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nikkei TRENDYnet 1月12日(水)
定額で同じキャリア間の通話がし放題となる「通話定額」のサービスは、ウィルコムやソフトバンクモバイルを中心に多くの人に利用されている。だが、この通話定額サービス競争も、各社の取り組みにより、新たな次元に突入しようとしている。ここ最近の通話定額サービスの動向についてまとめてみよう。
“同じキャリア同士で長時間通話”の限界
これまでの通話定額サービスは、同じキャリアの携帯電話同士で通話した場合のみ、無料でし放題になるというのが大きな特徴であった。24時間定額で通話が可能なウィルコムの「新ウィルコム定額プランS」や、21時~翌1時以外の通話が定額となるソフトバンクモバイルの「ホワイトプラン」、指定した3人までの通話が定額となるauのオプションサービス「ガンガントーク(指定通話定額)」などがそれに相当する。
こうした通話定額は現在でも人気のあるサービスだが、弱点もある。1つは、同じキャリア同士でしか通話定額サービスが受けられないこと。理由は、自社内の通話であれば他社に支払うアクセスチャージが発生しないが、他社に通話するとなると、必ずアクセスチャージが発生するため、通話定額の実現が難しいからだ。
そしてもう1つは、長時間通話し放題というニーズが意外と限られているということだ。通話定額のパイオニアであるウィルコムを見ても、通話定額の主要ターゲットとなっているのは、コミュニケーション需要の大きい女性を中心とした若年層。同キャリア間の長時間通話定額というだけでは、幅広い層の獲得に至らなかったと言える。
音声通話からメールへとコミュニケーション手段が変化した昨今、通話定額が音声通話の価値を高める大きな要素となったのは確かだ。だがより魅力を高めて、利用者数を増やすには、新たな価値が求められていたのも事実であろう。
増える“同じキャリア同士”の壁を突破する動き
通話定額の魅力を高める方法は、自社キャリア以外との通話を定額にするということだが、これを実現する上で大きな壁となっているのが、先にも触れた通り、通話するたびに他社に支払う必要のあるアクセスチャージである。
だが、そのアクセスチャージを支払ってもなお採算が取れると判断し、他社との通話定額を実現したのがウィルコムの「だれとでも定額」である。これは月額980円支払うことで、他社の携帯電話や固定電話、IP電話などとの通話が定額になるというもので、昨年12月3日からサービスを開始している。
定額といっても、10分を超える通話は有料となるほか、通話定額は月500回までという制限が設けられている。その上で採算が取れると判断してサービスの提供に至ったといえよう。だが、長時間通話ができなくとも、相手先を問わず通話定額ができるというのは、通話定額の価値を大きく変えるものであることに違いない。
ウィルコムの動きに合わせ、イー・モバイルも1月14日から「通話定額キャンペーン」を開始している。これは「Pocket WiFi S(S31HW)」「HTC Aria(S31HT)」向けの料金プラン「スマートプラン」「スマートプランライト」に月額1820円を追加することで、25カ月間、イー・モバイルをはじめとした携帯電話・固定電話・IP電話の10分以内の通話が、月500回まで定額で利用できるというもの。ウィルコムと比べ、期間限定のキャンペーンであるほか、自社回線の通話が24時間定額になる訳ではない、通信回線の充実度に課題があるといった弱みはあるものの、“他社向け通話も定額”という動きが広まりを見せているのは確かだ。
電話を超えた通話定額を実現するau
アクセスチャージの壁を越え、通話定額を実現するもう1つの動きが、KDDI(au)の「Skype au」である。「IS03」など同社のスマートフォン向けに提供しているこのサービスは、インターネット電話サービスとして知られる「Skype」を使って通話定額を実現するというもの。これによりSkype auの利用者同士だけでなく、PCなどでSkypeを利用している人との通話定額を実現するという訳だ。
Skype自体はiPhoneなど他のスマートフォンでも利用できないこともないが、Skype auは、通話をデータ通信ではなく、通常の音声通話と同じ形で実現しているという点で、大きく異なっている。これにより、データ通信による通話と比べ、安定した通話を実現している。
元々Skype同士の通話は無料であることから、通話料で収益を上げているKDDI自身が、これを“禁断のアプリ“とうたっているのは周知の通りだ。実際、“24時間定額”が当たり前となっている固定ブロードバンド回線主体で利用されているSkypeの使われ方は、ユーザーによって非常に多岐にわたっており、長時間つなぎっ放しにしているという人も少なくない。
Skype auの使われ方も同様の傾向が強まると、通話料の獲得ができないだけでなく、回線がひっ迫し、他の利用者に影響が及ぶ可能性も考えられる。こうしたことから、現在のSkype auの料金体系は2011年11月30日までのものとなっており、それ以降の料金は回線状況などを見極めた上で判断されるものと思われる。
また他の通話定額サービスとは異なり、Skypeは基本的に一般的な電話と直接通話するサービスではない。それゆえauのスマートフォンを見ても、電話帳とSkype auとの連携が不十分であるなど、Skypeを知らない人に利用してもらうには、課題が多く残されている。auは既存の携帯電話向けにもSkype auを提供すると発表しているが、今後はSkype、そしてPCに慣れた人以外に向けた取り組みが求められるだろう。
音声通話の魅力は再び開花するか?
近年、通話料・基本料の低廉化に伴い、各キャリア共に音声ARPU(=Average Revenue Per User:月間電気通信事業収入)の減少が続いている。そこで、各社ともに、データ通信の需要を引き上げて、データARPUを向上させようという動きを強めている。各社がスマートフォンの販売に力を入れているのも、データ通信の利用を増やし、ARPUを向上させる狙いが大きい。
またサービス面においても、最近はメールだけでなく、SNSやブログ、Twitterに代表されるように、Webサイトやアプリケーションを経由したソーシャル・コミュニケーションサービスなどの人気も高まってきている。コミュニケーション需要もデータ通信が主体で、ヘビーユーザーを除くと音声通話の比重は減少してきているといえるかもしれない。
だが、過去にウィルコムが“通話定額“で音声通話に新しい価値をもたらしたように、新たな“通話定額”が、再び音声通話の価値を高める可能性も大いに考えられる。ウィルコムの宮内謙社長も、だれとでも定額のサービス発表時に、「3カ月以内の純増を目指す」と話していたように、新サービスでの需要開拓にかける各社の意気込みは大きい。
データ通信需要の開拓に対する取り組みが積極化する中、新たな通話定額サービスで、携帯電話の本質ともいえる“音声”の需要をどこまで掘り起こすことができるか。各社の新サービスが本格化する今年は、音声通話の価値が再び大きく問われる1年になるともいえそうだ。
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