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中国の長期戦略と米国の全世界即時攻撃構想

2011.02.21(Mon) JBプレス 鈴木通彦
 
1 はじめに
米中間には、核と通常兵器、あるいは宇宙の軍事利用についての抑止協定がない。
 冷戦時代の米ソの軍事関係は、不透明性と核戦争波及への恐怖によって抑止を強く意識せざるを得ない緊張感がある一方で、抑制の効いた関係であった。
 これに対し、米中関係は、強い経済的相互依存を背景に、軍事力で米国が20~30年先行していることもあって、中国が一定の範囲内であたかもやんちゃ坊主のごとき振る舞いをする関係になる。
 積極的ながら米国を激怒させない気遣いの下に軍事格差を埋めることで戦略態勢を改善し、一方の米国が長期優位を持続させるためヘッジ&インテグレート(Hedge & Integrate)に配意し、攻めすぎもせず勝手気ままにはさせない姿勢の下に新たな軍事投資を続ける構図である。
 背景には、抑止協定の締結が不利な現状固定になるとの中国側の計算および経済的相互依存がもたらす利益への両国の期待感が存在する。
 しかし、中国にとって、本格的な軍事対決は悪夢である。このため、格差を熟知し米国の意図を推し量るため、しばしば高官が観測気球を揚げる。
 「台湾問題に介入すれば、対米核攻撃の用意がある」と発言した朱成虎陸軍少将や「西太平洋を米中で二分しよう」と発言した楊毅海軍少将はそのオピニオンリーダーである。
 責任ある立場とは言えない理論家に非公式で乱暴な論理展開に基づく強気の主張をさせるパターンである。
 そして、能力拡大の焦点は、現実に抑止されている核よりも、通常戦力、なかんずく海軍戦略やミサイルの分野であり、宇宙やサイバーの世界になる。
 
2 中国の軍事戦略
 中国の軍事戦略は、鄧小平時代の「冷静に観察し、足場を固め、落ち着いて対処し、力を蓄えて好機を待ち、分相応に振る舞い、決して指導的立場にならぬよう」の24文字熟語「韜光養晦(とうこうようかい)」に表される慎重姿勢から、徐々に軍事的自己主張の時代へ変わりつつある。
 それは軍事力が、鄧小平の時代よりも改善され、当時描いた構想がほぼ予定通り進捗しているという自負を裏づけにしている。
 その代表は、1982年に鄧小平の下で海軍司令員・劉華清が考えた4段階の海軍建設構想である。
 今から30年前の構想であるが、かなり順調に進展していることに驚かされる。しかし概ね計画通りだとはいうものの、インド洋を含む南方は手薄である。
 
 
毛沢東時代の中国は、対米・対ソ戦略上、三線建設という安全ではあるが著しく非効率的な「軍事産業の内陸退避」を余儀なくされた。
 今では、遅れた内陸開発の重要拠点として活用しつつあるが、膨大なエネルギー需要を賄うにはミャンマーを含む南方の陸路・海路による通商路が不可欠である。
 
 
この通商路確保と最大の弱点であるマラッカ海峡を克服するための軍事的布石がインド洋への進出、すなわち真珠の首飾りである。
 中国は西太平洋において作戦地域内の主に米空軍の固定基地から中国本土や沿岸への米軍のアクセスを拒否し、主に米海軍の行動の自由を拒否するため、対アクセス/領域拒否戦略(A2/AD)を進めている。
 これに、宇宙やサイバー空間で米軍の弱点を間接的に突く戦略を併用する。
 今や、中国東海岸スレスレにあったパワーバランス線が第4世代航空機や戦術ミサイルの沿岸地域への大量配備によって第1列島線近くに東進している。
 さらに今後、空母、新中距離対艦ミサイル、あるいは第5世代航空機の新規開発・配備が進捗すれば2020年頃までに第2列島線付近に推進される可能性も否定できない。
 
 
 
3 米国の軍事戦略/統合エアシーバトル構想(Joint Air-Sea Battle)
 
 米国は海洋支配を簡単に中国に許すわけにはいかない。現在確保している軍事的な先行を確保し続けるため、2010年の4年ごとの国防計画見直しQDRは2つの軍事戦略、統合エアシーバトル構想とその後に続く通常兵器による全世界即時攻撃構想CPGSを打ち出した。
 統合エアシーバトル構想は、中国のA2/ADを意識したもので、米軍の前方展開を拒否する中国に対し、比類ない能力で対抗し、邪悪な気持ちを起こさせない構想である。
 一方、通常兵器による全世界即時攻撃構想は、バラク・オバマ米大統領の主張する「核のない世界」構想を支え、同時に西太平洋進出を目指す中国海軍や中国大陸の重要目標を米大陸から超高速の精密誘導兵器によって直接抑制する新たな戦略である。
 
 
両者はともに軍事的なヘッジ(Hedge)戦略の中核になる。これは後述したい。
 統合エアシーバトル構想は、優位な国力を背景に長期戦で中国を制圧しようとするもので、国防総省に近い研究者クレピネビッチらによれば、作戦は奇襲を受けてから主導権奪回までの第1ステップと、その後に続く長期戦を有利にする第2ステップの各種作戦からなる。
 前者は奇襲に耐え、部隊や基地の被害を軽減する措置、人民解放軍の作戦ネットワークを壊滅させる目潰し攻撃、人民解放軍による目標平定と打撃に必要なC4Iの制圧、さらに5つの空間領域での主導権の奪回を目指す。
 後者は遠距離封鎖作戦、作戦レベルでの兵站の維持、さらに工業生産、特に精密誘導兵器の生産拡大を含んでいる。
 これらは、中国の軍拡意図が不明ゆえ「分からないものに対し最悪を準備する」という米国らしいプラグマティズムに由来する。
 そして背景にはエアランドバトル構想やスペースウォーでソ連の軍備拡大を逼塞させたアナロジーもある。
 
4 核軍縮を成立させる「通常兵器による全世界即時攻撃構想CPGS」
 
 オバマ大統領が、核のない世界を標榜してノーベル平和賞を受賞した。構想の提唱だけで受賞したわけで、それだけ世界の渇望感が大きかったことになる。
 しかし、必ずしもこれは単純な核軍縮の構図ではない。つまり、核のない世界を目指す最低条件は、核抑止が成立し続けることで、そのため通常戦争を核戦争から論理的、実際的に完全分離しなければならない。
 CPGSは、世界中の核だけでない重要目標を精密打撃によって即時攻撃する構想である。世界中とは地球の反対側すなわち9000マイル以内、即時とは中国などが投射準備開始から終了までに要する1時間以内を意味する。
 
 
精密誘導兵器の精度の向上で、核兵器のように爆発威力でそれをカバーする必要がないので、目標には地中深い陣地や機微な移動目標への爆発威力の小さな弾頭による攻撃も可能になった。そして、陸海空各軍が競ってこの構想を進めようとしている。
 配備時期は、2015年前後を期待していたが、必要性や核投射と誤認される可能性など多くの疑問が解決されず、開発と運用構想の具体化および初期配備に2020年頃までかかるだろう。
 投射手段は、既存の大陸間弾道弾(ICBM)などの改善型で、弾頭は核でなく硬質材料や複数子弾の通常弾頭である。
 ICBMは大気圏外に打ち出されてから再突入するが、これは時間短縮のため大気圏ギリギリを平らな軌道で飛行する。これにより9000マイルを76分から52分に短縮できる。
 しかし、このCPGS発射が、中国などに核不搭載を確実に伝達できないかぎり、核の撃ち返しの可能性が残り、さらに大気圏近くを飛行することで第三国の領空通過問題も生じかねない。物理的手段に加え、実際上の正しい相互認識が必要になる。
 そして、米大陸からの打撃手段が新たな選択肢になれば、日本などの前方展開基地の性格も変わる。
 しかしあくまでも打撃の選択肢多様化に狙いがあり、前方基地がなくなるわけではない。中国の空白地域への進出を懸念し、打撃手段に加え前方における情報機能の強化が叫ばれるであろう。
 
5 おわりに
 
 軍事対決は、軍事力の建設と運用の2つの側面で起きる。旧軍時代の日本では天皇の編成大権、統帥大権と称せられた。
 前者は、国の戦略方針と財政に依存する長期的なもので、建設される軍事力を見せつけその質と量で相手の戦意を挫き、後者は作り上げられた軍事力を使い火花の飛び交う直接対決で、短期に相手の軍事力と戦意を破砕しようとする戦いである。
 米ソ対決は、2つの側面で激しく進められたが、核を含む対決へ発展して共倒れする恐怖から抑止が常に機能していた。
 しかし、ソ連の財政・経済が長い対立を通じて徐々に戦略的優位を失い、軍事力建設の側面から自壊した。
 一方、米中対決は、圧倒的に米国優位の軍事格差の下で行われている。中国にとって、不利な軍事力運用の側面で直接対決する意図は基本的にあり得ない。
 それゆえ経済と軍事を総合的かつ巧妙にリンクさせ、軍事力の建設で慎重かつ積極的に格差を埋める戦略態勢改善の戦いになる。問題はそれが世界を不安定化させ、周辺国にも波及することだ。
 これに対し米国の提唱する2つの構想も、全スペクトラムにわたり中国に圧倒的な格差を見せつける軍事力建設戦略の一部である。
 それゆえ米中の経済協調の背後で、決定的対決を暗黙のうちに回避しつつも、軍事力建設分野における主導権争いが今後ともに繰り広げられることになる。
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