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軽井沢インターナショナルスクール設立準備財団
http://isak.jp/isak/top/
第6回 「学校の宝は教師と生徒」という共通の思い!
2011年1月31日(月)日経ビジネス 小林 りん、中西 未紀
2013年、軽井沢に日本とアジアをはじめとする世界各国の子供が生活を共にする全寮制の高校を作る――。こんな目標を掲げて、日々、奔走する女性がいる。軽井沢インターナショナルスクール設立準備財団代表理事の小林りん氏だ。
2010年の夏、財団では中学生を対象に2週間のサマースクールを開催した。その際に招いた米名門校の教師陣の力添えもあって、プロジェクトはいよいよ形になり始めている。
全寮制高校を日本で開校することによって、小林氏は何を成し遂げようとしているのか。小林氏が仲間たちとともに「ゼロから学校を作る」取り組みを追っていく。
第1回 「サマースクールで子供たちに教えられました」から読む
第2回 「学校って、どうやって設立するのでしょう?」から読む
第3回「恵まれた環境に感謝、そして社会に恩返ししたい」から読む
第4回「学校設立は、リーダー選びから始まる」から読む
第5回「自分の得意を活かせる人材を育てたい」から読む
2010年11月、小林りんは中国の上海と香港を訪れた。
上海は実に15年ぶりである。その街の変貌ぶりには、今の中国の勢いを感じずにはいられない。
上海に向かった目的は、2013年に日本で開校しようとしている全寮制インターナショナルスクールに中国の富裕層がどのような反応を示すかを探るためだった。
学校は、アジアを中心に世界各国から生徒を募集する予定だ。この際、奨学金を給付してきてもらう優待生と同じくらい、自費で学費を支払ってでも日本で学びたいという生徒をいかに集められるかが、学校の成否の鍵を握る。アジアで最も勢いがある中国から日本に生徒を呼べるか、大いに気になるところだ。知人に紹介してもらった何人かに話を聞くうちに、小林は確信した。
「日本は、まだいける」
自然が豊かで治安が良い日本に、学術レベルが高く内容の充実した学校があれば、ぜひ子供を入学させたい――そんな中国富裕層の声を聞いて、小林は少し胸をなでおろした。
米名門校の校長と自宅でランチミーティング!
香港では、あるフィリピン人に会った。アメリカトップ10に入る名門の全寮制高校で評議員を務めている。アジア人が評議員になるのは、その全寮制高校では初めてのケースだという。
実は、その名門全寮制高校の校長が近々日本を訪れるという情報を、小林は事前に入手していた。
「アメリカで『トップ10スクール』と称される高校が、今、アジアに注目しています。その全寮制高校では日本の卒業生会を訪問したり、生徒募集の説明会などを行ったりするために、校長が来日を予定していたようです」(小林)
ぜひ日本で会って話をしてみたい。こう熱望した小林は、日本の卒業生をまとめる会長に話をしただけでなく、香港に住む評議員にも自分の思いを伝えておきたかった。
こうした努力が実を結び、2010年12月、小林はとうとうその名門全寮制高校の校長と面会の約束をとりつける。「せっかくの機会、何か印象に残るような形で会えないか」と考えた末に申し出たのは、自宅に招いての“ランチミーティング”だった。
ホームパーティーに慣れているアメリカ人とは言え、初対面での自宅招待はかなりのインパクトがあったようだ。つかみはOK。食事をしながら話も盛り上がり、当初1~2時間の予定だった会合は、3時間半を超えるものとなった。ここで小林は痛感したという。「教育は、やっぱり『人』だ」。
2世紀を超える歴史を持つ古い全寮制高校の校長は、就任して間もなく、年齢は40代だった。元数学教師で、学校の卒業生でもある。校長に同行していたのは、60代のベテラン教師、卒業生会の責任者、生徒募集の責任者。バラエティに富んだ面々であった。
迎えるのは、小林と、軽井沢インターナショナルスクール設立準備財団で共同代表理事を務める谷家衛。知人のシェフに頼んでイタリアンのランチを用意し、テーブルを囲んだ。
開口一番、校長は「なぜこのプロジェクトを行っているのか」と尋ねてきた。どうやら先方も、小林らのプロジェクトには関心を寄せていたようだ。
小林はいつものように、自分たちのプロジェクトについての思いを情熱的に説明した。
彼女がそもそも教育に生涯を捧げたいと思うようになった原体験としての、カナダの高校時代そしてフィリピンの国連職員時代の話。日本初となる全寮制のインターナショナルスクールで実現する、本当の意味での多様性(ダイバーシティ)。そのために必要な、充実した奨学金制度。「日本らしさ」を基盤とし、アジアから世界に通用するリーダーシップを育てるカリキュラム。地域のコミュニティとも共存する学校に――。
「彼らが『その通りだ』と強く賛成してくれたのは、『教師と生徒こそが学校の資産』という私たちの意見でした。グローバル化が進む世界の未来を担う子供たちが学習・成長するために、我々大人には何ができるのか。学校のミッションと、それに共鳴する教師と生徒、これがすべてだと。200年以上の歴史を持つ学校でも、それは同じなんですよね」(小林)
4人は口を揃えて言った。「歴史がないとか、名前がないとか、そういう次元の話じゃない。『教師と生徒が学校にとって一番の宝なのだ、ということをあなた方自身が思っている』、そのことこそが大事なんだ」。小林と谷家にとっては心強い言葉であった。
彼らとはまた、「生徒の自主性が重要だ」ということでも意見が合った。トップ10スクールとも呼ばれる学校であれば、親の希望で入学を考える生徒も多いだろう。しかし、親元を離れて全寮制学校で3年間を過ごすためには「自分で選んでここへ来た」という気持ちを生徒自身が持つことが不可欠である。それは、小林らもかねてから感じていたことだった。
「全寮制学校で学ぶということは、決して容易いことではありません。勉強面もハイレベルでチャレンジが必要になってきますし、集団生活を送る中ではケンカや揉め事もあるでしょう。様々な困難を乗り越えながら、しっかり自立してたくましくならなきゃいけない。その時、自分でこの道を選んだという責任が持てる子供であればこそ、伸びていけるんだと思います」(小林)
名門校教師も直面する「多様性」の問題!
4人に気づかせてもらったこともある。例えば、奨学金の制度。彼らの学校では、全体の4割近い生徒に奨学金を出しているが、その対象者は主にアメリカ人で、アジア人にはほとんど枠がないという。アジアからの留学生は裕福な家庭の子供たちばかりだ。
「これには驚きました。学校を日本で設立して奨学金を設けても、海外の名立たる学校にはどう対抗していくのかという話は以前から出ていたのですが、そもそもアジアの子供たちにとっては、奨学金によってアメリカのこうした学校に留学できるチャンス自体が少なかったという可能性もあります」(小林)
小林が「私たちは、優秀な子供たちには国籍を問わず奨学金を出していきたいと思う」と話すと、彼らは「それは非常にいいことだ」と賛成してくれた。ただ、そこにある大きなハードルについての指摘も忘れなかった。
それは、「奨学金対象者の国の事情をどのように把握して、選定基準を決めるのか」ということ。自国の家庭であれば税金の申告書類などを見ればその経済状況もすぐに分かるが、海外であればそれは難しくなる。まして、法整備が整っていないような国ならなおさらである。
「とてもよい指摘でした。私たちとしては、サマースクールの生徒募集などを通して実地で判断していくしかないと思っています。この国の場合はこのルートを通せば私たちの教育哲学に合った優秀な生徒が募集できる、といった経験を模索しつつ重ねていく必要がありますね」(小林)
また、話をする中で、小林は校長の高い意識を垣間見た。トップ10スクールには、世界中から生徒が集まって来る。しかし、生徒がどんどん多様化していく一方で、教師はアメリカ人ばかりで、しかも同じ学校に20~30年といった長期にわたって勤務する傾向にある。教師自身が多様化していない点を、校長が問題視していたのだ。
「生徒たちの多様化に、教師が実体験としてついていけていないと言うんです。だから先生をもっと外に出したいと。伝統ある名門校でそんな問題意識を持つことができるなんて、本当に度量が大きいですよね」(小林)
校長は言った。「生徒たちのバックグラウンドを知るためにも、教師たちはもっと海外へ出て教鞭をとるべきだ」。
ただし、アメリカ人教師が海外で教鞭をとろうにも、そもそも英語で授業できる学校でなければならない。この条件を、小林らが作ろうとしている学校は満たしている。なおかつ、教育方針にも共感できる。2011年のサマースクールには、ぜひ教師を送りたい――校長らからは願ってもない提案が寄せられた。
話は盛り上がった。最初は「水で結構」と言っていた4人だったが、「私たちの未来に乾杯しましょう!」と、ワインも開けられることになる。強力な助っ人を得た瞬間だった。
いったい何を教えればいいのか!
もちろん、トップ10スクールの若き校長と同じように、小林らもまた学校の「多様性」を重んじる。それは募集する生徒もそうだが、授業の内容についても同じだ。「私たちは、ただアメリカの先生を連れてきてアメリカの教育をしたいわけではありません」と小林は強調する。
学校のカリキュラム作成は、昨年のサマースクールを終えたすぐ後から着々と進んでいる。それは、サマースクールに参加するために海外から来日した3人の教師による惜しみない協力があってのことだった。
サマースクールが終わってからの2日間、スタッフは軽井沢に留まって「エデュケーターズ・ワークショップ」として、海外からサマーキャンプに参加してくれた教師や国内外の大学教員、また南アフリカでリーダーを養成する高校の設立に関わった女性などに教えを請うた。学校のコンセプトはどうあるべきか、カリキュラムをどのように作ればいいのか、マネジメントの仕組みや教師の採用基準はどう考えればいいのか・・・。あらゆるテーマを議論した。
「特にサマーキャンプの教師を務めてくれた3人の先生たちは口を揃えて、『一生に一度あるかないかのチャンスだ』と言っていました。歴史ある学校の先生たちにとっても、自分たちで一から学校を作り上げる経験はなかなかできませんからね。実は先ほどの名門学校以外にも、もう1校、私たちのサポーターの方がご紹介下さった米国の名門校が、同様の興味を持って下さっているんです。その学校でも私たちの今年のサマーキャンプに先生を派遣することを考えて下さっています」(小林)
ワークショップに参加してくれた教育者たちは、それぞれの国に戻ってからも協力を惜しまない。現在は、無料インターネット電話サービス「スカイプ」を使って、日本のカリキュラム開発メンバーと月に1~2度の会議を行っている。毎回、2~3時間を費やす熱の入れようである。また、大学教員の1人は第二言語習得の専門家であり、今後、英語を母語としない日本やアジアの生徒が英語での高度な学習内容をこなしていくための英語プログラムを開発することになっている。今年4月にはバンクーバーで一堂に会し、カリキュラム内容の最終決定をする予定である。
「科目をひとつとってみても、話し合うべきことはたくさんあります。例えば社会科。経済学は大学でも社会人になってからでも初歩から学ぶことができます。であれば、感受性豊かで心が柔らかい高校生の時期に様々な国からきたクラスメートと共に歴史を学ぶことは何ものにも代えがたい経験になるはずだから、社会科のカリキュラムの中では経済学よりも歴史をより重視すべきではないか、といった具合です。また、歴史を学ぶにしても、様々な国籍の生徒が集う教室で、アジアの歴史をどのような角度から教えていくべきかなど、論点はいくらでも出てきます」(小林)
カリキュラムの基準にしようとしているのは、世界的に大学入試の資格として認められている教育課程「国際バカロレア」だ。その一方で、日本の文部科学省が提示している学習要項からはあまり逸脱し過ぎないようにする必要がある。そのまま両方を教えようというのでは、生徒はいくら時間があっても足りない。
「学習要項の枠組みに準じたうえで、どうやって国際バカロレアの要素を入れていくか、今まさに模索しています。芸術の授業で演劇を扱うなど、知恵を絞っているところです」(小林)。
学校に賭ける思いは大きい。その分、カリキュラムに対する理想も高くなる。
全体のカリキュラムを構成していくうえでのキーポイントは3つある。1つは世界に通用する実践的な「リーダーシップ」教育。2つ目は、あらゆる物事について問題提起できる力を養う「デザイン思考」の導入。3つ目は「アジア」の学校ならではの教育プログラム。
リーダーとは、谷家の言葉を借りれば「自分の人生を、自分の信じること、情熱を感じることを貫き、思いきり生きることができる人。そして、他者の共感まで引きだし感化させて、新しいモノを作り上げたり周りの人間に良いインパクトを与えたりできる人」。そのために、何を教えていかなければならないのか。「デザイン思考」は、昨年のサマースクールで授業を行っている。その成果を踏まえて、内容を詰めていかなければならない。「アジア」の一員として日本で学校を開く意義についても、世界中の人に対して明確に示していかなければならない。
考えなければいけないのは、授業だけではない。どんな課外活動をし、放課後や週末はどのように社会との接点を持たせるか。
「リーダーシップのあり方は、100人の生徒がいれば100通りある、と私たちは考えます。学校全体を生徒が主体となってチームで役割を担いながら運営するなど、全寮制ならではの経験を通じていろいろな役割のリーダーシップを体験してもらうことで、自分なりの個性を活かす方向を見つけてもらいたいんです。それからアウトドア活動やアジア各国でのフィールドワークもカリキュラムに組み込んで、生徒には、受動的に社会を見るだけではなく、授業や寮生活での学びを総動員し、『その土地の社会問題を解決するために自分たちに何ができるか』といった視点から、物事に取り組んでもらいたいと思います」(小林)
さらに、学校を卒業した後の進路についても、視野に入れていかなければならない。「海外の名門高校でも、カレッジカウンセラーはとても重要と位置づけられていて、あらゆる大学とネットワークを築いています。その大学がどんな生徒を求めているかを熟知していて、かつ生徒一人ひとりをよく見ているんです。学力だけではなく、『この生徒はどこに行ったらハッピーか』を提案し、入学するためにしなければいけないことも助言する。それができる人材も、私たちの学校には必要だと思っています」(小林)。
現時点で最大の悩みは土地の入手!
カリキュラムは形になりつつあるが、学校設立に向けてやらなければならない作業は山積みだ。2011年上半期の課題の1つは、書類申請関係である。内閣府から「公益法人認定」を得るための書類は、昨年12月に申請した。この認定が得られれば、「寄付金控除」の対象となる。「学校設置許可」や「特例校申請」といった各種許認可申請に向けた書類も準備しなければならない。
そして今、学校を設立するために不可欠な土地探しが難航している。軽井沢という目標を掲げながらも、条件に合う土地がいまだに確保できていない。
「少人数クラスと言っても、1学年に50人で計150人の生徒が通う学校です。しかも全寮制で、先生方も家族と一緒に寮に住むことを考えると、だいたい200人くらいの宿泊施設が必要になります。のびのびスポーツができるグラウンドも用意したいということになると、ざっと見積もっても7000~1万平方メートルの土地が必要です」(小林)
それだけの広大な土地はなかなか出てこない。立地が重要なことも、昨年のサマースクールで分かった。生徒たちが病気にかかったりケガをしたりした際に、場合によってはすぐに病院へ運ばなければならない。あまりに街から離れていては、緊急時の対応が遅れてしまう。
今年の春までに決めなければ、2013年の開校はかなり難しくなる。主な不動産はすべて回った。「正直、120%満足、という土地にはまだ巡り合えていない」という小林。
設立資金をできるだけ奨学金や教育の中身に振り分けるためにも、本音を明かせば「土地については寄付や非常に廉価での取得が望ましいところ」(小林)。しかし、なかなか現状は厳しいようだ。今は有力候補の土地の所有者と条件交渉を行ないながらも、「よりよい」土地との出会いを求めて、支援者などの助けを借りながら奔走している最中だ。
本当に2013年に全寮制インターナショナルスクールができるのか――。まだまだ予断を許さない状況ではある。刻一刻と時間は過ぎていく。まもなく、今年のサマースクールの募集が始まる。
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