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オリコン
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ORICON BiZ8月20日(金)
6月23日に発売された西野カナの2ndアルバム『to LOVE』は、発売1週目で29万枚を売り上げ、7/5付アルバムランキングで初の1位を獲得。その後のセールスも好調で、すでに約55万枚(8/9 付)売り上げている。“ケータイ世代のカリスマ歌姫”として確固たるポジションを築いた彼女だが、ヒットの背景を探るとそこには若者へ対しての「すりこみ」が奏功していることがわかった。
1st アルバム『LOVE one.』(09年6月発売)から1年。“ケータイ世代のカリスマガール”こと西野カナの2ndアルバム『toLOVE』(10年6月23日発売)は、前作の8.5倍強となる29万枚の初動セールスを記録し、7/5 付アルバムランキングで初の1位を獲得。7/12 付で11.3 万枚を売り上げ、2週連続で1位をキープした。2週目で10万枚を超えた例は今年初、女性アーティストによる2週連続1位も今年初だ。西野カナの人気の理由とは、いったいどこにあるのだろうか。
西野カナの全シングルの累積売上枚数を比較すると、09年3月に発売した5枚目シングル「遠くても feat.WISE」をきっかけに、右肩上がりにセールスが伸びているのがわかる。この「遠くても~」は、西野カナ自身の体験を元にしたミドルバラードの「遠恋ラブソング」。ここで、彼女の作品における一つのキーワードである「会いたい」という言葉が登場する。同作はノンタイアップながら配信で好セールスを記録している。そして6月に1st アルバム『LOVE one.』のリードシングル「君に会いたくなるから」が発売される。ヒットプロデューサーJeffMiyaharaを迎えたこの珠玉の切ない「失恋ソング」で、西野カナ=「会いたい」(=切ない)ブランドが確立。アルバム『LOVEone.』は初動3.4 万枚を記録し、7/6 付アルバムランキング4 位に初登場。2週目以降も、2.2万枚→ 1.8万枚→ 1.4 万枚→ 1.0万枚と、女子セールスをキープし続け、現時点で約21万枚のヒットとなっている。
注目すべきは同アルバム以降の展開だ。西野カナを表現する上でよく使われる言葉に「女子大生」「ファッション」「渋谷」があるが、こういったイメージをより明確にユーザーに定着させるための、ブレないプロモーション展開が為されている。このキーワードと最近1年の、西野カナの主な活動状況とを照らし合わせてみる。まず、「女子大生」と「ファッション」。『キャンパスナイトフジ』への出演、「学園祭ツアー」、雑誌『ViVi』や『CanCam』等での露出によって、女子大生とのタッチポイントを増やしていることがわかる。
また、「等身大」女子の気持ちを歌う彼女のファッションは、カッコ良すぎず、トンガリすぎず、ちょっと背伸びすれば真似できる(と思わせる)ものだ。「カワイイ」が、決して真似できない(手の届かない)ものではない、という絶妙なバランス。次が「渋谷」。西野カナはこの1年、“渋谷”をキーエリアとして、自身を表現してきた。『メイベリンニューヨーク』テレビCMスタート(英詞Ver.)は渋谷街頭ビジョンでも放映され、12 月には渋谷マルイ クリスマス点灯式でライブを行い、マルイJAM に超特大ポスター掲出するなどして、「渋谷のアイコン」のポジションを確立していった。「渋谷のアイコン」化で大都市周辺部の女子の共感も獲得。その結果、大都市圏に憧れを持ちながらも、大都市近郊に住む10~20代女性たちの共感を得ることに成功したのはセールス動向からも明らかだ。
西野カナのアーティストイメージ上位には「かわいい」「親しみやすい」「オシャレ」が並ぶ。ファンは今時の女の子の日常生活の1コマをリアルに描いた歌詞に親近感を覚え、自己投影する。『mixi』のコミュニティを覗くと、「共感した」「泣いた」という言葉が連なる。彼女の詞の世界に自己投影するのは、どちらかというと「受け身」のタイプ。そんな大人一歩手前のティーンの女の子たちが憧れ、集まる場所が前出の“渋谷”なのだ。
「カリスマ」というよりは、もっとリスナーに近い「同世代のリアルなポップアイコン」と化した西野カナは、「渋谷のアイコン」をも手に入れた。それにより、大都市に憧れを持ちながらも、相変わらず地方に住み続ける(彼を待ち続ける)、大都市周辺部に住む大人一歩手前の女の子たちの共感も獲得した。また、1st アルバム『LOVE one.』で、西野カナ=「会いたい」(=切ない)ブランドを確立して以降も、「会いたくて 会いたくて」(10年5月19日発売)まで、一貫して歌の世界観を崩さなかったことによって、アーティストイメージはより強固なものに形作られていった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/DeNA
南場智子
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E5%A0%B4%E6%99%BA%E5%AD%90
8月20日17時6分配信 ITmedia News
ネット企業が、入社するエンジニアに対し高額の一時金を支給する例が相次いでいる。「モバゲー」を展開するディー・エヌ・エー(DeNA)が200万円を支給することで話題になり、ドワンゴは「ニコニコ動画」にちなんで合計252万5000円を振る舞う制度を発表。ネットサービスを開発・運営できる優秀なエンジニアの争奪戦が熾烈(しれつ)になってきている。
「エンジニアとして入社が決定した方に対して入社準備金として200万円を支給いたします」──DeNAがこのほどエンジニア向けページに掲載した入社準備金制度。10月31日までに同社サイトからエントリーし、選考の上エンジニアとして入社するエンジニアに200万円を支給するという太っ腹ぶりで、もちろん「入社準備金は年俸には含まれません」。ソーシャルゲームのヒットで爆発的に業績が成長している同社ならではと、エンジニアが集まるコミュニティーで話題になった。
8月20日には、ドワンゴが中途採用者向け「ニコニコ入社一時金制度」を発表した。同社サイトから11月30日までに直接エントリーして入社が決まったエンジニアに対し、一時金を支給する。
本人に126万2500円を支給するほか、エンジニアが指定するオープンソースコミュニティーや慈善団体などにドワンゴが同額を寄付。合計で「ニコニコ」の252万5000円を同社が拠出するユニークな制度だ。
ソーシャルアプリの急速な成長などに伴い、ネットサービスを開発できるエンジニアの争奪戦が激しくなってきている。サイバーエージェントの藤田晋社長は今月上旬の講演で「エンジニアの採用費はいくらかかってもいいから採用したいということになっている」「自社のサービスとしてWebサイトを作ったり、アプリを作ったり、ゲームを作ったりする時に非常に重要となるのは『内製化』であるとみんな気が付き始めている」と語るなど、ネット企業の将来を左右するのは優秀なエンジニアだというのが共通の認識だ。【ITmedia】
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電子書籍
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%9B%B8%E7%B1%8D
ダイヤモンド・オンライン8月20日(金)
全世界で2000万部以上も売れ続けているベストセラー『7つの習慣 成功には原則があった!』(スティーブン・R・コヴィー著)がウェブサイトを通じて期間限定で無料公開されることになった。『FREE』(クリス・アンダーソン著)のように、新刊書籍の発売前に電子版をネットで無料配信するプロモーション手法は一般化しつつあるが、ビジネス書で世界最大級の既刊ベストセラー「全文公開」は世界にも例を見ない。
昨年、著者のスティーブン・R・コヴィー氏は、『7つの習慣』のデジタル出版権を大手出版社サイモン&シェスター社から引き上げ、amazonのキンドルストアに移したことで話題となった。『7つの習慣』が出版されたのは1989年。このころは電子書籍の出版がほとんど想定されていなかったため、出版社と著者の間で「デジタル化」に関する契約が取り交わされていない。したがって、大手出版社のドル箱である既刊ベストセラーの電子書籍化にあたっては、著者判断により他社に移ることがありうる。
紙の本の著者印税は日本では概ね10%程度だが、amazonやアップルを通じた電子書籍では60~80%(ただし、著者とamazon、アップルの間を仲介する"エージェント"の取り分を含む)。したがって、ベストセラー著者にとっては電子書籍化の魅力は大きいし、それが大手出版社にとっては脅威ともなりうる。アメリカでは『7つの習慣』を巡る騒動は「電子書籍のコヴィー問題」として注目された経緯がある。
アメリカでは、すでに電子書籍が「紙の本」を凌駕しつつある。amazonの発表によれば、今年4~6月でハードカバー、キンドルストア(電子書籍)における販売数は、ハードカバー100冊に対して電子書籍180冊。8月末にはコンパクトで安価な新キンドル(電子書籍リーダー)が登場することもあり、電子書籍化の勢いは当面止まりそうにない。
キンドルストアは日本語書籍に対応していないが、新キンドルでは日本語フォントが閲覧可能となる。amazonジャパンと日本の大手出版社の間で電子書籍化に関する水面下の交渉も進んでいるとみられ、また電子書籍のプラットフォームでamazonとしのぎを削るアップルやグーグルも世界第2位の出版大国である日本を虎視眈々と狙っている。2010年が日本においても「電子書籍元年」となるのは間違いない。
渡辺喜美
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E5%96%9C%E7%BE%8E
日本銀行法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%8A%80%E6%B3%95
現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/
渡辺喜美(みんなの党代表)×長谷川幸洋(東京新聞論説委員)
長谷川 過日、東京証券取引所の斉藤惇社長にお話をうかがったんですが、日本の中堅企業の5000から1万社くらいが日本を見限って、海外に脱出しているそうです。
渡辺 ほう、すでにそんなに。
「アジアの金融センターにはもうなれない」
長谷川 株式ディーラーも、香港やシンガポールに続々とヘッドハンティングされて日本を脱出している。だから斉藤社長は東証の役員たちにこう言ってるそうです。「"東京をアジアの金融センターに"というようなキャッチフレーズはもうやめよう。もはやそんなことはできないんだから」と。私はこのお話を聞いて愕然としました。
渡辺 う~ん。
長谷川 東京を抜き去った香港やシンガポールは、「世界の金融センターに」とうたっています。一方、東京はローカルマーケットに過ぎなくなってしまっている。日本の経済はそれほどに沈んでいるのです。
渡辺 それにくわえて、これから世界経済の二番底懸念は、かなり現実味を帯びつつあると思います。
長谷川 そうですね。
渡辺 こういう非常事態への対応が必要なときに、政府にはまるで危機感がない。どころか、増税路線がいきなり出てきたりする。この無頓着さに国民が敏感に反応したのが、今度の参院選の結果だったのだと思います。
リーマンショックを凌ぐ経済危機がくる可能性
長谷川 欧州でも銀行の不良債権問題がくすぶっています。おそらく相当な資産劣化のために、いずれな公的資金を注入せざるをえなくなるでしょう。ひょっとすると、リーマンショックを上まわる危機が、これから訪れるかもしれません。
渡辺 リーマンショック以後、問題解決を誤魔化しました。金融システムには大きな穴は空いていないんだ、という共同幻想でやってきた。でも、それは限界に達しつつある。世界経済は重大な局面にありますね。
長谷川 でもそういう危機感をまったくないまま、日本の国家経営というものは行われている。
渡辺 ええ。日本は相変わらず「部分最適化」だけが得意の試験選抜エリートが実権を握り続けています。自分たちの縄張りの中だけで生きている人たちが、政治家を駆使しながら日本を動かしている―この現実が民主党政権下で、はからずもわかってしまった。
長谷川 鳩山・菅とつづいた民主党政権はマクロ経済政策を持っていません。だから、マーケットがそれを見透かして、いま円高を仕掛けているんじゃないかと、これまで私は指摘してきました。
欧州もアメリカも財政出動の余裕がなくなってきています。では何ができるかというと、為替の切り下げ競争です。欧米の政策当局は意図してやらないだろうけれど、マーケットの側が先読みして円を高くしているのじゃないかとみています。
日本の永田町はこの脳天気状態だから、有効な対応策を打たない。これは絶好のチャンスだとつけ込まれて、その結果、円高になっているのではないかと考えているんです。
渡辺 まったくその通りですよ。カナダのサミットから菅総理が帰国したとたん、円高になって、株が下落したでしょ。
長谷川 そうです。
菅政権の「自国窮乏化策」
渡辺 去年11月、当時の菅直人副総理兼経済財政担当大臣が、デフレ宣言をしたけれども、デフレ対策とは名ばかりで、アリバイ作りのことしか行われていませんよね。日本銀行が成長融資と称して政府系金融機関まがいのことをやっている。ベースマネーはまったく増えていない。
直近のバランスシートは117兆円くらいでしょうか。一時150兆円もあったバランスシートからすると、30兆円以上もしぼんでしまっています。これぞまさしく、円高の基本要因ですよ。こういうのを「自国窮乏化策」って言うんでしょうね。
長谷川 なるほど、「自国窮乏化策」ですか(笑)。
渡辺 自分の庭先だけきれいにしたいという「部分最適」の世界で、財務官僚が「増税しかない」と言い張ってるわけです。
IMF(国際通貨基金)のレポートは、15%の消費税アップが必要だと書いたと話題になりましたよね。この内容は内閣府の試算と同じです。プライマリーバランスを回復するためには、名目2%成長だと10年後には消費税は15%必要なんだという試算は同じです。つまり、このレポートを誰が書いているのか、これはもう一目瞭然ですよ。
長谷川 つまり霞が関ですね。
渡辺 IMFは日本が資金を提供し、財務省の出向者の跋扈する国際天下り機関ですよ。外圧利用という手あかの付いた手法ですが、実際にこういうレポートを書いているわけです。
「部分最適」で縄張りだけをきれいにするために、デフレ下で増税をして、結局はデフレから脱却できない袋小路にはまっていくことになる。そして、日本の国力はどんどん衰えてゆく・・・この流れはいかんともし難い状況です。
長谷川 マーケットが注目しているのは、円高が進んでも、財務省からも日銀からも何の具体策が出てこないというその部分なんです。
渡辺 永田町はまったく能天気ですからね。為替は変動相場制のもとでは、金融政策と密接な関係がある。為替をターゲットにした金融政策はなかなか理屈が立ちませんけれど、結果として為替マーケットに影響をおよぼす金融政策というのは明らかにあるわけです。
つまりお金の供給を絞れば、円は高くなるに決まってますよ。供給すれば価値が薄まって円安になるなんてのは、中学生だってわかる話なんです。どこも自国通貨を安くする「近隣窮乏化策」やってるときに、日銀だけが「自国窮乏化策」をやってる。
長谷川 日銀はひどいですね。
渡辺 小泉政権時代には、大量の為替介入と事実上の金融緩和政策が行われたわけですね。これは、日本の景気回復にとっては非常に効果があった。ところがいまは、まったく機能していないんですね。
みんなの党では、クレジット・イージングといわれる信用緩和政策を提案しています。やはり日銀法そのものを改正する必要があるんですね。私自身は98年に日銀法改正に携わった人間ですから、内心忸怩たる思いを抱いています。この10年間、日銀の政策はデフレターゲットだったと言っても過言ではありません。
長谷川 そうですね。
渡辺 消費者物価指数は「コア指数」も「コアコア指数」も、0%からマイナス1%を行ったり来たりしていますね。0の上を抜けると金融引き締め、マイナス1の下を抜けると金融緩和を行う。これはまさにデフレターゲットの金融政策ですよ。
こんなデフレを10年以上も続けている国は他にはありません。どこの国だって大競争のまっただなかにあるんです。中国をはじめとした新興国から、どんどん安いものが入ってくるし、IT革命でイノベーションがどんどん行われてゆく・・・。これだけデフレ圧力はかかっているにもかかわらず、何も対応していないのは日本だけなんです。
民主にも自民にもいるデフレ脱却賛成派
長谷川 7月にウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された渡辺代表へのインタビュー記事では、デフレを脱却するための物価安定政策を呼びかけると発言していますね。
民主党や自民党のなかにもデフレ脱却賛成の議員がかなりいて、民主党には130人くらい賛同者がいると・・・。今後の戦術はどうしますか?
渡辺 目の前に迫った二番底懸念があり、国民生活は相当に脅かされているわけですね。この参院選を通じてわれわれがひしひしと感じたのは、「景気をなんとかしてくれ」という悲痛な叫びですよ。結局はこういう声に応えることこそが、政治の本来の役目だろうということなんです。
長谷川 そうですね。
渡辺 たとえば日銀法改正で、物価安定目標を入れるということです。物価安定目標というのは、反対側から見ると、雇用の安定につながる。デフレのときには失業率が当然高くなるわけだし、2%の物価上昇なら失業率は下がってくる。
長谷川 フィリップスカーブですね。
渡辺 それが常識なわけですから、物価安定と雇用の安定は日銀法のなかに取り込んでもいいだろうし、クレジットイージングを政府が要請できるという項目を入れれば、なお政策は強化されてゆくでしょう。
長谷川 なるほど。
渡辺 12年前の金融国会のときには、橋本政権から小渕政権に変わった後、8月中もお盆を除いてずっとやってました。そういう感覚が必要なんです。にもかかわらず、今度の臨時国会では、予算委員会はわずか数日です。とんでもないことですよ。
民主党のなかも大混乱なのでしょう。9月は代表選で、その後で臨時国会だという。この代表選の結果によっては9月の国会審議は、まず無理だろうと言われている。
長谷川 いま、日銀は神経を使ってるでしょう。つまり、みんなの党が物価安定・雇用の安定などを掲げて、本気になって行動してくるとなれば、いままでのようにのんべんだらりと、金融緩和に本腰をあげずにお茶を濁しているわけにはいかなくなるぞと―。
渡辺 ただ日銀法の大改正は、かなり重たい弾になります。本格的な論戦ができる国会にもっていかなくてはなりません。
長谷川 しかし、問題はそんな悠長な時間的余裕があるのでしょうか。
渡辺 そこなんです。10月に論戦をはじめて1ヵ月経過するとして、ほんとうにそれでこの国は大丈夫なのか? われわれはその危機意識があるから、夏休み返上で議論すべきと訴えたのですが、政府・与党にはこの感覚がない。恐るべきことです。
長谷川 永田町の経済政策への感度が非常に低下していますね。私たちメディアの側も、与野党の数合わせの問題ばかりを追ってしまい、政策の部分が抜け落ちてしまっている。欧州で経済危機が火を噴く可能性があるとすると、秋までのんびりしていて大丈夫なのか、ほんとうに不安です。
渡辺 霞ヶ関の官僚のなかにも、危機意識を持った連中は、数は少ないけれどもいるんですよ。しかし彼らは、いまの枠組みのなかでは、国家戦略にまで高める政策立案ができない。「部分最適」、各省の縄張りの中で、こじんまりと政策立案をまとめるしかないんですね。
改革派官僚を活用せよ
長谷川 民主党政権の公務員改革に対する姿勢を問う象徴的な人事があります。経産官僚の古賀茂明さんが、1年近くも官房付という宙ぶらりんのまま置かれ、さらには退職勧奨を受けたというのです。古賀さんは改革派官僚としても知られている方なのですが、それを追い出すとは・・・。
渡辺 古賀さんは、私が(金融・行政改革担当)大臣のときに、国家公務員制度改革推進本部事務局の幹部として働いた人物なんです。誰が見ても改革派官僚のエースでした。実際、大臣室で補佐官として手伝ってくれた若手官僚は、古賀さんに紹介してもらった人たちでした。
彼らは、事務方が骨抜き案や落とし穴を設けた案をもってきたときには、しっかり骨を入れ、穴を埋めるといった作業をやり、渡辺プランの企画立案を、私の右腕となって実行してくれていたのです。
長谷川 なるほど。
渡辺 古賀さんは霞ヶ関の中で、改革の志を忘れない非常に希有な官僚です。だから、私が大臣を辞めた後、彼の身がどうなるのか、案じていたんです。結局、国家公務員制度改革推進本部事務局は、かなりタガがゆるんでしまいました。
それでも民主党は「脱官僚」と言ってましたんでね、われわれも最初は期待してた。古賀さんは仙谷由人公務員制度改革担当大臣の補佐官として、右腕になる予定だったんです。
長谷川 そうだったんですか。
渡辺 しかし、財務省を中心とする霞ヶ関が、「こんなアルカイダみたいな官僚を使うと大変なことになる」と、総攻撃をかけて古賀さんが補佐官になる案をひっくり返してしまった。
長谷川 財務省にしてみれば古賀さんは、自分たちを破壊してしまうほど強力な改革派だったというわけですね。
渡辺 そうです。そして古賀補佐官構想が潰れてから、仙谷大臣が変節するのに時間はかかりませんでした。いまや、仙谷官房長官は霞ヶ関の既得権益の守護神と化しています。
長谷川 もし仙谷官房長官も本気で「脱官僚」を目指すのなら、いまからでも古賀さんを採用するべきですよ。
じつは、ある民主党の現職閣僚から、「改革派官僚の知恵を借りたい」と相談を受けたので、古賀さんにお話して、「古賀リスト」を作成して渡したことがあるんです。しかし、その閣僚はリストを活用することなく、現在に至っています。こうした人材をうまく使ってほしいですね。
霞が関へのかすかな希望
渡辺 6月22日に菅内閣が行った閣議決定(退職管理基本方針)があるんですが、それは「現職の官僚が天下り法人に出向する場合は、天下り扱いしない」というとんでもない閣議決定なんですね。50代のいわゆる肩たたき対象組が、古賀さんへの出向打診のように本省に戻ってくる可能性がないまま現職として出向するとすれば、これは天下りそのものなんですよ。
長谷川 ええ。
渡辺 自民党時代からコソコソと考えられてきたことが、より露骨に民主党政権下で実現してしまったわけです。だから問題なんです。
もともと現職官僚が出向するといった場合には、研鑽を積ませるためですよ。若手官僚のスキルアップが目的だった。それを、民主党政権はおおっぴらにとんでもない屁理屈をこね、実際は肩たたきの天下りなのに、人事なのだと言い張って制度を解禁してしまった。
この根底には、官が民を支配するという官僚統制・中央集権の思想があるわけです。植民地みたいな法人をたくさん作っておいて、そこに官僚をはめ込んでおく。この統制が民の活力を阻害し、日本をダメにしている。6月22日の閣議決定は、まさに"植民地"を大幅に拡充・強化しようとするものなんです。
長谷川 菅政権も自分たちが身を切らずして、国民の支持は得られないということは、今回の参院選ではっきりわかったでしょう。だからこそ、民主党内は責任問題で内紛に近い状態になっている。霞ヶ関もそろそろ気がつかないといけない。
つまり、財務省も増税をするには、霞ヶ関自身が身を切らなければならないということに気がつかなければならない。であれば、霞ヶ関のリストラ案を霞ヶ関自身が出すべきです。
ズバリ言えば、財務省主計局は、国家公務員の給与問題をどうするのか、独立行政法人はどうするのか、さらに言えば霞ヶ関全体の体制をどうするのか・・・これらについて自分たちが身を切るリストラ案を出したらどうか。
言い換えるなら、菅政権も財務省主計局に対して、「リストラ案を作りなさい」と求めるべきではないのか。現にドイツでは官僚が官僚のリストラを考えているんですからね。
渡辺 長谷川さんの意見には、日本の官僚には腐りきっていない部分があるんだという微かな希望が入っているんでしょう?
長谷川 そうです。
渡辺 これは改革派官僚をピックアップして作らせないと、骨抜きプランが出てくることはまず間違いない。まな板の上の鯉に包丁を渡して、自分で切れと言っても・・・。
長谷川 切れないでしょうねえ。
官僚は「できない」という天才だ
渡辺 だからやはり、霞ヶ関のリストラは政治の仕事になります。民主党が政権を取ったにもかかわらず、なぜマニフェストが詐欺のオンパレードになってしまうのか? それは官僚機構を使いこなす前に、官僚を選ぶというあたりまえのことが、まるでできていなかったからなんですね。
長谷川 そこですね。
渡辺 自民党時代を支えた官僚を居抜きで使ってるからですよ。官僚は「できない」と理屈をこねる大天才と言われているんですから(笑)。あれもできない、これもできないと言うに決まってるんです。
普天間問題を例に取るなら、基地を県外にあるいは海外への移設を実行しようと思ったら、官僚を入れ替えて使うしかないんですよ。自民党時代に辺野古沖移設を進めてきた官僚をそっくりそのまま使ってるわけだから、「できません」と言うに決まってる。
長谷川 予算の組み替えにしたって、自民党時代の官僚を使ったら「できません」と言いますよ。こんなあたりまえのことが、まったくできていない。
渡辺 民間企業で経営陣が替わったら、まず最初に手を付けるのが社内人事の刷新でしょう。若手で使えそうなのがいれば、大抜擢したりする。それが普通です。
みんなの党では、真の政治主導を実現するための3点セットを挙げています。1、内閣人事局を作り、幹部人事にグリップをかける。2、国家戦略局を作り、国家戦略スタッフが政策の企画立案を行う。3、内閣予算局を創設し、真の人・政策・お金の官邸主導体制を作る。民主党もこの方向性の大切さはわかっていたはずなのに、この第一歩すら踏み出せていないのは残念です。
この対談は7月20日に行われました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%AD%A6%E4%BC%9A
*会の役員
■ 名誉職
名誉顧問 長岡 實 資本市場研究会顧問
名誉顧問 河野 俊二 東京海上日動火災保険名誉顧問
会 長 石原 信雄 地方自治研究機構会長
■ 理事会
理事長 澤野 次郎 常勤
専務理事 (理事長兼務)
理 事 石 弘光 放送大学学長
理 事 垣添 忠生 日本対がん協会会長
理 事 田波 耕治 三菱東京UFJ銀行顧問
理 事 波多 健治郎 明治安田生命保険特別顧問
理 事 原田 明夫 弁護士
理 事 吉田 正輝 プルデンシャル生命保険特別顧問
監 事 水野 勝 日本たばこ産業顧問
■ 評議員会
議 長 古川 貞二郎 恩賜財団母子愛育会理事長
評議員 梅崎 壽 東京地下鉄社長
評議員 公文 宏 女子学院理事長
評議員 篠沢 恭助 資本市場研究会理事長
評議員 嶋津 昭 地域総合整備財団理事長
評議員 辰川 弘敬 元中央大学常任理事
評議員 成田 頼明 日本エネルギー法研究所理事長
評議員 野村 鋠市 東京市政調査会顧問
評議員 早﨑 博 住友信託銀行特別顧問
評議員 藤井 威 みずほコーポレート銀行顧問
2010年6月現在
Net月刊現代
http://moura.jp/index.html
財務省の関連団体に面白い組織があるのを知ってますか。『学会』と名がついているので、あたかも学術研究団体のような体裁をとっていますが、中身はちょっと違う。財務省の権益を守るための『秘密クラブ』のようなものです」
興味深い話を打ち明けてくれたのは、霞が関の実態に詳しい中堅官僚である。にわかには信じがたい気がしたが、インターネットで所在地を検索すると、思わず目が止まった。東京・赤坂の奥座敷。都心には珍しく、Uの字形になった道路の奥まった一角にあり、関係者でなければ立ち入らないような場所だった。
単なる偶然だろうが、すぐ隣には、数年前に某経済紙の社長が通い詰めて、スキャンダルになった高級クラブもあった。たしかに、秘密めいた臭いが漂ってはいる。
その団体は「日本法制学会」という。「財政・金融・金融法制研究」の分野で一件100万円までの助成金を支給したり、行財政や都市再生の研究会を開いたりしている。文部科学省所管の財団法人だが、実際には財務省の強い影響下にある。役員の顔ぶれをみれば、それは一目瞭然だ。
名誉顧問に長岡實資本市場研究会理事長(元大蔵事務次官)、会長に石原信雄元内閣官房副長官(元自治事務次官)が就き、理事長ほか役員にも財務省や総務省の有力OBたちがずらりと名を連ねている。
なかでも長岡は、いまも財務省に強い影響力をもつ「ボス中のボス」として知られている。学会の下部組織である行財政研究会の名誉会長を兼ね、2代目の研究会会長には保田博資本市場振興財団理事長(元大蔵事務次官)が収まっている。
実は、4月にようやく決着した日銀総裁騒動の「陰の主役」が、この長岡・保田ラインと目されているのだ。
「保田さんは故・福田赳夫首相の総理秘書官を務めた。そのとき同じ秘書官同士だったのが、いまの福田康夫首相なのです。その縁で、保田さんは福田首相に極めて近い。田波耕治国際協力銀行総裁を日銀総裁候補に推薦したのも保田さん、と言われています」(官邸関係者)
保田は初代の国際協力銀行総裁を務めた。田波は、まさに直系の後輩に当たる。
「終わりの始まり」 民間の感覚では理解しがたいが、財務省の次官級OB人事を仕切るのは現役官僚ではない。長岡や保田ら一部のボスたちである。現役を退いてからも、力のあるボスが人事を仕切る鉄の秩序こそが「大蔵一家」と呼ばれるゆえんでもある。
現役時代だけでなく天下り後も含めた経歴こそが、財務官僚の真のキャリアになっている。いったん入省すれば、少なくとも70歳までは面倒をみる。だからこそ、ボスが人事を仕切るのだ。
今回の日銀総裁騒動が示したのは、ほかでもない、この「鉄の秩序」が支えてきた支配体制が崩壊しつつあるという現実だった。長岡や保田ら、かつての「大蔵王朝」の栄華を知るボスたちにとって、総裁候補の大本命だった武藤敏郎前日銀副総裁(元財務事務次官)、田波、そして副総裁候補になった渡辺博史一橋大学大学院教授(前財務官)までもが、次々と民主党によって不同意とされたのは、信じがたい「悪夢のような光景」であったに違いない。
新聞の社説が一部の例外を除き、こぞって武藤総裁案を不同意とした民主党を批判したが、新聞自身が閉鎖的な記者クラブ制度を通じて、財務省をはじめとする霞が関と利害を共にしてきた側面は見過ごせない。新聞やテレビの記者は官庁の記者クラブを基地にして、政府の一次情報を独占入手する既得権益を享受してきた。いわば、マスコミも大蔵王朝の一員だったのだ。
日本法制学会の役員名簿をみると、理事の一人に石弘光放送大学学長(元一橋大学学長)の名前もある。石はかつて政府税制調査会の会長を務め、任期満了後も財務省は続投を画策したが、2006年秋の安倍晋三政権発足とともに、財務省寄りの姿勢を嫌われ、再任を果たせなかった。振り返ってみれば、この辺りから、ボスたちの影響力は陰りを見せていたのである。
「あの『秘密クラブ』は、そこらの並の財務官僚では、とても近づけないような独特の雰囲気があった。門をくぐれるのは、現役、OBを問わず、ほんのひと握りのエリートに限られていました。存在さえ知らない官僚も多いでしょう。これまでは日銀総裁も、そこの住人たちが決めていたようなものなのです。でも、そういう時代は確実に終わりつつありますね。もはや復活はありえない」(先の中堅官僚)
財務省支配体制の「終わりの始まり」。日銀騒動の本質をそう正しく認識した人間が、どれほど福田康夫政権にいただろうか。少なくとも、国会の党首討論で小沢一郎民主党代表に対して「かわいそうなくらい苦労している」と絶叫した福田が理解していたとは思えない。まさしく、かわいそうなのは福田なのだ。
大蔵省のエース官僚から転身し、首相の座に上り詰めた赳夫を父にもつ福田康夫が首相となって、いままた財務省の力に頼ろうとするのは自然だ。だが、福田が落日の財務省にのめり込めばのめり込むほど、一緒に足をすくわれる展開になった。
財務省との距離感は、福田政権の運命に直結している。それは大失敗に終わった日銀総裁問題にとどまらない。道路特定財源問題や公務員制度改革でも、財務省と二人三脚で動くのかどうか。政権の評価と行方は、そこで決まるとみていい。
小沢は日銀騒動の最中に「道路特定財源を08年度から一般財源化」「暫定税率の即時廃止で庶民減税」「官僚天下りの完全廃止」という3原則を掲げた。この「小沢3原則」の標的もまた、まさしく財務省だった。言い換えれば、小沢は福田に対して、財務省の代弁者になるのか否か、を迫っていたともいえる。
当の福田は「困っている」という台詞せりふを連発し、揺れていた。
背後には霞が関の計算 田波総裁案が民主党の不同意で認められず、日銀総裁問題が膠着状態に陥る中、福田は突然、動く。ガソリン税の暫定税率期限切れを目前にした3月27日、道路特定財源を09年度から一般財源化し、10年間で59兆円を投じる道路整備中期計画を5年間に短縮することを柱にした新提案を発表した。伊吹文明幹事長や谷垣禎一政調会長ら党役員にも知らせぬまま、抜き打ちの決断だった。
この提案は一般財源化に踏み込んだ点で大きな譲歩に見えるが、実は財務省の利害と見事に一致している。暫定税率を盛り込んだ歳入法案は政府案通り可決することが前提だから、08年度の予算執行に不都合はない。そもそも、自分たちが自由に使えるようになる一般財源化は、財務省の悲願でもあった。
民主党は激しく反発した。歳入法案を衆院で3分の2の賛成多数を得て再可決すれば、民主党は参院で首相問責決議案を出す構えだが、実は霞が関にとっては、そのほうが都合がいい事情もある。民主党が問責決議案を決議し、国会審議が止まれば、自分たちの首を絞めかねない重要法案である国家公務員制度改革基本法案の成立を阻止できるからだ。
キャリア制度の廃止や内閣人事庁の新設を盛り込んだこの法案は、採用から天下りまで省庁縦割りの体制を崩して、真に国家に尽くす官僚をつくる狙いがある。省庁の既得権益を守るために縦割り体制を死守したい霞が関は、人事の内閣一元化に激しく抵抗していた。
ガソリン税のどさくさの中で法案が参院に送付された後、国会審議がストップし、法案の扱いが先送りされてしまえば、霞が関には願ってもない展開である。福田に歳入法案の再可決を迫る勢力の背後では、そんな霞が関の計算がしっかりと働いているのである。
逆に言えば、福田にとって再可決するかどうかは、ガソリン税の暫定税率維持と引き換えに、公務員制度改革を続けるのか中断するのか、という選択でもあった。
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