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暴力団関係者の献金問題がくすぶる中

前原誠司外相は3月6日夜、政治資金規正法が禁止している外国人から政治献金を受けていた問題の責任を取り辞任する意向を、記者会見で明かした。その直前に菅直人首相と首相公邸で会談、「国政を停滞させるわけにはいかない」と辞意を伝えたという。
 この献金問題は、京都市内にある前原氏の政治団体の報告書に、05年以降、同市内に住む在日外国人の女性から毎年5万円ずつ、計20万円の献金を受けたことが記載されていることから発覚した。
 それにしても、3月4日、この問題を参議院予算委員会で追及された前原外相の国会答弁はちょっとおかしかった。政治資金規正法違反の罰則を受けるかどうかは、献金を受けた経緯や、前原氏にその認識があったかどうかが、焦点になる。もう少し粘る気があるのであれば、今事実関係を調査中であるなどとと言い張って余計なことをいわないものだ。
 
 ところが、しょっぱなから、前原外相は、献金した女性が中学2年からの知り合いの「焼肉屋のおばちゃん」で、在日であることも知っていたと答弁したのである。前原外相の声はうわずり、とても冷静な対応ではなかった。
 
  たしかに西田参議院議員の追求は厳しかったが、ここまで国会で言っては、とても単なる事務処理ミスとはいいがたいだろう。
 政治資金規正法第二十二条の五「何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織から、政治活動に関する寄附を受けてはならない」の故意違反は、公民権停止までありえると責められると、前原外相は「まずは全体像を把握してから」などと防戦一方だった。
 その後、国会が終わってから、福田康夫元首相が北朝鮮系の企業から献金を受けていたと前原外相は反論した。しかし、福田元首相は相手が北朝鮮系企業とは認識していなかったことから、前原外相の場合と事情はかなり違う。

「暴力団関係者の献金追及」への幕引きを図った

 とはいえ、前原氏自身がその座にしがみつくるもりならば、もっと粘ることができたはずだ。前原外相自身は「焼き肉屋のおばちゃん」からの献金が辞任の理由だと説明しているが、これほどあっさりと辞任を決めたホンネは何か。
 菅政権から好意的にみれば、同じ日に野田財務相、蓮舫行政刷新相とともに指摘された脱税企業からの献金への波及を防いだとみれる。その関係者は暴力団関係者という。3閣僚が政治とカネの問題で責められば、菅政権全体への大きなダメージになる。また前原氏はこの暴力団関係者との関係を探られたくないため、早々に幕引きにかかったという見方もある。
 しかし、それ以上に前原外相のホンネは、菅政権と心中する気はなく、早々と逃げ出したかったということではないか。
 
菅政権は、反小沢という一点だけで結束しているもののの、政権維持だけが目的化し、その内情は脆弱だ。予算案が参議院に回り、連日野党の攻撃を受け、それがテレビなどで報道されると、政権支持率は釣瓶落しに下がっていく。統一地方選を控えて、地方組織が浮き足立って、民主党内から崩壊しだしている。
 
 前原外相献金問題でも、すぐに民主党内の非主流派から外相辞任という声が出てきた。
さらに、前原氏は「ポスト菅一番手」ともいわれてきたが、ここにきて党内実力者の仙谷由人前官房長官の意向は、前原外相ではなく野田財務相だといわれている。だから、脱税企業からの献金で野田財務相に貸しを作りつつ、自らやめた方が菅政権の泥船から脱出できて得策だという判断があっても不思議ではない。ポスト菅は野田財務相にゆずり、その次を狙うという計算もあるのではないか。
 いずれにせよ、執行部も崩壊し始めているだ。

透明なパネルを使って藤井氏の署名を照合

 国会はどうなるのか。参議院での野党自民党は論客揃いで威勢がいい。4日、世耕弘成参議院議員は、細川律夫厚労相に対して年金の「運用3号」問題を追求し、細川厚労相はダウン寸前だった。山本一太参議院議員の前原外相に対する竹島の「不法占拠」かどうかの質問も鋭かった。
 また森雅子氏は、小沢一郎元代表が党首時代に自由党の2002年の組織活動費約15億円が当時幹事長だった藤井氏あてに支出され、使途不明になったとされる問題について、透明なパネルを使い、藤井氏が自身のものと認めた別の書類の署名とその領収書の署名を重ね合わせてみせた。その結果、これまでは「署名は自分が書いたかどうか分からない」と曖昧にしていた藤井氏に、「私が書いたものではない」と断言させた。
 前原外相の次は、細川厚労大臣か藤井副長官か。ドミノ倒しが起きれば、そのまま政権崩壊に向かうことになる。
 
西田議員は、4日の質問の最後に、デフレ脱却のための集中審議を要求した。菅政権は政治とカネの問題でボロボロになっいるのに加え、政策面での行き詰まりもでてきた。デフレ問題では民主党内では執行部と非主流派で意見がバラバラなのである。
 
   菅首相は6日の会談で、前原外相に「絶対に守るから」と考えなすように迫ったが、結局、最後は逃げられてしまった。会談直後の会見で、菅首相は涙目になりながら、前原外相の進退にはふれなかった。
 外相辞任は、こうした状況を見越した前原氏の泥船脱出。閣僚が逃げ出すようになれば政権崩壊は早い。

 
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慎太郎が出ないなら

2011年03月07日(月) 週間現代
 
出るのか、出ないのか。石原慎太郎都知事が揺れている。「不出馬」情報も報じられるなか、その状況をどうか「そのまんま」で、と祈っているに違いない男がいる。東国原英夫前宮崎県知事である。

すべては慎太郎待ち

「今回の都知事選は、過去3回の石原(慎太郎)氏(78歳)が出た選挙に比べても、まったく予測がつきません。出馬するかどうかを巡って二転三転し、本人もいまだに迷っているフシがある。石原氏の態度を見てから出馬を判断するという人も多く、これで石原氏が出ないとなると、東国原(英夫)前宮崎県知事(53歳)が最有力候補になる状況です」(都政担当記者)
 
 3月24日告示、4月10日投開票の都知事選は、告示まで1ヵ月を切った。石原氏については、マスコミが「出馬説」と「不出馬説」で割れ、水面下でも様々な綱引きが行われている。
 朝日新聞・東京新聞の2紙が夕刊1面で大々的に「石原知事、不出馬」と報じた2月22日。この日は夜から、自民党東京都連の政経パーティが開かれた。これは都知事選を含む統一地方選への決起集会的な意味合いを持つものだったが、石原氏が登壇するとあって、そこで不出馬宣言があると注目された。だが、石原氏が進退について触れることは最後までなかった。
 
 このパーティの後、こんな場面があった。都議会自民党関係者らが石原氏に詰め寄って、こう話しかけた。
「私たちは4選をお願いしているのに、我々には一言もなく不出馬の記事が出た。どういうつもりなのか。本当に不出馬なのか」
 
 石原氏が応じる。
 
「オレはあんなこと一言も言ってない。迷惑な話だ」
 
 都議会自民党幹部の一人は、この石原氏の発言から希望的観測を滲ませつつも「99・9%、出馬する」と自信を見せた。ただ、石原氏がいまだに迷っているのは事実。石原氏の元選挙スタッフが明かす。
 
「昨年末の段階で、プライベートの会合の際、石原さんは『もう都政はいい。出る気はない』と話しています。それを聞いた側近たちの一部が、松沢成文神奈川県知事(52歳)を後継にと動き始めたのです」
 その仕掛け人と言われるのが、石原氏の側近で、現在、松沢氏の特別秘書を務める今岡又彦氏。一方、副知事も務めたこれまた側近の浜渦武生氏などは、つい最近、自民党都連幹部と会合を持ち、石原4選で行くしかないと確認し合ったという。要するに、石原氏の側近たちの間でも出馬を巡って、見解が真っ二つに割れている状況なのだ。
 議会で居眠りする姿が目撃されるなど、すっかり都政にヤル気を失っている石原氏は、亀井静香国民新党代表らが構想する「救国内閣」で、民間枠での入閣も取り沙汰される。とはいえ、こちらは国政の状況に左右され、救国内閣の誕生そのものが未知数。そこへ来て、先の不出馬情報で逆に都知事を続ける気になったという見方もある。
 前出の都政担当記者が解説する。
「不出馬説をリークしている側近たちには、もし不出馬を表明したら、石原氏の出方待ちの東国原氏が出馬を決意する。それでいいんですかと、石原氏の尻を叩こうという狙いもあった。これが功を奏して、7対3くらいで石原氏は出馬すると睨んでいます」
 石原氏が進退を表明するのは早くとも、現在開催中の都議会で予算審議が一段落する3月7日以降。議会は3月11日までだが、築地市場移転のための予算を巡って会期延長の可能性もあり、本当に告示直前まで明らかになりそうにない。

ワタミの渡邉氏は勝てない

 前回選挙('07年)でも280万票を超える得票で、圧倒的な強さを誇った石原氏が不出馬となれば、都知事選を巡る風景は一変する。注目されているのは、東国原氏や松沢氏の他、すでに出馬表明したワタミ前会長の渡邉美樹氏(51歳)、蓮舫行政刷新担当大臣(43歳)、舛添要一元厚労相(62歳)など。
 
 石原氏抜きの都知事選を考えたとき、参考になるのは2月22日にサンケイスポーツが行った「石原氏が出馬しない場合、次の都知事にふさわしい人は」という緊急アンケートだ。ここでは東国原氏が1位。少し前になるが、FNNが1月20日に行った世論調査でも、石原氏30・8%に次いで、22・6%の支持を集めた。
 
 出馬の実現性も加味すると、東国原氏のライバルとなるのは渡邉氏と松沢氏の二人になる。
 
 東国原氏が完全に無党派層狙いであるのとは対照的に、自・公の支持を取り付けようとしているフシがあるのは渡邉氏。2月15日の出馬会見で語ったのは、石原氏の政策をなぞるようなものが大半だった。それもそのはずで、渡邉氏には、前回の都知事選で石原陣営を取り仕切った選挙プランナーの三浦博史氏が付いている。
 
「三浦氏は石原氏が出馬しないと読んで、渡邉氏こそ石原都政の後継者だとアピールする戦略を取っている。そうすれば自・公も最終的に渡邉支持に回るという計算があってのことです。ただし、渡邉氏には女性問題やワタミにおいて従業員を不当に働かせていたといったネガティブキャンペーンが早速始まっています」
(別の都政担当記者)
 
同じ過去の傷とは言え、芸人時代の不祥事と企業トップの不祥事では、インパクトが違う。暴行事件や未成年淫行の『前科』もある東国原氏にスキャンダルが飛び出しても、よほどのことでない限り、驚く有権者は少ないに違いない。都議会民主党の幹部も、
「渡邉氏の『身体検査』をしなければ、どの党もうかつに支持できない」
 と語っていた。
 もう一人のライバル、松沢氏だが、東国原、渡邉両氏に比べると、人気の点では一枚も二枚も劣る。それだけに自・公の組織力が必要だが、すでにそれは望めない状況である。都議会自民党関係者が言う。
「こちらがさんざんお願いしたのに、石原さんが断るようなことになれば、石原さんが松沢さんで頼むと言われても呑めないですよ。我々は勝てると思うから石原さんを出したいのであって、石原さんに都政を私物化させるつもりはない」
 ボロボロとはいえ政権与党、都議会でも野党ながら多数派の民主党にいたっては、戦う前から候補者選びで難航。国政同様、党内はバラバラだ。
「石井一選挙対策委員長がつい最近、『池上彰の携帯電話の番号を知っているヤツはいないのか』と怒鳴る姿が目撃されています。また、郵便不正事件でともに疑惑をかけられた厚労省の村木厚子氏が石井氏の部屋から出てきたために、隠し球は村木氏じゃないかとも言われている。一時は本命だった蓮舫氏は、菅直人総理から出馬を打診されたが、菅さんの政治センスのなさをオフレコでぶちまけたり、聞く耳を持っていない。世論調査の結果も思ったより悪いし、国会議員のバッジを捨ててまで都知事選に出るリスクは取らない」(全国紙政治部記者)
 党中央がこんな具合だから、都議会民主党内でも、渡邉氏に乗るという声や石原氏を推すという声、東国原氏に乗ってもいいという声まであって、本音は勝てそうな候補がいれば、そこに乗っかろうという態度がミエミエだ。

そのまんま都知事?

 対立候補たちがそれぞれ問題を抱えている状況を尻目に、石原氏さえ出なければ、非自民・非民主党という旗印で急浮上するのが、東国原氏である。
 同氏の最終的な目標は衆議院からの国政進出。その一方で「現職の都知事がまず進退を表明すべきだ」と都知事選に向けて、石原氏を牽制することも忘れない。
 
 石原「不出馬」報道があった直後に、東国原氏から電話があったという知人が明かす。
「前から『都知事ってどうかな』なんて言っていたけれど、あの日はえらくハイテンションで電話してきて、『ありがとう。これで決めたよ』と一人で興奮していた。でも、しばらくしたらまた電話があって、今度は『誤報だったみたい』と暗い声だったけど」
 
ともあれ、永田町と新宿にそれぞれ事務所を構え、会費5万円のパーティを開くなど、選挙資金集めにも余念はない。解散総選挙にも、都知事選にも、対応する準備は万全だ。
 
 「東国原さんは自信家ですが、さすがに石原さんが出れば勝てないとわかっている。ただ、仲間内では以前から蓮舫さんが出てきても勝てると豪語していただけに、渡邉氏や松沢氏には絶対に勝てるという計算がある。彼が出馬宣言するときは、いけると確信したときです」(東国原氏と親交のあるテレビ局関係者)
 
 かつて東国原氏に衆院選出馬を打診し、総裁候補にしてくれるならと返された自民党には、同氏へのアレルギーが強く、都議会自民党では「変な人が出るくらいなら、もう一期、石原を」が合い言葉になっている。それでも、ある政党が極秘に行った調査では、やはり石原氏に次ぐ支持率を得た。ちなみにこの調査では、蓮舫氏が出ても石原氏にトリプルスコアで敗れるという結果が出たという。
 
 また、東国原氏にはさらなる追い風が吹いている。
 
 「いまの政治は大阪の橋下徹知事、名古屋の河村たかし市長のように、反民主・反自民で地方から変えるという流れがあります。東国原氏はこの二人とは連携が取れています。そこに小沢一郎氏が加わる可能性も考えられる。小沢氏は2月8日に河村市長と会談していますが、党内に居場所がなくなった小沢氏が『減税』『国民生活が第一』のキーワードで、河村氏らとともに東国原氏を応援するという見方は根強い。大阪、名古屋に続き、東京でも既存政党に属さない首長が誕生する確率が高まっています」(政治評論家・有馬晴海氏)
 
 2月21日には、地域政党との連携を目指す「日本維新連合」の旗振り役で、小沢氏と近い原口一博前総務相が東国原氏との連携を表明。計算高い東国原氏のこと、原口氏の後ろに小沢氏の姿を見ているに違いない。
 約1000万人の有権者を抱える東京都。すべての有権者に政策を訴えるのは物理的に難しく、どうしても都知事選は、知名度優先の風頼み選挙になる。そしていま、何の因果か、風は東国原氏に吹いている。こんな男が都知事でいいとは到底思えないが。

 

2011.03.04(Fri)  The Economist
 
戦時中の残虐行為に関する調査が始まったが、メディアは奇妙なまでに沈黙を貫いている。
 
大量殺戮の証拠が東京中西部の高級地区に眠っているかもしれない。真実を究明する作業を始められるよう、日本政府が居住者のいる集合住宅を取り壊すまでに、4年以上の歳月がかかった。だが2月21日、2台のショベルカーが地面を掘り始め、土を丁寧に選り分けて人骨を探す作業が始まった。全国メディアはこのことを、全くと言っていいほど取り上げていない。
 日本のジャーナリストは通常、不可解な殺人事件に背を向けたりしない。だが、この事件は格が違う。発掘現場は、第2次世界大戦中に日本が犯した数々の犯罪の中でも最も残忍な悪事と関係している可能性があるからだ。

陸軍731部隊の人体実験と関係か?

 事件は、化学生物兵器の技術開発を任されていた大日本帝国陸軍の隠密組織「731部隊」の軍医が関与していたとされる。彼らは麻酔薬を使わない生体解剖をはじめとする人体実験を行ってきた。軍医の何人かは後に、米国占領軍の庇護を受け、戦後日本の医学界のトップに上り詰めた。
 今回の発掘は、戦時中に近くの陸軍軍医学校に勤務していた元看護師の石井十世さんが2006年に政府に対して行った証言に端を発している。石井さんはそこで軍医がホルマリン漬けにされた遺体を扱う姿をたびたび目撃した。当時は、彼らが何をしていたか分からなかったという。
 
 1945年に米軍が迫ってくると、石井さんは同僚とともに、急いで遺体を処分するよう命令された。彼女は、遺体は現在発掘が行われている場所に埋葬されたと証言しており、犬が人骨を咥えて走り去る光景を見たとも述べている。
 陸軍軍医学校が731部隊の東京本部であったことは秘密でも何でもない。部隊の活動の大半は、かつて日本が占領していた中国北東部の満州で行われ、おぞましい実験の犠牲者は中国人、朝鮮人、ロシア人だった。犠牲者はペストやコレラに感染させられたりした。解剖実験の被害者(軍医によって妊娠させられた女性もいた)は「丸太」と呼ばれていた。
 2002年以降、東京の裁判所は少なくとも731部隊が細菌兵器の実験に関わっていたことは認めている。米国の資料でも、米国占領軍の一部が、どれだけ恐ろしいものであれ、実験の結果に価値を見いだして、戦争犯罪の裁判から軍医を守ったことが明らかになっている。
 
同部隊に所属していた職員の多くは、その後、大手製薬会社や有名大学のトップの座に就任。そのうちの何人かは日本初の血液バンク、ミドリ十字を設立した。後にHIVに汚染された血液製剤を投与し200人の日本人を死亡させる事件を起こし、悪評を買った会社だ。
 しかし、政府は731部隊の残虐行為を認めていない。1989年に、現在掘削作業が行われている場所から数百メートル離れたところでバラバラになった頭蓋骨やその他の人骨が発見された後でさえ、認めようとしなかった。
 現在、人骨が埋葬されている場所には黒い石柱が建てられており、ただ人体「標本」とだけ記されている。中国政府は人骨の身元を明らかにするため、DNAサンプルの提供を求めたが、聞き入れられていない。

新事実が見つかれば菅政権に新たな難題

「日本は首相が変わりすぎる」、OECD事務総長が苦言
 
かつて厚生相として薬害エイズ事件を暴くことに尽力し、名を馳せた・・・〔AFPBB News
 厚生労働省は、今回の調査で新事実が見つかることはないのではないかと考えている。だが、もし同省が間違っていれば、菅直人首相率いる日本政府は難題に直面することになる。
 日本の民主党は、この国の好戦的な過去と直接関係のないリーダー層を擁する初めての政権与党だ。菅氏自身も、かつて抑圧されていた日本の近隣諸国、特に中国と韓国との緊張関係の改善を強く望んでいる。
 菅氏は厚生大臣だった当時、ミドリ十字によるHIV汚染血液製剤の事件解明に尽力し、世に名を馳せた。また、菅氏はそれとは別に、太平洋に浮かぶ硫黄島で戦死し、今なお行方不明とされている1万3000人の日本兵の遺骨を「一粒一粒の砂まで確かめ」、日本に帰還させると約束している。
 もし今回、東京の発掘現場から外国人の遺骨が見つかり、それでもなお、菅氏が償おうとしなければ、ダブルスタンダードだという批判に身をさらすことになるだろう。今のところ、報道機関の沈黙は、日本人が総じて今も贖罪の意識を持っていないことを示唆しているようだ。
 
© 2010 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。

英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます

 

これがみんなの党の予算総組替案だ

 
2011年03月02日(水)現代ビジネス 渡辺喜美
 

16人の議員が大脱走

 平成23年3月1日未明、予算案採決本会議。投票総数453、賛成295、反対158。3分の2には遠く及ばない。民主党から16人の議員が大脱走。そのうち亡命して河村新党となるか。
 今回は政権交代後初めての予算だったが、約束していた予算の総組換えをやらなかった。国民に対するマニフェスト詐欺罪確定。これは、「嘘つき予算」としかいいようがない。
 しかも、みんなの党が予算の総組換え案のお手本まで示したのに全く耳を傾けようとしなかった。熟議の国会とは聞いて呆れる。これでは増税独裁予算といわれても仕方があるまい。
 
 民主党内では、テレビに出演し、政権に都合の悪い批判をしないようなお触れまで出ているそうな。こういう言論弾圧は自民党政権末期の「安政の大獄」と同じ。民主党内からの脱走・亡命も頷ける。
 民主党の予算を分析すると、自民党時代の予算と変わり映えがしない。自民党時代の予算に、民主党特有の全国一律金太郎飴的バラマキを追加しただけ。だから、公債発行額は増えるばかり。大学入試なら、まるで自民党のカンニングだ。

みんなの党の予算総組換え案

 みんなの党の予算修正案は、大胆な予算の組換え案とはこういうものだという見本である。本年度の公債発行額は25兆円減らせる。これは、この1年半のみんなの党のアジェンダの集大成のような予算案だ。
 まず、消費税を全額地方へ移譲(約10兆円)。初年度は地方譲与税の形で渡す。地域主権の本格実施のためには景気のブレが少ない安定財源の消費税の移管が不可欠。民主党がこれをパクらなかった以上、地域主権の看板も、国民から引きずりおろされることになる。法人税は実効税率を半減する案とする。
 次に、増税の前にやるべきことがあるだろう。議員・公務員が身を削る。議員報酬3割カット、公務員総人件費2割カットや補助金・経費削減で約7兆円。
 
来年度は、まず特別会計の埋蔵金を18兆円掘り起こす。
 日本郵政、政投銀、JT等の政府保有株の25%などを売却(約3.5兆円)。本来、初年度から日本郵政の政府保有株を50%程度売却と見積もりたかったが、日本郵政の経営は赤字で既にボロボロにされた。だから、経営を刷新し、企業価値を高めていきながら売却するため保守的な見積もりとした。
 労働保険特別会計の資産15兆円のうち責任準備金8兆円強を除き、保守的な見積もりで約5兆円を取崩すこととした。
 
国債整理基金特別会計への定率繰り入れは停止(9.8兆円)。かつて、昭和57年度から合計11回、計25兆円程度の停止実績がある。ちなみに、昭和57年度の初めての定率繰入れ停止は、ミッチーこと渡辺美智雄大蔵大臣の時。そして、平成8年以降定率繰入れの停止が行われなくなったのはミッチーが死んだから。
 次に、民主党の主要政策(子ども手当て、高校無償化、高速道路無償化、農家への戸別所得補償)は、全国一律金太郎飴的なバラマキであり、地域の実情に応じた効果的・効率的なものでないので全て廃止。
 ただし、子供手当てと高校無償化の予算に相当する金額分は消費税の地方移管分で対応する。こうすれば、地域の実情に応じ少子化対策のためにお金を使える。例えば、保育所の待機児童の解消が深刻な課題となっている地域では、この解決のために予算を充てることが可能になる。
 
 また、農家の戸別所得補償(0.8兆円)は、開国対策として当座1兆円計上し、近く大胆な農業予算組換えを行う。
 最後に、社会保障。歳入庁の創設で、国税徴収法の適用等により年金保険料の増収が見込まれ、一般会計からの支出を減らせる。保守的に見積もり、まずは約3兆円。
この結果、政府予算の歳入・歳出92兆円は61兆円で足りる。公債発行額は44兆円から19兆円に減らせるのだ。

小沢・河村連合はアジェンダがばらばら

 さて、大脱走した民主党の小沢系の16人の議員。彼らの行動は、何をやるかではなく、誰がやるか。後がなく自己保身のため選挙に勝てそうなボスのもとにひたすら走る。河村新党に合流するのか。 
 河村氏も、名古屋では、減税を旗印に掲げているが、東京では小沢さんの親衛隊のよう。とたんに、「何をやるか」ではなく、「誰がやるか」に堕落。小沢氏は自分は参加せず、新党を作って菅総理に圧力をかけたい。国政復帰の道を残したい河村氏は、選挙互助会の設立で思惑が一致。
 
 ただ、「何をやるか」というアジェンダから見ると、小沢・河村連合はよく分からない。減税は小さな政府。一方、小沢流マニフェスト原理主義で、満額子供手当、農家の戸別所得補償、高速道路無料化といったバラマキは大きな政府である。増税反対までは一致できるが、その先が問題。名古屋愛知は開国しなければやっていけないが、小沢派はTPP反対。小さな政府は民営化を指向するが、小沢派は国民新党と組んで郵政民営化反対。
 結局、小沢・河村連合も、政権獲得までは我慢できるが、政権をとれば政策のバラバラさが露呈するだけ。最近、名古屋市議選に悪影響と見たのか。最近、河村氏が小沢氏と距離をとっているとの観測も出てきている。名古屋市議選に悪影響と見たのか。
 
一方、菅内閣路線は財務省シナリオで、谷垣自民党とほぼ同じゆえ、党首討論は揚げ足取りの罵り合いにはなっても、八百長相撲の域を脱しない。大きな政府、官僚主導、増税路線は総選挙後、必ず連携を探るだろう。
 
 しかし、自民党もTPPは、農協の集まりでは反対といい、経済界の集まりでは賛成という。やっていることは、ほとんど嘘つきである。郵政民営化も公務員改革も党内が2分。
 結局、民主党も、自民党も、小沢・河村連合も、中では主義主張が真っ二つに割れている。何かをやろうとするとぐちゃぐちゃ。

日本もジャスミン革命の足音迫る

 こういう中で、一番損をするのは国民だ。こんな政治を見せつけられる国民の不信感は、いずれ頂点に達するであろう。
 その時こそ、「何をやるか」というアジェンダの一致の下に結集した覚悟の集団・みんなの党の出番だ。まず、東京・神奈川・大阪アジェンダを発表し、これに沿った知事・議員候補を選んでいく。
 
 既に、各種世論調査では菅内閣の早期の解散総選挙を求める声が半数以上に達し始めている。「日本版ジャスミン革命」のはじまりだ。国民の皆様とともに解散総選挙を訴えていきたい。
 やはり、政党はアジェンダが大事。政治は「誰がやるか」以前に「何をやるか」を先行させなければならない。「小沢一郎を好きか嫌いか」という20年続いた対立軸を捨て、アジェンダの下に政界再編をやり直す時だ
011年3月2日 DIAMOND online 山崎元
 

政界再編は近い

 常識的に見て、菅内閣の崩壊は近い。
 内閣支持率は20%前後に低迷し、予算案は衆院を通過したものの、予算関連法案は通る目処が立たない。首相及び民主党執行部は、野党の抱き込みを図ろうとしているが、野党は統一地方選を前に菅内閣と厳しく対立するポーズを取りたい筈だ。彼らがよほど下手でない限り、今後、菅首相を追い込むことは容易だろう。
 加えて、子ども手当の見直しなどマニフェストの見直しに通じるような問題を民主党内で議論して合意した形跡もないのに、首相や幹事長はどんどん口外する。民主党の分裂傾向も一段と加速しそうだ。すでに与党の体をなしていないといってもいい。
 菅首相は、予算関連法案が通らなくてもただただ粘り続ける可能性があるが、民主党の造反者の数が増えた時点で内閣不信任案が可決する可能性もあるし、それよりも早く参院で菅首相の問責決議が可決するかも知れない。
 順当な線としては、一足先に問責決議可決を受けて官房長官から身を引いた仙谷氏が菅首相に引導を渡して内閣総辞職ということではないか。その後に、新首相の選挙管理内閣で総選挙ということになる公算が大きい。いかに何でも、菅首相が「ヤケクソ解散」をして、党首をそのままに総選挙を戦うのでは、民主党の候補者が可哀想だ。
 しかし、仮に、近く総選挙が行われるとしても、巷間言うところの民主党Aも、民主党Bも、自民党も、あるいは自民党と公明党を合わせても、単独過半数を取ることが出来ない可能性が大いに考えられる。連立の組み替えと共に、政党の解体・再結合を含む、いわゆる政界再編成が起こる可能性が大きい。
 しかし、この場合、どのような政策上の対立軸があるのか。
 

「減税」は旗印になるか?

 さて、来るべき政界再編成で台風の目になりそうなのは、河村名古屋市長、大村愛知県知事らの、地方分権と減税を掲げる勢力だ。「減税」は政策的な対立軸になり得るだろうか。仮に、減税が旗印になるなら、菅直人氏が掲げる増税路線との対立は、「減税にっぽん」対「増税にっぽん」として大変分かりやすいが、果たしてどうなのか。
 減税は政界再編の政策的な旗印に、ある意味ではなり得るし、ある意味ではなり得ない、と筆者は思う。何れにせよ、「減税」の意味するところを明確にする必要がある。
 減税の適否が関係する利害は些か複雑だ。少なくとも、公務員の待遇、富の再分配の方法、デフレ、財政問題、の4つに重要な関わりがある。
 端的にいって、公務員の人件費を削ることを含めて行政コストに大ナタをふるうことと、その成果を象徴して「減税」を掲げるなら、政策としても正しいし、国民も支持するだろうから、「減税」の勢力は選挙に勝つだろう。
 民主党政権への支持率の低さと民主党内の内部分裂の大きな原因は、民主党が前回総選挙マニフェストのトップに掲げた財政支出のムダの削減に取り組まないこと、特に、公務員の待遇(人件費削減だけでなく、天下り先の縮小等も)に手を着けないことにある。換言すると、民主党政権があまりにも露骨に官僚に取り込まれてしまったことが問題だった。これに、普天間問題、尖閣沖問題といった外交の拙さ、2人の首相の個人的能力の不足などが加わって、今日の低支持率を招いている。
 公務員の人事制度の改革、公務員給与の民間並みへの引き下げ、天下り及び天下り先の縮小、これらに具体的に手を着けるかいなかを国民はよく見ているはずだ。象徴的にいえば、公務員の給与を下げてから、消費税を上げよ、その逆はおかしい、というのが多くの国民の考えではないか。
 これらの点について、分かりやすいメッセージと具体的な政策をもって臨むのであれば、たとえば、前総務相でもあった原口一博氏は、行政改革のための減税を代表する勢力の全国的な顔になり得るのではないだろうか。内輪の駆け引きではなく、政策をもって天下を取るチャンスだ。
 

「大きな政府」対「小さな政府」は不正確だ

 減税以外に、政策的な対立軸としては、「大きな政府」か「小さな政府」か、があり得る。しかし、この分類には一つ誤解されやすい箇所がある。
 たとえば、大きな政府が、「大きな福祉(支出)」を指すのか、「大きな行政(出)」を指すのかの点で政策の意味は大きく違ってくる。小さな政府でも同様だ。
 年金、生活保護、子ども手当のような、政府が仲介者となって国民のお金を移転する支出は、行政を大きく複雑にしなくても金額で見た規模では大きなものになり得る。また、行政機構をそのままに、社会保障支出を削るような形での小さな政府化には、納得しない国民が多いだろう。
 社会保障の仕組みと規模については、受益と負担を明確に説明した上での国民的な合意が必要だが、今後、高齢化が進むことなどから見て、規模的に「小さな福祉」を国民の多数が望んでいるとは考えにくい。他方、行政が肥大化していること、官僚の待遇が民間に対して相対的に随分高くなっていることについて、国民は批判的だ。「小さな行政」は路線として支持を集めるだろう。
 大きな政府・小さな政府の議論は、福祉の大きさと、行政の大きさに話を分けて行うことが重要だ。そうしないと、国民のニーズを正確に汲み取ることができない。

均等な「ばらまき」か、行政による「事業」か

 たとえば、子ども手当をめぐる議論で、これを大きな政府的なバラマキであると批判する議論が少なくないが、富の移転(「所得再分配」という方が分かりやすいが、資産も分配対象だ)の全てが悪いのではない。
 富める者から貧しい者に対する再分配がある程度必要であると合意できれば、その分配は、使い道が自由なお金の形で均等にばらまくのがいいか、行政があれこれと事業を行うのがいいか、という選択になる。
 
この点に関しては、できるだけ偏らない配分で、使い道が自由な「お金」を再配分してくれる方が、公平感があるし、行政コストが掛からないのではないか。国や自治体がハコモノを作ったり、福祉関係の事業に補助金を出したり、教育費などに使途を限定した支出を行ったりするのは、時に便利であるかも知れないが、お金の使途が不自由であり、生活スタイルへの介入でもあるし、何よりも、多くの行政関係者の関与を必要とする分コスト高だ。
 こう考えると、何の権限にも天下り先の確保にもつながらずに予算を食う「子ども手当」を官僚及びその周囲の利害関係者(大手マスコミなど)が目の敵にする理由がよく分かるのではないか。
 尚、子ども手当に対する所得制限は事務を複雑にするし、不要だ。お金持ちにも手当が支給されることが問題なら、お金持ちの資産なり所得なりにもっと課税すればいい。手当の仕組みはシンプルに保って、公平性の調整は課税の見直しで行えばいい。

デフレ対策優先か、増税優先か

 日本の財政をどうコントロールするかも、政策的に、大きな問題で、対立軸になりうる。
 一方では、デフレを解消し名目成長率を引き上げることが重要なので、現状では、日銀法を改正して日銀に金融緩和を積極化させると共に、財政的な対策も平行して行うべきだと考える勢力があり、他方では、デフレよりも財政再建が優先課題であり消費税率引き上げ等の増税措置が喫緊に必要だと考える勢力がある。
 具体的には、日銀(法)、財政収支、消費税率をそれぞれどうするのか、ビジョンを示せ、ということになるが、政界の再編に当たっては、これらの点の明確化が必要だ。
 筆者自身は、デフレの解消が優先課題であり、増税はその後だと考えている。
 政治に大きな期待を寄せることは禁物だが、もう少しましな政治の実現に向けて、政策がスッキリ整理された形での政界再編を期待したい。
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