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産経新聞 10月11日(月)7時56分配信

■当局放任/日本はビデオ公開及び腰

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影したビデオ映像の公開を日本政府が先延ばし続けるなか、中国国営通信社や共産党系のインターネットサイトで、海保の巡視船側が中国漁船に衝突したとする図などが掲載されている実態が10日、明らかになった。日中首脳会談が4日に行われたにもかかわらず、中国当局も放任を続けており、中国政府の一方的な主張が“既成事実化”する恐れも強まっている。(原川貴郎)

中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は、衝突事件の“実態”について、日本の巡視船の方から中国漁船に衝突したとする説明図を掲載してきた。中国政府の「日本の巡視船は中国の領海で中国漁船を囲み、追いかけ、行く手を遮り、衝突して損傷させた」(姜瑜・中国外務省報道官)との主張に沿ったものだ。

 「(中国漁船が)巡視船に体当たりした悪質な事案で逮捕は当然」(前原誠司外相)とする日本側の説明とはまったく異なる。

 1日ごろから同紙のサイトからはこの図はなくなったが、今も国営新華社通信のサイトのほか、中国の大手ポータルサイト「新浪」の衝突事件特集サイトなど、中国ネット空間のあちこちに氾濫(はんらん)している。

 環球時報は9月23日から10月6日まで尖閣諸島周辺海域で活動した中国の漁業監視船2隻に記者を同行させた。記者らは次のようなリポートを送ってきた。

 「われわれの船は日本側の封鎖を突破し赤尾嶼(日本名・大正島)海域への歴史的な航行に成功した」

 また、インターネット上の同紙のサイトでは、「中国人が1年間、日本製品を買わなければ日本はすぐ破産する」「日本はすべて中国の領土だ!」などの過激な書き込みが今も続く。

 9日夕から同紙のサイトは無料のオンラインゲーム「防衛釣魚島(尖閣諸島の中国名)」を登場させた。中国漁船を操って、日本の「軍艦」に「靴」を投げ尖閣諸島へ航行、日の丸が掲揚された灯台を倒し、中国国旗を翻せば「任務完了」-という内容だ。同サイトは「国家防衛の危険と挑戦が体験でき使命達成の快感と栄誉も得ることできる」とプレーを呼びかける。

 視覚に訴える中国側の主張を打ち消すためにもビデオ映像の公開が有効だが、ためらう日本側を尻目に、中国のインターネット空間では事実に即しない一方的な主張や「悪のり」が続くかもしれない。


【軍事情勢】「粛々」と「冷静」に滅ぶ国家!

語感・行間が醸し出す日本語の精緻(せいち)な機微は、外国人泣かせではあるが、使いこなせる真(まこと)の日本人には、それはそれで趣があり、日本社会の中でも重要な役割を果たしてきた。だが、時としてその種の“日本語”は「逃げ口上」に利用されるから要注意。沖縄県・尖閣(せんかく)諸島付近で中国漁船が海上保安庁の巡視船に故意に衝突、船長を逮捕しながら釈放した事件でも「粛々」「冷静」など“慣用語”の大安売りが、民主党政権の見苦しい言い訳に大いに貢献した。

■「イラ菅」返上?

 海保も所管する馬淵澄夫国土交通相(50)は9月24日午前、記者会見で「国内法にのっとり粛々と対応することに変わりはない。毅然(きぜん)とすべきだ」と語った。当然の発言ではあったが、頼もしかった。ところが、船長釈放決定の24日夕には「検察の判断」に責任を転嫁し、政治責任には言及していない。前原誠司外相(48)も「粛々」を連発した。釈放後ですら「もし同様の事案が起きれば、また同じような対応を粛々とすることに尽きる」とまで断言しており、かなり「粛々」好みのようだ。「検察が判断したことについては、政府の一つの機関が決めたことだから、われわれ(閣僚)はその対応に従う」と前置きしているから、閣僚の制度上の姿勢に言及したのだろうが、実態は「同種事件が起きたら、また粛々と釈放する」と宣言したに等しい。

 一方、「冷静」派も多かった。その筆頭格は、菅直人首相(64)。「冷静に努力していくことが必要」などと、およそ「イラ菅」の異名にふさわしからぬ発言に終始している。 日本語の“奥の深さ”は「粛々」「冷静」にとどまらない。「大局的」「総合的」という便利な言葉も多投された。「戦略的互恵関係を構築するについて、刑事事件の処理とは別に、何が良くて、何が悪いかというのは別途、われわれが考えるべき大局的な政治判断が必要だ」(仙谷(せんごく)由人(よしと)官房長官)、「総合的に判断するということは、現行制度上ありうる」(岡田克也幹事長)といった具合だ。

 いうなれば、民主党政権は「粛々」と「冷静」に、そして「大局的」かつ「総合的」に、中国の武威と経済・文化上の恫喝(どうかつ)に屈したのである。

 ■超大物「第4列の男」

 民主党の議員とその秘書、党職員には左翼(反代々木)系市民活動家がウヨウヨいるが、公安筋によると、超大物の国会議員は学生時代「第4列の男」としてマークされていたのだそうだ。「アンポ反対」デモの際、警察・機動隊は第1列から3列目までを指導・煽動(せんどう)者とみなし検挙することが多かった。ところが、その超大物は「いつも第4列に陣取り、検挙を免れていた悪賢い卑怯者(ひきょうもの)であった」そうだ。かつては、国家・公共施設を破壊して痛痒(つうよう)を感じぬ、国家観なき地球市民にとって「粛々」と「冷静」に、そして「大局的」かつ「総合的」に、中国の武威と経済・文化上の恫喝に屈することなど、国辱とは考えられぬのであろう。

 同じ左翼でも“代々木(共産党)系”は今回に限って論ずれば筋が通っていた。志位(しい)和夫委員長(56)は「国民に納得のいく説明を強く求める。領有権について歴史的にも国際法的にも明確な根拠があることを明らかにする積極的な活動が必要だ」と明言したのだ。主義・思想が違っても外交・安全保障政策は志を一にするべきだ。

 ■中国並みの厚顔無恥

 ところで、民主党の厚顔無恥は中国並みといえる。釈放をはさんだ外遊先のニューヨーク・国連本部における菅首相の「放言」が、それを実証している。まず、安保理事会では「戦争や紛争・災害によって破壊された市民生活を再生することが、真の平和につながる」。続いて、小島嶼(とうしょ)国開発ハイレベル会合で、災害や地球温暖化に苦しむ小島嶼国家の「力強いサポーターであり続ける」と宣言。総会では、常任理事国入りへの決意表明を行った。

 自らが主権を侵され「市民の平和」を脅かされているのに、どうし国際社会の「真の平和」を守れるのか。自国領の無人島すら守れない国家指導者が、小島嶼国の「力強いサポーター」とは片腹痛い。さらに、常任理事国はすべて軍事大国で、常任理事会は「軍議の場」でもある。軍事的制裁力を持たぬ「唯一の被爆国」という立場では「国際社会の平和と安全のため責任を果たす」(菅首相)ことなど、不可能だと言っておく。

 「原理主義者」だったはずの岡田幹事長も厚顔無恥になったのだから、中国の「圧力」とは実(げ)に恐ろしい。

 「まるで、中国から言われたから判断を曲げたような、そういうふうに理解をされたとしたら、それはまさしく国益を損なうことだ」

 「理解をされたとしたら」などと、まるでそうではないような言い回しだが、国民の大多数は「中国の多方面にわたる圧力に脅えて判断を曲げた」と確信している。そして、間違いなく「国益は損なわれた」。(九州総局長 野口裕之)


韓国から学べ! 「センカク」問題!

ソウルからヨボセヨ

 尖閣諸島問題で韓国が微妙だ。ニュースは相当大きく報道され、中国警戒論が強調されている。韓国哨戒艦撃沈事件や関連の米韓合同演習に対する中国の親北・反韓的な姿勢もあって、このところ韓国世論の対中感情はよくない。

ただ同じ“領土問題”である日本との竹島(韓国名・独島)問題には触れないようえらく気を使っている。マスコミには竹島問題は一切、登場していないし日本批判もない。「日韓には領土問題は存在しない」という彼らの立場からあえて触れないのだ。

 今回、日本発のニュースが多かったこともあり、島の名称もマスコミでは中国名の「釣魚島」より日本名の「センカク」を多く使っていた。「日本が実効支配するセンカク諸島」という報道も結構あった。日本は竹島を韓国に“取られた”教訓を尖閣に生かさなければならない。たとえば韓国のテレビは日本と違って、毎時の天気予報で必ず「鬱陵島・独島地方は…」と地図入りで領有を誇示してきた。

 今、沖縄のトランスオーシャン航空(旧南西航空)をはじめ日本の航空会社は機内地図に尖閣諸島をちゃんと入れているか。NHKや沖縄のテレビは天気予報で毎時「与那国・尖閣地方は…」と放送しているか。こんなことからやらないと尖閣も取られてしまう。(黒田勝弘)
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