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軍事力だけでなく外交力でも歯が立たない日本!

尖閣諸島領有権問題
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%96%E9%96%A3%E8%AB%B8%E5%B3%B6%E9%A0%98%E6%9C%89%E6%A8%A9%E5%95%8F%E9%A1%8C

2010.09.18(Sat)JBpress 川嶋 諭

 今週の感想は一言。よくもまぁ日本はなめられたものだな、である。この時期に必要かどうかも怪しい代表選挙に政権与党がうつつを抜かしている間に、為替市場は1ドル82円台にまで高騰していった。

民主党代表選の隙をつかれた日本!

一方、尖閣諸島では、中国のトロール船が海上保安庁の立ち入り検査を拒否しようと、体当たりを食らわせた。

 隙あらば尖閣諸島に上陸して既成事実を作ろうとの狙いも見え隠れする。実際、ここ数カ月その手の噂が飛び交った。

 しかし、世界の為替ディーラーが、日本の介入を一様に驚いてくれた結果、日本単独の介入にもかかわらずかなりな効果を得ることができた。

 また、尖閣諸島では、まさか日本が中国船を拿捕して船長を逮捕するとは思わなかったというサプライズが、中国政府を慌てさせた。

 その結果、中国へ赴任したばかりの丹羽宇一郎大使は気の毒にも、中国政府に5回も呼びつけられ、しかも5回目は深夜零時過ぎという異例な対応を迫られた。

 こうした事件は、裏を返せば、為替介入にしても中国船の船長逮捕にしても、優柔不断な日本に、しかも政権与党の代表選の最中にはできるわけがないという読みが中国や世界にはあったということだ。

 結果は適切な処置を実行できて、ことなきを得たということになるのだが、一歩対応を間違えれば、日本の国益を大きく損ねる危険性もあったわけで、手放しで喜べることではない。

 実際、今の日本は生き馬の目を抜くような為替ディーラーや日本の領土を虎視眈々と狙う中国からみれば、隙だらけに見えている。

とりわけ、尖閣諸島の問題は看過できない。領土は相手に一度でも実質支配されてしまえば取り戻すことは極めて困難だ。北方領土や竹島で日本は嫌というほど思い知らされているはずなのに、日本は隙を見せすぎる。


明らかに尖閣諸島を取りにきている中国!

 そうした危機感を顕にした記事が今週は多かった。「尖閣問題で日中関係は再び冬の時代に戻るのか」、「丹羽大使の『原罪』」、「尖閣諸島事件で、日中関係は過去最悪に?」など、いずれも高い視聴率を獲得した記事はすべてこの問題をテーマにしている。

 また、「軍事大国へ突き進む中国の暴走を抑えよ」は、直接に中国漁船の尖閣諸島への領海侵犯を扱ったものではないが、中国がいかにして尖閣諸島を我が物にしようとしているかを解説した記事である。

 また、少し毛色が違った英フィナンシャル・タイムズ紙による「9.11より9.15の方が世界を変えた理由」も、尖閣諸島の問題を直接には扱ってはいないが、中国の太平洋への進出が世界の脅威となっていることに警鐘を鳴らしている。

 具体的にはぜひ、個々の記事をお読みいただきたいと思う。しかし、これだけの記事が出てくること自体、日本には隙がありすぎるのだと思わざるを得ない。

 例えば、「丹羽大使の『原罪』」の記事では、中国政府が日本の隙を巧みに突いて、丹羽大使が中国政府の呼び出しにすべて応じ抗議を受けざるを得なくなった理由が説明されている。

政府要人と会うことは経済人として当然の行い
 初めは下級官僚の呼び出しから始め、それに応じたら少しずつ呼び出す側の階級を上げて、日本の丹羽大使が決して断れないように追い込んでいく。もしそれが本当だとすれば“敵ながら”何とも小癪な戦略である。

 しかも、政治という駆け引きに4000年の歴史を刻んでいる中国は、丹羽大使という民間出身の大使の弱点もよく心得ている。

 伊藤忠商事の社長、会長を歴任した丹羽大使は日本を代表するリーダーと言える。清廉潔白さ、決断力、コミュニケーション能力の高さなど、卓越した実力を発揮してきた。中国大使として恐らく完璧に近い人事なのだろう。

 しかし、いかに伊藤忠を離れて日本の代表となったとはいえ、その経歴は消せるものではない。中国側からすれば、丹羽大使が、もちろん日本の代表としてはもちろん、伊藤忠のトップだった人物として、中国政府の要人との会談を断れるはずがないと、その足元を見抜いていた可能性がある。

政府の要人と会うこと自体、企業人としてはプラスではあれ、決してマイナスにはならないからだ。


民間人出身大使の弱点とは何か!

 しかし、国と国との折衝では会わないことも大切な場合もある。今回がまさにそうだったとすれば、中国側の駆け引きが圧倒的に日本を上回っていたことになる。もちろん、丹羽大使に責任は全くない。彼を選んだ日本政府に隙があっただけだ。

 今回の尖閣諸島で発生した事件で、国民に人気の高い日本のある閣僚は「尖閣諸島の領土問題」という失言をした。東シナ海に領土問題はない。日本のメディアは勘違い程度の軽い扱いだったが、これもまた日本の隙としか考えられない。

 失言した閣僚が日本国籍を取得した日本人とはいえ、子供の頃からどのような教育を受けてきたか分からない。本当に無知による失言なのか、隠していた本音が出たものなのか。

 疑うつもりは全くない。しかし、領土問題に万が一はない。失った領土を取り返すことがいかに難しいかは歴史が証明している。隙があるから付け込まれる。

 隙をなくして脇を固めることには海外から文句を言われることは決してないのだから、それだけでも抜かりなく手を打ってほしい。

 いま、東シナ海のガス田に中国が新たな機材を持ち込んでいる。抜け目のない世界は隙を見ればそこを徹底的に叩く。弱いところを叩くのは兵法の原則であり不正ではない。やられてから犬の遠吠えをするようでは、私たちの子孫に申し訳ないと、日本の為政者にはぜひ思ってほしい。
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