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2011.03.03(Thu) JBプレス 古森義久
 
  中東の政治の激変が米中関係に意外な影響を及ぼしている。
 中東ではチュニジアエジプトバーレーン、そしてリビアと、国民の広い層が現政権に反旗をひるがえした。国により程度の差はあろうが、「民主化」への動きと呼べるだろう。
 米国ではオバマ政権をはじめ、超党派で官民を挙げてその民主化運動への賛意を表明した。オバマ大統領はエジプトのムバラク政権に対して、「民主化のための即時辞任」をも訴えた。
 しかし、中国の態度は対照的だった。中国政府は中東での民主化の動きに関する国内での報道を大幅に規制した。国内で民主化運動もどきの集会や討論を開くことも改めて厳しく禁じた。さらに中国政府は、インターネット上で、中東の騒動と関連させて民主主義や自由、人権などについて議論することも厳重に抑圧するようになった。
 米国では中国のこうした民主主義抑圧の態度を見て、対中関係のあり方に再度、目覚めたような警告を発する向きが出てきたのだ。

改めて浮き彫りになった中国の異質性

 保守派のラジオ政治トークショーの論客として知られるラッシュ・リムボウ氏は、オバマ大統領のムバラク大統領への辞任要求について、再三、批判的な論評を述べてきた。ちなみにリムボウ氏がラジオで行っている政治評論は、毎週平均数千万人という全米第一の聴取者数を誇る。
 
 リムボウ氏は聴取者に次のように訴えかける。
 「オバマ大統領が、米国の長年の盟友で中東の安定に寄与したエジプトのムバラク大統領に、民主主義的ではないという理由で即時辞任を求めるならば、なぜ、中国の独裁政権の胡錦濤主席に辞任を求めないのか」
 
中東の政変のキーワードが「民主主義」であることは間違いない。「民主主義」という規範が提起されれば、「では民主主義を抑圧する一党独裁の中国はどうなのか」という疑問が連想されるのは当然だろう、というわけだ。
 現実問題として、核兵器保有の軍事大国であり、経済、金融の最大の取引相手の経済大国である中国に向かって、米国がその国家元首に辞任を求められるはずはない。この論評には、もちろん事態を単純化した政治トークの要因も含まれてはいる。
 だが、こうした見方はリムボウ氏だけにとどまらない。米国では、中国当局の中東情勢への反応を見て、中国という国家の異質性を改めて認識し、米国の対中政策もそれに合わせて、もっと厳しく現実的に進めるべきだ、と警告する声がより広範に出てきた。
 大手研究機関のヘリテージ財団の中国専門家、ディーン・チェン氏は、次のような趣旨の見解を2月25日に発表した。
 「中東で民主化を求める各国の動きを見て、中国当局も自国をいくらかは民主的にすべきだと思うだろう、などというのは、まったく楽観的な見方にすぎない。
 現実には、中国当局は中東情勢を自国民に知らせないよう必死に情報規制を始めている。インターネットの検索サイトでは『エジプト』という言葉をも禁じてしまったほどだ。
 中国共産党指導部が中東での激変から学ぶことといえば、自らの権力を保つために国内の規制をさらに厳重にすることだろう」
 チェン氏は、中国は中東の民主化の動きを強く警戒し、反発し、自国の非民主的な体制をさらに強化するだろう、というのである。

「中国の『激変』の日に備えよ」

 中国のこうした態度は、米国の対中認識を変えることともなる。
 
2月23日、その点を短刀直入に指摘した小論文が発表された。筆者は、ワシントンのもう1つの大手研究機関AEIの中国専門のダン・ブルーメンソール研究員だ。ブッシュ政権で国防総省の中国部長を務めた人物である。
 ブルーメンソール氏は小論文でこう記す。
 「中東情勢に対して中国が示した態度は、中国が国際的な指導力を持ち得ないことを証明した。
 中国当局は中東激変という大騒乱に対して、国際的なリーダーシップを発揮して現地の情勢安定などに寄与するどころか、ひたすら民主化の拡大の自国への余波を恐れて、国内での情報統制やデモ抑圧に走り、肝心の中東激変については沈黙を保ったままである。中国指導部は黙ったまま万里の長城の陰に隠れてしまったのだ。
 これで、米国と中国が世界の主要課題に共同で取り組む『G2論』などというのは、撤回されるべきものであることが立証された」
 この小論文は、「中東の異変は、中国について私たちに何を告げるか」と題されていた。中東情勢に反応する中国の様子を見て、米国の中国観を修正すべきだというのである。
 ブルーメンソール氏は結論として次の2点を挙げていた。
 「中東の激変は、中国について2つの重要な事実を私たちに教えてくれた。第1に、中国がグローバルなリーダーシップをまもなく揮(ふる)うようになるという主張は、まったくの誇張だったということである。第2に、米国は中国の激変の日にも備えておくべきだということである」
 つまりは、中国は国際的なリーダーシップなど揮えはしない。中国自体も中東諸国のような内部からの突き上げの日に直面するかもしれないから、米国はそんな事態に備える準備もしておくべきだ、というのだった。
 中国に対するこうした厳しい見方が米国に生まれてきた現実を知ることは、日本にとっても対中政策の形成その他に有益な指針となるだろう。
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4 NCOの課題
 さてNCOが提唱されて10年以上が過ぎ、実際の運用をこなした結果、軍事作戦において新たな世界を照らす輝かしい光のみだけではなく、影もあることが分かってきた。
 
(1) 共同作戦のジレンマ
―― 相互運用性(インターオペラビリティ)の確保の課題 ――
 
国家相互の結びつきが格段に増しグローバル化された今の国際環境下では、多くの場合同盟軍、連合軍、多国籍軍など、複数の国の軍が共同作戦を展開することが常態になっている。
 これまでは、共同作戦の訓練を積み、意思疎通を十分図った同盟国との連合作戦が主体であった。
 ところが最近では同盟関係にある国々のみならず、その地域内の国や、さらには世界中からいろいろな国が手を挙げてアドホックで一時的に連合作戦に参加することが多くなっている。
 軍事作戦のみならず安定・復興作戦や国際緊急援助活動などでも様々な国がともに汗を流す。
 この際、参加国は自分たちのシステムやネットワークを携えてやって来るが、しかしまた互いの意思疎通を図る手段を確保することも意思疎通を十分図り作戦を円滑に進めるためには不可欠の要素である。
 この場合、共通のシステム、共通のネットワークを利用することが必要になり、それによって情報の共有、思想統一が可能になってくる。例えば同一のGPSを利用すれば、位置情報や時刻規制などが相関誤差なく行え、各種偵察情報の交換などもスムーズにいく。
 このためにはシステムインフラ間のインターオペラビリティ を確保することになる。しかし、このインターオペラビリティの確保と維持はそうたやすいことではない。
 例えば構成国の1つがシステムのアップグレードやバージョンの更新をすれば、それへの対応を余儀なくされる。
 旧来のまま、陳腐化したシステムにわざわざ頼ることはないが、新バージョンへの対応経費、システム接続のやり直し、兵員の訓練・慣熟、初期段階で当然に発生するバグへの対応など常にリスクが存在する。
 さらには各国、各企業の技術保全(テクノロジーセキュリティー)や技術公開制限の壁が立ちふさがることもしばしばである。このような状態では、運用するシステム内にブラックボックスが多く、兵器として使いづらい、壊れても修理できない状態になりかねない。
 このため、共同作戦を取るであろう国々とは、平素から共通的なネットワーク構成やインターオペラビリティ確保に関する調整など様々な工夫が必要になる。そして共通部分に関しては相互の形態管理に係る枠組みをつくり、定期的に調整を図るなどの継続的な努力が求められる。
(2) ネットワークへの新たな脅威
―― サイバー戦等新たな脅威からの脆弱性 ――
 現代の作戦環境では、NCOに大きな影響を与えるいくつかの新しい脅威が出現している。
 例えばその第1は、近年富に発達しているサイバー戦である。情報を統括し、指揮中枢などを構成するコンピューター、そして神経系統とも擬されるネットワークにソフト・ハードにわたる攻撃を仕かけるサイバー攻撃は、そのシステムにマヒ、誤作動、データ改竄、なりすまし、物理的破壊などを引き起こす。
 サイバー戦は、平時有事を問わず絶えず行われており、その攻撃元を特定することが困難なこと、国家などが関与する組織的なものか個人的犯罪なのか判別が難しいことなどから対処が難しい分野である。
 しかも被害を受けた場合、軍事・民生いずれの部門によらず深刻な被害が発生する危険性があり、国家の安全保障上深刻なダメージを受ける。
 第2は、ネットワークセントリック電子戦(NCEW)である。
 コンピューターをはじめとする電子機器がネットワークシステムに限らずあらゆる装備品で中心的かつ重要な役割を果たしている現代、妨害(ジャミング)、欺瞞、なりすましなどを用いて電子機器を麻痺、破壊するネットワークセントリック電子戦(NCEW)は強力な攻撃手段となる。
 このような脅威に対処するには、個々の兵器に組み込まれた電子関連機器はもとより、C4ISRシステム(Command Control Communication Computer Intelligence Surveillance Reconnaissance system)に関するシステムやネットワーク全体の抗たん性や冗長性の強化に常に気を配り、敵の攻撃を回避し、あるいは受けても重大な影響が出ないように配慮されていなければならない。
 効果的な能動及び受動的対策を講じ敵の攻撃の結果受けたいかなる損失も速やかに取り替え、回復することができる能力を維持する必要がある。
 とはいえ、これらに完全に対処しきることは難しい。
 まず何を防護しなければならないのか、それはなぜなのかを検討し、優先度をつけることが求められる。そしてシステムの物理的分散、ノードレスのネットワーク、攻防にわたるサイバー戦能力、暗号化されたデジタル通信などの手段を尽くすべきである。
 併せてこの分野は技術革新が激しく、半年もすれば陳腐化し、レガシーな方策となってしまい、常に新たな対策が求められる分野である。このような状況に追随するためには、何にも増して感性鋭い優秀な人材の登用に意を配る必要がある。
(3) 情報の飽和
―― 便利さゆえの新たな課題 ――
 情報の流れがネットワーク化されると、軍の組織では恒常的に行われる指揮と報告という縦関係での流れのみならず、すべての情報ユーザーが自分の任務遂行に必要な要求を出し、必要な情報を取得できるという、いわば横方向の流れも加わるようになる。
 このように縦横に膨大な情報の流れができる結果、情報量が過多になり、それはシステムに負担をかけるとともに、指揮官から一兵士に至る情報ユーザーに混乱を与える恐れが大きい。
このいわば「情報の飽和」状態の中では、第1に上級指揮官による下級指揮官への過干渉や下級指揮官による上級指揮官への過依存といった状態が生じやすい。
 それぞれが判断するに十分以上の情報を与えられるため、各レベルの責任範囲を超えた干渉や依存が可能となり、やってしまいがちになる。
 第2に、戦場の最前線にある兵士たちは、「情報の洪水」の中から自分たちの任務遂行に真に必要な情報を選択して拾い上げなければならない。
 苛酷な作戦環境の中で個々の兵士にこれまで以上の責任が付与され、適切な判断をしかも短時間の中で求められることになり、彼らの負担は倍増する。最近戦場に出た兵士が心理的な傷を負うケースが多いのも、この辺に一因があるとも考えられる。
 NCOに付随して発生するこのような問題を解決するには、根本的には、NCO環境下で求められる新しい指揮のスタイルや軍事組織を追求することが必要になる。
 しかしそのような体制の変革は一朝一夕でできるものでもなく、それよりも技術革新によってシステムや装備の方が先行しているのが現状である。当面、このような状況に対応するには、情報管理をしっかりした方針の下に厳密に行うことが重要である。
 クリティカルな情報に関して、何の情報を、いつどのような頻度で、誰に、どのような形で提供するのかをよく整理し、規定することである。そして絶えずレビューし、更新し、試行錯誤を繰り返し、いわゆる「システムを育てる」という考え方を持つ必要がある。
 
5 まとめに代えて
 
ネットワークを運用すると、相反する要求に立ち竦むことが多い。
 すべての関係者にアクセスを許容すべきか、あるいは一定の枠をはめアクセスを制限すべきであろうか?
 自由なアクセスにより情報の共有は万遍なく行き渡りネットワーク化のメリットを高めるものの、時には混乱が生じ、あるいは敵にさえ門戸を開いてしまう。
 ネットに載せるデータも、処理しない生のままのデータがいいのか、あるいは一定の処理を施したデータが好ましいのか?
 生データは客観的で何より事実を物語ってはいるものの、そこに含まれる意味を見落とす恐れがあり、また受け取る人により判断が異なる可能性もある。処理されたデータは分かりやすいものの、緊要な情報を切り捨ててしまっていたり視点を固定させる恐れがある。
 あるいは、柔軟な運用ができるであろうことを期待して極力多くのデータを提供するのか、あるいは情報保全を重視して「ニーズ・ツー・ノウ」、すなわち必要な人のところに限って必要な情報を届けることを原則とするのかで対立する。
 技術的には、軍事面の基準を適用すべきか、あるいは最近の民生技術を反映して民需基準を当てはめるべきかという問題もある。
 インターオペラビリティを確保しようという課題についても同様のことが言える。インターオペラビリティを完璧に確保するためには多くのマイナス面に目をつぶらねばならず、また独自のシステムだけでは円滑な共同作戦は期待できない。
 これらには決して正解はない。いろいろな要素が絡んで常に変化している。我々は自らの基準をしっかり持ち、現状で最適のバランス点を見つけていかねばならない。
 この際に肝要なことは、NCOの基本である運用の柔軟性と速度の優越、そしてその結果として主動の確保を得ることがどの程度できるかの見極めである。
 バランスが崩れるとトラブルが生じ、危機に陥りかねない。これをネットワークの構成などシステムのせいにすることはたやすいが、その真因は多くの場合システムにはなく、その運用、そしてバランスの取り方にある。
 大海原で大波に逆らうことなく、うまく波に乗り、むしろそれを利用するように、事態に柔軟に対応し、適切なバランスを確保してこそNCOの目指すメリットを存分に生かすことができる。
 過去の基準などに固執することなく、先を読み柔軟に対応すること、むしろNCOでは「変化こそ基本」とも言えるであろう。
 NCOには大きなメリットとともに、無視できないデメリットや課題も明らかになってきている。さらにはNCOを活用する作戦の場の変化も激しい。
 このような問題に眼をそむけることなく、柔軟な発想を持って適切に対応し、課題をクリアしていく絶え間ない努力が必要になってくる。
 最後に我が国の防衛分野に関して付言すると、現状はNCOを行うための体制整備を統合レベルでスタートさせた段階であり、まだまだ整備途上にある。そしてその動きはあまりにも遅い。
 年々縮減される防衛予算のありようでは、このような整備にまで手が回らないのが実態である。ここで指摘したような課題に対処する以前に、諸外国の流れにはるかに取り残されつつあるのが懸念される。

急速に進歩しているNCO、対応遅れは致命傷に

2011.03.03(Thu) JBプレス 小川剛義
 
1 はじめに
昨今の軍事作戦において、ネットワーク中心の作戦(NCO:Network Centric Operation)の重要性が叫ばれ始めて久しい。
 
 NCOとは、端的に表現するならば、多くの兵器システムを通信ネットワークで結び、連係させることにより、部隊の作戦能力を高め、敵に対して自分の意図通りにできる主動の地位を得ようとするものである。
 冷戦後期、まだNCOという言葉もネットワークという概念すら十分に確立していたとは言えない時代に、既にソ連では来るべき新しい時代の予兆に脅えていたことを、ジョンズ・ホプキンス大学(SAIS)教授で戦略学の大家エリオット・コーエンは次のように述べている。
 「冷戦時代も後期、1980年代に入り、ソ連の軍事専門家たちは軍事技術、特にコンピューターや通信技術の発達によって、ソ連自慢の装甲部隊の移動が数百マイルも離れた地点から探知され、探知後30分もたたぬうちに自動制御装置を備えた対戦車ミサイルに次々と襲いかかられることになると懸念し始めていた」
 「このことは当時、ソ連が西ヨーロッパで戦争が起きた場合に考えていた戦略、つまり大規模な装甲部隊を西ヨーロッパに押し出していく戦略の破滅を意味していた。さらにソ連は当時満足のいくパソコンを国内で製造する技術を持っておらず、情報技術に先導される米国との軍拡レースについていけなくなると考えていた」
 
冷戦の崩壊は、ソ連の経済的破綻、グラスノスチに代表される情報の自由化政策による情報化社会の浸透、米国の戦略防衛構想(SDI)、西側諸国の結束など多くの要因に基づくが、やがてNCOにたどり着くこのようなソ連の懸念も一因と考えられている。
 そしてこの軍事情報技術の革新的発達に基づく作戦形態の変化は、1990年代の幾多の構想や議論を経てNCOと呼ばれるに至った。
 それは、今では単に技術革新による兵器体系への影響にとどまらず作戦形態を大きく変化させ、軍の戦力構造や組織編成、運用ドクトリンや作戦構想、兵員の教育や訓練も変えていくものとの認識が一般的である。
 
2 NCOの意義
 
NCOは、工業化社会から情報化社会に推移していった結果の産物であるとも言えよう。
 工業化社会の時代、力の源は「量」であった。大量生産によって生み出された量が相手を圧倒してきた。
 ところが、情報化社会となった現代における力は「速度」である。変化への適応の早さ、いち早く情報を把握して競争相手より先に対応すること、などにより主動の地位を確保し競争相手より優位に立つ。
 つまり、工業化社会から情報化社会へのドラマティックなシフトに伴い、量や質が優位性を左右した時代から、速度や変化への適応力が力として認識される時代に移行した。
 軍事分野でも同様で、個々の兵器の量や質を問うプラットフォーム中心の世界から、プラットフォームをネットワークで連接するネットワーク重視の世界に移行することにより、情報の幅と量を拡大し、伝達速度を高め、アクセス可能な範囲を増やせるようになった。
 それによって力がフィードバックされ、各プラットフォームの能力を高めることができるようになった。
 NCOでは情報がこれまでのように指揮官と部隊の間で組織の「タテ」方向に流れるのみならず、網の目のように「ヨコ」方向にも行き渡るため、分散した部隊間で情報が共有され、あらゆる部隊が斉一でタイムリーに作戦行動に加わることができるようになる。
 さらに、タイムセンシティブな情報を素早く共有することができるため、指揮がスピードアップし、作戦テンポが速まり、作戦の有効性を速やかに修正しながら迅速にかつ敵に先行して多様な対応を採ることができる。
 その結果、孫子の昔から強調されていた戦いの原則である「要時・要点に戦力を迅速に集中」させ、あるいは「敵の動きの機先を制して先行的に行動し、主動の地位を確保」して、戦いで優位な地位を占めることができる。
 
3 NCOの有効性
 
 例えば、ある戦域に敵と味方の戦力が向き合っているとしよう。双方とも偵察を繰り返し、我の戦力を集中したり分散させて戦機を狙い、自分に有利な態勢に持ち込もうとしている。
 この際、NCOの概念を取り込んでいる側は、あらゆるセンサーを動員して広く戦域を監視、偵察するとともに、それぞれが得た情報を直ちに網の目状に張り巡らされた通信ネットワークを活用して全部隊に提供して共有する。
 また、全地球測位システム(GPS)などを活用して味方の位置を正確に把握し、迅速かつ効率的に部隊の集中ができる態勢を取る。指揮官の意図が末端の組織・兵士まで速やかに徹底する態勢が取られている。
 こうなれば、どちらが敵に先んじて有利な立場にあるかは自明であろう。
 また、仮に部隊が敵に囲まれて孤立したとしても、救援の味方がすぐそばまで来ていることを認識している部隊は踏ん張りが利くが、状況が五里霧中で自分が孤立し援軍も期待できないと思い込めば、たとえすぐ近くまで友軍が救援に来ていても戦意を喪失し、敗れ去ってしまう。
 情報力の強さは戦力を何倍にも強化することができる。それをお膳立てするのがNCOである。
 世界各国はこのNCOの有効性に目をつけ、様々な形で作戦の中に取り込む努力を始めている。
 米軍は2003年のイラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom)で、衛星などの機能を存分に活用し、広範で確実な指揮通信ネットワークを戦域内及び米本土と戦域との間に構築して、「戦場監視、目標標定、味方の戦力指向、戦果確認、戦果分析評価」の一連のサイクルを間断なくかつ迅速に実施し、イラク軍を撃破していった。
 また戦略攻撃においても、各種センサーから得た情報を基にした的確な目標標定とこれを受けての間断を置かない精密な攻撃は、NCOの特徴を存分に活かしたものであった。
 
このような動きは、決して米軍のような先進国の軍の専売特許ではない。例えばスリランカでは、永年悩まされ続けてきた、スリランカからの分離独立を狙ったタミル人の過激派テロ組織「タミルの虎」を2009年に制圧し終えた。
 この際、スリランカ軍は無人機を使ってゲリラ組織の行動を監視し、ゲリラ軍を発見すると速やかにネットワークを経由して友軍の攻撃ヘリコプターなどの攻撃部隊に目標情報を提供し、迅速かつ正確にゲリラ軍の動きを制圧することを繰り返した。
 このような活動がスリランカ政府軍の勝利に大きな効果を上げた。これもまさにNCOの一形態である。
 また、最近では作戦様相が変化し、本格的な軍事行動が主体の在来型の戦いのみならず、非正規戦といわれるテロや暴動が同時に発生することが予期されている。いわゆるハイブリッド戦争である。
 例えば、ミサイルを用いた軍事攻撃と合わせて、社会の混乱を誘発させる社会インフラに対するサイバー攻撃(交通機関の麻痺、金融機能の停止、電力機能の破壊、通信障害など)、そしてテロやサボタージュ、宣伝戦などが同時に仕かけられ、国民を物理的にも心理的にも不安と恐怖に陥れる。
 このような戦争ではNCOが有効に機能する。重層的なネットワークを形成して的確な情報共有ができれば、複雑・不確実な環境下でも柔軟な運用や迅速な決心と対処が可能になる。
 NCOならば、いちいち中央で判断しその指示に基づいて現場が作戦を実行することに固執することなく、あらかじめ与えられている方針に基づき、事態が発生した個々の現場で速やかに判断・決心して迅速に対処するディセントラライズド・デシジョンが無理なく実施できる。
次世代無人爆撃機「X-47B」が初試験、米海軍

米カリフォルニア州エドワーズ空軍基地で、
初の試験飛行を行う「X-47B」〔AFPBB News
 
2011.03.02(Wed) JBプレス 阿部純一
 
 中国がどうやら対艦弾道ミサイル「東風21D」の実戦配備を開始したようだ。人民日報系の「環球時報」がこれを伝えた。
 「東風21D」は、いわゆる「空母キラー」として米軍が注視してきた中国の最新兵器だ。これによって中国の「接近阻止(Anti-Access)」戦略が本格的に動き始めたことを意味する。
 だが、米国も手をこまぬいているわけではない。ステルス型の無人偵察・爆撃機「X-47B」の試験飛行を成功させ、これを空母に配備して対抗手段とする構図が現れた。いよいよ米中軍拡競争が始まった。

台湾海峡有事の際に米海軍を寄せ付けないのが配備の狙い

 「東風21D」は射程距離が約2000キロメートルあり、中国本土の沿岸部から西太平洋に向けて発射した場合、グアム島付近まで届く。
 この海域は中国海軍戦略における絶対的制海権確保を目指す「第1列島線」(日本、南西諸島、台湾、フィリピンを結ぶライン)と、太平洋に向けて影響力の拡大を目指す「第2列島線」(伊豆諸島、小笠原諸島、硫黄島、グアム島、サイパン島、パプアニューギニアを結ぶライン)の間に位置する。
左の赤いラインが第1列島線、右のラインが第2列島線(ウィキペディアより)
 第2列島線上のグアム島と第1列島線上の東京、台北を直線で結んだ海域を、それぞれの頭文字をとって「TGTトライアングル」と呼び、日米の防衛協力の重点地域と見なされている。
 それは、この海域に日本、韓国のシーレーンが通っているからであり、この海域の安全が確保できなければ大変な事態になるからだ。「東風21D」は、この海域に新たな脅威をもたらすことになる。
 中国の「東風21D」の配備の狙いは、明らかに台湾海峡有事の際、米海軍の介入を阻止することにある。
 だとすれば、中台関係が平穏であれば、米軍は「東風21D」の存在をさほど気にしなくてもいいはずだ。台湾で馬英九政権が成立して以降、中台の緊張緩和が進展している現状では、台湾海峡有事の可能性は低下する一方である。その意味で言えば、米軍が「東風21D」の出現にことさら神経を使う必要はないようにも見える。
 
さらに言うと、仮に有事が生じた場合、中国が弾道ミサイルで米海軍の空母を撃沈するような事態は、中国は本気で米国との戦争を覚悟しなければ起こり得ないだろう。中国を圧倒する米国の軍事力を考えれば、中国がおいそれと弾道ミサイル攻撃を発動するとは考えられない。
 しかし、だからといって米海軍が「東風21D」の存在を無視するわけにもいかない。「東風21D」は確実に威嚇の効果を持つ。
 中台の緊張が緩和しているからといって、米国が台湾の安全保障を等閑視し、警戒を緩めればそれだけ中国の軍事的影響力が拡大する。米国が対抗措置を取らなければ、確実に米国は東アジアの海域において後退を余儀なくされることになる。

中国の海洋権益防衛ラインとなった「第1列島線

 ちなみに、「第1列島線」や「第2列島線」のアイデアは中国のオリジナルではない。米国が米ソ冷戦を前提に太平洋における防衛ラインとして構想したことがルーツのようである。
 1950年1月、当時のディーン・アチソン米国務長官がワシントンのナショナル・プレスクラブで行った有名な演説がある。そこで彼は、米国の太平洋における防衛線(Defense Perimeter)がアリューシャン列島、日本、沖縄、フィリピンを結ぶラインであることを明らかにした。韓国、台湾がこのラインから排除されたことが、金日成に「米国に介入の意思なし」と見なされ、朝鮮戦争の誘発要因となった可能性が指摘されたことでも有名な演説である。
 朝鮮戦争の勃発により、戦線の拡大を恐れた米国は、台湾海峡の「中立化」の名の下に台湾擁護に政策を変更した。そのことにより、この防衛線に台湾が組み込まれ、極東における対共産主義(とりわけ中国)「封じ込め」ラインとなる。それが現在の第1列島線となったのである。
 現在、第1列島線は、米国の太平洋における防衛ラインから、中国の海洋権益を防衛するラインに姿を変えている。
 さらに言えば、中国は第1列島線の内側、つまり中国側の海域の制海権を確保し、米国海軍の介入を許さない姿勢を強めている。それは、2010年に再三にわたって米空母ジョージ・ワシントンの東シナ海における軍事演習への参加を拒否した姿勢からみても明らかだ。
 第1列島線は中国によって南に延長され、南シナ海ではほぼ全域が中国の領有を主張するラインに重なっている。これは、この海域における中国の制海権確保の主張につながっている。南シナ海を斜めに横切る形で、日本、韓国のシーレーンが存在していることを考えれば、この海域の重要性は「TGTトライアングル」に匹敵する。
 
そこを中国が軍事的に完全にコントロールする事態になれば、東南アジア諸国は事実上、中国に従属せざるを得なくなり、日本や韓国は常に中国の顔色を窺わなければならない立場になってしまう。米海軍の行動も制約されるだろう。
 その意味で、2010年夏、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムに出席したヒラリー・クリントン米国務長官が、南シナ海における航行の自由は米国にとり「国益」だと発言し、中国にクギを刺した意味は大きい。米国が引き続き南シナ海に関与する意思を明らかにしたからであり、「南シナ海核心的利益だ」と主張する中国にとっては、非常に重い米国の態度表明となった。
 要するに、東シナ海、西太平洋、南シナ海において、米中の角逐がすでに始まっているのだ。「東風21D」の配備は、米中角逐のレベルが新たな次元に突入したことを意味すると言っていいだろう。

米国はもはや先制攻撃をためらわない

 高まる中国の「接近阻止」能力に対して、米国は「エア・シー・バトル(Air-Sea Battle)」で対抗するとしてきたが、それが具体的にどのようなものかは判然としなかった。
 エア・シー・バトルは、「エア・ランド・バトル(Air-Land Battle)」の応用だという説明はされてきた。エア・ランド・バトルとは、1970年代後半、ヨーロッパにおいて、米国が強大なワルシャワ条約機構軍の通常戦力に対抗するために構想した、空軍力と地上戦力の統合的運用ドクトリンである。
 それに倣えば、エア・シー・バトルは空軍力と海軍力の統合的運用で中国の「接近阻止」戦略に立ち向かうということになる。しかし、海軍力を代表する空母が中国の弾道ミサイルのターゲットとされ、戦闘機など空軍力では弾道ミサイルに対処できない。米軍にどのような「活路」があるのかが問われていた。
 そうしたところ、最近になってようやく米軍の意図するエア・シー・バトルの具体的内容が姿を現してきた。すなわち、冒頭で触れたステルス型の無人偵察・爆撃機「X-47B」の登場である。
 
「X-47B」のポイントは2つある。1つは中国の「接近阻止」ラインの外から中国本土を攻撃する能力(作戦行動半径約2700キロメートル)であり、もう1つはレーザー光線と高出力マイクロ波を攻撃手段とし、中国の弾道ミサイルを発射段階(Boost Phase)で攻撃し、破壊する能力を持たせようとしていることである。
 このポイントから導かれるのは、米国が「先制攻撃」をためらわない戦略を立てていることだ。それによって中国の「接近阻止」能力の排除を積極的に目指していることが分かる。機体がステルス型であることも先制攻撃の際に重要な要素となる。
 また、米国はかねて弾道ミサイル防衛の一環として、ボーイング747(ジャンボジェット)をベースに、レーザー砲でミサイル迎撃を行う技術開発を進めてきた。このことから見て、「X-47B」にレーザー攻撃能力を持たせるということは、レーザー光線によるミサイル破壊が可能なレベルに達し、実用化されたことをも意味する。だとすれば、米国の進めてきた弾道ミサイル防衛が、新たな段階に入ることになる。

米中の軍拡競争を前に日本が進むべき道は?

 もちろん、米国の目指すエア・シー・バトルが海・空軍力の統合的運用である以上、「X-47B」ステルス無人攻撃機の導入は、あくまでその一部を構成する要素に過ぎない。
 韓国の烏山や群山、沖縄の嘉手納や本州の三沢等の米空軍基地が弾道ミサイル攻撃を受けた場合の脆弱性もすでに指摘されており、こうした既存の基地インフラの非脆弱化も進めなければならない。
 また、日本の海上・航空自衛隊との連携もさらに深化させる必要がある。エア・シー・バトルの能力向上のためになされなければならない課題は多い。
 米統合参謀本部が2月8日に発表した「国家安全保障戦略」では、北東アジアでの米軍戦力を今後数十年間にわたって維持していくことが謳われた。つまり、中国の「接近阻止」能力の向上にもかかわらず、米軍が西太平洋にとどまり続ける意思を明確に示したのだ。
 そうであれば、この地域での米中の軍拡競争は避けられない。当然、そこに日本も巻き込まれていくことになる。
 軍拡競争が緊張を高める要素になるのは自明である。しかし、それを回避し北東アジアの軍事バランスが中国に一方的に傾く事態になることが、米国や日本にとって望ましい選択だとは思えない。必要ならば、力には力で対抗し、均衡させることによって平和を維持することも真剣に考えなければならない。今がその時なのだろう。

21世紀の軍事革命と社会への影響

2011.03.02(Wed) JBプレス 岡本智博
 
はじめに
現在、RMA(Revolution in military affairs)―いわゆる軍事革命―が欧米社会を中心に吹き荒れている。
 1991年、米国が主導し多国籍軍で戦われた湾岸戦争は、RMAの萌芽を世界各国に知らしめたが、爾来20年、21世紀に突入した現在、RMAの嵐はいよいよその高潮期に入っていると言っても過言ではない。
 そしてまた、RMAの主体がコンピューターやインターネットであるがゆえに、サイバー戦という新たな形態の戦闘も考慮しなければならなくなっている。
 この間、我が国の防衛および安全保障に関わる分野においては、国際貢献のあり方やその法制の整備・実行と教訓に基づく法制・体制・態勢の見直し、国民保護法を含む有事関連法の制定、あるいは海賊対処法の制定などに力を割いてきた。
 さらには防衛庁の省への昇格、統合幕僚監部の発足など、新たな枠組みの構築に努力を傾注することとなった。
 特に軍事技術分野では、日本の得意とするITの応用とこれを利用する新しい戦術の開発については世界に遥かな後れを取ってしまった。
 その結果、我が国はRMAに十分対応できる状況ではなかった。
 こうした状況をさらに悪化させたのは、我が国の政界における大変革であり、その余韻は2010年を過ぎた現在にあってもいまだに続いている。
 本来、自由と民主主義を標榜しつつ社会の成熟段階に入っている我が国においては、国家防衛や安全保障にかかる政策について与野党間に基本的な相違が存在することはあってはならないはずなのである。
 しかし、我が国は、第2次世界大戦における敗戦の影響・後遺症が65年以上も経過しているのに払拭されないでいる。
 本稿はこうした前提を踏まえ、現在進行中の「軍事革命」の実態について述べるとともに、それが及ぼす社会への影響について論を進めることとする。
 
1.ことの始まり―ウォーデン中佐(当時)のひらめき
 21世紀初頭の軍事革命の始まりは、湾岸戦争の作戦計画を担当した米空軍ジョン・ウォーデン中佐(当時)の閃(ひらめ)きにあった。
 彼はGPS(Global Positioning System)が正確に目的地を評定できることに着目した。
 GPS受信機を爆弾に取り付けて、誘導フィンに目標と爆弾の位置情報の変化分を与えて誤差情報がゼロになるように爆弾を誘導すれば、これまでのように爆弾を搭載するプラットフォーム(兵員・戦車・艦船・戦闘機など)が爆弾を目標近辺にまで運ぶ必要がなくなる。
 そうすればパイロットが地上からの砲火を怖がって爆弾が目標に誘導される前に回避行動に入り、結果的に命中率を悪くしている現状を打開することができるのではないかと考えた。
 彼の閃きは直ちに技術的検討課題として取り上げられ、爆弾を精密に誘導する技術が確立され、これが革命的変化のスタートとなった。
 GPSを取り付けた爆弾は、今ではJDAM(Joint Direct Attack Munitions)と呼ばれている。JDAMを搭載したプラットフォームは、目標には接近せずに高度を1万メートル程度までに上げてから爆弾を投下する必要がある。
 こうしてJDAMに位置エネルギーを与え、落下中にGPSからの誘導信号を与えて目標に誘導する。この場合、プラットフォームが敵の攻撃を考慮することなく、安心して所定の位置に移動できるように味方の航空優勢が保たれている必要がある。
 この条件を確保することができれば、JDAMはGPSによって固定目標に対して3~13メートルの命中誤差で誘導される。さらに命中率を向上させるためには、GPS網の肌理の細かさを高める必要がある。
 米国はそのため2005年頃から5年計画でGPS衛星を増加・更新し、現在はこれを完了してさらに性能の向上したGPS衛星を打ち上げている。
 この間、命中率は40倍も向上し、もちろん爆弾そのものもJDAMからレーザー誘導を組み合わせた爆弾への開発を果たしての命中率の向上という側面を含んでいるのであるが、現在誤差は数センチ~1メートル程度になっている。
 アフガニスタン戦争当時はそのような命中率は実現されていなかったので、米海兵隊の特殊作戦部隊の兵員が、レーザーデジグネーターを使用して指定された目標に対しレーザー光を照射し、その反射波に最終段階にあるJDAMが反応してレーザーの収束点、すなわち目標に到達させた。
 この場合の命中誤差は数センチ~1メートルであった。
 さらにJDAMの改良も進捗している。湾岸戦争時のJDAMでは当時の通常爆弾と同様に、目標を破壊する弾薬量を1トンにしていた。
 しかし使用されて初めてJDAMは1トン爆弾では過剰破壊となることが判明し、目標に応じて250キロ爆弾でもよい場合が出てきた。
 その結果、Small Diameter Bomb と呼称される250キログラム爆弾が採用された。その結果、プラットフォームの同じ弾倉に4発積載できることとなった。すなわち1回の飛行で4倍の任務を遂行することができるようになったのである。
 しかも軽量な爆弾に翼をつけることによって滑空距離を延伸し、現在では、目標から80キロ離隔していても攻撃が可能となっているのである。
 こうして新たな精密誘導技術は、目標破壊効率を革命的に向上させることとなった。
 結果としてGPSが初めて使用された湾岸戦争時にJDAM・1トン爆弾で破壊できた目標は、ベトナム戦争時代のテレビ誘導などによる爆弾で破壊する場合には190トンを必要とし、第2次世界大戦で使用された照準具で誘導された爆弾では9000トンを必要とするとの比較が世間を風靡した。
 ちなみに、こうした衛星誘導爆撃は、湾岸戦争時には全弾薬の3%しか利用されなかったが、2003年のイラク戦争では、実に、全弾薬の68%が衛星誘導爆撃によって実施された。そしてこのいわゆる「空からする砲撃」は、まず米空軍に革命的影響を与えたのである。
 
2.空からする地上戦の始まり
 さて、このように航空戦力による目標破壊能力が革命的に伸長すると、航空戦力のみで地上軍を撃破することはできないのかという発想が生まれる。
 事実、2003年のイラク戦争では、戦車群と塹壕構築によりバグダッド付近に侵攻阻止線を形成していた大統領親衛隊を、米英軍は航空戦力のみで制圧し、イラク兵は蜘蛛の子を散らすように前線から逃亡した。
 ウォーデン大佐(当時)はかかる戦果を前に航空戦力の能力を過大視し、航空戦力のみでフセイン大統領を追い詰めることを試みて結果的には失敗した。
 しかし戦闘と戦争は全く相違する。戦争に勝利するためには、占領後の事態収拾や統治にどうしても陸上兵力が不可欠であることを、米国はイラク戦争で学んだ。
 他方米空軍は、それまでの主役であった戦術戦闘機による陸海直接支援任務よりも、数倍、いや、十数倍の爆弾搭載量を誇るB-1、B-2、B-52といった爆撃機による「空からする砲撃」の方が、戦闘効率といった観点からは明らかに優れていることを認識した。
 そして戦術戦闘機は脇役となり、爆撃機は脇役から主役への座に復帰するとともに、戦闘機は「Counter Air(対航空)」を主たる任務とする本来の姿に戻った。
 さらに「空からする砲撃」は、航空戦力の目標に対する命中精度の革命的向上を米陸・海軍・海兵隊に認識させることとなり、航空阻止(Air Interdiction)並びに陸海作戦直接支援(Close Air Support)任務といった任務区分は無意味となった。
 「友軍相撃」の心配が極小化され、空軍独自で行う航空阻止作戦と陸・海軍からの要請により行う直接支援という区分は最早無意味となり、「対地上攻撃」で十分にその任務を表現できるようになったということである。
 その結果、現在の米空軍ドクトリンでは「Strategic Attack(戦略攻撃)」「Counter Air(対航空)」と並んで、「Counter Space」「Counter Air」「Counter Sea」「Counter Land」というように任務が整理された。
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