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殲20 パンダ仕様


J-20 (戦闘機)
http://ja.wikipedia.org/wiki/J-20_(%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F)

殲20戦闘機の神話~中国株式会社の研究(97)

2011.02.11(Fri)JBプレス 宮家邦彦

 今回は中国の「殲20」戦闘機の話をしよう。「殲20」とは現在試作中の第5世代ステルス型戦闘機。1月11日の胡錦濤総書記とロバート・ゲーツ国防長官との会談直前に試作機の初飛行が「公開」され、俄然注目を集めた例の「殲20」である。

 ゲーツ訪中の政治的背景については既に書かせてもらったので、ここでは繰り返さない。今筆者が最も関心を持っているのは、兵器としての「殲20」の性能に関する中国メディアのちょっと奇妙な報道振りである。典型例を幾つかご紹介しよう。

殲20を誇示する中国


●殲20が米国のF22に対抗でき、攻撃力がより高く、中国周辺の米空母や在日・在韓米軍基地を重大な脅威に晒すといった憶測は冷戦時代の思考に過ぎない。

●他方、殲20は単なる技術実証機に過ぎず、ステルス性、新型エンジンなどない「ステルス戦闘機の外観をもつ殻だけ」といった批判は殲20を恐れる証拠である。

●殲20は2015-18年までに、基本的に中国空軍に加わることになる。中国が重大な軍事的脅威に直面する場合などには、(時期が)やや早まるかもしれない。

米国は殲20のテスト飛行後、様々な国際世論を誘導して、「中国のハイテク軍事技術はみなスパイ活動によるもの」というイメージを作り上げようとしている。

 いずれも、殲20の高性能ぶりを誇示しつつ、同機が中国独自の技術であると強調している。単なるプロパガンダに過ぎないのか、それとも、本当にF22に匹敵する第5世代(中国では第4世代と呼ぶ)の戦闘能力があるのだろうか。

中国空母のビデオも流出!

 中国側による最新兵器情報のリークはこれだけではない。1月31日付ウォールストリートジャーナルによれば、殲20初飛行の「リーク」から2週間後の1月28日、中国海軍初の空母「施琅Shi Lang」を写したビデオがネット上に流出したらしい。

 初の空母といっても、実態は1998年に中国がウクライナから購入した空母「バリヤーグ」に様々な艤装工事を施した「再生品」だ。米国防総省筋によれば、今年か来年にも就役すると見られていたようである。

それにしても、「殲20」戦闘機といい、空母「施琅」といい、本来なら高度の機密映像のはずだ。これらが最近相次いで中国のネット上に「流出」したことは決して偶然ではないだろう。問題はその真の意図がどこにあるかである。

殲20の実態!


殲20(殲撃20型、欧米メディアではJ-20)戦闘機は中国人民解放軍空軍のための第5世代ステルス型戦闘機であり、開発・製造はAVIC(中国航空工業集団公司)が担当しているといわれる。

 もちろん性能の詳細は非公表だが、欧米メディア報道を総合すると、(1)双発ジェットエンジンの大型戦闘機で航続距離と積載重量に優れる、(2)機首と胴体全部の形状、エッジ・アラインメントなどから見て一定のステルス性を有する。

 他方、(3)そのデルタ翼とカナードはステルス機として必ずしも理想的ではなく、(4)1990年代中葉に開発が中止された旧ソ連MIG 1.42計画が土台となった可能性があり、(5)2000年頃までにAVIC開発者による基本設計が完了したらしい。

 これが事実であれば、殲20が1999年3月27日にコソボで撃墜された「F-117」の技術を盗用して開発されたとの西側メディアの一部報道も、中国側の主張通り、誤報である可能性が高いのかもしれない。

 これまで米国は、殲20の実戦配備を2019-21年頃だと予測していた。それが中国の主張する通り2015-18年以前となれば、米国の太平洋空軍配備や日本のF-X(F-4後継機)の検討にも少なからぬ影響を与えるだろう。

 いずれにせよ、筆者はいわゆる「兵器オタク」ではないので、技術的な優劣はこれ以上分からない。

 しかし、ロシア空軍が断念したMIG 1.42のデザインが土台となったのであれば、それほど大騒ぎする話ではないのかもしれない(ちなみに、ロシアはMIG 1.42ではなくSukhoi T-50を正式採用している)。

さらに、筆者のFSX(航空自衛隊時期支援戦闘機)担当官としての経験から申し上げれば、戦闘機の真の能力は、その形状やステルス性だけでなく、アビオニックス、レーダー、搭載武器、エンジンなどの完璧な組み合わせによって初めて生まれるはずである。

ボマー・ギャップとミサイル・ギャップ!

果たして中国にアビオニックスやターボファン・エンジンについて高度の技術力があるのだろうか。

 欧米の専門家の中にもこの点を指摘する声は多いが、筆者は次の理由からも、この種の軍事技術プロパガンダには大いに懐疑的である。

 1954年2月、米国の航空専門誌「Aviation Week」は、ソ連の新型爆撃機「M-4バイソン」が米国に対する核攻撃能力を有すると報じた。さらに、翌1955年7月、ソ連で開催された航空ショーにそのバイソンが60機も「登場」したため大騒ぎとなる。

 ワシントンでは爆撃機分野での「ソ連の優位」を懸念する声が急速に高まり、米国防総省は米核戦略の見直しを迫られたという。これが、いわゆる「ボマー・ギャップ」だ。

 また、1957年にはソ連が人類初の人工衛星打ち上げに成功し、米国は再び騒然となった。当時のフルシチョフ・ソ連首相はミサイル戦略におけるソ連の対米優位を事ある毎に強調し、執拗に米国に揺さぶりをかけた。これが「ミサイル・ギャップ」である。

ステルス・ショック?

 ソ連のプロパガンダはまんまと成功した。1955年の航空ショーに参加したバイソンはわずか10機に過ぎず、何とその10機の編隊が飛行場上空を6回も周回することにより、あたかもバイソンが60機もあるように「見せかけていた」のだ。

 「ミサイル・ギャップ」も同様である。1960年代になって米国が「U-2」高高度偵察機を投入した結果、ソ連のミサイル配備は米国の予想をはるかに下回る貧弱なものであることが分かったからだ。

 今日でも国際安全保障専攻の学生にとって、「ボマー・ギャップ」、「ミサイル・ギャップ」は古典中の古典だ。その教訓は、ソ連のプロパガンダが一時的に成功しても、それは逆に米国の軍拡を促進させ、結果的にソ連の衰退を招いたということである。

 果たして今回の「ステルス・ショック」、「空母ショック」は本物なのだろうか。どうもこの種のプロパガンダは信用できない。いつの時代にも、軍事力の優劣については慎重な事実関係の検証が必要である。

 

 

ヴァリャーグ(中国海軍初の空母「施琅Shi Lang」)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%BD%E7%90%85

 

航空母艦

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%AF%8D

 

 

 

中国に向け曳航されるウクライナ
 
 
 
中国に売却されたオーストラリア空母メルボルン(Melbourne)
 
 
中国に売却されたロシア空母キエフ(Kiev)
 
 
 
 
USS GeorgeWashington CVN-73_01


 

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