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白熱激論! 電子教科書は日本を救うか 第5回
2011年01月12日(水) 現代ビジネス 田原総一朗
田原: 愚問かも知れませんが、パソコンで文章を書くようになった。手紙を書くようになった。するとみんな漢字が書けなくなった。ITになるとそういうことが起きません?
孫: ある意味での退化と進化だと思います。要するに漢字が書けないというのはある意味での退化なんですけども、逆に言うとそれも進化だと僕は捉えている。
田原: もっと言うとね、今の退化の典型は携帯電話なんです。
新聞記者は政治家への取材を携帯ですませる。フェイス・トゥ・フェイスで会いに行かない。で、(政治家も)携帯で返事するのはいい加減な返事なんですよ。そんな話を新聞に書いちゃう。便利になると、みんな苦労しない。そのかわりでどんどん退化するんじゃないかと思うんです。
孫: いや、それは両方だと思うんです。要するに、携帯の前の時代に電話を使っていても「人間が目と目を見て話をしないとダメだ」と言われていた。でも目と目を見て話せる一日あたりの回数、人数って何人ですか。
それに対して、電話が出来ることによって、しゃべれる人の数ははるかに増えた。メールが出来たり、ツイッターが出来たりすると、はるかにコミュニケート出来る人数が増えた。しかも双方向で。
だから便利になって効率を上げていく部分と、たまにはこうやってお会いして目を見ながら雰囲気を見ながら、場合によっては拳骨の届く範囲で、という緊張感のなかで・・・(笑)。
田原: そう。拳骨の届く範囲っていうのは大事です。唾を掛けてね。唾が掛かるのが大事。
孫: 大事。
田原: 要するに、携帯じゃ唾は掛けない。
孫: だからそれは急所でやるべき。
田原: え?
孫: 急所。
田原: ああ、急所。
孫: 要するに、いつもそれではなくて、ここぞという急所のときに、「やっぱりお会いして話をしましょう」というトドメを刺す。そこはやらなきゃいけない。
田原: 孫さんもそうしてらっしゃる?
孫: 僕もそうですよ。だから僕は毎月海外に行っていますもん。
田原: それを聞いて安心した。やっぱりフェイス・トゥ・フェイスって大事なんだ。
孫: 大事ですよ。だから時間の効率は悪いですけど飛行機に乗らなきゃ行けないけど、毎月アメリカに行ったり中国に行ったりシンガポールにいったり。それは目を見てフェイス・トゥ・フェイスで。
田原: やっぱりそこが一番大事なところですね。僕はITに反対じゃない。電子教科書も反対じゃない。だけど、効率がいいもんだから、だんだん教師がサボタージュして、手抜き手抜きになるんじゃないかというのが心配なの。
◇日本の先生は雑用が多すぎる!
孫: そこでね、ちょっと面白いデータがある。
小学校の先生方が生徒に直接指導するために費やしている時間のパーセンテージは、実は全体の37%なんです、日本は。
田原: あとは何をしているの。
孫: あとは点付とか事務連絡とか明日の授業の準備とか、そういうことに残りの63%を費やしている。で日本の先生方は、労働時間は結構長い。
だから労働時間は割と長くて、過酷な労働をしているんだけれど、授業というものに費やせる時間は約40%。他の国々と比べると、かなり低いんです。
田原: つまんない仕事をいっぱいしているわけだ。
孫: そう。身体はいっぱい使っているんだけど。
アメリカですら57%、韓国は50%です。つまり50~60%を授業に費やしている。日本は直接指導に当てられるのは37%です。
田原: 雑用が多すぎるんだ。
孫: そう、雑用が多い。だから点付けなんていうのはね、電子教科書で自動的にやりゃあいいじゃないか。先生が時間を割くのはそこではなくて、赤ペン先生のように、手取り足取り指導をするところ、あるいは「正解率の低い問題については明日の授業でさらにもう一回復習しよう」とか、ディスカッションをしようとか、そういうふうに科学技術で出来るところは出来るだけ端折りましょうと。
さっきの電話もそうです。事務連絡的なところ、あまり感情を伴わなくてもすむようなところは機械を使ってやりましょうと。で、肌で見て、抱き合ってやるようなところは、はやりハイタッチ(人間同士の触れあい)で。だからハイテク&ハイタッチだと。
田原: 両方必要だと。
孫: うん。だから仕事もハイテク&ハイタッチ、教育もハイテク&ハイタッチ、医療もハイテク&ハイタッチですよ。
で、シリコンバレーの人たちほど、それぞれの自宅にプールがあって、庭には緑がある。一件当たりの自宅にプールがある率は、シリコンバレーが一番高いんじゃないですか。
田原: カネを稼いでいるから。
孫: カネを稼いで、仕事場に行ったらハイテクだらけ、家に帰ったら庭の緑とプールと家族とバーベキュー。
田原: 家にはハイテクはないわけ?
孫: あります。家の中でもそのハイテクでチャッチャッとこなして、で、あとは家族とバーベキューしたり歌を歌ったりというハイタッチの生活です。仕事の生産性はハイテクで徹底的に生産性を上げて、土日は家族とわーっと過ごす。そういうふうにものすごくメリハリがある。アートを愛するし、健康を愛するし。
◇教育と格差社会!
田原: それは分かるけど、シリコンバレーでプールを持っているのは国民のごく一部で、アメリカの平均年収は日本よりも低い。それに貧しい層は日本よりもはるかに多い。
孫: そうです。それは3億人以上いて、世界中から移民も積極的に受け入れているから、トータルの平均年収はそういうことなんですよ。ところがいわゆる教育をきちんと受けて、純粋なアメリカ育ち、アメリカ人という家族はやっぱり(年収が)高いんですよ。
田原: それが問題です。きっと孫さんはそうおっしゃるけれど、みんなはそうは言わないでしょう。そんな格差があっていいのか、っていう話になっちゃう。
孫: おっしゃる通り。これがね、逆に思想の部分なんです。思想の部分として、日本は丸ごと、手をつないで赤信号に向かっていく、手をつないでみんなで沈みましょう、というふうになって、日本全体が世界の格差社会で沈むか・・・。
田原: 今はそうなりつつあるんですよ。
孫: あるんですよ。だから競争を嫌うこと、国内のなかでの格差を嫌うこと、頑張ろうとする者・競争で抜きんでていこうとする者の足を引っ張ることが、格差社会の是正になると勘違いしている人が多い。
田原: それが教育だと思っている人がいる。
孫: そう。格差社会反対といって、上に行っている人を引きずり下ろそうとする。教育もそうです。成績のいい子どもを引きずり下ろしてイコールにすることが格差のない教育だと思いこんでいる部分に問題がある。
田原: そうじゃなくて、下の人を上げろと。
孫: 下を上げる。下を上げて、上はもっと行けと。上がもっと行くと、さらに平均もそこに追いつこうと頑張る。
日本のシンクロの有名な鬼コーチである井村雅代さんはすごい。一度あの人を取り上げたNHKか何かの番組を見て驚いたんです。
シンクロで全員で足をビッと上げなきゃいけない。そのときに一番能力のある選手は足が先にピャッと行く。それで真ん中くらいのレベルの選手は少し遅れていく。落ちこぼれはさらに遅れて足が上がる。さてそのときにです。シンクロは全員が揃わないとダメなんです。全員が揃わないといけない。格差ゼロの足上げにするためにどうするか?
一番能力があって最初にピッと足を上げる選手に、「お前早すぎだ、ええカッコすな」と言って0・1秒遅らせる、ということでシンクロさせることもできる。合わせやすい。
田原: でもレベルは落ちる。
◇教育にとって社会のニーズとはなにか!
孫: その代わり平均に合うわけです。でも井村さんは違う。平均に合わせてシンクロさせるのではなく、一真ん中の選手の尻を叩いて「一番早い選手に合わせろ」と、一番落ちこぼれの選手には「泣いても合わせろ」と言って一番スゴイやつに合わさせて残り全員を引き上げるというのがあの人の方針なんです。
田原: 今の教育の方針は、一番出来るやつは放っておくんですよ。勝手にやれと。
孫: そう。一番出来るやつには「お前、出来すぎだから、次の次のページのことを聞くな。自分ばっかり先走るな」と言って頭を叩く。それだからやる気をなくすわけです。
僕なんか二週間で、高校三年分をアメリカで卒業したんですから。こんなの日本では、「早すぎた」と叱られますよ。
田原: (会場に向かって)ねえ、これに反論のある人? 「違うぞ」という人、手を挙げて。
質問者 反論かではありませんが、今この会場で議論を聞いていると、電子教科書導入で二つの問題があると思うんです。一つはミクロの問題で、電源がどうなっているとか、電子教科書が入ってきて学校がどうばたばたするかといった問題と、それと大きな社会の問題があると思うんです。
教育というのは方法で、どういう生徒を育てるか、社会のニーズに沿ったような生徒を、先生方は真面目に一生懸命社会に送り出すのが務めだと思って日々頑張っているわけです。
その社会がものづくり中心だったり、それから世の中の考え方として、学歴社会というのがあったり、受験戦争で暗記型の受験問題だったりすると、せっかくいいデジタルの教科書が入っても、それを使いこなしている子どもたちが社会に出たときに、社会と上手くやっていけないというか、そういう・・・。
田原: ちょっとあなたに聞きたい。社会のニーズって何ですか。
質問者D ですから今の日本の社会のニーズっていうものが、たとえば学歴社会というものであるとしたら、そういう社会のニーズに沿った生徒を育てるというのがやっぱり・・・。
田原: じゃあ、「あんまりいい大学に大学に行くと思うな」と?
質問者D 子どもたちがいい大学に入りたいと言えば、暗記型の受験問題であれば、それに沿ってやります。「情報」という授業がありますけど、ある進学校では情報の時間にパソコンを使わないで数学をやらせたりということが過去にあったわけですよね。そこらへんの歪みっていうものがあって・・・。
田原: ちょっとごめんなさい、今、孫さんに代わって言う。さっき孫さんがおっしゃたのは、今の大学がなっていないということもある。
孫: そうです。
田原: アメリカの大学は、どっちかというと入学は易しい。でも卒業が難しいんだよね。日本の大学は入学試験ばっかり難しくて、卒業は楽なの。なぜか。単純に言うと、「大学教授がサボりたいから」。そこを直さないといけないと孫さんは言っている。
孫: で、大学教授はどこかの役所のナントカ委員にばかり出ている。
田原: そう。だから東大の教授はノーベル賞を貰えないんです。京大は(霞が関から)離れているから、文部省やなにやらの審議委員とかになれないから、一生懸命勉強してノーベル賞貰っている。まあいいや、これは余計な話。
質問者 だから教育だけを変えるとかそういうことじゃなくて、それはデジタル教科書を入れるとしたら、もう日本の国全体で、「IT立国を作るんだ」という取り組みがなくちゃいけない。
田原: だから最初にクラウドっていう話を孫さんにしてもらったんです。これはもう社会が全部変わるんだと。
◇教育にとって一番大切なのは「思想」!
孫: まず最初の簡単なほうの質問からお答えしますけど、たとえばこのiPad---まあ僕はiPadを売っているからiPadばかり言っていて怒られるかも知れないけれど---アンドロイド・パッドもこれからどんどん出てきますから。
これが、10時間電池が持つわけです。つまり学校で勉強している間くらいは家で充電しておけば一日まるまる大丈夫です。さらに今でももうすでに10時間持つわけですから、これが20時間、30時間になると。それから充電するのに家で忘れても、学校で充電くらいは出来るでしょう。そういう問題は技術で簡単に解決出来る、短期的な問題です。
見せる字がきれいだとか汚いとか、速度が早いの遅いの、ソフトがいいの悪いの、コンテンツやアプリケーションがいいの悪いの、これは短期的な問題だから、さしたる問題ではない。
一番大切な問題は今二番目にお聞きになられた思想の部分ですよ。要するに生徒に何を教えるのか。それは国家の方針、国家のビジョンがあって、そのこれから30年後、50年後、100年後の日本の天下国家をどうしたいんだと。これを日本のリーダーが語らなければいけない、総理大臣が語らなければならない、文科大臣が語らなきゃいけない。
ということで、今の政治家の先生方に一番求められていることは、来年のマニフェストどうするかとか、再来年の選挙どうするかという次元のことではなくて、30年後の日本の天下国家をどうするんだ、50年後の日本の天下国家をどうするんだと語ることです。農耕社会から工業社会になって、どうかすると政治家の議論がまた農耕社会に戻りそうな議論をすぐしたがる人がいる。
選挙のたびに長靴履いて田んぼに入って票取りをしたい。そればっかりがまた日本のNHKだなんだで流れる。選挙の前になると、必ず墓参りと田んぼで長靴を履く。そうするとなんか「あの人は立派な政治家だ」と。それって日本の社会全体をまた農耕社会に舞戻したいのかと。(農業・漁業は)GDPの2%ですよ。それで日本の天下国家が支えられるますか。
そこからせめて工業化社会だし、工業化社会も今から30年たったら絶対に組立業では成り立たない。だから頭脳革命、情報革命のところに子どもたちを送り出さないといけない、そういうIT立国をしようというビジョンが必要です。
以降 vol.6 へ。(近日公開予定)
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