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欠けている「世代交代」の視点!

2010年9月16日(木)日経ビジネス 小黒 一正 

 なぜ政府はもっと借金を増やさないのか?

 「無税の国家が実現できる」という議論を聞いた場合、皆さんはどう反応するだろうか? ほぼ全員が、「そんなにうまい話があるはずがない。うさん臭い」と思うに違いない。

 では、「日本の場合、政府の借金の多くは国内で賄っている。国全体で見ると、国民の『「借金』であると同時に『資産』であるから心配ない」という議論はどうだろうか?

 今度は、「もしかすると、大丈夫かもしれない…」と考える人が増えるに違いない。

 だが、この2つの議論はつながっているのだ。理由は簡単で、もし「政府の借金を国内で賄っている限り、問題がない」のであれば、政府支出のすべてを内国債(国内からの借金)で賄ってしまえばいいからだ。これで、無税国家が実現できる。何かおかしいが…。

 極端な議論であるが、経済学者は古くから国債の負担について議論してきた。その中で、政府支出の経路が定まっている場合に、その財源の一部を租税でなく、国債で賄ったときに、経済に何か変化が起こるかどうかについても議論してきた。

 この連載の目的は経済学の講義でないから、詳しい説明は省くが、「一定の前提条件」が成り立つとき、長期的に財政収支が均衡する限り、租税で賄おうが、国債で賄おうが、同等であると示すことができる。これを、「公債の中立命題」という。この命題の「前提条件」が成り立てば、政府支出を賄う財源として、租税と国債は同等だから、全部を国債発行で賄っても問題ないことになる。

 だが、公債の中立命題は残念ながら成り立たない。それは、拙書『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)でも説明しているように、世代交代や家計の異質性などがあるからである。以下、この点について少し説明しよう。


 複雑な問題は、簡略化すると「本質」が見えてくる!

 まず、本質を見るため、2つの家計しかいない経済を考えよう。つまり、異質性のある家計で、多くのマネーを持つ家計Iとそうでない家計IIだ。

 また、政府は本来なら適切な財源を確保しなければならないが、増税を先送りして、ここでは国内の家計Iに1億円の公債(内国債)を引き受けてもらい、それを財源にして、家計Iと家計IIに5000万円ずつの減税を行う。いっぽう公債償還時には、公債を引き受けてもらった家計Iに1億円を返済するため、家計Iと家計IIに5000万円ずつの増税を予定しているとしよう。

 このケースにおける政府と家計間のマネーの流れを図示すると、図表1のようになる。まず、公債を発行する時点はどうかというと、それは「1)公債発行時」上段のようになる。家計Iのマネーの動きに注目すると、1億円出ていき5000万円入ってくるから、ネットで「5000万円」出ていく。いっぽう、家計IIはネットで「5000万円」入ってくる。

 この場合、政府は「マネーを右から左に流す単なる導管」にすぎない。このマネーの流れはけっきょく、「1)公債発行時」下段のように、家計IIが家計Iから5000万円のマネーをもらったのに等しい。

 では、公債を償還するときはどうか。政府はマネーを借りた家計Iに1億円を返済する必要があるので、家計Iと家計IIに増税を行う。この場合、マネーの流れは図表1の「2)公債償還時」上段のようになる。その際、家計Iのマネーの動きに注目すると、5000万円出ていき1億円入ってくるから。国債を発行するときとは逆で、ネットで「5000万円」入ってくる。いっぽう、家計IIはネットで「5000万円」出ていく。つまり、この場合はけっきょく、「2)公債償還時」下段のように、家計IIが家計Iに5000万円のマネーを返すことになる。

 このように、公債発行・減税政策は、内国債であるとき、その発行時と償還時のどちらにおいても、政府は単なる導管にすぎない。家計間でマネーをやり取りしているのと同等になる。このとき、家計IIはどのように行動するか? もし家計IIが合理的なら、公債発行時にもらった5000万円のマネーをすぐに使わず、償還時の増税に備えて、貯蓄しておくだろう。

 他方、もし家計IIが合理的でなく、公債発行時にもらった5000万円のマネーをすぐに消費してしまい、償還時に5000万円の増税を受けても、損得ゼロだから「自業自得」の話だ(もっとも、家計IIが5000万円の増税を政治的に拒否し、国債の一部をデフォルトさせるか、家計Iに追加負担を迫るシナリオもあり得るが…)。

 
 世代交代があると議論は変わってくる!

 しかし、公債を発行する時点と償還する時点とでは30年程度のタイムラグがある。その間に世代交代があると話が違ってくる。いま、公債を発行した時点と償還する時点の家計は親子関係にあり、償還時の家計I’は、親である発行時の家計Iの子どもが成人した時点での家計としよう。同様に、家計II’は家計IIの子ども世代だ。(図表1で、家計I’のように「’」が付いているのは「子世代」、付いてないのは「親世代」であることを示す)。

 ここで、親子関係にある「家計II」と「家計II’」に着目してみよう。その際、政府の公債発行・減税政策により、公債を発行した時点において、親の「家計II」は5000万円の「得」をした。しかし、償還する時点において、子の「家計II’」は5000万円の増税で「損」をすることになる。

 このとき、もし家計II’の親である家計IIが利他的で、子どもの家計II’のことを(可哀想と本当に)考えているなら、公債が発行された時点にもらった5000万円を消費せず、遺産や贈与といった形で家計II’に残すだろう。もちろん、残し方は、人的資本としての子の価値を高める教育投資のような「贈与」でもかまわない。図表1の下段の「?」ようにマネーが流れる。そうすると、親世代や子世代の消費は変化せず、このような世代間移転政策は、経済全体に何も影響を与えない。これは世代交代がある場合の「公債の中立命題」で、いわゆる「バローの中立命題」と呼ばれるものだ。

 だが、残念ながら、この「バローの中立命題」が成立するほど、各世代は利他的でない。大阪大学のチャールズ・ホリオカ教授をはじめ、多くの実証分析による結果である。

 また、次回に詳しく紹介するが、いまの財政・社会保障制度で、60歳以上の世代が約4000万円程度の「得」をしているいっぽう、将来世代は約8000万円程度の「損」をしている。もしバローの中立命題が成立しているなら、祖父母から孫世代に、遺産や贈与といった手段で8000万円程度の移転がなされるだろう。だが、そのような移転を行うことができる高齢世帯はきわめて少ない。


 資産の歪みは「公債の中立命題」が成り立たない一つの証拠!

 というのは、高齢世帯には異質性があり、その資産分布には「ばらつき」、つまり資産格差があるからだ。「平成21年度・家計の金融行動に関する世論調査」(金融広報中央委員会)によると、金融資産保有額は、60歳代で平均1677万円(中央値900万円)、70歳以上で平均1379万円(中央値600万円)にすぎない。金融資産の平均と中央値で770万円程度の開きがあるのは、高齢世帯の資産分布に「ばらつき」がある証拠だ(図表2)。実際、60歳代で貯蓄がない世帯は19.9%、70歳以上では21.3%も居る。しかも、金融資産の中央値のみでなく平均も、8000万円を大きく下回るから、孫世代に8000万円も移転できるほど余裕のある高齢世帯はとても少ない。

 このように、もともと、60歳以上の世代の多くは4000万円程度の「得」をしていても、その資産はそれほどない。この実態を見れば、公債の中立命題が成立していないことは明らかであろう。このほか、この命題が成立しない理由はいろいろ考えられるが、理論が想定するほど、人間は合理的でなく、孫世代や子世代がどれくらい損をするかなど、そもそも分かっていないのかもしれない。

 いずれにせよ、国債発行は世代間格差を引き起こし、将来世代に過重な負担を押し付ける。したがって、「政府の借金の多くは内国債だから問題がない」というのは、間違いである。
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