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宮古、台湾海峡の防御は万全、バシー海峡の守りを固めよ!
2010.12.06(Mon)JBプレス 保井信治
尖閣諸島海域における我が国巡視船と中国漁船の衝突事件に、我が国政府は場当たり的な対応に終始して国民の顰蹙を買ったが、唯一、米国国務長官から尖閣は日米安保の対象であるとの明確なメッセージを引き出したことは大きな成果であった。
中国のやり方は中東のテロリスト並み!
しかも、国際社会は今回の中国の行為に眉をひそめた。中国の採った態度はまさに人のもの欲しさに何でもありの強談判であり、最後は人質を取るなど中東のテロリスト並みの手も打った。
これが国連常任理事国とは聞いて呆れる悪行三昧である。さらに、中国国内では反体制に発展しかねない反日デモが頻発するなど、中国にとってはまさに様々な意味で「藪蛇」となった格好である。
ところで、中国をそこまで強気にさせている要因は何か。
巷間、様々な分析がなされ、マスコミをにぎわしているが、いまや我が国を抜いて世界第2位の国内総生産(GDP)を誇ろうかという経済力、および過去20年間その経済力を注ぎ込んで急速な近代化を達成した軍事力が背景にあることは万人の認めるところであろう。
特に軍事力に関しては、海・空軍の近代化およびその増勢には確かに目を見張るものがある。
そして、最近、中国軍関係者およびマスコミには、中国海軍は海上自衛隊を凌駕する戦力を築き上げたという発言が随所に見られるのも事実である。もう海上自衛隊を恐れる必要はない、と。
しかし、本当にそうであろうか、果たして中国海軍はそこまでの実力を手にしたのであろうか。
今回のリポートは、最近新聞紙上に度々登場する、「第1列島線」なるものを少し詳しく見ることを通じて、台湾の重要性および中国海軍が当面する根本的な制約を指摘してみたいと思う。
第1列島線とは何か!
いわゆる「第1列島線」とは、中国が海軍建設の道程を示す規準として使用した概念である。
図に示すように、我が国の南西諸島、台湾およびフィリピン、ボルネオなどの国々をつなぎ、台湾島を挿んで東シナ海および南シナ海をすっぽりと囲んでいる。
中国は2010年までに、まず、この線で囲まれる海域の支配権を確立することを目的に海軍を整備していると言われる。
ちなみに、その先には、小笠原列島、グアム、サイパンをつなぐ第2列島線があり、2040年までには第2列島線で囲まれる海域の支配権を確立する計画である。さらに2040年以降は米国海軍と同等の海軍を目指しているとも言われる。
その目的は海洋資源の独占および台湾解放と米国の軍事的影響力の排除である。しかし、ここに揚げられた国名、地名はすべて中華人民共和国の領土ではない。
1 台湾海峡(と中華民国軍)
台湾海峡を台湾北部の都市・台北および同南部の都市・台南と大陸の距離で測れば、最狭部は約130キロ、広いところでも約210キロである。
また、台湾海峡の水深は驚くほど浅く、海峡全域の水深はほぼ100%近くで水深50メートルより浅い。
特に台南と大陸福建省詔安間の水深は、台湾島と台湾島の西約50キロ沖にある澎湖島間の澎湖港道を除くと30メートルより浅く、そのうえ、水深10メートルを切る海域も相当に広い。
海図を見ると触雷したのか、それとも座礁したのであろうか点々と沈没船の印が目につく。
また、台湾海峡には、大陸側の福建省沿岸に10キロ内外の距離を隔ててへばりつくように中華民国が実効支配する金門県金門諸島および馬祖群島(閩江河口外を囲むように広く点在)があり、金門諸島も馬祖群島も堅固に要塞化され中華民国軍が護りを固めている。
大日本帝国海軍の潜水艦も避けた台湾海峡!
さらに、前述の澎湖群島は、大小合わせて90の島々からなるが、人が住んでいる島はそのうちの19島であり、中華民国軍が同様に護りを固めている。
さて、この海峡を大型の艦船が行動するには単純に水深から見ても、行動の自由を大きく制約されることがお分かりになると思う。
加えて、台湾島沿岸および前述の島々には中華民国国産の地対艦ミサイル雄風II(射程80キロ)、雄風III(ラムジェット推進超音速、射程300キロ)が配備されている。
さらに、機雷敷設の危険性を考えると、中華人民共和国は空母どころか普通の軍艦でさえ通峡させようとはしないだろう。
まして、澎湖港道以外浮上しないと航行できない潜水艦も台湾海峡を通過させることはあるまい。ちなみに、大日本帝国海軍も潜水艦は台湾海峡を使用していない。
併せて、中華民国空軍についても触れてみたい。同空軍には現在、「F16A/B」戦闘機150機、「ミラージュ2000-5」戦闘機60機、国産の「経国(F-CK-1)」戦闘機130機が第一線で運用中である。
これらはいずれも中国空軍が有する「スホイ27」戦闘機76機(ロシアから輸入)、「J11」戦闘機(同ライセンス国産)96機、国産「J10」戦闘機100機と性能的にほぼ互角もしくは凌駕していると言われている。
さらにパイロットの技量および管制システムを含めた総合力は中国はまだまだ台湾の比ではない(中華民国空軍に詳しい空自OB)。
また、前記のほか中国はロシアから戦闘攻撃機「スホイ30」を90機購入しているが、台湾海峡の制空権は中華民国が今も譲らない実力を有していると言えるだろう。
加えて、ロシアが中国に売却する戦闘機は自国より性能の落ちる輸出バージョンであり、しかも、中国向けバージョンはインド向けよりも性能が劣る。
一方、米国の台湾向けF16A/B戦闘機はA/B型としてはブロック20という高性能型であり、今は許可していない「F16C/D」型の売却も中国の戦闘機能力の進化を勘案しながら、いずれ認めることになろう。
これが、米国、ロシアのバランス感覚であり知恵である。それならばと、中国は2020年頃の配備を目標に、第5世代戦闘機「J-XX」を開発中であると伝えられている。
中国に米国を凌駕する戦闘機の開発は不可能!
果たして、中国は米国の戦闘機を凌駕する戦闘機を国産できるのであろうか。筆者には、不可能と思えるのであるが、ゼロ戦の例もあるぞと航空機の専門家に笑われるであろうか。
次に陸軍を見てみたい。中華民国は陸軍約20万人、加えて165万人の予備役を有している。
ちなみに、中国は海兵隊1万人、陸軍140万人であるが、以上述べてきたところからも中国陸軍が台湾を武力制圧することは極めて困難であると言えよう。
また、大陸には合計250基の発射台と1000発を超える「東風11」「東風15」弾道弾が台湾を照準していると言われるが、台湾にも、上海や三峡ダムを射程内とする射程1000キロメートルを超える「雄風2E巡航ミサイル」500発以上が反撃に備えているのである。
ダグラス・マッカーサーは朝鮮戦争当時、台湾は空母20隻に相当すると述べた。また、1996年に李登輝は総統直接選挙中演説で「中共には台湾攻撃の能力はない」と繰り返し発言した。
確かに現在の中国軍の実力は当時とは歴然とした違いがあるが、上記の通り中華民国も相当の近代化戦力を保有している。
てこずる間に、チベット族、ウイグル族、国内民主派勢力、農工と呼ばれる人々、あふれる失業者が各地に蜂起して国内が騒乱状態に陥り、台湾解放どころではなくなる可能性は極めて高い。
ちなみに、貧富の格差を示す「ジニ係数」は、中国では2007年に0.47であったが、2010年には社会の安定が危ぶまれるとされる0.5をついに超えたのではないかと言われている。
話が飛躍したが、つまり、中国海軍は中華民国軍が健在である限り、台湾海峡を通過することはできない。
従って、中国海軍艦艇が、太平洋に交通し、あるいは東シナ海と南シナ海を交通するためには沖縄本島と宮古島間の宮古海峡および台湾島とルソン島(フィリピン)間のバシー海峡を常用することになる。
2 宮古海峡
奄美群島、沖縄群島および先島群島の中で島と島との距離が最も離れているのが沖縄本島と宮古島の間であり、宮古海峡と呼ばれるその距離は約270キロ。
なお、同海峡以外にも与那国島と西表島間および与那国島と台湾島間は他国の領海を通過することなく通狭できる海峡であるが、その領海部分を除くと、幅は前者がわずか約26キロ、後者は約70キロであり、常識的には、自由度が制約される狭い海峡を通過することは避けるであろう。
宮古海峡は陸自の地対艦ミサイルの餌食に!
そこで、沖縄本島、宮古島間の宮古海峡を常用航路とするわけであるが、我が国には陸上自衛隊が地対艦ミサイル「SSM1」を有し、さらに「SSM1改」を開発中である。
前者の射程は百数十キロ以上、後者はその2倍である。つまり、SSM1であれば沖縄本島と宮古島に配備すれば、SSM1改ならばどちらかの島に配備すれば海峡全部を射程内に収めることができる。
なお、このSSMは車載され容易に移動できる。中国海軍は、有事、これらの島々を占領しない限りこのSSMの脅威を排除することは難しい。
また、たとえ占領したとしても、占領を維持するための弾薬・資材・燃料・重機・食糧などの補給には相当の犠牲を払わなければならない。
なぜか。まず、単純に、これらの島々は中国から遠い。最も近い大陸から宮古島までは約570キロ、与那国島までは約380キロ、尖閣諸島までは約350キロも離れているが、補給を維持するためには隠れるところのない洋上をこの距離、補給部隊が進出しなければならない。
この間に、我々は、南西諸島を島伝いに進出、あるいは先島群島に基地を設けるなどした海自潜水艦、ミサイル艇、護衛艦、「P1」「P3C」哨戒機(対艦ミサイル装備)、空自F2支援戦闘機、陸自AH64アパッチ攻撃ヘリコプター、地対艦誘導弾SSM1(同改)等で重層的に阻止ラインを重ねて敵の補給部隊を阻止することができる。
占領部隊は容易に孤立してしまうだろう。
また、そのためには、石垣島、宮古島、下地島等々、島々の民間空港の活用を図ることが必要であるが、制空権の獲得も我が国には有利である。米空軍および米海軍空母の支援も期待できる。
従って、有事、この海域を航行できる可能性が残る中国の艦船は潜水艦のみとなる。潜水艦を無力化するにはまず見つけることが先決であるが、そのためには、狭い海峡に網を張り、航行できる幅を極力狭くすることが有効である。
宮古海峡は原潜の通過も困難に近い!
現在の技術をもってすれば、水深1000メートル程度でも音響センサーや有効な障害物および機雷の敷設は可能である。
宮古海峡で水深1000メートルを超えるのはわずかに幅約40キロであり、残りは500メートルより浅い。
従って、500メートル以浅には障害物、機雷などを、水深1000メートルを超える幅40キロには係維センサー、哨戒航空機などによるソノブイフィールドの設定、AOS(音響測定艦)の配備ならびに潜水艦を待機させるなど複数のセンサー群を運用して、探知が得られ次第、潜水艦もしくは、対潜哨戒に当たる護衛艦、艦載ヘリコプター、固定翼哨戒機(P1、P3C)などを使用して攻撃するのである。
中国潜水艦も容易には宮古海峡を通狭できない。
次に、もう1つ、この海域に進入することができる海峡がある。台湾島とルソン島間に横たわるバシー海峡である。南シナ海の海南島には中国海軍の新型原子力潜水艦および最新鋭大型艦が多数配備された南海艦隊がいる。
3 バシー海峡
台湾島南端とルソン島間の距離は約360キロあるが、ルソン島からは北へ、バブヤン諸島、バタン諸島などが隙間なく連なり、その北端の島ノースアイランドと台湾南端の小欄嶼島間はわずか90キロしかない。
しかも、水深が50メートル以上あるのはさらに幅40キロ足らずである。ここまでの条件は宮古海峡とほぼ同じである。
しかし、バシー海峡を挟む東西の海域は水深2000~3000メートルの深海であり、幅40キロの海域も水深50メートルから急激に2000~3000メートルの深海に達している。
また、ここは、我が国領海ではなく、深さ的にも障害物などの設置は困難である。付近には、基地を提供してくれる我が国の島々もない。
潜水艦の探知が難しいバシー海峡!
従って、公海上に宮古海峡と同様の阻止ラインを構築することは可能であるが、特に潜水艦の探知は宮古海峡と異なり相当困難になるものと予想できる。
「しもきた」型LST3隻、「ひゅうが」型DDH2隻、および一回り大きい平成22(2010)年度計画DDH(2隻計画)は、基地を提供する島々の代わりとして、海自対潜ヘリコプターはもちろん、陸自攻撃ヘリコプター「AH64Dアパッチ」の母艦としても大いにその存在感を示すことができるだろう。
対艦弾道弾にはイージス艦の「SM-3」で対処すればよい。しかし、この方面から来る中国南海艦隊の原子力潜水艦には、深海を行動する場合の探知が可能である音響測定艦の増勢など、さらなる対策が必要である。ここを通してしまえば、我が国のシーレーンに大きな脅威となる。
おわりに
以上、縷々述べてきたことは、有事、中国海軍が第1列島線の外に出ること、否、近づくことすら自殺的行為であること。
ただし、バシー海峡方面から進出する中国原潜には十分な警戒とさらなる対策が必要であること。
また、尖閣諸島、先島群島をたとえ一時的に占領されたとしても、中国海軍にはその維持が困難であること、である。
しかし、前述した中には、我が国が既に手にしていることのほかに、我が国がまだ手をつけていないものの、手を打てばという前提があることを改めて確認しておきたい。
それは、先島群島への陸上自衛隊など所要部隊の常駐であり、海上自衛隊の掃海艇、ミサイル艇など小型艦艇の寄港、補給が可能な設備の構築などおよび石垣島、宮古島などの民間空港は特に航空自衛隊との平時からの共同使用である。
また、台湾が我が国に敵対する勢力によって支配されていないことが大前提であることも改めて指摘しておきたい。
台湾が中国の手に落ちればすべての策は水泡に帰す!
今回、言及しなかったが中華民国は海軍も相当の戦力を保有している。しかし、台湾が中国に支配される時、尖閣諸島、先島群島は我が国から近く大陸から遠い島から一転して中国に近く、我が国から遠い島と化して、ここに述べた策はすべて水泡に帰す。
従って、我が国政府は台湾有事に備えて、当然予測される中国の恫喝に臆することなく、迷うことなく周辺事態安全確保法を速やかに発動する決意と周到な準備をしていなければならない。
民主的な台湾は、まさに我が国とは運命共同体であると言っても過言ではない。我が国政府が、その時になって慌てふためき、事後、そのことに気づいても致命的に遅いのである。
最後に、筆者は、中国海軍の現状を見て、井戸の中の蛙が井戸の外に出て、イソップ物語にあるごとく、第1列島線付近で懸命に腹を膨らましている図を思い描くのである。
もっと、もっと、と囃し立てているのは、ロシアと米国である。
ロシアは軍需産業への資金調達と、中国のエネルギーを海洋方面に浪費させること、米国、特に米海軍にはソ連海軍という脅威が消滅した後の悪者が必要である。
中国には冷静に海洋戦略を見つめ直すことを勧めたい。力ずくで近隣諸国の資源を奪いにいくのか、それとも他国の資源には資金を投資し、共同開発して平和的に安価な資源を確保するのか、である。
また、我々も冷静に中国海軍を見つめ直すことが肝要である。本質をとらえ、必要な手を打てば、中国海軍を、たとえ空母を保有したとしても、いたずらに恐れることはないのである。
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