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2010.10.07(Thu) The Economist

中国は特許出願件数で日本を追い抜こうとしている。

 今からわずか5年前、典型的なアップルの「iPod(アイポッド)」に内蔵されている高価な部品の大半は日本製だった。今、iPadを分解すると、ほぼすべての重要部品は韓国製か台湾製だ。こんなにも短期間に、アジアのハイテク産業における日本の優位性は近隣諸国に侵食されてきた。

 2006年から2009年にかけて、米国、欧州、韓国での特許出願数は概して安定していた。だが、日本での出願件数は減る一方、中国が出願件数を大きく伸ばした(図参照)。

 このまま行けば、中国の特許出願件数は今年初めて日本を上回る可能性があり、中国は米国を射程圏内に収めることになる。

 これは驚くべき逆転劇だ。何しろ、2000年時点では、日本の特許出願数は中国の4倍にも上っていたからだ。

 特許というものは、大雑把ではあるが、イノベーション(技術革新)の有益な指標になる。最近の情勢の変化は、中国の開発者が知的財産保護に利害を持ち始めていることの表れで、これは歓迎すべきことだ。

 また、国の特許は外国企業の技術も保護するため、この傾向はグローバル企業各社が市場および生産拠点として中国を熱心に開拓していることを反映している。日本企業でさえ、中国国内で特許出願を増やし、自国での出願件数を減らしている。

国際特許の出願も増やす中国勢!

 さらに、中国企業は海外市場にも積極的に進出し始めている。世界知的所有権機関(WIPO)の最近の報告書によれば、2008年から2009年にかけて、日本のハイテクオタクが特許協力条約に基づく「国際特許」の出願を11%減らす一方、中国のオタクによる出願件数は18%増加した。

 とはいえ、日本人は特許を実際取得できる確率がずっと高いことや、自分たちの特許が他の特許に引用される頻度が高いことにいくらかの慰めを得られるだろう。

 経済危機を受けて、多くの企業が研究開発費を削減した。2008年から2009年にかけて、ソニー、シャープ、トヨタ自動車、東芝をはじめとする日本企業の多くは、研究予算を10~20%削減した。その一方で、通信機器を製造する華為技術や中興通訊(ZTE)などの中国企業は、研究開発費を30~50%増額した。

 購買力平価ベースでは、中国国内の研究開発費は間もなく日本を抜くだろう。

日立は例年、売上高の4%を研究開発に充てていると、同社社長の中西宏明氏は説明する。だが、こうした予算の縛りは、市場の需要を無視するもので、好機を逃すリスクがある。それでも中西氏は、会社の方針に満足していると言う。

 それに対して、韓国最大のコングロマリット(複合企業)であるサムスンは今年、絶対額で研究開発費を2倍近くに増やす計画だ。昨年、サムスンの利益は日本の大手電機メーカー9社の利益合計額を上回った。

 中国が特許出願を強く推し進める背景には、政府の方針がある。中国企業はライセンス供与および特許使用料として、年間100億ドル以上を外国企業に支払っており、その額は毎年20%のペースで増えている。

 自国で技術を開発すれば、そうしたコストを回避できるし、外国企業に対する中国技術のライセンス供与も可能になる。さらに中国企業は、有利な条件で外国企業とライセンス契約を結ぶこともできるようになるだろう。

研究開発の国際化の流れに取り残される日本
 イノベーションの性質に見られる最も顕著な変化の1つは、研究開発の飛躍的な国際化だ、とWIPOのエコノミスト、サチャ・ヴンシュ・ビンセント氏は言う。1990年に出願された国際特許のうち、外国人と共同開発された特許は1割にも満たなかった。今日、その数は全体の4分の1を占めるようになった。

 しかし、日本は依然、情けないほど孤立しており、外国人と共同出願された特許案件は全体の4%に過ぎない(米国の特許出願ではその割合は40%近い)。

 日本は今でも、世界最多の有効特許を保有している(2008年の保有件数は190万件)。それに対して米国は140万件、中国はわずか13万4000件だ。しかし、最も多くの外国特許が法的に帰属している国は、バルバドス、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、そしてアイルランドだ、と経済協力開発機構(OECD)は指摘する。

 そうした特許のほとんどは、特許収入に対して支払う税負担を抑えたい西側企業が所有している。これは、OECD諸国の政府が廃れさせたいと考えているイノベーションの1つだ。

© 2010 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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