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北陸新幹線
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E9%99%B8%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A
産経新聞 12月22日(水)
野田佳彦財務相と馬淵澄夫国土交通相が21日に行った会談で、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の利益剰余金の大半が基礎年金の財源に使われることになり、財源として当て込んでいた北陸新幹線金沢-敦賀間の年内着工認可は厳しい状況となった。
西川一誠知事は今年4月、高速増殖炉もんじゅ(敦賀市)の運転再開前に開かれた文科相、経産相との3者協議で、新幹線延伸を含む地域振興を要望。政府全体で取り組むとの言質を得ていたが、以後は進展がなく、今月16日の3者協議では「約束が実行されない場合、国策への今後の対応のあり方を考えざるを得ない」ともんじゅを楯にした切り札を切っていた。
県経済団体連合会の川田達男会長は「本来鉄道機能の活性化に活用されるべき財源で、整備新幹線の延伸にと要望してきた。県内の新規着工が遅れるとすればまことに遺憾だ」とコメント。
一方、民主党本部に対し20日、離党も辞さないとして直談判を行った民主党県連の野田富久幹事長は「24日の閣議後の説明を待ちたい。今はこれしか話せない」と述べた。
両相の会談では、23年度予算の焦点となっている年金の財源にあてるため、鉄建機構の利益剰余金1兆5千億円のうち、1兆2千億円を国庫返納することで合意した。
*福井駅部って? 延伸の夢 実現の一歩!
2010年4月11日
最近、また北陸新幹線の話題をよく聞きます。福井から東京へ行くのに便利になるって言うけど、工事はあまり進んでないみたい。福井駅には、新幹線の駅になるっていう大きなコンクリート高架だけはできてるけど、もし新幹線が来なかったら、どうなっちゃうの?
教えて、県民くん!
迫力ある高架
えち鉄見据え
北陸新幹線の県内延伸は、県政の長年の“夢”であり実現すべき課題でもある。今は福井駅から東京へ行くには、東海道新幹線に乗り継いで約三時間半かかるが、これが北陸新幹線なら乗り継ぎなしに約二時間四十分でいける計算なのだそうだ。
この“夢”を、現実にする大きな一歩が、JR福井駅の東側にある巨大なコンクリートの高架「福井駅部」。二〇〇五年四月に建設が正式決定し〇九年二月に完成。新幹線がつながったときは、その駅舎部分になる予定だ。
でも事情を知らない人から見たら、未完成なのに工事を進めている様子もなく放置された、使途不明の建造物というのが正直なところ。完成から既に一年余。今はどうなっているんだろう。早速、現地調査だ。
新幹線は、独立行政法人の「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)が建設から管理までを担当する。その職員二人と一緒に現場へ。
鉄筋コンクリート製で、地上から防音壁のてっぺんまでの高さは約十一メートル。JR北陸線に沿って福井市中央一丁目から同市宝永一丁目まで八百メートルもある。幅は約十二~二十メートルで、今はレールも何もないコンクリートの打ちっ放しだが、迫力満点だ。総工費は約五十一億円で国が三分の二、県が三分の一を負担。維持管理は、折を見て職員が見回っているだけで、特に管理費はかかっていないとか。
それにしても、つながる線路ができる見通しも立たないうちに、駅部分だけ造ることになったのは、なんで?
県新幹線建設推進課によると、こちらも長年の重要課題「えちぜん鉄道の高架化」と一体的に整備することで、双方の工事が効率的になるというのが、駅部先行整備の決め手だったそうだ。
国土交通省によると、これまでの新幹線整備で“飛び地”整備が認められたのは最初で最後だ。ただ、着工時期や個所は「全国新幹線鉄道整備法」に基づき、国が時の与党と協議しながら財源などの状況をにらんで「細切れ」に認可。このため国が整備計画を決定した以上、完成するのは既定路線で駅部の先行整備も順番が少し入れ替わっただけ、というのが県の立場だ。
ことしは夏ごろまでに扱いを決めるため、国交省で今、関係県などから意見を聞くなどしている。現段階で「まだ認可に至っていないので、絶対に北陸新幹線を造るとは言えない」と極めて慎重な姿勢だ。
「福井駅部」は新幹線が走るまで、えちぜん鉄道の高架として暫定的に利用。仮に新幹線がこなくても、えち鉄の高架としての利用価値は残る。でもえち鉄の高架としてなら、ちょっと立派すぎるんじゃないか。
西川一誠知事は高速増殖原型炉「もんじゅ」の運転再開の判断材料の一つに、北陸新幹線の進ちょくも条件として考えているとか。東京までの時間を五十分短縮するために多額の投資をするのか、意見は分かれる気もする。それでも、眼前に広がるこの巨大な駅部が無駄になるのは、やっぱりもったいない。
北陸新幹線 1973(昭和48)年に整備計画が閣議決定された。東京-大阪間を北陸地方経由で結ぶ路線で、全長約700キロメートル。東京-長野間はすでに営業中で、長野-白山総合車両基地(石川県白山市)と福井駅部は2005年度から工事がスタートし、うち福井駅部は完成している。現在、同基地-敦賀間の認可着工に向け、政府などが議論を進めている。
県民くん 追加調査
福井の名前の由来の調査で、松平忠昌が四代藩主とあるのは、三代じゃないの?
福井の名前の由来について調査した前回。読者の皆さんから「北庄」から「福居」に改称した藩主・松平忠昌(ただまさ)について「記事に四代とあるが、三代の誤りでは?」との問い合わせが相次いだ。間違っていたら一大事。早速、追加調査だ。
前回登場していただいた郷土歴史家の松原信之さん(76)によると、かつて忠昌は三代とされていた。ただ、最近の調査で、忠昌の前に、二代藩主・忠直(ただなお)の長男、光長(みつなが)が藩主をしていたことが判明したとのこと。このため、福井市史も三代を光長とし、忠昌は四代に繰り下げた。
三代光長の“在任期間”は約一年にすぎないが、「わずかでも藩主の座を継承していたのは明らか。歴史は塗り替えられるものです」(松原さん)。
対中コメ輸出拡大構想
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BE%E4%B8%AD%E3%82%B3%E3%83%A1%E8%BC%B8%E5%87%BA%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E5%95%8F%E9%A1%8C
筒井信隆(66歳、衆議院議員5期、新潟県第6区、農水副大臣)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%92%E4%BA%95%E4%BF%A1%E9%9A%86
平成22年12月22日(新潟日報)
一定の回答に期待!
政府は環太平洋連携協定(TPP)を見据え、国内の農業強化に向けた検討を進めている。作業の中心となる「食と農林漁業の再生実現会議幹事会」の構成員でもある筒井信隆農林水産副大臣は今月、コメの輸出拡大に向け中国を訪問。日本の農産物の国際競争力強化に取り組む。筒井氏に中国へのコメ輸出の見通しと、TPPをめぐる議論の展望を聞いた。
TPP参加 前提否定「最終的に100万トン目指す」
―中国では、日本からの輸出拡大に向けた覚書に署名しました。
「当面20万トン、最終的に100万トンを目指す。現在のコメの対中輸出は100トン以下。ぜひ実現させた
」
―障害は何ですか。
「検疫の条件である燻蒸施設だ。今は横浜市の施設でしかできないので、燻蒸をやめるか、サンプル調査にしてほしいと伝えたところ、(日本の農水省に当たる)中国農業部の副部長から前向きな返答をもらった」
―コメ輸出の拡大や燻蒸処理の簡素化は、いつごろ具体化しますか。
「1月下旬に中国の国有企業の会長が来日する予定だ。ここで日本の生産団体や加工業者らと数量など具体的な話を詰めてもらう。燻蒸についても一定の回答があると期待している」
―本県にとって好材料はありますか。
「コシヒカリは安全で味がいいと評判だった。最高級の本県産コシの店頭価格は中国産を相当上回るが、富裕層に需要があるそうだ。今後(健康志向者向けなどの)機能性食品のような付加価値があると、さらに優位になりそうだ」
―輸出拡大はTPP参加を後押しすることにはなりませんか。
「今進めている検討はTPP参加を前提にしたものではない。まずは農業対策だ。その選択肢の一つが輸出であり、農地の集積であり、6次産業化だ。農業対策が先、その後に開放だ。農業を守る方向で議論が進んでいるので、関係者は心配しないでほしい」
―農業強化の基本方針は予定の6月までにまとまりますか。
「通常国会が紛糾すれば影響を受けかねない。そうならないよう手を尽くすが、6月までに結論を出すのはなかなか厳しいと思う。従って現段階ではTPP参加のめどはつかない」
―泉田裕彦知事がTPP交渉で主食用米の関税撤廃対渉からの除外を求め、認められなければ交渉から撤退すべきだとの考えを示しています。
「TPPは原則、全部の関税がゼロ。例外が認められるなら経済連携協定(FTA)の拡大版になって、(高いレベルで協定を結ぶ)TPPの意味がなくなる。(例外の設定は)難しいと思う。甘い期待だ。」
篠原孝(62歳、衆議院議員3期、長野県第1区、農水副大臣)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%A0%E5%8E%9F%E5%AD%9D
*衆議院議員 しのはら孝のブログ
TPPを切っ掛けとした、食と農林漁業再生推進本部の設立 -10.12.16
(突然でてきたTPP)
10月1日の臨時国会冒頭の菅総理の所信表明において、TPP(環太平洋包括連携協定等)への交渉、参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏(FTAPP)を目指すということが突然表明された。
これを切っ掛けに、党内は騒然となり政府の調査会で白熱した議論が行われた。政府内では関係副大臣会合に任され、私はその副大臣会合に10回参加し、事後調整に追われることになった。
その結果、11月9日にやっと包括的経済連携の基本方針が決まり、交渉には参加せず当面情報収集を中心とした協議を行い、TPPに参加するかどうかは別途判断することとなった。それと同時にその間に自由化にも耐えうる日本の農林漁業の体制を構築する為に、異例のことだが官邸に「食と農林漁業再生推進本部」を設け、6月中旬までに基本方針を定め、10月に行動計画をうたって、それに伴う予算措置を講じることになった。
(小国間のTPP)
私は、10月1日以降完全にTPPに掛かりきりになった。
TPPは大畠経済産業大臣が、9月17日組閣し、その後の大臣レクで始めて知ったと正直に述べたが、それほど唐突なことだった、もちろん一般の国会議員は知る由もない。もちろん、関係者の間では、TPPの存在はつとに知られていたが、国際的にもほとんど関心を呼ばなかった。なぜかというと、2006年にシンガポール、ブルネイ、NZ、チリといった小国が、非常に自由度の高い経済協定を結んだだけのことだからだ。いずれの国も人口は数百万、自国で必要な物を作ったりすることは完全には出来ず、必要なものは諸外国から輸入しなければならない。そういった延長線上で、自由貿易が生きていく上に一番都合のいいことであり、4カ国が結託して自由貿易協定を結んでいた。
(アメリカのTPP参加表明)
それが一変して大きく取り上げられるようになるのは、2009年の11月14日、オバマ大統領がサントリーホールでTPPの参加も検討していくと宣言してからである。これには政治的背景もあり、小沢一郎氏(当時民主党幹事長)が中国に国会議議員140数人をつれて行ったりしているところに、鳩山総理が東アジア共同体構想をぶち上げ、日本は中国にいかにも接近しているというムードが漂い始めたのに対し、オバマ大統領がけん制したものと思われる。その後、2010年になってから、アメリカだけではなく、オーストラリア、ベトナム、ペルー、フィリピン、そして最後はマレーシアの5カ国が新たに名乗りをあげ、3月から2ヶ月に1回ずつ会合を開いていた。
(FTAを推進した韓国)
一方、韓国は2007年にアメリカとのFTA自由貿易協定を結び、2010年10月にはEUとのFTAも署名し終わっていた。その結果、2011年7月からはEUへの輸出は関税がゼロになる。それに対して、日本の自動車には10%、液晶ディスプレーの入った家電、テレビなどは14%の関税がかけられる。これにビックリ仰天したのが日本の財界である。そうでなくとも韓国の追い上げは厳しく、現代自動車、サムスン、LGといった家電会社の追い上げが激しく、困っているところに関税で差をつけられてはたまらんということで、何をしているのかと外務省、経産省をつっついたのは明らかである。そういった声におされて、突然所信表明にTPPが出てくることになっていた。
私は、前のブログにあるとおり、鹿野農水大臣から突然韓国出張を命じられて行ってきたが、韓国は全ての関税をゼロにするということをせずに、二国間で応用がきく、例外を認めさせる自由貿易協定を着々と進めていた。
(日本の思いつきのEPA/FTA)
TPPと他のEPA/FTAとの違いは、完全自由化を宣言し、10年以内に全ての関税をとっぱらうのがTPP。EPA/FTAは二国間で例外措置を設けつつ、なるべく自由貿易を推進していくというものである。
日本も、あまり大国ではなく、結びやすい国、最初はメキシコ、そのあとスイス、シンガポール、チリといった国と結び、つい最近でいうとインド、ペルーなど、13カ国と結んでいる。ところが、全貿易額に占める割合はたった16%である。一方、韓国の場合は最大の貿易相手国中国やライバル日本が入ってないが、45カ国とFTAを結び、貿易額の36%に達し、かつ、米・EUといった大国が入っている。計画的に着々と手を打ってきた韓国と格好だけつけてきた日本の違いである。
(「先対策後開放」という周到な準備)
それに加えて韓国は、チリとのFTAを結んだのを切っ掛けに、国内農業のてこ入れを始め、10年間で9.1兆円の農業予算をFTAが発行する前に注ぎ込んでいる。だからこそ私が韓国に出張した時も、農業団体はそれほど騒いでいなかった。これを「先対策後開放」と呼んでいた。
前原外務大臣に言わせると、日本はGDPが韓国の5倍なのだから、5倍の予算を出してもいいのだそうだ。それにあわせると、約48兆円を10年間に投入することになり、年間4.8兆円の予算となる。現在の農林水産省予算が2.5兆円であり、約倍の予算を10年間注ぎ込むことになる。農業生産額で言うと約3倍ぐらいなので、27兆~30兆になるが、それでさえ今の予算ではとても追いつかないことになる。
こういった事から、韓国並みの政策を打とうということで、官邸に食と農林漁業再生推進本部が設立された。私はその下の幹事会の共同座長を務め、10月の行動計画成案に向けて大忙しの仕事をしなければいけなくなっている。
(スピード審議が必要な実現会議)
少人数で濃密に議論が出来るように、有識者の人数を絞って実現会議を設置した。もちろん茂木JA全中会長とどうしても必要な人たちは入っているが、他はユニークな人達がいる。例えば歌手の加藤登紀子さんは、有機農業の信奉者で、ご夫君(故藤本敏夫氏)と作り上げた千葉の鴨川自然王国の理事をしておられる。第一回の会合は11月30日に開催したが、今後3ヶ月に2回、あるいは月に1回のペースで進めていくことになる。
TPPの事前の情報収集であるが、今のところ当然のことながら、参加を表明しなかった日本には冷たく、傍聴だけさせてくれといった虫が良すぎるお願いは聞き入れられてはいないようである。私は、折角の機会なので、官邸に設けられたこの本部を中心に、駆け足ではあるが、6ヶ月で農林水産行政の今まで足らなかった分を補うべく、大きな改革案をまとめたいと思っている。
改革派官僚に聞く(上)
2010/12/13 フォーサイト編集部
経済産業省から国家公務員制度改革推進本部に出向して内閣人事局や国家戦略スタッフ創設の立案などに従事し、鳩山内閣発足後は仙谷由人行政刷新相のもとで大胆な改革案を提議。しかし、2009年12月、仙谷氏により更迭されて経産省大臣官房付に――。
かつてフォーサイトでも、その動向を取り上げたことがある「筋金入りの改革派官僚」古賀茂明氏(「ひそかに退職勧奨を受けた改革派官僚」参照)。その後も、経済誌への寄稿などで民主党による公務員制度改革の後退に警鐘を鳴らしつづける氏に、今の「政」と「官」が抱える問題点について聞いた。
――野党が10月、民主党政権の天下り対策を批判する古賀さんを政府参考人として臨時国会に出席させた際、仙谷官房長官は「彼の将来を傷つけると思う」と語り、野党から「恫喝だ」と批判されました。民主党は古賀さんの発言に神経を尖らせており、経産省も「自ら退職することを望んでいる」と報じられましたが、そうしたご自身の立場をどうお考えですか?
古賀 私にできるのは人事当局の判断を待つことだけです。人事は大畠章宏経産相の決断次第ですが、大臣も基本的には事務方に任せているようです。事務方は私に「辞めろ」と言うわけにもいかず、扱いに悩んでいるのではないでしょうか。私としては、当局の判断を待ちながら、その間は可能な範囲で情報を発信していくつもりです。このままでは日本はダメになる。思い切った改革が必要だという気持ちは変わっていません。
経済が拡大するという前提は崩れた!
――このままではダメだということですが、具体的には?
古賀 バブルの頃まで、国の仕組みは経済が拡大・成長することを前提につくられていました。自民党は経済の拡大によって得られた果実を自らの支持層――たとえば農協や医師会など――に厚めに配分することで政権を維持し、官僚もまたその果実の上に自分たちの生活を守る仕組みをつくりあげ、それを維持してきたのです。経済が上向きであるなら、自民党の支持層以外にもある程度配当は行き渡りますし、官僚が果実の“上前”をはねても、つまりは税金をムダに、自分たちの利益のために使ってもまだ余裕はありました。しかし、バブル崩壊以降、経済が拡大するという前提は崩れ、果実は失われました。どこか特定の層に厚めに配分しようとすれば、一般国民が犠牲を余儀なくされます。その構造を変えなくてはならないのに何も変わらない、変えられない。これではダメだということで自民党はついに退陣を強いられ、政権交代へとつながったわけです。
しかし民主党は、郵政民営化の事実上の棚上げ法案や農家への戸別所得補償や子ども手当の支給など、これから自分たちを支持してくれそうな層や人たちに対して手厚く保護する仕組みを構築しようとしました。旧い構造を断ち切ることを期待されながら、本質的には自民党と同じ利益誘導的バラマキの道を選んでしまったのです。「官」は「政」の本気度をよく見抜いています。官僚は民主党から「これはやれ」と言われたところに関しては形づくりにお付き合いしながらも、自分たちが守ってきた構造については「変えません。きっと大目に見てくれるだろう」という態度なのです。独立行政法人や公益法人、業界団体などに事業仕分けでメスが入っても、官僚は看板を掛けかえ、名目をかえ、他の事業につけかえたりして存続を図り、ゾンビのようだと評されました。それがいい例です。つまるところ、政も官もあまり変わっていない。中国はじめいくつかの途上国は著しい成長を遂げ、欧米もそれに遅れまいと懸命になっているにもかかわらず、日本だけが井の中の蛙のごとくです。このままではいけません。
民主党が犯した2つのミス!
――民主党が掲げた「政治主導」がうまく機能しなかったということでしょうか?
古賀 民主党は政治主導のあり方について、2つのミスを犯したと思います。ひとつは総理主導を打ち出せなかったことです。
憲法では、行政権は内閣に属すると規定されています。官僚はこれを「行政権は内閣にあるのであって、総理にあるのではない」「各省の事務を実施する権限は個々の大臣にあるのであって、総理にはない」と解釈します。これなら大臣ひとりコントロールしていれば行政の実権を握れるし、総理の“勝手なマネ”を抑止することができるからです。
しかし、総理には大臣を任免できるという強い権限があるのです。方針に従わない大臣は罷免して自らが兼任するということも可能です。要は、総理の決意次第で、行政全般を動かすことができるのです。
では、現実はどうだったでしょうか。長妻昭前厚生労働相のケースを見てみましょう。長妻さんはマニフェストに掲げたことを忠実に実現しようとしました。その一環として、役所の人事にも手を入れようとしたのです。大臣が仕事の目標を示し、それが達成できたか否かで信賞必罰を行なおうとした。天下りはまかりならんと宣言し、独法の役員を公募して、そこに官僚が応募してくると「これは天下り同然ではないか。ダメだ」と蹴飛ばし……。そういうことをひとりでやっていたのです。
これは本来、内閣全体の方針として行なわれるべきでしたが、長妻さんは結果的に孤立しました。総理も官房長官も一切助け舟を出さず、最後は事実上の更迭という憂き目に遭いました。官邸が長妻大臣を支え、内閣に対して「長妻を見習え」と指示していれば、様相はだいぶ違ったと思います。
もうひとつの間違いは、政治主導を「政治家主導」とはき違えたことです。政治主導とは「理念」であって、政治家は方針を示し、決断をし、責任をとるという意味合いのものであったはずなのに、民主党は「実体」として政治家が何もかもやるんだという次元の話にしてしまった。だから、予算案の策定にあたって政務三役が電卓を叩くなどという妙な光景が現出したのです。ロボットの頭脳の部分を政治家が担い、手足の部分を役所が担えばよかったのですけれど、政治家が自らなんでもやっていますというパフォーマンスに堕したのは、まさに本末転倒の事態だったのではないでしょうか。
中高年公務員の既得権保護政策!
――政治主導が失敗した結果、公務員制度改革案も官僚の手によって次々と骨抜きにされています。
古賀 6月に閣議決定された国家公務員の「退職管理基本方針」がそのことを象徴しています。これは、天下りを容易にし、かつ出世コースから外れた官僚の救済策を用意するものでした。
その中では、たとえば官僚の独法や政府系企業に対する現役出向や民間企業に対する派遣の拡大が認められています。かつて安倍政権は、各省庁の職員が官僚の再就職を斡旋してはならないと決めました。官と民の癒着を防ぐという観点に立った、妥当な法改正でした。ところが菅政権は、中高年の現役職員の出向や派遣は退職者の斡旋にはあたらない、ということにしたのです。これでは癒着を防ぐどころか強化されかねない。天下り規制は、完全に有名無実化してしまいます。
また、独法の役員ポストは昨秋から公募が義務づけられたにもかかわらず、現役出向の場合は公募しなくてよいということになりました。まさに骨抜きといえます。他にも、高位の「専門スタッフ職」なるものが設けられ、部長職以上の幹部を高給で遇する仕組みがつくられようとしています。出世コースから外れた課長級以下のための「専門スタッフ職」というポストは今までもありましたが、その上位版です。これなどは、次のポストがない部長や局長経験者を遇するためにひねり出された仕組みに過ぎません。
この「退職管理基本方針」を具体化するために、いくつかの看過できない措置が講じられてもいます。
官僚が企業に現役出向中も公務員在籍と同じく退職金算定の期間に組み入れられ、出向が不利にならないようにする制度はこれまでもありました。7月、政令が改正され、こうした退職金の算定対象となる企業が追加されたのです。NTTグループや日本郵政グループ、JR、高速道路会社などが新たに対象企業となり、事実上、天下り拡大への地ならしが行なわれています。
8月には人事院規則が改正されて、これまで「部長・審議官以上の幹部は『所属する省庁の所管業界』へは派遣できない」とされていたのが、「部長・審議官は『担当する局の所管業界』へは派遣できない」と変更されました。つまり、部長・審議官は自らが身を置く局の所管業界でさえなければ、省所管の企業にいくらでも派遣可能となったのです。
さらに、癒着を防ぐためには民間企業への派遣終了後の再就職を禁じるべきなのに、役所に戻って定年退職した後なら再就職しても構わないということになりました。これでは中高年の職員は、企業に派遣されている間に企業側と密約して、退職後の雇用について約束を取り付けておくことも可能になってしまいます。中高年公務員の既得権保護政策は、これほど周到かつ綿密に行なわれているのです。
見捨てられた長妻大臣!
――なぜそこまで「官」の勝手なふるまいが許されているのでしょうか?
古賀 民主党は政治主導を掲げて勇躍、役所に乗り込んだものの、本気で官僚と対峙した大臣はサボタージュに遭って仕事が前に進まなくなった。長妻さんと厚労省がその典型です。しかし、役人を排除しては何もできず、長妻さんにいたってはその結果、更迭されるはめになりました。そうした経緯から菅政権では、官邸は官僚との関係を修復しようと努め、大臣もまた官僚と仲良くしようとしているのです。
そのことは、様々な局面に現れています。天下りの容認もそう。事業仕分けにおいてもそうです。事業仕分けの場に政務三役が出て行って、蓮舫行政刷新相を相手に「事情を汲んでください」と言って、役所の立場を懸命に代弁しているでしょう。政治家の側にとって、その見返りはちゃんとあります。マスコミでは「霞が関の利益代弁者だ」と批判されても、役所では「大臣はさすがです」などと言って持ち上げられるし、関係団体からは感謝されるわけです。官僚はそのあたり、じつにうまく政治家を気分よくさせます。既存の政策を多少、お化粧直しして「大臣のために新しくしました」と言って提案してみせたり、海外から要人が来日した時にはマスコミを呼んで大きく報道させたり……。大臣も、役所の振り付けどおりにしていれば、気分がいいうえに間違いを犯さずに済みます。仮にミスをしても弥縫策や善後策を官僚が講じてくれます。反対に、振り付けにないことをすると、長妻さんのようにサボタージュに遭う。なんとも怖い話です。繰り返しになりますが、鳩山総理、菅総理はやはり長妻さんを助けるべきでした。結果的に長妻さんが内閣の反面教師になってしまったことが、今に悪い影響を残しているといえます。
改革派官僚に聞く(下)
――霞が関は一体、何を守ろうとしているのでしょうか?
古賀 霞が関は基本的に、一種の共同体です。生活協同組合や互助会のようなものと言っていいでしょう。明文化された合意などありませんが、そこの住人たちは「一生、霞が関ないしその周辺で生きていきます」という誓いを立てているようなものです。中央官庁に入った時はそんなことは考えておらず、国のために己を犠牲にしようとまで思っている人がどれだけいるかはわかりませんが、少なくとも面白い仕事をしたいと思っている人が多いのは確かです。
ところが、だんだんとやがて霞が関色に染まってくるわけです。それは当然のことで、組織である以上は上層部の意向が下部にまで浸透する。問題はその、浸透してくる論理と言いますか、構造なのです。
上層部は年功序列でポストに上がった人たちです。すべてのポストに本当に国民のために仕事をする人、優秀な人がいるわけではありません。そうした人たちは、国のためを思って働いているわずかな例外を除いて、こう考えているんです。「俺もそろそろ先が見えてきた。どうやって生活しようか」と。その眼前には代々続いてきた仕組みが存在します。途中で役所を辞め、政府系機関や公益法人や所管の業界団体、あるいは民間企業に天下りし、時にそれらを渡り歩きながら悠々自適の生活を送る、という長らく約束されてきた構造です。
次にそこに行こうと思っている人は、当然、その仕組みを守りたくなります。そして、自分がそこに行くためには、もちろんその組織に所属していなければなりません。霞が関生活協同組合、霞が関互助会にです。互助会のメンバーであろうと思ったら、変なことをしてはいけない、変なことをするくらいなら何もしないほうがいい。互助会が約束する将来の利益を享受するためには、自分が互助会の最も忠誠度の高いメンバーであることを示さなければなりません。だとすると、互助会のプラスになることをするわけです。
知恵は「組織」と「利権」のために!
――プラスになることとは?
古賀 天下り先にたくさんお金が行くようにする。あるいは新しい天下り先をつくるために、もっともらしい政策目的で法律を立案し、予算を獲って団体を新設するとか。それが組織のためになるし、ひいては自分のためにもなる。
そう考えるとお判りになると思いますが、官僚に「高い倫理観を持て」と言っても、あまり意味はないのです。彼らだって人間です。高い倫理観を持ちたいとは思っても、目の前にニンジンをぶら下げられると、どうしてもそちらに走ってしまいます。それは倫理感が低いからではなくて、ある意味では普通の真面目な人間だからなのです。こっちに行けば高い地位が保証され、生涯安泰である、というニンジンをぶら下げられた時、それには目もくれず、このような法律はやめましょうとか、こんな団体は潰しましょうとか、なかなか言えるものではありません。それを口にしたとたん、では天下り先がなくなっていいのだな、君は世話にならないのだな、となるわけです。自分はとてもそんな格好のいい、偉そうなことはいえないという“良心”が、官僚の心理規制になっている面もあります。
結局、インセンティブの構造が問題なのです。国民のために意義のあることをしたら報われるという構造になっていない。組織のため、組織の利権のために知恵を絞って働いたら偉くなれるし、お金ももらえるという現状のような仕組みなら、誰しもそれに即した行動をとって当然なのです。
――その仕組みは、どうすれば変えられるでしょうか?
古賀 また事業仕分けを例にとりましょう。仕分けで「これを廃止せよ」との判断が下ったら、それを閣議できちんと決定事項にします。それに従わない大臣は罷免もあり得ますよと、まずは総理がはっきり言う。大臣は、それを役所に持ち帰って「これを廃止しろ」と、その件を所管する局の局長に明確な指示を出す。そして、ある刻限までに達成できたか否かを見るのです。もしできなければ、局長はクビになるかもしれないし、裏で看板の掛けかえをするようなことがあれば、それこそ即クビですよと明確に命令を下す。
この時、課題を一生懸命にこなして期限より前倒しで達成できたとします。そのアイデアを出した課長なり、手腕を発揮した課長なりを部長に抜擢するようにするのです。局長ら幹部の働きぶりについては総理や官房長官もよく目を配り、頑張っていれば大臣に「次官にしてはどうか」と提案する。こうした構造になれば、ガラリと変わるでしょう。内閣の方針に従ってどこまで頑張ったかを評価の基準にする、政治主導の人事です。
さて、よく頑張った人を抜擢するには、ポストが空いていなければなりません。そのためには何が必要か。無意味にポストに居座っている人に席を空けてもらうこと。つまりは降格人事です。
現状では、官僚はよほど悪いことでもしない限りは降格させることができません。そうである限り、ポストは空かず、本当にそのポストを占めるべき人が占められない。それではダメです。私が「幹部の身分保障はやめましょう」と言うのは、そういうことなのです。幹部を任期制にして、「1年で与えられた仕事をこなせなければ、降格ですよ」といったことが可能な仕組みにする。民間企業の取締役なども任期1年や2年で、成果を出せなければ有無をいわさず降格やクビになったりするのですから、それを官庁も導入すればいいのです。
仕事はいくらでも作れる!
――霞が関的な思考や体質は、それで改まりますか?
古賀 キャリアにせよノンキャリアにせよ、今「上のほう」にいる人たちは役所に30年も勤めてその地位にあり、従来と全然異なる発想で仕事をしてくれと言っても、これは難しいでしょう。
ですから、もはや高齢の職員をリストラするしかないと考えます。そう言いますと、必ず驚かれます。別に何も悪いことなどしていないじゃないかと。私はそこでいつもこう返すのです。今は平時ではなく、危機ですと。企業でいえば、不況で売り上げが下がったので今年はボーナスなしだとか、残業ゼロで給与10%カットだとか、そうした多少なりとも余裕のある状況ではありません。JALと同様、国は今や事業再生段階なのですから、事業仕分けをきっちり行ない、プライオリティを見直し、不要な仕事はやめ、予算をカットし、要らなくなった組織と人は削る。そして、JALで行なわれたように、希望退職を募り、希望者が集まらなければ、次に整理解雇へと進めていく。
クビにできないとなると何が起きるかと言いますと、人が余っている、ならば仕事を作ろう、ということになるんです。必要な仕事はいくらでも作れます。「こんなにかわいそうな人がいます。だからこのような仕事をしましょう」「これは民間ではできません。行政でやりましょう」――。役所はこういうことならいくらでも考えつきますけれど、そうであってはいけません。
「危機」の意識はあるのか!
――現状では何が足りないのでしょうか?
古賀 法制面でいえば、たとえば公務員リストラ法を制定することなどが挙げられるでしょう。公務員は失業保険料を払っていないため失業手当が出ませんので、その手当をするとか、退職金を割り増しするとか、リストラを宣告されてから一定期間は給与の支払いを受けながら職探しができるようにするとか。リストラと言うと苛烈に聞こえるかも知れませんけれど、組織の上のほうには偉そうな顔をして仕事もせず、面倒ごとは下に押し付けてばかりという人が少なからずいます。そんな人たちを早く何とかしてくれという声は、若手の中に強くあるのです。
しかし、最も足りないのは危機感ではないでしょうか。街に出れば、派遣切りに遭ってハローワークに並んだけれど仕事は見つからない。仕事がないだけでなく、寮から追い出されて家もない。そういう話ばかりです。なのに公務員だけは仕事がなくても身分保障がある。給料も満額出るというのでは、税金で失業対策をしているも同然です。まるで身分制があるみたいです。国民の理解が得られるはずはありません。まして国の財政が危機だから消費税を上げてくれなどと言っても、誰も見向きもしてくれないでしょう。
最も心配なのは、国に危機感が乏しくて改革が遅滞してしまう分を、民間の頑張りで補ってしまうことです。過去の遺産を食い潰し、民間の人たちが死に物狂いで頑張ることで今の日本は支えられ、しばらく支えられていく。これで仮に10年くらい持ったとしても、その間、肝心なことはまったく進まず、10年先でいきなり倒れてしまうのが怖いのです。倒れた時はもはや回復不能で、かたや世界は遥か彼方に進んでいて背中も見えない。IMF(国際通貨基金)が乗り込んできても、日本の財政のあまりの酷さに途方に暮れてしまうかもしれない。
ギリシャやアイルランドは財政危機が急激に訪れたおかげで、かえってよかったのかもしれません。韓国は97年、アジア通貨危機のあおりを食って国がデフォルトの危機に陥り、IMFが介入して財閥解体などの果断な措置がとられました。これについては様々な評価がなされていますけれど、この時の改革が韓国の今日の経済発展の基盤を作ったということだけは確かでしょう。日本が今、あるいは数年のうちに、仮に国債が大暴落してお手上げになり、IMFの助けを求めるような事態になれば、むしろ思い切ったことができる可能性もあります。今のように危機感がないままダラダラ行くと、本当にまずい局面に立ち至ってしまうのではないかと私は危惧しているのです。
2010/12/07 フォーサイト 鈴木亘(学習院大学経済学部教授)
現在、各自治体では来年4月からの保育所入所の申し込みが始まっているが、東京都や横浜市を初めとする都市部では、既に昨年を大きく上回るペースの申請が続いており、待機児童数が過去最多を更新することは、ほぼ間違いない状況である。「待機児童の解消」をマニフェストに掲げていた民主党政権であったが、政権交代以来、皮肉にも待機児童問題は深刻さを増すばかりである。
さらに、民主党政権下で行なわれている待機児童対策や保育改革の動きは、特に菅内閣になってからというもの、迷走につぐ迷走を続けており、もはや完全に暗礁に乗り上げてしまっている。菅直人総理自身は、この10月に首相直属の「待機児童ゼロ特命チーム」を立ち上げ、時の人、村木厚子さんを事務局長に担ぎ出すなど、待機児童対策に相当の熱意を持っていたはずであるが、一体、この政権では何が起きているのだろうか。
市や区レベルの対策費!
まず、その鳴り物入りで始まった「待機児童ゼロ特命チーム」であるが、11月中旬までに早急に緊急対策をまとめるということであったが、その予定は2週間も遅れて、11月29日になってようやく、予算総額200億円の「待機児童解消『先取り』プロジェクト」が公表となった。
なぜ、公表が2週間遅れたのか。ある関係者が筆者に明かしたところによれば、2週間前に待機児童ゼロ特命チームの事務局から挙がってきた内容が、あまりにも「しょぼい」ものであったため、菅総理がそれに激怒し、事務局案を蹴ったためということである。何と、当初の事務局案の対策費の予算総額は、わずか「60億円」であったらしい。
この60億円がどれぐらい少ないかというと、現在、全国には2万3千もの認可保育所があるが、その年間の運営費は2兆3千億円、それに国と地方が投じている公費・補助金は1兆8千億円にも上る。このほかに、新設する私立認可保育所には、施設整備費といって建物建設費の4分の3の費用を、公費で賄っている。公立認可保育所の場合には、用地取得費や建物建設費も全額が公費負担である。
また、東京都認証保育所や横浜保育室など、一定の質が確保された無認可保育所へ、各自治体が独自に支出している補助金を加えると、全国の保育所に投じられている国民の税金の総額は、軽く2兆円を超すことになる。2兆円に対する60億円は、率にして何と0.3%に過ぎない。
実際、例えば東京都で児童100人規模の認可保育所を新設すると、年間の運営費は約1億5千万円、建設費や用地費は約2億5千万円かかるから、60億円で作れる認可保育所はせいぜい15園程度、定員増は1500人に過ぎない。これではまるで、一つの市や区のレベルの対策費である。厚生労働省は、申請を諦めている潜在的待機児童も含め、全国で85万人の待機児童が発生していると公表しているが、85万人に対する1500人では、まさに「大海の一滴」というべきである。
これでは菅総理ならずとも、対策チームの事務局のやる気の無さに、怒りだすのも無理は無い。しかし、総理が激怒して、2週間後に何とかひねり出してきた予算額も「200億円」であるから、ほとんど大差は無い。総理直轄プロジェクトにおいて、一国の総理の怒りのリーダーシップの成果は、何と140億円(60億円→200億円)に過ぎないのである。
全く行なわれなかった規制緩和!
厚生労働省が来年度要求している社会保障関係費は28.6兆円と、文部予算や公共事業などの他の予算が軒並み1割カットされる中で、今年度予算額の27.3兆円が「聖域」としてまるまる温存された上、1.3兆円もの自然増をそのまま認められている。社会保障関係費は、国の一般歳出の半分以上を占める大盤振る舞いの予算である。待機児童対策のために、そのほんの一部分すら組み替えることが出来ない、これが「有言実行内閣」を標榜する菅内閣の悲しい現実である。
この乏しい予算の中で、保育所の大幅な供給増を図るためには、大胆な規制緩和を行なうより手はない。しかしながら、特命チームが公表した規制緩和策は、(1)世の中にほとんど存在していない「認定こども園」のうち、これまた、ほんの一部を占めるにすぎない「幼保連携型認定こども園」の定員基準を引き下げる(開設に必要な定員数を引き下げて、開設しやすくする)、(2)認可保育所の既存ビルの空きスペースを活用するための屋外階段設置基準を緩和する(避難用の屋外階段の幅や広さ等の規制を緩和する)、という2つに過ぎなかった。
これでは、実質的に規制緩和を全く行なわなかったといっても過言ではない。今回、打ち出されるはずであった規制緩和策の下馬評としては、(1)東京都や大阪府などが提案していた保育所や保育ママの部屋の最低面積基準の緩和、(2)特区等を通した規制緩和策の推進、(3)株式会社やNPO(特定非営利活動法人)による認可保育所の開設を実質的に拒んでいる諸規制の撤廃などが挙がっていたが、驚くべきことに、最終的に何一つ残らなかったのである。これでは、待機児童は絶対に減少しないであろう。
素人同然の副大臣・政務官!
なぜ、このように意味も無い、やる気も無い対策案が臆面も無く出てきたのかといえば、それは現在、民主党政権下で行なわれている大元の保育改革論議自体が迷走を続けているからである。民主党政権では、今年1月に「子ども・子育て新システム検討会議」を設置し、そこで幼稚園と保育所の統合を図る「幼保一体化」や、保育所の大胆な規制緩和策を中心とする改革論議を続けてきた。
この子ども・子育て新システム検討会議も、設置当初は政治主導として、関連省庁の政務官(大臣、副大臣、政務官の3役は民主党の議員である)が議論を引っ張っていたが、7月の参院選、9月の代表選で議員たちが忙殺される中で、だんだんと厚労省主導の議論となってきた。その後、菅内閣の成立で、関係していた保育に詳しい政務官たちが全て首をすげ替えられて、素人同然の政務官、副大臣が着任してからは、もはや政治主導など見る影も無く、完全に厚労省に乗っ取られた審議会状態となっている。
その厚労省本省が進めている「審議会」が迷走する中で、待機児童ゼロ特命チームがそれを超えて独自の対策を打ち出せるかといえば、そもそもそれは不可能であった。なぜならば、待機児童ゼロ特命チームの事務局長をつとめる村木氏は、内閣府・政策統括官というポストに就いているとはいえ、そこは厚生労働省の出向者たちが占領している厚労省の「出店」であり、本省からみれば村木氏は、厚労省の一局長という立場に過ぎない。
霞が関の論理から言って、その一局長が本省の進めている方針を超える越権行為を行なうことが許されるはずは無いのである。先の特命チーム関係者によれば、特命チーム事務局にははじめから、厚労省によって、子ども・子育て新システム検討会議の決定を超える対策を決めないように釘が刺されていたということである。気の毒なことに、検察からようやく解放された村木氏は、一難去ってまた一難という苦しい立場にあったのである。
「幼保一元化」大混乱の“自爆テロ”!
それでは、「子ども・子育て新システム検討会議」は現在、どうなっているかと言うと、11月1日に、約1年間の長い議論の末の結論として、現行の幼稚園と保育所をすべて廃止し、「幼保一体化」施設である「こども園」に全てを統一するという無謀な改革案を提示した。これは端的に言って、幼稚園を全て保育園にするという改革案であるから、幼稚園や保護者団体が当然のごとくそれに大反発し、現在、大混乱に陥っている状況である。
実はこれは、厚労省による一種の「自爆テロ」であると、筆者は考えている。なぜならば、改革を混乱させ、遅らせれば遅らせるほど、既存の保育業界や厚労省の保育利権が温存されることになるからである。民主党が政権を手放す時まで、改革論議を長引かせれば、現在行なわれている全ての改革論議は御破算になる。
だいたい、厚労省が自分の保育利権を手放し、厚生労働省とは別途、「子ども家庭省」を作るなどと言う民主党の改革案に本気で取り組むはずが無いのである。また、子ども・子育て新システム検討会議では、保育参入の大胆な規制緩和策が決まりかけており、厚労省官僚の大事な天下り先でもある保育業界団体が猛反発を行なっていた。隙があれば、こうした改革論議を壊したい、あるいは自公政権下で行なわれていたような保育業界団体に有利な案に軌道修正を図りたいと思うのが、厚労省の本音なのである。
しかし、そこは民主党の政治主導ということで、鳩山政権下で活躍していた保育に詳しい前の政務官たちは、なんとかその動きを抑え込んで、官僚たちに、保育業界団体や幼稚園団体をなだめさせたり、利害調整をさせたりしていたのである。そして恐らくは、彼らが菅内閣でも引き続いてその任に当たっていれば、事前に周到な根回しが出来た後でしか改革案を発表させなかったはずであるから、今回のように、発表直後に関係団体が猛反発するような事態にはならなかったと思われる。
いずれにせよ、待機児童ゼロ特命チーム、子ども・子育て新システム検討会議の双方が厚労省主導の下で立ち往生している限り、ますます深刻度を深める待機児童問題は放置され続け、一向に改善に向かわないであろう。その根本的な原因は、菅内閣が自身たちの延命だけを考えて、官僚たちに丸投げに近い政策運営を続けているからである。本音では改革に反対している厚生労働省の主導を許している限り、この袋小路に出口は見出せないのである。何も決めない、何も決められない菅内閣が続くことによる日本経済の損失はあまりに大きい。
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