移すことになります。ところが、それを受け入れる覚悟をしている自治体は聞いたことがありません。地方が負担しないとしても、結局、借金の返済は住民の負担となります。
 このような地方分権に伴う厳しい面についても、これからはどんどん議論を始めていくべきだと思います。そうならなければ、サービスのレベルと負担の水準をどこにするかという議論が深まりません。

自治体に覚悟と地域経営能力があるか

 お金は払いたくないが、サービスは高い方がいい。高齢者数が急増する中では、それはほとんど夢物語です。
 これまでは、住民に突き上げられても、地方自治体は国のせいにすることで逃げることができました。国のせいにできないようになってこそ、住民も地方の政治家も真剣な議論が始まると思います。
 地方分権とは、必要なお金が賄えなければ、サービスを落とすのか、増税するのかを、地域で判断しなくてはなりません。
 地方分権は決してばバラ色の未来ではありません。自治体の覚悟と地域経営能力によって、大きな地域格差がつく時代なのです。
 その覚悟を決めていることが、地方分権の大前提だと思います。

どらやきでドラえもんを動かそう

2011年1月18日(火) 日経ビジネス 山田久美
 
現在、微生物を利用した「微生物燃料電池」と「微生物太陽電池」の実現に向け、研究開発を進めているのが、東京大学・先端科学技術研究センターの橋本和仁教授をプロジェクトリーダーとする科学技術振興機構(JST)の「橋本光エネルギー変換システムプロジェクト」だ。
 ロボットであるドラえもんが、なぜ、どら焼きを食べて動くのか、疑問に思ったことはないだろうか。しかし、ドラえもんが「微生物燃料電池」で動いているとすれば、説明がつく。
 微生物燃料電池とは、その名の通り、微生物を使って発電する燃料電池のことだ。
 
地球上には、実にさまざまな微生物が生息している。その中には、有機物を食べ、それを分解してエネルギーを得る際に、電流を発生させる微生物がいる。「電流発生菌」と呼ばれるものだ。この微生物を使って発電するのが微生物燃料電池である。
 そして、現在、微生物燃料電池との実用化と、その先の最終目標である「微生物太陽電池」の実現に向け、研究開発を進めているのが、東京大学・先端科学技術研究センターの橋本和仁教授をプロジェクトリーダーとする科学技術振興機構(JST)の「橋本光エネルギー変換システムプロジェクト」だ。

 

エサは生ゴミやビール工場の廃液など

 
 実は、電流発生菌の存在自体は約100年も前から知られていた。しかも、地中や水中などどこにでも生息しているごくありふれた生き物だ。そのため、これまで幾度となく、電流発生菌を使って発電しようという試みがなされてきた。しかし、電流密度が低いため、実用化には至らなかった。
 ところが、近年、遺伝子工学に代表される分子生物学の急速な進展に伴い、米国を中心に、微生物燃料電池の研究開発が、にわかに活況を呈してきている。電流発生菌の遺伝子を改変することで、電流密度を上げ、より多くの電流を発生させるようというわけだ。その結果、現在、微生物燃料電池は実用化の一歩手前まできている。どら焼きを食べて動くロボットも、あながちSFの世界だけの話ではなくなってきているのだ。
 電流発生菌の“エサ”は、生ゴミをはじめビール工場や染色工場の廃液など有機物であれば何でもいい。電流を発生すると同時に有機物が分解され、廃液が浄化されるので、廃液処理装置や下水処理装置として有望視されている。
 日本では、現在でも、下水の浄化に微生物が利用されている。しかし、既存の方法では、微生物に酸素を送り込む必要があり、そのために、総使用電力の約1%もの電力が使われている。しかも、使い終わった微生物はゴミとして廃棄され、焼却処分されている。その量たるや、年間数億トンに及ぶ。
 しかし、電流発生菌は酸素を必要としない。そのため、ここに微生物燃料電池を導入すれば、電気を使うどころか、逆に発電しながら下水を浄化することができ、しかもゴミも大幅に減らせる。一石二鳥にも三鳥にもなるのである。
 「とはいえ、遺伝子の改変は、“自然との共生”にはそぐわないやり方だ。我々はあくまでも、遺伝子改変をしない微生物燃料電池にこだわりたい」。橋本教授はこう語る。
 
元来、太陽電池や光触媒など光機能材料の研究を専門としてきた橋本教授が、微生物燃料電池の研究開発に本腰を入れ始めたのは2006年のことだった。
 微生物燃料電池に関する研究計画書を作成し、2006年度の科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(ERATO)に「橋本光エネルギー変換システムプロジェクト」で応募し、採用されたのだ。

 

発電量は当初の数百倍に

 
 しかし、微生物燃料電池を開発するには、電気化学などに加え、微生物学や分子生物学に関する専門知識が不可欠だ。そこで、橋本教授は、東京大学で開催された微生物燃料電池のシンポジウムで知り合った渡邉一哉特任准教授に共同研究を持ちかけた。
 当時、海洋バイオテクノロジー研究所で主幹研究員を務めていた渡邉特任准教授の専門分野は応用微生物学。微生物を使って人の役に立つものができないかと考えて、微生物燃料電池の研究を始めた。彼自身も、研究の中で発電効率を高める電気化学的な知識を必要としていた。そのため、橋本教授からのオファーは渡りに船だった。
 プロジェクトを開始して丸4年。光化学や電気化学を専門とする橋本教授らのグループと、微生物学を専門とする渡邉特任准教授らがタッグを組んだことで、研究は着々と成果を上げてきている。
 
特に、最も重要な発電量は、電極の改善や微生物の生態の見直しにより、数百倍にまで引き上げることに成功した。
 微生物燃料電池の場合、電流発生菌に有機物を与えると、最初は電流の量が急速に増える。しかし、ある一定のところまでいくと、いくら有機物を与えても、電流発生菌を増やしても、それ以上増えなくなってしまう。
 理由は、電極の面積が限られているからだ。電流発生菌は電極に張り付くことで、不要となった電子を電極に渡し、電流を発生させる。そのため、電極が電流発生菌で覆われてしまうと、電極から離れたところにいる電流発生菌は、電子を電極に渡すことができないのである。
 
そのため、橋本教授と渡邉特任准教授にとって、いかに多くの電流発生菌が電子を電極に渡すことができるようにするかが、最重要課題となった。
 まずは、電気化学を専門とする橋本教授のチームから、電極の改善の提案が出された。電極の表面に、カーボンナノチューブを使った処理を施すことで、効率良く電子を渡せるようにしたのだ。その結果、発電量は10倍に跳ね上がった。
 一方、渡邉特任准教授は、“自然との共生”という信念の下、電流発生菌の生息環境に立ち返ることにした。実験設備という環境は、電流発生菌にとっていわば動物園の檻の中のようなもの。自然に近い環境にしてやれば、何か予想もつかないような突破口が見出せるのではないかと考えたのだ。
 たとえば、代表的な電流発生菌であるシュワネラ菌の生息域は、深海の海底火山の地殻の中。そこで、渡邉特任准教授は、深海からシュワネラ菌を採取する際、必ず酸化鉄や硫化鉄が付着していることに注目した。そして、電流発生菌の培養液の中に、酸化鉄を加えたところ、発電量が一気に50倍になった。
 「これは、酸化鉄が、電流発生菌同士が電子をやり取りするためのネットワークの役割を果たしているからだと考えられる」と渡邉特任准教授は説明する。酸化鉄を介して電流発生菌同士が結びつき、電子を授受し合っていたのだ。
 
これらの試行錯誤を繰り返した結果、橋本教授らは、遺伝子を改変することなく、1立方メートルの実験装置から130ワットの電力を取り出すことに成功した。
 橋本教授は胸を張る。「この実験結果を見たとき、“自然との共生”という我々の信念は間違っていなかったと確信した」。
 橋本教授らは、仮に微生物燃料電池を家庭用として実用化する場合、少なくとも1000ワットの電力を出せるようにする必要があると見積もっている。3~5年以内に実用化できる見込みだ。

 

「微生物太陽電池」を目指す

 
 ただし、橋本教授が目指しているものは、実は微生物燃料電池の実用化の先にある。「微生物太陽電池」の実現だ。
 微生物太陽電池とはその名の通り、微生物を利用して、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置のことだ。
 植物や植物プランクトンは光合成により、太陽光エネルギーを使ってCO2と水から有機物を作り出している。そこで、微生物燃料電池を基に、橋本教授が思い付いたのが、光合成をする微生物をそのまま利用する微生物太陽電池だった。
 微生物太陽電池が実現すれば、湖沼などで大発生し、我々に甚大な被害を及ぼしている“アオコ”を使って発電したり、水田で発電したりできるようになるかもしれないと橋本教授は考えている。
 しかしながら、現在のところ、光エネルギーを直接、電気に変換できる微生物は発見されていない。そのため、橋本教授は、複数の微生物を組み合わせるなど、「合わせ技」で実現しようと考えている。
 現在、橋本教授らが試みている方法は2通りある。
 1つ目は、複数の微生物を組み合わせる方法だ。微生物の中には、光を当てることで光合成し、有機物を作る微生物がいる。そこでできた有機物を電流発生菌の餌にすれば、間接的に、太陽光から電気を取り出すことができるというわけだ。
 
光合成する微生物の代表例が、実はアオコだ。アオコは太陽光によって急速に増殖し、湖沼周辺の生態系を破壊するなど各地で問題となっている。そこで、湖沼にアオコと電流発生菌を共生させ、電極を設置すれば、湖沼が微生物太陽電池に大変身するという算段だ。
 2つ目は、「田んぼ発電」だ。これは、イネが光合成する際、根から排出される有機物を電流発生菌のエサにしようという試みだ。
 
実際、橋本教授が田んぼの泥の中に陰極の電極を差し、水面に陽極を置いてみたところ、日中、イネに太陽光が当たっているときだけ、電流が発生した。とはいえ、現在のところ、発電効率は0.01%と極めて低く、10%台を実現している市販の太陽電池にはるかに及ばない。
 「だが、今の100倍の1%にできれば、実用化も十分視野に入る。屋根よりも田んぼの方がはるかに面積が広いからだ」。橋本教授の表情は明るい。
 微生物太陽電池に関しては、まだまだアイデアや基礎研究の域を脱していない。しかしながら、自然をそのままの形で生かしつつ、太陽光エネルギーから電気エネルギーを取り出すことができるということを証明できたという点で、これらの取り組みは意義深いと橋本教授は考えている。
 「なぜなら、自然から離れる方向で発展してきた20世紀の科学がもたらした負の遺産を回収するには、自然に近づいていく科学、自然と共生する科学の構築が不可欠だと考えるからだ」。
 橋本教授が、微生物を使った電池の開発に軸足を移した背景には、20世紀の科学に対する反省と強い危機意識があったのだ。
 
ボツリオコッカス・ブラウニ
 
オーランチオキトリウム
 
微細藻燃料分科会 
 
 
2011年3月1日(火) 日経ビジネス 山田久美
 
 原油価格のさらなる高騰が懸念されている。世界各国にとって、エネルギー安全保障の強化はもはや待ったなしの段階だ。そんな中、石油の代替燃料となる油を生成する微細な藻類が脚光を浴びている。
 ただし、現時点では生産コストが高いため、藻類系バイオ燃料が商業ベースに乗るメドは立っていない。この課題を解決するには生産効率を今の10倍以上に引き上げる必要がある。そして2010年12月、これまで最も有望視されてきた藻類の10倍以上の生産効率を示す新たな藻類を、筑波大学大学院生命環境科学研究科の渡邉信教授が発見した。
 
「日本が産油国になるのも夢ではない」。筑波大学大学院生命環境科学研究科の渡邉信教授はこう話す。渡邉教授は2010年12月、従来の10倍以上の生産効率で、重油と同質の油を作り出す「藻類」を沖縄県の海で発見したのだ。
 「オーランチオキトリウム」という名前で、直径5~15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の球形をしている。これまで発見された中で最も油の生産効率が高いとされてきた「ボトリオコッカス・ブラウニー」の約12倍の生産効率を示すことを渡邉教授は明らかにした。
 「工業利用ができると考え、すぐに特許を申請した。エネルギー政策を考えるに当たっても、日本にとって大きな武器になる」と渡邉教授は話す。
 

食糧価格高騰を招いたバイオ燃料

 
 中東や北アフリカ諸国の情勢不安、そして、エネルギー資源の枯渇に伴い、原油価格のさらなる高騰が懸念されている。世界各国にとって、エネルギー安全保障の強化はもはや待ったなしの段階だ。特に石油と石炭をほぼ全量、輸入に頼っている日本においてはなおさらだ。
 そんな中、石油に替わるカーボンニュートラルな(二酸化炭素を吸収して作る)燃料として、米国を中心に、数年前から注目を集めているのが、トウモロコシや大豆など陸上植物を原料とするバイオ燃料だ。
 ところが、食糧を燃料にするため、その需給関係に影響を与えて食糧価格が高騰。加えて、東南アジアでは、油やしを栽培するため、広大な面積の森や湿原を開墾するという、本末転倒のような事態が発生した。CO2排出量を低減するどころか、環境破壊が進行してしまったのである。そのため、現在は、欧州を中心に、サトウキビやトウモロコシを原料とするバイオ燃料に関しては、開墾から栽培、生産、輸送までを評価対象にするライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2削減効果の検証が進められている。
 このような社会的背景を受け、新たなバイオ燃料の原料として、にわかに脚光を浴びているのが、油を生成する微細な藻類である。
 
藻類であれば、食糧の需要に影響を与えない。また、水中で培養するため、森林伐採とも無縁だ。陸上植物に比べて収穫までの期間が短く、そのため、生産効率が10~数百倍も高い。しかも、陸上植物から採れる油の多くが、酸素や硫黄など燃料としては不要な元素を含むのに対し、ボトリオコッカス・ブラウニーやオーランチオキトリウムから採れる油は重油と同質の炭化水素だ。そのため、従来の石油工場の設備を使って、軽油やガソリン、ナフサを簡単に作ることができる。陸上植物のバイオ燃料が抱えていた問題をすべて解決できる。

 

約4時間で2倍に増える

 
 米国は国家事業として藻類系バイオ燃料の商品化に取り組んでいる。2010年6月にエネルギー省(DOE)が、藻類系バイオ燃料の開発に携わる3つの研究コンソーシアムに対し、最大2400万ドルの助成金を供与すると発表した。米国以外でも、オーストラリアやイスラエル、中国、インド、インドネシア、韓国など多くの国々がこぞって、微細藻類の研究開発に軸足を向け始めている。
 このような状況の中、今回の渡邉教授によるオーランチオキトリウムの発見は、日本にとってまさに朗報だ。なぜなら、現在、藻類系バイオ燃料の商業化の大きな妨げとなっているのが生産コストだからだ。
 これまで、最も有望視されてきたボトリオコッカス・ブラウニーですら、1リットル当たりの生産コストは約800円。これを、石油と同等の1リットル当たり50円程度にまで引き下げることができないと、石油の代替燃料として商業化できない。そのためには、生産効率を今の10倍以上にして、収穫量を現在の1ヘクタール当たり年間100トンから1000トンに引き上げる必要があったのだ。
 
そこで、渡邉教授は2008年にプロジェクトを発足させた。
 生産効率を10倍にするための方法は2つだ。1つ目は、突然変異や遺伝子組み換えによる品種改良によってボトリオコッカス・ブラウニーの生産能力自体を上げること。2つ目は、ボトリオコッカス・ブラウニー以上の生産能力を持つ微細藻類を探すことである。そして、後者を進める中で発見したのが、オーランチオキトリウムだったのだ。
 オーランチオキトリウムの最大の強みは増殖の速さにある。ボトリオコッカス・ブラウニーが約6日で2倍に増殖するのに対し、オーランチオキトリウムはなんと4時間で2倍になる。そこで、培養装置の容量や藻類の濃度の上限などを考慮した上で、1年間に採れる油の量を計算し、比較してみた。すると、オーランチオキトリウムの生産効率が、ボトリオコッカス・ブラウニーの約12倍になることが分かった。
 そこで今度は、面積1ヘクタール、水深1メートルの培養装置を使って、オーランチオキトリウムを4日ごとに収穫するという生産システムを想定したところ、1ヘクタール当たり年間1000トンの油が採れるという計算結果が得られた。

 

耕作放棄地と休耕田の54%で賄える計算

 
 渡邉教授は説明する。「現在の日本の石油と石炭の輸入量は年間約3億3500万トン。一方、日本の耕作放棄地と休耕田は62万ヘクタールある。そこで、その54%にあたる33万5000ヘクタールを使ってオーランチオキトリウムを培養すれば、年間輸入量をすべてまかなうことができる」。
 さらに、同じ培養装置を使って4時間ごとに容量の67%分を収穫し、そこに、同量の新鮮な培養液を補充する連続生産システムにすれば、1ヘクタール当たり年間1万トン以上、油の収穫が見込めるという。
 現在の世界の年間石油需要量は約50億トン。この連続生産システムの場合、日本の耕作放棄地と休耕田の80%を使えば、その全量をまかなえる計算になる。日本を産油国にするという夢も、絵空事ではなくなってきた。
 
その夢の実現に向けて、現在、渡邉教授らが取り組み始めているのが、培養装置の大規模化だ。
 「商用化するには、大量培養技術を確立しなければならない。そのためには、大規模な培養装置を使った実証実験が不可欠だ。しかし、我々だけで人材と費用を捻出するのは難しい。今後、産官学の連携を強め、1日も早い商用化に努めたい」。渡邉教授は熱い思いを語る。
 そのため、現在、藻類の基礎研究で世界トップレベルを誇る筑波大学が中心となって、「藻類産業創成コンソーシアム」を結成。国内の大学や研究機関や、つくば市、50社を超える企業が参画し、藻類バイオマスエネルギー技術開発等に取り組んでいる。

 

有機廃水を浄化する一石二鳥

 
 加えて、渡邉教授は、廃水や廃棄物の水処理プロセスへの適用も検討している。
 実は、ボトリオコッカス・ブラウニーとオーランチオキトリウムは、どちらも重油と同質の油を生成する藻類という点では同じだが、特性が異なる。ボトリオコッカス・ブラウニーが、光合成をしてCO2から油とその他の有機物を生成する緑藻類であるのに対し、オーランチオキトリウムは、水中の有機物を細胞内に取り込んで、油を生成する単細胞の従属栄養藻類だ。そのため、オーランチオキトリウムを培養するには、有機物を与える必要がある。
 そこで、渡邉教授が目を付けたのが、焼酎やビールの製造工場、繊維工場などの有機廃水を利用する方法だ。有機廃水を浄化しながら、油も生産しようというわけである。
 廃水や廃棄物の水処理プロセスは、ボトリオコッカス・ブラウニーにとっても都合が良い。水処理プロセスを通して出てくる処理水には、ボトリオコッカス・ブラウニーの増殖を促進してくれる窒素やリンが多く含まれるからだ。
 この処理水を使って、光とCO2を与えながらボトリオコッカス・ブラウニーを培養すれば、増殖が促進されるだけでなく、新たに培養装置を設置する必要もなくなる。処理水の豊かな栄養分が大きな原因となっていた水域のアオコの大量発生も防ぐことができる。さらに、ボトリオコッカス・ブラウニーが生成した有機物を有機廃水に還元すれば、オーランチオキトリウムのエサにできる。油を搾取したあとの藻類の残りカスも無駄にしない。メタン発酵させれば、メタンガスが取り出せる。

 

健康食品市場や化粧品市場への展開も

 
 一方、ボトリオコッカス・ブラウニーとオーランチオキトリウムが生成する油は、燃料だけでなく、工業原料として使える可能性もある。石油化学製品や高分子材料などさまざまな用途への応用が期待できる。
 特に、オーランチオキトリウムの油は、「スクアレン」と呼ばれる炭化水素で、善玉コレステロールの基となるものだ。現在、サメの肝油などから抽出されたものが、サプリメントや化粧品として高値で市販されている。オーランチオキトリウムの大量培養が実現すれば、健康食品市場や化粧品市場への展開も考えられるのである。
 「このように、藻類は、石油化学産業ならぬ一大藻類産業を興させる可能性を持っている。まずはバイオ燃料としての商用化を目指す。2020年には実現させたい」。渡邉教授はこう締めくくった。
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