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リー・クアンユーかく語りき~中国株式会社の研究~その87
2010.12.03(Fri)JBプレス 宮家邦彦
「Wikileaks.org」というトンデモないサイトを最初に見つけたのは確か2009年の春頃だったと思う。まずダウンロードしたのが米情報関係者用防諜マニュアル「Intelligence Threat Handbook」の2004年度版だった。
その後も英国版の防諜マニュアル、中国製のネット検閲ソフトなどを見つけては片っ端から読み漁った。
実のところウィキリークス(Wikileaks)は本コラムを書くうえでも結構重宝していたのである。
この知る人ぞ知るウィキリークスが今年ブレークし、筆者の密かな楽しみがまた1つ失われた。7月にはアフガニスタン戦争に関する米軍・情報機関の機密資料7万5000件を暴露、さらに10月にはイラク戦争関連米軍機密資料40万件が掲載された。
国務省外交電報のリーク!
そして今回の米国務省公電25万件である。個々の内容はメディアで報じられている通りだ。今回の情報漏洩はその件数、内容の広範さ、どれをとっても、1回の外交文書リーク事件としては恐らく史上最悪の失態と言っていいだろう。
あまりに量が多すぎて、どこから話すべきか迷ってしまう。しかも、12月2日夜現在で、25万件中公開されているのはわずか593件(1日当たり120件)だ。今後いかなる情報がいつ出てくるか見当もつかない。
米国務省にとっては誠に「お気の毒」だ。機密公電は米軍諜報アナリストの上等兵が国防省のSiprnet(Secret Internet Protocol Router Network)を通じて入手したものらしい。同上等兵は本年5月に逮捕されたそうだが、もう「後の祭り」である。
今回の大失態は9.11事件以降、米国で各省庁間情報共有の迅速化が叫ばれ、米国在外公館のサーバーを国防省のSiprnetに接続したため起きた悲劇だという。情報のリアルタイム分析と機密保護の脆弱化は表裏一体ということなのだろう。
リー・クアンユーの卓越した中国観!
これまで暴露された中国関連情報の中で最も興味深かったのは、昨年5月30日、シンガポール建国の父であるリー・クアンユー顧問相がスタインバーグ米国務副長官に語った内容をワシントンに報告した公電である。
以下、リー顧問相の中国関連発言を見ていこう。日本で内容は一部しか報じられていないが、この公電を詳しく読めば、このシンガポールの偉人が中国という存在をいかに冷徹に見ているかがよく分かり、非常に参考になるのだ。
ちなみに、シンガポール政府はウィキリークスによる公電漏洩を「国益を害するもの」と強く非難している。当然だろう。まさか、スタインバーグとの会談の記録の詳細がこれほど早く世に出るとは思ってもみなかったに違いない。
リー・クアンユーの見た北朝鮮情勢!
というわけで、シンガポール政府には大変申し訳ないのだが、まずは中朝関係に関するリー顧問相のコメントから始めよう。
●中国は北朝鮮の核兵器保有も国家崩壊も望んでいないが、選択を迫られれば、中国は北朝鮮の国家崩壊よりも核兵器保有の方がましだと考えている。
●北朝鮮は、中国が韓国との関係改善を始めて以降、中国を信頼していない。北朝鮮が核保有国となれば、恐らく日本も核兵器を志向するだろう。
●それでも、中国は緩衝国としての北朝鮮を失うよりは、日本の核武装の可能性の方がましだと考えるだろう。
●北朝鮮は、仮に核兵器による第一撃能力の取得を諦めるにしても、米国による政体変更要求を拒否するため核兵器の保有を望むだろう。
●北朝鮮は、称賛を求めて競技場を威張り歩く筋肉の萎びた老人が指導する精神病的国家である。
●金正日の後継者は、父や祖父のような抜け目なさと癇癪癖を持っておらず、人が虫けらのように死ぬことを見る(心の)準備はできていないかもしれない。
●中国はこのことを十分計算している。中国は(対北朝鮮)共通目標を米国とともに進めたいと思っているが、韓国が北朝鮮を征服することは望んでいない。
といった具合である。要するに、リー顧問相は「中国が北朝鮮の崩壊を簡単に容認することはない」と見ているのだろう。
ウィキリークスが暴露したほかの公電には、中国高官が北は「駄々っ子」だと述べたとか、北朝鮮の崩壊と朝鮮半島の統一を容認・支持したとか書かれている。また、韓国の高官が北朝鮮は金正日死後数年で崩壊する旨述べたとする公電もある。
これらについては、米国や韓国の希望的観測や推測の域を出ない可能性が高いとする論評も少なくない。同感である。その意味でも、リー顧問相のコメントは一読に値すると思っている。
中国内政についてのコメント!
続いて、中国共産党に関するコメントに移ろう。ここでもリー顧問相はジェームズ・スタインバーグ国務副長官に率直に語っている。
●現在、中国情勢が深刻化、不安定化する兆候はなく、中国政府は年8%の経済成長を続けることに自信を深めている。
●中国はもはや共産主義ではなく、共産党一党支配を維持したいだけである。最近の経済危機により、各種改革が進まなくなったとしても致し方ないことだ。
●習近平は「太子党」で江沢民の「弟子」である。地方勤務が長かったが、党が彼の能力を必要とした時、上海の党書記に抜擢され成功した。
●江沢民は胡錦濤が好きではなかったが、党内に支持基盤があり、失点もなかった胡錦濤の台頭を止めることはできなかった。
●王岐山は有能であり、李克強は国務院総理になれないかもしれない。党は65歳になった王岐山を70歳になるまで活用する方法を模索している。
といった具合である。これ以上のコメントは差し控える。シンガポール政府が真っ青になるのも当然だろう。
従来から、リー・クアンユー顧問相は外国人賓客に中国について長々と「講義」をするという話は聞いていたが、まさにこの公電はそうした「講義」の記録なのだと確信した。
同公電によれば、会談中スタインバーグ副長官はほとんど質問することなく、リー顧問相の「ご高説を拝聴する」ばかりだったようだ。さすがの米国務省副長官もリー顧問相とでは、まるで「格が違う」ということなのか。
いずれにせよ、これまでに暴露された国務省公電の中に在北京米国大使館発の電報はまだ少ない。ということは、恐らく、今後より多くの中国関連極秘電報が暴露されていく可能性が高いということだ。
実際、今回ウィキリークスから事前に情報提供を受けた欧米メディアの1つである英ガーディアン紙は、ウィキリークスの創始者が今後中国、ロシアなど「情報公開が不十分な国々」をもターゲットにする旨述べたと報じている。
どうやら、当分「Wikileaks.org」からは目が離せそうにない。既に600件以上の公電が原文のまま「公開」されており、その数は日に日に増えている。次回はこのウィキリークスにある中国関連公電の「正しい読み方」について書いてみたいと思う。
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