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6.日本の国家戦略構築のための処方箋
(1)目的・目標の確立 ―「戦いの9原則」の実践的適用―
先に述べたように、大東亜戦争の最大の敗因は、我が国に国家戦略がなく、戦争目的が不明確であったこと。またその結果として、軍事戦略の目的が不明確、曖昧であったことにある。
列国では、戦いに勝つための一般原則を定めている。その中で、米軍の「戦いの9原則」(米陸軍作戦教範100-5、1994年版)は、自衛隊の原則とも共通性がある代表例であり、インターネット上で公開されているので、要約して紹介したい。
下記の「戦いの9原則」は、戦略、作戦および戦術レベルの戦いを遂行するための一般的指針を付与するとされている。
各原則の意義の詳説は省くが、「Objective(目的/目標)」の原則とは、「目的を確立し、その目的達成に最大限寄与するように明確な目標を定めること」である。
この際、軍事目的は政治によって付与され、その目的を達成するための軍事目標の設定は軍が責任を負うものであり、目的と目標は主従の一体的関係にある。
併せて、英語のObjectiveは、日本語の目的あるいは目標両方の意味を有しているので、ここではObjectiveを目的/目標の原則と訳した。
「Offensive(攻撃)」の原則は、自衛隊の教範では、「主導(Initiative)」の原則とされ、決して敵に対して受動(受け身)に陥らず、常に自主積極的に行動することが重要であると説いている。
20世紀を代表する戦略思想家ベイジル・リデル=ハート(英国)は、「戦略と戦術の真髄」の中で、多数の戦いの原則は「Mass(集中)」の一語に凝縮されるとし、「敵の弱点に対する力の集中」の重要性を強調している。
また、「Economy of Force(経済)」は、「Mass(集中)」の原則で述べる決定的な時期・場所における戦力集中のためには、非重点正面の戦力を節約することが必要との趣旨で、「Mass(集中)」の原則と表裏の関係にある。
最近、「選択と集中」という言葉が盛んに使われているが、両原則の言い換えと理解してよい。
戦争論、戦略論、軍事学、戦史などの学問があるが、「戦いの原則」はそれらの成果を集大成したものである。
中国では、孫子以来、戦争は常に大きな関心の的であり、長年弛みなく戦略的思考が練られてきた。
西洋では、全ヨーロッパを巻き込み、15年余りにわたって戦われたナポレオン戦争(1799~1815年)が豊富な事例・事象を提供し、多くの将軍たちが戦争を科学してその論理の解明に心血を注いだ。
中でも、カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』は古典的名著となっている。またその後、仏国のジョミニや米国のマハンなどもそれぞれの時代背景の中で新たな戦略論を展開した。
米国の「戦いの9原則」は、孫子の兵法、ジョミニが示した戦いの4原則など先人の研究成果を踏まえつつ、さらに英国が1920年にまとめた戦いの原則に関する検討結果などを参考とし、自国の貴重な戦争の歴史や教訓を基に確立されたものであり、21世紀の新たな戦いの様相にも堪え得る原則であるとしている。
以上、「戦いの9原則」についてかい摘まんで説明したが、その中で最も重要な原則を挙げるとすれば、それは全原則の筆頭に書かれている「Objective(目的/目標)」の原則である。
「いかなる軍事上の作戦においても、そこには明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない。目的のあいまいな作戦は、必ず失敗する」(『失敗の本質―日本軍の組織論的研究―』)との指摘の通り、戦略は目的によって始動する。
従って、これから成し遂げようとすることの目的は何かを徹底的に問い詰めることが何よりも大事だ。
そして目的が明確に定まったならば、その目的達成に決定的な意義を有する目標を確立しなければならない。日露戦争初期の旅順要塞攻略戦を例に取れば、「目的は旅順攻略、目標は203高地」という具合に。
このように、目的と目標の関係を明確に律することが戦略策定の第一歩であり、最も重要なことである。
実は戦略に限らず、物事を進めるに当たっては常に目的意識を持ち、問題や困難に遭遇した場合には必ず原点である目的に戻って向かうべき方向を見失わないよう心がけなければならない。
つまり、我が国が戦略を構築し、それを成功に導くうえにおいて「Objective(目的/目標)」の原則をはじめとして、「戦いの9原則」すべてを指標あるいは視座とし、その意味するところを常に現実の状況に適用していくことが肝要である。
そこで、日本国家としての「目的論」について再考すると、最も重要なことは、国の最高規範である憲法において、我が国が目指すべき国家目的(国家像)が明確に表明されていなければならないということである。
しかし、残念ながら、「占領管理基本法」的憲法と称される現行憲法が、国家目的(国家像)を明示しているとは到底考えられない。つまり、現行憲法下では、国家目標そして国益は定まらず、国家戦略策定の方向付けができないという根本的な問題に逢着する。
一方、憲法改正の手続きを定めた「国民投票法」が施行(平成22年5月18日)されたが、国会においては憲法改正を論議する場の整備すら一向に進まず、早期の憲法改正は期待薄なのが我が国政治の実情である。
しかしながら、現状のまま手をこまぬいていても仕方ない。何らかの形で我が国の国家目的(国家像)を明らかにしなければならないが、それはどのように求めればよいのか。
古くは、聖徳太子の「十七条憲法」に始まり、戦前・戦後、我が国政府は、様々な機会に国家の有り様や施政の基本を内外に表明してきた。
これらの諸資料に述べられている趣旨を整理集約すれば、帰納法的そして類推的に我が国の国家目的(国家像)の大要を引き出すことができるのではないか。
国家目的(国家像)として明文化されたものがない現状においては、このような手法を取る以外に適当な解決策を見出すことはできないのではないか。
そこで、上記の整理集約作業を行った結果を、「日本の国家目的(試案)」として箇条書きにまとめてみた。あくまで一試案に過ぎないが、今後の国家戦略論議を一歩でも前進・活性化させ、その具体化に資すれば幸いとするところである。
>>別添「日本の国家目的(試案)」参照
(2)「均衡の取れた国力」の整備 ―軍事力の強化―
戦後、我が国は、対外関係を遂行するに際し、「経済重視、軽武装」の吉田ドクトリンに沿った「経済第一主義」を採ってきた。
しかしながら、湾岸戦争(1991年)で戦費の約25%に上る巨額の経済支援を行ったにもかかわらず、当事国のクウェートには評価されず、「小切手外交」の無力さと人的貢献の重要性を痛感した。
日本は、「ODA(政府開発援助)大国」と言われている。我が国は軍事的貢献ができないだけに、ODAは唯一の外交カードとして外交上、中心的な役割を果たしてきた。
これまでに、日本が累積総額で一番援助してきた国は中国であるが、巨額の援助を行ってきたにもかかわらず、一般の中国人民には援助の事実は知らされておらず、従って感謝もされていない。
そして、日中関係は改善するより悪化し、我が国の主権や国益が侵害されつつある実情を見れば、対中ODAは明らかに所期の目的を果たさず、時として有害であったと言えよう。
日本が拠出している「国連分担金」は、米国に次いで世界第2位(12.5%)である(本分担率は2009年12月に決定、2010~2012年の3年間を対象とし、各年同率)。
またこれ以外に、我が国は米国に次ぐ「国連平和維持活動(PKO)分担金」を拠出し、政府開発援助(ODA)の一環としてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)やFAO(世界食糧農業機関)などその他の国連機関へも多額の資金を提供しており、国連の運営における我が国の財政支出は際立って大きい。
しかし、これだけ巨額の負担を引き受けながら、我が国の国連安保理の常任理事国入りは一向に進展しないし、旧敵国条項の問題も未解決のままである。国連における分担金の重さと付与された地位や発言力の大きさは決して一致していない。
これらは、長年、経済至上主義に偏重するあまり、経済以外に有効な手段を持とうと努めてこなかった我が国外交の限界を示すものである。
国家戦略の手段としての国力については、近年、とみにソフトパワーの重要性が強調されているが、依然として外交、軍事および経済が現実的な力を持つ主要な要素であることに変わりない。
我が国が世界第2位の経済大国(2010年には中国に追い越されたと報じられているが)として外交の場で大きな影響力を行使するには、確かな軍事力の裏付けが不可欠である。
「自分の国は自分の力で守る」ことすらできない国家が、国際の平和に対する脅威や破壊あるいは侵略行為に対し、率先して集団的強制措置(集団安全保障)に参加しなければならない国連安保理の常任理事国入りを目指すこと自体、過分な願望と言わざるを得ない。
また、世界の平和と安定の維持に必要なPKOなどへの列国なみの参加を躊躇うような国家は、国際社会の主導的役割を担う資格などないのである。
つまり、今後、我が国が世界の舞台で自らの国益を追求し、また、然るべき地位を得たいと欲するならば、まず軍事分野における機能不全を是正して「均衡ある国力」を整えなければならない。
そうすれば、強い経済力と機能する軍事力に支えられて戦略的な外交を展開する可能性が広がるのである。
(3)国家戦略の体系化と策定の責任体制ならびに統合プロセスの確立
戦略の属性の1つは、「総合性」にある。それゆえに、国家戦略を実際に策定するに際しては、戦略は優れてプロセスを巡る問題となる。
しかし、既に述べたように、我が国は、行政組織のどの部署で国家戦略を策定するのか定かではない。
また国家戦略は、縦割り行政の弊害などによってその体系化や統合のプロセスが確立されておらず、依然として戦前の陸海軍と同じ「統合戦略の欠如」という問題を抱えたままである。
そこで、以下、戦略策定の体系、責任およびプロセスの一案を提示してみよう。
国家戦略の策定に当たっては、まず国家目的・目標を出発点として「日本の国益とは何か」という命題に対して明確な定義を付与しなければならない。
米国では、その役割を担う有力なシンクタンクが存在し、そのシンクタンクからポリティカルアポインティー(政治任用)として大量の頭脳が政権中枢へ入る仕組みがある。
しかしながら我が国には、そのような仕組みは存在しないし、また行政組織や政党に付属するそのような研究機関もない。さらに、国家戦略を誰の責任で、どこで作るのかも明らかになっていない。
従って、例えば内閣に、国益を定義する「国益委員会(仮称)」と国家戦略の策定を担任する「国家戦略会議(仮称)」を設けることが必要であろう。
この際の構成員は、内閣総理大臣を長として、国家戦略の主要構成要素別に戦略の作成を担任する主務大臣を参加させることが必要である。
また、総理大臣と防衛大臣の最高の軍事的助言者である統合幕僚長を正式メンバーとして参加させるとともに、総理の判断で一定の有識者の助言を得ることも可能となるよう配慮しなければならない。
なお、自民党・安倍政権下では、米国の国家安全保障会議(National Security Council : NSC)をモデルに安全保障会議の改編が検討された。
今後、新たな安全保障会議と国家戦略会議(仮称)の役割が基本的に一致するようであれば、既に事務局も存在することから、新たな安全保障会議に国益を定義し、国家戦略を策定する任務を付与することも有力な一案となろう。
「国家戦略とは」の項で述べたように、我が国の国家戦略には、国益を達成するため、平時、危機時および有事における国家運営の一貫した方針ならびに指導要領が述べられなければならない。
そして、この方針・指導要領に基づいて作成される政治・外交戦略、経済戦略、国防・軍事戦略、心理戦略、民間防衛戦略などに対して、戦略目標、重視事項と優先順位など戦略構築の骨格となる基本的な指針を付与するものでなければならない。
さて、このようにして国家戦略が定まれば、その達成のための主要構成要素である政治・外交戦略、経済戦略、国防・軍事戦略、心理戦略、民間防衛戦略などを作成する。
その担任は、単独の省庁による場合、あるいは複数の省庁にまたがる場合があり、複数の省庁にまたがる場合には、その分野に最も大きな役割を担う官庁を主務官庁に指定して戦略の取りまとめの責任を負わせることになる。
ここで、「国防戦略」を例に、作成の手順や手続きを説明しよう。国防戦略の主務官庁は、前ページの表に示す通り防衛省である。防衛省は、国家戦略の方針・指導要領に基づいて、我が国の国防の目的を達成するために必要な事項を網羅した国防戦略を作成する。
この国防戦略が、防衛省の所管で具体化される軍事戦略ならびに他省庁が作成する外交戦略、経済戦略、民間防衛戦略などに盛り込まれる国防支援戦略に対して任務・責任、戦略目標、重視事項と優先順位など所要の指針を付与する。
また各省庁は、それぞれが担任する戦略について、必要があればさらに関連する下部の戦略を作成する。
そして、作成された各戦略を具体的施策として実行に移すために中長期的あるいは年度の政策へとブレークダウンし、予算化を図って実施に結び付けていくという手順になる。
この際、防衛大臣は、国防戦略を主管する立場から、国益委員会ならびに国家戦略会議に構成メンバーとして参加する。
また、所掌する国防・軍事戦略などについては、国家戦略や関連する他の戦略との統合一貫性を確保するため、国家戦略会議の承認を得た後に正式に発効させるという手続きを踏むことを義務付けるものとする。
以上、その一概案を提示したが、我が国が国益に則って国家戦略を策定し、国家の戦略性をより一層高めるためには、我が国の行政組織の中に国家目的・目標を確立し、国益を定義して国家戦略を策定する組織・責任を明示しなければならない。
また、国家戦略の体系を作り、その枠組みに基づいて各種戦略を構築し、それらを統合するプロセスを確立して総合的、包括的かつ体系的に国務を運営するシステムがぜひとも必要である。
(4)戦略構築の一手法としてのウォーゲーム(War Game)の活用
戦略の属性の1つは「相対性」にある。国家には、常に戦略対象国が存在し、戦略対象国との間には作用反作用の力学が働く。
従って、戦略構築に当たっては、相手(敵)と我(味方)の相互作用(Action-Reaction-Counter-Action)を分析予測することが不可欠であり、そのプロセスを通じて戦略は定まっていく。
一方、戦略構築の方法論について、先の大戦における日本軍は帰納的、米軍は演繹的であったと言われている。
すなわち、我が国には論理的議論ができる制度と風土がなく科学的検討に対する認識に欠け、軍事的合理性の追求がなされなかったという指摘である。
そこで、この2つの問題を併せて解決し、戦略を構築する一手法として、シミュレーション技法を活用するウォーゲームについて説明してみよう。
米軍と自衛隊が共通的に使用している手法が、「状況判断の思考過程(Estimation of Situation)」と言われる組織的問題解決/意思決定法(Organizational Decision-Making Process)である。
その中に取り込まれているのが、シミュレーション技法を活用したウォーゲームの手法であり、両軍の様々な分野における問題解決・意思決定の基本ソフトとなっている。
そのやり方は、教範(マニュアル)1冊に上るほど膨大な分量になるので、ここでは差し障りのない範囲でその概要の紹介にとどめることとする。
ウォーゲームに入る前に徹底して行われるのが、作戦が行われる地域(戦場)と敵に関する分析・研究である。戦略的には、戦略フィールド、すなわち戦略を展開する上で影響を及ぼす様々な環境条件と戦略対象国に関する分析・研究と言えよう。
そして、このウォーゲームは、敵と我(味方)に分かれて対抗的に行われ、敵方の役割は司令部の情報幕僚、我が方の役割は作戦幕僚が担当する。
我が方は、与えられた任務の達成が可能と判断する複数の代表的な行動方針(Our Course of Action)を案出する。
一方、敵方の役割を担任する情報幕僚は、敵の立場に成り切り、敵の作戦目的・目標を推察して、敵として採用できる複数の代表的な可能行動(Enemy’s Course of Action)を選定する。
それぞれの行動方針が定まったならば、双方が衝突する戦場において我の行動方針と敵の可能行動を一つひとつ付き合わせながら、作戦の主要な段階・結節において我がこう出たら敵はどうする、敵がこう出たら我はどうするという具合にウォーゲームを進行させ、作戦の始まりから終わりまで一通りシミュレーションを行う。
なお、敵と我との戦闘結果や兵站所要など計数的・定量的評価が可能な分野については、コンピューターシステムを使ったオペレーションズリサーチ(Operation’s Research)によって判定する。
そして、我の行動方針を詳細具体的に分析・検討するとともに、作戦全般の推移を見通して全体を俯瞰するのである。
そうすることによって、我の各行動方針の利点・欠点が浮き彫りになり、また最終的に任務達成ができるかどうかを判定することができる。
その中で、任務達成可能と判定された複数の行動方針を、いくつかの要因で比較・検討し、任務達成に最も適した行動方針を結論として採用する。
同時に、採用された我の行動方針は、ウォーゲームを進行しつつ分析する過程でその利点・欠点のみならず、敵の可能行動によって作戦に重大な影響を被る恐れのある事態や損害などが明らかになる。
これらを踏まえて、我の行動方針の修正を行い、また敵の可能行動に対する処置・対策を講じた後に、初めて作戦計画として立案される運びとなる。
当然この中には、計画の重要な前提条件が変化した場合、あるいは敵が極めて特異あるいは重大な影響を及ぼす行動をとった場合などに対する非常事態対処計画(Contingency Plan)が周到に検討され、計画に盛り込まれる。
そして、立案された作戦計画は、作戦の経過の中で、その結果や敵の対応などから判断して必要な見直し修正(フィードバック)を行い、その立て直し・再構築を実施しながら作戦を遂行していくことになる。
以上が、ウォーゲームの手法を活用した日米両軍の問題解決・意思決定の基本ソフトの概要である。
このシミュレーション技法を本論の趣旨に適用するには、敵は「戦略対象国」、我は「我が国」、作戦は「戦略」に、我の行動方針(Our Course of Action)と敵の可能行動(Enemy’s Course of Action)はそれぞれ「我の戦略的オプション」と「敵の戦略的オプション」に読み替えれば結構である。
また、上記のウォーゲームは、2者のプレーヤーによる場合であるが、例えば、朝鮮半島問題、特に北朝鮮の核・ミサイルの放棄を中心テーマとした「6カ国協議」を舞台とした6者のプレーヤーが参画する戦略ゲームにおいては、このように簡単には運ばない。
しかもこの問題は、海洋国家と大陸国家の接点に位置する朝鮮半島の地政学的特性を背景とし、東西冷戦という歴史的対立の所産でもある。
それらを踏まえつつ、将来の南北朝鮮の統一問題が、韓国主導でなされるか、北朝鮮主導でなされるか、あるいは現状固定に落ち着くのかなどの最終的決着を見据えながら判断されるところに戦略構築の一層の難しさが存在する。
いずれにしても、このように3者以上が関わる戦略ゲームの場合においては、メーンプレーヤーの動きを主軸として、それにサブプレーヤーの関係を絡ませながら、ウォーゲームを展開することによって同様の結論を見出すことが可能である。
そのようにして活用すれば、ウォーゲームの手法が「帰納的」で非科学的・非合理的であると指摘された旧陸海軍の戦略策定上の問題点を克服し、我が国の戦略構築のための一処方箋として有効な手助けになろう。
7.まとめ:我が国の「国家戦略構築の9原則」
以上は、国家戦略について包括的に述べたものではない。我が国の戦略上の問題点あるいは戦略不在の原因に対する解決策を中心に取り上げている。
21世紀の世界は、大きく、急激に変化している。特に、優越を求める国家と対等を求める国家、現状維持を図ろうとする勢力と現状打破を追求する勢力、一極主義と多極主義など様々な対立とせめぎ合いが顕著になっている。
ことに、アジアでは、中国の覇権的拡張、ロシアの復活と軍備増強、当面する北朝鮮の脅威、域内各国間の領土問題、あるいは中東から北東アジアにかけて広がる「不安定な弧」の存在などが現実的かつ深刻な影響を及ぼしつつあり、日本を取り巻く国際情勢および安全保障環境は極めて複雑・不透明で、一段と厳しさを増していくものと覚悟しなければならない。
そのような中、我が国が独り手をこまぬいていては、国益を増進し、われわれが欲する方向に国際社会を動かすことなど望むべくもなく、むしろ足をすくわれかねない。
このような荒波を乗り越えて、我が国がその生存と安全を確保し、国家の繁栄と国民の幸福を追求していくには一貫した確たる国家戦略が不可欠なのである。
では、そのような国家戦略を策定するには何を為さなければならないのか。
その設問の答えとして、日本の戦略的特性(弱点)に焦点を当てつつ、これまで展開してきた論旨との重複を厭わず戦略構築から実行までの段階に沿って以下のようにまとめてみた。
これを我が国の「国家戦略構築の9原則」とし、その実践的適用を期待しつつ本論を締め括ることにしたい。
(1)まず、国家目的・目標を確立し、国益を明確に定義せよ
(2)国家戦略の体系とその統合プロセスを確立し、組織横断の体制を敷いて、総合的、一体的に戦略を推進するシステムを作れ
(3)競争相手(戦略対象国)を徹底的に研究せよ
(4)常に、中長期的な視点で考えよ
(5)戦略の策定から実行を通じて「戦いの9原則」を適用せよ
(6)適切な戦略を策定せよ
競争相手と戦略フィールドを詳細かつ徹底的に分析・研究し、いかにすれば勝利を獲得し、優越を確保できるかのビジョンと方策を心血を注いで案出せよ。そのためには、
ア 目的を明確にし、その達成のための戦略目標を確立せよ
イ 枝葉末節ではなく、全体を俯瞰して問題の所在を探り当て、解決策を総合的に検討せよ
この際、組織的問題解決/意思決定法(Organizational Decision-Making Process)を活用せよ
ウ 「選択と集中」によって重点を形成せよ。特に、重点正面に政策・人・物・金(予算)・時間を集中せよ
(7)戦略を実現するための実行計画を作成せよ
この際、状況の変化に対応できるよういくつかの選択肢(オプション)を保持せよ。また、非常事態対処計画(Contingency Plan)を準備するとともに、定期的かつ状況急変時には戦略ならびに実行計画を見直せ
(8)実行に際しては、相手より先手を取り、機動的に行動して主導権(イニシアティブ)を確保するとともに、変化する状況に迅速、的確かつ柔軟に対応せよ
この際特に、IDA(Information, Decision-Making & Action)サイクルを競争相手より速く廻すことがキーポイントであり、情報の優越とともに、何よりも行動において優越を図ることが重要である。
(9)最後に、戦略が予期の通りに運ばなかった場合、あるいは頓挫した場合等にどうするかの対策、すなわち終末(結)・出口戦略を周到に準備せよ
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