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大韓民国
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朝鮮民主主義人民共和国
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韓国が抱える統一の障害は「情報」(1)
日経ビジネス 2010年8月25日(水)趙章恩
韓国にはこんなことわざがある――「もう遅い」と思った時がいちばん早い時。日本の「思い立ったが吉日」と同じ意味を持つ。その言葉を信じて私は、社会人になって10年目で日本への留学を決意した。私は小さいころから高校を卒業するまで東京に住んでいたが、歳をとってもう一度日本に来てみると、子供のころには気づかなかったいろんな日本が見えてくる。
特に驚いたのは、朝鮮半島――韓国では「韓半島」と呼ぶ――を取り巻くニュースがとても豊富なこと。特に北朝鮮関連ニュースは、韓国でよりも早く詳しく報道される点である(韓国の芸能人情報も日本の週刊誌の方が詳しく報道しているのでびっくり!)。北朝鮮の街並みや生活を隠し撮りした映像は韓国ではなかなか見られない。後継者問題や金正日総書記の健康状態など、韓国ではどのマスコミも似たり寄ったりの報道しかしない。それに対して日本は、自由にモノが言えるせいか、中身が濃くて面白い。いろんな専門家がいろいろな意見を言っている。
逆に韓国が、日本の報道を引用して報道しているほどだ。日本のマスコミの方が韓国以上に北朝鮮に敏感になっているのではないかと感じる。もちろん韓国でも、毎週北朝鮮の動向を報道するテレビ番組がある。北朝鮮研究も盛んだ。しかし、一般市民が肌で感じる北朝鮮はとても遠い。
韓国にとって北朝鮮の動きは国家の国防・政治だけでなく株価や為替レート、企業の長期戦略など経済的にも多大な影響を及ぼす。しかし、休戦状態が60年も続いているせいか、もう北朝鮮は遠いどこかにある未知の国のような存在になってしまっている。鈍感になってしまった面もある。
2010年は朝鮮戦争の勃発から60年~いまだに続く休戦リスク
韓国人と北朝鮮人――韓国では「北韓」(ブッハン)という――は同じ民族でありながら、 1950年6月25日に勃発した戦争のため、まだ休戦状態である。韓国にとって北朝鮮は、どの国よりも対立している敵であると同時に、助けるべき同胞なのだ。2010年は戦争開始から60年、「あの日のことを忘れてはならない」と朝鮮戦争――韓国では「韓半島」と呼ぶ――をテーマにした特別ドラマや映画が制作され、人気の韓流スターが大挙出演している。
各種の国際イベントも続いている。例えば、朝鮮戦争に参戦した国連軍所属のアメリカ、フランス、カナダ、ギリシャ、オランダ、ニュージーランド、トルコ、南アフリカ、エチオピア、タイ、フィリピンなど16カ国の参戦兵士や青少年、記者などを韓国に招待し、世界でもっとも貧乏だった韓国の生まれ変わった姿を見せる恩返しイベントがあった。特に参戦国の中でも最近注目されている新興国との関係は緊密だ。「兄弟の国」として大手企業のCSRやソーシャルビジネスの対象になっている。
日本の友達によく言われるのは、「韓国はいつ行っても活気があって、人々は元気で、全然不景気に見えない」という感想である。軍事政権が終わった90年代以降かなり緩和されているが、韓国はまだ休戦というリスクを背負っている(軍事政権時代には、韓国人は海外旅行に行く自由はなかった。国外に行く際には北朝鮮の人と接触してはならないという教育もあったという)。
外国人に人気の観光コースの一つが南北休戦線の上にある板門店の見学だ。しかしここは、韓国人にとっては気軽に足を運べる場所ではない。ハリーポッターの世界に「魔法省」があるように韓国には「統一部」――(韓国では「部」が「省」にあたる――がある。統一部が身分照会をして「問題ない」と判定された人だけで構成された団体でないと板門店は観光できない。
板門店に限らず高いところからの撮影が禁止されている地域も多い。空港はその一つだ。西海岸の、北朝鮮に近い海水浴場では“リアル肝試し”が行われた。避暑客がピークに達している8月上旬に、北朝鮮から大雨で流れてきた地雷が発見されたのだ。ひところに比べだいぶ開放されてはいるが、軍事地域に指定され民間人は入れない海岸もある。拉致被害者もまだたくさん北朝鮮に残っている。北朝鮮の韓国内でスパイが逮捕されることも度々ある。韓国人男性の国民の義務として徴兵制があるのも休戦状態だからだ。
もう一つ、韓国は輸出国家であり、韓国企業は海外進出を当たり前に考えている。それは、南だけでは人口も国家面積も小さく、内需だけでは経済が成り立たないからである。これも休戦の影響だ。昨年末あたりから日本のマスコミは「世界で躍進する韓国を学べ」と韓国を持ち上げている。韓国からすれば、世界進出するしか生き残る道がないのだ。
「我々の願いは統一」は誰でも歌えるが…
韓国では「我々の願いは統一」という国民なら誰もが歌える歌がある。国力を充実させるためにも必ず統一をしなければならないと考えている。統一すれば人口も国土も大きくなるからだ。休戦線がなくなれば国防費を減らして、その分を教育や福祉に使うことができる。
ただし、理論的にはそうなのだが、実際のところは少々異なる。明日にでも統一する、となれば「ちょっと待って!」と叫びたくなる。
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