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平成22年 第12回「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」(松江市)有機栽培・JAS認定部門で特別優秀賞を受賞。(食味90・味度83・計173点) 平成25年、第15回魚沼と第16回北京開催運動中! 無農薬魚沼産コシヒカリ生産農家・理想の稲作技術『CO2削減農法』 http://www.uonumakoshihikari.com/
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キヌア
 
栄養価が高く、欧米や日本で人気を集めつつある穀物「キヌア」。
栽培している先住民たちは、その経済効果に期待している。
 
 "アンデスの黄金の穀物"とも呼ばれる「キヌア」は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙食に使うほど栄養価が高いことで知られる。近年では、先進国で需要が増えており、世界最大のキヌア生産国であるボリビアの貧しい地方を変えようとしている。
 
 キヌアは、人体に不可欠な10種類のアミノ酸を含み、高タンパクで、リンやカルシウム、鉄分、ビタミンEも豊富だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、キヌアは母乳の代わりにもなる。また、一流シェフの注目も集めており、リゾット風に煮たり、パンに混ぜたりと、いろいろな味が楽しめる。
 
 ボリビアのモラレス大統領は、キヌアを"戦略的食品"と位置づけ、国民の栄養状態の改善に利用しようとしている。その結果、卸売りの売上高は2000年頃から7倍に増加している。
 
 世界のキヌア市場でボリビアが占めるシェアは46%。続いてペルーが30%、米国が10%となっている。ボリビアのキヌア輸出量は00年から10年間で約10倍の年間1万4500tに増加。主な輸出先は米国と欧州、そして日本だ。
 
 注目されるようになったきっかけは、87年にスペイン国王夫妻がボリビアを訪問した際に食したことだ。以後、その価格も上昇し、83年に100ポンド(約45kg)あたり3ドル(約250円)だったのが、いまでは100ドルで取り引きされている。
 
標高4000mほどのせた土地でも育つキヌアは、寒さやにも強い。栽培する先住民はボリビアでもとりわけ貧しく、彼らの多くは数十年前まで物々交換を行っていた。だがキヌアの輸出量が増えたことで、貨幣経済に参加できるようになった。
 
 欧米では、大豆の5倍の値がつくこともあるキヌアが、ボリビアの高地の貧困層を救うのではないかと期待が高まっている。
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慎太郎が出ないなら

2011年03月07日(月) 週間現代
 
出るのか、出ないのか。石原慎太郎都知事が揺れている。「不出馬」情報も報じられるなか、その状況をどうか「そのまんま」で、と祈っているに違いない男がいる。東国原英夫前宮崎県知事である。

すべては慎太郎待ち

「今回の都知事選は、過去3回の石原(慎太郎)氏(78歳)が出た選挙に比べても、まったく予測がつきません。出馬するかどうかを巡って二転三転し、本人もいまだに迷っているフシがある。石原氏の態度を見てから出馬を判断するという人も多く、これで石原氏が出ないとなると、東国原(英夫)前宮崎県知事(53歳)が最有力候補になる状況です」(都政担当記者)
 
 3月24日告示、4月10日投開票の都知事選は、告示まで1ヵ月を切った。石原氏については、マスコミが「出馬説」と「不出馬説」で割れ、水面下でも様々な綱引きが行われている。
 朝日新聞・東京新聞の2紙が夕刊1面で大々的に「石原知事、不出馬」と報じた2月22日。この日は夜から、自民党東京都連の政経パーティが開かれた。これは都知事選を含む統一地方選への決起集会的な意味合いを持つものだったが、石原氏が登壇するとあって、そこで不出馬宣言があると注目された。だが、石原氏が進退について触れることは最後までなかった。
 
 このパーティの後、こんな場面があった。都議会自民党関係者らが石原氏に詰め寄って、こう話しかけた。
「私たちは4選をお願いしているのに、我々には一言もなく不出馬の記事が出た。どういうつもりなのか。本当に不出馬なのか」
 
 石原氏が応じる。
 
「オレはあんなこと一言も言ってない。迷惑な話だ」
 
 都議会自民党幹部の一人は、この石原氏の発言から希望的観測を滲ませつつも「99・9%、出馬する」と自信を見せた。ただ、石原氏がいまだに迷っているのは事実。石原氏の元選挙スタッフが明かす。
 
「昨年末の段階で、プライベートの会合の際、石原さんは『もう都政はいい。出る気はない』と話しています。それを聞いた側近たちの一部が、松沢成文神奈川県知事(52歳)を後継にと動き始めたのです」
 その仕掛け人と言われるのが、石原氏の側近で、現在、松沢氏の特別秘書を務める今岡又彦氏。一方、副知事も務めたこれまた側近の浜渦武生氏などは、つい最近、自民党都連幹部と会合を持ち、石原4選で行くしかないと確認し合ったという。要するに、石原氏の側近たちの間でも出馬を巡って、見解が真っ二つに割れている状況なのだ。
 議会で居眠りする姿が目撃されるなど、すっかり都政にヤル気を失っている石原氏は、亀井静香国民新党代表らが構想する「救国内閣」で、民間枠での入閣も取り沙汰される。とはいえ、こちらは国政の状況に左右され、救国内閣の誕生そのものが未知数。そこへ来て、先の不出馬情報で逆に都知事を続ける気になったという見方もある。
 前出の都政担当記者が解説する。
「不出馬説をリークしている側近たちには、もし不出馬を表明したら、石原氏の出方待ちの東国原氏が出馬を決意する。それでいいんですかと、石原氏の尻を叩こうという狙いもあった。これが功を奏して、7対3くらいで石原氏は出馬すると睨んでいます」
 石原氏が進退を表明するのは早くとも、現在開催中の都議会で予算審議が一段落する3月7日以降。議会は3月11日までだが、築地市場移転のための予算を巡って会期延長の可能性もあり、本当に告示直前まで明らかになりそうにない。

ワタミの渡邉氏は勝てない

 前回選挙('07年)でも280万票を超える得票で、圧倒的な強さを誇った石原氏が不出馬となれば、都知事選を巡る風景は一変する。注目されているのは、東国原氏や松沢氏の他、すでに出馬表明したワタミ前会長の渡邉美樹氏(51歳)、蓮舫行政刷新担当大臣(43歳)、舛添要一元厚労相(62歳)など。
 
 石原氏抜きの都知事選を考えたとき、参考になるのは2月22日にサンケイスポーツが行った「石原氏が出馬しない場合、次の都知事にふさわしい人は」という緊急アンケートだ。ここでは東国原氏が1位。少し前になるが、FNNが1月20日に行った世論調査でも、石原氏30・8%に次いで、22・6%の支持を集めた。
 
 出馬の実現性も加味すると、東国原氏のライバルとなるのは渡邉氏と松沢氏の二人になる。
 
 東国原氏が完全に無党派層狙いであるのとは対照的に、自・公の支持を取り付けようとしているフシがあるのは渡邉氏。2月15日の出馬会見で語ったのは、石原氏の政策をなぞるようなものが大半だった。それもそのはずで、渡邉氏には、前回の都知事選で石原陣営を取り仕切った選挙プランナーの三浦博史氏が付いている。
 
「三浦氏は石原氏が出馬しないと読んで、渡邉氏こそ石原都政の後継者だとアピールする戦略を取っている。そうすれば自・公も最終的に渡邉支持に回るという計算があってのことです。ただし、渡邉氏には女性問題やワタミにおいて従業員を不当に働かせていたといったネガティブキャンペーンが早速始まっています」
(別の都政担当記者)
 
同じ過去の傷とは言え、芸人時代の不祥事と企業トップの不祥事では、インパクトが違う。暴行事件や未成年淫行の『前科』もある東国原氏にスキャンダルが飛び出しても、よほどのことでない限り、驚く有権者は少ないに違いない。都議会民主党の幹部も、
「渡邉氏の『身体検査』をしなければ、どの党もうかつに支持できない」
 と語っていた。
 もう一人のライバル、松沢氏だが、東国原、渡邉両氏に比べると、人気の点では一枚も二枚も劣る。それだけに自・公の組織力が必要だが、すでにそれは望めない状況である。都議会自民党関係者が言う。
「こちらがさんざんお願いしたのに、石原さんが断るようなことになれば、石原さんが松沢さんで頼むと言われても呑めないですよ。我々は勝てると思うから石原さんを出したいのであって、石原さんに都政を私物化させるつもりはない」
 ボロボロとはいえ政権与党、都議会でも野党ながら多数派の民主党にいたっては、戦う前から候補者選びで難航。国政同様、党内はバラバラだ。
「石井一選挙対策委員長がつい最近、『池上彰の携帯電話の番号を知っているヤツはいないのか』と怒鳴る姿が目撃されています。また、郵便不正事件でともに疑惑をかけられた厚労省の村木厚子氏が石井氏の部屋から出てきたために、隠し球は村木氏じゃないかとも言われている。一時は本命だった蓮舫氏は、菅直人総理から出馬を打診されたが、菅さんの政治センスのなさをオフレコでぶちまけたり、聞く耳を持っていない。世論調査の結果も思ったより悪いし、国会議員のバッジを捨ててまで都知事選に出るリスクは取らない」(全国紙政治部記者)
 党中央がこんな具合だから、都議会民主党内でも、渡邉氏に乗るという声や石原氏を推すという声、東国原氏に乗ってもいいという声まであって、本音は勝てそうな候補がいれば、そこに乗っかろうという態度がミエミエだ。

そのまんま都知事?

 対立候補たちがそれぞれ問題を抱えている状況を尻目に、石原氏さえ出なければ、非自民・非民主党という旗印で急浮上するのが、東国原氏である。
 同氏の最終的な目標は衆議院からの国政進出。その一方で「現職の都知事がまず進退を表明すべきだ」と都知事選に向けて、石原氏を牽制することも忘れない。
 
 石原「不出馬」報道があった直後に、東国原氏から電話があったという知人が明かす。
「前から『都知事ってどうかな』なんて言っていたけれど、あの日はえらくハイテンションで電話してきて、『ありがとう。これで決めたよ』と一人で興奮していた。でも、しばらくしたらまた電話があって、今度は『誤報だったみたい』と暗い声だったけど」
 
ともあれ、永田町と新宿にそれぞれ事務所を構え、会費5万円のパーティを開くなど、選挙資金集めにも余念はない。解散総選挙にも、都知事選にも、対応する準備は万全だ。
 
 「東国原さんは自信家ですが、さすがに石原さんが出れば勝てないとわかっている。ただ、仲間内では以前から蓮舫さんが出てきても勝てると豪語していただけに、渡邉氏や松沢氏には絶対に勝てるという計算がある。彼が出馬宣言するときは、いけると確信したときです」(東国原氏と親交のあるテレビ局関係者)
 
 かつて東国原氏に衆院選出馬を打診し、総裁候補にしてくれるならと返された自民党には、同氏へのアレルギーが強く、都議会自民党では「変な人が出るくらいなら、もう一期、石原を」が合い言葉になっている。それでも、ある政党が極秘に行った調査では、やはり石原氏に次ぐ支持率を得た。ちなみにこの調査では、蓮舫氏が出ても石原氏にトリプルスコアで敗れるという結果が出たという。
 
 また、東国原氏にはさらなる追い風が吹いている。
 
 「いまの政治は大阪の橋下徹知事、名古屋の河村たかし市長のように、反民主・反自民で地方から変えるという流れがあります。東国原氏はこの二人とは連携が取れています。そこに小沢一郎氏が加わる可能性も考えられる。小沢氏は2月8日に河村市長と会談していますが、党内に居場所がなくなった小沢氏が『減税』『国民生活が第一』のキーワードで、河村氏らとともに東国原氏を応援するという見方は根強い。大阪、名古屋に続き、東京でも既存政党に属さない首長が誕生する確率が高まっています」(政治評論家・有馬晴海氏)
 
 2月21日には、地域政党との連携を目指す「日本維新連合」の旗振り役で、小沢氏と近い原口一博前総務相が東国原氏との連携を表明。計算高い東国原氏のこと、原口氏の後ろに小沢氏の姿を見ているに違いない。
 約1000万人の有権者を抱える東京都。すべての有権者に政策を訴えるのは物理的に難しく、どうしても都知事選は、知名度優先の風頼み選挙になる。そしていま、何の因果か、風は東国原氏に吹いている。こんな男が都知事でいいとは到底思えないが。

 

2011.2.14 20:16
コウノトリ育む農法
 
 兵庫県は14日、県などが普及を進めている環境創造型農業「コウノトリ育(はぐく)む農法」について、政府が参加を検討している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)戦略の一環として無農薬栽培への完全移行を進め、コメのブランド価値を高めたうえで中国など海外への輸出を目指す方針を明らかにした。
 
 「育む農法」は、国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰に取り組む豊岡市を中心に、さまざまな生物がすめる環境を守りつつ作物を生産しようと、有機肥料を使い無農薬・減農薬栽培する方法で、平成15年から実施。栽培されたコメは「コウノトリ育(はぐく)むお米」のブランドで、通常栽培米より高値で全国販売されている。
 
 TPP参加をめぐっては、関税の撤廃で打撃を受ける農業関係者を中心に反対の声が根強いが、県は「政府がTPPに参加すれば、ブランド価値が海外でも認められないと生き残れない」と「育むお米」の輸出商品化を決定。23年度予算案に除草処理技術推進費などとして約100万円を計上した。
 県は「無農薬栽培の技術を確立し、但馬の農業の魅力を海外に発信したい」としている。
日本は大量移民受け入れの準備はあるか!
 
2011.03.05(Sat)  JBプレス 川嶋諭
 
 宮家邦彦さんの3月4日付「中国急成長の歪み:大学を出ても就職できない」の記事は、連載が始まってから100本目の記事に当たる。
 初回の記事「なぜ我々は中国を見誤るのか」がサイトに載ったのが2009年4月3日だから、足かけ2年、正確には1年と 11カ月、中国について鋭い洞察の記事を続けていただいた。

ゴールデンウイークや年末年始も休まず連載

毎週金曜日の連載が100回、その期間が1年と11カ月であることから分かる通り、ゴールデンウィークやお盆、年末年始も休むことなく続いてきたことになる。
 実際、昨年末の12月31日金曜日には、翻訳記事以外はほとんどお休みする中、信じられないほど腐敗し切った中国警察の内情を紹介してもらった(「世界が唖然とする中国警察の腐敗度」)。
 例えばこんな具合である。
 「山西省公安庁が1年の内偵を経て、黒社会性質組織(暴力団)の頭目だった同省陽泉市公安局の元巡警(パトロール)隊長・關建軍(41歳)とその弟關建民ら計45人を賭博、恐喝、覚醒剤、売春などの組織暴力犯罪容疑で逮捕した」
 「陽泉市で秘密カジノ・風俗店を経営していた關兄弟グループは逮捕時に、北京を含む27の不動産(約1億元=15億円相当)、ロールスロイスを含む三十数台の高級車、2億6000万元(39億円)の現金などを保有していた」
 「同グループはサイレンサー付き拳銃、ライフル、刀剣類を含む大量の武器を所持し、石炭の豊富な山西省で鉱山を7つも騙し取っていた」
 「何のことはない、市民を守るべき警察の幹部が暴力団のボスとなり、捜査費用捻出どころか、違法な私的蓄財を重ねていたというわけである」
 
こんな警察が跋扈している国には恐ろしくて観光旅行にもおいそれとは行けない。しかし、中国の女性らしい強気の発言で世界中の人たちから人気の中国外務省・姜瑜副報道局長は、中国の警察や法律遵守には自信たっぷりだ。

ジャスミン革命恐れ、世界中のジャーナリストを拘束

中国各地で呼びかけられたジャスミン革命を取材中の各国の記者を警官が拘束したり乱暴したことに対し、「中国の法律にのっとって粛々と対応した結果であり、必要があれば中国の警察は各国のメディアに協力も厭わない」と話している。
 各国のメディアとも、腐敗にまみれた警察のお手伝いは大金を要求されそうで丁重にお断りするだろうが、なぜ政府は自信満々なのに現場の警官の不正はなくならないのだろうか。
 宮家さんはそれについて、トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)というNGO(非政府組織)を紹介して解説している。
 ドイツのベルリンに本部を置くこのNGOは毎年、腐敗認識指数(CPI=Corruption Perceptions Index)を発表しているそうだ。
 国の清廉度を10点満点で評価したもので、2010年ランキングの第1位はデンマーク、ニュージーランド、シンガポールの9.3であり、これに9.2のフィンランドとスウェーデンが続く。

腐敗度が一向に改善しない中国の政治

 日本は7.8で17位、米国が7.1で22位、台湾は5.8で33位、韓国が5.4で39位。これに対し、中国のCPIは3.5で、178カ国中78位だそうである。
 しかも、日本や韓国の清廉度がこのところ上昇している中、中国のCPIは低迷したままで改善の様子が見られないという。
 その理由として、中国人に特有の問題を挙げる人がいるようだが、それでは中国人が大半を占めるシンガポールのCPIが9.3と世界最高レベルにあることが説明できない。宮家さんは次のように書く。
 「OECDの調査によれば、『汚職は政治的・官僚的・経済的利害が一致する場合に生じる』という。そうだとすれば、政治と経済が未分化である中国株式会社での腐敗根絶は容易なことではない」
 
100回記念としてもう少し宮家さんの記事を紹介したい。この記事「中国人が日本に大量移住、その数毎週500人」も衝撃的で読者の反応も高かった。

旧満州から日本に大量移住する中国人

「法務省統計によると、昨年2009年末の外国人登録者総数は約219万人、第1位は中国人の68万518人で、全体の31%を占める」
 「第2位は韓国・朝鮮人の58万人弱、在日米軍を除く米国人が5万人ほどだから、中国人の存在感は圧倒的だ」
 「外国人登録をした中国人の数は1999年に19万5000人であったから、過去10年で3倍以上に膨れ上がったことになる」
 「特に、2009年は、経済情勢を反映してか、外国人登録者総数が前年に比べ3万人減少する中、中国人だけが2万5141人も増加している」
 「この中国人登録者68万人のうち約3分の1は永住者・日本人の配偶者などであり、その数は21万2805人に上る。昔は中国人と言えば留学生だったが、今やその多くが日本で永住を始めたということなのだろう」

華僑が目指した東南アジア、東北3県は日本を目指す

 中国本土を出て世界で活躍しているのが華僑と呼ばれる人たち。この人たちはこれまで、シンガポールやインドネシア、タイ、マレーシアなど東南アジアを目指していた。
 ところが、今や中国の人たちは日本を目指す。これまでの華僑とは違った全く新しい流れだという。そして、華僑と違うのは、その出身地。
 「例えば、シンガポールの華人社会は福建人(41%)、潮州人(21%)、広東人(15%)、客家人(12%)からなる。東南アジアでは中国南部出身者が主流だ」
 「これに対し、日本では中国北部出身者が結構多い。2009年の統計によれば、在留中国人の出身地は、遼寧省(16%)、黒龍江省(10.6%)、吉林省(8.3%)の東北3省で約35%を占め、これに台湾を加えると4割を超える」
 
台湾の人々が日本から多くを学んで感謝の気持ちを持っていることは、お正月にお届けした台湾の元総統、李登輝氏のこの記事「台湾は日本が近代国家に育てた」「国民は二の次になった日本の政治家」「台湾と日本で新しいアジアの時代をつくろう」からよく伝わってくる。
 「日本は台湾に、近代工業資本主義の経営観念を導入しました。台湾精糖株式会社の設立は台湾の初歩的工業化の発展となり、台湾銀行の設立により近代金融経済を取り入れました。度量衡と貨幣を統一して台湾各地への流通を早めました」
 「1908年の台湾縦貫鉄道の開通により南北の距離は著しく短縮され、華南では灌漑用水路と日月潭水力発電所(現・大観水力発電所)の完成が農業生産力を高め、工業化に大きく一歩を踏み出すことができました」
 「行政面では全島に統一した組織が出来上がり、公平な司法制度が敷かれました。これら有形の建設は台湾人の生活習慣と観念を一新させ、台湾は新しい社会に踏み入ることができました」
 「日本はまた、台湾に新しい教育を導入しました。これは、諸外国における植民地支配とは全然違ったやり方です」

日本が貢献した台湾の教育

 「台湾人は公学校を通して、新しい知識である博物、数学、地理、社会、物理、化学、体育、音楽などを吸収し、徐々に伝統の儒家や科挙の束縛から脱け出すことができました」
 「日本も明治維新のときには6000の小学校が出来上がりました。6000の小学校というのは、だいたい昔の私塾から変化したものですよ。同じようなことが台湾でも起こってきてる」
 「そして世界の新知識や思潮を理解するようになり、近代的な国民意識が培われました」
 「1925年には台北高等学校(高等科)が設立されました。台北帝国大学は1928年に創立され、台湾人も大学に入る機会を得ました。あるものは直接、内地である日本に赴き大学に進学しました」

これによって台湾のエリートはますます増え、台湾の社会の変化は日を追って速くなりました」
 「近代観念が台湾に導入された後、時間を守る、法を遵守するといった意識、さらに金融、貨幣、衛生、そして新型の経営観念が徐々に新台湾人をつくりあげていきました」

台湾の総統や閣僚が欠かさず参列する日本人の命日

 日本の政策は欧米列強の人種差別を前提にしたのは違い、台湾人を日本人と同じような教育レベルに引き上げ、台湾の近代化に貢献したというのである。
 台湾の近代化に日本が貢献したことは過去に何度も様々な形で言われてきたことだが、台湾人である李登輝氏の口から出てくることの意味は大きい。
 最近のベストセラーに『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』という本がある。PHP新書で著者は元皇族の家に生まれた竹田恒泰氏である。
 この本の紹介と著者インタビューは近々お送りする予定だが、この本を読んで最も印象的だった事例の1つが台湾に関するものだった。

砂漠化している北回帰線周辺で唯一の例外

 第2次世界大戦前に八田輿一という日本人が、当時東洋一のダムである烏山頭(うさんとう)ダムを作り上げた話である。
 烏山頭ダムは太陽の北回帰線上に位置する。しかし、世界の北回帰線上のほとんどの土地が砂漠化している中で、台湾のこの地域は見事に灌漑され一大穀倉地となっている。烏山頭ダムのおかげだというのだ。
 そして、このダムを造った八田輿一の命日には、台湾の総統が献花に訪れることしばしばで、少なくとも閣僚は毎年欠かさず参列するという。
 こうした日本人の地域社会への貢献を考えれば、台湾人が旧満州である中国東北3県の人々が日本に定住したい気持ちになってもおかしくない。
 
そうした彼らをどう受け入れるか。私たち日本人は尖閣諸島の問題などでヒステリックにならず、竹田さんの本のタイトルではないが、世界で最も人気のある民族としての振る舞いが求められているのではないだろうか。

世界で最も人気のある日本

もちろん、移民してきた人々に日本の法律やマナーを遵守してもらうことは絶対条件である。
 そうすれば、日本が将来大量の移民受け入れを政策として掲げるようなことがあっても、世界にほとんど例のない、米国以上の移民受け入れの成功国になれるかもしれない。
 さて、宮家さんの記事に戻ろう。最新の100号目は「中国急成長の歪み:大学を出ても就職できない」だ。
 年間10%以上の急成長を続ける中国なのに、大卒者の3人に1人は就職先が見つからないという。成長せず内需が冷え込む日本以上の就職難が中国で起きている。
 一方で、人材ニーズがある会社では慢性的な人手不足が発生している。この結果、人材ニーズが高く賃金が上がり続けている製造業の労働者と、職がなく賃金が据え置かれている大卒者の賃金格差が急速に縮まっている。

大卒者と工場労働者の賃金格差がなくなった

 2008年の時点でその差は既に300元(3800円)にまで小さくなっているそうだ。その傾向はますます強くなっていることから、最近では大卒者と中卒あるいは高卒の工場労働者の賃金格差はほぼなくなったと見ていいかもしれない。
 これでは自分の子供を無理して大学に行かせる理由がないだろう。ではなぜ、大卒のニーズが中国で少ないのだろうか。宮家さんは次のように分析する。
 「ある在米中国人学者は、中国の教育ではグローバル化する企業側の要求を満たす人材が育たないと主張する。科挙制度以来の「暗記中心」教育では学生の考える力が伸びず、教育の質はむしろ低下しているのだそうだ」
 「この点については日本の教育にも似た側面があり、耳の痛いところである。米コンサル大手マッキンゼー社の調査によれば、中国国内の外資系多国籍企業が適当と考える人材は中国の大卒者の1割にも満たないそうだ」
 
さらに、世界の工場である中国では、外国の注文を受けて製品を製造するだけだから、製品の企画とかマーケティングとかいうような高い次元の仕事に対する需要があまりない。

中国の大学生不遇の時代は続く

非常に速いスピードで経済成長を続けてきた中国だが、大卒者の数はそれを上回る速度で増えてきた。
 その一方で、急速にグローバル化する社会に大学の教育はついていけず、社会が求める人材を生み出せない。
 極めて構造的な教育問題が発生しているわけだ。この問題は簡単に解決できるものではなく、宮家さんは「いずれにしても、中国の大卒者の就職受難は当分続きそうだ」と見る。
 こうした状況が続けば、将来を夢見て身の丈以上に子供に投資してきた中国の親たちの失望は大きい。そして何よりも、親の期待を一身に受けて勉強してきた子供たちの不満はたまる。
 若いエネルギーは容易に暴力的な行動に変化する。それは日本の全共闘世代が優れた前例を提示している。

インフレが中国の民主化運動に火をつける

 中東で湧き上がっている民主化運動が中国に飛び火し、中国ではジャスミン革命と呼ばれる民主化運動に本格的に火がつく可能性は十分にある。中国政府の強力な消火機能で当面は抑えられても、別の火種が起きれば話は別だ。
 原油価格と食料品の価格高騰による激しいインフレ、そしてバブル経済の崩壊による経済の失速である。
 中国のそうした問題はJBpressでは前に何度も触れてきた。例えば、「中国の指導者たちが神経過敏になる理由」「ジャスミン革命なんか怖くない、でも・・・」。
 ところが、中国のこうした問題に目を奪われているところに思わぬ伏兵が登場した。韓国である。
 
経済好調だった韓国でも大卒者の就職難は大変に厳しい問題だ。そこに来て、バブル経済の崩壊が目に見える形で始まったのである。その姿は中国と重なって見える。

伏兵、韓国でバブル崩壊が始まった

野口透さんの「韓国経済に黄信号、銀行が次々営業停止に」がその姿を見事に描き出している。
 不動産バブルの崩壊で、1カ月に8つもの金融機関が営業停止に追い込まれてしまったというのだ。これには韓国政府の状況判断のミスが大きく影響している。
 しかし、背景には経済が急成長する裏で、余った資金が不動産投資に回りバブル経済を育んできたことがある。2008年の米国発金融危機以降、不動産価格の上昇にストップがかかり、一気に破裂に向かい始めたのだ。
 最近では対ドルでのウォン高進行で輸出企業の業績が徐々に悪化しており、インフレ懸念も強まっている。「韓国経済を取り巻く潮目がはっきり変わってきたことは確かだ」と野口さんは指摘している。
 急成長する経済は意外に脆い。成長分野へ経営資源が集中し過ぎるため、大きな変化が起きた時に抵抗力が弱くなるからである。
 中国と韓国はいま、その洗礼を受けていると言っていいのではないだろうか。日本が1990年代に味わったような。しかし、日本はそれを対岸の火事として見物を決め込むわけにはいかない。

北朝鮮、中国からの難民を全く想定していない日本

 日本のすぐ隣で起きていることは、日本に少なからず影響を及ぼすからである。もちろん、日本の内需が構造的に低迷する中で、中国や韓国経済が冷えることは経済的にも大きな影響をもたらす。
 一方で、中国からの大量移民や難民が押し寄せる可能性も無視できない。それは、北朝鮮の政治崩壊も併せて考えなければならない問題だ。
 しかし、日本政府にそうした危機感は薄い。先日、元自衛官と話をする機会があった。その人が言うには、政府は「自衛隊の敷地に難民キャンプでも作れば問題はないではないか」程度の関心しかないそうだ。
 リビアで発生した民主化デモは大量の難民を旧宗主国であるイタリアに送り込み大きな問題になっている。しかし、リビアの人口はせいぜい650万人だ。北朝鮮の1500万人、中国の13億人と比べたらはるかに小さい。
 中東の民主化デモが東アジアに飛び火し、日本に大量の難民が押し寄せる。決してあり得ないことではなく想定しておかなければならない問題ではないだろうか。
 最後に、本日(3月5日)付の朝日新聞に、2月25日付の野口透さんの記事「日本の巻き返しを怖れ、韓国がとんだ勇み足」で紹介した韓国のお粗末スパイ事件のことが報道されていた。
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