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自衛隊の装備、制服を海外調達せよとは何ごとか!

2010.10.14(Thu)JBプレス坪井寛

 昨年11月、事業仕分けで「制服は中国で縫製して輸入すればもっと安くなる」という論議が起きたことはまだ記憶に新しい。この論議は本当に独立国日本政府内での会話なのかと、耳を疑ってしまった。

自衛隊の制服を中国に発注せよ!
 これをニュースで知った全国各地の陸海空自衛隊員は、どんなにか落胆したことであろう。国防の何たるかが欠落しているのである。

 この一件は防衛省が宿題として持ち帰らされ、いまだ解決されていないのである。いつ何時また蒸し返されるか分からない問題となってしまった。

 本稿は、この国が一向に我が国防衛の基本的なあり方に真剣に取り組まないことへの危機感から、制服類のような繊維関連装備品の生産基盤・技術基盤を例に取り、その実態を明らかにして、正面装備ではなく後方装備の視点から国に対し一言提言するものである。

1.制服とは何か? 戦闘服とは何か?

制服(戦闘服)とは、陸海空自衛官が平・有事を問わず、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める(自衛官宣誓文の抜粋)」ため全員が一身に纏う装備品である。

 戦時においては、納棺服とも言える極めてナイーブな一面を持ち、極めて重要なものである。

 背広タイプの制服も同様に自衛官が天皇陛下拝謁をはじめ各種の式典や儀式において着用するもので、自分は日本国の防人であるとの誇りが表せる大切な正装服である。

米国は中国製の着用を禁止した!


 米国にこの種の象徴的事例がある。2001年に陸軍省は中国製素材を用いて作製された黒ベレーの着用を禁止し、回収・破棄を指示して陸軍の士気・規律の維持を図ったのである。(米国陸軍省覚書「陸軍の黒ベレーについて」;2001年5月1日)

 「国民のため」「国のため」と誓い現場(戦地)に赴く自衛官にとって、国民の手で作られた制服を着ることは、自己を奮い立たせるため絶対に欠かすことができない。

 また運用的にも、もしこれらが輸入品であれば、生産国側の何らかの事由により生産がストップするか、あるいは日本への生産はもう止めたと言われれば、たちまちに自衛官に着せる制服類が底をつくのである。

 今の政府には、自衛隊員がどんな思いで働いているのか想像もできていなく、国防という職務の重みとともに「自衛隊とは何か?」すら理解されていないのではと疑いたくなる。

2.世界に誇れる日本の戦闘服の技術レベル

 現在、陸上自衛隊が採用している戦闘服は、1991年に初めて導入した(それまではOD色の作業服)迷彩型の戦闘服に改良を重ねてきたものである。

 正式には「戦闘装着セット」という隊員個人を対象とした装備品の構成品(防弾チョッキ、88式鉄帽、背のうなど48品目からなる)のうち根幹をなすもので、一般用と装甲用および空挺用の3種類がある。

 共通のコンセプトは、従来の作業服の域を出なかった戦闘服に、陸上自衛隊が初めて戦闘を目的として、火炎防護性(難燃素材を導入)・可視光偽装性(近距離戦闘時の秘匿性を向上させるため日本の平均的な植生を基に迷彩パターンを自己開発)・対近赤外線偽装性(赤外線暗視装置での探知を困難にするため繊維素材に特殊な加工を施す)を付加した本格的な戦闘服である。

一般用と空挺用の素材構成は、難燃ビニロンと綿の混紡(一般用は比率70/30)であるが、装甲用はさらに火炎防護性を高めるためアラミド繊維を採用して難燃レーヨンとの混紡とされている。

 航空自衛隊も、現在では迷彩パターンの違いはあるものの陸上自衛隊とほぼ同等仕様のものを迷彩作業服として採用している。

 海上自衛隊も一般作業服に難燃ビニロン素材を採用しているが、特殊部隊用にはアラミド系を採用している。

3.戦闘服開発の永遠のテーマ/立ちはだかる繊維技術の障壁

 主要先進国の戦闘服(歩兵用)のレベルを一瞥すると、米国はナイロンと綿の混紡、英国・ドイツなど多くの国もポリエステル等の合成繊維を使用している。

 つまり明らかに諸外国では、戦闘服(歩兵用)としては防護性は二の次とし、快適性・着心地を優先してコストを抑えているのが現状である。

 そのうえで各国ともパイロットや戦車・潜水艦など限定的な任務に従事する隊員用としては、アラミド系の高度な難燃素材を使用した戦闘服を採用するなど、ハイローミックスが基本である。

性能は高いが着心地が悪いアラミド系!

 フランスでは2008年アラミド系難燃素材(ケルメルと呼称)を使用した戦闘服を陸海空3軍に採用したとする情報もあるが、細部は不明である。恐らくコストの面から、汎用ではなく特定任務部隊用として限定された職種範囲の装備化と推量されよう。

 アラミド系の素材は難燃ビニロンより火炎防護性に優れており、消防隊員の防炎服等で広く知られているが、快適性や耐久性などに難点が多いため汎用には至っていない。

 日本は快適性・耐久性だけにとどまらず、「隊員の安全・安心を重視」、いわば“命を大事に”というコンセプトにより安全性と快適性の二律背反という難しい壁に積極的に取り組み、約20年前、難燃ビニロンを採用することでコストを抑え安全性と快適性のバランスの取れた汎用の戦闘服開発に成功したのである。

 主要先進国はこのコンセプトをあきらめたわけではなく、20年ほど前に先進戦闘服、いわゆる21世紀型戦闘服の開発に一斉に着手している。そのイメージは、火炎防護性に優れデジタル化に対応しかつ快適な戦闘服であり、まさに夢の戦闘服開発への挑戦である。

 しかしながら、米国のランド・ウォリアー計画(Land Warrior Project)やフランスのFELINなど研究試作としては既に世間に出現しているが、開発着手から20年経った現在に至っても、いずれの国もいまだ汎用(歩兵用)としては正式に実現していない。

 今では、諸外国とも特殊部隊用として、用途を限定して開発を進めている模様である。

 戦闘服の開発は、防護性を上げると快適性・着心地・耐久性が落ちてしまうというジレンマに陥る。これは繊維技術者の永遠のテーマであり、大きな技術の障壁である。


4.日本の戦闘服はこのままでいいのか? 具体的な技術的課題は何か?

 我が国の戦闘服がこのままでいいわけはない。理想(夢)の戦闘服を追い求め続けるとすれば、具体的な技術的課題は一体どこにあるのか?

 各素材メーカーは日夜、改善・開発にしのぎを削っているが、繊維メーカーの立場からすれば当面の課題は現行戦闘服に見られる問題点の解消(「夏に涼しく冬に暖かい、快適性に優れた服」)が最大の目標である。

 具体的には火炎防護性能のさらなる向上、防虫性能の付加、ムレ感のさらなる改善、軽量化などが挙げられる。いわゆる「安全」と「快適」を両立させる戦闘服の追求というレベルである。

 しかしながら、夢の戦闘服はこれで終わりではなく、もはや繊維メーカーの域を超え、兵士のデジタル化に対応する被服内配線の付加やウェアラブルアンテナの実現、電磁波吸収・探知など、電気・通信業界との密接な調整が必要となりつつある。

 また、抗菌・滅菌であれば衛生業界と、またパワーアシスト型ロボットスーツとなれば機械業界といった具合に、将来的に多くの業界が関わる複雑な開発構造となるであろう。

 この場合、今の繊維メーカーの自社努力(投資)だけでは到底対応しきれず、官側の適切なリードが必要となる。

 官側がこの辺のところを深く認識して適切な策を講じていかなければ、夢の戦闘服開発は遠のくばかりだろう。


5.戦闘服のような繊維関連装備品の生産基盤・技術基盤の実態は?

(1)川上・川中・川下産業からなる繊維産業そのものが防衛生産基盤

 日本の繊維産業は周知のように、素材(生地)メーカーである川上産業と、その素材を最終製品化するための染色など各種中間加工を専門とする川中産業、および中間製品を縫製して最終製品に仕上げる川下産業(ボタン、ファスナーなど含むアパレル業)からなる。

 また、川上から川下に至る広範な製品化の流れを多数ある企業の中から選択して、必要なものを必要なだけ必要な時期に必要な処に納められるよう、商社が間に入って調整する。

 繊維関連の防衛需要はすべてこの民需のラインで生産されており、艦艇・航空機・戦車など重厚長大型の防衛産業のような防衛専門のラインや工場は1つもない。民需の生産ラインに調整して割り込む形である。

(2)川上産業(素材メーカー)における防衛需要が全体に占める割合は1%未満

 現行の戦闘服は、川上としてクラレ、ユニチカ、帝人の3社が担っているが、各社とも戦闘服関連の年間売上高は会社グループ全体の1%未満でしかない。利益率(GCIP)も民需ラインで生産するため、官との価格交渉の余地は大変小さい。

民間企業の経営努力に支えられている
 このことは会社全体から見れば防衛需要をいつ手放そうが痛くも痒くもないことを物語っているが、各社とも決して「儲けるために」やっているのではないという証左でもある。

 各社ともメーカーとしての社会的使命感から国に貢献、国防の一翼を担えればと手を上げているのである。それが会社の信用力にはね返ればいい、または民需部門の拡販に反映すればいいとしているだけである。

 「安ければいい」という風潮があまりにも長引くと、このあたりの企業の高い意識がいつか折れてしまうのではと心配される。

(3)川下産業は、防衛需要依存度が極めて高い零細企業であるが技術は非常に高い

 繊維関連装備品を受注する川下の縫製産業の多くが従業員100人未満の零細な小企業であり、これら会社はいずれも総売上の80~100%近くを防衛需要で占めているので、受注量削減がそのまま会社の経営危機にはね返る。

瀕死の危機にある零細企業の技術は世界一!

 しかしながら、永年縫製技術の高さが要求される防衛需要に携わってきたことから、従業員一人ひとりの技術レベルは非常に高い。

 自衛隊の制服類は軍服という特殊性から、一般の背広に比べ部品点数・サイズ構成ともに約50%増になるのが特徴で、これらをすべてミシンで縫わなければならない。大変手間がかかり細かい技術が要求される。

 ミシン作業はもともと日本人の性向に合い大変得意としてきた分野であるが、中国をはじめ海外の安い人件費に押されて、今日多くの縫製産業が姿を消して久しく、防衛費が削減されている昨今も制服類縫製会社の倒産が続いている。

 仮に、国が戦闘服(制服)の縫製を海外でと選択すれば、間違いなくこれら優れた技術者を抱えた縫製会社が倒産の危機に晒されるのは、火を見るより明らかである。

(4)民需部門の研究開発体制に支えられた防衛技術基盤(スピンオン)

 繊維関連装備品の開発は、艦艇・航空機・戦車などの開発手順とは大きく異なる。現行戦闘服は、20年ほど前に繊維メーカー各社が防衛省(陸上幕僚監部装備部需品課)の依頼に基づき、現に今存在してすぐに使える難燃素材を防衛省に持ち寄ったことから始まったのである。

装備とは逆に制服は民生品の技術が応用される!

 それを官側がいろいろな角度から検討を重ねて、一般用・空挺用として難燃ビニロン、装甲用としてアラミドの採用に至ったものである。

 このように戦闘服のような繊維技術は、航空機・戦車の技術が民生品に生かされるのとは逆に、民生品の技術が防衛分野に応用された。いわゆるスピンオンである。

 この方式は、官にとっては開発・改善が早く進むという利点があるが、逆に民側で開発に相当のコストがかかる場合、装備化の段階で民側の価格交渉は困難を強いられ、開発に要したコストがほとんど持ち出しになるという欠点がある。

 この点に関して国側が制度として民生分野の活性化策を講じていかなければ、将来民側はペイできないと手を降ろす事態も予測されることになる。

6.戦闘服のような後方装備関連産業の生産・技術基盤をどうすれば活性化できるか?

(1)国は国産条項を制定し、何を国産にしなければならないか、守るべき生産基盤・技術基盤は何かを明らかにせよ。戦闘服がその対象に入るのは異論を挟む余地はない。

 保護貿易にうるさい米国ですら法律によって、「公的需要に関しては、素材から製品まですべて米国産・米国製であること」と定められており、軍需に関して基本的に外国の商品は提案できない。防衛産業保護条項とも言える。

 元来、我が国も昭和45(1970)年防衛庁長官決定(「国を守るべき装備は、我が国の国情に適したものを自ら整えるべきものであるので、装備の自主的な開発及び国産を推進する」)として装備品の国産化を基本方針としている。

 防衛計画の大綱(平成17年)にも、「装備品等の取得にあっては、・・・(中略)・・・我が国の安全保障上不可欠な中核分野を中心に真に必要な防衛生産・技術基盤の確立に努める」と方針だけはしっかりと明記されている。

掛け声だけにしかなっていない「防衛技術基盤の確立」

 しかし、これも閣議決定(平成16年12月)でしかない。

 我が国は、形だけでいつまで経っても何一つ具体化されていない。検討すらしていないのではと疑いたくなる。

 この原因の1つに防衛庁に権限がなかったことが挙げられるが、省に格上げとなった今は政策を自由に出せるはずであり、出すことが権限なしの三流官庁から真に脱皮したことを世に知らしめ、多くの国民に安心感を与えることと信じたい。

 二度と変な議論が起こらないよう、早い時期に法制化に漕ぎ着けてもらいたい。

 筆者は「国防の基本方針」(昭和32年閣議決定)を例えば「国防基本法」として速やかに格上げし、この中で防衛基盤の維持・育成に関する条項を設け、前述の長官決定事項を具体的に盛り込むのが有力な方策と考えている。

(2)調達制度に防衛生産・技術基盤の維持・育成の視点を反映すべく、速やかに制度の見直しを行え。

 防衛省は、たび重なる調達上の不祥事が起こり、そのたびに制度の運用見直しを過剰なまでに行った結果、現在では官僚たちは会計検査院に指摘されたくないの一心で、コスト高になる国産のリスクなど取ろうとしなくなったとの印象を受ける。

安ければいいの発想では国は守れない!

 つまり、安ければいいという風潮がはびこってしまった。この結果、一般競争で落札された調達品に粗悪品が納入されてしまう事例が後を絶たない。

 そこで、官僚が責任を取らないのなら、取りやすいように調達制度そのものに、どのような産業・技術なら防衛基盤の維持・育成のため、一般競争ではなく指名競争による入札を行っても構わないのかを明記するなど制度の見直しを行うべきである。

 防衛省が行う競争入札制度というものは、単に価格だけではなく防衛基盤的要素を加えて、例えば会社の技術開発能力やその取り組み姿勢、緊急生産能力、秘密保全体制、コンプライアンス体制などを点数化して、価格と同レベルで総合的に評価する方式で競うのがベストであると信じる。

7.おわりに

 ここ1~2年で、戦車や戦闘機など重厚長大型の防衛産業において中小のメーカーが防衛産業から撤退するという事案が顕在化したせいか、防衛省も遅まきながら防衛産業の衰退に関心を示し始めた。

 本年1月に北沢俊美防衛相が三菱重工など大企業17社の会長・社長クラスとトップ会談を開催したことは評価できる。

 しかしながら検討の内容を見ると重厚長大型の産業に偏重しており、このままだと制服類に代表される繊維関連装備品のような後方装備の生産・技術基盤が見落とされてしまう。

 政府(防衛省)には、これまで我が国には防衛産業の育成策なるものが何もなかったという事実を強く反省して、この危機をバネに是非とも検討を深め、真に必要な防衛産業育成策を速やかにまとめてもらいたい。防衛産業は、防衛力の重要な一部である。

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