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鳥取市にある賀露港には海産物を売る市場があり、そこには年間約60万人の観光客や地元の人が訪れる。この市場の横にあるのが地元の食材をベースに、主力の海鮮丼を出す小さなレストランの「賀路幸」である。レストランと言っても、どこにでもありそうな市場の横の小さな食堂である。

筆者が最初にこの食堂に興味を持ったのは、昨年夏にこのレストランを運営しているブリリアントアソシエイツ(鳥取市)の福嶋登美子社長の記事を日本経済新聞で見つけたことに端を発している。その記事には、「自身のそれまでに製造業で培ってきた視点から見るとサービス業にはまだまだ多くの改善の余地があり、それに積極的に取り組むことで増収増益を続けているだけでなく、雇用も維持している」ことが紹介されていた(日本経済新聞の2009年8月5日の記事)。

 この製造業の視点からサービス産業の現場改善を行うことの是非には多くの議論があり、むしろサービス産業の中ではそれに否定的なのが主流であることを本コラムの第2回(「顧客満足と業務効率化、二兎追うものは二兎を得る!」)で指摘した。

「テーブルは片づけるな、顧客は誘導するな」の謎
 そこで、この賀露幸の実際の現場で何が行われ、どのような成果を挙げているのかを肌で知るために、実際に自ら現場を訪れたが、そこで得られている成果の大きさに驚いた。

 賀露幸を運営するブリリアントアソシエイツの本業は地元のホテル内でのビューティサロンの運営で、地元の典型的なサービス企業である。しかし、ブリリアントアソシエイツにとって異色なのが、元々は建築用資材を製造する金物・板金工を請け負う日本ランドメタル(鳥取市)がルーツであったということである。大きな時代の流れの中で建設需要が低下し、それを補うために日本ランドメタルが最初に行ったのが装飾用の金属ディスプレイ工芸の加工へという展開であった。そして、そこからさらにサービスへ業種を移し、ブリリアントアソシエイツを2004年6月に設立したのである。

 ブリリアントアソシエイツが最初に取り組んだ事業が、鳥取県内にあるホテルで女性向けにエステなどのビューティサービスを提供することであった。しかし転機が訪れたのが、地元の特産品を販売するアンテナショップを東京都内で企画することに奔走した時である。この時に、縁で賀露港にあったこのレストラン「賀路幸」の運営を引き継ぐことになった。

 当たり前のことであるが、運営を引き継いだ2006年4月当時、レストラン運営のノウハウを持っているはずもなく、結果的に店舗の改修を新たに雇った調理師に依頼した。そして、現場の調理作業やホールオペレーションも現場に任せ切りで、実質的に事業運営を引き継ぐだけの状態であったのである。

とは言っても、開店当初の営業は順調で、休みの日ともなれば店の前に行列ができ、待たねば食べられない状況にあった。特に5月の連休中は多くの人が訪れ、経営を引き継いだ初年度の5月の連休はわずか1日間だけで300人もの人が来店した。このように見ると、レストランという新たな事業領域に進出したことは経営者として大成功のように見えた。

 ところが、300人の来店客があった5月の連休のある日、現場を訪ねた福嶋社長は驚くような光景を目にした。店前に行列がある一方で、ホール内の空いているテーブルが片づけられていないうえに、顧客の誘導さえもなされていなかったのである。このため、多くの人が行列を見て立ち去ってしまう。いわば、機会損失を招いていた。

 福嶋は社長として現場のスタッフにテーブルの片づけと顧客の誘導を指示したところ、驚くべき回答が戻ってきた。それは「テーブルを片づけると、調理長が怒る」とのことであった。

町工場の視点で作業改善へ
 最初、何が現場で行われていたか理解できなかった福嶋社長だが、状況を冷静に観察することで、何が現場で行われているかが次第に判明していった。

 テーブルの片づけが行われていなかったのは、実は非常に単純な理由だった。調理作業が間に合っていなかったのである。つまり、もし顧客が食べ終えたテーブルを片づければ、待っている顧客を案内する必要があり、顧客をテーブルに通せば注文を取らなければならない。さらにもし注文を取れば料理を出す必要がある。この当たり前のことが、あまりの忙しさで当時の賀露幸の現場ではできていなかったのである。

 このことに気づいた福嶋社長は厨房に飛び込み、何が問題なのか、分析を開始した。すると、厨房のレイアウトが複雑で、作業動線が入り組んでいた作りになっていることが分かった。複雑なレイアウトのため、現場の整理整頓がしっかりとできておらず、調理道具や備品などの物がホールの中まであふれ出してしまい、本来はテーブルが置かれるべきところも倉庫として使われるような事態まで生じていた。このため、作業動線がますます複雑になっていく。こうした結果として、調理などに多くの不必要な時間を要してしまっていたのである。このようなことが開店当時の厨房やホールの現場で行われていたのである。

この問題を認識したことで、まず日本ランドメタルの工場で働く技術者が厨房に入り、工場の生産現場で当たり前のように行われている作業しやすいレイアウトへの変更や整理整頓を進めた。複雑に入り組んでいた作業動線が簡素化され、厨房では食器の下膳と洗浄、さらに料理の調理や盛り付け、配膳などを連続的にできるようにした。作業台や棚も作業に沿って配置するようにした。これにより調理作業が効率化し、整理整頓を進めることができるようになった。

かつてホールまであふれていた品々を厨房の中に戻すことができ、ホールでの顧客の誘導もスムーズにできるようになっていった。このようなレイアウトの変更を2008年10月と2009年4月の2回行った。このような町工場で行われているような作業改善の活動の結果で、スタッフが効率的に働きやすい環境ができただけでなく、倉庫になっていた店舗ホールも開放して、席数を倍増させることができた。

集客数は4年間で4倍超になった
 このように製造業の視点でレストランの厨房やホールの改善活動を積み重ね、調理の作業効率の向上とホールでの座席を確保できるようになったことで、そもそも行列ができていたレストランで、さらに集客できるようになった。この結果、5月の連休の1日当たり最大客数が、2006年の開店当初の300人から、2008年が818人、2009年は1072人まで増やすことができ、さらに今年の2010年は1300人までその数字が伸びたのである。

 多くの場合、行列ができたことだけで、サービス業の経営者は事業の成功を感じてしまうところ、賀露幸では現場の改善活動を地道に進め、店舗面積を増やすことなく、また投資もほとんど行うことなく、来店客数を当初から4倍以上に増やすことに成功したのである。

 このように金属加工を行う会社が、普通であればやらないサービス業へ進出し、そこから製造業の視点で大胆に作業工程を大胆に組み替え、大きな成果を挙げているのである。

 このように作業改善を進めたことで、賀露幸ではさらなる集客という大きな成果を得たが、この成果は整理整頓やレイアウトの変更だけによるものではない。様々な要因がお互いにエコーしあい、結果として達成できたのである。

 次回は、大きな効果を生んだ従業員の離職率の低下と多能工化の実現を支える仕組みを明らかにする。そして、これまでの築き上げたノウハウから、そもそも今のレストランで何人まで最大集客できるのか、そして今後の事業展開とその課題について紹介していきたい。
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