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日本丸はゆっくりだが確実に沈みつつあるぞ!

2010年12月27日(月)日経ビジネス 竹中正治 

「私達の抱える経済的諸問題は解決可能である。ほとんどの経済的諸問題には複数の解決法がある。しかしながら、これらすべての解決法は誰かが経済的なコストを負担することなしには実現しない。誰もコストの引き受け手になりたくはない。しかも私達の政治的なプロセスは社会階層の誰かにこのコストを強制することができない。誰もが他の誰かが問題解決に必要な経済的なコストを負って欲しいと望む。その結果、解決法はいずれも採用不可能になってしまう」

この文章を読んで、多くの方が「ああ、まさに今の日本のことだ」と感じないだろうか。しかし、この文章は1980年に発刊されて世界的なベストセラーになった「ゼロサム社会(The Zero-Sum Society)」の一節である。著者のレスター・C・サロー教授が言う「私達の経済諸問題」とは1970年代のアメリカを対象にしたものだ。

 もちろん、ここで指摘されている問題状況は、当時のアメリカのみならず欧州や日本など民主主義的な政治システムを有するすべての諸国について時代を超えて共通するものだ。だから世界的なベストセラーにもなった。

民主政治は特定階層に負担を押し付けられない
 サロー教授が30年前に指摘したこのような現代社会の問題状況に対して、2つの両極端のアプローチがあり得る。

 1つは、所得とコストの分配問題を市場メカニズムに最大限委ねることだ。政府は自由で公正な競争ルールの制定と監督者としての役割は果たすが、分配に直接関与することを回避するアプローチだ。

 アメリカでは「リバタリアン」と呼ばれる政治思想がそれを代表しており、彼らの原理的な主張は医療保険などの完全な民営化などにとどまらない。麻薬や妊娠中絶の問題についても政府の介入や規制を否定して、個人の自由(自己責任)に委ねることを主張する。1980年代のレーガン政権は、アメリカの保守系キリスト教徒の価値観を色濃く代表していたので、リバタリアンほど原理主義的にはなれなかった。「伝統的な価値観の保持と小さな政府思想の折衷」だったと言えるだろう。

 「新自由主義」「市場原理主義」などと小泉純一郎内閣時代の施策をラベルの貼り付けで攻撃する方々がいるが、小泉政権はアメリカのリバタリアンの主張に比べれば極めて中道的だったと私には思える。

 リバタリアン的アプローチと対極をなすもう1つの原理は、「無産階級による有産階級の収奪」「労働者階級による独裁(あるいは執政)」を唱えたマルクス主義的アプローチだろう。もちろん先進諸国ではそうしたアプローチはとうとう実現せず、ソ連邦は最後には崩壊し、中国社会主義経済も大きく変質した。

 両極端の原理主義的なアプローチが現実的でないならば、両極端のどの辺に軸足を置くべきかが、政策原理をめぐる争点となる。そのように考えれば、菅首相のように英国のトニー・ブレア首相の真似をして「第3の道」などと言わずとも、「資本主義vs社会主義」の対立が終焉した時代に生きる私達の選択肢には程度の違いはあれ、元々「第3の道」しかないと言えるだろう。

サロー教授が指摘したように、我々の政治システムは社会の特定階層に負担を押し付けることはできないので、コストは国民が所得や消費に応じて広く負担するしかない。政治家の使命とは問題解決のビジョンを掲げ、そのコスト負担について国民の多数を説得することにある。

 政権交代から1年余りが経ったが、残念なことに民主党政権の財政・経済政策の事実上の破綻は鮮明になるばかりだ。農家への戸別所得補償制度や子供手当などの財政的なバラマキ政策のみが先行してきた。その一方で2009年のマニフェストにも盛り込まれていた「年金制度を一元化し、消費税を財源とした最低保障年金を導入する」など抜本的な改革は、議論すら進んでいない。

 歳出の組み換えと無駄の洗い出しや財政埋蔵金の掘り出しで十数兆円の予算を捻出するという民主党の構想は、財政学者らが事前に指摘していた通り「非現実的」だった。行政刷新会議は埋蔵金よりも大きな「埋蔵損」と呼ぶべき政府のバランスシートに埋もれた含み損に直面した。

 財源手当てが不可能であることが判明したのだから、歳出プランも見直すべきである。ところがバラマキだけは先行させている。その結果、政府債務残高はとうとうGDP国内総生産)の200%に達しようとしている。ここに至っては、農家戸別補償も子供手当も、もはや「選挙民の票を金で買う策」に堕落したと言わざるを得ない。

経済成長だけでは日本の財政は再建できない!


 いまだに「財政再建は経済成長率を引き上げることで増税なしでできる」と唱える政治家や政党がいるのが私には不思議だ。

 簡単な検証をしてみよう。図は水平軸を名目GDP成長率、垂直軸を財政赤字のGDP比率とし、各年度の名目成長率と財政赤字比率を分布させたものだ(対象期間1981~2010年)。確かに成長率が上昇すると財政赤字が縮小する右肩上がりの傾向(近似線の方程式Xの係数0.5161が示す傾き)が見られる。しかしながら、近似線の一次方程式が示す通り、政府の歳入歳出の構造的な改革がない限り、名目GDP1%の上昇で、財政赤字比率は0.52%しか減少しない。

この現実を前提にする限り、年間の財政収支を名目成長率の上昇で均衡させるためには、名目成長率はなんと12%台となる必要がある。対象期間を1990~2010年に変更して計算しても、財政収支を均衡させる名目成長率は9%台が必要という結果になる。

 労働人口(15~65歳の人口)が毎年約0.5%程度減少している日本の実質成長率は、好況期でも2%程度が巡航速度だ。これは1人当たり実質成長率としては先進諸国が収斂する平均的な成長率である。従ってデフレから脱却してインフレ率が仮に2%となっても、名目成長率は4%前後が想定できる上限だろう(名目成長率=実質成長率+インフレ率)。

 9~12%などという名目成長率は先進国ではインフレが暴走しない限り起こり得ない。それとももしかして、経済成長で財政再建を主張する方々は、インフレ高進で過去の政府債務を実質棒引きすること(「インフレタックス」と呼ばれる)を考えているのだろうか。

 

解決策は消費税増税しかない!

 現代の日本の財政赤字膨張の原因は、もはや非効率な公共事業の膨張(1990年代には言えたことだが)でも、公務員給与の増加でもない。過去平均で毎年約1兆円ずつ増え、国債費(国債の元利払い)を除いた一般会計歳出の38%に達した社会保障関係費の増加が、歳出面での最大の増加要因だ(財務省「日本の財政関係資料」平成22年8月、10ページ)。団塊の世代が65歳となって給付の受け取りに回る2012年頃から、この増加は毎年平均約2兆円規模になると見込まれている。

 一般会計における社会保障関係費とは、社会保険費、社会福祉費、生活保護費、保健衛生対策費、失業対策費などで、そのほとんどは国民への様々な給付である。単純化して言えば、引退する世代が政府負債を増加させながら給付を受取り、将来の納税者(自分らの子や孫の世代)から事実上の搾取をしている構造が問題なのだ。給付の削減を否定するなら増税しかない。

 所得税の引き上げは、相対的に所得は大きいが消費は小さい現役世代(将来に備えて貯蓄するため)の負担を相対的に大きくするので、世代間不公平の解消に十分ではない。消費に課税する消費税は引退世代から現役世代まで消費に応じて課税できるので、世代間不公平解消にも寄与する。

 消費税増税がもたらす税負担の非累進的な影響については、所得税率の累進度を多少高めることで調整できる。非課税所得水準以下の貧困あるいは低所得家計には還付する仕組みも良いだろう。一気に消費税を引き上げるとその後に反動の消費減が起こり、景気が失速することを懸念するならば、毎年1%ずつ引き上げて5年で5%、10年で10%引き上げることで対応できる。

 すべてに対応可能な方策がある。欠けているのは政治的な意思だけだ。

 「政府が歳出の無駄や非効率を徹底的に洗い出すまで増税には反対だ」と唱えている方は(それはそれでやる必要はあるものの)、船底に穴が開いて沈みつつある大きな船の中で、水道管の水漏れを先に直せと言っているようなものだ。

目を覚ますには日本国債の「ミニ暴落」が必要?

 このまま日本の財政赤字と政府債務の累積が進むとどうなるのだろうか。先進国の自国通貨建ての国債は、原理的にデフォルトは起きないと考えられてきた。なぜなら自国通貨で償還すれば良いのだから、いよいよとなれば中央銀行・政府の通貨増発で返済できるからだ。単純化して言えば、紙幣を刷る機械さえあれば返済できる。その結果、インフレが高進し、通貨相場が下落しても、償還不能は起こり得ない。返済不能になる可能性があるのは外貨建ての借り入れである。

 こうした投資家の常識に衝撃を与えたのは2001年のアルゼンチンの通貨・金融危機とそれによって生じた国債のデフォルトである。結局、ドルや円など外貨建ての国債と同時に自国通貨ペソ建ての国債も元本棒引きになった。それでもアルゼンチンは先進国とは認識されていないから、「ひどい話だが、ああいう国では、なんでもありだね」と思うことができた。

しかし今問題になっているのは、ユーロ圏という経済的に先進国地域の一角をなすPIIGS諸国のデフォルト懸念だ。ギリシャとアイルランドだけなら経済規模も小さいからデフォルトになっても問題ないと高を括れるだろうか。「ギリシャとアイルランドで起こることはスペインなど他の国でも起こり得る」と投資家は考える。

 金融・投資現象の厄介さはその連鎖性にある。2007年にサブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)危機の最初の兆候が起こった時、「サブプライム市場はアメリカの住宅市場全体の10分の1に過ぎないから、アメリカ経済は乗り切れる」と高を括っていた投資家や政府高官は少なくないのだ。

 今欧州で起こっているPIIGS諸国の国債のジャンクボンド化は最終的に「先進国の自国通貨建て国債は絶対大丈夫」の前提を崩壊させるリスクを秘めている。しかも世界の投資家の行動パターンは時に急激に変化する。それまで「大丈夫」だった対象が突然信用を失い、投げ売りの対象に転換することを私達は今次の金融危機で目撃したばかりだ。

 政府や政治家にはいまだに「日本国債は95%が国内で保有されているので大丈夫」と強弁する方々がいるが、国内投資家が日本国債を見限って投資の海外シフトを大規模に始めたら(日本からの資本逃避)、「大丈夫」の前提は崩壊してしまう。日本の対外対内投資は自由化されているので、国内投資を国内にとどめておく規制はない。

 明日や明後日にそうなることはないだろうが、10年のタイムスパンで考えたら、日本からの資本逃避という事態も当然想定して長期的な財政再建に今から取り組むべきなのだ。そのリスクを政治家、国民に知らしめ、重い腰を上げさせるためには、国債の「ミニ暴落」程度のことが起こる必要があるのかもしれない。

 もっとも今のところ投資家、投資機関も腑抜けで、リスク回避指向をつのらせて、後生大事に国債投資を積み上げている。この点にこの国の閉塞の根本があるのかもしれない。

船はゆっくりと沈みつつある、間違いなく!

 今の日本の財政問題に必要なのは「このままでは船は沈みつつある」という厳然たる事実を直視する勇気だろう。その勇気がない政治家も投資家も沈みつつある船にしがみつき、そして最後にパニックになって我先に海に飛び込むのだろうか。

 日本の財政的沈没を食い止める路線転換を民主党が政権を維持したままできるかどうか、残された時間は急速に短くなっている。内閣と民主党に対する支持率が急速に低下しているからだ。党内の路線対立で政策を一本化できないならば、潔く分裂したら良いだろう。

 志のある方々は自民党と連立を組み、消費税増税を含む長期的な財政再建路線とTPP(環太平洋経済連携協定、これについてはまたの機会に)参加を掲げた改革を断行して頂きたい。自民党でもその2つに賛成できない方々は潔く脱党して、民主党の残り半分と組むなりすれば良いだろう。その時、ようやく日本の政党も政策原理に基づいて動き出すことができるのだ。

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