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日本は大量移民受け入れの準備はあるか!
 
2011.03.05(Sat)  JBプレス 川嶋諭
 
 宮家邦彦さんの3月4日付「中国急成長の歪み:大学を出ても就職できない」の記事は、連載が始まってから100本目の記事に当たる。
 初回の記事「なぜ我々は中国を見誤るのか」がサイトに載ったのが2009年4月3日だから、足かけ2年、正確には1年と 11カ月、中国について鋭い洞察の記事を続けていただいた。

ゴールデンウイークや年末年始も休まず連載

毎週金曜日の連載が100回、その期間が1年と11カ月であることから分かる通り、ゴールデンウィークやお盆、年末年始も休むことなく続いてきたことになる。
 実際、昨年末の12月31日金曜日には、翻訳記事以外はほとんどお休みする中、信じられないほど腐敗し切った中国警察の内情を紹介してもらった(「世界が唖然とする中国警察の腐敗度」)。
 例えばこんな具合である。
 「山西省公安庁が1年の内偵を経て、黒社会性質組織(暴力団)の頭目だった同省陽泉市公安局の元巡警(パトロール)隊長・關建軍(41歳)とその弟關建民ら計45人を賭博、恐喝、覚醒剤、売春などの組織暴力犯罪容疑で逮捕した」
 「陽泉市で秘密カジノ・風俗店を経営していた關兄弟グループは逮捕時に、北京を含む27の不動産(約1億元=15億円相当)、ロールスロイスを含む三十数台の高級車、2億6000万元(39億円)の現金などを保有していた」
 「同グループはサイレンサー付き拳銃、ライフル、刀剣類を含む大量の武器を所持し、石炭の豊富な山西省で鉱山を7つも騙し取っていた」
 「何のことはない、市民を守るべき警察の幹部が暴力団のボスとなり、捜査費用捻出どころか、違法な私的蓄財を重ねていたというわけである」
 
こんな警察が跋扈している国には恐ろしくて観光旅行にもおいそれとは行けない。しかし、中国の女性らしい強気の発言で世界中の人たちから人気の中国外務省・姜瑜副報道局長は、中国の警察や法律遵守には自信たっぷりだ。

ジャスミン革命恐れ、世界中のジャーナリストを拘束

中国各地で呼びかけられたジャスミン革命を取材中の各国の記者を警官が拘束したり乱暴したことに対し、「中国の法律にのっとって粛々と対応した結果であり、必要があれば中国の警察は各国のメディアに協力も厭わない」と話している。
 各国のメディアとも、腐敗にまみれた警察のお手伝いは大金を要求されそうで丁重にお断りするだろうが、なぜ政府は自信満々なのに現場の警官の不正はなくならないのだろうか。
 宮家さんはそれについて、トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)というNGO(非政府組織)を紹介して解説している。
 ドイツのベルリンに本部を置くこのNGOは毎年、腐敗認識指数(CPI=Corruption Perceptions Index)を発表しているそうだ。
 国の清廉度を10点満点で評価したもので、2010年ランキングの第1位はデンマーク、ニュージーランド、シンガポールの9.3であり、これに9.2のフィンランドとスウェーデンが続く。

腐敗度が一向に改善しない中国の政治

 日本は7.8で17位、米国が7.1で22位、台湾は5.8で33位、韓国が5.4で39位。これに対し、中国のCPIは3.5で、178カ国中78位だそうである。
 しかも、日本や韓国の清廉度がこのところ上昇している中、中国のCPIは低迷したままで改善の様子が見られないという。
 その理由として、中国人に特有の問題を挙げる人がいるようだが、それでは中国人が大半を占めるシンガポールのCPIが9.3と世界最高レベルにあることが説明できない。宮家さんは次のように書く。
 「OECDの調査によれば、『汚職は政治的・官僚的・経済的利害が一致する場合に生じる』という。そうだとすれば、政治と経済が未分化である中国株式会社での腐敗根絶は容易なことではない」
 
100回記念としてもう少し宮家さんの記事を紹介したい。この記事「中国人が日本に大量移住、その数毎週500人」も衝撃的で読者の反応も高かった。

旧満州から日本に大量移住する中国人

「法務省統計によると、昨年2009年末の外国人登録者総数は約219万人、第1位は中国人の68万518人で、全体の31%を占める」
 「第2位は韓国・朝鮮人の58万人弱、在日米軍を除く米国人が5万人ほどだから、中国人の存在感は圧倒的だ」
 「外国人登録をした中国人の数は1999年に19万5000人であったから、過去10年で3倍以上に膨れ上がったことになる」
 「特に、2009年は、経済情勢を反映してか、外国人登録者総数が前年に比べ3万人減少する中、中国人だけが2万5141人も増加している」
 「この中国人登録者68万人のうち約3分の1は永住者・日本人の配偶者などであり、その数は21万2805人に上る。昔は中国人と言えば留学生だったが、今やその多くが日本で永住を始めたということなのだろう」

華僑が目指した東南アジア、東北3県は日本を目指す

 中国本土を出て世界で活躍しているのが華僑と呼ばれる人たち。この人たちはこれまで、シンガポールやインドネシア、タイ、マレーシアなど東南アジアを目指していた。
 ところが、今や中国の人たちは日本を目指す。これまでの華僑とは違った全く新しい流れだという。そして、華僑と違うのは、その出身地。
 「例えば、シンガポールの華人社会は福建人(41%)、潮州人(21%)、広東人(15%)、客家人(12%)からなる。東南アジアでは中国南部出身者が主流だ」
 「これに対し、日本では中国北部出身者が結構多い。2009年の統計によれば、在留中国人の出身地は、遼寧省(16%)、黒龍江省(10.6%)、吉林省(8.3%)の東北3省で約35%を占め、これに台湾を加えると4割を超える」
 
台湾の人々が日本から多くを学んで感謝の気持ちを持っていることは、お正月にお届けした台湾の元総統、李登輝氏のこの記事「台湾は日本が近代国家に育てた」「国民は二の次になった日本の政治家」「台湾と日本で新しいアジアの時代をつくろう」からよく伝わってくる。
 「日本は台湾に、近代工業資本主義の経営観念を導入しました。台湾精糖株式会社の設立は台湾の初歩的工業化の発展となり、台湾銀行の設立により近代金融経済を取り入れました。度量衡と貨幣を統一して台湾各地への流通を早めました」
 「1908年の台湾縦貫鉄道の開通により南北の距離は著しく短縮され、華南では灌漑用水路と日月潭水力発電所(現・大観水力発電所)の完成が農業生産力を高め、工業化に大きく一歩を踏み出すことができました」
 「行政面では全島に統一した組織が出来上がり、公平な司法制度が敷かれました。これら有形の建設は台湾人の生活習慣と観念を一新させ、台湾は新しい社会に踏み入ることができました」
 「日本はまた、台湾に新しい教育を導入しました。これは、諸外国における植民地支配とは全然違ったやり方です」

日本が貢献した台湾の教育

 「台湾人は公学校を通して、新しい知識である博物、数学、地理、社会、物理、化学、体育、音楽などを吸収し、徐々に伝統の儒家や科挙の束縛から脱け出すことができました」
 「日本も明治維新のときには6000の小学校が出来上がりました。6000の小学校というのは、だいたい昔の私塾から変化したものですよ。同じようなことが台湾でも起こってきてる」
 「そして世界の新知識や思潮を理解するようになり、近代的な国民意識が培われました」
 「1925年には台北高等学校(高等科)が設立されました。台北帝国大学は1928年に創立され、台湾人も大学に入る機会を得ました。あるものは直接、内地である日本に赴き大学に進学しました」

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民主党政権、そして誰もいなくなる!

2011年01月31日(月) 週刊現代

小沢を葬り、ひと段落かと思いきや、そうではない。マフィアの抗争と同じ。共通の敵がいなくなれば、銃口は仲間に向けられる。そのことに気づいている男がいる。撃たれる前に撃て。仙谷は動き出した。

政権たらい回しを宣言!

< だが、こうして脅し文句を並べているかぎり、相手はびくともせぬ。言葉というやつは、実行の熱をさますだけだ。さ、行け、それで、終りだ。鐘がおれを呼んでいる。聴くのではないぞ、ダンカン、あれこそ、貴様を迎える鐘の音、天国へか、それとも地獄へか >

 これは、シェイクスピア四大悲劇の一つとして名高い『マクベス』中の一節だ(訳:福田恆存)。荒れ地の魔女の囁きによって王殺しを決意したマクベスは、血塗られた道に踏み出すことに恐れ慄く自分を、こう言って無理矢理に鼓舞し、ついに王を暗殺する。

この「ダンカン」という王の名を、「小沢一郎」としてみると、何やらそれは、菅直人首相の心の叫びのようでもある。

 小沢氏の失脚により、これまで「トロイカ+α」(菅、小沢、鳩山由紀夫、輿石東各氏)で運営されていた民主党政権の実権は、「新・4人組」と呼ばれる勢力に移行した。

 「4人」とは、菅首相と岡田克也幹事長、そして仙谷由人党代表代行と枝野幸男官房長官のことだ。

 かつて自民党政権にも、「4人組」が存在した。'00年に小渕恵三元首相が倒れた際、密室で談合し、次の首相を森喜朗氏に決めた、森、野中広務、亀井静香、村上正邦各氏らのことである(青木幹雄氏を含めた「5人組」とも言われる)。

 国民に信を問うことなく、幹部のみで事を決め、政権をほしいままにする。森=菅、野中=仙谷といった具合に、民主党政権も"いつか来た道"を辿り始めた。

ただ、自民党の旧4人組と、現在の民主の新4人組が異なるのは、その4幹部の目指すところに、大きな隔たりがあるということ。

 自分の保身が第一の菅首相。内心、それを見限っている仙谷氏。"次"を窺う岡田氏、枝野氏。そこではすでに、分裂の火種が燻り始めている---。

■第1幕 王殺し

 1月14日に内閣改造に踏み切った菅首相だったが、その評価は極めて低い。

 新たに入閣したのはたった4人。しかも、そのうち3人は与謝野馨経財相や江田五月法相、中野寛成国家公安委員長といった"ロートル"だ。そして、残る一人の枝野幸男官房長官も、昨年7月の参院選大敗の戦犯だという、まさに「廃材内閣」である。

 ただ、そうした中で、なぜか妙に機嫌が良い人物がいる。官房長官を更迭されたはずの、仙谷由人・民主党代表代行だ。

 組閣翌日の1月15日は、仙谷氏の65歳の誕生日。これに先立ち、組閣真っ最中の14日午後、仙谷氏は議員会館内の自室で、親しい記者たちからマグカップなどの誕生祝いを受け取り、相好を崩していた。

「枝野が会見で緊張してた? 僕だって最初の時は緊張したよ。人間もライトも数が凄いしさ。長官は普段の会見から大変なんだ。どんな質問に対しても準備しておいて、すぐ答えなきゃいけないし。でも、そんな全部知っているわけないだろ」

 ねじれ国会の運営に苦しむ菅首相は、「小沢切り」と同時に「仙谷切り」にも踏み込んだ。仙谷氏本人は、直前まで官房長官続投を希望していたと言われる。だが、西岡武夫参院議長が烈火のごとく怒って仙谷続投を批判したこともあり、保身第一の首相は、仙谷氏を更迭した。

 しかし、仙谷氏の表情は明るい。

「大政局を起こさないと、日本の政治は変わらない。日本の政治は漸進主義というか、弥縫策の繰り返し、その場しのぎの政治が続いて来た。だから僕は、ドーンと行って、ごちゃごちゃ言ってる奴らを正面突破したいと思っていた。でもまあ、"ちょっと変わった議長"とかもいらっしゃるし、難しいね(笑)」

解散なんて絶対にしないよ。300議席も持ってたら、世論がどんなに非難しようが解散なんてするわけない。結局、権力を持っているほうが強いんだ。もし追い込まれたら、"政権のたらい回し"をするだけだ」

 溢れ出る傲慢と自信。これが、官房長官をクビにされ失脚したはずの政治家の言とはとても思えない。

 しかし、それはそうだ。仙谷氏の後任は、"子飼い"と言ってもいい枝野氏。首相官邸は事実上、いまでも仙谷氏の完全コントロール下にある。さらには党の代表代行として、逆に自由に動き、発言し、裏工作ができるポジションを得た。

 そして何より、仙谷氏が身を引くことで、その最大の政敵・小沢氏はいよいよ進退窮まった。仙谷氏が表向き政府を去ることで、野党の攻撃の焦点は強制起訴を待つ小沢氏の動向に移った。離党か、除籍か。小沢氏は最大の政治生命の危機を迎えている。

『マクベス』の荒れ地の魔女のように、"王(小沢)殺し"を菅首相に使嗾し、それを実行せしめた仙谷氏にしてみれば、官房長官の肩書と引き換えに、大きな果実を得たのである。

岡田は仙谷の下である!

 権力を掌握した民主党の新4人組が、真っ先に着手したのは「小沢一派の完全排除」である。

「ふつう、通常国会常任委員会特別委員会のメンバーは、前年の臨時国会での所属が継続されます。ところが現執行部は、今度の通常国会で、これを変えると言い出しました。しかもそれに先立ち、各議員に希望する委員会を申告するよう用紙が配られましたが、そこに予算委員会と政治倫理審査会の項がないんです。つまり、小沢氏の国会招致に絡む委員会は、執行部の一存で決めるということです」(民主党若手代議士)

 これまでは、予算委員会や政倫審のメンバーに少なからず小沢派の議員がおり、小沢氏を政倫審に呼んだり、国会に証人喚問するための障害になっていた。

「それを徹底的に排除するということです。外された議員の中には、別に小沢派でもない、中間派の人もいます。そういう議員まで執行部は排除し始めた。反小沢派だけで、政権を牛耳ろうというんですよ」(同)

 党名を変更したほうがいいような、非民主的方向に走る執行部の強硬姿勢の背後には、もちろん、「小沢切り」に猪突猛進する菅首相の強い意向がある。

 最近、菅首相は周囲に、

「ジンギスカンは、馬を下りて(政治をするようになって)からが大変だった」

 などと、自分をモンゴルの英雄「蒼き狼」に見立てているという。さらに、

「これからは権力を握る」

 と、事実上の"独裁宣言"までしてみせた。これではやはり、何か妄執に囚われているとしか思えない。

「見かねた首相の側近議員の一人が、『やはり挙党一致と言った以上、小沢派の切り捨てはよくない。もう少し配慮はできないのか』と苦言を呈した際も、『小沢を切れば支持率は上がる。小沢を切れないようでは、俺の立場がもっと悪くなる』と、まったく聴く耳を持たなかったそうです。『ここまで話がこじれたら、もう小沢を切るしかない。挙党一致なんてムリなんだ』と」(民主党中堅代議士)

< 一太刀あびせただけで、蝮はまだ生きている。傷口が癒えて生きかえりでもしてみろ。手を出したこっちは、いつまたその毒牙にかかるかしれたものではない。いっそ秩序の枠もこわれ、天地も滅んでしまうがいい。安んじて三度の食事もとれず、夜ごとの眠りも悪夢にさいなまれるくらいなら >

 王を暗殺したマクベスは、その秘密と手に入れた王の座を守るため、同僚まで殺してしまう。一度その手を血で染めた者は、罪悪感と恐怖から自制心を失い、暴走を始めるのだ。シェイクスピアが『マクベス』を書いた400年前から、権力の妄執に憑かれた政治家の行動パターンは、どうやらそれほど変わらない。

 

■第2幕 次の犠牲者

 マクベスが悲惨な結末を迎えるのと同様、菅首相の前途にも、すでに暗雲が漂い始めている。「新4人組」で政権を押さえたはいいが、その4者の間に、早くも分裂の兆しが見えている。

 この4人の中で、完全に浮いた存在になりつつあるのが、岡田幹事長だ。民主党ベテラン代議士の一人がこう語る。

「仙谷氏が代表代行になるにあたり、岡田氏は党本部の幹事長室を仙谷氏に明け渡すことになり、幹事長代理の部屋に引っ越しました。本人は『こっち(旧幹事長代理室)のほうが広いし、職員からも近い』と強がっていますが、"降格"と受け取れないこともない。実際、引っ越し作業をする岡田氏は無言のまま、憮然とした表情で荷物を箱に投げ込んでいて、誰も声をかけることができませんでした」(民主党本部スタッフ)

 前出の仙谷氏の放言を思い出して欲しい。仙谷氏は、「大政局を起こさねばならない」と語り、「菅首相がダメなら政権のたらい回しをする」と宣言した。

 仙谷氏の狙いは、明らかに「小沢を排除した上での政界再編」だ。小沢氏を消し、自分たちが主導の上で自民党公明党に働きかけ、連立の組み替え、再編を行う。その際、菅首相が邪魔なら、これも排除して、総選挙を経ずに新たな民主党代表を選出し、引き続き実権を握る。そして、その際に仙谷氏が担ぎ出すのは、決して岡田氏ではない。

「仙谷氏の狙いは、次期首相に秘蔵っ子である前原誠司外相を据えることです。そのために、江田法相が就任するとも言われた官房長官に、同じ凌雲会(仙谷氏が実質的な領袖の前原・枝野グループ)の枝野氏を押し込んだ。自分は代表代行として党務を総覧し、官邸は枝野氏を使ってコントロールする。まさに"仙谷支配"です」(民主党閣僚経験者)

 自分の子飼いである前原氏や枝野氏に実権を握らせようと図る仙谷氏にとって、代表経験者でもある岡田氏は、小沢"亡き"後、はっきり言って邪魔な存在だ。それを岡田氏も察知しており、今度の組閣でも、そこはかとない抵抗を試みたという。しかし、原理主義者で柔軟性がないと言われる岡田氏は、融通無碍の仙谷氏の敵ではなかった。

「党内を自由に動き回られると困るので、岡田氏は仙谷氏を国対委員長にして動きを封じようとしましたが、仙谷氏が受けなかった。さらに岡田氏と玄葉光一郎政調会長は、党で消費税論議を仕切る『税と社会保障の抜本改革調査会』の会長に仙谷氏が就任するのを牽制するため、記者団に情報をリークしたりしましたが、結局は仙谷氏本人の意向に押し切られ、税と社会保障も仙谷氏が統轄することになってしまった」(全国紙政治部記者)

 このまま行けば、民主党は4月の統一地方選で、壊滅的な惨敗を喫すると予想されている。落選する地方議員たちのごうごうたる非難の矛先は、菅首相と、幹事長の岡田氏に向かうことになる。「小沢殺し」に続く、「岡田殺し」---。すでに仙谷氏の中では、そこまでシナリオが出来上がっているのだ。

党内の抗争が第一。!

■第3幕 そして誰もいなくなる

 仙谷氏が構想する"大政局"にそぐわない者は、次々と消されていく。前段で仙谷氏を『マクベス』の魔女に喩えたが、同氏の政敵から見れば、その冷徹な策略家ぶりは、魔女より遥かに上位の冥界の王・プルートウのようだ。

 小沢氏を消し、岡田氏を除いた後、仙谷氏とその一派にとって、最後に邪魔になるのは、当然、菅首相その人ということになる。

組閣に"失敗"し、与謝野氏や藤井裕久官房副長官ら、財政再建・増税色が強い内閣を作った菅首相に、民主党内からは異論・反論が続出する。

「『国民の生活が第一。』という、政権交代時のスローガンは、どこかに吹っ飛んでしまった。そもそもの公約だった行政改革などを置き去りにして、消費税アップ路線に突き進む菅政権は、もはや『民主党』とは言えない存在です。これでますます、国民から見放される」(山田正彦前農水相)

 身内の大半が菅首相を見限っていることは、1月13日の党大会で発表された民主党の新ポスターにも表れている。民主党関係者がこう語る。

「新ポスターは6種類ありますが、どれも『地域のことは、地域で決める。』などと文字が書かれただけの、地味極まりないもの。実は、地方から『菅首相では選挙を戦えない』と悲鳴が上がり、首相の顔をポスターに使えなくなったのです」

 つまり菅首相は、世論より先に身内の党員たちから、一足早い"退陣勧告"を突きつけられたわけだ。政権の崩壊は、もはや秒読み段階に入ったと言える。

 それでも菅首相は、
「行けるところまで、闇雲に突っ走る。なんでも思いついたことをやっていく。支持率は気にしない。そうやって仕事をすれば、何か光明が見えてくる」

 などと側近らに話し、強がって見せているという。

 そしてファーストレディの伸子夫人も、そんな夫をけしかけ、妄進に拍車をかけているようだ。1月12日に東京・有楽町の外国特派員協会で会見した伸子夫人は、「できうることをやって玉砕するならいいが、支持率が悪いと批判されて辞めることはあって欲しくないし、あり得ない」と、夫を強烈に叱咤激励した。

 ただ、大罪を犯すことを躊躇うマクベスに対し、< 『やってのけるぞ』と言った口の下から『やっぱり、だめだ』の腰くだけ、そうして一生をだらだらとお過ごしになるおつもり? >と、尻を叩いてけしかけたのもまた、夫人だった。恐妻家は妻の一言によって、道を誤ることもある・・・。

歴史に汚名を残す!

 少なくとも菅首相が、次期政権を睨む仙谷氏や枝野氏らから、いまや完全に舐められているのは確かだ。

 枝野官房長官は、就任にあたって内閣官房で行った挨拶で、「自分はせっかち」と言い訳しながら、「皆さん(官僚)から説明を受ける時、"誰か"ほどではありませんが、じゃっかん、イラつくこともあるかもしれない」など、「イラ菅」の異名を取る首相を揶揄した。

「枝野氏は官房長官就任後、官邸のスタッフに対し、『自分と菅首相の意見が分かれた際、どうするかよく配慮して』と、職員からすれば"踏み絵"とも取れるような発言をしたそうです。枝野氏が官邸を仕切り、仙谷氏が代表代行として党を牛耳れば、莫大な官房機密費と政党交付金も、凌雲会の思うがまま。『ポスト菅』に向けた態勢作りは、着々と進んでいます」(官邸関係者)

 菅政権の「終幕」について、政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「キーワードは『3』『4』『6』です」として、こう語る。

「菅首相は消費税問題とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題の結論を、6月までに出すと期限を区切ってしまいました。これは両方とも、本来なら内閣が吹き飛びかねない大問題で、2つとも方向性を出すなど至難の業です。

 そのため、まずは予算が成立するかどうかの山場となる3月、そして統一地方選が行われる4月が菅政権の大きな関門であり、それを乗り越えたとしても、6月には前述の両問題で、政権は大きな危機を迎えるでしょう」

 小沢氏を切ると同時に、自分も死に体に陥った菅首相に唯一、残される手段は、破れかぶれの衆院解散だ。

 仙谷氏は、「解散なんてするわけない」と、一笑に付した。だが、政権崩壊に瀕している菅首相にしてみれば、「伝家の宝刀」を抜いて一か八かの勝負をし、奇跡の勝利を収めて求心力を取り戻す以外に、道がないというのも確かなのだ。

 ここまで幾度か触れてきた『マクベス』も、「女の生み落とした者に倒されることはない」という魔女の託宣にすがり、復讐にやってきた先王の息子たちの軍を相手に破れかぶれの決戦に踏み切る。

 しかし、マクベスと対峙した武将マクダフは、帝王切開によって生まれた、「女の生み落とした者」ではない存在だった。マクベスは、ここでようやく魔女に誑かされていたことに気付いて逃げようとするが、そのまま無残に、討ち取られてしまうのである---。

 菅首相に救いがあるとしたら、実在したスコットランドのマクベス王は、実は名君だったと言われること。シェイクスピアは、時のイングランド王がマクベスによって殺された貴族の子孫だったため、それを慮って、あえてマクベスを悪辣な王として描いたという。

社会保障と財政の問題を解決して歴史に名を残す」と力んでいる菅首相にしてみれば、史実のマクベス王を知れば、大いに勇気付けられるかもしれない。

 しかし、日本国民が望んでいるのは、首相の独りよがりな名誉を後世に伝えることではない。まずは"現在"の国民の暮らしを立て直し、不安を取り除いた上で、なお国家百年の計を立てる。その難題を克服する覚悟と能力がないのに総理大臣の座に居座られては、結局「悲劇」に見舞われるのは国民になる。

イスラムが1400年も前に考え出した予防法!

2011.01.21(Fri)JBプレス 伊東乾

インフルエンザが流行っているが、読者の皆さんは大丈夫だろうか? 筆者はA型インフルエンザと診断され、何かと話題になる「タミフル」を処方された。

 確かによく効く薬で39度3分あった体温が1日で36度8分に下がったのだが、やや頭痛がするのが悩ましいところだ。

インフルエンザウイルスの感染路!

インフルエンザは、いわゆる「飛沫感染」で広がっていく。咳やくしゃみなどで罹患者の体液が飛び散り、それを吸い込むことで病気が拡散するのだ。

 元来インフルエンザは弱いウイルスらしく、免疫の強い状態であれば発症することもなく自然に治ってしまうことが多いという。

 ところが何らかの理由で・・・過労から二日酔いまで・・・抵抗力が下がった状態でウイルスを吸い込んでしまうと、体内で増殖し始めてしまうのだという。

 ウイルス粒子1個が8時間で約100個に増えるらしい。1~3日の潜伏期間で発熱、独特の咳などの症状が出てくるようになる。

 8時間で100倍ということは16時間で1万倍、24時間で100万倍ということになる。仮にこのペースで3日間増殖されてしまうと1,000,000,000,000,000,000個ものウイルスが私たちの喉やら鼻やらで富み栄える計算になる。たまったものではない。

 それにしても、どうして風邪を引くとクシャミや咳が出るのだろうか?

 理由という理由を示せるわけではないが、進化論的に考えるなら「適者生存」の原則で、感染した対象(ヒトとか動物)が派手にクシャミや咳をしてくれればくれるほど、伝染の確率が高くなるわけだから、インフルエンザウイルスとしては種の保存がしやすい、ということになる。

 つまり、症状として結果的にクシャミや咳を伴うウイルスが、淘汰されずに残っていると考えるのがよさそうだ。

インフルエンザウイルスの感染では、特に鼻から感染性を有するウイルス粒子が吸入され、また鼻から感染性を有するウイルス粒子が呼気とともに出ていくことの影響が大きいと考えられている。

 つまり、ヒトの鼻腔や鼻粘膜が、インフルエンザたちの「繁栄」の基盤になっているのである。

鼻のうがい!

ところで突然だが「鼻のうがい」をご存じだろうか?

 高校生の時、家が医者の同級生のM君が「鼻のうがいは風邪の予防によく効くよ」と教えてくれた。

 水を鼻から吸い込む。それを喉から逆流させて口から吐き出す。なかなか派手な音がし、あまり上品には見えないが、さきほどのインフルエンザ伝播の理屈から考えると、これはなかなか合理的だ。

 喉から逆流させて吐く、はちょっと苦しいこともあり、普段はしないのだけれど、私も鼻から水を吸って鼻腔の奥まで「鼻うがい」をする。

 これは30年来の習慣にしている。そのおかげかどうか分からないが、確かにあまり風邪を引かない。

 今回インフルエンザになった大きな理由は、ある本のゲラをバイク便で送ってもらうはずだったのが、そのバイク便が正しく配達せず、いつまで待ってもゲラが来ないため(また時間がないので)翌日4時起きで担当編集の家まで車を転がした時に失調したことが主要な原因となっている。

 学生バイトでも使っているのか、この頃こういうモラルの低いケースが増えているように思われてならない。

閑話休題 「鼻のうがい」は日本では必ずしもメジャーではないが、実はこれが1400年来の伝統になっている宗教がある・・・イスラムである。

「ウドゥ」の衛生的側面!

アラビア砂漠のど真ん中、メッカやメディナは典型的な「交易都市」である。農耕や牧畜などがそこで盛んなわけではない。

 南のイエメンからはインド洋航路の品物が、北のダマスクスやコンスタンチノープルからは小アジアやローマからの文物が、各々やってきて、砂漠の真ん中、こんこんと水の湧き出るオアシスで出合う。

 それが「メッカ」や「メディナ」という街の立地条件だ。

 そんなアラビアの真ん中で、商人として暮らしていた「最後の預言者」ムハンマドによって広められたイスラムもまた、公益と商業を機軸に据える世界宗教と言うことができる。

 が、今はそれ以前の立地条件を考えてみたい。

 砂漠は風で砂塵が舞うのである。それが口の中や鼻、喉、耳の中などに日常的に入り込む。イスラム教徒が義務づけられている「1日5回の礼拝」は、1日5回「歯を磨き」「口をゆすいでうがいする」のみならず「鼻の中の砂の汚れを落とし」「耳の中に入ったゴミも取り」衛生によく配慮するように、という、極めて現実的な「公衆衛生」の教えにもなっているのだ。

 私たち日本人に伝えられる「イスラム像」は西欧側の偏見が入っていることが多く、1日5回も、何やらカーペットを取り出して、はいつくばったり拝んだり、意味のないことをやっているこっけいな連中、というような戯画化がされることが多い。

 だが、信仰の深い面をすべてさて置き、イスラムの礼拝は保険衛生的に考えるだけでも極めて有効なものだと、内容を細かく見ていくと気づかされる。

 口、鼻、耳だけでなく、イスラムの清め「ウドゥ」は目も洗う。小さな砂の粒子が入ったまま放置すれば視力を失いかねないわけだから、これも極めて合理的だ。

イスラムは毎日5回、手をよく洗い、足も洗う。靴を脱ぎ、靴下も取り、足の指の間までよくよく洗う。これも元来は「砂漠の砂」から来たものなのかもしれない。

 だがこうした衛生への配慮で、小さな傷を放置していて、そこから化膿して・・・などという事態を事前に回避することができる。

 礼拝は決して、カーペットの上での祈りだけではないのだ。これら「清め」ウドゥは実際に衛生状況の改善に劇的効果をもたらすもので、それを人類史上初めて「法」によって共同体の成員全員に徹底したのが、イスラム社会だった、ということになる。

「鼻うがい」再び!


イスラムは「水の宗教」でもある・・・これは実はユダヤ教、キリスト教にも通じることなのだが、とりわけイスラムは徹底している。

 日本には「鼻うがい」を奇異に思う人が多いが、逆に日本人は極めて頻繁に「鼻をかむ」。ティッシュペーパーを惜しげもなく消費する。

 ところが、イスラムの発想では、鼻をかんだあと、そのままにしておくというのが「不潔」と感ぜられるのだ。

 これは「ウォシュレット」を想起すると分かりやすいだろう。大小の用便のあと、日本人はトイレットペーパーを使う。だが毎回の用便ごとに身体を洗うということはしない。

 もしモスクに出かけるなら、トイレに小さな薬缶のような容器が置いてあるのに気づくだろう。イスラムでは用便のたびごと、男性も女性も排泄器を洗う。

 男が「小」の方をする際にも、ソノ部分を終了後に洗う。「大」は言うまでもない。

 つまり徹底して「ウォシュレット」の発想なのだ。西暦620年頃から一貫して「ウォシュレット」を使ってきた文化・イスラム!

日本で聖徳太子が「篤く三法を敬え」などと言っていた頃から、水を多用する公衆衛生が徹底していたイスラム社会!

 こちらの観点に立つなら「用を足したあと、紙で拭くは結構だけれど、水で洗わないなんて考えられない。不潔!」ということになるわけだ。

 同じことが「鼻をかむ」にも成立しているのが興味深い。日本人は頻繁に鼻をかむが、かむだけでその後鼻の中を洗わない。耳や鼻の中を綿棒で掃除したりはするが、直接水を入れて洗う、なんてことはしない。

 どうしてそのような文化慣習になったのだろう?

 起源を考えると興味深い。「湯水のごとく」なんて水を多用する日本が鼻を洗わず、砂漠のど真ん中のイスラムが水の衛生法を多用する。

 たぶんこれには、全身浴する「風呂」の性質の違いがあるのだと思われるが、これはまた別の機会に考えることにしよう。

 しかし「全身浴する風呂」であっても、普通の日本人は「鼻の中を湯で洗う」ということはしないのではないか?

 インフルエンザの伝播メカニズムを考えても、イスラムが毎日5回必ず行う清め「ウドゥ」の伝統には、極めて合理的な根拠があることに、今さらながら驚かされる。

 昨日診察してもらった医師によると、日本の今年の流感は「インフルエンザA型」と「扁桃腺炎」の2つとのことだ。

 読者の皆さんも、ひとつ「ウドゥ」の鼻うがいで、インフルエンザ予防してみてはいかがだろうか?

ステルス機
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%B9%E6%A9%9F

2011年1月7日 東京新聞 朝刊

【北京=朝田憲祐】中国軍が、レーダーに捕捉されにくい最新型の次世代ステルス戦闘機「殲(せん)20」を開発し、六日、四川省成都で試作機の滑走試験を行ったことが分かった。民間の軍事研究機関、漢和情報センター(本部カナダ)が本紙に明らかにした。空母建造など海軍力増強が顕著な中国が、空軍力の強化にも力を入れていることを示した格好だ。西側の軍事関係者の間では、九日からのゲーツ米国防長官の訪中を前に、空軍力の近代化を誇示するため、中国当局が意図的に情報を流した、との見方も出ている。

 「第五世代」と呼ばれるステルス戦闘機は、実戦配備された米国の「F22」と、ロシアが開発を進める「T50」だけ。

 「殲20」は、中国軍系の航空機メーカー「成都飛機(航空機)工業」が開発。機体は黒っぽく、やや丸みを帯びている。国産エンジンを搭載しているとみられ、高度のステルス性や巡航速度を備えている「F22」と比べると性能は劣るという。同センターによれば殲20は近く飛行試験に移る見通しだが、実戦配備にはさらに十年程度かかるとみている。

 この日の滑走試験は、十二月と一月五日に続き三回目で、中国国防省や共産党中央軍事委員会の幹部も視察。同センターは「本来は飛行試験が予定されていたが、結果的に試験滑走に終わった可能性がある。何らかのトラブルが起きたのかもしれない」と分析した。

 「殲20」の写真は、年末からインターネット上で出回っているほか、共産党機関紙・人民日報系の環球時報や国営中央テレビも「中国の次世代戦闘機に外国メディアが注目」と報道。香港在住の軍事専門家、平可夫氏は「殲20」が実戦配備されれば「アジアの軍事バランスに大きな影響を与える可能性がある」と指摘している。

 これに対し、中国外務省の洪磊副報道局長は六日の定例会見で「中国は防御的な国防政策を堅持しており、いかなる国にも脅威を与えない」と述べ、西側で広がる中国脅威論にくぎを刺した。

櫻井よしこ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AB%BB%E4%BA%95%E3%82%88%E3%81%97%E3%81%93

国家基本問題研究所
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

三井田孝欧
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BA%95%E7%94%B0%E5%AD%9D%E6%AC%A7

新潟中国総領事館の万代小学校跡地移転問題
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%B7%8F%E9%A0%98%E4%BA%8B%E9%A4%A8%E3%81%AE%E4%B8%87%E4%BB%A3%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E8%B7%A1%E5%9C%B0%E7%A7%BB%E8%BB%A2%E5%95%8F%E9%A1%8C

『週刊新潮』2010年11月11日号 日本ルネッサンス 第435回 櫻井よしこ

いま、中国に最も狙われている県は新潟県だといってよいだろう。

5年前、中国は北朝鮮の日本海側最北の港、羅津(ラジン)の50年間の租借権を得た。租借は単なる貸与ではない。その地に行政権も及ぶ、まさに植民地時代の遺物のような契約である。

羅津港から中朝国境まで約60キロ、中国はここに幹線道路を作り、これも租借した。歴史上初めて、中国は自国から日本海に直接出入りする道路と港を確保したのだ。

東シナ海はすべて自国の海だと主張する中国は、日本の富も技術も、人材も自然も、すべて中国のために活用するのが国益だと考える。日本海に直接、出入り出来るいま、羅津の真向かいの新潟が日本における中国の重要拠点と位置づけられるのは当然だろう。中国の異常な拡大路線の前に日本が、とりわけ新潟県が、国土や富を奪われないよう最大限警戒しなければならないゆえんである。にも拘らず、新潟市で起きつつあることは異常である。

中国政府が市中心部の万代小学校の跡地約5,000坪を購入し総領事館を設置し、同時に最近閉店した百貨店の跡地に中華街を作りたいと表明、同構想が篠田昭市長らの支持を得て実現しつつあるのだ。中国による日本の土地や山林の購入実態は把握出来ていないが、想像以上の規模だと見られている。そうした中で、市中心部の広大な市有地の中国への売却を、篠田市長も新潟市議会も問題だとはとらえていないのだ。

経過を振り返れば、沖縄に総領事館をとの中国外務省の要望を日本外務省が拒否したのは昨年3月だった。代わりに浮上したのが新潟だった。中国総領 事館は市中心部の、ロシア及び韓国の総領事館も入っている「朱鷺(とき)メッセ」で、業務を開始した。そして、早くも今年7月24日、「新潟日報」紙上での泉田裕彦新潟県知事らとの鼎談で、王華中国総領事が中華街構想等を知事にもちかけた。知事は賛同し、8月11日には 地元の新潟中心商店街協議会が中華街設置への協力を求める要望書を市長に手渡した。市は9月16日には万代小学校跡地売却を前提とする土地の測量 を開始した。

「街の活性化」という美名

トントン拍子に進む市と中国側の交渉とは対照的に、市の地元住民への説明は遅く、不十分だ。1回目の説明会は9月10日だったが、広報が不十分だった所為か、午後1時半の会には3名、3時の会には10名しか集まらなかったと地元市議が語る。16日、21日と説明会は行われたが、このと き、市はすでに測量に踏み切っていた。

篠田市長は、今月14日の選挙での3選が確実とされており、その場合、計画はどんどん進むだろう。無所属の山田洋子市議は数少ない反対派の一人だが、市長にも市議会にも住民の懸念や不満はおろか、国家の一員として、中国に市中心部を与え中国マネーに期待することの負の意味合いを考える姿勢 は見られないと批判する。新潟市議会の余りの問題意識の欠如に、なんと、柏崎市の三井田孝欧市議が憤りの声をあげた。


「私は100キロも離れた柏崎の市議ですが、事は県の、そして日本の問題だと考え、敢えて発言します。尖閣諸島における中国の蛮行について、王華総領事は『尖閣諸島の事件は小さな事』と言いましたが、総領事館のウェブサイトには『中国の領土』だと明記しています。なのに、新潟市議らは総領事に反論もしない。土地売却は慎重にと考える市議も殆どいない。8月1日には新潟市議団が4泊5日で中国を訪問していますが、そんな場合ではないのです」

新潟の保守派は一体どうしたのだ。地元商店街は経済の活性化につながると期待するが、経済の表面だけ見ていてよいのか。新潟市は大きな間違いを犯そうとしている。

通産省キャリア官僚だった梅原克彦氏は2005年、仙台市長に転身、全国に先駆けて小学校全校舎の耐震化を完成させ、歴史的町名の復活や拉致問題に積極的に取り組んだ。同時に中華街建設構想をとめた。それが大きな要因となって氏は建設推進派と対立し、市長再選への出馬を見送った経緯がある。氏はなぜ、中華街構想をとめたのか。疲弊する地方都市では誰も反対出来ない「街の再活性化」という美名の構想が、実は地元のためにも日本のためにもならないと考えたからだと氏は語る。

「中国側は仙台駅近くの旧国鉄跡地などの1・5ヘクタール、東京でいえば汐留のような大規模再開発用地に目をつけました。その一角に地上9階、地下1階の『空中中華街』を作る構想が前任市長と中瑞財団という中国の投資ファンド、日本人ブローカーの三者間で合意されていたのです」

反対理由の第一は、横浜や神戸とは全く異なる形の中華街が出来る可能性だった。

「横浜では華僑の人々が地域自治体と長年かけて信頼を築き上げ、中華街が生まれました。しかし、新たに作ろうとする中華街は広大な土地を中国がまず買い取って、必ずしも地元の意思と関係なく彼らの思い通りに街を作ろうというものです」


乱舞した五星紅旗の群れ

宮城県警の2005年の統計で、検挙された外国人122人中、70%超の87人が中国人という犯罪率の高さも、反対の理由だったとして、梅原氏は さらに語った。

「地元に馴染んだ横浜中華街でさえ深刻な問題が起きました。数年前の海上自衛隊イージス艦の機密情報漏洩事件で、情報を漏洩した元自衛官の中国人妻は国外追放されましたが、その後、再入国し、横浜中華街に潜伏していたのです」

世界各地への中国の進出は往々にして中華街の建設から始まる。アジア最貧のラオスの首都ビエンチャンでは、この62万人の町に、2009年、突然、中国政府が広大な土地を入手し、5万人の中華街を作った。人の好いラオス人は、目から鼻へ抜ける中国人に席巻され、ラオス全体が中国の強い影響下に組み入れられつつある。住民虐殺で悪名高いアフリカのスーダンで、中国は武器と経済援助の見返りに石油資源と土地を手に入れ、大中国人街を作った。町はいま20万人規模に膨張した。

わが国においても、中国人登録者は68万人、国内最大の外国人勢力となった。日本に住む彼らは、場合によっては日本への敵対行動を取らされる可能性もある。在外中国人は、有事の際、中国政府の指示に従うことを定めた国防動員法が、今年7月1日に施行されたのだ。

彼らがどんな働きをするかは、2008年のオリンピックの聖火リレーのときに、長野市に集結、乱舞した五星紅旗の群れを想い出せばよい。

売った土地は二度と戻ってこない。だから、外国、とりわけ中華帝国的覇権主義で他国を恫喝する中国には、出来るだけ、土地も山林も渡さないことだ。篠田市長をはじめ、新潟市議会の猛省を促すものである。

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