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見えてきた在日米軍追い出しの流れ

 とはいえ「在日米軍には、これまでの駐留を感謝しつつ、米国にお帰りいただこう」と考える日本人は、いないわけではない。先日は、日本の首相自身が、そのような発言を放った。鳩山首相は12月4日に「(沖縄の海兵隊を)グアムに全部移設することが、米国の抑止力ということを考えたときに妥当か検討する必要がある」と述べ、沖縄の海兵隊を全部グアムに移す案を検討していることを認めた。(普天間交渉「暗礁」 米大使一変、激怒)

 ここ数年の米軍再編の中で、第3海兵遠征軍は、司令部がグアムに移り、実働部隊は沖縄に残る計画になっている。日本政府(官僚機構)が思いやり予算の延長で「グアム移転費」を負担したいと言ったので、米軍は、海兵隊のグアム移転をなるべくゆっくりやり、日本からできるだけ多くの金を引き出そうとしている。日本が金を出したいと言うのだから、財政難の米国が、それならできるだけ多くもらおうと思うのは当然だ。

 しかし、日本が米軍引き留めのために金を出す従来の体制は、今夏までの自民党政権時代に官僚主導で決めたことだ。今の民主党政権は、米国の覇権が低下し、日本の財政難がひどくなる中で、官僚のために巨額の金を出して米軍を引き留めるのはやめた方が良いと考えている。だから鳩山政権は、就任前から「官僚本位の政策はやめる」と言い、官僚機構の中で財務省に権限を集中させ、小沢一郎らが財務省を握ることで権力を掌握しようとしている。鳩山政権が社民党も入れた連立政権を組んだのは、社民党の「反基地」の姿勢を使い、連立内に社民党がいるので基地問題で米国の言いなりになれないと言い訳する理由をあらかじめ作るためだろう。

 12月4日に鳩山は「沖縄の海兵隊をグアムに全部移設することが、米国の抑止力を考えたときに妥当か検討する」と言ったが、これは「第3海兵遠征軍がグアムと沖縄に分かれているのは非効率で、米国の抑止力を削いでいる。沖縄からグアムへの海兵隊の移転は、自民党時代の日米合意に沿ってゆっくりやるのではなく、過去の日米合意にこだわらず、早くやった方が米国の抑止力維持にとって良いのではないか」ということだ。グアム移転を早くやれば、日本が米国に出す金も少なくてすむ。官僚の権力維持のために米軍のグアム移転をゆっくりやって巨額の税金を無駄遣いするのはやめてもいいのではないか、という意味だ。

 米軍は18カ月でイラクから米国に10万人以上の米軍を撤退する計画を立てたぐらいだから、沖縄からグアムに2万人の海兵隊全部を移すのは半年か1年で十分やれる。(抑止力の面では、海兵隊遠征軍は出先のグアムではなく米本土に置けば十分だ。米政府は金欠なので、グアムに海兵隊遠征軍を置く費用を節約し、第3海兵隊遠征軍を解散して米本土の第1と第2に併合するのではないか)

 グアム移転を一気にやると、日本から米国にあげるお金が減る。だから、米国のルース駐日大使は、鳩山発言後の日本側との協議の場で、異例の激怒をした。しかし、以前の記事に書いた10月のゲーツ国防長官の訪日時の「激怒」以来、私は、米高官の対日激怒は、長期的に見て日本人が米国の傲慢さに腹を立てる方向に寄与するので、米国からの自立を目指す鳩山政権に対する、隠れ多極主義の米中枢からの「応援」ではないかと感じている。

 米政府は「普天間の辺野古移転が実現しないなら、海兵隊はグアムに移転せず、永久に沖縄に駐留するぞ」と言い、日本のマスコミはこの論調を増幅して鳩山を批判している。だが、そもそも米軍の沖縄駐留は金が目当てだから、日本が思いやり予算などの巨額資金を出すのをやめたら、米軍の方が沖縄から出ていきたくなる。何度も言うが、沖縄の海兵隊駐留は、すでに日米双方にとって戦略的価値がない。あるのは米国にとっての金銭的価値だけで、それも米国側は、日本の権力内部でのねじれた状況(官僚支配)の結果であり、いずれ終わると知っていたはずだ。日本のマスコミは「鳩山政権は米国を怒らせる悪い政権だ」という書き方を続けているが、この傾向が続くと、日本人は「マスコミこそ、傲慢な米国の威を借る悪い狐だ」とマスコミ批判を強める。

 以前の記事に書いたが、普天間基地問題では、時間が経つほど、沖縄県民は県外国外移設を求めるようになる。10月には「沖縄県民の意志を尊重する。最後は私が決める」と言い、今回は「グアムも検討対象」と言った鳩山は、沖縄の民意を使って米軍に出ていってもらおうとしているように見える。沖縄県民は従来「海兵隊は、県外か国外に移転してくれ」と言っていたが、今回の鳩山発言を機に、今後は「グアムに移転してくれ」と言うようになるだろう。もし本当に海兵隊をグアムに撤退させられたら、沖縄県民の自信はさらに高まり、嘉手納基地もグアムに移ってくれと言い出すだろう。(沖縄から覚醒する日本)

 鳩山発言に対し、米国側は「普天間問題が解決するまで日本と同盟関係についての協議はしない」と言ってきたが、日米協議の再開が遅れるほど、沖縄は米軍基地追い出しの決意を強め、日本本土の世論も「在日米軍がいなくても困らない」という方向になり、マスコミの論調に対する違和感が強まるのではないか。

▼ガス抜き踊りをやらされる岡田外相

 鳩山政権でもう一つ興味深いのは、岡田外相の動きである。岡田は、普天間移設問題について、何とかして米国と沖縄県民の双方が納得する解決法を編み出そうと、本気で駆け回っている観がある。鳩山や小沢は、最後は在日米軍を全撤退させたいと考えているようだが、岡田はその方針を共有していない。これは何を意味するのか。私の推察は「小沢や鳩山は、外務省のガス抜きのために、岡田を外務省を代弁する役回りに置き、あえて解決不能な状況下で、必死に駆け回らせているのではないか」というものだ。鳩山は岡田に「外務省幹部とよく相談して、普天間移設の解決策を編み出せ」と命じ、その一方で沖縄県民や社民党を基地反対の方に煽り、最終的に「外務省は岡田のもとで、できるだけのことをしたが、在日米軍撤退を止められなかった」という話にするつもりではないか。(岡田外相来県 県外一色苦悩濃く)

 鳩山政権は、外務省と敵対すると、以前の記事に書いた田中角栄のように、外務省の手練手管に潰される。対米従属の外交スキャンダルが不倫絡みの情報漏洩事件にすり替えられた「西山事件」(沖縄密約事件)に象徴されるように、外務省は話をすり替えつつマスコミを操作し、自分たちに都合の良い結論に持っていくプロパガンダに長けている。だから小沢や鳩山は、いちずな岡田を外相に送り込み、外務省のために本気で必死に働かせ、外務省が鳩山政権を敵視できない状況を作った上で、在日米軍引き留めという外務省の長期戦略を潰しにかかっている。(日本の官僚支配と沖縄米軍)

 米国は今春、青森県の三沢基地から40機のF16戦闘機をすべて米国に引き揚げ、代わりに嘉手納基地のF15戦闘機群(50機)の半分を三沢に移転する話を日本側に持ちかけたが、米軍に出て行ってほしくない日本政府は、この案に反対した。この案を復活させ、嘉手納の空いた場所に普天間のヘリ部隊を入れれば、普天間を空けられる。だから岡田は「嘉手納移転」にこだわったが、これについては米国が小沢鳩山に「助け船」を出した。以前は米国から言い出した話を、今回は米国が拒否した。ゲーツ米国防長官は「嘉手納に空軍戦闘機と海兵隊ヘリを一緒に常駐するのはダメだ」と強く言い、外務省案を潰した。実際には、空軍戦闘機と海兵隊ヘリが一つの基地を共有してコストを削減する手法は、ここ数年の米軍再編で推奨されてきた柔軟運営策だが、ゲーツは「ダメ」の一点張りだった。([F15削減難色]これが政府の「本心」か)(米、三沢基地F16撤収を打診 ことし4月、日本難色で保留)

 岡田は、普天間移設問題では外務省のために解決策を探して奔走したが、その一方で「西山事件」(沖縄密約。沖縄返還時の秘密の「思いやり予算」)や「核兵器の日本持ち込み黙認」といった、昔の外務省がやっていた対米従属の秘策について真相究明を進めると宣言している。沖縄密約については、当時の外務次官らが昔の自分の否定証言を覆し、密約の存在を認めている。これらの暴露は、外務省が権力維持のため在日米軍に象徴される対米従属を何とか維持しようと策を弄し続けてきたことを露呈するもので、日本を対米従属から引き剥がす民主党政権の隠れた戦略に沿ったものだろう。(<沖縄返還費肩代わり>「外務省から密約説明」証言)
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