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2011.1.3 03:13 産経ニュース

日本の今年最大の経済課題は、アジア・太平洋地域を中心とした世界の成長力をいかに取り込むかである。突破口は、米国を中心に動き出した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加だ。

 しかし、菅直人首相は昨秋、農業団体などの反発にあってTPPへの参加を先送りした。このままでは、米国欧州連合EU)などと自由貿易協定FTA)を締結した韓国との競争において決定的に不利となる。

 ◆無意味な二者択一論

 関税撤廃などで打撃を受ける農業への対応は当然必要だが、「TPP参加か、農業保護か」という二者択一の議論は無意味だ。菅首相には貿易立国と農業改革を両立させ、TPPに参加する強い指導力を発揮してほしい。

 TPPは現在、米国豪州など9カ国が今秋をメドに関税の原則撤廃による自由な貿易や投資ルールなどについて交渉を重ねている。日本の参加がとりわけ重要なのは、TPPがEUを超える一大経済圏となる可能性が高いからだ。

 不参加だと米豪などへの輸出が関税分だけ不利になる。日本の製造業が生産拠点をTPP参加国に移すことも予想され、国内の産業空洞化に拍車がかかる。雇用にもマイナスだ。

 TPPにはもう一つ重要な安全保障上の利点がある。経済成長著しい中国は、国力にモノをいわせた独善的な姿勢が目立っている。昨年9月の沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件では、電子機器の製造に不可欠なレアアース(希土類)の禁輸を突然打ち出し、国際社会の反発を招いた。

 TPPは米国が事実上主導し、民主主義国を主体に構成する経済圏構想だ。これによって、中国の独善性を牽制(けんせい)する役割を果たすことは間違いない。

 政府は今年6月までに農業対策をまとめ、TPP参加の是非を最終決断するとしているが、小手先の対応であってはなるまい。国際競争力ある農業に育てるには農地を意欲的な専業農家に集約し、生産効率を上げねばならない。

 しかし、現行の民主党政権の戸別所得補償制度は減反に参加する全農家を対象に10アールあたり1万5000円を一律配分する方式にしたため、むしろ農地の細分化に向かっている。専業農家に土地を貸していた多くの零細・兼業農家が土地の返還を求める「貸しはがし」が全国で広がっているのだ。自分でコメを作って所得補償を受け取った方が、地代よりも収入が多いと判断したためである。

 それなのに菅政権は来年度さらに、経営規模を広げた農家を対象に規模加算としてその年限りで2万円支給する。TPP参加に反対する農家への懐柔策だが、これでは専業農家の規模拡大とコスト削減の努力を無にしてしまう。

 直視すべきは、高い米価の維持を目的に40年前に始まった減反政策が機能不全に陥っていることだ。この10年をみても米価は60キロあたり2万円から1万3000円に35%低下した。農業の衰退も進み、耕作放棄地は今では埼玉県の面積に匹敵する39万ヘクタールに達し、農業人口もこの30年で半減した。

 減反を廃止して自由にコメを作れるようにし、専業農家に限って所得補償すべきだ。そうしなければ、強い農業の実現は困難だし、税金を無駄に使うだけである。

 ◆コメにも国際競争力

 日本では長年、兼業農家優先の農政が行われてきた。農協組合員の多くが兼業農家でその票をあてにしてきたのが農林族議員だからだ。民主党政権でも構造は変わっていないといえる。

 だが、海外に目を向ければ、そうした農業改革を阻む内向き農政の限界に気付かざるを得ない。世界的な需要拡大でコメの国際相場が上昇している。中国産米の輸入価格は現在60キロあたり1万円だ。高品質の日本のコメには十分な国際競争力が生まれている。

 政府が昨年末、中国の国営企業とコメの対中輸出に関する覚書を交わしたのは現状を踏まえ、コメの輸出拡大をめざす考えからではないか。だが、その一方で競争力をそぐ減反を続けるのでは政策の矛盾を批判されても仕方あるまい。認識すべきは、輸出を可能にする生産余力が食糧安全保障上必要だということだ。何より農地が保全される意味は大きい。

 菅首相はそうした内外の農業の状況変化を見据えて、TPP参加を早期決断すべきだ。

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