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最終回 「JimdoをウェブサイトのOSに」

■ツイッターにもすがる思い

「実はサービスをスタートした直後、たった5日間で登録ユーザー数が1万人を超えたんです。すごいことになると喜んだのもつかの間、6日目からは急転直下、撃沈でしたね」

プレス発表をし、記事に取り上げてもらって、一気にユーザーが伸びて、ガクッと落ちる。従来のやり方にあっさりと見切りをつけた高畑氏は、わらにもすがる思いでツイッターに取り組み始めた。そして、実に意外な発見をする。

「たとえばプレスリリースの打ち方です。これまでならプレスは、メディア各社に対して一斉に打つものと、誰もが考えていたはず。リリースを出した次の日に、どれだけ多くのメディアが取り上げてくれるかが勝負だと。ところがソーシャルメディアを使うためには、こうした同時一斉方式ではダメなんです」

なぜ、ダメなのか。逆に突っ込むなら、では、どうすればいいのか。この答えに絡んでくるのが、ツイッターの興味深いところだ。

「自分たちでいろいろツイートしてみてわかったのが、まずリツイートされやすい人が世の中には確実に存在すること。そんな人たちを吟味して、彼らに向けた発表会をやります。するとその人が記事を書き、やがてリツイートされていく。少し時間を空けて、別の記者に書いてもらう。すると、またリツイートされて広がっていく」

この結果、ツイッターのタイムライン上にはいつも、Jimdoに関するツイートが流れるようになる。記事を読んだ人のツイートが第三者に伝わり、そこから第四者へと広がっていくうねりが起こる。

「これがツイッターの使い方なんだ、これからの時代のバイラルマーケティングなんだって確信しました。実際、去年の10月ぐらいからは、1日ベースでの登録ユーザー数が、以前の2.5倍ぐらいのペースで増え続けています。しかも、Jimdoの場合は無料ユーザーと有料ユーザーの比率が、一般のフリーミアムモデルとは違うのです」

通常なら有料ユーザーは、無料ユーザーの1%未満が定説だ。ところがJimdoでは、1%を遙かに超える比率となっている。

「ドイツにいる創業者たちもびっくりですよ。そして初めて来日した彼らは、さらに驚きの体験を日本ですることになります」

来日時の衝撃的な体験は、Jimdo本体のマーケティングにも影響を及ぼしたのだ。

■フリーのお客様こそ最高の宝

「なんで、みんな、こんなに笑顔なんだって。しかも若い女性がいれば、片方には見事な白髪のおじいちゃんまでいる。オンラインマーケティングに偏りがちな彼らにとっては、お客さんの生の笑顔は、よほど印象的だったようです」

高畑氏は創業者を日本に招き、京都と東京でユーザーミーティングを開催した。呼ばれたのは、エヴァンジェリストと名付けられた、ユーザーの中でも熱くJimdoを愛する人たちを中心としたヘビーユーザーばかり。彼らにとっては、創業者と会い、じかに話をできることは、今後Jimdoを伝導していくための最高のモチベーションアップとなる。


「創業者たちは、イベントは絶対にドイツでもやろう、いや、他の国もでやらなければならないとつぶやきながら帰っていきました。有料ユーザー比率が1%を大きく超えてくれたおかげで、すでに黒字転換を果たしています。悩み抜いた末のプライシングも、受け入れられたようでホッとしています」

Jimdoがデファクトを取ったとき、世界のウェブサイトはどう変わるのだろうか。誰もがもっと自由で手軽に、自分のホームページを持ち、思い通りのコンテンツを発信できる。そんなWeb3.0の世界は、もう目の前まで迫って来ている。

それでも高畑氏たちは、Jimdoの日本での展開をためらうことはなかった。その背景にあるのは、ホームページとは、あるいはインターネットとは、もっと自由なものであるべきだというビジョンである。固く、熱いビジョンに支えられた企業ほど強いものはない。そしてビジョンの熱さは、まわりの人の共感を引き起こし、共感する人を巻き込んで必ずムーブメントを起こす。
実際、Jimdoエヴァンジェリストの多くが、ウェブデザイナーだという。彼らこそが、まずJimdoのすばらしさを身を以て理解した。そして、ここからが重要なポイントだが、彼らはJimdoの魅力を一人でも多くの人に、自ら啓蒙する道を選んだ。
少し大げさに表現するなら、それが『真善美』につながる道だと信じたからだろう。インターネットは世界を変えると言われ、実際に、少しずつではあるが、確かに世界を変えてきた。これから先、JimdoがウェブサイトOSとしてデファクトを取り、もっと多くの人が、インターネットで自らを表現するようになるとき、さらに世界は良きものとなるはず。そんな予感をJimdoは与えてくれる。

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