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会社概要

株式会社エンジョイジャパン
EnjoyJapan co,.Ltd

〒113-0034
東京都文京区湯島3-31-1
中川ビル802

〒160-0022
東京都新宿区新宿2-1-1
ラポートピアビル1F

上海支社 上海毅伟信息科技有限公司
中国上海市徐汇区漕溪北路737弄1号3203室

設立 2010年4月

代表取締役 瞿史偉(ク シイ)

主要取引先銀行 東京三菱UFJ銀行 上野支店

enjoyJapan日本HP http://enjoy-japan.jp/

enjoyJapan中国HP http://enjoy-japan.cn/

電話 03-6736-2658

Fax 03-5367-3972


事業内容

1. Webサイトと連動するフリーペーパーの双方による訪日前の中国人観光客へアプローチ

* 今や中国でもネット人口は爆発的に増え、インターネットで事前調査をするのは当たり前になりました。エンジョイジャパンでは、日本在住の中国人スタッフが中国人観光客が本当に欲しいと思っている情報のみを掲載したサイトを中国国内でオープンし、訪日予定のお客様や、訪日を検討している潜在客へ、日本の情報をアピールします。

* エンジョイジャパンでは、上海市内の旅行代理店10社、180か所の窓口と業務提携しており、訪日旅行者向けに、日本観光ガイドブックを無料で配布致します。さらにサイトへ会員登録した会員のみが受け取れる、メールマガジンを発行し、訪日中国人の囲い込みを致します。


2. スマートフォンアプリおよびコールセンターによる訪日中の中国人観光客にサポート

* スマートフォン用のエンジョイジャパンアプリケーションをオープンし、中国人観光客が日本に来ても、携帯電話で日本のお店や観光スポットを探すことができます。また中国国内で旅行前にアプリを内蔵した携帯電話の貸し出しも行っておりますので、スマートフォンを保有していない旅行客でもエンジョイジャパンのアプリを使用することが可能です。

* エンジョイジャパンでは、日本在住の中国人スタッフを集めたコールセンターを設置し、切符の買い方から、日本でのマナー、オススメのスポットまで中国人観光客の相談に対応致します。


3. 日本の中国人観光客を始め海外のお客様の受け入れをサポート

* メニュー翻訳(中国語、英語、韓国語)

* コールセンター(中国語、英語、韓国語) 24時間対応可能

* コンサルティング


4. ツアーの誘致、プランニング提案

* 中国の大手旅行社との連携により、日本観光ツアーのプランニングを致します。ありきたりな観光プランを求めていない旅行客へ、また日本に来たいと思わせるプランを提供します。


5. 日本物産などの中国販売サポート

* 日本の各地の特産品を中国に、プランニングを始め、マーケティング、販売ルート、お客さんサポートを含め、全面サポートいたします。


6. 中国進出へのコンサルティング

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世界に1000万人。富裕層は“日本”をまだ知らない!

2009年2月3日(火)日経ビジネス ジェネックスパートナーズ 

世界中で10万人が、年間1億円以上を旅行に使っている!

ラストエンペラーの舞台である紫禁城にあった、懐中時計と柱時計。この「皇帝が愛した時計」は、180年余の歴史を誇るスイスの時計メーカー「BOVET(ボヴェ)」によるものである。ボヴェの時計の大部分はマスターピース、つまりオーダー品。いわゆる高級ブランドである。

 このボヴェには、加賀蒔絵を施した時計もある。中でも、2003年の新作発表会に出品された「風神雷神」モデルが有名だが、これ以外にも、世界の富裕層や愛好家からの製作依頼があり、1年待ちも当たり前のようだ。1本数百万円から数千万という時計を待ち望む人々が、世界には存在するのである。

 2008年6月に発表されたメリルリンチとキャップジェミニが発表した「World Wealth Report 2008」によれば、2007年度の世界の富裕層全体が保有する総資産は40兆7000億ドルにものぼり、金融資産100万ドル以上を保有する個人資産家は、1010万人となっている。

融危機の影響を受けている現時点での最新状況はわからないが、いずれにしても、日本が目標とする訪日外国人旅行者数1000万人を超える富裕層が世界中にいることになるのである。

 また、経済産業省・国土交通省の平成18年度ラグジュアリー・トラベルマーケット調査事業による「日本における今後のラグジュアリー・トラベルマーケットの在り方に関する調査研究<報告書>」によれば、アメリカ、ヨーロッパを中心としたラグジュアリー・トラベルマーケットには、レジャー目的の旅行に年間1億円以上を投じる富裕層が、なんと、10万人以上存在するといわれている。

 この10万人について単純計算しただけでも、その経済規模は、最低10兆円を超える。この10万人のわずか5%でも日本に振り向けることができれば、新たに5000億円のマーケットが生まれることになるのだ。

カンヌ映画祭の会場で行われたジャパンナイト!

 この新たな可能性に着目した経済産業省と観光庁は、新たに調査や推進活動を開始している。

 毎年フランス カンヌで開催される、「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット(ILTM)」。主催者によって厳選された、世界の富裕層旅行のバイヤーやサプライヤーが一堂に会する商談会であり、世界で最も権威があると認知されているイベントである。

2007年12月、日本は、このILTMの公式オープニングパーティを、「ジャパンナイト」として開催した。京都や金沢を中心に、日本の「本物」の歴史・文化・伝統を体験するイベントを、カンヌ国際映画祭の公式パーティ会場でもある場所で行ったのである。

 あでやかな歌舞伎衣装や蒔絵の展示、日本料理のデモンストレーション、ウェルカムドリンクとしての抹茶でのもてなし等々、和の魅力を発信するジャパンナイトは、多くの外国人バイヤーを魅了した。

そして2008年には、経済産業省を中心にラグジュアリー・トラベル国内ネットワーク化研究会が始動。10月には、海外のバイヤーを招待して、「ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム(JLTF)」も開催した。

 前出の平成18年度実施の調査では、日本のラグジュアリー・トラベルの取り組みにおいて、2つの課題が浮かび上がっていた。1つは、海外バイヤーにほとんど日本の情報が届いていない、という点であり、もう1つは、国内の受入体制が十分に整っていない点である。

 そもそも、海外への情報発信が不十分であることについては、それまでも訪日観光客の誘客において度々指摘されていた。ましてや、日本人でさえ、何が本物で、そこにたどり着くためにはどこにどうすれば良いのか、知る人の少ない伝統文化が対象のため、情報発信はさらに難しい。

 かといって、安易な情報発信は、その「本物の価値」を損なうことにも繋がりかねない。いかに、その精神性の高さや伝統の重みを伝えることができるのか、この「見せ方」も重要なのだ。

 一方、伝統工芸などのコンテンツの多くは、門外不出という閉じられた世界にある。その閉じられた世界と、海外の富裕層を結びつけるコーディネーターが、日本にはほとんど存在していない。また、たとえ結び付けられたとしても、訪日した顧客に対して、歴史や地理的な背景等、高いレベルの知識を土台にして、的確に説明できるガイドは極めて少ない。

 ILTMでのジャパンナイトやJLTFの開催は、1つ目の課題であった情報発信の取り組みだ。そして、2つ目のネットワークについても、来年度の実証実験を睨んで準備が進められている。とはいえ、まだまだ、始まったばかり、というのが、ラグジュアリー・トラベルへの取り組みの実際なのである。

こだわりとポリシーを持つ顧客!

 そもそも、ラグジュアリー・トラベルの顧客とは、どういう人々なのだろうか。

 富裕層と一口に言っても、ロイヤルファミリーや代々の資産家、大企業の幹部、芸能界関係者、IPO長者と幅広い。富裕層は国を問わず全世界に存在しているが、旅行に大金を投じるのは、欧米、ロシア、香港に多いという。

 こういった富裕層に共通するのは、「知的欲求の高さ」である。ある人は、彼らを「思ったことを、実行できる人々」と表現していたが、まさに持てる資産の力によって、望むことを追求することができる人々、これがラグジュアリー・トラベルの顧客なのである。

 それゆえ、必ずしも「高価格」であれば良い、というのではない。一般の観光客には成しえない体験、通常では出会うことができない人物との邂逅こそが、彼らの求めるものであり、それらはすべて「本物」でなければならない。茶道体験を一例にとっても、家元の点てたお茶を正式な茶室で味わうことを、彼らは望むのだ。

 富裕層が1回の旅行で消費する額について、正確な統計は存在していないが、1回の訪日旅行で7000万円を消費した例もあるという。投宿するホテルの宴会場で歌舞伎を再現したり、本物のクジャク2羽を妻の誕生日プレゼントとして用意したり、と富裕層はそのこだわりに対してお金を惜しまない。

 一方で、納得のできない支払いに対して厳しいという一面も持っている。ある意味で、お金の使い方について、明確なポリシーを持つ人々なのである。

こういった、目も舌も肥えた富裕層の多種多様な要望に応える「プライベート・コンシェルジュ・サービス」と呼ばれる会員制クラブが、欧米では活況を呈している。コンシェルジュたちは、特別な旅行だけでなく、ショッピング、芸術、イベント、不動産など、富裕層のライフスタイル全般の要望に的確に応えることを常としている。

 さらに、北米・南米・オーストラリアでは、Virtuoso(ヴァルトュオーソ)という富裕層専門の旅行会社、コンサルタントのアソシエーションが存在している。

 富裕層の多くは、富裕層同士のクチコミを除けば、自らの手を労して情報を集め、旅の手配をしたがらない。つまり、こういったコンシェルジュやVirtuosoのメンバーこそが、実際には日本のラグジュアリー・トラベルにおける重要なプレーヤーとなるのだ。

欠くことのできないコンテンツホルダーの存在!

 一方、顧客が存在していたとしても、こういった富裕層が求める「本物」を提供できるコンテンツホルダーの存在なくして、ラグジュアリー・トラベルは成立しない。それゆえ、彼らこそが、日本国内においては、最も重要なプレーヤーとなる。

 このようなコンテンツホルダーも、実は、海外富裕層を受け入れたいと考えている。経済的な効果もさることながら、本物を志向する富裕層に、今まで守り続けてきた本物の伝統や文化を伝え、魅了したい、という思いが強いのだ。結果的に富裕層によって再評価され、経済性が担保されることによって、保存・育成される日本の伝統文化は少なくない。

 例えば、伝統芸能のひとつである津軽三味線。この奏者で、通常の公演だけで生活が営めるのは、ほんの一握りである。しかし、顧客を海外の富裕層に拡大することによって、新たな経済的効果を得ることが可能になる。津軽三味線と会席料理などを組み合わせたイベントは、評価も高い。経済的な効果だけでなく、演奏を観客から評価されることは、奏者の喜びでもあり、継承者としての誇りにも繋がる。ラグジュアリー・トラベルが、後継者不足を解消する手段となる可能性は高いのだ。

 コンテンツホルダーは、伝統芸能や伝統工芸、老舗旅館など、日本古来の「本物」を綿々と守り続けてきた人々だけでない。日本を代表するサブカルチャーやファッションを牽引する人々も含まれる。例えば、ベッカムなど欧米人のファンも多いア・ベイシング・エイプのNIGOこと長尾氏もその一人なのである。

顧客とコンテンツホルダーを繋ぐ人々!

 このような顧客と、コンテンツホルダーを繋ぐ役割として、日本にも、数は少ないが、富裕層向けの旅行に取り組む企業がある。

 世界40数カ国でコンシェルジュサービスを展開しているクィンテセンシャリーや、富裕層向けの特別な旅をアレンジするジェットセッター、世界に向かって日本の旅館の素晴らしさを発信するアール・プロジェクト・インコーポレイテッド、日本の伝統芸能を発信しているオーセンティック・ジャパン、そして、世界最大の旅行会社であるJTBグループの中にあるブティックJTBなどである。

 それぞれ、着々と実績を上げているが、年間の顧客数は多くない。まだ日本を訪れるラグジュアリー・トラベルの顧客が少ないこともあるが、移動手段や食事、ホテルに設置するワインの銘柄、アメニティの種類に至るまで、1組のラグジュアリー・トラベルの顧客の受け入れには膨大な手間がかかり、かつ、すべてがオーダーメイドのため、1企業で対応できる顧客数は自ずと限られてしまう。

 ならば担い手を増やせば良い、と考えがちであるが、ラグジュアリー・トラベルは、誰にでも参入できる領域ではない。なぜなら、コンテンツホルダーと同様に、富裕層のネットワークも信頼を第一とする閉じた世界であるからだ。


豊富なコンテンツを活かしきる!

 ラグジュアリー・トラベルには、ここまで述べた、経済効果と伝統文化の保存・育成に加え、もう1つの効用がある。それは「インフルエンサー効果」だ。

 一世風靡したビリーズ・ブートキャンプは、有名芸能人にファンが多く、トーク番組などで話題にされたことから急拡大した。その勢いはすさまじく、1万セット販売できれば成功と言われる通信販売において、全世界で1000万セット以上を売り上げたのである。

 このように、富裕層や芸能人など影響力を持つ人々から火がつき、広い裾野に向かって急速に広がっていく現象、これが、インフルエンサー効果だ。この効果は、個別の商品やサービスに限らず、旅行においても起きている。

直接的な経済効果、伝統文化の保存・育成、そしてインフルエンサー効果による波及、と魅力溢れるラグジュアリー・トラベル。当然のことながら、各国の戦いは、一般観光客を対象にしたそれとは比較にならないほど熾烈である。

 日本には、伝統工芸や伝統芸能のみならず、精神性の高い文化が数多く存在している。また、飛鳥時代から綿々と続く世界最古の老舗企業をはじめ、1000年を超えて生き続ける老舗の数は、世界に類を見ないほど多い。コンテンツの豊富さにおいて、世界の中で十分に勝てる国だと言っても過言ではないのだ。

 こういったコンテンツを新たに作り出すのは、極めて難しい。しかし、存在するコンテンツを最大限に活用するための仕組みを作り上げることは、これからでも可能だ。そう言った意味で、ラグジュアリー・トラベルにおいて日本は有利なのである。あとは、豊富なコンテンツを最大限に活かす仕組みを整えることさえできれば、ラグジュアリー・トラベルにおいて大きく躍進できる可能性は、非常に高い。

ジャパンブランドを追え! では、どう整えれば良いのだろうか。

 端的に言ってしまえば、「コンテンツを評価・再定義」し、「コンテンツと顧客を結びつけ」、「顧客の期待値をコントロール」した上で迎え入れ、「質の高いサービスを提供」し、帰国後に「アフターフォロー」する、というプロセスが断絶せず、かつ、それぞれのプロセスで得た顧客の声がコンテンツ評価などに反映されるようにすることである

このプロセスには、立場も価値観も異なる多様なプレーヤーが絡み合う。だからと言って、バラバラに動いていては、断絶が発生するだけに止まらず、致命傷を負いかねない。

 今も、日本全国のあらゆる地域が、海外に向かってバラバラに働きかけている。実際に、ある海外の旅行会社は、分刻みで日本の各地域の人々が次々と訪れていて忙殺されている、という。この「一つにまとまらない」状態は、ラグジュアリー・トラベルでは致命傷になるのだ。

 顧客は、日本と他国を比較しているのであって、日本国内の地域を比較しているのではない。また、複数のプレーヤーがチグハグなことを説明すれば、それは不信感に繋がる。だからこそ、「ジャパンブランド」とは何か、それをどう戦略的に売っていくのか、日本という国が1つになって考え、実行していかなければならないのだ。

勝者の条件!

 ラグジュアリー・トラベルにおける勝者となるためには、育成・強化すべき機能が3つあると我々は考えている。それは、「コンテンツ集約機能の育成・強化」、「コンシェルジュ機能の育成・強化」、そして「サービスレベルの向上」である。

 (1) コンテンツ集約機能の育成・強化!

 コンテンツホルダーのネットワークは、すでにいくつか存在している。長い歴史の中で作り上げられた、同じ価値観を持つ人たちが集まったネットワークである。このネットワークと接点を持つには、紹介する人との信頼関係が不可欠となる。つまり、簡単には手の届かないネットワークなのだ。

 そして、たとえリーチできたとしても、それが本当に価値あるものなのか、厳密に評価し、よりすぐったコンテンツだけを「売り物」としなければならない。売りたいものを売る、という従来の観光によく見られがちな「手前味噌」は、ラグジュアリー・トラベルにおいては、あってはならないのだ。

 さらに、どんなに素晴らしいコンテンツであったとしても、一度見たり体験したりしたものは、多くの場合、顧客にとって魅力のないものになってしまう。また、情報が広く開示されたり、一般顧客でも手が届くようになった商品やサービスは、富裕層を魅了しない。それゆえ、すでに発掘されたコンテンツを磨き上げるのと同時に、常に新たなコンテンツを追加して行かなければならない。そして、ただ追加するだけでなく、顧客を次の訪日に誘導すべく、有機的に結び付けていく必要があるのだ。

 顧客のこだわりや興味の方向性に合わせて、宗教的なつながりや、技巧、自然風土のつながりなど、その商品やサービスに隠されている文脈を意識しながらコンテンツを評価し、発信していかなければならないのである。

(2) コンシェルジュ機能の育成・強化!

 ラグジュアリー・トラベルにおいて、ほぼすべてのプロセスに関与するだけでなく、顧客に最も近い存在、それがコンシェルジュである。コンシェルジュというのは、海外バイヤーからも、コンテンツホルダーからも、そして中間業者同士においても、大きな信頼を獲得していなければ、役割を果たすことはできない。

 コンシェルジュ機能は、大きく3つに分かれる。まず、顧客とコンテンツを効果的に結び付けるマッチング機能。2つ目は、顧客の期待値をコントロールする機能、そして最後は、アフターフォロー機能である。いずれも重要な機能であるが、顧客満足という点で、コンシェルジュに欠かすことができないのが、顧客の期待値コントロール機能である。

 どんなに価値あるコンテンツであったとしても、期待値を下回ってしまえば顧客から評価されない。また、顧客に対して厳守してもらわなければならない文化的背景を持つ制約条件なども、事前に十分な理解を得ておく必要がある。

 富裕層は、「本物の文化」に対して敬意を表する。富裕層、と聞いて、傍若無人な振る舞いを想像する向きもあろうが、その背景や理由に納得すれば、多くの決まりごとにも彼らは真摯に従ってくれる。つまり、この「事前の心構え」をどの程度形成できるのか、がコンシェルジュの腕の見せ所とも言えるのだ。

 このように、ラグジュアリー・トラベルに欠かすことのできないコンシェルジュ機能だが、残念ながら、非常に乏しいのが現在の日本である。確かに、その性格上育成が難しい、という理由もあるが、もう一つ大きな理由がある。それは、本来の役割以外のコーディネイトまで、すべてコンシェルジュに委ねられているという現実だ。

 観光領域の様々なエージェントが、それぞれ得意とするコーディネイト機能を発揮し、互いに連携しなければ、コンシェルジュは本来の機能に専念できない。それゆえ、コンシェルジュ自身の育成と同時に、それぞれのエージェントが十分にその役割を果たすことが、何より必要なのである。

 (3) サービスレベルの向上!

 たとえ、どんなにコンテンツが充実したとしても、顧客と直接的な接点を持つ人々いかんで、顧客の日本に対する評価は大きく変わる。その主役は、通訳ガイドであり、宿泊施設であり、そして外食産業と言ったサービス提供者である。

 サービスレベルの向上において、通訳ガイドの果たす役割は大きい。コンテンツを、より価値あるものにできるか否かが、通訳ガイドにかかっているからだ。それゆえ、歴史の教科書やガイド教本などに掲載されている事柄だけでなく、コンテンツそのものは当然のこと、その周辺に至る、広く深い知識が求められる。

 例えば築地市場で、ただ「商品には触ってはいけない」「フラッシュ禁止」と伝えるだけではなく、なぜ触れてはいけないのか、なぜフラッシュ厳禁なのか、を説明しなければならない。加えて「もし自分がマグロ漁師なら、自分の取り分はどれくらいになるのか」「マグロはいつ頃から、どんな風に食べられていたのか」など個別の疑問も解消しなければならないのだ。

 一方、宿泊施設や外食産業にもまた、大きな課題がある。それは、文化的理由ではなく、習慣や提供者側の都合で、顧客の要求に応えない点である。

 例えば、茶器を傷つけるため貴金属を身につけてはいけない、といった制約は、文化的背景があり、決して妥協すべきものではない。しかし、飛行機の都合で深夜に到着する顧客から夜食を求められ、それを断固として拒否する、というのは、文化でも何でもなく、単に提供者側の都合や面子に過ぎない。

 「ありのままの、おもてなし」は重要である。しかし、その中でも、日本古来の文化と提供者の習慣を区別し、習慣について譲歩できる部分は譲歩する。この柔軟な「おもてなし」こそが、サービスレベルを向上させるのではないだろうか。

門戸開放がラグジュアリー・トラベル成功の鍵!

 経済環境が世界的に混乱している現在も、富裕層の訪日旅行にさしたる影響は出ていない、と語る関係者も少なくない。たとえプライベートジェットをファーストクラスに変更したとしても、その先にある「やりたいこと」をガマンしないのが彼ら富裕層の流儀だからだ、と多くの関係者が語っていた。

 一方、もともと知られていない、訪れた人も少ない日本は、始めから旅行先の候補に入っていないからだ、と指摘する関係者もいる。訪日観光誘致、とりわけラグジュアリー・トラベルにおいて、日本はようやく名乗りを上げた程度に過ぎない。すべては、これからなのだ。

 日本がラグジュアリー・トラベル大国として成長していくためには、まずはコンテンツホルダーをはじめとするプレーヤーたちが、門戸を開かなければ始まらない。まさに、「開国ニッポン」が求められているのである。

やまとごころ.jp
http://www.yamatogokoro.jp/

インバウンド業界トップインタビュー
「総合ワールドトラベル株式会社 代表取締役 王一仁」

プロフィール
1948年6月、上海生まれ。すぐに家族で香港に移住し、1968年に初来日。1970年に東京工業大学入学、修士課程卒業後、マサチューセッツ工科大学大学院に交換留学。1992年に株式会社ワールドパワー旅行社設立、1992年に現在の総合ワールドトラベル株式会社設立。

30年前からいち早く日本のインバウンド旅行業に目を付けていた「総合ワールドトラベル株式会社」の社長・王 一仁氏。今回はアセアンインバウンド観光振興会(以下AISO)の理事長でもある王氏に現在の日本のインバウンド旅行業についてお話しを伺いました。

マサチューセッツ工科大学院卒のエリートが旅行業界へ進んだ理由とは?

村山
本日はまずは王さんが起業にいたるまでのプロセスをお聞きしたいと思います。


中国上海に生まれたのですが、その後香港に移住し、高校時代までを過ごしました。

1960年代の日本は、アジアでは製造業の先進国として、香港の工業界にも多大な影響力があり、私も関心を持っていました。来日のきっかけは、英語圏の香港学生が日本に留学させるため、母校(高校)が留日奨学金を開設し、私はそれを獲得。1968年に初来日しました。
.そして1970年の大阪万博に通訳ボランティアガイドとして活動し、期間中は6500万人の訪問者と出会いました。その時、日本のインバウンド事業には無限の可能性があるのではと、強く感じたのです。
それがきっかけとなり日本の大学に留学することに決めたのです。

村山
日本の大学では何を専攻されていたのですが?


香港で奨学金を取得し、東京工業大学に進学しました。今の菅総理大臣と同じ大学ですね。彼のほうが2、3年先輩ですが。
専攻していたのは繊維工学です。当時の香港は繊維産業が盛んでしたので、日本の最新技術を学びたいと思ったのです。

村山
理系の学生だった王さんが、どうして旅行会社に?


学生のときに、国際交流のクラブ活動を熱心に行っていました。海外の留学生を受け入れるお手伝いや、通訳などを担当していたのです。結果としては、そのときの体験が現在の仕事につながっているのでしょう。

そして大学を卒業して、一度香港に帰ったのですが、その頃には香港内の繊維産業がコストの安いアフリカや中国本土へと展開されていて、私が就きたいと思っている仕事が極端に減っていたのです。少し時間を稼ぎながら様子を見ようということで、今度はアメリカのマサチューセッツ工科大学院に進んで、勉強を深めることにしたのです。しかし、マサチューセッツを卒業して帰ってきても、香港内に繊維の仕事がまだ戻ってきてはいませんでした。

そんな中、アメリカでも、日本にいた頃と同様の国際交流のクラブ活動を続けていて、その延長としてこの仕事が始まったというのが、正直なところです。

村山
ところでアメリカや香港ではなく、どうしてこの日本を拠点とされたのですか?


香港はもちろん、当時のアメリカにも中国人はたくさんいましたが、日本国内にはまだまだ少なかったのですね。だからこそ中国人である私が活躍できる場も多いのではないかと判断しました。

そして、外国人ならではの視点で見つけた“日本の弱い部分”を補うことが、ビジネスチャンスにつながるのでは、と考えたわけです。
当時の日本はアウトバウンドばかりで、インバウンドの部分が非常に弱かったのです。だから、日本を拠点として海外の観光客を集めるスタイルの旅行業に携わろうと考えたのです。
そして1981年に最初の会社である株式会社ワールドパワー旅行社を立ち上げました。

個人旅行客に対して有効なのは、友人のようなガイドと地元に密着した情報!

1981年からといいますと、すでに30年近くインバウンドに携わってこられた王さんですが、昨今の状況について思うところはありますか。


ご存知の通り、日本のインバウンドは諸外国に比べて立ち遅れているといわざるをえません。世界で28番目、アジアでも8番目といわれているくらいですから。

その要因については様々あると考えますが、第一にガイドのレベルの問題があげられます。
日本ではライセンスの有無の問題にばかり目がいきがちですが、必要なのは資格ではなくスキル。スキルというのは客を喜ばせ安心させる能力、あるいはサービス精神であったりホスピタリティであったりしますが、とにかくこの部分が弱い。

村山
なるほど。確かにそれは問題ですね。


そこで私たちが提唱しているのが、「ホスピタリティ・ガイド」と呼んでいるボランティアガイド。これから増加傾向の個人旅行客には、ものすごく有効な手段だと思うのです。

多少、言葉が上手に伝わらなくても、団体客ではない個人の客であれば、意思の疎通は何とかなります。逆に滞在型の個人客相手であれば、日本人ならではの案内スポット、例えばおいしいけど小さなラーメン店や寿司店。安い買い物ができるドラッグストアや100円ショップ、ディスカウントストアなどに友人感覚で案内できるので非常に喜ばれますし、とても“健全”だと思うのです。

.村山
“健全”じゃないケースもあるのですか?


香港や台湾などの旅行会社が企画する団体向けの激安日本ツアーというのは、提携している土産店やレストランからのショッピングコミッションで成り立っているんです。

大型家電販売店などのようにしっかりとした店であれば良いのですが、日本の国内で台湾人や韓国人が経営している怪しげな店に連れて行って、観光客に高い買い物をさせたりする悪質なケースもあります。

先日、香港でも、こういったガイドとお店の癒着についてマスコミにも大きく取り上げられ問題となっていました。こういったやり方は日本では考えられませんよね。

しかし観光客を呼び込むためのノウハウとしては、日本も学ぶべき点があるのではと思うのです。アウトバウンドの世界ではよく使われている手法ですが、決して不健全な仕組みを推奨しているのではありませんよ。皆さんも海外で経験ありますよね。日本は、そのような恩恵を受けてばかりで、恩恵の与え方を理解していないのだと思うのです。


村山
つまり、ツアーを安くするための仕掛け、みたいなものを用意するということですね。


そうです。

訪日観光のノウハウをシェアするための「アセアンインバウンド観光振興会」!

王さんが「アセアンインバウンド観光振興会(AISO)」を立ち上げられた理由というのも、その辺の歯がゆさというか、ノウハウのシェアをすべきであると考えられてのことだったのですね。


その通りです。国家レベルの観光推進ですと、どうしてもお金の話が先行してしまいます。海外に行って現地の業界人の話を聞くと、「日本はお金持ちだ。あんなにバラ撒いて」なんてよく笑われます(笑)。

お金を使ってカタチだけをなぞるような政策ではなく、民間レベルでもやるべきことをやっていくべきで、そのためには旅行会社やホテル、旅館なども共通意識を持って、どんどん参入していかなくてはなりません。
そうでないと、これから1千万人の観光客を誘致しようとしているわけですから、現状の体制ではカバーできるはずがないのです。
.村山
なるほど。現在はAISOにはどのくらいの企業が参加しているのですか。


設立してからの4年間で、登録企業は82社に上ります。やはり、インバウンドへの注目が高まってきたここ1年の間に、実に多くの企業が賛同して下さいました。

私もこの業界で30年やってきて、それなりのノウハウは持っているつもりです。その知識を皆さんとシェアし、活用していただきたいと考えています。
そして、インバウンド後進国といわれている日本の、その汚名をなんとしてでも拭っていきたいと思います。


村山
そうですね、是非。最後に今後のビジョンについてお聞かせいただけますか。


第一の目標は、何度もいうように日本の魅力や強みを、世界へ向けて発信していきたいということ。正しい方法で対処していけば、元々実力のある国なのですから、必ずや実を結ぶはずです。そのためにはさらにネットワークを広げていきたいですよね。

現在、観光立国と地方活性化という2つの政策の影響からか、実に多くの地方公共団体や観光協会の方々が商談にお見えになられます。しかし、皆さんには「少し待って下さい」とお願いしている状況です。まずは東京エリアの体制をキチンと整備して集客してから、地方へと段階を踏んで広めていきたいと考えます。

体制ができていない状況で、手だけを拡げていくことは大変危険であることは、誰でも理解するところだと思います。しっかりとネットワークを作り確実に進めていきたいと思います。

村山
なるほど。王さんのように、外国の方の視点で物事を考えながら、日本のインバウンドを推進される方というのは、大変稀有な存在であると考えます。これからも、インバウンドの発展のために頑張って下さい。今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。

間違いだらけの中国人富裕層訪日ツアー !

2010年12月3日 DIAMOND online 姫田小夏 [ジャーナリスト]

今年10月、中国からの訪日客は一転して9ヵ月振りの前年同月比減(1.8%、1900人減)となったものの、今年2月以来、中国からの訪日客は過去最高記録を更新し、1~10月では128万4300人と前年同期比49%増という高い数字となっている。

 確かに数字こそ稼いではいる。だが、中国からの訪日ツアーの「質」はどうなっているのだろうか。実態からは「おもてなし」を受けるどころか、「貧乏国ニッポン」に狼狽する中国人訪日客の姿が浮かび上がる。

 尖閣問題で揺れる今年10月の国慶節、そのさなかに上海からあるツアーが1週間の日程で日本に向けて飛び立った。東京から箱根を経由して大阪に抜けるゴールデンコースは、1週間の日程で1万5000元(約18万7500円、1元=約12.5円で換算、以下同)という超VIP向けオーダーメイドツアーだ。だが、このツアーの参加者は惨憺たる「おもてなし」に呆れ果てて帰国の途についた。

 そもそも上海発日本行きのツアー価格は、5泊6日で4000元(約5万円)程度というのが定番だとされている。3泊4日で3000元(約3万7500円)という激安ツアーも売り出されるなかで、その数倍にも相当するこのツアーがいかに「破格中の破格」であるかがわかるだろう。

超VIPツアーのはずが、宿はシングル9000円のビジネスホテル!

 先日、筆者はこのツアーに参加したAさんと面会した。Aさんはツアーの参加者らを「中国では1日1万元を消費し、150万元超の高級車を乗り回す富豪たち」と描写する。国家機関のトップに属する大物を筆頭に、「やんごとなき人々」がこれに加わったという。

 だが、彼らが日本で受けた「おもてなし」は惨憺たるものだった。Aさんはこう振り返る。

「ホテルは中国人だらけのビジネスホテルでした。あちこちで中国語が聞こえるので、中国と間違えるほどでした」

同ホテルは都心のビジネスホテル。シングルルームで9000円程度の、エコノミー仕様だ。

 これだけの料金を払いながら、宿泊するのはまるで犬小屋のように狭い客室。中国人だからという理由だけで、他の団体客と同じ扱いで押し込められたエコノミーホテルに、参加者らはまったく合点がいかなかったという。

夕食バイキングは「安さ爆発!」接客は横柄な態度の高校生アルバイト!

 さらにAさんは続ける。

「ディナーはバイキングでしたが、肉は固く魚もまずくてもう『安さ爆発!』という感じでした。食事のまずさは百歩譲ったとしても、レストランのサービスのひどさは少なからずショックを受けました」

 Aさんによれば、フロアでの接客担当者は高校生のアルバイトだったという。敬語も使わず、横柄な態度、仮に言葉がわからずとも、明らかに中国人を馬鹿にしていることは一目瞭然だったという。

 日本語が堪能で、滞日経験も長いAさんはこう結んだ。「ここは日本であるはずなのに、中国よりもサービスはひどい。他のツアー客は、日本を相当の貧乏国と思ったに違いありません」

 実は、これは日本での受け入れ先となるホテルやレストランがよくやるパターンだ。中国人旅行客をひとところに集約することで、ピンポイントのサービスを提供しやすいという利点があるからだ。

 そしてまた別の利点もある。「日本人常連客の流出回避」がそれだ。実際に飲食店などからは「大声で騒ぎ、マナーを知らない中国人観光客と一緒の席に座ることを嫌がる日本人は少なくない」との声があるように、中国人客と日本人客をどのように“棲み分け”させるかが、ひとつの課題となっているのだ。

コスト削減とバックマージンの果てに肝心の顧客に「実」が残らない惨状!

 1泊数万円のホテルに、朝夕の豪華グルメ…。観光立国を目指す日本が期待しているのは、まさにこうしたオーダーメイドツアーでやってくるような中国人訪日客だ。目下、日本の関連団体・企業が「富裕層チャンネル」を掘り起こそうと躍起になっているのは、価格競争に終始する「4000元の定番ツアー」とは異なり、「VIPが落とすマネーこそが日本に経済効果をもたらす」という認識があるためだ。

 しかしなぜ、豪華ツアーが貧乏ツアーにすり替わってしまうのだろうか。インバウンドビジネスに詳しい旅行業界のB氏を訪ねた。

「1人1日1万元超を消費する、という情報が末端に伝わっていない可能性があります」

 B氏は、中国側の旅行社が日本のランドオペレーター(宿泊や観光地、現地の交通手段など「地上手配」を行う専門会社のこと)に正確な予算を伝えていないケースが散見されると指摘する。また、正確に伝えないどころか、「5000元の予算」などのように虚偽の報告をしている可能性も考えられるという。さらに、格安ツアーの後に高級ツアー、というように交互に送り込んで、前回の赤字を「高級」で埋めるやり方も常套手段のひとつになっているようだ。

 また、B氏は“ガイドへの丸投げ”も問題視する。「旅行会社がある程度中抜きし、残りの予算をガイドに与えるやり方もある」。日本でのホテルやレストランを手配するのはガイドの仕事となり、結果、ガイドは実入りを多くするために片っ端から「格安」を手配してしまうことになる。

 この丸投げが訪日ツアーの質の悪化をもたらしているとすれば、こうした悪徳ガイドの暗躍を規制すべきだろう。だが、ガイドによっては報酬を旅行会社からもらうのではなく、旅行客を連れて行った買い物先からバックマージンとしてもらう者も多い。彼らが置かれている立場の不安定さ故に、一概にガイドだけを責めることはできないのである。

 むしろ、ガイドに対し「クレームの出ない範囲でうまくやれ」と“知恵をつける”旅行社も存在するわけで、結局はコストを下げさせるためのあの手この手は、旅行社が深く関与しているケースが多い。顧客満足度を上げるには、旅行業界に存在する複合的な問題を解決する必要がある。

 ちなみに、今回の訪日ツアーを受注した旅行会社を調べてみた。HPには「オバマ氏の大統領就任式典に参加するツアー」や「欧州の雪山で堪能するゴルフツアー」「時計コレクター向けスイス豪遊ツアー」など超VIP向けのツアーがズラリ。しかし、顧客の不満が訴えるように、実際のビジネスは羊頭狗肉、結局は「現地への丸投げでよし」とする質の低さが見て取れるのである。

そして観光客が落としたマネーは華人コミュニティを回遊する!

 中国からの訪日旅行者はいまのところ「東京~箱根経由~大阪」のゴールデンコースに8割方集中し、残りのうち1割が「東京~北海道」、さらに1割を「東京滞在」で分けているのが実態だ。日本の各自治体は観光プロモーションに熱心だが、地方の旅館や飲食店などが潤うのはまだまだ先のことだ。

 それどころか、日本に落ちたはずの中華マネーもその実、日本の中の中華コミュニティに吸収されがちなのが現状だ。

 中国人ガイドが日本を案内し、キックバックの多いの中華料理店に連れて行き、華人が経営する免税店に連れて行く。日本ツアーといえども、訪日客らはなんら華人コミュニティから離れることはなく、また肝心の観光客が落とす中華マネーは日本国内の中華ネットワークにとどまる傾向が強い。

 観光に詳しい専門家は「これは日本人が海外旅行に行っても同じこと。現地の日本人ガイドが手配するのは、日系のホテルやレストラン、デパートなど、結局日本人コミュニティの域を出ることがないのです。NYやパリでもジャパンマネーはジャパンコミュニティに落ちるしくみなのです」と語っている。

 とはいえ、やはり最大の問題は、日本の得意とする「おもてなし」がすっかり度外視されてしまっていることだろう。

 背景には価格競争のすさまじさが存在する。最近は冒頭で紹介した3泊4日3000元(約3万7500円)をも切るような超激安ツアーが続々と登場。エアラインを除けば、内訳は宿泊費込みで1日あたり5000円でのやりくりとなる。結果、中国からのツアー客は薄汚れた狭い客室に詰め込まれ、1食数百円の予算で作った激安ディナーを食べるはめになる。

 なかなか日本の「おもてなし」が届かない。ツアーそのものの質が低下するなかでは、等身大の日本すらも伝わらない。しかも、日本が貧乏国のレッテルを貼られるという“風評被害”まで受けたのでは、残念極まりない。

「何をやるか」とは、ビジネスモデルでなく、想いである!

2010年10月15日(金)日経ビジネス 西村 琢 

日本は島国であり、北海道や本州、四国や九州などいくつかの大きな島から構成されています。が、実はそれだけでなく、6000もの島が存在すると言われています。

 そのうち大半は無人島で、有人島はたった400前後。日本国内の島で最近よく名前を聞く場所と言えば、ベネッセコーポレーションが美術館を設立したことから大いに盛り上がった瀬戸内海の直島や樹齢2000年とも7000年とも言われる縄文杉が群生する屋久島、そして今でもリゾートとして人気のある沖縄の数々の離島などが挙げられます。

 でも東京にもひとつ、まだあまり知られていませんが、徐々に盛り上がってきている島があることをご存じでしょうか。

 その島の名前は「新島」。伊豆諸島を構成する島のひとつで、東京から南約160キロメートルに位置しています。20年ほど前までは夏に多くの若者が集まる活気のある島で、そんな訪問客を受け入れる民宿も無数にあったようですが、今や観光客は激減し、島民も2000人ほどで高齢化が進んでいる元気のない島になりかけていました。かつて「新島の竹下通り」と呼ばれていた通りはシーンとしていて、当時クラブとして栄えていた建物は薄汚れたスナックと化しています。

 そんな新島に昨年8月、「saro(サロー)」という名前の民宿がオープンしました。1階がカフェ、2階が素泊まりの民宿です。宿の名前は「茶廊」「叉路」「砂路」「砂浪」という意味を込めた造語に、新島の方言である独特の“のばし”を足して「さろー」と発音するようにしたそうです。

 なぜ今、過疎化の進む離島で、民宿? 一体、この民宿は誰がどんな経緯で始めることになって、島にどんなインパクトをもたらしているか、紹介したいと思います。


「建設業もカフェ業も一緒」という視点!

 この民宿をスタートさせたのが今回の主人公、高野要一郎さんです。高野さんは建設会社に7年間勤めた後、地元の水戸で「CAFE DINER ROOM」というカフェ兼ギャラリーを立ち上げました。建設会社からカフェとは、だいぶ畑違いです。そこには、そもそも建設会社は代々続く家業であり、後継者問題といった事情がありました。

 このため、高野さんは早い段階で「自分は会社を離れる運命にある」と感じており、辞める1~2年前からカフェの立ち上げを準備していたそうです。高野さん曰く、「建設業とカフェ業は、その土地に合った場所を創り出す“単品個別産業”という点でかなり似ている」。

 とはいえ、当初はご本人もうまくやっていけるかどうか、かなり心配だったのは間違いありません。でも、そんな疑念を取っ払ってくれる出来事が起きました。

 当時、オーナー兼マネージャーとして夜遅くまで店に立ってた高野さんのカフェに、前職の建設会社の顧問弁護士さんがふらっと入ってきたのです。まさかここで出会うとは・・・。お互いに思いがけない再会でした。

 高野さんが「こんなところで何しているんだと思われているんじゃないか」なんて少し不安に思っていた、ちょうどその時。顧問弁護士さんのほうから「高野さん、とても似合っていますね」と温かい声を掛けてきたというのです。

 これがきっかけとなって、自分がカフェ兼ギャラリーの運営をすること、もっと広く言えば「場所づくり」をすることに対して、高野さんは徐々に自信をつけていったようです。自分で悶々と考えてなかなか答えが出ないようなことでも、他人のちょっとした一言で腑に落ちることもあるのですね。

 ちなみにCAFE DINER ROOMの近くには、財団法人水戸市芸術振興財団が運営する水戸芸術館という美術館があります。CAFE DINER ROOMにはギャラリースペースがあるのですが、そこに作品を飾ったアーティストがその後に水戸芸術館で展示するというケースが出てきました。このため、カフェとしてだけでなく、ギャラリーとしても今や水戸で大いに存在感のある場所となっています。

こうしてCAFE DINER ROOMは、2~3年かかりましたが、徐々に軌道に乗ります。現場のオペレーションも、ほかのスタッフに任せることができる環境が整いつつありました。そんな折り、新島の話を持ち掛けられるのです。


「新島の夏」を見ずに、事業開始を決めた!

 そもそも「新島で民宿でやろう」と言い出した発起人は、高野さんではありません。「東京R不動産」という人気不動産サイトを手がける林厚見さんという男性でした。東京R不動産は、利用者が古いけど味があるとか眺望がいいといったデザインや感性で物件を探せる仕組みを用意しています。そんなユニークなウェブサイトを運営する林さんが新島に魅了されて「民宿をやりたいな」と思い始めていた2008年4月頃、とある会合で林さんは高野さんに出会ったのです。

 「民宿はやりたい、でも自分は現場に立つタイプではない」と思っていた林さんは、高野さんの人と接する姿勢に魅了されました。会合当日の、相手との間の取り方や話の引き出しの多さに感心させられたというだけではありません。

 数日後、林さんの元に高野さんから突然の届け物が到着します。開けてみると、それは水戸納豆。そう言えば、会話をする中で高野さんが水戸出身であることを知った林さんは、自身がいかに納豆が大好きかを延々と語っていたのです。ただ、そんな話は自分でもすっかり忘れていました。

 それを覚えていてくれて、さらに突然の贈り物。高野さんの「おもてなし力」は、強く林さんの心に響きました。

 「こんなにも細やかな気遣いのできる人は滅多にいない」と感銘を受けた林さんは、高野さんに「一緒に新島で民宿をやろう」と口説きます。CAFE DINER ROOMが軌道に乗りつつあった高野さんも、何か新しいチャレンジをしたいと思っていたタイミングだったことに加えて、多くのクリエイターや建築関係のネットワークを持つ林さんがここまで強く誘ってくれることが嬉しくて、徐々に心動かされていきました。

 そして、次に会った時は、新島に視察をしに行っていたということですから、そのスピーディな展開に驚かされるばかりです。でも楽しいプロジェクトの秘訣は、実は「何をやるか」よりも「誰とやるか」。一緒にやっていけそうな素晴らしいパートナーを見つけた時の嬉しさは、何にも替え難いものがあります。この気持ちはよく分かります、私がソウ・エクスペリエンスを立ち上げた時も同じでしたから。

 2009年の春先、2人は何度か新島を訪れます。民宿を実現する物件を見つけるためです。そして最終的に辿り着いたのが、たまたま拠点として宿泊していた宿のオーナーが「もう古くて使っていないから好きに使って」と言ってくれた物件でした。昔、まだ新島が若者で賑わっていた頃には民宿として使っていたらしいのですが、今は倉庫代わりなっており、2人のことを気に入ったオーナーが良心的な条件で貸してくれることになりました。

 こんなにとんとん拍子で話が進むと「お、私も島でのビジネスにチャレンジしてみようかな」と思い始める人がいるかもしれません(ぜひチャレンジしてもらいたいと思いますが!)。そこで、島でビジネスする際の注意点を高野さんから伺ったので、ご紹介します。

 それは、「ビジネスっぽさを出さない」ことだそうです。作り込まれた事業計画書なんて禁物。とにかく「この島が好きで、島の魅力をもっともっと本土の人にも伝えていきたい」という想いをあの手この手で伝えることが一番の近道なのだそうです。もちろん島でなくても、想いではなく、いきなりお金の話をするような人は信用されないと思います。ただ島では都会人が想像する以上に、とにかくビジネスっぽさを出さないことが肝要なのだそうです。

 こうして4~5月に物件が決まり、その後8月にオープンを迎えることになります、この時点ではなんとまだ林さんも高野さんも新島の夏を見たことがなかったというから驚きです。新島で民宿と言えば当然、夏が圧倒的なハイシーズン。その時期を見ることなく構想を練り、実際に準備を進めてきたわけですから、ある種の無計画と言ってしまえばそれまでです。

そこまで新島に魅了されていた理由を高野さんに聞いてみると、「たぶん皆が見ている島の海がきれいとか、空がきれいとか、そんなことよりも、僕は新島で出会った人が好き。そして彼らの期待に応えていきたいなと思っている。事業計画書や収支報告書に載せられない、たくさんのドラマが島を思う原動力」との答え。

この思いが島の人にも伝わったからこそ、物件とも出会えたし、新島の魅力が都心に住む人たちへと伝播していったのではないでしょうか。

 ビジネスとなると、「まずは事業計画を」なんて考えてしまいがちです。しかし、繰り返しになりますが、やはり何よりも大切なのは「想い」。想いさえあれば、案外、何とかなってしまう、そして事業計画を紙に落とし込んだりせずに進めてしまうやり方だってあるのだということを知っていただければ幸いです。


地元の人たちも活気づく!

 こうして昨年8月にオープンした「saro」はスタート直後から多くの人が訪れ、ハイシーズンには5つの部屋は連日のように満室状態が続きました。Twitter(ツイッター)やブログといったネットによる情報発信が奏功したようです。

そして驚くべきは、夏以外のシーズンでも泊まりにくるお客さんが絶えなかったこと。新島は東京のはるか南方にあるものの、冬の寒さは厳しく潮風もとても強いので高野さんらsaroのスタッフは「決してお勧めはできませんよ」と伝えているらしいのですが、それでもひっきりなしにお客さんが訪れるのだそうです。そんなお客さんは皆さん、どこかに出かけたりはせずにsaroでゆっくり読書をしたり仕事をしたりして過ごしているそうです。

でも高野さんにとって何よりも嬉しかったのは、地元のベーカリーや寿司店や飲食店の人たちが「saroができてから、これまで来なかったような新しいお客さんが来てくれるようになったし、お客さんも増えた」と言ってくれることだそうです。

島って元来、よそ者に対しては厳しい態度で接することが多いイメージがありますが、saroの賑わいが周囲にも波及していったことで、島の中でのsaroや高野さんのプレゼンスは着実に高まってきているのですね。まだまだニュースになるほどじゃない、マクロ的な数字として出てくるような規模ではありませんが、波に乗るなら今がチャンスなのかもしれません。

 そしてこの流れに触発されたのか、最近では地元の人も新島の魅力を再認識して、高齢化や過疎化が進みつつある新島の将来について考える人が増えてきたようです。

中でも若い人たちはやはり敏感なようで、昨年私が新島を訪れた時には、普段は都心で働いている地元の若者が夏の間に新島に戻り、毎日夜のビーチで音楽イベントを開催していました。もちろん小さな島ですので夏フェスのようには行きませんが、でも100人くらいの若者が集まってお酒を飲みながら歌ったり踊ったりしていましたよ。

 saroがオープンして2年目の夏、今年も多くのお客さんが東京から船や飛行機でやって来て、島の中での注目度も一層増したようです。そして宿のオペレーションも徐々に形ができてきたので、高野さんがsaroに行くのは月に数日程度にして、最近は新しい仕事に取り組み始めたようです。ひとつのビジネスや組織に固執せず、複数の仕事を同時にこなす様子は前回紹介したヨーヨー世界チャンピオンであるBLACKさんにも通ずるところがありますし、二足以上のワラジを履くスタイルは、今の時代にとても合っているような気がします。


次は軽井沢で新たな挑戦!

 そして高野さんが新しく始めた仕事とは、軽井沢にある「Hotel Ruze(ホテルルゼ)」というバラ園に囲われたホテルのサポート業務です。知人づてで「少し手伝ってほしい」と依頼を受け、その施設の素晴らしさに感銘を受けて引き受けることに決めたのだとか。

 新島→軽井沢、民宿→ホテル、ということでsaroとはだいぶ状況が異なりますが、そんな転身は既に水戸→新島、カフェ→民宿で経験済みなのでお手の物。まずは手始めに料理のメニュー考案などから入っていき、現場での接客や経理などもこなし、今では秋冬の閑散期に集客する方策などを練っているそうです。

 そしてさらに、Hotel Ruzeの手伝いをする一方で、これまでの経験を活かしたリゾート開発会社の設立準備も進めています。実は私もメンバーの1人なのですが、こちらは将来的には日本を代表するリゾート会社にするという壮大な夢を掲げて、近いうちにビジネスをスタートさせる予定です。

 日本やアジアリゾートにだって洋風のホテルがあったりするのですから、逆に海外に日本風の宿を仕掛けていきたいですね。もちろんここで核になるのは高野さんのおもてなしの心や、現地にすっと溶け込んでネットワークを築き、周辺のエリアが一丸となって魅力を高めて伝えていく、そんなCAFE DINER ROOMやsaroでの成功を軽井沢で、そして世界で再現していければと思っています。

 高野さんのようにsaroやHotel Ruzeのような小さな宿やホテルでの仕事を続けながら、一方で拡大を目指す会社もやっていくという仕事のスタイルは、「『未来の仕事』を考える」第1弾の最終回で紹介した“タモ理論”という考え方にとても近いものがありそうです。(参考:『「いいとも!」と「タモリ倶楽部」両方やりたい――21世紀型経営の真髄は“タモ理論”』)

 “タモ理論”とは「タモリの理論」の略で、タモリさんが深夜のマニア番組「タモリ倶楽部」をやりながらお昼の国民的番組「笑っていいとも!」も同時に手がけていることから名づけた考え方です。個人事務所のようにやっていくだけでは丁寧な仕事はできるけれど広がりが限定的でどうも煮え切らない、でも拡大志向のためには自分の好きなようにやっているだけではダメでいろいろと妥協もしなくてはならない。そんな狭間でさまよっている方は、ぜひ高野さんをお手本に“タモ理論”の実践を検討してみてはいかがでしょうか? 

 それはきっと皆さんの未来の仕事への、「してもいい自由」への大いなる第一歩となるはずです。

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