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イスラムが1400年も前に考え出した予防法!

2011.01.21(Fri)JBプレス 伊東乾

インフルエンザが流行っているが、読者の皆さんは大丈夫だろうか? 筆者はA型インフルエンザと診断され、何かと話題になる「タミフル」を処方された。

 確かによく効く薬で39度3分あった体温が1日で36度8分に下がったのだが、やや頭痛がするのが悩ましいところだ。

インフルエンザウイルスの感染路!

インフルエンザは、いわゆる「飛沫感染」で広がっていく。咳やくしゃみなどで罹患者の体液が飛び散り、それを吸い込むことで病気が拡散するのだ。

 元来インフルエンザは弱いウイルスらしく、免疫の強い状態であれば発症することもなく自然に治ってしまうことが多いという。

 ところが何らかの理由で・・・過労から二日酔いまで・・・抵抗力が下がった状態でウイルスを吸い込んでしまうと、体内で増殖し始めてしまうのだという。

 ウイルス粒子1個が8時間で約100個に増えるらしい。1~3日の潜伏期間で発熱、独特の咳などの症状が出てくるようになる。

 8時間で100倍ということは16時間で1万倍、24時間で100万倍ということになる。仮にこのペースで3日間増殖されてしまうと1,000,000,000,000,000,000個ものウイルスが私たちの喉やら鼻やらで富み栄える計算になる。たまったものではない。

 それにしても、どうして風邪を引くとクシャミや咳が出るのだろうか?

 理由という理由を示せるわけではないが、進化論的に考えるなら「適者生存」の原則で、感染した対象(ヒトとか動物)が派手にクシャミや咳をしてくれればくれるほど、伝染の確率が高くなるわけだから、インフルエンザウイルスとしては種の保存がしやすい、ということになる。

 つまり、症状として結果的にクシャミや咳を伴うウイルスが、淘汰されずに残っていると考えるのがよさそうだ。

インフルエンザウイルスの感染では、特に鼻から感染性を有するウイルス粒子が吸入され、また鼻から感染性を有するウイルス粒子が呼気とともに出ていくことの影響が大きいと考えられている。

 つまり、ヒトの鼻腔や鼻粘膜が、インフルエンザたちの「繁栄」の基盤になっているのである。

鼻のうがい!

ところで突然だが「鼻のうがい」をご存じだろうか?

 高校生の時、家が医者の同級生のM君が「鼻のうがいは風邪の予防によく効くよ」と教えてくれた。

 水を鼻から吸い込む。それを喉から逆流させて口から吐き出す。なかなか派手な音がし、あまり上品には見えないが、さきほどのインフルエンザ伝播の理屈から考えると、これはなかなか合理的だ。

 喉から逆流させて吐く、はちょっと苦しいこともあり、普段はしないのだけれど、私も鼻から水を吸って鼻腔の奥まで「鼻うがい」をする。

 これは30年来の習慣にしている。そのおかげかどうか分からないが、確かにあまり風邪を引かない。

 今回インフルエンザになった大きな理由は、ある本のゲラをバイク便で送ってもらうはずだったのが、そのバイク便が正しく配達せず、いつまで待ってもゲラが来ないため(また時間がないので)翌日4時起きで担当編集の家まで車を転がした時に失調したことが主要な原因となっている。

 学生バイトでも使っているのか、この頃こういうモラルの低いケースが増えているように思われてならない。

閑話休題 「鼻のうがい」は日本では必ずしもメジャーではないが、実はこれが1400年来の伝統になっている宗教がある・・・イスラムである。

「ウドゥ」の衛生的側面!

アラビア砂漠のど真ん中、メッカやメディナは典型的な「交易都市」である。農耕や牧畜などがそこで盛んなわけではない。

 南のイエメンからはインド洋航路の品物が、北のダマスクスやコンスタンチノープルからは小アジアやローマからの文物が、各々やってきて、砂漠の真ん中、こんこんと水の湧き出るオアシスで出合う。

 それが「メッカ」や「メディナ」という街の立地条件だ。

 そんなアラビアの真ん中で、商人として暮らしていた「最後の預言者」ムハンマドによって広められたイスラムもまた、公益と商業を機軸に据える世界宗教と言うことができる。

 が、今はそれ以前の立地条件を考えてみたい。

 砂漠は風で砂塵が舞うのである。それが口の中や鼻、喉、耳の中などに日常的に入り込む。イスラム教徒が義務づけられている「1日5回の礼拝」は、1日5回「歯を磨き」「口をゆすいでうがいする」のみならず「鼻の中の砂の汚れを落とし」「耳の中に入ったゴミも取り」衛生によく配慮するように、という、極めて現実的な「公衆衛生」の教えにもなっているのだ。

 私たち日本人に伝えられる「イスラム像」は西欧側の偏見が入っていることが多く、1日5回も、何やらカーペットを取り出して、はいつくばったり拝んだり、意味のないことをやっているこっけいな連中、というような戯画化がされることが多い。

 だが、信仰の深い面をすべてさて置き、イスラムの礼拝は保険衛生的に考えるだけでも極めて有効なものだと、内容を細かく見ていくと気づかされる。

 口、鼻、耳だけでなく、イスラムの清め「ウドゥ」は目も洗う。小さな砂の粒子が入ったまま放置すれば視力を失いかねないわけだから、これも極めて合理的だ。

イスラムは毎日5回、手をよく洗い、足も洗う。靴を脱ぎ、靴下も取り、足の指の間までよくよく洗う。これも元来は「砂漠の砂」から来たものなのかもしれない。

 だがこうした衛生への配慮で、小さな傷を放置していて、そこから化膿して・・・などという事態を事前に回避することができる。

 礼拝は決して、カーペットの上での祈りだけではないのだ。これら「清め」ウドゥは実際に衛生状況の改善に劇的効果をもたらすもので、それを人類史上初めて「法」によって共同体の成員全員に徹底したのが、イスラム社会だった、ということになる。

「鼻うがい」再び!


イスラムは「水の宗教」でもある・・・これは実はユダヤ教、キリスト教にも通じることなのだが、とりわけイスラムは徹底している。

 日本には「鼻うがい」を奇異に思う人が多いが、逆に日本人は極めて頻繁に「鼻をかむ」。ティッシュペーパーを惜しげもなく消費する。

 ところが、イスラムの発想では、鼻をかんだあと、そのままにしておくというのが「不潔」と感ぜられるのだ。

 これは「ウォシュレット」を想起すると分かりやすいだろう。大小の用便のあと、日本人はトイレットペーパーを使う。だが毎回の用便ごとに身体を洗うということはしない。

 もしモスクに出かけるなら、トイレに小さな薬缶のような容器が置いてあるのに気づくだろう。イスラムでは用便のたびごと、男性も女性も排泄器を洗う。

 男が「小」の方をする際にも、ソノ部分を終了後に洗う。「大」は言うまでもない。

 つまり徹底して「ウォシュレット」の発想なのだ。西暦620年頃から一貫して「ウォシュレット」を使ってきた文化・イスラム!

日本で聖徳太子が「篤く三法を敬え」などと言っていた頃から、水を多用する公衆衛生が徹底していたイスラム社会!

 こちらの観点に立つなら「用を足したあと、紙で拭くは結構だけれど、水で洗わないなんて考えられない。不潔!」ということになるわけだ。

 同じことが「鼻をかむ」にも成立しているのが興味深い。日本人は頻繁に鼻をかむが、かむだけでその後鼻の中を洗わない。耳や鼻の中を綿棒で掃除したりはするが、直接水を入れて洗う、なんてことはしない。

 どうしてそのような文化慣習になったのだろう?

 起源を考えると興味深い。「湯水のごとく」なんて水を多用する日本が鼻を洗わず、砂漠のど真ん中のイスラムが水の衛生法を多用する。

 たぶんこれには、全身浴する「風呂」の性質の違いがあるのだと思われるが、これはまた別の機会に考えることにしよう。

 しかし「全身浴する風呂」であっても、普通の日本人は「鼻の中を湯で洗う」ということはしないのではないか?

 インフルエンザの伝播メカニズムを考えても、イスラムが毎日5回必ず行う清め「ウドゥ」の伝統には、極めて合理的な根拠があることに、今さらながら驚かされる。

 昨日診察してもらった医師によると、日本の今年の流感は「インフルエンザA型」と「扁桃腺炎」の2つとのことだ。

 読者の皆さんも、ひとつ「ウドゥ」の鼻うがいで、インフルエンザ予防してみてはいかがだろうか?

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