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「新しい公共」宣言
http://www5.cao.go.jp/entaku/shiryou/22n8kai/pdf/100604_01.pdf

「新しい公共」円卓会議 内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)
http://www5.cao.go.jp/entaku/index.html
 


DIAMOND online 【第25回】 2010年8月10日
竹井善昭 [ソーシャル・ビジネス・プランナー/株式会社ソーシャルプランニング代表]

就活シーズン直前、「社会貢献でメシが食いたい」大学生激増中!
――「就活」にも社会貢献の波

最近の若者は、借金してでも社会貢献をやりたがる。そんなことをレポートしたのはほぼ1年前。この連載の第3回目の記事だった。

◎第3回記事(2009年8月18日公開)
途上国への学校建設から地雷除去まで。借金してでも「社会貢献」にハマる若者たち

 借金してでも途上国のNGOの活動を体験したり、チャリティ・イベントを行う若者たちの姿をお伝えしたが、このレポートは大反響を呼び、すでに25回を超える当連載でも、いまだにアクセス数トップの記事である。

 クルマや洋服ならともかく、なんで借金してまで「社会貢献」を買うのか。多くの大人は理解できないという反応を示したが、逆に若者たちからすれば、なんで借金してまでクルマや洋服を買わなければならないのか理解できないだろう。今の若者と大人の間には、それほど大きな意識のズレがあるのだ。

 若者たちの社会貢献熱は、その後もヒートアップ。大学生が主催する社会貢献イベントもどんどん増えている。規模も拡大するいっぽうだ。

学生1200人が集結!
チャリティ大運動会
「SWITCH」という学生団体は、9月6日に等々力アリーナを貸し切って、学生1200名参加の大運動会を開催する。参加費2000円から会場・運営費を差し引いた残りの全額が、バングラデシュでストリート・チルドレンを支援するNGO「エクマットラ」に寄付される。今年で2回目。昨年は35万円を寄付したが、今年は50万円の寄付をめざすという。

「SWITCH」は、明治大学3年生の吉田勇佑君が昨年3月に立ち上げた団体だ。「楽しいこと」を入り口に「ボランティア」に関心を持ってもらうことを方針として活動している。運動会という誰でも参加できるスタイルにこだわり、スポーツイベントに力をいれている。またセミナー、交流会も行っている。

9月7日には、福岡産業振興協議会および他の学生団体との共同開催で「次世代リーダー緊急会議」というシンポジウムも行う。日比谷公会堂に2000名を集める、こちらも大きなイベントだ。第1部のトーク・ライブでは、参議院議員の松田公太氏とマザーハウス代表で社会起業家として有名な山口絵理子氏を迎える豪華版。参加者のリクエストにより決定される特別ゲストも参加予定だ。

 等々力アリーナの運動会といい、日比谷公会堂のシンポジウムといい、SWITCHが開催する社会貢献イベントは千人単位の大きなものになっている。学生は他の学生の成功事例をすぐに真似するので、今後の学生主催の社会貢献イベントはますます大規模なものになってくるだろう。

 かつてのバブル時代。学生パーティー・サークルが全盛だった頃は、六本木のディスコをすべて貸し切った「学生2万人ディスコ・パーティー」といった巨大イベントも開催されたことがある。学生社会貢献イベントも、来年あたりは5000人規模を突破し、いずれ1万人、2万人規模のイベントを実施するようになるだろう。

◎学生団体SWITCHについての情報、お問い合わせはこちら
ブログ http://ameblo.jp/switch012/
Eメール switch.012@gmail.com

「就活」にも社会貢献の波。
学生と企業の間にギャップも
 さて、学生がこれだけ社会貢献に熱心なら、「就活」も社会貢献を意識したものになるはずだ。

就職ウォーカー」を発行する就職情報会社ジェイ・ブロードが運営する、就活サイト「Project-DECADE」の調査によれば、就活学生の約90%が「企業選びにCSRの視点を重視する」と回答している。この調査結果について同サイトでは、

「厳しい就職環境の中で、CSRという新しい企業選択のモノサシに強い関心を持っている表れであり各企業のCSR活動の成果や社内への浸透度、取り組み姿勢を積極的に見て取ろうとしていることも明らかだ」

 と分析している。

 毎日コミュニケーションズの調査では、就職先に「働きがい」や「やりがい」を求める就活生は95.4%にものぼり、その中身として「成長したと感じられる」(36.9%)に次いで「社会に貢献していると感じられる」(33.8%)が2位にランクされている。

 このような就活生の社会貢献志向を反映してか、社会貢献活動にインターンとして参加すれば就職に有利になるというプログラムも登場している。

 このように、「社会貢献で就活」というのはリクルーティングの大きなトレンドになりつつあるが、しかし、社会貢献を仕事にしたい学生と企業の間には、まだまだ大きなギャップがあることは事実だ。

 企業側の視点に立てば、採用したいのは社会貢献に熱心な学生ではなく、稼いでくれそうな学生だ。僕個人は、社会貢献した方が企業は儲かるし成長するというCSR3.0を提唱しているのだが、このような考え方はまだまだ普及していないので、企業の側にも社会貢献志向の若者を本業にどう活かせばよいのか、ノウハウがない。

 勘違いしている学生も多い。企業はボランティア団体ではないので、社会貢献を本業に組み込むといっても、それはソーシャル・ビジネスを行うという意味で、利益を度外視しても良いということではない。そこを理解しないで、就職面接で「御社に入って社会貢献をやりたい」と言っても、面接担当者も困惑するしかない。

 また、儲け主義の企業に入って資本主義の手先になりたくないという理由で、NPOに就職を希望したり、社会起業家になろうとする学生も多い。NPOや社会起業家なら、売上ノルマもなく、激しい競争にさらされることもないだろうと誤解している。社会貢献を現実逃避の道具に使っているわけだ。

社会貢献を「仕事」にするには?
 どうも、社会貢献を仕事にすることの現実と、大学生の間には大きなギャップがあるように思える。いまやNPOや社会起業家などの社会セクターは、一流のプロがしのぎを削るビジネス・ウォーズの世界へと変化している。ボランティアだって、善意のアマチュアよりもプロのスキルを持つプロボノが重視される時代だ。

 ソーシャル・ビジネスはプロの世界だし、そこで仕事を得るにはプロフェッショナルなスキルが要求される。社会貢献を仕事にしたいと考える学生は、こういうことを理解しておく必要がある。

 そこで、社会貢献を仕事にするとはどういうことなのかを伝えるために本を書いた。『社会貢献でメシを食う』というタイトルだ。9月9日にダイヤモンド社から発売予定である(詳細はこの記事の最後に掲載)。

 いまでは社会貢献を仕事にする方法はたくさんあるが、本書ではそれらを4つに分類した。「社会起業家になる」「NPOやNGOに就職する」「企業に就職して社会貢献をやる」「プロボノとして活動する」の4つの方法だ。

基本的には学生の就活向けの本だが、単なる仕事ガイドではない。CSR3.0の基本的な考え方と具体的な事例、業種別のソーシャル・ビジネスの可能性、画期的なビジネスモデルを生み出した社会起業家の紹介や彼らのスキル、NPOとプロボノのこれからの関係性など、社会貢献を仕事にすることの本質的な意味についても書いている。これまで、日本の社会セクターの成長を阻害してきた、間違った常識も正してある。

 現役のNPOスタッフや、社会貢献に関心のあるビジネス・パーソンにも読んでもらえる内容にしたつもりなので、ぜひご一読いただければありがたい。

 さらにこの本は、社会貢献を志す若者を応援するためのプロジェクト「世界を変える100人になろう」のオフィシャルブックとしてリリースされる。9月15日には、「社会貢献×キャリアデザイン」をテーマにしたオフィシャルイベントも開催予定だ。ぜひこちらにも参加し、議論に加わってほしい(詳細はこの記事の最後に掲載)。

若者の社会貢献モチベーションを
企業はどう取り込むべきか?
 アメリカの日本企業1000社の人事コンサルティングを行なってきた国際人事コンサルタントの奥山由実子氏(株式会社イマジナ代表取締役)によると、

「働く人の2人に1人は、自分の仕事にやりがいを感じない、好きではない」

 と感じているという。

 これは働く人いとっても人生の大きな損失だし、企業にとっても危機である。社員にモチベーションがなくて、企業が成長できるわけがないからだ。そこで出てきたのが「モチベーション3.0」。成果主義などの金銭的報酬では社員のモチベーションはもう上がらないため、社会貢献などの「やりがい」「自分の仕事が世の中の役に立っているという実感」が長期的にモチベーションを上げ企業を成長させるという考え方だ。単行本も発売され、アメリカでは大きな話題になっている。

 学生は本能的にこういうことを察知して、「社会貢献を仕事にしたい」と考えているのかもしれない。「御社に入社して社会貢献したい」という学生を、企業は「甘いこと、言ってんじゃねえよ」と考えているかもしれないが、甘い考えを変えた方がいいのはもしかすると企業のほうかもしれない。

 いまや、学生の社会貢献志向を満たすことができなければ、優秀な学生が採用できなくなる時代。実際、アメリカではすでにそうなっている。学生の社会貢献志向を尊重しなければ、たとえゴールドマン・サックスといえども、優秀な学生を取ることができなくなっているのだ。

 奥山由実子氏は、これからの人事事情についてこう語る。

「この2年間は、企業側も必死の生き残りをかけているので社会貢献どころか現従業員の給与の確保さえ厳しく、研修などの教育費も絞っています。しかし、このトンネルをぬければ、また新たな戦略が必要になり、その中で『社会貢献』は、今後注目のキーワードとなるでしょう。

 会社のコーポレートミッションと社員一人一人の仕事をいかに自然に社会貢献に結びつけるかで、成功するかどうかの差がつくでしょう。自分が働くことで、自分のため、人のためになる、そんな時間をすごしたいと思っている人は確実に増えていますから」

消費者のニーズを無視して生き残れる企業はない。それと同様、働く人間のニーズを無視しても、企業は生き残ることはできない。一流企業に就職した若者が、なぜ3年で会社を辞めていくのか。その理由を知りたければ、一度、社会貢献思考で考えてみるといいかもしれない。そのためには僕の本も役立つだろう。社会貢献でメシを食いたいという若者の気持ちも、少しは理解できるかもしれない。

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【編集部よりお知らせ】

 記事の中でもご紹介した通り、社会貢献を志す若者を応援するプロジェクトの一環として、当連載の執筆者・竹井善昭氏による単行本を発売いたします。「社会貢献を仕事にするとはどういうことか」を、大きく4つの選択肢をもとにわかりやすく解説しています。また、単行本と併せて、イベントも開催いたします。
(詳細は追ってまた、この記事の中でお知らせいたします)

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