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仏作って魂入れずでは、日本は滅びる!

2011.01.14(Fri)JBプレス 高井晉


1、新防衛大綱と安全保障の基本

民主党政府は、2010年12月17日、新たな「防衛計画の大綱」(PDF)と「中期防衛力整備計画」(PDF)を閣議決定した。1976年に防衛大綱が決定されて以来、6年ぶり3回目の改定であった。

日本の外交・安全保障政策は、これまで継続して自民党政府が担ってきており、今般決定された新防衛大綱は、安全保障政策が不明確であった民主党政府が策定したことから、その内容が注目されていたところである。

 新防衛大綱は、日本の安全保障の基本理念として、次の3つを挙げている。

(1)日本に対する直接脅威の防止
(2)アジア太平洋地域の安全保障環境改善による脅威発生の予防
(3)世界平和と人間の安全保障確保への貢献

 その基本方針としては、次の4つを掲げた。

(1)統合的かつ戦略的な取り組み
(2)従来の基盤的防衛力に代わる動的防衛力の構築
(3)日米同盟の深化と発展
(4)アジア太平洋地域における多層防衛など

 自民党政府の基盤的防衛力構想、すなわち必要最小限度の防衛力の保持と武力紛争抑止のための日本領土全体への部隊配置構想は、民主党政府の動的防衛力構想、すなわち多様な事態や脅威に対して機動的に対処する構想へと転換された。

 新大綱は、基本方針の「統合的かつ戦略的取り組み」として、情報収集と分析能力の向上、および国連PKO(平和維持活動)への参加のあり方の検討に加え、国家安全保障に関して首相へ助言する組織の設置を掲げている。

すなわち、安全保障会議を含む内閣の組織・機能・体制などを検証したうえで、国家安全保障政策に関し、閣僚間の政策調整と首相への助言などを行う組織を首相官邸に設置するとした。

 安全保障会議や事態対処専門委員会など、既存の安全保障政策立案組織等を検証し、外交・安全保障政策を首相主導で総合的に策定する意思を表明したのであった。

 日本は、外交・安全保障に関わる政策策定にあたり、外交・安全保障戦略を欠いているとの指摘がなされてきた。

 新大綱で設置が構想された新組織の具体的内容は不明であるが、諸外国に設置されている国家安全保障会議に類似する組織が想定される。

 民主党政府は、新組織と国家戦略室との関係を明らかにしていないが、国家戦略と外交・安全保障戦略との連携を意図して外交・安全保障政策を策定する意図であれば、この決定は高く評価されよう。


2、日本の安全保障会議

 日本の安全保障会議は、「国防会議の構成等に関する法律」(1956年)に基づく国防会議に代わるものとして、安全保障会議設置法(1986年)により新たに設置された。

 安全保障会議の構成メンバーは、内閣総理大臣を議長とし、総務大臣、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣、内閣官房長官および国家公安委員長の9人である。

 内閣総理大臣は、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業調整計画の大綱、武力攻撃事態等への対処に関する重要事項、その他国防に関する重大事項、重大緊急事態への対処に関する重要事項について、安全保障会議に諮問しなければならない。

その後、2006年12月に防衛庁設置法が一部改正され、周辺事態への対処と国際平和協力活動が首相の諮問事項に追加された。

 安全保障会議の下部組織である事態対処専門委員会は、2006年6月、安全保障会議設置法の改正により設置された。内閣官房長官を委員長とする同委員会は、内閣総理大臣が任命する不特定のメンバーで構成される。

 例えば、武力攻撃事態対処法関連3法案が国会提出された2002年のメンバーは、以下の16人であった。

 内閣官房副長官、内閣危機管理監、内閣情報官、総務審議官、消防庁長官、法務省入国管理局長、外務省総合外交政策局長、財務官、財務省関税局長、経済産業省貿易経済協力局長、資源エネルギー庁長官、国土交通審議官、海上保安庁長官、警察庁次長、防衛庁防衛局長、統合幕僚会議議長。

 安全保障政策の中で最も重要な防衛政策は、一般に、国家的な安全保障戦略に基づく必要性があるにもかかわらず、安全保障会議は、外交・安全保障戦略を構築する任務がなく、ともすれば各省庁の縦割り的発想に陥りがちであった。

 国家レベルの外交・安全保障戦略構築が諮問事項にないという安全保障会議の実情に鑑み、首相官邸の機能を強化するシステムが求められていた。



3、諸国の国家安全保障会議

3.1 米国

米国は、早くも1947年に国家安全保障法に基づいて、大統領の直属の機関として国家安全保障会議NSC)を設置した。

 同会議は、安全保障政策の立案や関係省庁間の調整を任務とし、大統領、副大統領、国務長官、国防長官という4人のメンバーで構成されている。

 このほかにCIA長官や統合参謀本部議長などが陪席し、必要に応じて財務長官、司法長官、各分野の民間人専門家がアドバイザーとして招集されることもある。

 米国国家安全保障会議は、設立当初、陸軍長官、海軍長官、空軍長官も構成メンバーであったが、1949年以降は正規メンバーから除外した。

 同会議は、設立以来、歴代大統領の決定に必ずしも有効活用されなかったが、今日では、国家安全保障問題担当大統領補佐官が事務局を統括し、大統領の主導による外交・安全保障政策策定のための重要な機能を果たしている。

3.2 ロシア

 ロシア連邦大統領の直属機関であるロシア連邦安全保障会議は、ソビエト連邦基本法改正に関する連邦法(1990年)に従って設立されたソ連邦安全保障会議を引き継いだものであり、安全に関するロシア連邦法(1992年)によって、大統領府に設置された。

 ロシア連邦安全保障会議は、国防のみならず経済、社会、情報、生態系分野そのほかの戦略的対応が必要な問題について、大統領の意思決定を補佐する組織である。

 同会議はロシア連邦大統領を議長とし、常任委員は安全保障会議書記、首相、副首相、政府官房長官、国防相、外相、内相、対外情報庁長官、連邦保安庁長官、ロシア連邦大統領府長官、ロシア連邦議会下院(国家院)議長、ロシア連邦議会上院(連邦院)議長等の14名が、大統領令により任命される。

3.3 英国

 英国においては、従来、外交・安全保障政策について、内閣委員会が首相への助言や関係各省庁との調整や政策立案を行ってきた。

 平時には、首相、外相、国防相、財務相の4人がメンバーの「海外政策および国防委員会」が、有事には同委員会に代わる特別小委員会の「戦時内閣」が設置されてきた。

 しかし、内閣委員会はあくまで内閣の一組織であったことから、デビッド・キャメロン政権は、2010年5月、最初の改革として国家安全保障会議を設置し、行政府の執行能力を高めるため週1回のペースで同会議を開催している。

 英国国家安全保障会議の議長は首相であり、副首相、蔵相、外相、国防相、国際開発相の6人がメンバーとなっており、必要があれば参謀総長(CDS)、合同情報委員会(JIC)議長、各インテリジェンス機関の長官が会議に招集される。

 同会議は、政府が取り組む政策策定に当たって、政治主導で優先順位を設定する最重要な政府機関として位置づけられている。

 英国では、「国家安全保障戦略」が毎年作成され、具体的な戦略計画を検討する「戦略防衛及び安全保障見直し:不確実性の時代における英国の安全確保」が5年ごとに作成される。

3.4 ドイツ

 ドイツの政権与党のキリスト教・民主同盟は、2008年5月に政策綱領を発表し、ドイツの安全保障の中心的戦略目標として、次の5つを掲げた。

(1)テロリズムとの戦い
(2)大量破壊兵器拡散防止と軍縮推進
(3)エネルギーと原料供給の確保
(4)気候変動の結果の解決
(5)紛争の防止と拡大抑止

 そのうえで、かかる戦略目標を迅速かつ統一的に追求するために、国家安全保障会議による効果的な安全保障政策を実現することを謳っていた。

 また同綱領は、政治的な分析、調整および決定の中心となる国家安全保障会議の任務として、次の3つを挙げている。

(1)ドイツ国内外のあらゆる脅威について包括的かつ省庁の枠を超えた分析
(2)外国における民生上・軍事上の危機の解決と防止の調整
(3)適切な防衛措置と緊急事態計画および郷土防衛隊の出動調整

 ドイツ連邦議会は、同綱領に掲げられた国家安全保障会議の設置に関して審議したが、結論に至らなかった。

 諸国の国家安全保障会議は、それぞれの国情と政治事情に応じて発展してきたものであるが、米国のそれを除いて、冷戦終焉後になって設置される傾向にある。

 諸国は、冷戦終焉後の多様化する国際安全保障環境に対応するため、長期的かつ総合的観点から国家戦略に基づいた、外交・安全保障政策策定の重要性を共通認識としていたと言える。

 

4、安倍構想の国家安全保障会議

 日本の外交・安全保障政策は、従来、国防と重大緊急事態その他重大緊急事態という極めて限定された諮問事項を有する安全保障会議に加えて、内閣官房、外務省防衛省を中心に立案し決定されてきた。

 しかし、幅広い外交・安全保障上の課題について、総合的かつ戦略的に政策を企画立案する体制を欠いていた。

 長期的視野に立った外交・防衛政策を立案するうえで必要な、外交・安全保障戦略が構築されてこなかったと言えよう。

 自民党安倍晋三・元首相は、このような状況を改善する目的で、2006年11月、「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」を設置した。

 安倍元首相は、日本の国家安全保障会議の設立を念頭に、制度上は英国の内閣委員会を模範として、役割や権限は安全保障政策の企画立案まで行う米国国家安全保障会議型を一部導入する構想であった。

 首相を議長とする同官邸機能強化会議は、内閣官房長官、国家安全保障問題担当の内閣総理大臣補佐官、その他11人の民間人有識者メンバーで構成され、翌年2月に最終報告書(PDF)を提出した。

 同最終報告書は、次の3つを提言していた。

(1)国家安全保障に関する司令塔の機能を強化すること
(2)大局的な観点に立った議論を行う国家安全保障会議を内閣の下に創設すること
(3)機動的かつ実質的な議論を行うために恒常的な事務局を設置すること

 安倍構想の国家安全保障会議のメンバーは、内閣総理大臣(議長)、内閣官房長官、外務大臣、防衛大臣の4人とし、議長が必要と求めるときは、他の関係閣僚をメンバーとして参加させるとした。

 安倍構想によると、国家安全保障会議の会合は少なくとも月2回とし、同会議の審議事項は次の3つを基本方針とした。

(1)外交・安全保障の重要事項に関する基本方針(国防の基本方針、防衛改革の大綱を含む)
(2)複数の省庁の所掌に属する重要な外交・安全保障政策
(3)外交・安全保障上の重大事態(武力攻撃事態等その他重大緊急事態を含む)への対処

 なお、既存の安全保障会議の諮問事項については、引き続き同会議で審議を行うこととし、事態対処専門委員会は、その機能を強化して、国家安全保障会議の下部組織に位置づけた。

 安倍構想の国家安全保障会議は、資源・エネルギー、海外経済協力、経済外交などの問題については、専門的な見地から議論を深めるため、同会議議長が必要を認める場合、閣僚級その他の専門家会議を設置することにした。

 また、大規模災害、テロ、ハイジャックなどへの対応については、通常の緊急事態対処体制で適切に対処できない場合、国家安全保障会議で審議することもある。

 さらに、首相に常時アクセスして緊密に意思疎通するために、国家安全保障問題担当の内閣総理大臣補佐官の新設を盛り込んでいる。

 国家安全保障会議に関する安倍構想は、日本の外交・安全保障戦略の欠如および安全保障会議の限定された諮問事項など、日本の外交・安全保障政策策定上の実情を踏まえて、国家安全保障会議の任務や構成を具体的に提言しているだけに、高く評価されるべきものであった。

 かかる安倍構想を実現するため、2007年4月、「国家安全保障会議設置法等の一部を改正する法律」案が国会に提出されたが、残念ながら衆院で継続審議となった。

 さらに福田康夫内閣は、同年12月、既存の安全保障会議が機能しているとの理由で、国家安全保障会議の設置を断念したのであった。



5、「新組織」の課題

 新防衛大綱で設置が構想されている「新組織」は、具体的な内容は不明であるが、諸外国や安倍構想の国家安全保障会議と大きく異なるとは思えない。

 冷戦終焉後の国際的な外交・安全保障環境はめまぐるしく変化しており、沖縄米軍基地問題、尖閣諸島防衛問題、北方領土問題、レアアース問題、北朝鮮の核・ミサイル開発問題、その他多くの外交・安全保障問題に対し、国家的な外交・安全保障戦略に基づいて中長期的視野に立った判断と政策策定が必要であることが分かる。

 国防問題は最も重大な外交・安全保障問題であり、国土の防衛のみならず、国連PKO等の国際平和協力活動など非伝統的な軍事力の活用においても、実働部隊である自衛隊が果たす役割は大きい。

 防衛大綱や中期防衛計画の構築に際しては、外交・安全保障戦略に基づく必要があり、今般の新大綱で採用された動的防衛力構想や自衛官1000人削減などが、確たる国防戦略に基づいたものであれば、多くの国民に支持されよう。

 韓国国家安全保障会議は、米国のそれをモデルに設置され、大統領を議長に、国務院総理、外交通商長官、統一部長官、国家情報院長のほか、大統領が定める若干のメンバーで構成されている。

 盧武鉉大統領時代の国家安全保障会議は、特殊な情報分析と意思決定により、それまでの政権が継続してきた外交・安全保障政策を大幅に変更して反米・反日政策などを決定したため、次の李明博政権は、何よりもこれらの国との関係修復に意を注ぐ必要があったという。

 米国や英国そして安倍構想の国家安全保障会議は、実質的な審議を行うため、少人数のメンバーに限定されている。

 新防衛大綱における「新組織」の構成メンバーは、外交・安全保障戦略を審議するのに相応しい、適切な国家観や歴史観を持った見識ある人格者でなければならない。

 政権交代があった場合、内政問題はともかく外交・安全保障政策は、関連する諸外国との関係を覆すような大幅な変更は望ましくなく、一定の継続性が維持されている必要がある。

 「新組織」に事務局を設置する場合は、危機管理と危機対処時の状況判断に関して専門的知識や実務経験を有する少数精鋭のスタッフを置き、外交・安全保障戦略の構築にあたらせることが肝要である。

 さらに「新組織」は、戦略情勢情報の収集や分析、実行可能な戦略計画の策定、公正な戦略評価など、一貫した合理的な外交・安全保障戦略の策定を可能としなければならない。

 「新組織」においては、これらに熟達した優秀な自衛官を配置することも考慮する必要があろう。

 いかに理想的な「新組織」を設立したとしても、その運用に魂が入っていなければ全く無意味なものとなることを銘記しなければならない。

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白熱激論! 電子教科書は日本を救うか 第5回

2011年01月12日(水) 現代ビジネス 田原総一朗

田原: 愚問かも知れませんが、パソコンで文章を書くようになった。手紙を書くようになった。するとみんな漢字が書けなくなった。ITになるとそういうことが起きません?

孫: ある意味での退化と進化だと思います。要するに漢字が書けないというのはある意味での退化なんですけども、逆に言うとそれも進化だと僕は捉えている。

田原: もっと言うとね、今の退化の典型は携帯電話なんです。

 新聞記者は政治家への取材を携帯ですませる。フェイス・トゥ・フェイスで会いに行かない。で、(政治家も)携帯で返事するのはいい加減な返事なんですよ。そんな話を新聞に書いちゃう。便利になると、みんな苦労しない。そのかわりでどんどん退化するんじゃないかと思うんです。

孫: いや、それは両方だと思うんです。要するに、携帯の前の時代に電話を使っていても「人間が目と目を見て話をしないとダメだ」と言われていた。でも目と目を見て話せる一日あたりの回数、人数って何人ですか。

 それに対して、電話が出来ることによって、しゃべれる人の数ははるかに増えた。メールが出来たり、ツイッターが出来たりすると、はるかにコミュニケート出来る人数が増えた。しかも双方向で。

 だから便利になって効率を上げていく部分と、たまにはこうやってお会いして目を見ながら雰囲気を見ながら、場合によっては拳骨の届く範囲で、という緊張感のなかで・・・(笑)。

田原: そう。拳骨の届く範囲っていうのは大事です。唾を掛けてね。唾が掛かるのが大事。

孫: 大事。

田原: 要するに、携帯じゃ唾は掛けない。

孫: だからそれは急所でやるべき。

田原: え?

孫: 急所。

田原: ああ、急所。

孫: 要するに、いつもそれではなくて、ここぞという急所のときに、「やっぱりお会いして話をしましょう」というトドメを刺す。そこはやらなきゃいけない。

田原: 孫さんもそうしてらっしゃる?

孫: 僕もそうですよ。だから僕は毎月海外に行っていますもん。

田原: それを聞いて安心した。やっぱりフェイス・トゥ・フェイスって大事なんだ。

孫: 大事ですよ。だから時間の効率は悪いですけど飛行機に乗らなきゃ行けないけど、毎月アメリカに行ったり中国に行ったりシンガポールにいったり。それは目を見てフェイス・トゥ・フェイスで。

田原: やっぱりそこが一番大事なところですね。僕はITに反対じゃない。電子教科書も反対じゃない。だけど、効率がいいもんだから、だんだん教師がサボタージュして、手抜き手抜きになるんじゃないかというのが心配なの。

 

 

◇日本の先生は雑用が多すぎる!


孫: そこでね、ちょっと面白いデータがある。

 小学校の先生方が生徒に直接指導するために費やしている時間のパーセンテージは、実は全体の37%なんです、日本は。

田原: あとは何をしているの。

孫: あとは点付とか事務連絡とか明日の授業の準備とか、そういうことに残りの63%を費やしている。で日本の先生方は、労働時間は結構長い。

 だから労働時間は割と長くて、過酷な労働をしているんだけれど、授業というものに費やせる時間は約40%。他の国々と比べると、かなり低いんです。

田原: つまんない仕事をいっぱいしているわけだ。

孫: そう。身体はいっぱい使っているんだけど。

 アメリカですら57%、韓国は50%です。つまり50~60%を授業に費やしている。日本は直接指導に当てられるのは37%です。

田原: 雑用が多すぎるんだ。

孫: そう、雑用が多い。だから点付けなんていうのはね、電子教科書で自動的にやりゃあいいじゃないか。先生が時間を割くのはそこではなくて、赤ペン先生のように、手取り足取り指導をするところ、あるいは「正解率の低い問題については明日の授業でさらにもう一回復習しよう」とか、ディスカッションをしようとか、そういうふうに科学技術で出来るところは出来るだけ端折りましょうと。

 さっきの電話もそうです。事務連絡的なところ、あまり感情を伴わなくてもすむようなところは機械を使ってやりましょうと。で、肌で見て、抱き合ってやるようなところは、はやりハイタッチ(人間同士の触れあい)で。だからハイテク&ハイタッチだと。

田原: 両方必要だと。

孫: うん。だから仕事もハイテク&ハイタッチ、教育もハイテク&ハイタッチ、医療もハイテク&ハイタッチですよ。

 で、シリコンバレーの人たちほど、それぞれの自宅にプールがあって、庭には緑がある。一件当たりの自宅にプールがある率は、シリコンバレーが一番高いんじゃないですか。

田原: カネを稼いでいるから。

孫: カネを稼いで、仕事場に行ったらハイテクだらけ、家に帰ったら庭の緑とプールと家族とバーベキュー。

田原: 家にはハイテクはないわけ?

孫: あります。家の中でもそのハイテクでチャッチャッとこなして、で、あとは家族とバーベキューしたり歌を歌ったりというハイタッチの生活です。仕事の生産性はハイテクで徹底的に生産性を上げて、土日は家族とわーっと過ごす。そういうふうにものすごくメリハリがある。アートを愛するし、健康を愛するし。
 


◇教育と格差社会!


田原: それは分かるけど、シリコンバレーでプールを持っているのは国民のごく一部で、アメリカの平均年収は日本よりも低い。それに貧しい層は日本よりもはるかに多い。

孫: そうです。それは3億人以上いて、世界中から移民も積極的に受け入れているから、トータルの平均年収はそういうことなんですよ。ところがいわゆる教育をきちんと受けて、純粋なアメリカ育ち、アメリカ人という家族はやっぱり(年収が)高いんですよ。

田原: それが問題です。きっと孫さんはそうおっしゃるけれど、みんなはそうは言わないでしょう。そんな格差があっていいのか、っていう話になっちゃう。

孫: おっしゃる通り。これがね、逆に思想の部分なんです。思想の部分として、日本は丸ごと、手をつないで赤信号に向かっていく、手をつないでみんなで沈みましょう、というふうになって、日本全体が世界の格差社会で沈むか・・・。

田原: 今はそうなりつつあるんですよ。

孫: あるんですよ。だから競争を嫌うこと、国内のなかでの格差を嫌うこと、頑張ろうとする者・競争で抜きんでていこうとする者の足を引っ張ることが、格差社会の是正になると勘違いしている人が多い。

田原: それが教育だと思っている人がいる。

孫: そう。格差社会反対といって、上に行っている人を引きずり下ろそうとする。教育もそうです。成績のいい子どもを引きずり下ろしてイコールにすることが格差のない教育だと思いこんでいる部分に問題がある。

田原: そうじゃなくて、下の人を上げろと。

孫: 下を上げる。下を上げて、上はもっと行けと。上がもっと行くと、さらに平均もそこに追いつこうと頑張る。

 日本のシンクロの有名な鬼コーチである井村雅代さんはすごい。一度あの人を取り上げたNHKか何かの番組を見て驚いたんです。

 シンクロで全員で足をビッと上げなきゃいけない。そのときに一番能力のある選手は足が先にピャッと行く。それで真ん中くらいのレベルの選手は少し遅れていく。落ちこぼれはさらに遅れて足が上がる。さてそのときにです。シンクロは全員が揃わないとダメなんです。全員が揃わないといけない。格差ゼロの足上げにするためにどうするか?

 一番能力があって最初にピッと足を上げる選手に、「お前早すぎだ、ええカッコすな」と言って0・1秒遅らせる、ということでシンクロさせることもできる。合わせやすい。

田原: でもレベルは落ちる。

 

 

◇教育にとって社会のニーズとはなにか!

孫: その代わり平均に合うわけです。でも井村さんは違う。平均に合わせてシンクロさせるのではなく、一真ん中の選手の尻を叩いて「一番早い選手に合わせろ」と、一番落ちこぼれの選手には「泣いても合わせろ」と言って一番スゴイやつに合わさせて残り全員を引き上げるというのがあの人の方針なんです。

田原: 今の教育の方針は、一番出来るやつは放っておくんですよ。勝手にやれと。

孫: そう。一番出来るやつには「お前、出来すぎだから、次の次のページのことを聞くな。自分ばっかり先走るな」と言って頭を叩く。それだからやる気をなくすわけです。

 僕なんか二週間で、高校三年分をアメリカで卒業したんですから。こんなの日本では、「早すぎた」と叱られますよ。

田原: (会場に向かって)ねえ、これに反論のある人? 「違うぞ」という人、手を挙げて。

質問者 反論かではありませんが、今この会場で議論を聞いていると、電子教科書導入で二つの問題があると思うんです。一つはミクロの問題で、電源がどうなっているとか、電子教科書が入ってきて学校がどうばたばたするかといった問題と、それと大きな社会の問題があると思うんです。

 教育というのは方法で、どういう生徒を育てるか、社会のニーズに沿ったような生徒を、先生方は真面目に一生懸命社会に送り出すのが務めだと思って日々頑張っているわけです。

 その社会がものづくり中心だったり、それから世の中の考え方として、学歴社会というのがあったり、受験戦争で暗記型の受験問題だったりすると、せっかくいいデジタルの教科書が入っても、それを使いこなしている子どもたちが社会に出たときに、社会と上手くやっていけないというか、そういう・・・。

田原: ちょっとあなたに聞きたい。社会のニーズって何ですか。

質問者D ですから今の日本の社会のニーズっていうものが、たとえば学歴社会というものであるとしたら、そういう社会のニーズに沿った生徒を育てるというのがやっぱり・・・。

田原: じゃあ、「あんまりいい大学に大学に行くと思うな」と?

質問者D 子どもたちがいい大学に入りたいと言えば、暗記型の受験問題であれば、それに沿ってやります。「情報」という授業がありますけど、ある進学校では情報の時間にパソコンを使わないで数学をやらせたりということが過去にあったわけですよね。そこらへんの歪みっていうものがあって・・・。

田原: ちょっとごめんなさい、今、孫さんに代わって言う。さっき孫さんがおっしゃたのは、今の大学がなっていないということもある。

孫: そうです。

田原: アメリカの大学は、どっちかというと入学は易しい。でも卒業が難しいんだよね。日本の大学は入学試験ばっかり難しくて、卒業は楽なの。なぜか。単純に言うと、「大学教授がサボりたいから」。そこを直さないといけないと孫さんは言っている。

孫: で、大学教授はどこかの役所のナントカ委員にばかり出ている。

田原: そう。だから東大の教授はノーベル賞を貰えないんです。京大は(霞が関から)離れているから、文部省やなにやらの審議委員とかになれないから、一生懸命勉強してノーベル賞貰っている。まあいいや、これは余計な話。

質問者 だから教育だけを変えるとかそういうことじゃなくて、それはデジタル教科書を入れるとしたら、もう日本の国全体で、「IT立国を作るんだ」という取り組みがなくちゃいけない。

田原: だから最初にクラウドっていう話を孫さんにしてもらったんです。これはもう社会が全部変わるんだと。



◇教育にとって一番大切なのは「思想」!

孫: まず最初の簡単なほうの質問からお答えしますけど、たとえばこのiPad---まあ僕はiPadを売っているからiPadばかり言っていて怒られるかも知れないけれど---アンドロイド・パッドもこれからどんどん出てきますから。

 これが、10時間電池が持つわけです。つまり学校で勉強している間くらいは家で充電しておけば一日まるまる大丈夫です。さらに今でももうすでに10時間持つわけですから、これが20時間、30時間になると。それから充電するのに家で忘れても、学校で充電くらいは出来るでしょう。そういう問題は技術で簡単に解決出来る、短期的な問題です。

 見せる字がきれいだとか汚いとか、速度が早いの遅いの、ソフトがいいの悪いの、コンテンツやアプリケーションがいいの悪いの、これは短期的な問題だから、さしたる問題ではない。

 一番大切な問題は今二番目にお聞きになられた思想の部分ですよ。要するに生徒に何を教えるのか。それは国家の方針、国家のビジョンがあって、そのこれから30年後、50年後、100年後の日本の天下国家をどうしたいんだと。これを日本のリーダーが語らなければいけない、総理大臣が語らなければならない、文科大臣が語らなきゃいけない。

 ということで、今の政治家の先生方に一番求められていることは、来年のマニフェストどうするかとか、再来年の選挙どうするかという次元のことではなくて、30年後の日本の天下国家をどうするんだ、50年後の日本の天下国家をどうするんだと語ることです。農耕社会から工業社会になって、どうかすると政治家の議論がまた農耕社会に戻りそうな議論をすぐしたがる人がいる。

 選挙のたびに長靴履いて田んぼに入って票取りをしたい。そればっかりがまた日本のNHKだなんだで流れる。選挙の前になると、必ず墓参りと田んぼで長靴を履く。そうするとなんか「あの人は立派な政治家だ」と。それって日本の社会全体をまた農耕社会に戻したいのかと。(農業・漁業は)GDPの2%ですよ。それで日本の天下国家が支えられるますか。

 そこからせめて工業化社会だし、工業化社会も今から30年たったら絶対に組立業では成り立たない。だから頭脳革命、情報革命のところに子どもたちを送り出さないといけない、そういうIT立国をしようというビジョンが必要です。

以降 vol.6 へ。(近日公開予定)

白熱激論! 電子教科書は日本を救うか 第4回

2011年01月06日(木)現代ビジネス 田原総一朗

田原: ずっと以前に孫さんにお会いしたときに、あなたが非常に重大なことをおっしゃった。私はそれが焼き付いているんです。

孫: 何ですか?

田原: 2018年頃にはコンピュータ・チップの容量が人間の脳細胞の容量を超える、とおっしゃってました。

孫: さすが! まさに2018年、そう言っています。よく覚えておられましたね。

田原: 今までは人間が問題を出してコンピュータに解かせてきた。ところが将来はコンピュータが自ら問題を出せるようになる。そうなると世の中は根底から変わるとおっしゃた。

孫: ええ。変わるんです。

田原: 具体的にはどう変わるのですか。

孫: 人間の脳は、脳細胞の中にあるシナプスが「くっついた」「離れた」の二進法で動いている。みなさんが今この話を聞いて、「すごいな」とか「バカ言ってるな」とかいろいろ思っておられるのも、すべて二進法で考えているわけですね。つまり脳細胞のくっついた、離れたの組み合わせで、すべてを記憶したり考えたりしている。この数が300億個あるわけです、人間の頭の中に。

 コンピュータのチップに入るトランジスタ、これも二進法です。人間の頭の二進法と同じトランジスタ、これが300億個を超えるのはいつか、ということを20年前に僕が推論で計算した。そうしたら2018年だという答えが出たんです。

 で2年前にもう1回検算した。やっぱり2018年だった。つまりその後の20年間の進化はやっぱり予想した通りだったということですね。

 2018年に人間の脳細胞に追いつき、じゃあ、そのあとどうなるか。そこから30年間で人間の脳細胞の100万倍になるんです。

田原: じゃあ人間、いらなくなるじゃないですか。

孫: いらなくはならないんだけれど、いわゆる丸暗記というのになんの意味があるんだということになる。検索するよりも答えが早く出てくる。

田原: 検索するよりも早いんだ。

孫: つまり検索は指でやるでしょう。

田原: 人間が入力したするする必要がないんだ。

孫: ええ。要するに頭の中で、「あれはなんだろう」と思った瞬間に答えが頭に浮かぶ、目に浮かぶ、あるいはディスプレイに出る。

 つまり人間の細胞っていうのは頭と、たとえば指が神経細胞で繋がっていて、微弱な電流が流れているわけです。電流でその神経に命令をしている。つまり「人体内ローカルエリアネットワーク」です。脳と通信をしている。しかも通信の媒介は電流です。

 コンピュータのチップも通信をします。記憶は全部電流でやっている。同じ電流で、しかも二進法です。人間の脳細胞とまったく同じ役割です。

 ということはこのチップをですね、ペタッと額に貼る。そうすると、ペタッと貼ったチップと脳が通信をして、思い浮かべたこと、あるいは自分の記憶の延長として、「外脳」がチップに入る。人間の左脳、右脳に対して、外脳のチップ、これが人間の脳の100万倍の容量を持つようになる。

 

 

◇「ソフトバンクはテレパシー・カンパニーになる」!


田原: そうするとたとえば僕がペタッと貼っておき、孫さんがペタッと貼っておくと、僕が思ったことを、僕がしゃべらなくても孫さんは分かってしまう?

孫: そうです。

田原: 「田原はこんなことを今思っている」と。

孫: そうです。

田原: 「こいつ俺を殺そうと思っている」な、なんてわかる。

孫: そう(笑)。チップを貼って、これ"チップ・エレキバン"。

会場 (笑)。

孫 僕のチップ・エレキバンと先生のチップ・エレキバンが無線で通信する。これをテレパシーと呼ぶ。

田原: 本当のテレパシーだ。

孫: 本当のテレパシーです。だから「今から30年後のソフトバンク、何をやっているの? 300年後のソフトバンク、何をやっているの?」というなら、「ソフトバンクというのはテレパシーカンパニーだ」と言えるかもしれない。

田原: テレパシーって言うと今は超能力だけど、そうじゃない。コンピュータが実際にやっちゃうわけだ。

孫: 科学的にやる。だからそういう時代がくるんです。

田原: ちょっと待って。今、体を使う機会が減って筋肉をがだんだんいらなくなっているでしょう。そういう時代だと、脳もいらなくなるんじゃないですか?

孫: いるんです。ますますいります。

田原: そこを聞きたい。

孫: 何でいるか。単純な記憶は外脳のチップ・エレキバンに入れておく。単純な記憶はそこから検索する。それをベースに、それを材料としてどう使うか、それをイマジネーションする、想像する、クリエイティブする、それが人間の脳の役割です。

 だから人間の脳というのは、よりアートだとか、哲学だとか、愛だとか、その問題解決、提案能力、企画能力として必要なんです。

 いまのアップル社に例えていうと、組立業ではなくイノベーション、デザインを行う企業になっているでしょう。そういうことですね。

 

 

◇コンピュータが人間を超えるとき!


田原: コンピュータには創造性というのはないんですか。

孫: いずれ出てきます。

田原: 2018年くらいにはまだそういう能力は人間にあって、コンピュータにはない?

孫: そうです。

田原: そっちが出てきちゃったら、ホント、人間いらなくなっちゃう。

孫: でもね、いずれ出来るようになります。いずれ出来るんだけれど、その彼らと人間が、ある意味、競い合いながら、でもある意味、融和しながら進化するという時代が、今から100年後にはくる。おそくとも200年後にはくる。

田原: 100年後は孫さんいない。しかし少なくとも20年後はまだ健在だ。その後はコンピュータが超えちゃうわけだ、人間を。

孫: チップの能力は、ですよ。まだソフトの能力は遅れてますから、そこまで若干の時間の余裕はある。でもこれは時間の問題です。人間を超えていくのは間違いない。

田原: そうするとソフトバンクのやっていることもだいぶ変わりますね。

孫: 変わりますよ、変わりますよ。だからまさにそういう意味で教育の内容を変えなきゃいけないということなんですよ。

田原: よく分かる。

孫: 要するに丸暗記中心で、問題を解くよりも大切なことがある。人間の100万倍も計算速度と記憶容量のチップがあったら、そんな付加価値の低いことやってどうすんの、と。

 

◇製造業はどこへ行ってしまうのか!


田原: 今日は教育関係を中心に100人以上、この会場にはいます。せっかくなので2~3人質問を聞いてみよう。

孫: いいですよ。

田原: (会場に向かって)何か孫さんに聞きたい、ってことあったら・・・。はい、女性の方。

質問者A 1番最初にお話のあったことについて伺いたいんです。アップルの社長が「自分の社員には単純労働のようなことはさせられない。イノベーションだ」と言って、組立作業をどんどんどんどん違うところ、たとえば台湾にほうに製造業を回していった。では、世界中の人たちがイノベーションに目覚めたら、製造業はどこに行ってしまうんでしょうか。

孫: まぁ、最後はロボットになります。組立業の最後はロボットになる。ロボットがロボットを組み立てる、ロボットが自動車を組み立てるというふうに最後はなります。でもそうなる少し手前は、日本よりも10分の1の賃金で労働者を使える国々に移っていきますね。それが中国でありインドでありメキシコであり。

田原: ユニクロの柳井(正・ファーストリテイリング会長兼社長)に会ったんだけれど、今ユニクロは中国で生産しているわけ。だから安い。売れる。

 で、「もう中国から、そろそろ次はバングラデシュに行く。で、バングラデシュで生産してもらって、中国で売るんだ」と。こういうことですよね。

 

孫: そう。おっしゃる通りです。

 だから要するに、日本の労働人口というのは6000万人くらいしかいない。会社に例えて6000人社員がいるとします。この6000人の社員に何をさせるか。より付加価値の高い、1人あたりの賃金の高い、よりやりがいのある仕事に6000人をシフトするか、より賃金の低い単純労働の組立業で中国と闘うか、バングラデシュと闘うか。どっちが社員にとって幸せかということです。

 これから付加価値の低い、賃金の低い単純労働の組立業に向いた労働者を先生方がどんどん再生産していく、そういう労働者をこれから6000万人作っていくということになると、その子たちの将来はどうなりますか。先生方の罪が1番重いということになるわけですよ。

田原: つまりバングラデシュや中国で出来るようなものと同じ仕事をしている人は、バングラデシュや中国と同じ賃金になるんですよ。

孫: そういうことなんです。だから「格差社会反対」って言うけれど、格差社会に反対ならば、世界的な格差社会の中で、より日本全体が墜ちこぼれになるか、その大きな格差社会の中で日本全体を上位の側に持っていくか、これが教育の基本理念、思想の中にないと・・・。これが国家戦略だと思うんですよね。

 

 

◇「電子教科書の金は誰が出すんですか?」


田原: じゃあ、次の人。はい、あなた。

質問者B 電子教科書が導入されたとして、現場はどうなるんでしょうか。僕は群馬県のある村の中学で教師をやっているんです。そこはおカネとしては全国でも3番目くらいに教育の備品を購入出来るという状態にあるんです。

 ところがパソコンに関しては、僕は国語の教師なんですけど、「インターネットで検索して国語のレポートを書こう」という課題を出して、パソコン室に行ったんです。パソコン室にあるのは、ウインドウズXPで、そして全員でインターネットを使い始めたら全部落ちちゃった。で、子供たちはiとlの区別も付かない。

 つまり、たとえば電子教科書が配備されたとしても、積まれているだけの状態が出来てしまうんじゃないでしょうか。そこの部分をどういうふうにするのか。ハードが用意されてもまったく使いこなせていない現状があるわけです。そこをどうするのかっていうのが非常に難しいのかなと思うんですけど。

孫: おっしゃる通りですね。だから今までのやり方ではダメです。それは間違いない。つまり、パソコンを普段は真っ暗なパソコンルームに鍵をかけて入れているという状態がそもそも間違っている。

 すべての学生とすべての先生方のカバンの中に、ランドセルの中に1人1台、毎日いつでもどこでも持ち歩けるようにすればいい。ここにiPadがありますけど、こういう状態でどこでも持ち歩く。

 僕なんて今これ、風呂に行くのにもトイレ行くのにも、車の中でも旅行に行くのでも、どこでも持ち歩いている。ないと気持ちが悪いという状態ですよ。

田原: 孫さん、素朴な質問ですが、そのカネは誰が出すんですか。

孫: それはですね、それは逆に言うと、国家が出すべきだと思うんです。

 ちなみにこのiPadの配布は280円で出来ます。

田原: 280円! 1個? 今数万円するじゃないですか!?

会場 (笑)

孫: いやいや、これが月280円。

田原: あ、月ね。

孫: 1台月280円。これはすべての先生と生徒にはタダで渡すと。2000万台。

 小学校から大学生まで、専門学校や聾学校も全部含めて1800万人のすべての学生と、200万人のすべての先生方に全員タダです。会場のみなさんも「なんか今日はいいこと聞いた」って思いませんか?

 これは、月1万3000円の子ども手当の内数として、月280円分の現物支給とする。そして残り1万2720円を現金で支給する。つまり子ども手当の内数とすれば、新たに税金を投入することもない。今1万3000円子ども手当を渡していても、親のパチンコ代に消えている。

田原: そういう人もいるでしょう。

孫: なかにはね。

田原: うん。

 

文科省の役人の目が死んでいた!


孫: 1番大切なのは子どもの頭に投資する、日本の未来に投資することです。280円を内数として、全員にタダで現物支給で渡す。それで宿題の添削だとか、○と×を付けるくらいは自動でやらせる。

 むしろ先生方は、赤ペン先生の赤ペンの部分に力を入れて、生徒とコミュニケートする。ということにすれば、先生方の採点に使っている時間がぐっと圧縮出来てる。その時間をもっと知恵だとか知識だとか会話だとかディスカッションとか、そういうものに使えばいい。

田原: この話は文科省でやりましたか。

孫: 言った。

田原: 言ったらどうでした。

孫: 目が死んでいた。

田原: あ、死んでた。

会場 (爆笑)

孫: 「もうたいがいにせい」と僕は思ったね。

田原: もう1人行こうか。

 

◇農業はIT農業、漁業はIT漁業になる!


質問者C 孫さんはIT関連産業の労働者比率を3%から30%にしようという。でも産業自体がサービス化されることがたぶんポイントであって、IT産業でプログラマーとかエンジニアがたくさん生まれることはポイントじゃないと思うんです。

 医療の従事者とか教育従事者が(サービスの使い方を)分かっていればそれでいい。産業構造の比率というのはあまり関係ないんじゃないでしょうか。

 それと、子どもに対する教育のことです。彼らが勉強して20年、30年たって戦力になるときに、まさに決定権者が知識に乗り遅れていて(若者が)ストレスを抱えてしまう。当然海外に流れて流れていくだろう。そう考えれば電子教科書を使うべきなのは、子供ではなくわれわれ教える側のほうじゃないのでしょうか。

 結局、子どもに押しつけているんですよね。そうではなく、今われわれがもう少し学ぶ場というか、デジタル教科書を使って、そこからなにかを得て子どもたちに投資をするというプランのほうが、差し迫った現状を解決するソリューションになるんじゃないかなと、考えるんですけど、いかがでしょうか。

孫 「30%くらいがIT 関連だ」と申し上げましたけど、残り70%のほとんどの人もITを自分の本業で活用する、そういう時代になると思うんです。

 IT農業でありIT漁業でありIT流通業でありIT金融業でありITサービス業でありというふうになる。あらゆる産業の基本的基礎能力としてITを最大限に活用するということになる。僕が申し上げた「国民の総人事異動」というのはそういうことなんです。

 大人がITを使うのは当たり前ですけど、でもね、大人になって急に英語を勉強しようと思ったって、あんまりしゃべりきらないでしょう。僕は16歳の時からアメリカに行っているからある程度しゃべれるんですけど、僕が30歳になって中国語を勉強しようと思っても無理です。無理。

 だから言語で言えば、僕は小学校1年生から、少なくとも国語、英語、もう1つがIT 語。この3つの言語は早ければ早いほどいい。小学校1年生から、日本語、英語、IT語を教える。脳が少し固まってしまった後にいろんなあとにいろんなことを覚えようとしても無理です。応用が利かない。

 こういう覚えなきゃいけないことは、出来るだけ頭が柔らかいうちにやって、途中からもっと考えるほうに力点を擱くようにすべきだと。

 そういう意味で、「子どもに押しつける」という言葉は気にくわないので、押しつけるのではなく、子どもには「デジタル・ネイティブ」として生まれたときから、あるいは小学校の1年生、最初にあいうえおを書くときから、英語もIT 語も当たり前のように電子教科書を---最初に紙と鉛筆を使うかのごとく---使うというふうになるべきだと思います。

 

団結力で大手スーパーに対抗するボランタリーチェーン!

株式会社シジシージャパン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3

2011年1月14日(金)日経ビジネス 菊地 眞弓、WITH三波 毒夫 

WITH三波 毒夫(以下、三波) デフレにもかかわらず、売り上げを伸ばし続けているスーパーマーケットのボランタリーチェーンのCGCグループ(本部=シジシージャパン)を知っている?

菊地 眞弓(以下、菊地) 最近、知ってびっくりしました。全国に展開していますよね。

三波 おっ! 2009年7月の連載スタート時にはEDLP(エブリデイ・ロー・プライス=EveryDay Low Price)も知らなかった “買わない私”が、ボランタリーチェーンにも興味を持つようになったとは・・・。いろいろな小売店を視察して経験を積み重ねさせた甲斐があったものよのぉ~。

菊地 オタク、どちら様ですか(笑)。ある記者会見の帰り道で見つけたスーパーが、CGCグループでした。小ぢんまりとしていてレトロな外観に「LIQUOR WORLD」の看板が印象的で、迷わず入店しました。

三波 あぁ、酒に惹かれたのね。ショップの外観で流通が語れるようになったのかと思った(笑)。


加盟企業の総年商は4兆円を超える

菊地 「LIQUOR WORLD」は年始のせいか、店内が煩雑な感じで・・・。その前に生鮮品を扱う系列店があったので、こちらものぞいてみました。POP(店頭販促)に「三徳の『健農商品』とは・・・」「Santoku推奨品とは・・・」「三徳ブランド」そして「三徳セレクション」までありました。食品では筍の水煮、ハムやソーセージなど、飲料では牛乳やウーロン茶など、様々な商品に「CGC」マークがついていました。

菊地 気になったので、自宅に戻ってからウェブサイトで調べてみました。

三波 売上高、凄かったでしょ。

菊地 CGCグループに加盟している企業は全国224社で総店舗数は3685店舗、加盟企業の総年商は4兆1916億円となっていました(2011年1月1日現在)。私の住まいの近所にある成城石井や信濃屋食品も加盟していて、びっくりしました。

三波 総年商は、この8年間で約1兆円も増えていて、この不景気でも数年来、前年を割ったことはない。

菊地 総年商5兆円達成も、そう遠い未来ではないかもしれませんね。

CGCグループは、東京都新宿区に本社を持つスーパー三徳の貿易部が1973年に会社組織として独立したのが始まり。目的は、大手スーパーへの対抗だ。大手であれば大量仕入れによるNB(ナショナルブランド)商品の価格交渉やプライベートブランド(PB)商品の開発といった取り組みが可能だが、中堅クラス1社ではなかなか難しい。集まることで、マスメリットを手にしようというわけだ。

 CGCグループの2011年2月期業績は、本部総取扱高7527億円(前年比2%増)となる見通し。このうち、PB商品の売上高が2930億円(同5%増)で、売上構成比は7.5%(前期比0.4ポイント増)となる見込みだ。今後の中期経営計画としては、加盟企業の総年商を日本の飲食料品マーケットシェアの10%に当たる5兆円に伸ばすことを目標に掲げている。PBにも力を入れており、売上構成比で10%を目指すという。


加盟企業は大手から数店規模まで

 加盟企業は、数店規模から中堅に加えて、Olympicや成城石井(横浜市)、ラルズ(札幌市)、オギノ(甲府市)などの大手も名を連ねる。加盟条件については、加盟企業の規模などにより個々に異なる。最近では「地域で部分的には協業し、大手に対抗すべきだ」と考える地方スーパーが増えていることもあって、ほかのボランタリーチェーンからの乗り換えも多い。現在、CGCグループはボランタリーチェーンでは独り勝ちの状態となっている。

 ただし、既存の加盟企業と競合する企業の新規加入については、その加盟企業の了解を得たうえで、加盟企業で構成された「トップ会」の承認が必要となる。とはいえ、景気低迷や大手の寡占、外資系小売りの侵攻と、CGCグループを取り巻く環境は大きく変わっている。トップ会で加盟を否認した結果、加盟希望企業が大手に買収されては、巨大なライバルになりかねない。このため、最近はトップ会による新規参入障壁は下がってきているという。

 ちなみに、本部であるシジシージャパンは、お中元とお歳暮に加え、誕生日には花束が会社から社員の自宅に届くそうだ。静岡県御殿場市出身の三徳社長である堀内定良が私財を投じて、1964年に開いた仏舎利塔がシンボルの平和公園(御殿場市)は、外国人観光客に人気のスポットになっている。

菊地 CGCグループは、PB商品の開発に力を入れているようですね。

 

三波 PBは昔のような「安かろう、悪かろう」から脱したことで、消費者の節約志向もあって、生活の中に定着してきた感があるよね。ただ、最近のPB食品で食品衛生法により義務づけられている製造工場の表示が適切でないという問題が持ち上がったこともあり、小売業者とメーカーが共同開発して双方のブランド名が商品に記載される「ダブルチョップ商品」が加速する可能性も出てきている。

 現在、ABC分析でAランクに分類される商品(例えば調味料や調理油、小麦粉、砂糖など)は、既にPB商品が存在していることが多い。このため、それぞれのカテゴリーでAランク商品の次に来るBランク商品(POS実績)やブランドロイヤルティーが高い商品(大手製菓のチョコレートや大手製麺のカップ麺類など)から、ダブルチョップ商品の開発が急伸しそうだ。実際にCGCグループでも大手メーカーとコラボレーションしたダブルチョップ商品が徐々に増えているようだしね。

ダブルチョップ商品の例
CGC森永 ミルクチョコレート、ミルクココア
CGC日清 キャノーラ油 1000g
CGCキッコーマン  みりんタイプこってりん 1L
CGC明星 カップラーメン、焼きそば
CGCはごろも シーチキンNewマイルド 80g×3

 店舗やウェブで大々的に売り出しているダブルチョップ商品は、「CGCサントリー ゴールドブリュー」のようだ。1月15日までNB商品であるサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」と「金麦」を含む商品券が当たる「サントリー CGC 共同キャンペーン」が行われている。

 そういえば10年くらい前、僕が某小売の仕入れ担当だった時に、「CGCキャンペーンシール」のついた商品が店舗に納品されたことがある。この間違いをめぐって、問屋とひと悶着あったことを思い出すね。

菊地 それはたいへん!? でも、ダブルチョップ商品は「いつでも元のNB商品に戻せる」「特別レシピなどの開発が不要」といったメリットがありますからね。今後は、ダブルチョップもPBもそうですが、NBナンバーワン商品の類似商品から、品質や商品パッケージ、価格、容量などがもう一歩、地域の顧客ニーズに合わせた商品開発になっていくのかしら。


自由度が高いボランタリーならではの弱点

三波 CGCグループに加盟している地域スーパーは、店内調理の惣菜、地元仕入れの生鮮3品(青果・精肉・鮮魚)などで、独自性を持った差異化を進めている。バナナやサーモン、肉などの輸入品、PB商品(約1500品)、NB商品は集中買付してマスメリットを出し、大手との競争力をつけようとしているように見える。

 ただし、コンビニエンスストアといったフランチャイズチェーンのように厳密な契約ではないため、PB商品などの品揃えは各加盟店により大きなバラツキがある。徹底度という面で、マスメリットを生かし切るには大きな課題となりそうだね。

 CGCグループのガイドラインによると、「全国規模でまとまる取り組み 20%」「地区本部・支社単位でまとめる割合 60%」「各社が独自性を発揮する割合 20%」とある。この「2・6・2」の法則を目安に協業活動を推進しているが、市場規模縮小や外資の侵攻を考えると、「全国規模でまとまる取り組み 20%」を引き上げる見直しの時期が迫っているのかもしれないね。

菊地 ボランタリーチェーンは「自由度」がある点が加盟企業のメリットなので、その兼ね合いが難しそうですね。

三波 現在、加盟企業のトップ(東京都世田谷区)では、生鮮コンビニを大きくしたぐらいの店舗「下井草店」にて、1500のPB商品を中心とした売り場実験を行っている。CGCグループの自社PBだけでフルラインする品揃えも加盟企業にとっては大きな魅力になっているようだね。CGCグループのPB商品のうち、ABC分析中Aランクに入るものについては、既にイオンと同じ程度の販売力があるようだ。

やはりCGCグループである遠鉄ストア佐鳴台店(静岡県浜松市)や、コモディイイダ町屋店(東京都荒川区)も視察したが、「下井草店」とは対照的にCGCグループPB商品の取り扱いは少なく、来店客からはCGCグループがほとんど認知されていないようだったね。

菊地 近所にある成城石井や信濃屋食品の各加盟店舗でもCGCグループのポイントカードが使えるに留まっています。CGC商品が自然に目に入ってくることはありませんでした。いつも通っていましたが、グループ店としての認識がなかったのは店内で告知していないことにありそうですね。

 まぁ、加盟企業がグループとしてのメリットを享受していれば、特に顧客に認知される必要性は全くないのかもしれませんが。

三波 NB商品の共同仕入のメリットはあるからね。でも、指定問屋制度を打ち出しているので、地域の問屋と過去からの取引があるスーパーは、すべてを指定問屋からの仕入れに切り替えることは難しい。

菊地 そうなると、同じ商品でも取引条件によっては、別々の問屋から店舗に納品されることがある?

三波 そうだね。CGCの主催する商談会が主要メーカーごとに毎月~半年で1回あり、加盟企業は好条件で仕入れできる。ただし、この場合は、指定問屋からの仕入れに限定されることが多いようだ。PB商品やダブルチョップ商品などは、CGCがベンダー機能を担い、仕入れ数量などで原価条件が変動する。

 ダブルチョップ商品でCGCと取引するNBメーカーは、自社製品の取り扱いが必ずしも優位というわけでもない。ダブルチョップ商品で十分に売り上げを確保している加盟企業のバイヤーからは「NBは必要ないかもね」と言われることもあるそうだ。

菊地 それは厳しい・・・(汗)。


売り上げ拡大のカギを握る日用品

三波 CGCチェーンの現状の弱みは、日用品売り場かな。

菊地 そういえば、加盟各店でも目につきませんでしたね。

三波 ドラッグストアとの価格差もあり、加盟企業の店舗における日用品の優先業務順位は低い。日用品のターゲットでもある主婦層が買い物しているにも関わらず、言い方は悪いが「おざなり」の売り場が多い。

 現状でも日用品の売上構成比が5%を超える加盟企業は、全体的な売り上げも好調。売り場の品揃えがきっちり組まれていて、日用品のついで買いが日常化しているようだ。

菊地 高齢化に伴うワンストップショッピングのニーズもありますよね。仕事終わりの貴重な時間を有効に使いたいビジネスパーソン需要もありそうですし。

三波 現状が充実していないだけに、日用品の売り場は、「生鮮3品+惣菜」以外の全体の売り上げアップの鍵を握るとも言われている。

三波 「ウォルマート」「コストコ」「テスコ」など、流通分野でグローバル企業が国内でじわじわ侵攻する中、地域スーパーはローカルで最も力を発揮する「生鮮3品+できたて惣菜」を中心に独自性や差異化を打ち出そうとしている。それ以外の部分では、CGCグループのマスシナジー効果を活用することが今後の生き残りをかけた道になるかもしれない。

LikeaLittle
http://translate.

2011年01月14日(金) 現代ビジネス 鈴木仁士

「出会い系サービスが"現代風のソーシャル要素"を取り入れたらどうなるの?」

 そんな素朴な疑問に応えたのが去年の11月にサービスインを果たしたLikeaLittleというサービスです。リリース6週間後で到達したページビュー数は2000万PV。現在米国でも最も勢いに乗っているサービスの一つです。

 従来、オープンな出会い系サービスに見られた厭らしさを払拭するクールなインターフェース、そしてTwitter並みに活発な
ユーザー間のコミュニケーションが生まれているLikeaLittleは新たな「出会い系3.0」サービスと言っても過言ではありません。

  Facebook 同様のストラテジーで全米の大学で話題となり、12月にはY Combinator(シリコンバレーの著名エンジェル投資家チーム)からのバックアップも決まった当サービスの魅力、チーム、そして今後の展望を今回はご紹介したいと思います。

米国学生はFacebookだけではもう満足しない?

 LikeaLittleのコンセプトは非常にシンプルでストレート。それは「リアル世界で発見した魅力的な異性の特徴を共有するサービス」です。ウェブとは違い、現実ではいきなり相手に話しかけるためのコンテキストが薄いし、断られるかもしれない...そんなユーザーのためにLikeaLittleは「一目惚れのはけ口」を作っています。

 使用方法は簡単で、ユーザーは匿名でログインし、魅力的な相手を発見した際には相手の「性別」、「髪の色」、「発見した場所」、「その他の印象に残った点」を共有します。(この"その他"の欄がユーモアに富んでいて面白い)。

 そうすると、投稿されたポストに対して他ユーザーから共感のLikeやコメント、そして内容が攻撃的すぎる場合は、スパムとしてレポートされることもあります。

 この新しい形の情報交換がキャンパス内でブレイクし、現在のLikeaLittleユーザー層のほとんどが大学生で構成されています。当然かもしれませんが、授業やテスト期間中に暇潰しをしたい学生にとって「異性との出会い」の匂いのするサービスほどエキサイティングなものはありません。

 実際にLikeaLittleを使用する学生によると、このサービスが最近は"Facebookより全然使用時間が長い"そう。「もしかしたら自分のことが書かれているかもしれない・・・」そんな心理も働いて、LikeaLittleには毎日何百万人ものユーザーが訪問しているのです。

Facebookマーケティング戦略の成功!

 大学で爆発的にヒットする・・・このシナリオ、どこかで聞いたことがあるかと思います。

 そう、Facebook(以下:FB)の初期のスケーリングもまさに全米の大学を狙ってスタートされたのです。FBは東海岸のハーバード大学からスタートし、学生メールアドレス保持者のみが参加可能なプレミアム感と共に一気にバイラル化しました。

 また、先日公開された映画"ソーシャルネットワーク"では創業者のMark Zuckerberg氏も指摘していますが、初期のFBの成長を後押ししたのは、"交際ステータス(付き合っているか、独身かどうかを明記"の導入でした。

 健全な現実世界の友達との関係性をウェブに反映しつつも、少し「出会い系」な側面もあることからFacebookは学生にとってなくてはならないサービスになったのです。LikeaLittleは非常に上手く、この「Facebookマーケティング戦略」を踏襲しました。

 LikeaLittleは大学のキャンパスごとにWall(各個人のステータスが集まるタイムライン)を提供。その面白さが一つの大学キャンパスで流れると、その噂はFacebookで爆発し、まだLikeaLittleが導入されていない学校の生徒はそれが欲しくなります。

 そこで、大学に導入を希望するユーザーが率先してLikeaLittleに問い合わせをし、その後は「共同創業者」という役職で彼らがその大学のLikeaLittleのメンテナンス(攻撃的なコメントがないかチェックする等 etc )を行うのです。

 つまり、LikeaLittleはマーケティングコストを「ほぼ0円」で、全米の全大学へのリーチをかけています。Facebook上でのバズ、そしてリアルでの口コミによって彼らは学生にとって不可欠なサービスに上り詰めてきました。

2011年はオープンネットワークとクローズドネットワークが同時進行で進む!

 この急成長中のLikeaLittleを率いる創業チームは元GoogleとMicrosoftの経験豊富なチーム3名です。代表者のEvan Ries氏は、LikeaLittleを以下のように語っています、"LikeaLittleは大きなビジネスになるし、世界を変える。そしてその過程で多くの人々に影響を与えると思うよ"。

大学のキャンパスから爆発する新たなサービスの匂いがします。今後は米国の提携大学をさらに拡充し、Y Combinatorのサポートの元、出会い系3.0の代表サービスとしてLikeaLittleはキャンパス外にも進出を狙ってくることでしょう。

 2011年のウェブのトレンドとして、「人々の繋がりはさらにオープンになるのか? それともここからはクローズドなコミュニティーが主流になるのか?」という議論が盛んに行われていますが、自分は両方が同時進行で起こると考えています。

 Facebookが得意なソーシャルグラフ、これをこじ上げる様な面白いサービスが登場することによって私達のネットワークはさらに広がると同時に、その中でも特にコネクトしたい相手とはPathの様なクローズドなサービスで会話を楽しむ。

 そんな動きが2011年は見られるのでは? と自分はわくわくしています。google.co.jp/translate?hl=ja&sl=en&u=http://likealittle.com/&ei=_ZwvTYLIJ4SuvgP7_6CUCQ&sa=X&oi=translate&ct=result&resnum=1&ved=0CCQQ7gEwAA&prev=/search%3Fq%3DLikeaLittle%26hl%3Dja%26biw%3D1158%26bih%3D831%26prmd%3Divns

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