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オバマ大統領が韓国教師を称賛!
2011年2月9日(水)日経ビジネス 趙章恩
オバマ米大統領が1月25日、一般教書演説で、韓国の教育とインターネット環境の優秀性を称賛する内容の発言をしたことが日韓で大きく取り上げられた。
オバマ大統領は米国の政府予算緊縮に関して、他の支出は減らしても未来のために教育、ブロードバンドインターネット、高速鉄道、エコなエネルギーといった核心分野の支出は伸ばさないといけない、数学と科学の教師を10万人増やす、といった話をしながら韓国と中国を事例として登場させた。
「子供の成功に対して、両親の次に影響を与える存在が教師である。韓国では教師が国家の建設者(nation builders)とされている」、「米国も子どもを教育する人たちに対し、尊敬の心を持たなければならない」、「韓国家庭のインターネット接続は米より優れている」などなど、韓国の教師とネットインフラを称賛した。
日本では、「KOREA」という言葉は7回も登場したのに日本については何も言及しなかったと、わざわざ指摘した新聞もあった。一般市民からすれば何の意味もない比較である。米国に褒められることがそんなにうれしいのだろうか? それに韓国の小中高校の教育は大学入試がすべてある。どういう過程を経たかに関係なく、結果として名門大学に何人入学させたかで学校の評価が決まってしまう。韓国の教育制度は問題だらけだというのに、オバマ大統領に褒められてしまうと、なんだか後ろめたい。
教育科学技術部長も、オバマ発言にためらい!
この演説があった数日後、韓国では、教育科学技術部(韓国の文科省)が「学校教科課程先進化エキスポ」を開催した。主なプログラムは、1)子供の学習負担を軽減しつつ学習効率を高めるために、子供一人ひとりに合わせた教育を行ったモデル学校の授業事例発表、2)教育フォーラム、3)国際セミナー、4)大学入試政策セミナーなど。教師、学生、保護者が参加した。
このエキスポでオバマ大統領の演説が話題になった。エキスポの開会式に出席した教育科学技術部の長官は、「韓国の経済成長を海外では教育の力であると解釈しているようだ。私教育に奪われた学校の影響力を早く取り戻せるよう努力したい」、「米大統領が見習おうと言った韓国の教師をどうすればうまく生かしていけるか、一緒に悩みましょう」とコメントした。教師も教育も韓国内では叩かれてばかりなのに米に褒められて、困ってしまった、といった雰囲気だった。
「私教育」の負担が重く出産をあきらめる家庭も!
長官がコメントした「私教育」とは、塾やEラーニング、家庭教師といった民間企業による教育のことである。以下の理由から、学校の授業よりも塾の授業を大事にする風土が生まれてしまった。名門大学に入るためには早期教育、英才教育が必要。学校教育は全員に合わせているから自分の子供にとってはレベルが低すぎる。
日本でもたびたび紹介されているように、韓国では収入の8割ほどを教育費、つまり私教育に注ぎ込む。子供のためにオールインした結果、自分の老後対策を全く取れることができず、子供に依存するしかない構造となっている。ここまでやったのに子供が名門大学に入れず就職もできなかったら、一家が都市貧民になるのは時間の問題である。
韓国教育開発院が、全国2527世帯を対象に2010年に実施した調査によると、3歳以上の子供の私教育参加率は99.8%であった。74.3%私教育費に負担を感じていて、42%私教育費のために生活費を切り詰めていると答えた。さらに、42.7%は私教育費が負担で出産をあきらめたことがあると答えている。「私教育費負担が出産率低下の主犯である」という項目に95.8%が「イエス」と答えている。私教育費が負担で子供を産まなくなる国が他にもあるだろうか。それでも65%は、経済的余裕があれば私教育費支出を増やしたいとしている。
子供の代わりに親が塾で勉強!
私教育は学校教育の信頼性、教権が地に落ちたことの象徴として大変な問題になった。李明博大統領は就任当時、学校教育をしっかりさせて私教育費を軽減させる、塾に行かなくても良い大学に入れるようにすると公約した。実際に、無料で利用できるインターネット教育放送や放課後学校(放課後、科目ごとに専門講師を呼んだり、教室のIPテレビを使ってEラーニングで授業を受けられるもの)を実施している。塾のない地方に住んでいても、高い参考書が買えなくても、豊富な参考資料を使って勉強できるデジタル教科書の導入なども、着々と進めている。いずれも学校教育を立て直すためのプランだ。
2009年に行われた国政満足度調査では、最も満足度が高いのは経済で57%、最も低いのが教育で44%であった。ただし、李大統領が導入した教員能力評価制度、放課後学校実施、就職後学資金返済などの政策については満足度が高かった。
それでも「自分の子供にはもっと良い教育を」、「よりレベルの高い教育を」と目指す保護者は後を絶たない。留学を含め、私教育費の負担はあまり変化がない。どれぐらい熱心かというと、お母さんたちも子供と分担して塾に通う。子供が国語の塾に行っている間、お母さんは数学の塾に行って授業を聞き、その内容を家で子供に教える。こうしたことは当たり前すぎて話題にもならない。
まだ30代だというのに、同窓会で自分の話ではなく、自分の子供がどれだけ優秀なのかと何時間もしゃべりまくる人が多くてびっくりしてしまう。「子供は親の戦利品」という考え方がいまだに根強く残っている。
韓国ではどの地方に行っても、国立ソウル大学への進学率が高い塾の周辺マンションがもっとも値段が高い。交通とか景観とか関係なく、教育環境が不動産価格を左右する。
筆者の家族、親戚はほとんどが現役教師または定年退職した教師である。お正月連休の間、よく話題になったのはやっぱり今回のオバマ大統領の演説であった。「海外から見たらそうかもしれない」というのが共通した意見だった。
韓国では大学入試で合格することが子供たちのゴールになっているので、大学に入学したとたんに目標を失う子供が多い。何をしたいのか、どんな人になりたいのか、自分の人生を考える暇もなく、すぐ就職競争が始まる。多くの韓国人は、米のように自由にのびのびとした環境、大学では好きな研究ができるようしっかりバックアップしてくれる制度をうらやましく思っている。米国が心配しているのは基礎学力低下であるから、韓国のように成績の良い子供が多く、全般的にある程度の教育水準を保つ国が優秀に見えるかもしれない。
先生は、やはり先生!
教師の質の面でも、韓国の方が優秀に見えるだろう。どんなに私教育が盛んだとはいえ、儒教の考えが残っているから、塾でも学校でも「先生様」の言うことは従う。昔から「君師父一體」といって、王様と先生と父の恩は一緒、と教えられてきた。先生の影も踏んではならないとされている。
今はそうでもないかもしれないが、韓国人の多くは「思い出の恩師」が1人ぐらいはいる。この前も知人が長年勤めたIT業界を引退して飲食店を開くというので開店祝いに行ったら、大雪の中4時間もかけてやってきたというおじいさんがいた。知人の小学校時代の恩師だという。「教え子の人生第2幕を祝ってやりたくて来た」という恩師の激励にもらい泣きしてしまった。
韓国でも、教師に暴力を振るったり、自分の子供にかまってくれないと学校で騒いだりするモンスターペアレントが問題となっている。だが、まだまだ大多数の保護者は自分の子供を教える先生に「先生様」として接し、先生の言うことは絶対と信じている。
ソウル市の教員試験の平均倍率は52.9倍、中には140倍も!
韓国では医師、弁護士、検事、判事など韓国語で「サ」の発音で終わる職業が一番とされてきた。最近はその中の一つが「教師」となっている。給料は少なくても、定年までリストラされることのない教師になりたがる人が増えているからだ。
教師の採用試験の倍率も年々高くなっている。教育庁のデータを見ると、2010年10月に行われた2011年度中高校教師採用試験の倍率はソウル市の平均が52.9倍。科目によっては140倍なんていう場合も珍しくない。小学校教師の採用試験はもっと倍率が高くなる。少子化で子供の数が減っているから教師採用の人数も減り、倍率は毎年高くなるばかりである。競争が激しいから、優秀な人が教師になる。
韓国の教師はITリテラシーも高く、教師の校務はすべてITを基盤になっている。日本ではパソコンが使えない教師がいるので情報化できない、なんて聞くが、韓国では職業に関係なくインターネットとパソコンが使えるのは当たり前、という前提で学校や教室の情報化を進めてきた。もちろん、定年退職に近い年配の教師は若い教師ほど使いこなせないが、研修を重ね、教え合うことで乗り越えている。
熱心に研究に励む若手教師!
20~30代の教師は研究熱心でもある。動画や画像を盛り込んだパワーポイント教材を作成して電子黒板で授業をしたり、より良い授業を行うため有名な予備校講師の授業を参観したり、Eラーニングではどんな風に教えるのか体験したり…。教師の教育研修は義務となっていて、毎年夏休みと冬休みは「教材研究」という研修を受けないといけない。
リストラがないからと安心してはいられない。2010年から実施された教員能力評価制度によって、学生、保護者、同僚教師が参加する評価があるからだ。教員評価の結果は外に公表されることはない。それでも評価されるという負担からか、教師の授業準備や保護者に対する態度も、さらに気をつけるようになったという話をよく聞く。
教職にあるうちの姉はよくこう言う。「医師や弁護士は、社会的地位は高いかもしれないが、病人や犯罪者に囲まれた職場。それに比べて、これからの時代を担っていく子供たちといつも一緒にいられる教師は最高ではないか」。こうした「教師」という職業に対する誇りが、「尊敬される教師」につながっているのかもしれない。
大学入試に合格することだけが目標となり、問題の多い韓国であるが、オバマ大統領の発言をきっかけに教育のあるべき姿を振り返ることができた。これからは、世界において、本当に優秀な事例になれるよう変化していきたいものだ。
六四天安門事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E5%9B%9B%E5%A4%A9%E5%AE%89%E9%96%80%E4%BA%8B%E4%BB%B6
中国版ツイッターが情報統制を突き崩す?
2011年2月9日(水)日経ビジネス 福島香織
2月3日は中国などでいう春節、旧暦の正月で、2月2日は除夕、つまり旧暦の大みそか。中華社会ではこの日をもって新年で、虎は去りウサギ(卯)の年がやってきた。卯は東の方角、日の出に象徴される再生の象徴だ。そして足が速い。
その新年を迎える瞬間、「放鞭炮」といって、爆竹をならす風習がある。もっとも今の時代は爆竹なんて可愛いものではなくて、お金をかけた華やかな打ち上げ花火がばんばん上げられる。
春節花火とエジプトの銃撃映像がシンクロ!
2月2日夜から3日にかけて、そういう無数の花火が打ち上げられている北京の春節の様子を、知人が動画中継サイト・ユーストリームで中継してくれた。ツイッターアカウントからユーストリームのページに入ると、見慣れた北京の夜景に飛び交う花火の映像と、耳のつんざく爆竹音が流れた。インターネットやツイッターのおかげで、東京にいながら、懐かしい北京の春節気分を味わうことができた。
しかし、その後、アルジャジーラのホームページでニュースを見ることになった。これも、ふと目にとまったツイッターのリンクから入った。タハリール広場で2日に発生した反体制派と親大統領派との激しい衝突の映像が流れていた。ツイッター上ではひっきりなしに、現場からの断片的な情報が流れてくる。
軍が発砲した、611人以上負傷した、記者が親大統領派に暴行された後、行方不明だ…。1月25日から発生していたエジプトの反体制デモのニュースはそれなりに注目していたが、いつになく衝撃を受けたのは、広場という言葉と、そして春節の自動小銃の発砲音にも似た爆竹音が耳に残っていたからだ。
この映像を見たあとに、春節花火の音を聞いていたら、おそらく北京を懐かしむより背筋が凍っただろう。天安門事件を連想せずにはおれないからだ。民主化を求めて北京・天安門広場に集まる寸鉄帯びぬ学生たちに向けて軍が発砲し、自由への望みを戦車が押しつぶした1989年6月3日から4日未明の事件である。
軍がデモ隊を武力鎮圧したか、しなかったか!
天安門事件について、今さら説明の必要はないと思う。この事件は中国国内の最高28%にも達した高いインフレ率や、中国共産党内の保守派と改革派の権力闘争という国内的要因に加えて、連鎖する東欧諸国の民主化という国際情勢の影響を受けている。
1979年に初のポーランド人のローマ法王・ヨハネ・パウロ2世が誕生し、ポーランドの民主化運動を後押しした。1985年に共産党書記長となりペレストロイカとグラスノチの大改革を断行していたゴルバチョフは、ポーランドの民主化を阻害することなく、1989年に初の自由選挙が行われる。この波及効果でベルリンの壁が崩れ、チェコでビロード革命がおこり、ルーマニアのチャウシェスク大統領が失脚した。そしてバルト三国の分離独立、ソ連の崩壊…と続いていくのだが、こういう時代の空気の中で1989年の中国の若者の民主や自由への希求が醸成されていった。
中国が東欧と違うのは、軍がデモ隊を武力鎮圧したか、しなかったかである。鄧小平が学生デモの武力鎮圧の指示を出さなければ、中国の形も変わっていたかもしれない。
それから20年余りが経って発生したチュニジアのジャスミン革命からヨルダン、エジプトの反政府デモへの広がりは、当然、多くの人に党「1989年革命」を想起させている。チャイナウォッチャーや中国の指導者たち、一部の知的な中国人民はこれが中国にどう影響をもたらすかを必死に見定めようとしているところだろう。
ツイッターがいたちごっこを変えた!
「中東の動きは中国に波及しない」という意見も多い。中国の国内情勢は1989年当時とは若干異なる。1つは、インフレ率だ。2010年11月のインフレ率が前年比5.1%で、12月が同4.6%だった。高いと言えば高いが1987~89年の緊迫した状況とは程遠い。
もう1つは、中国の国際的地位の向上である。世界経済における影響力も国際政治における役割も格段に大きくなり、国際社会が中国の急激な体制変化を実は望んでいない。そして何より中国自身が、既に天安門事件という「教訓」を得ている。
だからインフレ率が上昇するとすぐ引き締め、大学生など知識層の若者に愛国教育を徹底し、特権階級側に取り込み、その一方で厳しい情報・言論統制の締め付けを実施する。また、若者に天安門事件についての情報を与えず、民主化運動のリーダーになりそうな人物は早めに潰してきた。特に情報統制の徹底ぶりは見事なもので、今回のチュニジアやエジプトのデモの報道も表向きにはほぼ、コントロールできている。
しかし、それでもなお「中東の波が中国にまで及ぶかもしれない」と思う人も少なくないのは、インターネットの発達、とりわけ動画サイトやツイッターの威力のすごさだ。チュニジアやエジプトの出来事は、ツイッターやフェイスブックに代表されるソーシャルネットワークシステムの影響が大きいというのが世界の共通認識である。
中国には非常に洗練されたインターネット統制システム「金盾工程」があり、さらに人海戦術で、見事なネット統制とネット世論誘導を展開してきた。しかしインターネット統制はしょせん「技術」であり、より高度な「技術」を使えば破られる。すると体制側はさらに高い技術でもって統制破りを阻止するわけだが、突如登場したツイッターが、このいたちごっこを変えた。
「天安門事件とは今、エジプトで起きているような状況」
ツイッターはネット上の情報発信のロケットブースターのような役割を果たし、情報を発信しようとする側が、制御しようとする側より圧倒的に有利になったのだ。ネットは転載を繰り返すことで情報が拡散されていく。そして、ツイッターの拡散スピードは、人海戦術で敏感情報を削除するレベルでは到底追いつかなくなった。
中国ではもちろんツイッターへのアクセスを禁じているが、同じシステムを使った国内向けの「微博(マイクロブログ)」があり、これが昨年の初めの段階でユーザー数が7500万人以上に膨れ上がっている。微博上のつぶやきは一瞬でフォロワー全員に拡散し、その数秒後にフォロワーの何人かが自分のフォロワーに転載し、ねずみ算式に情報が伝達される。
ツイッターには、大陸の中国人約20万人がミラーサイトやバーチャルネットワークやプロキシ・サーバーなどを使って登録している。そういう人たちはたいてい中国の微博にもアカウントを持っている。中国の著名コラムニストで2月初旬現在で約3万4000人のフォロワーがいる安替も指摘していた通り、その結果、世界のツイッターと中国の微博は事実上リンクし、例え中国当局が報道統制を敷いても、世界の出来事は統制の網をかいくぐり中国国内に密やかに広がっている。
中国当局は「エジプト」や「ムバラク」という言葉を検閲ワードにして、その用語の検索結果を示さないようにしたらしいが、ムバラクの中国語読みの「穆巴拉克」を「穆小平」、「穆錦濤」などと皮肉をこめた隠語に言い換えて、統制されているはずの微博の中で広がっていった。それは天安門事件を知らない世代に、天安門事件とは今、エジプトで起きているような状況である、と教えているようなものでもある。
2010年、中国は「微博元年」と言われるほど微博の社会的影響力が認められた年でもあった。最初の微博は2009年8月に開設された「新浪微博」だが、その新浪微博には中国の記者たちが次々に実名で登録し、本来なら隠ぺいされかねない地方の小さな事件を転載した。それが拡散し、世論喚起する役割を担った。
その中で記念碑的事件とされるのは、江西省宜黄県の小さな農村で発生した強制立ち退き焼身自殺だ。本来なら地方政府の圧力で封殺されたろう事件だったが、微博記者がこの件を取り上げたことで、全国に知れ渡り、社会の同情と支援を呼び、封殺し切れなくなった。この事件を広めた微博記者は「鳳凰週刊」の敏腕記者で知られる鄧飛で、中国の権威あるメディア関係者に贈られる「華語伝媒盛典」で2010年の年度記者に選ばれた。
以前、北京で会った時、彼は微博の特徴についてその速さだけでなく「記者も官僚も警察も市民も微博の世界では、その発言力が平等・公平である」「ニュースによって人を連携させる」と評価した。その言下に含むのは、微博の中で人々が民主・自由を味わい、連携して圧政に抵抗することを知ったということだと私は思った。
チュニジアもエジプトも「抗議の焼身自殺」が世論喚起のきっかけになったことを思えば、中国で微博の影響力が広く認識された事件がやはり抗議の焼身自殺事件だったというのは、偶然の一致とはいえ、何がしかの予感もさせる。
ウサギは血まみれになりながらトラをかみ殺す!
北京では天安門事件後の1993年から2005年まで、市内の爆竹が禁止されていた。それは安全強化の建前を取り入れながら、人々の天安門事件の恐怖の記憶を呼び起さないように、という配慮あるいは警戒によるものだった。2006年に爆竹・花火が市内で限定的ではあるが解禁されたのは、天安門事件の記憶が薄れたという判断と、むしろ爆竹花火に社会不満の鬱憤を晴らす効果を期待してのことだ。
しかし、中国当局が1つ失念しているのは、「天安門事件の記憶が薄れるということは弾圧の恐怖の記憶も薄れていく」ということだ。その証拠に最近のインターネットに散見される若者たちの体制批判の表現は、こちらが心配になるほど大胆過激になっている。
例えば、中国の動画サイトに流れたフラッシュアニメ「小ウサギ哐哐の2011年賀動画」は2010年に中国国内で発生した不条理な社会事件をウサギ(人民)とトラ(体制側)に見立てて揶揄した動画である。最後にウサギは怒りで目を真っ赤に燃え上がらせ、自分も血まみれになりながらトラをかみ殺す。
“窮兎虎を咬む”。つまり、虐げられた人民も今に体制に楯突くぞ、と政権に向かって威嚇してみせたのだ。それは、「08憲章」を起草し、2010年のノーベル平和賞を受賞した劉暁波らの覚悟とは全く違う「軽さ」だけにインパクトがあった。当然、国内では既に削除され、封殺されている。動画作者が今後、どのように処遇されるかが気になるところだ。
完全なる情報統制や世論誘導が長続きするはずはない!
こうやって考えていくと、この一連の中東、アフリカの動きの影響が中国に浸透していくことは防げないと思う。もちろん、中東に連動して体制変化がすぐに起こる可能性ということでは万に一つくらいだろうが、私が北京特派員時代、本社から言い含められていたのは「中国の体制変化が突如として起こる可能性は3割、との危機感で取材に当たれ」ということだった。
「3割」に根拠はない。万に一つであっても3割でもあっても、何かが起こる時は起こる。その時に、起こると思わなかったなどと言わないように、最悪の事態の予測をもって、行動し観察せよ、ということだ。
中国の経済成長ぶりを示す華やかな春節花火と、遠く離れた砂漠の国の騒乱が、インターネットによって奇妙にシンクロする時代だ。私たちがいかに前もって予測しても、世の中の動きは後からウサギのスピードで追い越してゆく。天安門事件が再来するかどうかは別にして、こんな時代に、完全なる情報統制や世論誘導が可能だという体制がそう長続きするはずはない、とも思う。
上場投資信託(ETF)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ETF
密かな人気 投資信託なんか、やっている場合じゃない?
2011年02月09日(水)現代ビジネス
投資信託よりずっと低コスト。証券会社にとっては旨味の少ない商品だから、窓口に出向いても勧められない。
表に出されず、こっそり隠されている。そんな「お宝」商品を見つけてしまった---。
米国ではすでに人気沸騰中!
貯蓄から投資へと謳われてから約10年、やっと日本人もタンス預金にしまいこんでいたおカネを投資に回すようになってきた。中高年の夫婦が証券会社や銀行の窓口に出向き、商品を見比べながら購入している姿はいまや全国で見られる。
預金に代わる代表的な投資先となったのは、投資信託。投資信託協会が先日発表した調査結果によると、投信残高は2年連続で増加したという。
だが実はここ数年、金融先進国である米国では投資信託への投資熱が冷えこみ始めていることはあまり知られていない。さらに投資信託と「似て非なる」ETFなる商品の人気が過熱しているともいう。何が起こっているのか。
「かつては米国でも投資信託が人気でしたが、個人投資家が不利益を被っているとされる不正取引などが相次ぎ、信頼が落ち込んだ。そこで代わりに人気が集まったのがETF。ETFは投資信託の一種で、『何に投資しているか中身がすべて公開されている』『手数料が安い』というメリットが付け足されていることが特徴です。
個人投資家のみならず、ハーバード大学の年金基金など機関投資家もETFへ殺到したことで、この10年で市場規模(時価総額)が100倍以上に拡大、商品数も1000を超えた」(日米中など世界の金融市場情報を提供するT&CホールディングスCEOの田中茂樹氏)
米国ではあと2~3年で投資信託の市場を追い抜くとも言われているETFの最大の特徴は、投資信託にくらべて手数料が安いことにある。そのため手数料ビジネスで稼ぐ証券会社にとっては「旨味の少ない商品」として積極的に売られてこなかったが、一連の不祥事を通じてその"欺瞞"が発覚し、証券会社が売りに出ざるをえなくなったということだ。
さらに、こんな事情もETF人気を後押ししている。
「米国では中高年が資産運用しようとする場合、証券会社の窓口に行くのではなく、ファイナンシャルアドバイザー(FA)と呼ばれる専門家を雇うケースが増えている。FAの報酬は運用して儲けたおカネの何%という成果で決められるため、顧客の儲けを第一とする投資を行ってくれるからです。
ではFAがまず何を勧めるかというと、投資信託でも個別株式でもない。長い目でみて値上がりが期待できるETFなんです」(米国の金融事情に詳しい投資アドバイザー会社S&Sインベストメンツ代表の岡村聡氏)
証券会社は売りたがらないが、安定的に儲けられる可能性が高いのがETFということ。
そして日本でもいま、投資信託への不信がくすぶりつつある。「毎月、分配金が出るので年金のように使える」などと勧誘されて購入したはいいものの、一向に儲からないと感じる投資家が増えているからだ。
実際、投資信託(公募型)の運用損益は昨年だけで3兆円超のマイナス。基準価額を下げている投信も多く、元本割れによって数百万円単位で損失を被った投資家も出てきている。
ETFは日本ではまだ馴染みは薄いが、実はすでに100本以上売られており、その魅力に気付いている投資家の間で密かに人気を集め始めてもいる。一般投資家も米国に倣って「投資信託を売ってETFを買うべし」といきたいところだが、よくわからない商品では及び腰になってしまうだろう。
ここからはETFの詳細・魅力についてひとつひとつ見ていこう。
手数料がバカ安!
■そもそもETFとは!
ETFは「Exchange Traded Funds」の略。投資家から集めたおカネを、運用のプロが株式や債券などに分散投資する投資信託の一種である。
ただ大きく違うのは、上場されていて、市場で売買できるということだ。
「ETFは企業の株式のように取引所に上場されている投資信託というイメージで考えればよい。取引所が開いている間は、時価で売買できる。ただ購入できるのは証券会社だけで、銀行などでは買えない。日経平均などの株価指数に連動して値動きする商品(インデックス型)が中心です」(楽天証券経済研究所客員研究員で経済評論家の山崎元氏)
■投資信託との比較 1
気になるのは、投資信託とくらべてETFがどれほど優れているかということだろう。まず目につくのはそのコストの低さだ。
購入時にかかる販売手数料を見ると、投資信託の場合、一般的に購入金額の2~3%かかるが、ETFはネット証券などを利用すると1%以下におさえられる。
さらに保有し続けている期間中はずっと払い続けなければいけない信託報酬は、投資信託の場合2%前後のものが多い。この高コストが「落とし穴」となって、信託報酬を払いすぎた結果、トータルで見ると損をしていたということもある。一方でETFの場合ずっと低く、0.5%くらいのものがほとんどだ。
「たとえば60歳の中高年が退職金で1000万円投資した場合、初年度で約20万~30万円も差が出る。さらに毎年払う金額も10万円ほど違うので、積み重なればバカにできない金額になります。ネット証券がやっている売買手数料をゼロ近くまで下げるキャンペーンなどを利用すれば、より差は大きくなる」(岡村氏)
■投資信託との比較 2
投資信託にくらべて優れている点はほかにもある。
「投資信託の価格(基準価額)は1日に1回しか決まりません。そのため株価が大暴落している日に持っている投資信託を急いで売ろうと思っても、マーケットが終了したあとに決まる超安値でしか売れない。
一方でETFは株式と同じなので、取引所が開いている間はいつでも売却することができるのです」(『ETF投資入門』などの著書があるインデックス投資アドバイザーのカン・チュンド氏)
■ETFの凄さ!
たとえば日本の製薬業界はこれから成長すると確信しているが、どの企業が伸びるかまでは判断できないとする。こういう時、プロ投資家は莫大な資金を元手にアステラス製薬、第一三共などの個別製薬株を網羅して買うことで、業界全体の成長に投資することができる。手持ちの資金が限られている個人投資家にはできない離れ技だが、これをETFは可能にする。
「この場合、『NEXT FUNDS 医薬品(TOPIX-17)上場投信』というETFを1口買うだけで、日本の製薬業界全体に投資できる。しかも現在の価格は1万4000円ほど。そんな安価でプロ並みの投資ができるのです。新興国が伸びると思ったら、新興国全体をカバーするETFを買えばいい。ほかにも中国、ブラジルといった国ごとのETF、金、銀、プラチナなど商品ごとのETFもあります」(カン氏)
ここまでをまとめると、ETFとは「手数料が安く」「簡単に」「プロ並みの投資ができる」ということだ。とはいえ、日本に上場されている銘柄だけでも100以上ある。具体的に何をどう買えばいいのか。そしてどれくらい儲けられるのか。投資のプロ達に続けて教えてもらおう。
資産400万円増も!
■何を買えばいいのか
ETFの強みはなんといってもインデックスに連動しているということ。ただインデックスと一口に言っても、日経平均、TOPIX、NYダウといった代表的なものから、ロシアの株式指数RTS、ブラジルの株式指数ボベスパなど様々ある。どれに投資すればいいのか悩むところだが、シンプルに考えればよい。
「特定の国や業種のどこが上がるかを調べるのは面倒ですし、それが当たるとは限らない。であれば最初から世界の株式市場全体に投資するのが一番でしょう。人類が滅亡しない限り株式市場はなくならないし、資本主義が人間の欲望によって自己増殖するシステムだとすれば、長期的には市場は拡大、株価は上昇を続けるからです」(ベストセラー『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』などの著書がある作家の橘玲氏)
世界の株式市場全体に投資すると言われると途方もないことのように聞こえるが、実はこれもETF一つでカバーできる。
「具体的にはNASDAQに上場している『iシェアーズRMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス・ファンド』やNY市場上場の『バンガード・トータル・ワールド・ストックETF』を買えばいいだけです。これらのETFは国内市場には上場していませんが、SBI証券や楽天証券などのネット証券を通じて購入することは可能です」(橘氏)
上のグラフは世界市場全体がどれほど伸びているかを示すインデックスの推移。波はあるものの、10年スパンで見れば2倍、20年だと4倍に成長していることがわかるだろう。
ただ上記に挙げた二つの銘柄は海外の市場に上場しているETFのため、手数料が高くつくというデメリットがある。しかし国内市場に上場されている銘柄を組み合わせることでも、世界全体に投資することは可能だ。
「以下の3つを保有すればいい。具体的には日本を除く先進国20ヵ国以上をカバーしている『上場インデックスファンド海外先進国株式』、新興国をカバーしている『上場インデックスファンド海外新興国株式』、それに日本の市場に連動した『TOPIX連動型上場投資信託』。世界経済全体は、サブプライムショックの時は落ちこみましたが、平均で4~5%は伸びています。ETFについてもそれほどの上昇が望めるということです」(岡村氏)
■儲けはどれくらいか
では世界全体が仮に5%で成長を続けると仮定した場合、どれくらいの儲けになるのか。月に5万円ずつ投資した場合、どれくらい資産が増えるかを示したのが下の表である。いまメガバンクの普通預金金利が0・1%にも満たないことを考えると、儲けの差は10年で約200万円、15年で400万円以上も膨らむことになる。
「あとは何%の利回りを目指すかということによって組み合わせるETFを変える。日本を含めた先進国だけをカバーすれば3%ほどの成長が期待できるので、それを目指すのなら前出の『上場インデックスファンド海外先進国株式』と『TOPIX連動型上場投資信託』の二つを保有。もっと高い成長を求めるなら、新興国をカバーするETFの割合を増やせば7%も目指せるかもしれない。ただ新興国の株価は変動が大きいので、注意が必要です」(岡村氏)
日銀も買っている!
定年退職し、手元に1000万円ほど持っていたとしても、一気に資金を投入するのは得策ではない。
「毎月、買う日を決めておいて、同程度の金額で購入していくのが一つの方法です。インデックスに連動しているから中長期では値上がりが期待できるとはいえ、短期では上下の値動きがでてくる。
だから読みを誤ると高値をつかまされる。代わりに高いときも安いときも買うことで、平均購入価格を引き下げることができるのです」(証券アナリストの植木靖男氏)
■バカ儲けはできないのか!
そもそも大儲けを狙える商品ではないが、買い方によっては大きな値上がりもゲットできる。
「いま投資するとすれば日経平均株価やTOPIXに連動するETFを短期売買してはどうでしょう。実は日銀が金融政策の一環として、ETFを購入することが決まっている。となれば大きな値崩れリスクが軽減されます。たとえば、『日経225連動型上場投資信託』は昨年8月にくらべ今年1月は2000円ほども値上がりしている。ただ大きく値上がりするものは、大きく値下がりする可能性があることを忘れてはいけません」(ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏)
■最近人気の金はどうか!
最近、人気が高い金の市場に連動しているETFもあるが、これはあまりオススメしないという。どうしてか。
「金価格が上昇すると読んでいるのなら、金鉱株の個別株投資や金鉱株ファンドに投資したほうがより効率的に儲けることができる。しかも個別株投資なら配当も得られるが、ETFは信託報酬をとられる。そうした点からもETFで金に投資する合理的な理由は見あたりません」(山崎氏)
■気をつけたいリスクとは!
もちろん元本保証ではないから、値下がりリスクを忘れてはいけない。さらにETFには、「上場廃止」という仕組みがある。
「出来高が極端に少なくなると、ETFの運用が取りやめられることがあるのです。この場合、上場廃止として、そのときの時価ベースでおカネを投資家に返すことになります。ただそれぞれのETFの出来高は公表されているので、それで危険なETFを見極めて欲しい」(カン氏)
見てきたように、ETFは素人でも簡単に確実に資産を運用できる。銘柄はたくさんあるので、投資の楽しみもある。ただむやみやたらに手を出すべきではないと専門家は口を揃える。
「あくまで日経平均や世界の株式指数など、市場や世界の株価動向に連動するものをETFで買って、中長期で少しの値上がりを楽しむ。それ以上のギャンブル性などを求める人は、やるべきではないでしょう」(山崎氏)
10年で100万~200万円と資産を増やせれば、豪華な海外旅行にもでかけられる。目減りする投資信託を黙って抱え込んでいるより、よっぽどいい投資生活が送れるはずだ。
新潟州構想
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%B7%9E%E6%A7%8B%E6%83%B3
篠田昭(新潟市長)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%A0%E7%94%B0%E6%98%AD
泉田裕彦(新潟県知事)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%89%E7%94%B0%E8%A3%95%E5%BD%A6
2011年2月9日 週刊ダイヤモンド編集部
大阪から始まった「都構想」が名古屋を経て、日本海の新潟にまで伝播した。新潟県の泉田裕彦知事と新潟市の篠田昭市長(写真)は1月25日、県と市を合併する「新潟州(都)構想」を発表した。
県と政令市の二重行政を廃し、行政の効率化を進め、市区町村の権限強化を図りたいという。新潟市を特別区に再編し、東京の区よりも大きな権限を持たせる構想だ。つまり、新潟市は州に吸収されてなくなることを意味する。民主党政権による地域主権改革が足踏みするなか、「地方自治のあり方について新潟から一石を投じたい」(篠田市長)と意気込む。
各地で「都構想」が相次ぎブームとなっているが、内容や熟度は異なる。大阪都構想は、大阪市や堺市を12程度の特別区に再編分割し、産業政策やインフラ整備を大阪都、住民サービスを特別区が担うというものだ。低迷する地域経済の活性化を狙っており、背景に大阪市との不協和音がある。愛知県知事選と名古屋市長選の直前にぶち上げられた中京都構想は具体性に欠けるが、県と市の司令塔を一つにするというものだ。
都構想が新潟に飛び火した理由は不明だ。泉田知事と篠田市長が会見で語ったように、新潟では県と市の関係はきわめて良好だ。二重行政の解消や役割分担も、両トップの指導力でできるはず。また篠田市長が「日本は大都市制度がまったく不十分だ」と指摘したが、新潟市が日本海側初の政令市となったのは、2007年4月のこと。周辺13市町村を吸収合併し、鳴り物入りの昇格だ。直後に、県との合併構想では住民も戸惑うはずだ。「ブームに乗って耳目を集めたいだけでは」と冷ややかな目が注がれ始めている。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)
2011年2月9日 DIAMOND online 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
革命的圧勝!
名古屋市の河村たかし市長が仕掛けた、名古屋市長選、愛知県知事選、加えて名古屋市議会の解散の是非を問う住民投票のトリプル選挙は、「名古屋革命」と呼びたくなるくらいの河村氏側の圧勝に終わった。
市長選における河村氏の得票は2位候補の3倍を超し、河村氏に呼応して愛知県知事選に立った大村秀章氏も2位候補のほぼ3倍の得票で、加えて、民主党が推薦した御園慎一郎氏は2位にもなれずに惨敗した。愛知県は、これまで民主党が強い地域とされていて、前回の総選挙でも15ある小選挙区で全て民主党候補が勝ち上がった。
河村氏への賛意もさることながら、現政権の政権運営に対する批判が相当に深刻であることが窺える。
菅首相及び枝野官房長官は、地域主権を尊重する観点から、地方選挙の結果にコメントしないとしているが、特定の候補を推薦したのだから、この言い逃れは詭弁というべきだろう。有権者にも失礼だ。
選挙後の民主党執行部の反応には一つ興味深い点がある。今回の選挙の敗北責任について、小沢氏を支持する勢力の代表的な存在で参院の重鎮である輿石東氏は岡田幹事長に対して、「あんたのせいじゃない。こんなことでへこたれるな」(『朝日新聞』2月8日朝刊)と声を掛けたという。輿石氏の立場を考えると、小沢氏を追い込んでいる党執行部の岡田幹事長の責任を問う声が出てもおかしくないが、そうはしなかった。
おそらく、岡田幹事長は、菅政権の中枢に対して距離を置き始めているのではないだろうか。思えば、岡田氏は、外相として普天間問題の矢面に立たされ、その後は小沢氏の処分を巡る問題で成果の出るはずがない立場を押しつけられ、まるで彼の将来の可能性を摘むかのような不利な役割を負わされてきた。岡田氏が、菅首相及びその周囲の勢力に見切りを付けても不思議ではない。
「名古屋革命」の今後!
もっとも、「名古屋革命」はまだ完全に成し遂げられたわけではない。今は、まだ道半ばだ。これから、名古屋市議会を解散し、河村氏の公約を支持する勢力が多数派を確保してはじめて、市民税の10%恒久減税といった河村氏の政策が実現する。
問題は、当面、二つある。
一つは、市議選の候補者だ。候補者は、既存の市議で河村氏の政策を支持する人物、地元の政治家志望者など様々な層から選択しなければならないだろうが、議員の報酬を大幅に引き下げる河村氏の方針の下に、現実にどんな候補者がどれだけ集まるのかが問題だ。
たとえば、就職難の折でもあり、全国から政治に関心のある大学生ないし、卒業生を公募するという手がある。学生なら、議員報酬が安くてもやって行けるし、市議として政治キャリアをスタートさせて、将来国政に打って出るようなコースを目指すことも出来る。河村氏の陣営が、現段階で候補者をどの程度集めているのか、市議選の戦い方をどう考えているのかは、まだ伝わってこないが、インパクトのある候補者を立てて、市議会の多数を確保することが必要だ。
もう一つの問題は、名古屋市及び愛知県の官僚をどうコントロールするかだ。官僚をコントロールできない大臣がどれだけ惨めで、政治的にも成果が上がらないかは、政権交代後の、鳩山政権、菅政権でいやというほど見てきただろう。
減税と共に、市や県の職員の報酬を引き下げなければ、河村氏の名古屋革命は実現しない。しかし、自らの報酬を引き上げることに官僚が協力するか、また、報酬を引き下げられても真面目に働くか。
中央官庁よりも、市や県などの地方の方が、仕事の内容が見えやすいので、政治家が行政をコントロールすることが容易だが、サボタージュや不都合な情報のメディアへの横流しなど、官僚の抵抗の可能性は甘く見ない方がいい。
政権交代後の民主党の各大臣を見ると、独自の政策スタッフを持たずに省庁に乗り込んで、政務三役で仕事を抱え込んだことが、失敗の大きな原因になっていたように思う。市や県の管理職が非協力的だった場合、彼らがいなくても政策を実行する指示が出せるくらい政策と法律、加えて地域の事情に通じたスタッフを揃えることが重要だ。
この場合も、有能なスタッフを集めることと「河村的・清貧」を両立し、維持することが現実的な問題になるだろう。
もちろん、官僚に頼らない意思決定の実働部隊を用意することと同時に、「使える」官僚は登用し、彼らのモチベーションを維持する「マネジメント」が重要だ。本来、地方の首長には大企業の社長さん以上の経営力が必要だ。
河村氏によると、欧米の政治家の報酬は、数百万円前半程度であることが多く、政治家は、それを甘受してでも喜んで政治を行うボランティアの名誉職的なものである場合が多いという。政治家が「政治屋」であってはならないという主張には共感するが、政治家の報酬を下げると、経済的には、生活に不自由しないお金持ちか、あるいは、下がった報酬でも喜ばしいと思う低所得者しか政治家を選ばなくなる可能性があるので、制度の運営を上手にやらなければならない。
河村氏が理想とするような高貴な政治を実現するためには、政治活動のコストをいかに引き下げるか、加えて、金銭的メリットを失う分の政治家の名誉をいかに確立するか、ここでも現実的なマネジメントの問題が浮かび上がる。
名古屋革命」の意味!
それにしても、今回、これだけの大差で河村氏の陣営が支持された理由は何だろうか。河村氏は減税を掲げ、菅政権は今や消費税増税路線を隠さないが、この差だろうか。
それだけではあるまい。思うに、民間の給与が減少し、失業率が高水準で推移する中、公務員の給与は微減にとどまるし、もちろん彼らはクビになったり組織がつぶれたりして失業するリスクがほとんどない。この官民格差に対する怒りと反感が名古屋市民、愛知県民のみならず、全国民レベルで存在するのではないだろうか。
国民の多くは、長期的にはおそらく増税が必要で、その際に消費税率の引き上げが有力なオプションであることを理解している。これは良いことだ。しかし、行政の大きさを現在のままにして、加えて、年金なども総合的な待遇の官民格差をそのままにした増税には共感しないだろう。
前回の総選挙で、民主党は、第1番目の政策として財政支出のムダの削減を掲げ、その中で、公務員人件費の2割削減を目標としていたはずだ。この実行で形を示した後でなければ、国民は増税を支持しないだろうし、菅政権は早晩終わることになるだろう。
愛知の選挙結果の民主党執行部への影響を報じる新聞記事の同面(『朝日新聞』2月8日朝刊、4面)に、「年金一元化先送りへ」との与謝野経財相の方針が報じられている。年金一元化は、サラリーマンの厚生年金、公務員の共済年金、自営業者の国民年金の「条件」を統一する政策だが、これが先送りされると、現在、民間の年金と比較して条件のいい公務員の共済年金の条件が温存され、年金の官民格差が残ることになる。自営業者の所得把握のために、番号制の導入が先ず必要だという与謝野氏の主張にも一理はあるが、共済年金と厚生年金の一本化は、直ぐにでも実行できる。
こうした記事が出ること自体が、菅政権の民意からのズレを象徴しているように思われてならない。
もちろん、消費税増税が、財政再建の名の下で官僚の米櫃の補強を意味することについて、国民は十分理解している。
行政のムダを整理することなく増税路線をひた走る与謝野氏は、今や「官僚の利益」を代弁する「官の忠犬」(「菅」の忠犬かどうかは疑わしい)のような存在だが、彼が活躍するほど、政権の終わりが早まることになるだろう。失礼ながら、氏は政権の貧乏神だ(彼は自民党候補として比例当選したのに議員を辞めずに反対党の政権に入閣した、いわば「非礼議員」であるから、少々非礼に罵っても許されるだろう)。
国政では、「名古屋革命」の意味を全国レベルの行政改革につなげられる「構想力」と「マネジメント力」を持った勢力の登場が待たれる。
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魚沼コシヒカリ理想の稲作技術『CO2削減農法研究会』(勉強会)の設立計画!