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スウェーデンにおける保健医療
http://www.swedenabroad.com/SelectImageX/6049/HealthandMedicalcare.pdf

根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B9%E6%8B%A0%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%84%E3%81%9F%E5%8C%BB%E7%99%82

患者にとっての価値を高める「VBHC」という考え方!

2011年2月18日(金)御立尚資

 費用対効果、コスト・パフォーマンス、投資収益率──。

 どれだけの「コスト、投資」(分母)をかけて、どれだけの「リターン、効果」(分子)を得るのか。ビジネスの世界では、この分母・分子の両面を見て、モノを決めていくことが当然だし、それをきちんと把握し、経営に活用していけるかどうかが、企業競争の成否を握る。

 ところが、ビジネスの世界を少し離れると、分子・分母のどちらかだけにフォーカスした議論がなされ、政策的な意思決定がなされていく、ということが、意外に数多く見受けられる。

 あるいは、両方を見ようとしても、きちんとしたデータに基づく議論にならず、立場の違いから水掛け論になってしまう、という例も多い。その代表例の1つが、医療サービスにかかわる規制の流れだろう。

「分子重視」と「分母重視」がせめぎ合ってきた医療の世界!

 医療の世界では、長らく、新しい薬、あるいは医療器具といった「イノベーション」をどう広く普及させていくか、ということが重視されてきた。

 新薬が出れば、それを保険制度の枠内で使えるようにし、製薬会社のマーケティング・セールス活動を通じて、多くの医師に使ってもらえるようにしていく。新しい手術器具が登場すれば、同様に医療器具メーカー、医師、保険制度の担い手、の3者が協力して、その普及を担っていく。

 重要なのは、「有効性(efficacy)と安全性(safety)という分子の側である」という思想に裏打ちされている。だから、「分子側重視パラダイム」と呼んでもいいだろう。

 このパラダイムは、医療サービスを提供するシステムと、それを支える保険などの保障・給付システムが整った先進諸国において、平均寿命の伸びといった形で、人々の生活に大きなメリットを与えてきた。

 しかし一方では、高齢化に伴う社会保障コストの増加、医療費そのものの高騰といった形で、多くの国で財政負担を大きく高める事態をもたらした。そのため、ご承知の通り、次のパラダイムへの移行が進んだ。すなわち、コスト効率(efficiency)を重視する「分母側重視のパラダイム」である。

 薬価の引き下げ、ジェネリック医薬品の利用促進、あるいは、疾病ごとの保険からの払い戻し額一律化(包括支払い)や診療報酬削減。こういった政策決定は、分母側をコントロールして、医療サービスの財政インパクトを減らしていこうということにほかならない。

 この2つのパラダイムのベースとなる考え方は、現在でも並存しており、「有効性・安全性(分子)」重視の立場と「コスト効率(分母)」重視の立場との間で、常に緊張関係が続いている。ただ、先進国の大部分では、財政悪化から、どちらかと言えば、後者が優勢な状況となっていることは間違いないだろう。

欧州で起き始めた新たなパラダイムシフト!

 一方で、この分子重視対分母重視の議論から抜け出て、もう一歩先のパラダイムを目指そうとする動きが、欧州を中心に始まっている。「Value Based Health Care(VBHC)」と呼ばれる、「患者にとっての価値」、すなわち医療サービスの結果とそのコストの両方を見よう、という考え方だ。

 VBHCの基本コンセプトには、2つの柱がある。

 まず、分子の側の見方を従来のパラダイムから変えるということだ。

 これまでは、実際の患者治療の結果ではなく、臨床試験の結果に基づき、新薬や新しい医療器具の導入が決められてきた。言い換えれば、分子側の主語は、科学者であり、製薬メーカー・医療器具メーカーになりがちで、患者を主語として結果を判断することとは、必ずしもイコールではなかった。

 また、「新しいもの=良いもの」という暗黙の了解があり、これまた必ずしも「(新旧にかかわらず)治療結果の高いもの=良いもの」ということにはならない。こういった課題を乗り越えるために、「患者にとっての治療結果が上がるか否か」を、分子を見る中核に据えるというのが第1の柱だ。

第2に、分母側を見る際に、単純なコスト抑制という立場ではなく、治療結果(=分子側)と合わせた形で、最も望ましい治療が行われるような「メカニズム」を取り入れるということ。

 日本でも、「クリニカルパス」という考え方が取り入れられるようになってきた。これは、各病院で病気ごとに「標準的な治療プロセス」を定め、一定のコストの範囲で、治療結果のパフォーマンスを上げていこう、というものだ。

 しかし、クリニカルパスの遵守率は各病院で大きなばらつきがあり、「標準化」の歩みは必ずしも順調ではない。また、クリニカルパスの内容も、いつ手術をし、どの程度入院させるか、といった「プロセス」中心のものになりがちだ。

 本来は、次のようなことが必要である。

・治療結果のばらつき、(治療プロセスだけではなく)治療手法の違い、の両面を見て、ベストプラクティスを洗い出す。

・個々の病院だけではなく、疾病タイプごとに病院の枠を超えて、ベストプラクティスを学び合い、患者にとっての「価値」最大化に向けて、一種の「カイゼン」を続けていく。

 これらを促進するような仕組みを作っていくことが、VBHCのもう1つの柱となる。

最先進国スウェーデンでの成果!

 では、VBHCの考え方に基づいた動きが最も進んでいるといわれる、スウェーデンの例を見てみよう。

 スウェーデンでは、1970年代から、さまざまな疾病に関して、「どのような治療がなされたか」「その治療結果はどうだったか」というデータの組織的収集が始まった。

 この疾病ごとのデータは、「レジストリー(Registry)」と呼ばれるが、うち22レジストリーでは全国の患者数の85%以上を網羅できるようになっている。

 このデータ収集のミソは、「学会を中心に、医師自身が“治療内容と治療結果をどう把握するか”という定義作りの中心となった」ということだ。

 当然ながら、病気とその治療方法によって、何を見れば、より正確に治療結果の良し悪しの判断につながるのかは異なってくる。ある場合は、一定期間経過後の生存率だろうし、別の場合には、再手術が必要となった患者数であったりする。

 治療内容と治療結果の定義次第では、データの意義が大きく損なわれてしまう。ややもすると、この定義プロセスが、行政や保険支払い者側を中心に行われ、医師の側からすると「データが信用できない」「活用する気になれない」ということになってしまう。

 プロフェッショナルたる医師の治療行為の中身、そしてその結果を、一定の合理性、納得性をもって測るためには、プロ自身が主体的にかかわることが不可欠だし、その後の活用促進にも役立つ。

 例えば、小児の急性リンパ性白血病の場合。レジストリーのデータ収集が始まるまで、この病気と診断された患者の5年生存率は、12%に過ぎなかった。

 その後、他の病院、医師の治療方法とその結果を、医師間で共有するようになり、データ収集開始後10年間で、生存率は47%に、そして、スウェーデン国内での標準的治療方法が確立されてからは、87~89%にまで上昇している。

 しかも、この標準的治療方法は、画期的な新薬に依存するのではなく、過去からあった薬の組み合わせで成り立っているのだという。

医師間の自主的なベストプラクティス普及の効果がよく分かるのは、次のグラフだろう。これは、ある種の目の手術をした後、後遺症として乱視が残るケースがあるのだが、手術前後の度数の変化(患者の平均値)を医療施設別に示したものだ。1995年から2007年の間に、度数の変化のメディアン(中央値)が半分程度に下がるとともに、医療施設の間のばらつきも縮小してきている。

メーカーの製造現場でのTQMの結果を表すグラフとよく似ているが、この場合と全く同様に、「きちんと測り」「結果を比較し」「ベストプラクティスを学び合っていく」ことで、ばらつきが減少し、全体としてパフォーマンスが上がる、という結果が出ている。

 患者の立場からすると、「最も治療効果の高い治療方法を、どの病院に行っても受けられる」ということの価値は非常に大きい。

 一生に一度しかかからないような病気、それに伴う手術、といった事態に立ち至った際、医療のプロではない患者からすると、自分が受ける治療が(少なくとも相対的に)効果が高いものかどうか判断するのは、困難だ。医師同士がベストプラクティスを学び合った結果、その確率が高まる、という仕組みが担保されていることは、患者の立場では、大きな安心材料であろう。

 

 

病院ごとの治療結果を一般にも公表して競争を促す!

 もう1つ興味深いポイントがある。スウェーデンでは、いくつかのレジストリーについて、病院ごとの治療結果を、プロの間だけの開示にとどめず、広く一般にも公表するようになった。

 例えば、心筋梗塞の治療について、一定規模以上の73病院の患者の1年後生存率が、1位から73位まで公表されている。当然のことながら、一番下の方の病院については、ローカルメディアなどで大きく取り上げられてしまう。

 ある病院は、73病院中68位だったのだが、この結果に危機感を抱き、上位の病院の治療手法ガイドラインを徹底的に研究、患者の状態に応じて、スペシャリストが対応できるようにする、スタッフの人員配分も見直す、といった手を打った。その結果、ごく短期間に、ランキングは45位まで上昇、1年後生存率は、実に50%も改善したという。

 さて、こういったレジストリー活用は、分母側、すなわちコスト抑制の効果をももたらしているのだろうか。詳細な検討はまだ途上ということのようだが、地域ごとに見てみると、ベストプラクティス活用度の高い病院が大部分を占める地域では、それ以外の地域よりも医療費が低い、ということは知られている。

 これまでのコスト抑制パラダイムの上に、VBHCのメカニズムを構築し、活用していくという手法が取られていることから、少なくとも、分母側が悪化することは避けられるはずだ。分子側の改善を考えると、患者にとっての価値(結果とコストの両面を勘案後)は明らかに、高まっている。

 こう考えれば、(きちんとした判断は、今後の検討結果を待つとしても)社会全体としてみれば、このアプローチは、社会コストと患者にとってのメリットの両面で、大きなプラスをもたらしていると判断してもいいような気がするが、いかがだろうか。

日本でも今こそ新たなパラダイムの模索を!

 もちろん、VBHCという考え方は万能ではない。レジストリー収集のコストもかかってくるし、あくまでデータは過去のものであり、ベストプラクティスも「現時点での」ものに過ぎない。

 しかし、行政や保険支払い者側の視点が中心となったコスト抑制策では、医療のイノベーションまで阻害してしまう懸念がある。一方、VBHCの仕組みを構築した場合、イノベーションの結果、新たなベストプラクティスが生まれれば、その活用を促進する方向に力が働く。

 「より良い」医療システムを作っていくうえで、一定のコストをかけてでも、プロが深くかかわって意味あるデータを収集し、それを徹底活用していく、ということは十分に検討に値するのではないだろうか。

 ようやく、本当にようやく、税と社会保障の議論が、ほんの少しだが進み始めたように見える日本。広義の社会保障コストの中で、相当な割合を占める医療サービスについて、今こそ、新たなパラダイムを模索していく重要なタイミングだと思う。

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