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日経ビジネス 2010年8月3日(火)三橋 貴明
何十兆円も償還されて困るのは“借金”漬けの銀行!
日本は今こそ国債を「増発」すべきだ――。こう言ったら暴論に聞こえるだろうか。
しかし、よく考えてみてほしい。今、日本経済の最大の問題は「満足に成長できていない」ことであり、資金を潤沢に使いたくなるような産業が生まれ、そして育っていないことなのである。ここで「借金を返そう」などと号令をかけ、萎縮の道をたどるのは自殺行為に等しい。
日本が取るべき解は正反対のところにある。世界でも最低水準の長期金利を最大限活用して国債を増発し、成長分野に注ぎ込む。そして、日本が持つ潜在力に火を付ける。
暴論と思われても結構。ぜひ、この連載を読んでみてほしい。「日本の財政が危ない」というイメージにとらわれず、正しい「数値データ」に基づく議論をしようではないか。
なぜ、日本国債の金利はこれほどまでに低いのか?
2010年7月21日時点で、日本の新規発行10年物国債金利の利回りは、わずかに1.1%。もちろん、長期金利としては世界最低である。すなわち、日本政府は現時点において「世界最低の資金コスト」でお金を調達できる組織なのである。
日本政府の資金調達コストは世界最低
「財政破綻! 財政破綻!」
と騒がれている割に、日本政府の資金調達コストは世界最低。なぜだろうか。
ちまたをにぎわす「日本財政破綻論者」の皆様が、この問いに明確に答えたことはない。聞こえてくるのは、
「日本国債は、単に『国債バブル』になっているだけだ!」
「日本政府と銀行の間で、密約があるのだ! あるはずだ!」
など、率直に言ってトンデモ論としか表現しようがない「言い訳」ばかりなのである。あるいは、
「日本政府の財政再建への姿勢が、国債金利を低く抑えているのだ」
などと主張する人もいる。だが、新規国債発行残高が史上最高を更新している中、財政再建も何もあったものではない。
「民間の資金需要がない」ことが真の問題
この手の「言い訳」をする人々に共通する姿勢は、言っていることが非常に「定性的」であるという点だ。あるいは「イメージ」で語っていると言い換えても構わない。
日本国債の金利の低さは、イメージ的あるいは定性的に考えず、定量的に問題をとらえようとすれば、簡単に説明がつく。単純に、日本国内に過剰貯蓄があふれ、資金需要に対して資金供給が大き過ぎるためである。銀行などの国内金融機関にあふれたマネーの運用先が見当たらず、「国債が買われるしかない」状況に至っているからこそ、日本国債の金利は世界最低なのだ。
意外に理解していない人が多いが、銀行にとって預金残高とは「負債」であり、「資産」ではない。厳密に書くと、我々がお金を預けると、銀行のバランスシート(貸借対照表)上で、同額分の資産(現金)と負債(預金)が増える。
誰でも理解できると思うが、現金をそのまま保有していたとしても、金利は生まない。それに対し、我々の預金に対しては、銀行は金利を支払う必要があり、実際に支払っている。金利を支払わなければならない「預金」という形で調達したマネーを、現金資産として保有しているだけでは、銀行は逆ザヤで倒産してしまう。預金が「借金」である以上、銀行は何らかの手段でそのお金を運用しなければならないのである。
日本経済の真の問題とは、財務省の言う「国の借金!」とやらではない。1990年のバブル崩壊、及び97年の橋本政権による緊縮財政開始以降、国内のデフレが悪化し、民間の資金需要が全く増えなくなってしまったことこそ問題なのである。すなわち「民間の資金需要がない」ことこそが、日本経済の真の問題なのだ。
不況、不況と騒がれつつも、国内銀行の預金残高は増え続けている。というよりも、民間の家計や企業が支出をせず、預金残高を増やし続けているからこそ、不景気なのだ。
好景気とはGDPが成長すること、不景気とはGDPが成長しないことである。そして、GDPとは国内の各経済主体の「支出」の合計なのだ。民間企業や家計が支出を減らし、預金残高を増やしている以上、GDPの成長が抑制されるのは当然だ。
「強制借金」と呼んでも構わないような存在
橋本政権による緊縮財政のダメージが表面化した1998年以降、国内銀行の実質預金残高は着実(?)に増え続けている。先述の通り、預金とは我々にとっては資産であるが、銀行にとっては負債である。しかも、基本的に銀行側は預金を断ることができないため、いわば「強制借金」と呼んでも構わないような存在だ。
本来的に、銀行は家計や企業から「借りた」預金を他者に貸し付け、金利を稼ぐのを生業としている。銀行に集まったお金の運用先が充分に存在しているのであれば、実質預金残高が増えていこうが全く問題にならない。
とはいえ、現実の日本は「運用先が充分に存在している」どころの状況ではないことが、先のグラフを見れば誰にでも瞬時に理解できるだろう。バブル崩壊以降も辛うじて増え続けていた国内銀行の貸出金は、橋本政権期にピークを打ち、その後は明確に減少に転じた。
国内銀行の貸出金残高が減る。すなわち「民間の資金需要」が縮小を始めたのである。民間がお金を借りず、支出も増やさない。それどころか、返済してくる。結果、「支出の合計」であるGDPが成長しない。本格的なデフレ不況の到来だ。
「運用先がないマネー」は鬼門
デフレ不況下にも関わらず、いや、むしろデフレ不況下だからこそ、民間の経済主体は支出を切り詰め、預金残高を積み上げていった。結果的に、銀行が貸し切れない預金残高である「預金超過額」が次第に拡大していった。
預金超過額とは、
「民間に貸出先が見つからない、銀行の負債である実質預金残高」
という定義になる。
「預金超過額」という言葉がピンと来なければ、「過剰貯蓄」と言い換えても構わない。民間に貸出されない貯蓄、すなわち過剰になっている貯蓄を示すものこそが、預金超過額なのだ。
とにもかくにも、銀行にとって「運用先がないマネー」は鬼門である。何しろ、銀行にあるマネーは銀行自身のものではないのだ。我々一般の預金者から借りうけた「借金」なのである。逆ザヤを発生させたくなければ、銀行は何とかこの過剰貯蓄を運用する、すなわち「誰かに貸し付け」なければならないわけだ。さもないと、銀行から我々一般預金者への金利がストップする、あるいは銀行側が預金を断るような異常事態に陥りかねない。
無論、そんな異常事態に達する前に、銀行は何とか手元の過剰貯蓄の運用先を見つけようとする。結果、当然の話として国債が買われているわけだ。
138兆2000億円が国債で運用されている
日銀の「金融経済統計月報」によると、2010年5月時点で、国内銀行の実質預金残高から貸出金を差し引いた預金超過額は、159兆9000億円と、160兆円の大台目前になっている。この預金超過額のうち、およそ138兆2000億円が国債で運用されている。過剰貯蓄のうち、約86%が日本国債に回っている計算になる。(残りは米国債などの外国証券で運用されている)。
銀行は国債を買う、すなわち政府にお金を「貸し付ける」ことで、政府から金利収入を得て、我々一般預金者への金利支払いに充当しているわけだ。
こんな有り様で、日本政府が「財政再建!」の声に押され、何十兆円もの金額を償還した場合、いったいどうなるだろうか。たとえば、ある日突然、日本政府が銀行の保有する十兆円分の国債を償還(=借金を返済)したケースなどだ。銀行は果たして、喜ぶだろうか。
とんでもない。
政府の負債残高を問題視し、国内需要を縮小させている
過剰貯蓄の運用難に悩んでいる状況で、銀行が何十兆円ものお金を返済されたところで、嬉しいはずがない。何しろ、銀行が政府から返済してもらうお金は、元々は我々、一般預金者のものであり、銀行自身のものではないのだ。我々に金利を支払うために、銀行は再び何十兆円分のお金の運用先(=貸付先)を、死に物狂いで探さなければならなくなる。
デフレに悩む日本において、何十兆円もの金額の運用先など、そうはあるはずがない。国債を償還してもらった銀行は、結局のところ、再び国債を購入する羽目になるだろう。何しろ、ほかに運用先がないのである。
日本経済の真の問題は、「民間の資金需要がない」ことであり、政府の負債(いわゆる「国の借金!」)云々ではないのだ。
むしろ日本政府の負債残高を問題視し、政府の支出(例:公共投資など)を削り取ることで、日本国内の需要を縮小させているからこそ、民間の資金需要が高まらないのである。しかも、現在の日本国債の金利は世界最低だ。
世界最低の資金コストでお金を調達できるわけであるから、日本国民の生活水準を高めるための投資を行うには、「今」が絶好の機会なのである。さらに言えば、1996年のピーク(約42兆円)時から、橋本政権の緊縮財政開始以降、すでに公共投資は半分以下(2009年で20兆円)の水準にまで削減されてしまった。結果、我々日本国民が現在の生活水準を維持することすら、このままでは不可能になってしまうのだ。
正しい「数値データ」に基づいた議論が必要
日本政府は今こそ国債を増発すべきなのである。そして、子ども手当のように直接的にはGDP拡大に貢献しない「所得移転系」ではなく、公共投資などの「日本国民の生活水準を維持する」あるいは「日本の産業力を強化する」ための支出に振り向けるべきだ。
公共投資などの政府支出を呼び水に、日本経済の成長力が回復し、民間の投資意欲を高めていけば、「民間の資金需要がない」という日本経済の真の問題は解消されるだろう。
そもそも現在の日本の超低金利は、金融市場が政府に対し、
「もっと国債を発行し、支出を増やしてほしい」
と求めているサインなのである。
「財政出動による経済成長か、それとも緊縮財政による財政健全化か」
この議論は、既に日本国内では10年以上も続いている。決着をつけるには、「イメージ」に振り回されるのではなく、正しい「数値データ」に基づいた議論が必要なのだ。
本連載が、日本国内で正しい「財政出動」「経済成長」あるいは「財政健全化」に関する議論を呼び起こすきっかけになれば、筆者にとってこれ以上の喜びはない。
日経ビジネス「オバマと戦争」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20091201/211036/
「菅原出のドキュメント・レポート」
http://i-sugawara.jp/
2010年8月10日 菅原 出(すがわら・いずる)日経ビジネス
7月26日にウィキリークス(Wikileaks)が公開した7万5000点のレポートは、アフガニスタン駐留米軍の最前線の部隊が、日々のミッションの後につけている任務報告書で、部隊にとっての日誌のようなものである。ウィキリークスは米軍内部の漏洩者から9万1000点におよぶこうした秘密の報告書を受け取り、今回7万5000点を公開した。残りの1万5000点は、米軍の情報源となっているアフガン人の身元が判明してしまうなどの理由から、今回は公開が見送られた。
報告書は、日々の任務を終えた指揮官たちが、時間をかけずに記録ができるようにシンプルなフォーマットになっており、「日時」「出来事の種類」「カテゴリー」などの各欄に入力し、事件や事故で死傷者が出た際にはその数を入力すればいいようになっている。例えば「2004年3月5日」に起きた「敵による行動(Enemy Action)」で、「攻撃(Attack)」に分類される出来事が発生し、「民間人(Civilian)」の「死者(Killed in Action)」が「1」とそれぞれの欄に入力されている。備考の欄には、「NGOの契約者1名死亡、1名が誘拐」と簡潔に記されている。
無感情に淡々と記されているが、敵の攻撃を受けてNGO関係者が1名死亡し、1名が誘拐されるという悲惨な事件が発生していたことが分かる。
「出来事の種類」には「対反乱作戦」「非戦闘行為」「爆破物で損害」「不審な事件」などいくつかの種類に選択されており、「カテゴリー」は「暗殺」「攻撃」「逮捕」「対麻薬」「拘束者釈放」など、より詳しくその出来事の内容が分かるように分類されている。
データベースに収められている報告書は、こうした「出来事の種類」に応じて検索することもできれば、日時や場所から検索することもできる。いずれにしても2004年から2009年末までのレポートを含んだ膨大な量の資料であるため、一つ一つすべてのレポートを見るには相当の時間と労力、忍耐力が必要だ。
極めて貴重なインテリジェンス・レポート
私は、欧米メディアが大々的に報じた「パキスタンとタリバンの関係」について、原文ではどのように記述されているのかに興味があったので、その観点からレポートを見ていく。はじめはランダムに見ていくが、ほとんどのレポートは、攻撃や事件の概要が淡々と記されている典型的な軍のAfter Action Reportのようなもので、それはそれで興味深いのだが、一つ一つそうした事件報告書に目を通していては時間がいくらあっても足りない。
「会議」という「出来事の種類」に分類されている一群のレポートがあり、「会議」の中にも「開発」に関する会議について記されているものと、「セキュリティ」について記されているものがあることが分かる。「会議―セキュリティ」に分類されているのは、各県の県知事や警察署長や西側の復興支援チームなどに現地の治安状況についてインタビューをした際の議事録のような内容が多く、背景が詳細に記されている報告書が多い。
この「会議―セキュリティ」のファイルに的を絞り、その項目に含まれる約750の報告書一つ一つに目を通してみた。以下、その中からいくつかの報告書を引用しよう。
▼2006年12月4日「内務省インテリジェンス部のモハマド・ナワブとのミーティング」
「この会議の参加者は一様にアフガン政府が機能しないことに対する懸念を表明した。あらゆる政府のレベルで、すべてが政治で決められるようになってしまっており、あらゆる政府の人間―、知事であろうと、警察署長であろうと、大臣だろうと大統領だろうと、全員が外国の利益のために動いている。外国とはアメリカ、ロシア、英国、パキスタンとタリバンを含む。これが腐敗の根幹であり、国際社会がアフガン内政に干渉することで問題を悪化させている(中略)アメリカのPaktyaにおけるインテリジェンス機関は情報源と接する際に全く慎重さが足りない。アメリカは知らずにダブル・エージェントに協力している。イスラム宗教会議のメンバーであっても信頼してはいけない」
面白いことに、翌日の報告にはこの情報源モハマド・ナワブに関して次のようなレポートも入っている。
「ハジ・モハマドはアフガン国家警察の巡査部長であるが、彼によればモハマド・ナワブはイランの諜報機関(MOIS)の訓練を受けた人物だという。またSayed Abdul Wahidはロシアで諜報訓練を受けた経験がある。ハジによれば、この二人とも、いまだにこの両国からの支援を受けている。モハマド・ナワブはアフガン情報機関のPaktyaにおけるエージェントとして動いているが、彼は頭がよく、この地域の腐敗や反乱勢力に関する知識も豊富だ。彼はパシュトゥーン人で、パシュトゥーン語に加え、ダリ語、ロシア語とウルドゥー語も話す。彼はイランのMOISの訓練を受けたがそのことを語ろうとしない。しかし、正規の諜報員としての訓練を受けたことを時折垣間見せる」
▼2007年7月2日「A.K.とのセキュリティ・ミーティング」
「Tagab(地名)のムラッド知事は、この地域のタリバンのメンバーに武器を供給している。A.K.によれば、ムラッド知事はTagabの安定のためにタリバンに武器を渡すことを考えているようだ。(中略)ムラッド知事は大きな建設会社を保有しており、Tagabでもいくつもの建設契約を受注している。彼の会社は自身の武装警備会社を持っているが、そこで使われている武器はすべて政府の所有物である。彼のライバル会社は頻繁に強盗に遭ったり殺害されるため、Tagabでの仕事を引き受けなくなっている。タリバン指導部とムラッド知事は相互に利益を分け合っている」
▼2007年6月25日「Parwan治安評議会とのセキュリティ・ミーティング」
「宗教指導者Surgulは、Parwanでは有力者で、Herakat Islamiという政党のメンバーでもある。Herakat IslamiはEqtadaar-e-Milli党と提携しており、共にハザラ族の利益のためにWahdat党と対抗しようという政治的目的を持っている。この二つの政党は共にイランとのコネクションが強いことで知られている。インテリジェンス報告によれば、宗教指導者SurgulはKohi Safi地区のタリバンの指揮官をしていた人物で、同地区全域で頻繁に食事や隠れ家をタリバンの戦闘員に提供していることで知られている」
イランと関係の深いハザラ系の宗教指導者が、タリバンのためにも動いているというのは非常に興味深い。さすがにアフガンの利害関係は複雑に絡み合っている。
▼2007年2月7日「国境警備に関するパキスタン治安部隊とのミーティング」
「パキスタンの治安部隊(Frontier Corp.)を指揮するのはビラル大佐だ。彼がもう一人の少将と共にアフガン・パキスタン間の17キロの国境部分の警備に責任を持つ。ビラル大佐は両国境間の警備を強化するために、アフガニスタン、パキスタン両国のコミュニケーションをもっと行うように提案した。同大佐はアフガニスタン側からロケット砲などが撃ち込まれてくることに対する不満を述べ、こうした事態を回避するためにも相互間の通信が重要だと主張。大佐は本部の衛星電話の番号を提示し、こちらも大隊本部の衛星電話の番号を与えた。
ビラル大佐は3キロの国境線の戒厳措置をとり、頻繁にパトロールを行うことにより、国境警備は著しく強化されたと述べた(コメント:これはあり得ない。最近、夜間でのパキスタンからアフガニスタンへの進入が報告されたばかりだ。)
ビラル大佐は最近特に国境警備に力を入れており、タリバン、部族指導者とパキスタン軍との合意により国境の治安は著しく改善されたと主張。パキスタン側をFrontier Corpがしっかりとコントロールしているため、次の春の「タリバンの大攻勢」はないはずだと述べた。
(コメント:この発言からだけでも、この大佐がいかに現実に起こっていることとピントがずれているかが明白だ。タリバンとの合意の後、パキスタン側の治安は改善したかもしれないが、アフガン側、特にホースト州では、この治安状況は300%悪化した)。
ビラル大佐は国境警備を強化しようと心から思っているのかもしれないが、彼の兵士たちがタリバンの国境超えを支援しているという現実からあまりにかけ離れている。このタリバンの国境通過にはパキスタン軍と情報機関ISIが絡んでいるのだ。」
この報告書を執筆している米軍指揮官が、パキスタン軍の大佐をまったく信用していないことがよくわかる。
このようなインテリジェンス報告が延々と続いている。まとまった分析ではなく、個々の案件や個別にヒアリングした内容の報告であり、現場レベルでの情報収集の結果である。こうした報告書を読んで行くと、米軍がアフガニスタンで日々どのような活動をしているのかが垣間見えてくる。また、それぞれの地域でどのような問題があり、それを現地の米軍がどのように分析し、報告しているか。そうした現場の感覚がある程度ではあるが、つかむことができる。
パキスタンだけでなくロシアやイランのスパイまでアフガン治安機関に浸透しており、複雑な諜報戦が展開されている様子が、こうしたわずかな報告書からも読み取ることができて非常に興味深い。そういう意味では、外部者にはめったにお目にかかることのできない極めて貴重な資料だと言える。
逮捕された陸軍情報分析官はウィキリークスに操作されたのか?
それでは、そもそもこの秘密資料はいったいどのようにしてウィキリークスの手に渡ったのだろうか?
現在までに明らかになっているのは、昨年11月に、イラクの米軍基地内の高度に保全体制の施された秘密施設で働く「誰か」が機密資料のコピーを始めたということである。今年の2月18日に、ウィキリークスは駐レイキャビク米大使館からワシントンに送られた機密電報を公開し、4月5日にはバグダッドで米軍がロイター通信のカメラマンを誤射する映像を公開した。この4月のビデオは世界的な大スクープとなったのでご記憶の読者も多いだろう。
この一連の機密資料の公開を受けて、「犯人探し」をしていた米国防総省が、容疑者を見つけたのは5月末のことだという。
5月21日、カリフォルニアに住むコンピューターハッカーの通称「エイドリアン・ラモ」が、オンライン名で「Bradass87」という人物から接触を受けた。Bradass87は、
「こんにちは。僕はバグダッド東部に派遣されている陸軍のインテリジェンス分析官。もし、一日に14時間、一週間に7日間、8カ月間にわたって、前例のない秘密のネットワークにアクセスできるとしたら、君だったらどうする?」
その5日後にラモは再び接触を受けたのだが、その中でBradass87は、「2つの秘密資料のネットワーク、Secret Internet Protocol Router Network (SIPRNET)とJoint WorldWide Intelligence Communications System にアクセスするのが自分の仕事だ」と紹介したという。SIPRNETとは米政府の外交および軍事インテリジェンスの「秘密(Secret)」と分類されている文書を収めたネットワークであり、Joint WorldWide Intelligence Communications Systemは、「top secret」までの分類の機密文書を異なる保全システムを使って運搬するためのネットワークである。
Bradass87は、「私がよく知っている人」がこれらのデータすべてをダウンロードし、圧縮し、暗号化して、ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサーンジだと分かる人物に転送していることを示唆したという。
こうした告白を受けたラモは5月23日に米軍に連絡をとり、25日には国防総省犯罪捜査部のオフィサーにメールのコピーを渡し、26日にはバグダッド郊外の前方作戦基地Hammerに派遣されていた22歳のインテリジェンス分析官ブラッドリー・マニングが逮捕された。
ずいぶんと奇妙な話だが、米軍当局がブラッドリー・マニングを逮捕して取り調べているのは事実である。すでにイラクのビデオについてはマニングが漏洩したことがほぼ確実なようであり、今回のアフガン・インテリジェンス9万点についても、彼が漏洩したのではないかという線で捜査が進められている模様だ。
しかも最近の米紙の報道によると、彼個人だけではなく、その友人たち、とりわけマサチューセッツ・ケンブリッジを拠点とするボストン大学、MITの学生たちのコネクションも捜査の対象になっているという。
またカリフォルニアのハッカー・ラモは、「マニングは、当局に発見されることなく軍のコンピューターから機密データをダウンロードしたり暗号化するために必要な技術的支援をウィキリークスから受けていた」可能性について発言しており、「マニングはウィキリークスに操作されたのだ」とまで述べている。
真相は藪の中だが、米国防総省が懸念しているのは、まだ公開されていない別の秘密文書があるのではないか、という点である。マニングの発言通り「すべてのデータが」コピーされているのだとすれば、まだまだとてつもない機密資料がウィキリークスの手にわたっている可能性も否定できない。
実際ウィキリークスは2月、4月と米政府の秘密資料を小出しにしており、しかも今回は公開に先立って資料を米『ニューヨーク・タイムズ』、英『ガーディアン』、独『シュピーゲル』に事前に渡し、同時公開することで世界中にインパクトを与えるという新しい「マーケティング」の手法も使っている。
次回はさらに手の込んだ手法で、さらにショッキングな暴露を狙ってくる可能性は否定できないだろう。
Wikileaks(ウィキリークス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/Wikileaks
Media/情報漏洩用Wiki「ウィキリークス」近日オープン予定
http://wikileaks.org/wiki/Media/%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%BC%8F%E6%B4%A9%E7%94%A8Wiki%E3%80%8C%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%80%8D%E8%BF%91%E6%97%A5%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E4%BA%88%E5%AE%9A
8月21日22時45分配信 産経新聞
【ロンドン=木村正人】アフガニスタンで活動する米軍の機密情報を暴露した民間告発ウェブサイト「ウィキリークス」創設者でオーストラリア人のジュリアン・アサーンジ氏(39)が20日、スウェーデン検察当局によってレイプなどの罪で告発された。米軍からも追われている同氏は簡易ブログ、ツイッターを通じて「告発活動を妨害するための卑劣な策略だ」と反論している。
スウェーデンのタブロイド紙(電子版)によれば、同氏は講演などのためストックホルムを訪れた14~15日、若い女性に暴行を働き、別の女性にもいたずらしようとしていたとして告発された。検察当局は各メディアに対し起訴された人物名には触れなかったが、報道内容を大筋で認めた。
同氏は先月、米紙ニューヨーク・タイムズなどと協力し、アフガン駐留米軍の機密文書9万点を公表。今月12日、インターネットを通じてロンドンでの討論会に参加し、さらに1万5千点を公表すると公言した。
米国防総省や人権団体から「アフガンの協力者らの命が危険にさらされる」との警告を受けたが、「文書公表後、誰も亡くなっていない」など語っていた。同氏は現在アイスランドなどに活動拠点を移している。
*内部告発サイト「ウィキリークス」創始者、アサーンジ氏!
【ワシントン=犬塚陽介】内部告発サイト「ウィキリークス」によるアフガニスタン軍事作戦の機密文書流出で、サイトの創始者で編集長を務めるジュリアン・アサーンジ氏(39)に注目が集まっている。
「調査報道ジャーナリスト」を自称し、10代後半から「天才」の名をほしいままにしたオーストラリア人の元ハッカー。「情報公開が健全な民主主義を築く」と機密の暴露を繰り返す手法は、世界中で賛否両論を呼んでいる。
米軍グアンタナモ基地のテロ容疑者収容施設の運営マニュアル、気候変動のデータ改竄(かいざん)疑惑が浮上した英国の大学や米副大統領候補だったサラ・ペイリン氏の電子メール…。
これまでにウィキリークスが暴露してきた情報は、いずれもハッキング(不正アクセス)が強く疑われ、議論の的となってきた。
米誌ニューヨーカーによると、アサーンジ氏は10代前半、自宅の向かいにあった電器店でコンピューターに魅了され、少しずつ知識を深めていったという。
「学校教育は権力に対する有害な配慮を植え付け、学ぶ意欲を鈍らせる」との母親の方針でほとんど学校に通わず、ほぼ独学でプログラミングの知識を身につけた。10代後半で「天才ハッカー」と称され、米国防総省やロス・アラモス米国立研究所など、政府機関や企業のネットの世界を自由に飛び回ったとされる。
だが、20代でカナダ企業のネットワークに不正侵入して足がつき、罰金刑に処された。主任検察官は「全能の神のように(ネット上を)歩き回り、好きなことをした」と犯行の様子を法廷で説明した。
“現実世界”でも奔放なスタイルは変わらない。自宅を持たず、知人の家やホテルなどを渡り歩いているとされる。荷物はリュックサック2個で、1つに着替え、もう1つには、卓上用パソコンを入れて持ち歩いているという。
アサーンジ氏は、米国を念頭に「やつらをめちゃくちゃにしてやるのが大好きなんだ」と語るなど、政治的な偏向ぶりが問題視されることも多くなっている。
*アフガン戦争「機密文書」暴露の衝撃度!
ニューズウィーク日本版7月27日(火)
9万点を超えるアフガン戦争の機密報告書は「すでに知られている事実」を裏付けたに過ぎないが──
ジョン・バリー(ワシントン支局)
故ロナルド・レーガン元米大統領は、馬糞の山を見つめる少年をネタにした冗談を言うのが好きだった。「糞の中のどこかにポニーが埋まっているに違いない」と、希望的観測で語ったものだ。
民間ウェブサイト「ウィキリークス」によって「山積み」されたアフガニスタンでの戦争に関する約9万2000に及ぶ機密文書と向き合う研究者たちは、同じように考えているかもしれない。米軍のアフガニスタンでの行動を6年間に渡って記録したこの文書は、本当に驚くべき事実を暴露しているのだろうか?
一見したところ、あまりなさそうだ。04年1月から09年12月まで、アフガニスタンからの現場報告を寄せ集めたこの文書は、すでに世間が承知している状況を、悲痛なディテールをもって改めて知らしめている。つまり、アフガニスタンでの戦争は長く厳しい戦いであること、タリバンが勝利する方向に進んでいること、そして駐留米軍と多国籍軍が資金不足に悩んでおり、自国で感謝されていないと感じていること──。
これらの文書で、驚愕するような新事実が浮き彫りになることはないだろう。最も物議をかもしている問題のひとつに、多国籍軍の攻撃による一般市民の犠牲者数がある。文書には、多国籍軍の作戦によって死傷した144件のケースの現地報告が含まれている。合計195人が死亡し、174人が負傷した。6年間に及ぶ報告書であることを考えると、少なく思える。
■「高性能ミサイル保有」の真実味
では、これらの数字は何を意味しているか。米軍の指揮官らは個別のケースについて異議を唱えてきたことはあるが、米軍とNATO軍がかなりの数の民間人を犠牲にしてきたことを否定したことはない。国連によると、08年だけで約2100人の市民が戦闘の犠牲になった。そのうち約700人は「政府側」の部隊に殺害されたという。09年には約2300人の市民が殺害され、そのうちの550人は「政府側」の部隊の手で殺された可能性がある。今回リークされた報告書と国連のデータを照らし合わせるまで、ウィキリークスの文書に含まれる144件のケースがすでに認識されている死傷者数に含まれているのか、それとも多国籍軍によって内密にされているケースかを判断するのは不可能だ。
リーク文書で最も衝撃的と思われる主張は、タリバンが熱線追尾式の対空ミサイルを入手し、NATOがそれを隠していたことだ。タリバンがこのミサイルを獲得するという指摘は、05年秋の報告書に初めて登場する。当時、アフガニスタン南部のザブル州とカンダハール州の反政府勢力の司令官らが同ミサイルの一群を手に入れたと報告されたのだ。70年代、アメリカがイスラム聖戦士に提供したスティンガーミサイルがソ連軍のヘリコプターに猛威を振るったことは、軍事の世界では伝説になっている。
だが報告書によると、多国籍軍の航空機が墜落したのは、07年5月にヘルマンド州で肩撃ち式ミサイルによってCH-47「チニーク」ヘリが撃墜された1件だけだったとみられる。撃墜されたチニークが低空でゆっくりと飛行していたことから、タリバンが使用する一般的な携行式ロケット弾の犠牲になった可能性も排除できない。文書によると、パイロットがミサイルとのいくつかのニアミスが報告されているが、さらなる被害は報告されていない。
つまり、証拠は乏しいといえる。仮にタリバンが熱線追尾式ミサイルを所有しているとすれば、タリバンの戦闘員などに甚大な被害を与えてきたプレデターやラプターといった無人戦闘機がなぜ撃墜されなかったか、説明がつかない(先週末には、24時間の間にパキスタン北西部で無人戦闘機による3度の攻撃が行われ、24人以上のタリバン戦闘員が死亡している)。
■看過できないISIとタリバンの関係
文書に衝撃的な報告がないとはいえ、アメリカで政治問題にならないわけではない。上院外交委員会の委員長であるジョン・ケリー上院議員はすぐさま、自身が所属する民主党がどう反応するかを把握するまで様子見をするという古典的な声明を発表した。ケリーは、この文書が「パキスタンとアフガニスタンに対するアメリカの政策の現実について深刻な疑問を提示している」とした上で、「(アメリカが)危険性を強調し、もっと早急に政策を軌道修正させるだろう」と語った。
ここでケリーが何を言わんとしているかは、はっきりしない。彼はパキスタンとアフガニスタンを何度も訪問し、数多くの要人と話をしてきた。では、これらの文書が明らかにする「現実」とは一体何を指し、ケリーはどんな「軌道修正」を考えているのか。ケリーの広報担当室は、すべて質問を上院外交委員会にするよう言い、広報担当者はこの件についてケリーには話すことが何もないと答えた。
この文書によって、ワシントンで改めて最も熱く議論される問題は、決して目新しいものではない──タリバンや関連組織と、パキスタンの関係はどんなものか。特に、パキスタンの情報機関である軍統合情報局(ISI)が過激派に指令を出したり支援したりしているのか、という点が注目されるだろう。
ウィキリークスの文書によると、過激派へのISIの関与を指摘する報告が毎週のように寄せられていた。この手の報告の多くはゴシップに毛が生えた程度のものに過ぎないが、現実と合致するものもあり、多数の情報源と連携した莫大な量のISI関与の報告は、無視することはできない。
報告は昨年12月が最後。バラク・オバマ大統領がアフガニスタンの新戦略を発表した時期だ。オバマの方針が上手くいくかどうかはまだ分からないが、今のところ明るいとは言えない。歴史家たちがアフガニスタンで「どこを間違ったのか」について書く時が来れば、この山のような書類は一次的な情報源になるだろう。
*内部告発サイト「ウィキリークス」とは?創設者が語る「使命」!
7月26日 AFP】アフガニスタンにおける軍事作戦に関する米国防総省の機密文書約9万2000点をウェブ上で公表した内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」の創設者ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)氏(39)は、情報の開示に対する反発の声が高まっているのは同サイトが創設の使命を順調に果たしつつある証拠だとの認識を示した。
「優れたジャーナリズムは、本質的に物議を醸すものだ」と、アサンジ氏は英紙ガーディアン(Guardian)に語った。
「権力者の横暴と戦うことこそ、優れたジャーナリズムの役目。そして権力というものは、挑戦されると決まって反発するものだ。つまり、物議を醸している以上、情報公開は良いことなのだ」
■元ハッカーが設立した「大衆のための情報機関」
オーストラリア人のアサンジ氏は、元ハッカーでコンピューター・プログラマー。2006年、「大衆のための初の情報機関」を掲げ、ウィキリークスを立ち上げた。世界中の匿名の内部告発者から情報提供を受けており、サイト運営用のサーバーは、アサンジ氏によると情報保護法制の整ったスウェーデンやベルギーなどに置かれている。
米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、編集に携わるフルタイムのボランティアは10人弱で、ほかに暗号化、プログラミング、ニュース記事編集などに精通した800~1000人が協力体制にあるという。
■国、企業、研究者などの「内部告発」を次々公表
ウィキリークスの名は2009年、多国籍海運企業トラフィギュラ(Trafigura)がコートジボワールで有毒廃棄物を不法投棄したことを示す内部資料を公表したことで、国際的に一躍有名になった。
最大のスクープは、今年4月に公表した、イラクのバグダッド(Baghdad)で07年7月に米軍の攻撃ヘリコプターが記者や市民を銃撃する生々しい空撮映像だ。この映像を漏えいしたとして、米陸軍上等兵が今月起訴されている。
このほか、キューバ・グアンタナモ湾(Guantanamo Bay)の収容施設の運営手順や、地球温暖化問題で世界有数の研究機関である英イースト・アングリア大学(East Anglia University)の気候研究ユニット(Climatic Research Unit、CRU)の研究者たちのデータの改ざんを臭わせる電子メールなどを公表してきた。
オーストラリア当局は5月、アサンジ氏のパスポートを一時押収した。6月には同氏の弁護団が同氏に対し渡米は避けるよう助言したという。
米政府は、ウィキリークスの情報公開は国家の安全保障を脅かし人命を危険にさらす上、偏った見方をしている可能性もあると繰り返し批判している。(c)AFP
http://jp.sanyo.com/gopan/
8月20日17時32分配信 産経新聞
三洋電機は20日、米粒からパンを作ることができるホームベーカリー(家庭用パン焼き器)「GOPAN(ゴパン)」の発売を当初予定していた10月8日から11月11日に延期すると発表した。量販店から取り扱いの要望が多く、発売日までに当初予定の約2倍の商品を確保する必要があると判断した。
同社は「あまりにも反響が大きい」(広報部)と想像以上の前評判に驚いている。
米粉でパンを作る機能を備えたベーカリーはこれまでもあったが、米粒からの製パン機能は世界で初めて。家庭で使う米粒を材料にそのまま使える“手軽さ”が関心を呼んだようだ。おりからの小麦価格の高騰も反響の大きさにつながったようだ。
市場想定価格は5万円前後と高額だが、「小麦アレルギーの人に加え、コメ農家や地方自治体などから問い合わせが相次いでいる」(同)という。
このため、新米の時期の10月上旬に予定していた発売を約1カ月延期。十分な商品を確保し、売り切れなどの混乱を招かないようにする。
ゴパンは米粒と水を投入すると、本体内でモーターを回転させてペースト状にし、砂糖やドライイーストなどを加えてパンを作る。米約1合半(220グラム)で1斤のパンが約4時間でできる。今年度のホームベーカリーの国内市場は前年度比3割増の約60万台に拡大すると見込まれている。
*自宅でコメ粒→パンへ 三洋電機が世界初のベーカリー器を発売!
2010.7.13 13:09 Sankei Biz
1斤に4時間…「日本政府と連携、アジアも20万台投入」
政府が食料自給率を上げるため、コメの消費拡大に取り組むなか、米粒からパンを作ることができるホームベーカリー(家庭用パン焼き器)が登場する。米(こめ)粉(こ)でパンを作る機能はこれまでもあったが、米粒からの製パン機能は世界初。8年連続で伸び続けるホームベーカリー市場だが、メーカー各社の間では“コメ”が開発のキーワードとなりつつある。
三洋電機が10月8日に発売するホームベーカリーの新製品「GOPAN(ゴパン)」は、米粒と水を投入すると、本体内でモーターを回転させてペースト状にし、砂糖やドライイーストなどを加えてパンを作る仕組み。米約1合半(220グラム)で1斤のパンが約4時間でできる。市場想定価格は5万円前後。
13日会見した佐野精一郎社長は「新製品の販売では政府との連携を強化し、自給率向上に寄与したい。来年度は中国などアジアでも投入し、20万台規模の事業に育てる」と述べた。
ホームベーカリーで国内シェアトップのパナソニックは昨年から米粉100%のパンを焼ける機能を搭載した機種を展開。東芝や象印マホービンなども相次ぎ米粉パンコースを組み込んだ新機種を発売している。
ただ、米粉は生産コストが高く、流通網の少なさからあまり販売されていないなどの問題があり、「主食の米なら流通ルートが確立されている」と佐野社長は強調。新製品では、わざわざ米粉を買ってくる必要がなく、「家にあるコメを利用できる」と手軽さをアピールする。
米の消費量は昭和30年代をピークに減少傾向が続く。農水省は食料自給率の向上を目的に、地産地消などを呼びかける「フードアクションニッポン」を推進中。昨年4月、米粉や飼料としての米利用を支援する法律が成立した。
米は古くから和菓子などの材料とされてきたが、最近では世界的な小麦粉価格の高騰を背景に、米粉のパスタやケーキを提供する飲食店も増えている。また、小麦粉に比べ低カロリーで、もちもちした食感が日本人好みなどの理由から人気が高まりつつあり、三洋では新製品を通じて「日本の伝統食である米の新しい食べ方を提案したい」としている。
ホームベーカリーの国内市場は平成14年度から8年連続で増加し、昨年度は約45万台を記録。今年度は前年度比3割増の約60万台が予測されている。
2010年07月27日 日経トレンディ
三洋電機が2010年10月8日の“米の日”に合わせ、米などの材料をそのまま本体にいれるだけでパンが焼き上がるホームベーカリー「GOPAN」を発売する。
2003年に業界で初めて米粉ベーカリーを発売した同社。だが米粉は生産コストが高く、小麦よりも割高なのが現状。簡単に手に入りにくいという難点もあった。それらを解決するためにも、米そのものを使ってパンを作ることは、何としても実現させたい課題だったという。
米は軟らかくしてからペースト状に
「ホームベーカリーや炊飯器を製造する三洋電機コンシューマエレクトロニクス(鳥取市)の家電事業部には米作りをしている農家と兼業の従業員もおり、米に対する思いはひとしお」(同社)。GOPANは食料自給率アップにつながる米の消費量拡大にも貢献できるはずだという。
当初は米を粉にしてからこねと焼き上げを行う方法を考えていた。しかし、米は硬度が高いため、75ミクロンという細かな米粉状に粉砕するのは、家庭用機器では実現不可能ということが判明。そこで炊飯時のように米を水に漬けて軟らかくしてからミルにかけてペースト状にする「米ペースト製法」を開発した。
この発想をもとに実際に製品化するには、「ミル用モーターとこね用モーターという回転数の異なるモーターを1つの回転軸で機能させることがポイントだった」(同社)という。米をペースト状にする工程と、次のこね・発酵などの工程をひとつながりのものとして行えなければ、ボタン1つで焼き上げまでOKとはならないからだ。
また、本体の大きさを従来のベーカリー程度にするためにも、モーター部分の開発が重要なカギを握ることに。今回のモーター部分の開発には、クリーナーやミキサーなどを手掛ける加西製造チームが加わり、4年以上の歳月を経てGOPANの商品化となった。
作り方は従来のホームベーカリーと同じ
GOPANの使い方は、炊飯時と同じように研いだ米、水、塩、ショートニングをパンケースに入れ、本体上部の自動投入ケースにグルテンとドライイーストをセット。あとは、スタートボタンを押せばOKで、これまでのホームベーカリーとほぼ同じ。米パン1斤の焼き上げまでにかかる時間は3時間58分と、小麦パンよりも30分長い程度だ。
試食をしてみたが、もっちりとした食感で米の甘さや香りが感じられた。小麦パンに比べ水分含有率が高いという説明にも納得できる。子どもはもちろんのこと、パサついたものは飲み込みづらい高齢者にも喜ばれるのではないだろうか。
GOPANはライスブレッドクッカーという名前をつけているが、従来のホームベーカリー同様、小麦のパンも焼けるほか、玄米、黒米、雑穀米などのお米にも対応する22種類のコースを備えている。自動投入ケースがついているので、ナッツなどを入れたパンも簡単に焼くことができる。うどんやパスタの生地やジャム、もちなどの調理コースも便利そうだ。
また、小麦アレルギーでグルテンフリーの米パンを望んでいる人のために、「小麦ゼロ」のコースもある。これまでの同社のホームベーカリーでは、米粉を使った「小麦ゼロ」コースのパンを焼くには、グルテンの代わりにグァーガム(=グァー豆の胚乳部から得られる増粘剤)を使用した専用のミックス粉が必要だった。新商品の開発にあたって、グァーガムでなく、上新粉を使用するレシピを採用したことで、米、上新粉、ドライイーストなど、すべて身近に手に入るものでのパン作りが可能になっている。
家の米でパンを作るには「グルテン」が必要!?
だが、ここで1つ、重要な注意点がある。
“家にある米でいつでも手軽にパンが作れる”がうたい文句のGOPANだが、1斤の米パンを作るには、米約1.5合のほかに砂糖や塩、ドライイースト、ショートニング、そして50gの「グルテン」が必要なのだ。グルテンとは、小麦由来のたんぱく質成分でかまぼこなどの練り製品や麺類、麩などに使われているほか、パンを膨らませるのにも重要な役割を担っている。
以前は小麦からグルテンを大量に取り出すのは大変だったが、今では工場生産が可能になっている。とはいえ、現状では一般的なスーパーマーケットにはほとんど置いておらず、通販サイトなどで購入することになる。つまり、家の米でいつでも手軽に…というわけにはいかないということだ。開発のきっかけが、「コストが高く、手に入りにくい米粉でなく、いつでも手に入る“わが家の米”でパンづくりを」ということだったことを考えると、ちょっと残念だ。
この点については、「グルテンが手に入りにくいことは認識している。そのため、味わいは異なるものになるが、グルテンを入れずに米と強力粉とで作る『お米小麦食パン』というコースも用意した」(三洋電機コンシューマエレクトロニクス・家電事業部副統括部長の滝口隆久氏)という。
さらに、「家にある米で手軽にパンを焼いてもらうことを提案している以上、菓子メーカーとの協業などによって、スーパーなどにグルテンを置いてもらう仕組み作りをしていきたい。当面は、弊社のサイトを通じてグルテンが買えるようにしていく」(三洋電機マーケティング本部の梅田恵吾氏)とのこと。
まずはハードを広め、ユーザーの増加とともにグルテンがドライイーストと同じようにパン作りの必需品となるようなうねりを作っていこうということだろうか。せっかく米を入れるだけでパンができるという“夢のようなベーカリー”が誕生したのだから、必要な食材が手に入りやすくなってほしいものだ。
http://ditt.jp/
■発起人
陰山 英男 立命館大学教育開発推進機構教授
川原 正人 NPO 法人CANVAS 理事長、元日本放送協会会長
小宮山 宏 株式会社三菱総合研究所理事長 元東京大学総長
孫 正義 ソフトバンク株式会社代表取締役社長
中村 伊知哉 慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授
樋口 泰行 マイクロソフト株式会社代表執行役 社長
藤原 和博 東京学芸大学客員教授
DIAMOND online【第102回】 2010年8月20日 岸博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
旧聞に属する話で恐縮ですが、先月、「デジタル教科書教材協議会」という組織が発足しました。すべての小中学生がデジタル教科書(ITを活用した電子教材)を持つ環境の実現を目指しているようですが、どうも違和感を覚えざるを得ません。そこで、今週はこの問題について考えてみたいと思います。
米国企業主導でいいのか?
もちろん、この協議会が掲げる目標を否定する気はありません。デジタル教科書ならば、紙の教科書よりも内容が豊富かつリアルになり、学習意欲の向上にもつながるでしょう。
しかし、今のままではいくつかの問題点があると言わざるを得ません。最大の問題は、日本のデジタル教科書のことなのに、米国のIT企業ばかりが前面に出て来ていることです。
この協議会には、会員として日本の主立った出版社やIT企業、ネット企業なども参加しています。その意味で、形式的には内外無差別、日本企業についてはオールジャパン的な体制になっています。しかし、協議会の発起人リストを見ると、学識経験者以外の民間代表はソフトバンクとマイクロソフトです。
しかも、ソフトバンクの孫社長は設立記念シンポジウムで挨拶していますが、自分の会社が扱うアップルのiPadを、国の予算を使って日本全国の小中学校に配ろうと意気込んでいるように見受けられます。実際、iPadを使ったデジタル教科書のデモも行なっています。
つまり、この協議会でデジタル教科書普及のイニシアティブを取りそうなのは、アップルとマイクロソフトという米国IT企業なのです。穿った見方をすれば、日本のデジタル教科書の端末やプラットフォーム(流通や付随するサービスなど)が米国IT企業に支配されかねないのではないでしょうか。それが本当に日本の教育にプラスの効果をもたらすのでしょうか。
日本の教科書は、出版社によって制作され、文科省の検定に合格したものが教科書供給特約所という独自の流通ルートを経由して、無償で子どもたちに配布されています。つまり、検定制度による国の関与の下で、制作から流通まで一貫して日本企業が担っているのです。電力や水道などの公共サービスが、国の規制の下で日本企業によって供給されているのと同じです。
それは、教育が人材育成という国の根幹、国益に関わる部分を担っているからに他なりません。教育に不可欠な教科書は公共財的な性格を持つのです。その教科書がデジタル化されるからと言って、その流通やプラットフォームを米国企業に任せても良いかのような風潮はおかしいと言わざるを得ません。
残念ながら、どうもネット上ではこのように国益が軽視される傾向にあるように思います。実際、今や日本や欧州など世界の主要国では、ネット上の情報流通のベースとなるサービスは、米国IT企業によって席巻されてしまっています。その結果として起きていることは、それらの国での文化とジャーナリズムという社会のインフラの衰退なのです。同じことが教育の世界で起きたら、それは大変なことになりかねません。
例えば、ネット上で米国企業のプラットフォームを通じて教科書や補助的な教材が流通するようになった場合、有害なコンテンツが混入しないように国はしっかりと担保できるのでしょうか。高いコストを払わされることにならないでしょうか(昨年までの米国の電子書籍市場では、出版社はアマゾンに価格の7割を払わされていました)。アップルがiTune Store上のコンテンツについて審査を行なっていますが、米国企業が教科書という日本の国益に関わるものの中身に関与することにならないのでしょうか。疑問は尽きません。
手段を目的化した議論の横行
デジタル教科書については、その他にも気になる点があります。それは、ITやネットが絡む議論でよく起きることではあるのですが、“手段を目的化した議論”が横行していることです。
デジタル教科書は“手段”に過ぎません。“目的”は教育の質の向上のはずです。例えば私は、今の教育の問題は、知識の詰め込み/記憶ばかりになっていて、子どもが自分の意見/考えを創り出す力、それを他人に説明したりディスカッションする力を醸成できていないことにあると思います。その改善という目的のために、手段であるデジタル教科書をどう活用するかがないとおかしいはずです。
それでは、デジタル教科書でそれらの問題を本当に解決できるのでしょうか。少なくともこれまでネットは人間の知識量は増やしましたが、人間の行動様式や知識レベルを高めてはいないと思います。むしろ、ゆるいコミュニケーションやいい加減な言論を促進してきた面もあります。
これは、デジタルやネットという技術が悪いのではなく、それらの技術を使って提供されるサービスに問題があるからなのですが、そうした面についての反省や改善なしに、「デジタル教科書が日本の教育を改革する、人材の育成に貢献する」とばかり言われても、リアリティはまったく感じられませんし、“手段の目的化”が甚だしいと言わざるを得ません。
国益を重視したデジタル教科書の議論を
いずれにしても、デジタル教科書を巡る最大の問題は、日本の国益に直結する教科書の流通プラットフォームを米国企業に任せていいのか、ということに尽きます。
日本製の電子書籍端末がまだ市場に出回っていない中ではやむを得ない面もありますが、逆に言えば、デジタル教科書を早期に普及させようと思ったら、日本製の電子書籍端末と日本型のプラットフォームを広めるきっかけに使えるはずです。
協議会をバックアップしている省庁の方々には、そうした産業政策的な観点を是非意識してもらいたいと思います。少なくとも、ITやネットの関連では、独自規格などで自国製にこだわる中国の方がよっぽど賢い対応をしていると言わざるを得ません。
そして、政権与党である民主党にもこの点を是非理解してもらいたいと思います。民主党は、小泉・竹中時代の構造改革を“外資への利益誘導”と非難し、郵政民営化に対しては“郵貯・簡保資金を米国資本に売り渡す”と非難していましたが、同じ言葉を投げかけたいと思います。教科書という国益に関わるものの流通プラットフォームを米国企業に渡していいのですか?
*「2015年にはデジタル教科書を全小中学校に」――孫氏が教育改革訴える デジタル教科書教材協議会が正式発足!
「丸暗記中心の、これまでの教科書は間違っている。“たいがいにせえ”と言いたい」――。ソフトバンクの孫正義社長は2010年7月27日、デジタル教科書教材協議会の設立シンポジウムで講演。「教育の改革なくして日本の将来はない」と、教育改革の必要性を強い口調で訴えた。
デジタル教科書教材協議会は、「すべての小中学生にデジタル教科書を」を目標に設立された、民間主導のコンソーシアム。教育の専門家のほか、孫氏やマイクロソフトの樋口泰行社長などが発起人に名を連ねる。同日設立総会を開催して、正式に発足。三菱総合研究所理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏が会長に就任した。会員として参加する企業は70社にのぼる。
正式発足にあわせて開催されたシンポジウムで、発起人の一人として講演した孫氏。冒頭で日本の競争力が低下している現状に触れ、このままでは30年後に取り返しが付かないことになる、と危機感をあらわにした。30年後の日本が元気であるためには、現在10歳前後の子どもたちをいかに育てるかがが重要。だからこそ、今すぐ日本の教育を改革する必要があると主張する。「今日は物議をかもしに来た」と前置きしながら、現在の教育に対してさまざまな批判を展開した。
例えば、運動会で順位を競わせるのを避ける傾向。「国の競争力が失われているときに、子どもたちに競争という本能を失わせるのがどれほど怖いことか。日本が国際競争力を取り戻すには、元気で競争心あふれる子を育てなければならない」(孫氏)。
現状の教科書については「30年後に役に立たないと思える内容が多すぎる」とバッサリ。「鎌倉幕府ができた年を、2~3年間違えてもいいではないか。年号のような詳細な情報は、検索すれば済む。それよりも、なぜ幕府ができて、なぜ倒幕が必要だったかを分析する能力の方が、はるかに重要」(孫氏)。
これからの教科書は、「子どもに感動を与えるものであるべき」(孫氏)。例えばNHKアーカイブスのドキュメンタリー番組をすべて動画で見られるような、魅力的な教科書にしたいとする。デジタル化によって「すべての学生が教科書のどこからどこまでを読み、どの問題でつまづいたか、を把握できるようになる」(孫氏)と指摘。教員が子どもたちの学力を分析したり、一人ひとりの理解度に応じた学習環境を整えたりするのに役立つという。
2000万人におよぶ全国の学生と教員全員に、無料でデジタル教科書を配布する構想も披露。2万円のデジタル教科書を6年リースで使用するとすれば、1人当たり月額280円で済む。このぶんを毎月1万3000円の子ども手当でまかない、残りの1万2720円を現金給付すればよいとの考えだ。こうすれば、新たな予算は一切発生しないと主張。さらに「通信代も無料にすべき。我々も、応分の応援はする」。
では、いつまでにこうした環境を実現すべきか。孫氏は「5年でやらなきゃいけない。2015年には、デジタル教科書を全小中学校に配備する必要がある」との目標を掲げる。そのためには、議論にいたずらに時間を費やすのでなく、とにかく実験してみることが先決という。今年度中に100校程度のモデル校を選んで実験を始め、良い結果が出たものはどんどん取り入れていくべきだと論じた。
シンポジウムの冒頭には、原口一博総務大臣があいさつ。同じく発起人であるマイクロソフトの樋口泰行社長も講演に立った。後半にはパネルディスカッションも行われ、東京学芸大学客員教授の藤原和博氏らが弁舌をふるった。広い会場は立ち見が出るほどの盛況で、世の関心の高さを物語っていた。
(八木 玲子=日経パソコン) [2010/07/29]
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